JP3920226B2 - 共鳴周波数検出方法、共鳴周波数選択方法、および、共鳴周波数検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願に係る発明は、共鳴空間の共鳴周波数を検出するための共鳴周波数検出方法 その装置 および 検出された共鳴周波数のうちから、ディップフィルタにディップの中心周波数として設定すべき周波数を選択する共鳴周波数選択方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
共鳴空間の共鳴周波数を検出する必要が生ずる場合がある。例えば、ホールや体育館等にスピーカ等の音響設備を設置し、スピーカからの拡声音を放射するとき、この空間(音響設備が配された拡声空間)の共鳴周波数のために、スピーカからの音楽や話声が聞き取りにくくなることがある。つまり、スピーカからの拡声音に共鳴周波数の成分が多く含まれると、該拡声空間においてこの成分の周波数で共鳴が起こるのである。共鳴音は「ウォンウォン・・・」とか「ファンファン・・・」というように聞こえる。この共鳴音は、本来、スピーカから放射しようとする音ではなく、スピーカからの音楽や話声を聞き取りにくくする。
【0003】
このことを防止するには、拡声空間における共鳴周波数を検出し、音響設備においてスピーカよりも前段に、この共鳴周波数の成分を減衰させるようなディップフィルタ等を設けるとよい。するとこの拡声空間において共鳴が起こりにくくなり、スピーカからの音楽や話声が聞きやすくなる。このディップフィルタの周波数特性を決定するためには、まず、この拡声空間の共鳴周波数を検出しなければならない。
【0004】
従来は、音響設備のオペレータや測定者が自らの聴覚に頼ってスピーカの拡声音や共鳴音を聞き分けて共鳴周波数を判断していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような聞き分けによって共鳴周波数であるか否かを判断するには、ある程度の熟練、経験を要する。また、このような熟練、経験に頼る検出であれば、必ずしも正確な共鳴周波数の検出を行うことはできない。さらにこのことが、拡声空間等に設置される音響設備の自動測定・自動調整のための障害にもなっていた。
【0006】
本願発明は、経験や熟練を必要とせず、正確に共鳴周波数を検出することができるような、共鳴周波数検出方法およびその装置を提供することを目的とする。また、検出された複数の共鳴周波数のうちからディップフィルタにディップの中心周波数として設定すべきものを客観的に選択することができるような共鳴周波数選択方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この出願発明に係る共鳴周波数検出方法は、第1の振幅周波数特性を測定する第1工程と、第2の振幅周波数特性を測定する第2工程とを備え、該第1の振幅周波数特性は、共鳴空間に配置されたスピーカから所定の測定用信号を拡声させて、該共鳴空間に配置されたマイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性であり、該第2の振幅周波数特性は、該スピーカから該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を拡声させて、該マイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性であり、該第1工程で測定された該第1の振幅周波数特性と該第2工程で測定された該第2の振幅周波数特性との比較に基づいて、該共鳴空間の共鳴周波数を検出する(請求項1)。
【0008】
また、上記課題を解決するために、この出願発明に係る共鳴周波数検出装置は、音源手段と、信号合成切換手段と、測定手段とを備え、該音源手段はスピーカから出力させるための測定用信号を発生し、該信号合成切換手段は、該音源手段からの測定用信号とマイクロホンからの出力信号とを入力可能であり、該信号合成切換手段は、該測定用信号を出力する第1状態と、該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を出力する第2状態とに切り換え可能であり、該測定手段は該マイクロホンの出力信号から振幅周波数特性を測定可能であり、該測定手段が該信号合成切換手段の第1状態で測定した第1の振幅周波数特性と、該測定手段が該信号合成切換手段の第2状態で測定した第2の振幅周波数特性との比較に基づいて、共鳴周波数を検出する(請求項6)。
