JP3918084B2 - 画像処理方法、撮影装置、撮影システム及びプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は画像処理方法及び撮影装置並びに撮影システムに係り、特に、デジタルカメラで撮影した画像について、ファイルサイズやシーン、プリント条件などに応じて最適な画像処理を行うための画像処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルスチルカメラで記録される画像の画質において、シャープネスは重要な役割を果たしている。そのシャープネスを上げるために、カメラ内やプリンタなどの画像出力装置内で輪郭強調を行う画像処理を行っている。しかし、撮影シーンは様々であり、シーンによってはその補正処理によって破綻をきたす場合がある。また、従来提供されているユーザによる画像補正手段のほとんどは、シャープネス可変パラメータを上下させる程度のものであり、自由度が少なかった。
【0003】
このような問題に対し、特開平9−161061号公報では、多重解像度画像を用いて処理の可能性及び柔軟性を広げ、撮影メニューと呼ばれる撮影条件や撮影方法に応じて強調すべき周波数帯を可変することにより、最適な画像処理を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、同公報に開示された方法においても、以下に示す場合(▲1▼〜▲4▼)に対処できないという課題がある。すなわち、▲1▼シャープネス処理が撮影条件による自動補正であるため、撮影者にとって必ずしも最適でない場合が起こり得る。▲2▼撮影後のファイルを後処理、あるいは関連して補正することができない。▲3▼画像出力する際のプリント方式やプリンタ機種、プリントサイズ、プリンタの周波数特性の方向依存性、その他条件に適した周波数処理が必要な場合に対処できない。▲4▼家庭での利用形態やシステム製品のように特定のデジタルスチルカメラとプリンタとが1セット固定で使用されるトータルシステムへの適用が想定されていない。
【0005】
また、上記公報以外にも、特開平11−298847号公報は、選択された撮影モードに応じて周波数処理を行うことで、好適な画質の撮影画像が得られるデジタルカメラを開示している。しかし、同公報に開示の技術も、撮影モードという撮影条件のみに依存して撮影時の画像処理を最適化するに止まり、プリント出力の最適化までは考慮されていない。
【0006】
特開平10−142675号公報は、プリント情報を記録可能なカメラを開示しているが、プリント情報はプリント枚数の指定に関する情報であって、画質を向上させるための画像処理については何も述べられていない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、多重解像度空間に変換された各周波数帯域ごとの画像(多重解像度画像)に対するゲインをパラメータファイルとして持つことを提案し、それによってデジタルスチルカメラに特化した出力ファイル別処理、シーン別処理、又はプリントなどの出力条件までも考慮したシャープネス処理が可能となる画像処理方法及び撮影装置並びに撮影システムを提供することを目的とする。また、同時に、ユーザの求める多様な処理に対応でき、かつ操作の簡易化が可能となる撮影装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る画像処理方法は、画像を多重解像度空間に変換することにより、前記画像を複数の周波数帯域ごとの多重解像度画像に分解する工程と、所望の画質再現を達成するように前記多重解像度画像の各画像に対して補正情報を設定する工程であって、画像出力装置による画像の出力条件に関連する情報に基づいて前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを決定する工程と、前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを規定したパラメータファイルを前記補正情報として保持する工程と、前記補正情報に従って前記多重解像度画像に補正処理を施す工程と、前記補正処理が施された多重解像度画像から逆変換を行い、処理済みの画像を得る工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数の周波数帯域ごとに分割された多重解像度画像のそれぞれについて補正情報を設定でき、多様な補正処理を実現できる。なお、画像出力装置には、プリンタや画像表示装置などがある。
【0010】
