JP3917065B2 - 成形同時加飾装置および水平方向加飾シート送り装置 - Google Patents
成形同時加飾装置および水平方向加飾シート送り装置 Download PDFInfo
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂成形品の両面に加飾シートを用いて加飾を行うのに好適な成形同時加飾装置および水平方向加飾シート送り装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、樹脂成形品の表面を装飾する方法として、転写材などの加飾シートを利用した成形同時加飾法がある。
【０００３】
成形同時加飾法とは、基体シート上に、剥離層、図柄層、接着層などからなる転写層を形成した加飾シートを成形金型内に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、冷却して樹脂成形品を得るのと同時に成形品表面に加飾シートを接着した後、基体シートを剥離して、被転写物面に転写層を転移して装飾を行う方法である。成形同時加飾法は、印刷法によって直接図柄を形成することが困難な形状の成形品であっても図柄を形成することができるという特長を有する。
【０００４】
加飾シートを金型の所定の位置に供給するには、金型の上方に配置した長尺の加飾シートロールから加飾シートを巻き出し、金型の表面を通過して金型下方で転写済の基体シートを巻き取るように構成した加飾シート送り装置を用いる。このように垂直方向に供給される加飾シートの位置合わせは、加飾シートの送り量によって縦方向の位置合わせを行い、加飾シート送り装置そのものを横方向に移動させて横方向の位置合わせを行っていた（たとえば、特許文献１参照）。
【０００５】
【特許文献１】
特開昭６１−２９７１４９号公報
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
成形同時加飾法を用いて樹脂成形品の両面に加飾を行うには、射出成形用金型の固定型表面と可動型表面の双方にそれぞれ加飾シートを配置した後、型締めを行って金型間に２枚の加飾シートを挟み込み、次いで、２枚の加飾シートの間に溶融樹脂を射出し冷却して樹脂成形品を得るのと同時に成形品の両面に加飾シートを接着し、基体シートを剥離して、被転写物の両面に転写層を転移して加飾を行う。
【０００７】
しかし、樹脂成形品の両面に加飾を行うために、垂直方向に加飾シートを供給する２台の加飾シート送り装置を、固定金型側と可動金型側のそれぞれに設置すると、加飾シート送り装置どうしの設置スペースが干渉するため、より広い設置スペースが必要となってしまうという問題があった。
【０００８】
したがって、この発明は、上記のような欠点を解消し、設置スペースが狭い場合であっても加飾シート送り装置を配置することができる成形同時加飾装置および加飾シート送り装置を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
この発明の成形同時加飾装置および加飾シート送り装置は、上記の目的を達成するために、つぎのように構成した。
【００１１】
すなわち、この発明の成形同時加飾装置は、加飾シートを成形金型間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品表面に加飾シートを接着する成形同時加飾装置であって、加飾シートを垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置と、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置とを備えることを特徴とする成形同時加飾装置において、水平方向加飾シート送り装置が、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸をガイドローラー駆動手段により垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成した。
【００１２】
また、上記の発明において、一組のシートガイドローラが、加飾シートをシートガイドローラの表面に固定する加飾シートクランプを備えるように構成してもよい。
【００１３】
また、この発明の水平方向加飾シート送り装置は、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸を垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成した。
【００１４】
また、上記の発明において、一組のシートガイドローラが、加飾シートをシートガイドローラの表面に固定する加飾シートクランプを備えるように構成してもよい。
【００１５】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【００１６】