【0009】
かかる方法・装置において測定される第2の振幅周波数特性は、マイクロホンの出力信号がスピーカへ入力されるというフィードバックループを含む系の振幅周波数特性である。このフィードバックループにより、第2の振幅周波数特性では、第1の振幅周波数特性に比べ、共鳴空間の共鳴の特性がより大きく強調されて表れる。よって、第1の振幅周波数特性と第2の振幅周波数特性とを比較することにより、共鳴空間の共鳴周波数を正確に検出することができる。
【0010】
上記共鳴周波数検出方法において、該第1の振幅周波数特性と該第2の振幅周波数特性との差分から、該第1の振幅周波数特性に比べて該第2の振幅周波数特性の方が振幅が大きいピーク点の周波数を共鳴周波数として検出するようにしてもよい(請求項2)。
【0011】
また、上記共鳴周波数検出装置において、該第1の振幅周波数特性と該第2の振幅周波数特性との差分から、該第1の振幅周波数特性に比べて該第2の振幅周波数特性の方が振幅が大きいピーク点の周波数を共鳴周波数として検出するようにしてもよい(請求項7)。
【0012】
また、上記共鳴周波数検出方法・装置において、該測定用信号としては正弦波スイープ信号が特に有効である(請求項3、請求項8)。
【0013】
また上記課題を解決するために、この出願発明に係る共鳴周波数選択方法は、上記共鳴周波数検出方法によって複数の共鳴周波数を検出し、この検出された複数の共鳴周波数のうちから、ディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数を、該第2の振幅周波数特性の振幅レベルの大きなものから選択する(請求項4)。この方法によれば、検出された複数の共鳴周波数のうちからディップフィルタにディップの中心周波数として設定すべきものを、経験や熟練によらずに客観的に選択することができる。
【0014】
また上記課題を解決するために、この出願発明に係る他の共鳴周波数選択方法は、上記共鳴周波数選択方法によって複数の共鳴周波数を選択し、この選択された複数の共鳴周波数のうちから、ディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数を、該第2の振幅周波数特性から該第1の振幅周波数特性を差し引いた振幅周波数特性における振幅レベルが大きなものから優先的に選択する(請求項5)。第2の振幅周波数特性では、第1の振幅周波数特性に比べ、共鳴空間の共鳴の特性がより大きく強調されて表れる。よって、第2の振幅周波数特性から第1の振幅周波数特性を差し引いた振幅周波数特性の振幅レベルの大きさに基づいてディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数を選ぶと、拡声空間の共鳴防止のためにはより効果的である。
【0015】
【発明の実施の形態】
この出願発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40に設置された音響システムの概略構成図である。この音響システムは、音源装置2と、ディップフィルタ4と、アンプ12と、スピーカ13とを備えている。音源装置2は、例えば音楽CDを再生するためのCDプレーヤのような演奏器機であってもよいし、マイクロホンであってもよい。図1では音源装置2を拡声空間40の外側に表しているが、音源装置2は拡声空間40内に設置されていてもよい。例えば、音源装置2は、拡声空間40内に設置されたマイクロホンであってもよい。ディップフィルタ4は、音源装置2からの信号から特定の周波数の信号成分を除去してアンプ12に送出するためのものである。ディップフィルタ4からの信号はアンプ12で増幅されてスピーカ13に送出され、拡声空間40においてスピーカ13から拡声される。
【0017】