請求項2に記載の態様によれば、前記画像出力装置としてプリンタが用いられ、前記画像の出力条件に関連する情報は、プリンタの方式、プリンタ機種や画質設定の内容、プリントサイズ、プリント用紙の紙質、及びプリンタの周波数特性の方向依存性を示す情報のうち、少なくとも一つの情報を含むことを特徴としている。これにより、プリント時の出力に最適な画像処理を行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の態様によれば、前記補正情報は、前記画像出力装置による画像の出力条件に応じて、最適なシャープネス強調処理及び偽信号低減処理のうち少なくとも一方の処理を行うように設定されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る撮影装置は、上記方法発明を具現化する装置を提供するものである。すなわち、本発明の撮影装置は、被写体を撮像し、その光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段を介して取得された画像を多重解像度空間に変換することにより、前記画像を複数の周波数帯域ごとの多重解像度画像に分解する多重解像度分解処理手段と、所望の画質再現を達成するように前記多重解像度画像の各画像に対して補正情報を設定して保持する手段であって、画像出力装置による画像の出力条件に関連する情報に基づいて前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを決定し、前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを規定したパラメータファイルを前記補正情報として保持する補正情報保持手段と、前記補正情報に従って前記多重解像度画像の各画像に対して補正処理を施す補正処理手段と、前記補正処理が施された多重解像度画像から逆変換を行い、処理済みの画像を得る復元処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様として、請求項5に示したように、前記処理済みの画像を記録媒体に記録する記録手段を備えたデジタルスチルカメラとする態様がある。
また、請求項6に係る撮影装置は、前記記録媒体としてリムーバブルメディアが用いられるとともに、前記補正情報に関連する情報をリムーバブルメディアから読み込んで補正情報を自動設定する機能を備えていることを特徴としている。これにより、前記プリンタ情報が記録されたリムーバブルメディアを介して補正情報を自動設定でき、ユーザ操作の簡易化を実現できる。
【0014】
また、請求項7に係る撮影装置は、前記補正情報に関連する情報を前記撮影装置の外部から取り込む情報取込手段、及び前記補正情報に関連する情報をユーザ操作に従って入力可能な情報入力手段のうち少なくとも一方の手段を具備していることを特徴としている。補正情報に関連する情報は外部からダウンロードしてもよいし、ユーザが情報入力手段から入力してもよい。いずれの場合も、ユーザの要求に見合う多様な補正処理が可能となるが、特に、外部から読み込んだ情報に基づいて補正情報を自動設定する態様はユーザ操作を簡略化できる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項4から7に記載の撮影装置と、該撮影装置で取得された前記処理済みの画像を出力する画像出力装置とから構成される撮影システムであって、前記補正情報は、前記画像出力装置による画像の出力条件に関連する情報に基づいて、最適なシャープネス強調処理及び偽信号低減処理のうち少なくとも一方の処理を行うように決定されていることを特徴としている。本発明の撮影システムによれば、使用する画像出力装置の出力条件に合わせて、最適な周波数処理が可能となり、出力画像の最適化を達成できる。
【0016】
また、請求項9に示すように、上記撮影システムにおける画像出力装置として適用可能なプリンタにおいて、前記画像の出力条件に関連する情報として、当該プリンタの方式、プリンタ機種、画質設定の内容、プリントサイズ、プリント用紙の紙質、及びプリンタの周波数特性の方向依存性を示す情報のうち、少なくとも一つの情報を含むプリンタ情報をリムーバブルメディアに書き込む手段を具備する態様も好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る画像処理方法及び撮影装置並びに撮影システムの好ましい実施の形態について説明する。まず、多重解像度画像について特開平9−161061号公報を援用して概説する。同公報に記載されている通り、画像信号に対して周波数処理を施し、所定の周波数成分を強調する方法は従来から提案されている。フーリエ変換、ウェーブレット変換、サブバンド変換等により画像を多重解像度画像に変換することにより、画像を表す画像信号を複数の周波数帯域の信号に分解し、この分解された信号のうち、所望する周波数帯域の信号に対して強調等の画像処理を施す方法が提案されている。また、画像を多重解像度空間に変換する新たな手法としてラプラシアンピラミッドなる方法も提案されている(特開平5−244508号、特開平6−301766号)。