図１は、この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す正面図である。図２は、この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す上面図である。図３は、この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す正面図である。図４は、この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す側面図である。図５は、この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す断面図である。図６は、この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す平面図である。図７は、この発明の成形同時加飾装置によって形成した成形同時加飾成形品の一実施例を示す断面である。
【００１７】
図中、１０は水平方向加飾シート送り装置、１１はシート供給手段、１２はシート巻き取り手段、１３は第１シート幅センサ、１４は第２シート幅センサ、１５はシート長さセンサ、１６、１７は上流側シートガイドローラ、１８、１９は下流側シートガイドローラ、２０、２１は加飾シートクランプ、２２は上流側ガイドローラ駆動手段、２３は下流側ガイドローラ駆動手段、２４は上流側フレーム、２５は下流側フレーム、２６、２７は加飾シートクランプ駆動装置、３０は固定盤、３１は固定型、３２、３３はフィルムクランプ、３４はキャビティ、３７は加飾シート、４０は垂直方向加飾シート送り装置、４１はシート供給手段、４２はシート巻き取り手段、４３は第１シート幅センサ、４４は第２シート幅センサ、４５はシート長さセンサ、４６、４７は上流側シートガイドローラ、４８、４９、５０は下流側シートガイドローラ、５１は上流側フレーム、５２は下流側フレーム、５３、５４は案内レール、５５、５６はガイド、６０は可動盤、６１は可動型、６２、６３はフィルムクランプ、６４はキャビティ、６７は加飾シート、７１は基体シート、７２は剥離層、７３は図柄層、７４は接着層、７５は図柄、７６は送り方向マーク、７７は幅方向マーク、８０は成形同時加飾成形品、８１は樹脂成形品である。
【００１８】
この発明の成形同時加飾装置は、加飾シート３７、６７を固定型３１、可動型６１間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品８１の表面に加飾シート３７、６７を接着する成形同時加飾装置において、加飾シート６７を垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置４０と、加飾シート３７を水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置１０とを備えるように構成されている（図１〜４参照）。
【００１９】
金型は、基本的には固定型３１と可動型６１からなり、型閉じ状態、型開き状態にできると共に、固定型３１のキャビティ面３４と可動型６１のキャビティ面６４とによって形成されるキャビティ空間に溶融樹脂を射出できる構成となっている。樹脂成形品８１の両面に加飾を行うために、２枚の加飾シート３７、６７の間に溶融樹脂を射出する必要があるので、たとえば、成形品の側面にゲートを有するように構成するとよい。また、金型は、中間プレート（図示せず）、成形品突き出しプレート（図示せず）、フィルムクランプ３２、３３、６２、６３などの付随的な部材を備えるものであってもよい。
【００２０】
水平方向加飾シート送り装置１０は、加飾シート３７を水平方向に供給および巻取を行うものであり、たとえば、シート供給手段１１、シート巻き取り手段１２、第１シート幅センサ１３、第２シート幅センサ１４、シート長さセンサ１５、上流側シートガイドローラ１６、１７、下流側シートガイドローラ１８、１９、上流側ガイドローラ駆動手段２２、下流側ガイドローラ駆動手段２３、制御手段（図示せず）を備えるものである（図１〜２参照）。
【００２１】
シート供給手段１１は、加飾シート３７が金型３１表面に位置するように供給するものであり、長尺の加飾シート３７が巻き取られたリールが、成形機の固定盤３０（固定側プラテン）に取り付けられた上流側フレーム２４に支持されたものである。供給された加飾シート３７に適切な張力を付与するため、リールの軸にパウダークラッチ（図示せず）を設けるように構成してもよい。
【００２２】
シート供給手段１１から供給された加飾シート３７を金型３１のキャビティ３４面に導くため、上流側フレーム２４には、任意の数の上流側シートガイドローラ１６、１７が支持される。金型に最も近く配置される加飾シート３７を支持する上流側シートガイドローラ１６は、上流側ガイドローラ駆動手段２２により垂直方向に移動可能に構成する。上流側ガイドローラ駆動手段２２としては、たとえば、ボールねじをサーボモータやステップモータで回転させて上流側シートガイドローラ１６の軸を上下させる構成や、エアシリンダを用いて上流側シートガイドローラ１６の軸を上下させる構成などを採用することができる。