この拡声空間40が共鳴周波数を有するとき、スピーカ13からの拡声音に共鳴周波数の成分が多く含まれると、拡声空間40において共鳴が起こり、スピーカ13からの音楽や話声が聞き取りにくくなる。しかし、この音響システムにおいて、ディップフィルタ4に適切な周波数特性を設定すると、スピーカ13からの拡声音の音質を損なうことなく、拡声空間40における共鳴を防止することができる。
【0018】
本実施形態では、共鳴空間40において共鳴周波数を検出し、また、検出された共鳴周波数のうちから、ディップフィルタ4にディップの中心周波数として設定すべき周波数を選択するのであるが、まず最初に図2〜6を参照しつつ、共鳴空間40において共鳴周波数を検出する方法・装置を説明する。
【0019】
図2は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40において振幅周波数特性を測定するためのシステムAの概略ブロック図である。このシステムAは、測定用信号を発する音源手段たる発信器11と、この発信器11が発する信号を入力して電力増幅するアンプ12と、このアンプ12の出力信号を入力して拡声するスピーカ13と、スピーカ13が放射する拡声音を受音するマイクロホン14と、マイクロホン14の受音信号を入力する測定器15とを備える。マイクロホン14は騒音計であってもよい。
【0020】
スピーカ13とマイクロホン14とは、拡声空間40内に配置されている。マイクロホン14は拡声空間40内において、スピーカ13から充分に距離を置いている。マイクロホン14は、スピーカ13からの直接音に対して、拡声空間40内における反射音を充分大きなレベルで受音できる位置に配置されている。
【0021】
発信器11は測定用信号として、周波数が時間的に変化するような正弦波信号を発する。つまり発信器11は、正弦波スイープ信号を発信する。この正弦波スイープ信号では、周波数スイープ中の各時点において正弦波のレベルは一定である。
【0022】
測定器15は、時間的に中心周波数が変化するようなバンドパスフィルタを有している。このバンドパスフィルタは、発信器11が発信する正弦波スイープ信号の周波数の時間的変化に対応して、中心周波数を時間的に変化させる。よって測定器15は、マイクロホン14から入力する受音信号のレベルをこのバンドパスフィルタを介して検出することにより、その時点における周波数の振幅特性を測定することができる。
【0023】
図3は、拡声空間40において振幅周波数特性を測定するためのシステムBの概略ブロック図である。このシステムBは、図2のシステムAに、ある信号の合成のための経路を付加しただけのものである。つまり図3のシステムBは、測定用信号を発する音源手段たる発信器11と、ミキシング装置16と、ミキシング装置16の出力信号を入力してこの信号を電力増幅するアンプ12と、このアンプ12の出力信号を入力して拡声するスピーカ13と、スピーカ13が放射する拡声音を受音するマイクロホン14と、マイクロホン14の受音信号を入力する測定器15とを備える。
【0024】
スピーカ13とマイクロホン14とは、拡声空間40内において、図2のシステムAにおけると同一の位置に配置されている。図3のシステムBにおける、発信器11、アンプ12、スピーカ13、マイクロホン14、測定器15は、図2のシステムAにおけるこれら器機と同一のものである。
【0025】
図3のシステムBが図2のシステムAと相違する点は、図2のシステムAでは、アンプ12が発信器11から信号を入力していたのに対し、図3のシステムBでは、アンプ12がミキシング装置16から信号を入力している点である。図3のミキシング装置16は、発信器11からの測定用信号(正弦波スイープ信号)と、マイクロホン14からの受音信号とを入力し、これら入力した信号を合成(ミキシング)し、この合成信号(ミキシング信号)を出力する。
【0026】
図4は、図2のシステムAによって測定された拡声空間40の振幅周波数特性と、図3のシステムBによって測定された拡声空間40の振幅周波数特性とを模式的に示す特性図である。図4において実線で示す曲線Caが、図2のシステムAによる振幅周波数特性であり、破線で示す曲線Cbが、図3のシステムBによる振幅周波数特性である。
【0027】
