JP3920086B2 - 艶消し電着塗料およびその電着塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アニオン型艶消し電着塗料およびその電着塗装方法に関するものであり、該塗料から得られる塗膜は接着剤との接着性に優れた特性を発揮する。
【0002】
【従来の技術】
従来、陽極酸化処理したアルミニウム材は軽量でかつ強度が強く、さらには耐食性に優れることから、ビルや住宅の窓枠、ドアー、エクステリア等の建材関係に広く使用されている。アルミニウム材の塗装には、ワンコートで仕上がり性の良いアニオン型電着塗料が一般的に使用されている。そのアニオン型電着塗料としては、カルボキシル基および水酸基を含有する水性アクリル樹脂にメラミン樹脂架橋剤を配合し、水分散してなるメラミン硬化型電着塗料が代表的である。
【0003】
しかしながら、近年アルミニウム建材のニーズが多様化し、多色化、あるいは新意匠が求められている。特に一般住宅向けのドアー材、窓枠材の室内側の面においては、それぞれの部屋の雰囲気に合わせるべく、各種の模様が印刷されたラミネート材を貼り付けるという技術が普及して来ている。電着塗装を施したアルミニウム材に、ラミネート材を貼り付けるために接着剤を使用するが、従来技術においては、接着剤を選んでも充分な接着力が得られにくいという問題点があり、改良が求められている。
現在のところ最も一般的に使用される接着剤は、主剤がウレタン変性をしたあるいは変性しないポリエステルポリオールで、硬化剤としてポリフェニルポリメチレン系ポリイソシアネートを組み合わせたものであり、中でもこの接着剤において特に上記の問題が顕著である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はラミネート材用接着剤と良好な接着性を有し、かつ耐候性、耐薬品性、耐溶剤性、硬度等の塗膜性能、および塗膜の仕上り外観、塗装作業性、塗料の安定性等にも優れる、アニオン型艶消し電着塗料およびその電着塗装方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決するためラミネート材用接着剤との接着性を向上させるための塗料改質成分について鋭意検討を行った結果、高水酸基価ビニル共重合体が優れた効果を発揮することを見出し本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(A)側鎖にカルボキシル基、水酸基,およびミクロゲル生成用の架橋官能基有するビニル共重合体100重量部に対し、(B)アミノ樹脂を30重量部から100重量部、および(C)水酸基含有α、β−エチレン性不飽和単量体と炭素数が4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを必須成分とし、水酸基価100〜300mgKOH/g固形分でかつ上記ビニル共重合体(A)の水酸基価よりも20mgKOH/g固形分以上高い高水酸基価ビニル共重合体を0.5重量部から60重量部を含有するアニオン型艶消し電着塗料組成物およびその電着塗装方法である。さらに、ビニル共重合体(A)が、酸価10〜150mgKOH/g固形分および水酸基価20〜200mgKOH/g固形分であり、ミクロゲル生成用の架橋官能基がアセトアセチル基、またはβ−メチル置換グリシジル基、またはアルコキシシリル基であるアニオン型艶消し電着塗料組成物およびその電着塗装方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の電着塗料およびその電着塗装方法について詳細に説明する。
【0007】
〔(A)ビニル共重合体〕
本発明に使用される(A)ビニル共重合体は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体、架橋官能基含有α,β−エチレン性不飽和単量体、およびその他のα,β−エチレン性不飽和単量体を共重合したものである。
【0008】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、ビニル共重合体に水分散性、電気泳動性を付与するものである。例示すると、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらの1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0009】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、ビニル共重合体中の酸価が好ましくは10〜150mgKOH/g固形分、より好ましくは20〜100mgKOH/g固形分となるような範囲で使用される。ビニル共重合体の酸価が10未満では充分な水分散安定性が得られにくく、また150を超えると電気泳動性、塗膜析出性が低下し、塗膜の耐水性、耐アルカリ性が低下する。