【００２３】
シート巻き取り手段１２は、金型表面に位置する加飾シート３７を巻き取るものであり、加飾シート３７が巻き取られたリールが固定盤３０に取り付けられた下流側フレーム２５に支持されたものである。供給された加飾シート３７に適切な張力を付与するため、リールの駆動にＤＣサーボモータを用いるように構成してもよい。
【００２４】
金型のキャビティ３４面を通過した加飾シート３７をシート巻き取り手段１２に導くため、下流側フレーム２５には、任意の数の下流側シートガイドローラ１８、１９が支持される。金型に最も近く配置される加飾シート３７を支持する下流側シートガイドローラ１８は、下流側ガイドローラ駆動手段２３により垂直方向に移動可能に構成する。下流側ガイドローラ駆動手段２３は、上流側ガイドローラ駆動手段２２と同様に構成することができる。
【００２５】
加飾シート３７、６７としては、転写材を用いる。転写材は、基体シート７１上に、剥離層７２、図柄層７３、接着層７４などからなる転写層が設けられたものである（図５参照）。基体シート７１からの転写層の剥離性がよい場合には、基体シート７１上に転写層を直接設ければよい。基体シート７１からの転写層の剥離性を改善するために、基体シート７１上に転写層を設ける前に、離型層（図示せず）を全面的に形成してもよい。図柄層７３は、図柄７５や送り方向マーク７６、幅方向マーク７７などを表現するための層である。図柄層７３は、剥離層７２の上に印刷層や金属薄膜層などで形成する。また、金属薄膜層を設ける際に、他の転写層と金属薄膜層との密着性を向上させるために、アンカー層（図示せず）を設けてもよい。接着層７４は、樹脂成形品８１の表面に上記の各層を接着するための層である。
【００２６】
加飾シート３７、６７に形成された図柄７５を、金型３１、６１のキャビティ形状３１に位置合わせするために、加飾シート３７、６７は、各図柄７５から一定間隔で図柄７５ごとに点状に形成される送り方向マーク７６（アイマークともいう）と、各図柄７５から一定間隔で線上に形成される幅方向マーク７７（フローラインともいう）とを有するように構成する（図６参照）。
【００２７】
金型の上流側には、シート長さセンサ１５と第１シート幅センサ１３とを配置する。また、金型の下流側には、第２シート幅センサ１４を配置する。
【００２８】
加飾シート３７は、シート供給手段１１から供給され、上流側シートガイドローラ１６、１７を通り、金型のキャビティ面３４を通過し、下流側シートガイドローラ１８、１９を通り、シート巻き取り手段１２に巻き取られる。
【００２９】
水平方向（加飾シート３７の送り方向）への加飾シート３７の供給は、加飾シート３７に形成された図柄７５が、金型のキャビティ形状３４に対して所定の位置に配置されるようにするため、間欠的に送り出される。
【００３０】
まず、サイクルスタートの信号が入力されると、上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８が機械原点に復帰し、水平方向の送りが開始される。
【００３１】
送り方向マーク７６の一端がシート長さセンサ１５により検出されると加飾シート３７の供給速度を小さくし、送り方向マーク７６の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート３７を供給した後、停止させる。
【００３２】
次いで、垂直方向（加飾シート３７の幅方向）に加飾シート３７を移動させる。上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８をそれぞれ上流側ガイドローラ駆動手段２２および下流側ガイドローラ駆動手段２３によって垂直方向に移動させることによって、金型のキャビティ面３４に配置された加飾シート３７を垂直方向に移動させ、幅方向マーク７７の一端が第１シート幅センサ１３および第２シート幅センサ１４により検出されると加飾シート３７の移動速度を小さくし、幅方向マーク７７の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート３７を移動させた後、停止させる。なお、垂直方向の位置合わせにおいて、第１シート幅センサ１３および第２シート幅センサ１４の２つのセンサを用いるのは、加飾シート３７の傾きを調整するためである。
【００３３】
また、加飾シート３７を上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８の表面に固定する棒状の加飾シートクランプ２０、２１を備えるようにし、加飾シート３７が水平方向に移動する際には解放状態とし、加飾シート３７を垂直方向に移動させる際には挟持状態として、より確実に加飾シート３７を垂直方向に移動させるように構成してもよい。加飾シートクランプ２０、２１は、エアシリンダなどの加飾シートクランプ駆動装置２６、２７を用いて駆動するように構成することができる。