【0019】
ラプラシアンピラミッドは、原画像に対してガウス関数で近似されたようなマスクによりマスク処理を施した後、画像をサブサンプリングして画素数を間引いて半分にすることにより、原画像の1/4サイズのボケ画像を得る。このボケ画像のサンプリングされた画素に値が0の画素を補間して元の大きさの画像に戻し、この画像に対して更に上述したマスクによりマスク処理を施してボケ画像を得る。そして、当該ボケ画像を原画像から減算して原画像の所定の周波数帯域を表す細部画像を得る。
【0020】
上記処理を得られたボケ画像に対して繰り返すことにより原画像の1/22Nの大きさのボケ画像をN個作成するものである。ガウス関数で近似されたようなマスクによりマスク処理を施した画像に対してサンプリングを行っているため、実際にはガウシアンフィルタを用いているが、ラプラシアンフィルタをかけた場合と同様の処理済み画像が得られる。そしてこのように原画像サイズの画像から順に1/22Nの大きさの低周波数帯域の画像が得られるため、この処理の結果得られた画像はラプラシアンピラミッドと呼ばれる。
【0021】
このようにして得られたラプラシアンピラミッドの全ての周波数帯域の画像に対して強調処理を施し、この強調処理が施された各周波数帯域の画像を逆変換して処理済み画像を得る方法が特開平5−244508号及び特開平6−301766号に記載されている。
【0022】
以下に述べる本発明の実施形態においては、上述のラプラシアンピラミッドの手法により画像信号を多重解像度画像に分解するものとする。
【0023】
図1は、本実施形態に係るデジタルスチルカメラ(DSC)のブロック図である。カメラ10の光学系ユニット12は、撮影レンズとシャッター兼用絞り機構を含む。撮影レンズは、単焦点レンズでもよいし、ズームレンズ等の焦点距離可変のものでもよい。撮影レンズを通過した光は、絞りによって光量が調節された後、撮像デバイス14に入射する。撮像デバイス14には、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなど種々のデバイスを適用できる。
【0024】
撮像デバイス14の受光面には、フォトセンサが平面的に配列されており、該受光面に結像された被写体像は、各フォトセンサによって入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。駆動回路16は撮像デバイスドライバを含み、CPU20の指令に従って発生されるタイミング信号に基づいて撮像デバイス14を作動させる。また、駆動回路16は、光学系ユニット12内の撮影レンズ及びシャッター兼用絞り機構の駆動回路を備えたブロックであり、CPU20の指令に従って撮影レンズ及びシャッター兼用絞り機構を作動させる。
【0025】
撮像デバイス14の各フォトセンサに蓄積された信号電荷は、駆動回路16から与えられるパルスに基づいて信号電荷に応じた電圧信号(画像信号)として順次読み出され、アナログ信号処理部22に送られる。アナログ信号処理部22はサンプリングホールド回路、色分離回路、ゲイン調整回路等の信号処理回路を含み、このアナログ信号処理部22において、相関二重サンプリング(CDS)処理並びにR,G,Bの各色信号に色分離処理され、各色信号の信号レベルの調整(プリホワイトバランス処理)が行われる。
【0026】
アナログ信号処理部22から出力された信号は、A/D変換器24によりデジタル信号に変換された後、デジタル信号処理部26に送られる。デジタル信号処理部26は、輝度・色差信号生成回路、多重解像度分解処理回路、ガンマ補正回路、シャープネス補正回路、コントラスト補正回路、ホワイトバランス補正回路等を含む画像信号処理手段であり、CPU20からのコマンドに従って画像信号を処理する。
【0027】