図2のシステムAも図3のシステムBも、多数の周波数ポイントにおける振幅値を測定する。例えば測定対象となる周波数範囲において、1/192オクターブ間隔で振幅値を測定する。この多点(多数の周波数ポイント)での測定値を周波数軸上で平滑化せずに、拡声空間40の振幅周波数特性として曲線Ca,Cbに表しても良いし、何らかの方法によって周波数軸上で平滑化して、曲線Ca,Cbに表しても良い。このときの平滑化の方法には種々あるが、例えば移動平均によって平滑化してもよい。例えば、多数の周波数ポイントの測定値に対して周波数軸上で9ポイントの移動平均を施してもよい。なお、曲線Caとして平滑化されたものを用いる場合は、曲線Cbについても平滑化されたものを用いるのが好ましい。この場合にはさらに、曲線Caに関する平滑化の方法と同一の平滑化の方法によって曲線Cbを得ることが好ましい。例えば曲線Caを、周波数軸上での9ポイントの移動平均により得るのであれば、曲線Cbも、周波数軸上での9ポイントの移動平均により得るのが好ましい。
【0028】
図4の実曲線Caの振幅周波数特性は、アンプ12とスピーカ13とマイクロホン14とによる音響系の特性のみならず、拡声空間40の共鳴の特性をも包含するものである。図4の破曲線Cbの振幅周波数特性も、アンプ12とスピーカ13とマイクロホン14とによる音響系の特性のみならず、拡声空間40の共鳴の特性をも包含するものであるが、マイクロホン14の出力信号がアンプ12に入力されてスピーカ13から出力されるというフィードバックループにより、拡声空間40の共鳴の特性が実曲線Caの振幅周波数特性よりも大きく強調されて表れている。よって、両曲線(実曲線Caと破曲線Cb)との差から、拡声空間40の共鳴の特性を知ることができる。
【0029】
図5に示す周波数特性は、図4の破曲線Cbの特性から実曲線Caの特性を差し引いた特性である。図5において正の方向にピークを示す周波数は、周波数f1、周波数f2 および 周波数f3である。拡声空間40における共鳴周波数の数は一のみとは限らず、複数である場合も多い。よって、周波数f1、f2、f3のうちの一のみが共鳴周波数である可能性もあるし、そのうちの複数が共鳴周波数である可能性もあるが、図5の特性から、共鳴周波数たる可能性のある周波数を客観的に検出することができる。
【0030】
以上、図2〜5を参照しつつ、共鳴空間40において共鳴周波数を検出する方法を説明した。
【0031】
図6は、本願発明に係る共鳴周波数検出装置の一実施形態たる検出装置20を含むシステムCの概略ブロック図である。
【0032】
このシステムCは、検出装置20と、この検出装置20が発する信号を入力して電力増幅するアンプ12と、このアンプ12の出力信号を入力して拡声するスピーカ13と、スピーカ13が放射する拡声音を受音するマイクロホン14とを備える。検出装置20は、マイクロホン14からの受音信号を入力している。スピーカ13とマイクロホン14とは、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40内に配置されている。マイクロホン14は拡声空間40内において、スピーカ13から充分に距離を置いている。マイクロホン14は、スピーカ13からの直接音に対して、拡声空間40内における反射音を充分大きなレベルで受音できる位置に配置されている。
【0033】
検出装置20は、発信部21と、測定・制御部25と、ミキシング部26と、開閉部27とを備える。発信部21は測定用信号を発する音源手段として機能する。測定・制御部25は、検出装置20内の各部を制御する制御手段として機能し、また、周波数特性の測定を行う測定手段としても機能する。また、ミキシング部26と開閉部27とが、信号合成切換手段として機能する。
【0034】
このシステムCでは、検出装置20において、測定・制御部25が音源部21を制御して、音源部21から測定用信号を出力させる。この測定用信号は、周波数が時間的に変化するような正弦波信号、つまり正弦波スイープ信号である。この正弦波スイープ信号では、周波数スイープ中の各時点において、正弦波のレベルは一定である。
【0035】
ミキシング部26は、音源部21からの信号と、開閉部27からの信号とを合成(ミキシング)して、その合成信号(ミキシング信号)を出力する。ミキシング部26の出力信号はアンプ12で電力増幅されてスピーカ13に入力され、スピーカ13から拡声音として拡声空間40に放射される。拡声空間40内の音はマイクロホン14で受音され、マイクロホン14の受音信号は、検出装置20に入力される。