【0010】
また、水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体は、塗膜の焼き付けに際して、アミノ樹脂と反応して硬化性を付与するものである。例示すると、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、およびこれらのラクトン変性物等が挙げられ、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0011】
このような水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体はビニル共重合体中の水酸基価が好ましくは20〜200mgKOH/g固形分、より好ましくは40〜160mgKOH/g固形分となるような範囲で使用される。水酸基価が20未満では充分な硬化性が確保されず、また200を超えると塗膜が脆化し、耐水性が低下して充分な性能が得られにくい。
【0012】
また、ミクロゲル生成用の架橋官能基含有α、β−エチレン性不飽和単量体は、ビニル共重合体中に安定的に不溶性のミクロゲルを生成させ、艶消し性能を付与するものである。例示すると、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、β−メチル置換グリシジルアクリレート、β−メチル置換グリシジルメタクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、等が挙げられ、後述する方法で水分散化した後、分散粒子内にミクロゲルを生成させ光沢の低減化を図る。特にアセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレートについては、ホルムアルデヒドを併用することでミクロゲルの生成が促進されるので、ホルムアルデヒドを併用することが好ましい。
【0013】
さらに、その他のα,β−エチレン性不飽和単量体については、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、あるいはその他のビニル単量体およびアミド系単量体を用いることができる。具体的な化合物を例示すると、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド等のアミド系単量体が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
ビニル共重合体の好ましい重量平均分子量は、10,000〜100,000であり、より好ましくは20,000〜70,000である。重量平均分子量が10,000以下の場合は、塗膜耐久性が充分に得られず、また100,000以上の場合は、水分散性が低下し、塗料の取り扱い性が不良になる。
【0015】
上述したようなビニル共重合体は、前記の各単量体を溶液重合、非水性分散重合、塊状重合、エマルジョン重合、懸濁重合等の公知の方法で重合することによって得られるが、特に溶液重合が好ましく、反応温度としては通常40〜170℃が選ばれる。
【0016】
反応溶剤としては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の親水性溶剤を用るのが好ましい。また、重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、公知のものを用いることができる。
【0017】
〔(B)アミノ樹脂〕
本発明に使用される(B)アミノ樹脂としては、従来から公知のメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、中でも好適なものは、メチロール基の少なくとも一部を低級アルコールでアルコキシ化したアルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂であって、低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の1種または2種以上が使用できる。また1種のメラミン樹脂であっても、また2種以上のメラミン樹脂が組み合わされても問題はない。
【0018】
アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂を例示すると、三井サイテック(株)製のサイメル266、232、235、238、236、マイコート506、508、548、住友化学工業(株)製のスミマールM−66B、(株)三和ケミカル製のニカラックMX−40、MX−45等があるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の(B)アミノ樹脂の使用量の好ましい範囲は、(A)ビニル共重合体100重量部に対し30〜100重量部である。この範囲より少ない場合は、塗膜の架橋が不充分なため硬度、機械特性、耐溶剤性、耐薬品性等が低下し、ラミネート接着性も悪化する。逆に100重量部を超える場合はビニル共重合体との親和性が不充分になり、水分散液の安定性不良、分散粒径の不均一化、電着後の水洗性不良、撥水現象、塗膜の光沢ムラ、乳白化等の問題が生じると共に、過剰のアミノ樹脂が、硬化しないで可塑剤として残存する為、硬度不足とラミネート接着性不良が起こり、好ましくない。