デジタル信号処理部26に入力された画像データは、輝度信号(Y信号)及び色差信号(Cr,Cb 信号)に変換され、多重解像度画像を利用した強調処理、偽信号低減処理、ガンマ補正等の所定の処理が施される。パラメータファイル(PF)格納部28には、多重解像度分解によって得られた各帯域の画像に対するゲインを規定したパラメータファイルが格納されている。パラメータファイルのデータは、カメラ10に着脱自在なメモリカード等の記録媒体40からロードすることができ、又はユーザが操作部42から所定の操作手順に従って入力することができる。
【0028】
デジタル信号処理部26は、パラメータファイルに記述されているゲイン(以下、必要に応じて「PFゲイン」と呼ぶ。)の設定内容に従って多重解像度画像の補正処理を行い、補正後のデータから復元処理を行って所望画質の画像を得る。画像処理の詳細については図2及び図3を用いて後述する。こうして、デジタル信号処理部26で得られた画像データはメモリ30に格納される。撮影画像を表示出力する場合、メモリ30から画像データが読み出され、表示用信号処理部32へ送られる。表示用信号処理部32は、入力された画像データを表示用の所定方式に従った映像信号に変換し、得られた映像信号を液晶モニタ(LCD)その他の表示デバイス34に出力する。
【0029】
撮像デバイス14から取り込んだ画像信号によってメモリ30内の画像データが定期的に書き換えられ、その画像データから生成される映像信号が表示デバイス34に供給されることにより、表示デバイス34には撮影映像がリアルタイムに表示される。
【0030】
シャッタースイッチ36が押下されると、撮影開始指示(レリーズON)信号が発せられる。CPU20は、レリーズON信号を検知して記録用の撮像動作を実行する。すなわち、CPU20は、レリーズON信号の受け付けに応動して駆動回路16を制御し、記録用の画像データの取り込みを開始するとともに、圧縮伸張回路38にコマンドを送る。これにより圧縮伸張回路38は、メモリ30上の画像データをJPEGその他の所定の形式に従って圧縮する。
【0031】
圧縮された画像データは、記録媒体40に記録される。記録媒体40は、メモリカードその他のリムーバブルメディアであってもよいし、カメラ10に内蔵されたメモリ(内蔵メモリ)であってもよい。内蔵メモリに画像を保存する態様の場合、データをパソコン等の外部機器に転送するための通信用インターフェースが設けられる。
【0032】
再生モード時には、記録媒体40から画像データが読み出され、読み出された画像データは、圧縮伸張回路38によって伸張処理された後、メモリ30を介して表示デバイス34に再生出力される。
【0033】
CPU20はカメラ10の制御部であり、シャッタースイッチ36をはじめ、操作部42に含まれるモード選択スイッチ、十字ボタン、メニューボタンなど各操作スイッチ等から受入する入力信号に基づき、対応する回路の動作を制御し、表示デバイス34における表示の制御、オートフォーカス(AF)制御、自動露出(AE)制御及び記録処理の制御などの制御を行う。CPU20は、シャッタースイッチ36の「半押し」操作に応動して取り込んだ画像データから焦点評価演算やAE演算などの各種演算を行い、その演算結果に基づいて駆動回路16を制御して撮影レンズを合焦位置に移動させる一方、シャッター兼用絞り機構を制御するとともに、撮像デバイス14の電荷蓄積時間を制御する。
【0034】
図2は、デジタル信号処理部26における画像処理の流れを示したブロック図である。同図に示すように、デジタル信号処理部26に入力された画像は輝度・色差信号(Y,Cr,Cb )に変換された後、Y,Cr ,Cb それぞれの信号は多重解像度画像に分割される。本例では各信号について3つの画像に分割されるものとするが、それぞれの分割数(多重数)は、使用される出力機器の特性など出力条件に応じて変更することが好ましい。
【0035】
Y信号は、周波数帯域ごとにYf1, Yf2, Yf3の3画像に分割され、Cr 信号はCrf1,Crf2,Crf3 に分割され、Cb 信号はCbf1,Cbf2,Cbf3 に分割される。こうして、分割された各画像に対してゲイン処理が行われる。各ゲインはパラメータファイルによって設定されており、設定されているゲイン値に従ってゲイン処理が施される。そして、ゲイン処理が施された各周波数帯域の画像を逆変換して復元することにより、最適な処理画像が出力される。
【0036】
図3には、パラメータファイルに記述されるゲイン設定の例が示されている。同図(a)はY信号について分割された多重解像度画像Yf1, Yf2, Yf3に対するゲイン値のグラフ、同図(b)はCr 信号について分割された多重解像度画像Crf1,Crf2,Crf3 に対するゲイン値のグラフ、同図(c)はCb 信号について分割された多重解像度画像Cbf1,Cbf2,Cbf3 に対するゲイン値のグラフである。