【0036】
検出装置20においては、このマイクロホン14からの受音信号が測定・制御部25と開閉部27とに分岐されて送出される。
【0037】
測定・制御部25は、時間的に中心周波数が変化するようなバンドパスフィルタを有している。このバンドパスフィルタは、発信部21が発信する正弦波スイープ信号の周波数の時間的変化に対応して、中心周波数を時間的に変化させる。よって測定・制御部25は、マイクロホン14から入力する受音信号のレベルをこのバンドパスフィルタを介して検出することにより、その時点における周波数の振幅特性を測定することができる。
【0038】
測定・制御部25は、開閉部27の開閉を制御することができる。よって、開閉部27を「開」状態にして、発信部21からの測定用信号のみをスピーカ13から拡声させることもできるし、開閉部27を「閉」状態にして、発信部21からの測定用信号とマイクロホン14の受音信号との合成信号(ミキシング信号)をスピーカ13から拡声させることもできる。
【0039】
そして、開閉部27の「開」状態であれば、図2のシステムAにおいて測定装置15が測定したと同様の振幅周波数特性を測定することができるし、開閉部27の「閉」状態であれば、図3のシステムBにおいて測定装置15が測定したと同様の振幅周波数特性を測定することができる。
【0040】
測定・制御部25は、両状態(開閉部27の「開」状態と「閉」状態)における振幅周波数特性を測定し、開閉部27の「閉」状態における振幅周波数特性から「開」状態における振幅周波数特性を差し引く。さらに、差し引いた結果得られる周波数特性において正の方向にピークを示す周波数を検出する。このようにして、拡声空間40の共鳴周波数たる可能性のある周波数を客観的に検出することができる。
【0041】
以上、図2〜5を参照しつつ、また、図6を参照しつつ、共鳴空間40において共鳴周波数を検出する方法・装置を説明した。
【0042】
次に、このようにして検出された共鳴周波数のうちから、ディップフィルタ4(図1参照)にディップの中心周波数として設定すべき周波数を選択する方法を説明する。
【0043】
先に、図5に示す周波数特性曲線Ccから、正の方向にピークを示す周波数として、周波数f1、周波数f2 および 周波数f3を得た。これら周波数が拡声空間40の共鳴周波数である可能性が高い。この内から所定数の周波数を、ディップフィルタ4に除去周波数として設定すべきディップの中心周波数の候補として選ぶ。
【0044】
具体的には、これら周波数の内から、図4における曲線Cbの振幅レベルが大きなものから順番に、候補の周波数を選ぶ。
【0045】
図7は、図4から曲線Cbのみを取り出した特性図である。図7においては縦軸、横軸とも対数軸であり、縦軸は振幅レベルを横軸は周波数を示す。図7の曲線Cbでは、周波数f2における振幅レベルが最も大きく、f3における振幅レベルがその次に大きく、f1における振幅レベルがその次に大きい。ここで、候補として選ぶ周波数の数を「3」とするのであれば、周波数f1、周波数f2、周波数f3のすべてが、候補の周波数となる。また、候補として選ぶ周波数の数を「2」とするのであれば、周波数f2、周波数f3が候補の周波数となる。
【0046】
そして、図7の曲線Cbの振幅レベルの大きさに基づく優先順位によって、ディップフィルタ4に設定すべきディップの中心周波数を決定してもよい。よって、図1のディップフィルタ4に設定すべきディップの数が、例えば「2」であれば、周波数f2と周波数f3とを、ディップフィルタ4のディップの中心周波数として設定する。また例えば、図1のディップフィルタ4に設定すべきディップの数が「1」であれば、周波数f2のみをディップフィルタ4のディップの中心周波数として設定する。
【0047】
このように、図7の曲線Cbの振幅レベルの大きさに基づく優先順位によって、ディップフィルタ4に設定すべきディップの中心周波数を最終的に決定してもよいが、図7の曲線Cbの振幅レベルの大きさに基づく優先順位によってディップフィルタ4に設定すべき複数のディップの中心周波数の候補を選んだ上で、さらに図5の曲線Ccにおける振幅レベルの大きさに基づいて、候補(ディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数の候補)の順位を付け替えても良い。