【0020】
〔(C)高水酸基価ビニル共重合体〕
本発明に使用される(C)高水酸基価ビニル共重合体は、水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体と炭素数が4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを必須成分とし、更に必要によりその他のα,β−エチレン性不飽和単量体を共重合したものである。
【0021】
水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、およびこれらのラクトン変性物等が挙げられ、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
このような水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体は高水酸基価ビニル共重合体中の水酸基価が100〜300mgKOH/g固形分となるような範囲で使用される。水酸基価が100未満では充分なラミネート材用接着剤との接着性が確保されず、また300を超える場合は、水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体が主成分になり、後述の炭素数が4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの共重合割合が少なくなり、その効果が発揮されなくなるため、ラミネート材用接着剤との充分な接着性が得られにくい。またラミネート材用接着剤との接着性をより充分に発揮させるために(C)成分の水酸基価は、(A)成分の水酸基価より高い値が選択される。さらに好ましい(C)成分の水酸基価は、(A)成分の水酸基価より20mgKOH/g固形分以上高い値である。
【0023】
炭素数が4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート等が挙げられる。
(C)成分においてこれらのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが必須である理由は、これらを共重合することにより電着工程あるいは焼付工程において(C)成分が塗膜表層に比較的濃度高く分布し、もう一方の必須成分である水酸基含有単量体の接着性向上効果をより高めるためと推定される。
【0024】
また上記(C)成分の効果を抑制しない範囲でその他のα,β−エチレン性不飽和単量体を共重合することが可能である。その他のα,β−エチレン性不飽和単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数3以下のアルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
高水酸基価ビニル共重合体の好ましい重量平均分子量は、2,000〜50,000であり、より好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が2,000以下の場合は、塗膜耐久性が充分に得られず、また50,000以上の場合は、ラミネート材用接着剤との充分な接着性が得られない。分子量が大きくなり過ぎると充分な接着性が得られない理由は、上述したような(C)成分の塗膜表層の濃度分布が高くなるという現象が起こりにくくなるためと推定される。
また高水酸基価ビニル共重合体の製法については、先のビニル共重合体(A)と同様の方法が用いられ、特に溶液重合が好ましい。
【0026】
本発明の(C)高水酸基価ビニル共重合体の使用量の好ましい範囲は、(A)ビニル共重合体100重量部に対し0.5〜60重量部である。この範囲より少ない場合は、ラミネート接着性が充分に得られず、60重量部を超えると、光沢上昇及びラミネート接着不良が起こり好ましくない。更に塗料の安定性も悪化する。また、より好ましい範囲は1〜40重量部である。
【0027】
本発明の艶消し電着塗料の調製は、ビニル共重合体(A)、アミノ樹脂(B)、および高水酸基価ビニル共重合体(C)を40〜100℃で攪拌混合し、有機アミンあるいは無機塩基等の塩基性物質で中和した後、20〜80℃で脱イオン水と撹拌混合して乳化分散するのが一般的な方法である。更に必要に応じて、加温反応を行ったり、あるいは脱イオン水、または親水性溶剤を一部含有する脱イオン水で希釈し、艶消しタイプの電着塗装に供せられる。
【0028】