【0037】
図3に示したように多重解像度画像のそれぞれのゲインを設定すると、シャープネス感を向上させ、色彩度も上げることができる一方で、ノイズを抑制することができる。すなわち、輝度(Y)信号に関して、中周波から高周波にかけてゲインを大きくすることによって、シャープネス感を上げ、色差(Cr ,Cb)信号については、低周波のゲインを大きくして彩度を上げるとともに、高周波側にかけてゲインを小さくすることによってノイズを低下させる効果がある。
【0038】
パラメータファイルは、目標とする画質に応じて適宜変更される。パラメータファイルの内容は、プリンタ等の出力機器から必要な情報をダウンロードすることによって自動設定される。また、パソコンなどによってユーザが独自にパラメータファイルを作成することも可能であり、作成されたパラメータファイルはリムーバブルメディアや通信インターフェースを通じてカメラ10にダウンロードできる。
【0039】
具体的には、撮影画像を出力する手段として指定されている出力機器の特性に合わせて、最適なゲイン設定を行う態様が好ましい。出力機器にプリンタを用いる場合、プリンタの出力条件を考慮してゲイン設定を行う。プリンタの出力条件としては、プリンタの方式(インクジェット方式、サーモオートクローム方式など) 、プリンタ機種や設定(解像度、ガンマなど)、プリントサイズ、プリント用紙の紙質(光沢性など)、プリンタの周波数特性の方向依存性などを考慮する。
【0040】
プリント方式を考えると、例えば、インクジェット方式はノイズなどが誤差拡散によって目立ち難い場合があるので、多重解像度画像の高周波成分にあたる部分のゲインを大きく設定することができ、シャープネスを向上させることが可能になる。
【0041】
プリンタの機種や設定を考えると、使用するプリンタが上位機種であるか、下位機種であるかの別、あるいは高画質モード/通常モードなどの必要画質によって多重解像度画像のゲインを可変する。例えば、通常画質のモードでは三段階多重解像度分割を行い、高画質のモードでは更に多数の複数段階多重解像度に分割する態様がある。
【0042】
プリントサイズを考えると、プリントサイズが小さければ、多重解像度画像の高周波成分にあたる部分のPFゲインは小さく、低周波から中周波にかけてのPFゲインを大きく設定する。プリントサイズが大きい場合は、これと逆に高周波帯域に高いゲインをかけてシャープネスを高める。
【0043】
プリント用紙の紙質を考えると、光沢度によって解像感が変わってくるので、高光沢紙を使用する場合には、多重解像度の高周波成分にあたる部分のPFゲインを大きく、低中周波にかけてのPFゲインを小さく設定する。低光沢紙を使用する場合は、これと逆に高周波成分にあたる部分のPFゲインを小さく、低中周波にかけてのPFゲインを大きく設定する。
【0044】
プリンタの周波数特性の方向依存性を考えると、プリンタによっては特定の方向(例えば、斜め方向)の周波数特性が弱い(その方向に関する鮮鋭度が悪い)ものがある。かかる性質を有するプリンタを使用する場合は、事前にその方向を強めに補正するようにPFゲインを設定する。特定の方向について周波数特性が強い場合は、これと逆に設定する。
【0045】
次に、上記の如く構成されたデジタルカメラの動作について説明する。図4は、カメラ10の動作手順を示すフローチャートである。まず、ユーザはカメラ10のパワースイッチを操作するなどしてカメラ電源をONにする(ステップS410)。その後、ユーザは画像の出力機器として使用するプリンタの出力条件に関する情報(プリンタ情報という。)をカメラ10のパラメータファイルに設定する(ステップS412)。プリンタ情報は、操作部42を操作して直接入力してもよいし、メモリカードなどの記録媒体40からロードしてもよい。
【0046】
こうして、プリンタ情報がカメラ10のパラメータファイルに書き込まれる。カメラ10は、読み込んだプリンタ情報を基にして多重解像度画像に対するゲインデータを生成し、そのゲイン情報をパラメータファイルとして保持する。
【0047】
ユーザがシャッタースイッチ36を押下すると(ステップS414)、記録用の画像取り込み(露光)が行われる。この撮影動作によって得られた画像信号の処理過程においてパラメータファイルが参照され、最適なゲインが設定される。
【0048】