【0048】
今、図7の曲線Cbの振幅レベルの大きさに基づく選択によって、周波数f1、周波数f2、周波数f3のすべてが候補の周波数となっているとする。次に、これら候補の周波数(周波数f1,f2,f3)に候補の順位を付け替える。順位は、図5の振幅周波数特性曲線Ccにおける振幅レベルが大きいものから高く付けるようにする。周波数f1,f2,f3のうち、図5の曲線Ccにおける振幅レベルが最も大きいのは周波数f3であり、その次に振幅レベルが大きいのは周波数f2であり、その次に振幅レベルが大きいのは周波数f1である。よって、周波数f3が第1候補の周波数となり、周波数f2が第2候補の周波数となり、周波数f1が第3候補の周波数となる。
【0049】
図1のディップフィルタ4に設定すべきディップの数が、例えば「2」であれば、周波数f3と周波数f2とを、ディップフィルタ4のディップの中心周波数として設定する。また例えば、図1のディップフィルタ4に設定すべきディップの数が「1」であれば、周波数f3のみをディップフィルタ4のディップの中心周波数として設定する。
【0050】
このようにして、経験や熟練を必要とせず、ディップフィルタ4に設定すべきディップの中心周波数を客観的に選択することができる。そうすることによって、図1の拡声空間40における共鳴を有効に防止することができる。
【0051】
なお、図7の曲線Cbの振幅レベルの大きさに基づく優先順位によってディップフィルタ4に設定すべき複数のディップの中心周波数の候補を選んだ上で、さらに図5の曲線Ccにおける振幅レベルの大きさに基づいて、候補(ディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数の候補)の順位を付け替えたのは次の理由による。すなわち、図7の曲線Cbは拡声空間40の共鳴による特性のみならず、測定系(アンプ12、スピーカ13、マイクロホン14等からなる系)の振幅周波数特定をも包含しており、拡声空間40の共鳴の特性のみならず、測定系の振幅周波数特性にも大きく依存した特性となっている。これに対して図5の曲線Ccは、拡声空間40の共鳴による特性が顕著に表れており、測定計の振幅周波数特性の影響は小さい。よって、図5の曲線Ccにおける振幅レベルの大きさに基づいてディップフィルタ4に設定すべきディップの中心周波数を最終的に決定した方が、拡声空間40の共鳴防止のためにはより効果的だからである。
【0052】
ディップフィルタに設定すべきディップの数や検出された共鳴周波数の数がより多数である場合にも、上記の共鳴周波数選択方法は有効である。例えば、検出された共鳴周波数が200以上ある場合に、図7の曲線Cbにおいて振幅レベルの大きなものから120の周波数を候補として残し、残りの周波数は候補から除外するようにしてもよい。そしてさらに、この120の周波数に対して図5の曲線Ccにおける振幅レベルの大きさに基づいて候補の順位を付け替え、付け替えられた順位において上位の8位までの周波数をディップフィルタにディップの中心周波数として設定するようにしてもよい。
【0053】
以上、図1〜7に基づいて、本願発明の実施形態を説明した。
【0054】
上記実施形態では、音響設備が配される拡声空間における共鳴周波数の検出に、本願発明の共鳴周波数検出方法およびその装置を適用する例を示したが、本願発明の共鳴周波数検出方法およびその装置はこのような拡声空間のみならず、共鳴周波数検出が必要となるあらゆる空間(共鳴空間)に適用できる。例えば、液体タンク内の液体充填量を知るために、該タンクにおいて液体で充たされない空間の容積を、共鳴周波数を検出することによって測定する技術にも適用できる。
【0055】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、経験や熟練を必要とせず、正確に共鳴周波数を検出することができる。また、検出された共鳴周波数のうちから、ディップフィルタにディップの中心周波数として設定すべき周波数を、客観的に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡声空間に設置された音響システムの概略構成図である。