【００３４】
制御手段（図示せず）は、水平方向加飾シート送り装置１０が備える各手段を上記したように作用させるためのものである。
【００３５】
このように、垂直方向の加飾シート３７の位置合わせを、一組のシートガイドローラ１６、１８を垂直方向に移動させることによって行うように構成することにより、わずかな駆動力によって位置合わせを行うことが可能になる。なお、上流側フレーム２４および下流側フレーム２５を垂直方向に移動させると、水平方向加飾シート送り装置１０の大半の重量を上下動させることとなり、そのためには水平方向加飾シート送り装置１０が大きな駆動力と強度とを備える必要があり、垂直方向に加飾シートを供給する加飾シート送り装置４０と比べて大がかりなものとなってしまう。
【００３６】
垂直方向加飾シート送り装置４０は、加飾シート６７を垂直方向に供給および巻取を行うものであり、たとえば、シート供給手段４１、シート巻き取り手段４２、第１シート幅センサ４３、第２シート幅センサ４４、シート長さセンサ４５、上流側シートガイドローラ４６、４７、下流側シートガイドローラ４８、４９、５０、上流側フレーム駆動手段（図示せず）、下流側フレーム駆動手段（図示せず）、制御手段（図示せず）を備えるものである（図３〜４参照）。
【００３７】
シート供給手段４１は、加飾シート６７を金型６１表面に位置するように供給するものであり、長尺の加飾シート６７が巻き取られたリールが、横方向に移動可能に成形機の可動盤６０（可動側プラテン）に取り付けられた上流側フレーム５１に支持されたものである。供給された加飾シート６７に適切な張力を付与するため、リールの軸にパウダークラッチ（図示せず）を設けるように構成してもよい。また、上流側フレーム５１を可動盤６０に対して横方向に移動可能にするためには、たとえば、案内レール５３とガイド５５とを組み合わせ、上流側フレーム駆動手段（図示せず）により移動させるように構成するとよい。
【００３８】
シート供給手段４１から供給された加飾シート６７を金型のキャビティ面６４に導くため、上流側フレーム５１には、任意の数の上流側シートガイドローラ４６、４７が支持される。
【００３９】
シート巻き取り手段４２は、金型６１表面に位置する加飾シート６７を巻き取るものであり、加飾シート６７が巻き取られたリールが横方向に移動可能に成形機の可動盤６０に取り付けられた下流側フレーム５２に支持されたものである。供給された加飾シート６７に適切な張力を付与するため、リールの駆動にＤＣサーボモータを用いるように構成してもよい。下流側フレーム５２を可動盤６０に対して横方向に移動可能にするためには、たとえば、案内レール５４とガイド５６とを組み合わせ、上流側フレーム駆動手段（図示せず）により移動させるように構成するとよい。
【００４０】
金型のキャビティ面６４を通過した加飾シート６７をシート巻き取り手段４２に導くため、下流側フレーム５２には、任意の数の下流側シートガイドローラ４８、４９、５０が支持される。
【００４１】
加飾シート６７に形成された図柄７５を、金型のキャビティ形状６４に位置合わせするために、加飾シート６７は、各図柄７５から一定間隔で図柄７５ごとに点状に形成される送り方向マーク７６と、各図柄７５から一定間隔で線上に形成される幅方向マーク７７とを有するように構成する。
【００４２】
金型の上流側には、シート長さセンサ４５と第１シート幅センサ４３とを配置する。また、金型の下流側には、第２シート幅センサ４４を配置する。
【００４３】
加飾シート６７は、シート供給手段４１から供給され、上流側シートガイドローラ４６、４７を通り、金型のキャビティ面６４を通過し、下流側シートガイドローラ４８、４９、５０を通り、シート巻き取り手段４２に巻き取られる。
【００４４】
垂直方向（加飾シート６７の送り方向）への加飾シート６７の供給は、加飾シート６７に形成された図柄７５が、金型のキャビティ形状６４に対して所定の位置に配置されるようにするため、間欠的に送り出される。
【００４５】
まず、サイクルスタートの信号が入力されると、上流側フレーム５１および下流側フレーム５２が機械原点に復帰し、垂直方向の送りが開始される。
【００４６】
送り方向マーク７６の一端がシート長さセンサ４５により検出されると加飾シート６７の供給速度を小さくし、送り方向マーク７６の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート６７を供給した後、停止させる。
【００４７】
次いで、水平方向（加飾シート６７の幅方向）に加飾シート６７を移動させる。上流側フレーム５１および下流側フレーム５２をそれぞれ上流側フレーム駆動手段（図示せず）および下流側フレーム駆動手段（図示せず）によって水平方向に移動させることによって、加飾シート６７の金型のキャビティ面６４に配置された箇所を水平方向に移動させ、幅方向マーク７７の一端が第１シート幅センサ４３および第２シート幅センサ４４により検出されると加飾シート６７の移動速度を小さくし、幅方向マーク７７の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート６７を移動させた後、停止させる。水平方向の位置合わせにおいて、第１シート幅センサ４３および第２シート幅センサ４４の２つのセンサを用いるのは、加飾シート６７の傾きを調整するためである。