撮影画像のシャープネスは、シーンによって最適化されることは勿論のこと、プリンタ情報に基づいて最適なパラメータファイルが設定されることにより、プリンタ出力に適した周波数処理を実現できる。こうして、適切に画像処理された画像が記録媒体40に記録される。なお、カメラ10内にパラメータファイルを保持しているため、記録画像に対してどのような補正処理が施されているかを把握できる。そのため、撮影後の画像補正処理も容易である。
【0049】
また、補正項目として、例えば、コントラストの高い部分に発生する偽色やモアレの低減処理を考えると、パラメータファイルは、画像(Y信号)に対して多重解像度画像を持たせることによって、偽色の発生しやすい高周波成分ではPFゲインを小さく、色の大部分を示す低中波成分ではPFゲインを大きく設定する。同様に、輝度・色差信号(YCC)処理におけるCr Cb の色成分に対して多重解像度画像を持たせることによって、偽色の発生しやすい高周波成分ではPFゲインを小さく設定し、色の大部分を示す低中周波成分ではPFゲインを大きく設定する。
【0050】
上記説明では、輝度・色差信号(Y,Cr,Cb )について多重解像度画像に分割する例を述べたが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、R(赤),G(緑),B(青)や他の色空間についても同様に適用できる。
【0051】
本発明によれば、プリンタや画像表示装置などの出力デバイスに応じて、適切な周波数帯域について必要なゲイン処理を行うことができ、最適な画像出力を得ることができる。
【0052】
多重解像度画像に対するゲインをパラメータファイルとして保有したことにより、シャープネス処理の高性能化を達成できるとともに、ユーザの要求に応え得る多様な処理の実現と操作の簡易化を達成できる。これにより、プリントなどの最終的な画像出力条件までも考慮した最適なシャープネス処理が可能となる。
【0053】
次に、デジタルスチルカメラとプリンタとを組み合わせたシステムについて説明する。一般の家庭では、所有しているデジタルカメラとプリンタの機種は特定されており、使用する機器の組合せ関係が固定である場合が多い。また、街頭などに設置されるセルフ撮影式の証明写真装置のようなシステム製品においても、カメラ(撮影部)とプリンタ(印刷部)の組合せ関係は固定であり、一つの系として閉じている。
【0054】
このように、入力デバイスとしてのカメラと、出力デバイスとしてのプリンタを1セットで固定的に使用するシステムについて、本発明を適用することにより、出力デバイスでの画像出力を最適化したシステムを実現できる。
【0055】
図5は、デジタルカメラとプリンタとから構成されるシステムのブロック図である。図5中図1と共通する部分には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0056】
プリンタ60は、制御部としてのCPU62と、記録媒体64から取り込んだ画像データを処理するデジタル信号処理部66と、処理データの格納やCPU62の作業用領域等として使用されるメモリ68と、プリンタヘッド70と、該プリンタヘッド70の駆動回路72と、を備えている。
【0057】
プリンタ60の種類としては、インクジェット方式のプリンタ、サーモオートクローム(TA)方式のプリンタ、昇華型プリンタなど、様々な方式のプリンタを適用できる。使用されるプリンタの形態に応じてプリンタヘッド70及びその駆動回路72の具体的構成は異なる。例えば、インクジェット方式のプリンタの場合、プリンタヘッド70にはインク噴射部が含まれる。プリント用紙74には、光沢紙、高画質専用紙、普通紙、又はシール用紙(用紙の裏面に粘着剤を有し、この裏面に対して剥離可能な台紙が貼付されてなる用紙)など種々のタイプを用いることができ、所定サイズに切断されているカット紙であってもよいし、ロール紙などの連続用紙であってもよい。
【0058】
プリンタ60の記録媒体64は、カメラ10と同様に、内蔵メモリを用いる態様と、メモリカードなどのリムーバブルメディアを用いる態様とがある。カメラ10の記録媒体40として内蔵メモリが用いられる場合には、プリンタ60側の記録媒体64も内蔵メモリが用いられる。この場合、カメラ10とプリンタ60は、USB、IEEE1394その他の所定の通信インターフェースを介して通信可能に接続され、カメラ10からプリンタ60へ画像データ等の受け渡しが行われる。
【0059】
その一方、カメラ10の記録媒体40としてリムーバブルメディアが用いられる場合には、当該記録媒体40がプリンタ60のメディアインターフェースに装着される。この場合、記録媒体64は記録媒体40と同一のものとなる。なお、証明写真装置などのシステム製品の場合には、記録媒体40、64として共通の内蔵メモリを用い、CPU20、62も共通のCPUで構成できる。