前述の塩基性物質はビニル共重合体(A)のカルボキシル基の少なくとも一部を中和して水分散化するための物質であり、例示すると、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン、アンモニア、エチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。このような塩基性物質による中和率は30〜120%が適当であるが、特に50〜100%であると水分散性が良好で、光沢ムラを生じないので好ましい。
【0029】
また、電着塗料の調製には更に必要に応じて、硬化触媒や消泡剤、レベリング剤等といった界面活性剤等の添加剤を加えて用いられる場合もある。
また、本発明の技術は、顔料と併用して着色タイプの電着塗料にも適用可能である。
【0030】
〔電着塗装方法〕
電着塗装を実施する場合における、塗料の固形分濃度は4〜20重量%が適当である。4重量%より低い場合には、必要な塗膜厚を得るのに長時間を要し、20重量%を超えると浴液の状態が不安定となり、塗装系外に持ち出される塗料量も多く問題となる。
【0031】
塗装方法については、被塗物を陽極として電着塗装を行うが、塗装電圧は30〜350V、好ましくは50〜300Vであり、通電時間は0.5〜7分、好ましくは1〜5分である。電圧が高いほど通電時間は短く、逆に電圧が低いほど通電時間は長くなる。塗装電圧は通電と同時に設定電圧をかける方法、あるいは徐々に設定電圧まで上げていく方法のどちらでもかまわない。電着塗装された被塗物は必要により水洗し、次いで150〜200℃で15〜60分間加熱し最終塗膜を得る。塗膜厚は5〜30μmが好ましい。
【0032】
本発明の電着塗装方法が適用される被塗物の素材は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いた素材に好適である。
また、得られる塗膜は、平滑性や均一性等の外観に優れ、機械特性、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性等の性能にも優れたものとなる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明について実施例を挙げ、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、表中の配合量は特別な記載のない限り、重量部を表す。
【0034】
〔ビニル共重合体(A)の製造〕
製造例1〜3(樹脂液A1〜A3の製造)
撹拌装置、温度計、単量体の滴下装置、還流冷却装置を有する反応装置を準備する。表1に示す配合に従って、(1)と(2)を反応装置に仕込み、撹拌下に還流温度まで上昇させ、(3)〜(12)を予め均一に混合した後、3時間かけて滴下した。温度は90℃を維持した。滴下終了してから、1.5時間経過後に(13)を加えて、更に90℃で1.5時間反応を継続して、樹脂固形分65%の透明で粘稠な樹脂液A1〜A3を得た。それらの酸価(mgKOH/g固形分)、水酸基価(mgKOH/g固形分)、重量平均分子量も表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
使用原料
AAEM :アセトアセトキシエチルメタクリレート
γ−MPTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
β−MGMA :β−メチル置換グリシジルメタクリレート
【0037】
〔高水酸基価ビニル共重合体(C)の製造〕
製造例4〜8(樹脂液C1〜C5の製造)
撹拌装置、温度計、単量体の滴下装置、還流冷却装置を有する反応装置を準備する。表2に示す配合に従って、(1)を反応装置に仕込み、撹拌下に還流温度まで上昇させ、(2)〜(8)を予め均一に混合した後、3時間かけて滴下した。温度は85℃を維持した。滴下終了してから、1.5時間経過後に(9)を加えて、更に85℃で1.5時間反応を継続して、樹脂固形分50%の透明で粘稠な樹脂液C1〜C5を得た。それらの重量平均分子量、水酸基価も表2に示した。
【0038】
【表2】
【0039】
〔分散樹脂液D1〜D8の製造〕
撹拌装置、温度計、還流冷却装置を有する反応装置を準備し、表3および表4に示す配合に従って(1)〜(7)を仕込み、60℃で1時間撹拌混合した。これに(8)を加えた後、(9)を徐々に添加して乳化分散樹脂液のD1〜D8を得た。分散樹脂液D1〜D2、D5〜D8については、さらに(10)の37%ホルマリンを添加して50℃で4時間保温し、ミクロゲル化の反応を行った。分散樹脂液D3はこのままで既にミクロゲルが生成している。分散樹脂液D4については、75℃で10時間保温してミクロゲル化の反応を行った。最後にそれぞれに(11)を加えて分散樹脂液を調製した。
尚、(4)のサイメル238は三井サイテック(株)製の混合エーテル型メラミン樹脂で固形分100%である。