【００４８】
制御手段は、垂直方向加飾シート送り装置４０が備える各手段を上記したように作用させるためのものである。
【００４９】
水平方向加飾シート送り装置１０と垂直方向加飾シート送り装置４０とを用いて加飾シート３７、６７の位置決めが完了した後、固定型３１と可動型６１に対して加飾シート３７、６７をそれぞれ密着させる。加飾シート３７、６７を金型に密着させるには、フィルムクランプ３２、３３、６２、６３を用いるとよい。また、金型に吸引孔（図示せず）を設け、加飾シート３７、６７を吸引するように構成してもよい。また、加飾シート３７、６７を金型に密着させる際に、加飾シート３７、６７を加熱して軟化させるように構成してもよい。加熱手段としては、温度８０〜２６０℃程度に加熱することができる電熱式のヒータ（図示せず）などを用いるとよい。
【００５０】
また、加飾シートクランプ２０、２１を用いて上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８の表面に加飾シート３７を固定した場合は、加飾シート３７を金型に密着させた後に、加飾シートクランプ２０、２１を解放させる。
【００５１】
次いで、固定型３１と可動型６１の型締めを行う。その後、固定型３１に設けたゲート（図示せず）から溶融樹脂を金型３１、６１内に射出充満させ、樹脂成形品８１を形成するのと同時にその両面に加飾シート３７、６７を接着させる。
【００５２】
溶融樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ＡＢＳ樹脂、ＡＳ樹脂、ＡＮ樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂や、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。
【００５３】
被転写物である樹脂成形品８１を冷却した後、金型３１、６１を開き、加飾シート３７、６７の基体シート７１を剥離し、樹脂成形品８１を取り出す。このようにして、樹脂成形品８１の両面に転写層が転移した成形同時加飾成形品８０を得ることができる（図７参照）。
【００５４】
成形同時加飾装置において、加飾シート６７を垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置４０と、加飾シート３７を水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置１０とを備えるように構成することにより、垂直方向加飾シート送り装置４０のシート供給手段４１とシート巻き取り手段４２が金型の上下に配置され、水平方向加飾シート送り装置１０のシート供給手段１１とシート巻き取り手段１２が金型の左右に配置されることになり、２台の加飾シート送り装置を用いて樹脂成形品の両面に加飾を行う場合、加飾シート送り装置の設置スペースが干渉することを防止することができる。
【００５５】
なお、上記の説明では、固定盤３０に水平方向加飾シート送り装置１０を配置し、可動盤６０に垂直方向加飾シート送り装置４０を配置したが、固定盤３０に垂直方向加飾シート送り装置４０を配置し、可動盤６０に水平方向加飾シート送り装置１０を配置してもよい。
【００５６】
また、固定盤３０に水平方向加飾シート送り装置１０のみを配置し、成形品の片面にのみ成形同時加飾を行うように構成してもよい。また、可動盤６０に水平方向加飾シート送り装置１０のみを配置し、成形品の片面にのみ成形同時加飾を行うように構成してもよい。このように構成することにより、成形品の片面にのみ成形同時加飾を行う場合、成形同時加飾装置の上方や前後方向に加飾シート送り装置の設置スペースの余裕が少ない場合であっても対応可能になる。
【００５７】
また、加飾シート３７、６７として、インサート材を用いることもできる。インサート材は、樹脂成形品８１に加飾シート３７、６７を接着した後、基体シート７１を剥離しないため、その層構成は、剥離層７２を備えない点において転写材と異なる。また、成形後に加飾シート３７、６７を巻き取ることができるようにするために、金型内で加飾シート３７、６７を打ち抜くなどの処理を行うことが必要になる。
【００５８】
【発明の効果】
この発明は、以上のような構成を採るので、以下のような効果を奏する。
【００５９】
この発明の成形同時加飾装置は、加飾シートを成形金型間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品表面に加飾シートを接着する成形同時加飾装置において、加飾シートを垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置と、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置とを備えるように構成したので、成形同時加飾装置における加飾シート送り装置の設置スペースが狭い場合であっても加飾シート送り装置を配置することができる。