【図2】拡声空間において振幅周波数特性を測定するためのシステムの概略ブロック図である。
【図3】拡声空間において振幅周波数特性を測定するためのシステムの概略ブロック図である。
【図4】図1のシステムによって測定された拡声空間の振幅周波数特性と、図2のシステムによって測定された拡声空間の振幅周波数特性とを模式的に示す特性図である。
【図5】図4の破曲線から実曲線を差し引いた周波数特性図である。
【図6】本願発明に係る共鳴周波数検出装置の一実施形態たる検出装置を含むシステムの概略ブロック図である。
【図7】図4から曲線Cbのみを取り出した特性図である。
【符号の説明】
2 音源装置
4 ディップフィルタ
11 発信器
12 アンプ
13 スピーカ
14 マイクロホン
15 測定器
16 ミキシング装置
20 検出装置
21 発信部
25 測定・制御部
26 ミキシング部
27 開閉部
40 拡声空間
Claims (8)
- 第1の振幅周波数特性を測定する第1工程と、第2の振幅周波数特性を測定する第2工程とを備え、
該第1の振幅周波数特性は、共鳴空間に配置されたスピーカから所定の測定用信号を拡声させて、該共鳴空間に配置されたマイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性であり、
該第2の振幅周波数特性は、該スピーカから該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を拡声させて、該マイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性であり、
該第1工程で測定された該第1の振幅周波数特性と該第2工程で測定された該第2の振幅周波数特性との比較に基づいて、該共鳴空間の共鳴周波数を検出する、共鳴周波数検出方法。 - 該第1の振幅周波数特性と該第2の振幅周波数特性との差分から、該第1の振幅周波数特性に比べて該第2の振幅周波数特性の方が振幅が大きいピーク点の周波数を共鳴周波数として検出する、請求項1記載の共鳴周波数検出方法。
- 該測定用信号が正弦波スイープ信号である、請求項1又は2記載の共鳴周波数検出方法。
- 請求項1乃至3のいずれか一の項に記載の共鳴周波数検出方法によって複数の共鳴周波数を検出し、この検出された複数の共鳴周波数のうちから、ディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数を、該第2の振幅周波数特性の振幅レベルの大きなものから選択する、共鳴周波数選択方法。
- 請求項4記載の共鳴周波数選択方法によって複数の共鳴周波数を選択し、この選択された複数の共鳴周波数のうちから、ディップフィルタに設定すべきディップの中心周波数を、該第2の振幅周波数特性から該第1の振幅周波数特性を差し引いた振幅周波数特性における振幅レベルが大きなものから優先的に選択する、共鳴周波数選択方法。
- 音源手段と、信号合成切換手段と、測定手段とを備え、
該音源手段はスピーカから出力させるための測定用信号を発生し、
該信号合成切換手段は、該音源手段からの測定用信号とマイクロホンからの出力信号とを入力可能であり、
該信号合成切換手段は、該測定用信号を出力する第1状態と、該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を出力する第2状態とに切り換え可能であり、
該測定手段は該マイクロホンの出力信号から振幅周波数特性を測定可能であり、
該測定手段が該信号合成切換手段の第1状態で測定した第1の振幅周波数特性と、該測定手段が該信号合成切換手段の第2状態で測定した第2の振幅周波数特性との比較に基づいて、共鳴周波数を検出する、共鳴周波数検出装置。 - 該第1の振幅周波数特性と該第2の振幅周波数特性との差分から、該第1の振幅周波数特性に比べて該第2の振幅周波数特性の方が振幅が大きいピーク点の周波数を共鳴周波数として検出する、請求項6記載の共鳴周波数検出装置。
- 該測定用信号が正弦波スイープ信号である、請求項6又は7記載の共鳴周波数検出装置。
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