また、分散樹脂液D5〜D8は比較例用であり、D5は高水酸基価ビニル共重合体(C)を含まない場合、D6は60重量部を超える場合、D7は高水酸基価ビニル共重合体(C)の水酸基価が100mgKOH/g固形分以下の場合、D8は高水酸基価ビニル共重合体(C)がC4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含まない場合である。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
〔電着塗料E1〜E8の製造〕
上記の分散樹脂液D1〜D8に脱イオン水を加えて固形分を10%に調製した後、トリエチルアミンを加えてpHを8.0に調整して、それぞれに相当する電着塗料E1〜E8を得た。
【0043】
〔電着塗装および塗膜性能評価〕
(実施例1〜4、比較例1〜4)
上記で得られた電着塗料(実施例1〜4はそれぞれの電着塗料E1〜E4、比較例1〜4はそれぞれの電着塗料E5〜E8を使用)を塩化ビニル製の浴槽に入れ、陰極をSUS304鋼板とし、6063Sアルミニウム合金板にアルマイト処理(アルマイト膜厚=9μm)を施し、更に黒色に電解着色した後、常法により湯洗されたアルミニウム材を陽極(被塗物)として電着塗装を行った。電着塗装の具体的条件は浴温22℃、極間距離12cm、極比(+/−)2/1として、常法により、130Vで塗膜厚が10μmとなる様に通電し、電着終了後洗浄し、引き続いて185℃で30分間焼き付けた。得られた塗膜を性能評価し、結果を表5および表6に示した。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
塗装板の評価方法は次の通りである。
(1)光沢値 :グロスメーターで60°鏡面反射率[%]を測定。
(2)鉛筆硬度 :JIS K−5400−8.4.2(鉛筆手かき法)に準拠。破れ判定。)
(3)碁盤目付着性 :JIS K−5400−8.5.2(碁盤目テープ法)に準じた方法で判定。結果の数値は碁盤目数100個中の剥がれずに残存した碁盤目数を示した。
(4)耐アルカリ性 :1%の水酸化ナトリウム水溶液に20℃で120時間浸漬後に塗面状態を観察。
(5)耐酸性 :5%の硫酸水溶液に20℃で120時間浸漬後に塗面状態を観察。
(6)ラミネート接着性:接着剤を塗布した25mm幅の塩化ビニル製ラミネート材を電着塗装したアルミニウム板に貼り付け、5kgのゴムローラーで圧着した後、室温で3日間放置する。その後、引っ張り試験機を用い、塗装板とラミネート材の180°剥離試験を行った時のピーリング強度を測定する(引っ張り速度:50mm/分)。この時4kg以上のピーリング強度がある場合、ラミネート接着性良好と判定した。また接着剤は、アロンエバーグリップ社製の主剤UR−1357と硬化剤HB−322を重量比100:3で混合したものを使用した。接着剤塗布量は乾燥前で100μmである。
(7)促進耐候性 :塗装板をJIS K5400−9.8.1に準じたサンシャインウエザーメーターで4000時間テスト後の光沢保持率を測定。評価は次のように表示した。
○:保持率85%以上
△:70%以上85%未満
×:70%未満
【0047】
【発明の効果】
本発明のアニオン型艶消し電着塗料および電着塗装方法を適用することにより、塗膜外観及び塗膜性能に優れ、特にラミネート材の接着性に秀でた塗膜を提供することが可能となった。
また用途としては、特にアルミニウム素材の意匠性を高めるための塗装に好適である。
Claims (6)
- (A)側鎖にカルボキシル基、水酸基,およびミクロゲル生成用の架橋官能基有するビニル共重合体100重量部に対し、(B)アミノ樹脂を30重量部から100重量部、および(C)水酸基含有α、β−エチレン性不飽和単量体と炭素数が4以上のアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを必須成分とし、水酸基価100〜300mgKOH/g固形分でかつ上記ビニル共重合体(A)の水酸基価よりも20mgKOH/g固形分以上高い高水酸基価ビニル共重合体を0.5重量部から60重量部を含有するアニオン型艶消し電着塗料組成物。
- ビニル共重合体(A)が、酸価10〜150mgKOH/g固形分および水酸基価20〜200mgKOH/g固形分である請求項1記載のアニオン型艶消し電着塗料組成物。
- ミクロゲル生成用の架橋官能基がアセトアセチル基である請求項1および2に記載のアニオン型艶消し電着塗料組成物。
- ミクロゲル生成用の架橋官能基がβ−メチル置換グリシジル基である請求項1および2に記載のアニオン型艶消し電着塗料組成物。
- ミクロゲル生成用の架橋官能基がアルコキシシリル基である請求項1および2に記載のアニオン型艶消し電着塗料組成物。
- 請求項1〜5記載のアニオン型艶消し電着塗料組成物を用いて電着塗装を行う電着塗装方法。
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