【００６０】
この発明の水平方向加飾シート送り装置は、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸を垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成したので、成形同時加飾装置における加飾シート送り装置の設置スペースが狭い場合であっても加飾シート送り装置を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す正面図である。
【図２】この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す上面図である。
【図３】この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す正面図である。
【図４】この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す側面図である。
【図５】この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図６】この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す平面図である。
【図７】この発明の成形同時加飾装置によって形成した成形同時加飾成形品の一実施例を示す断面である。
【符号の説明】
１０ 水平方向加飾シート送り装置
１１ シート供給手段
１２ シート巻き取り手段
１３ 第１シート幅センサ
１４ 第２シート幅センサ
１５ シート長さセンサ
１６、１７ 上流側シートガイドローラ
１８、１９ 下流側シートガイドローラ
２０、２１ 加飾シートクランプ
２２ 上流側ガイドローラ駆動手段
２３ 下流側ガイドローラ駆動手段
２４ 上流側フレーム
２５ 下流側フレーム
２６、２７ 加飾シートクランプ駆動装置
３０ 固定盤
３１ 固定型
３２、３３ フィルムクランプ
３４ キャビティ
３７ 加飾シート
４０ 垂直方向加飾シート送り装置
４１ シート供給手段
４２ シート巻き取り手段
４３ 第１シート幅センサ
４４ 第２シート幅センサ
４５ シート長さセンサ
４６、４７ 上流側シートガイドローラ
４８、４９、５０ 下流側シートガイドローラ
５１ 上流側フレーム
５２ 下流側フレーム
５３、５４ 案内レール
５５、５６ ガイド
６０ 可動盤
６１ 可動型
６２、６３ フィルムクランプ
６４ キャビティ
６７ 加飾シート
７１ 基体シート
７２ 剥離層
７３ 図柄層
７４ 接着層
７５ 図柄
７６ 送り方向マーク
７７ 幅方向マーク
８０ 成形同時加飾成形品
８１ 樹脂成形品
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂成形品の両面に加飾シートを用いて加飾を行うのに好適な成形同時加飾装置および水平方向加飾シート送り装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、樹脂成形品の表面を装飾する方法として、転写材などの加飾シートを利用した成形同時加飾法がある。
【０００３】
成形同時加飾法とは、基体シート上に、剥離層、図柄層、接着層などからなる転写層を形成した加飾シートを成形金型内に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、冷却して樹脂成形品を得るのと同時に成形品表面に加飾シートを接着した後、基体シートを剥離して、被転写物面に転写層を転移して装飾を行う方法である。成形同時加飾法は、印刷法によって直接図柄を形成することが困難な形状の成形品であっても図柄を形成することができるという特長を有する。
【０００４】
加飾シートを金型の所定の位置に供給するには、金型の上方に配置した長尺の加飾シートロールから加飾シートを巻き出し、金型の表面を通過して金型下方で転写済の基体シートを巻き取るように構成した加飾シート送り装置を用いる。このように垂直方向に供給される加飾シートの位置合わせは、加飾シートの送り量によって縦方向の位置合わせを行い、加飾シート送り装置そのものを横方向に移動させて横方向の位置合わせを行っていた（たとえば、特許文献１参照）。
【０００５】
【特許文献１】
特開昭６１−２９７１４９号公報
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
成形同時加飾法を用いて樹脂成形品の両面に加飾を行うには、射出成形用金型の固定型表面と可動型表面の双方にそれぞれ加飾シートを配置した後、型締めを行って金型間に２枚の加飾シートを挟み込み、次いで、２枚の加飾シートの間に溶融樹脂を射出し冷却して樹脂成形品を得るのと同時に成形品の両面に加飾シートを接着し、基体シートを剥離して、被転写物の両面に転写層を転移して加飾を行う。