【0060】
プリンタ60がリムーバブルメディア装着用のインターフェースを具備している態様においては、当該プリンタ60によって記録媒体64を初期化する時に、プリント出力に関する情報(プリンタ情報)が記録媒体64に書き込まれる。プリンタ情報が記録媒体64に書き込まれるタイミングは、記録媒体64の初期化時に限定されない。ユーザが必要に応じて随時、所定の操作を行うことによって、プリンタ情報を記録媒体62に書き込むことも可能である。また、パソコン(PC)80などの外部装置によってプリンタ情報の入力操作も可能である。
【0061】
図6は、図5に示したシステムの動作例を示すフローチャートである。まず、プリンタ60のメディアインターフェース(カードスロット)に記録媒体64を装着し、この記録媒体64を初期化する。(ステップS610)。
【0062】
メディア初期化処理の工程において、当該記録媒体64のパラメータファイルにプリンタ情報が書き込まれる。次いで、初期化処理が完了した記録媒体64をカメラ10に装着する(ステップS612)。記録媒体64の中からプリンタ情報が読み出され、カメラ10内のパラメータファイルとしてPF格納部28に保存される。このとき、プリンタ情報に基づき、多重解像度画像の各ゲイン値データ等が生成される。
【0063】
その後、ユーザがシャッタースイッチ36を押下すると(ステップS614)、記録用の画像取り込み(露光)が行われる。この撮影動作によって得られた画像信号の処理過程においてパラメータファイルが参照され、最適なゲインが設定される。
【0064】
撮影画像のシャープネスは、シーンによって最適化されることは勿論のこと、プリンタ情報に基づいて最適なパラメータファイルが設定されることにより、プリント出力に適した処理を実現できる。こうして、適切に画像処理された画像が記録媒体40に記録される(ステップS616)。
【0065】
上述の説明では、プリンタ60によって記録媒体64を初期化すると同時にプリンタ情報が記録媒体64に書き込まれ、記録媒体64を介してPFゲインに自動設定される例を述べたが、カメラ10、パソコン80及びプリンタ60から成るシステムの場合は、パソコン80を介してプリンタ情報がカメラ10のPFゲインに自動設定される。
【0066】
また、上記実施の形態では、画像出力装置としてプリンタを用いる場合を説明したが、画像出力装置として、CRT表示装置、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの画像表示装置を用いる態様も可能である。本発明を適用することで、画像表示装置の表示出力特性に応じて最適な表示を達成するように画像処理を行うことができる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、入力された画像について多重解像度画像に分解し、周波数帯域ごとに分けられたそれぞれの画像に対して補正情報を設定できるようにしたので、多様な補正処理を実現できる。特に、多重解像度画像の各画像に対するゲインをパラメータファイルとして保持したことにより、シャープネス処理の高性能化を達成でき、ユーザの求める多様な処理を実現できるとともに、操作の簡易化を達成できる。これにより、プリントなどの最終的な画像出力条件までも考慮した最適なシャープネス処理が可能となる。
【0068】
また、本発明によれば、特定の撮影装置と画像出力装置とを用いて画像の入力から出力までのトータルシステムを構成した場合、画像出力装置による画像再現に最適な信号処理が可能となり、システムの最適化を達成できる。
【0069】
本発明は、今後の高性能かつ高機能のデジタルスチルカメラの開発に貢献し得るとともに、証明写真装置などのシステム製品の性能向上にも貢献し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るデジタルスチルカメラのブロック図
【図2】図1中のデジタル信号処理部における画像処理の流れを示したブロック図
【図3】パラメータファイルに記述されるゲイン設定の例を示す図
【図4】本実施形態に係るカメラの動作手順を示すフローチャート
【図5】デジタルカメラとプリンタとから構成されるシステムのブロック図
【図6】図5に示したシステムの動作例を示すフローチャート
【符号の説明】
10…カメラ、12…光学系ユニット、14…撮像デバイス、20…CPU、24…A/D変換器、26…デジタル信号処理部、28…パラメータファイル(PF)格納部、34…表示デバイス、36…シャッタースイッチ、40…記録媒体、60…プリンタ、64…記録媒体、70…プリンタヘッド、80…パソコン
Claims (9)
- 画像を多重解像度空間に変換することにより、前記画像を複数の周波数帯域ごとの多重解像度画像に分解する工程と、
所望の画質再現を達成するように前記多重解像度画像の各画像に対して補正情報を設定する工程であって、画像出力装置による画像の出力条件に関連する情報に基づいて前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを決定する工程と、
前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを規定したパラメータファイルを前記補正情報として保持する工程と、
前記補正情報に従って前記多重解像度画像に補正処理を施す工程と、
前記補正処理が施された多重解像度画像から逆変換を行い、処理済みの画像を得る工程と、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。 - 前記画像出力装置としてプリンタが用いられ、
前記画像の出力条件に関連する情報は、当該プリンタの方式、プリンタ機種、画質設定の内容、プリントサイズ、プリント用紙の紙質、及びプリンタの周波数特性の方向依存性を示す情報のうち、少なくとも一つの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。 - 前記補正情報は、前記画像出力装置による画像の出力条件に応じて、最適なシャープネス強調処理及び偽信号低減処理のうち少なくとも一方の処理を行うように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理方法。
- 被写体を撮像し、その光学像を電気信号に変換する撮像手段と、
前記撮像手段を介して取得された画像を多重解像度空間に変換することにより、前記画像を複数の周波数帯域ごとの多重解像度画像に分解する多重解像度分解処理手段と、
所望の画質再現を達成するように前記多重解像度画像の各画像に対して補正情報を設定して保持する手段であって、画像出力装置による画像の出力条件に関連する情報に基づいて前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを決定し、前記多重解像度画像の各画像に対するゲインを規定したパラメータファイルを前記補正情報として保持する補正情報保持手段と、
前記補正情報に従って前記多重解像度画像の各画像に対して補正処理を施す補正処理手段と、
前記補正処理が施された多重解像度画像から逆変換を行い、処理済みの画像を得る復元処理手段と、
を備えたことを特徴とする撮影装置。 - 前記処理済みの画像を記録媒体に記録する記録手段を備えたデジタルスチルカメラであることを特徴とする請求項4に記載の撮影装置。
- 前記記録媒体としてリムーバブルメディアが用いられるとともに、前記補正情報に関連する情報をリムーバブルメディアから読み込んで補正情報を自動設定する機能を備えていることを特徴とする請求項5に記載の撮影装置。
- 前記補正情報に関連する情報を前記撮影装置の外部から取り込む情報取込手段、及び前記補正情報に関連する情報をユーザ操作に従って入力可能な情報入力手段のうち少なくとも一方の手段を具備していることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の撮影装置。
- 請求項4から7のいずれか1項に記載の撮影装置と、該撮影装置で取得された前記処理済みの画像を出力する画像出力装置とを備えた撮影システムであって、
前記補正情報は、前記画像出力装置による画像の出力条件に関連する情報に基づいて、最適なシャープネス強調処理及び偽信号低減処理のうち少なくとも一方の処理を行うように決定されていることを特徴とする撮影システム。 - 請求項8に記載の撮影システムにおける画像出力装置として適用可能なプリンタであって、
前記画像の出力条件に関連する情報として、当該プリンタの方式、プリンタ機種、画質設定の内容、プリントサイズ、プリント用紙の紙質、及びプリンタの周波数特性の方向依存性を示す情報のうち、少なくとも一つの情報を含むプリンタ情報をリムーバブルメディアに書き込む手段を具備していることを特徴とするプリンタ。
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