【０００７】
しかし、樹脂成形品の両面に加飾を行うために、垂直方向に加飾シートを供給する２台の加飾シート送り装置を、固定金型側と可動金型側のそれぞれに設置すると、加飾シート送り装置どうしの設置スペースが干渉するため、より広い設置スペースが必要となってしまうという問題があった。
【０００８】
したがって、この発明は、上記のような欠点を解消し、設置スペースが狭い場合であっても加飾シート送り装置を配置することができる成形同時加飾装置および加飾シート送り装置を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
この発明の成形同時加飾装置および加飾シート送り装置は、上記の目的を達成するために、つぎのように構成した。
【００１１】
すなわち、この発明の成形同時加飾装置は、加飾シートを成形金型間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品表面に加飾シートを接着する成形同時加飾装置であって、加飾シートを垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置と、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置とを備えることを特徴とする成形同時加飾装置において、水平方向加飾シート送り装置が、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸をガイドローラー駆動手段により垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成した。
【００１２】
また、上記の発明において、一組のシートガイドローラが、加飾シートをシートガイドローラの表面に固定する加飾シートクランプを備えるように構成してもよい。
【００１３】
また、この発明の水平方向加飾シート送り装置は、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸を垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成した。
【００１４】
また、上記の発明において、一組のシートガイドローラが、加飾シートをシートガイドローラの表面に固定する加飾シートクランプを備えるように構成してもよい。
【００１５】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【００１６】
図１は、この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す正面図である。図２は、この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す上面図である。図３は、この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す正面図である。図４は、この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す側面図である。図５は、この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す断面図である。図６は、この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す平面図である。図７は、この発明の成形同時加飾装置によって形成した成形同時加飾成形品の一実施例を示す断面である。
【００１７】
図中、１０は水平方向加飾シート送り装置、１１はシート供給手段、１２はシート巻き取り手段、１３は第１シート幅センサ、１４は第２シート幅センサ、１５はシート長さセンサ、１６、１７は上流側シートガイドローラ、１８、１９は下流側シートガイドローラ、２０、２１は加飾シートクランプ、２２は上流側ガイドローラ駆動手段、２３は下流側ガイドローラ駆動手段、２４は上流側フレーム、２５は下流側フレーム、２６、２７は加飾シートクランプ駆動装置、３０は固定盤、３１は固定型、３２、３３はフィルムクランプ、３４はキャビティ、３７は加飾シート、４０は垂直方向加飾シート送り装置、４１はシート供給手段、４２はシート巻き取り手段、４３は第１シート幅センサ、４４は第２シート幅センサ、４５はシート長さセンサ、４６、４７は上流側シートガイドローラ、４８、４９、５０は下流側シートガイドローラ、５１は上流側フレーム、５２は下流側フレーム、５３、５４は案内レール、５５、５６はガイド、６０は可動盤、６１は可動型、６２、６３はフィルムクランプ、６４はキャビティ、６７は加飾シート、７１は基体シート、７２は剥離層、７３は図柄層、７４は接着層、７５は図柄、７６は送り方向マーク、７７は幅方向マーク、８０は成形同時加飾成形品、８１は樹脂成形品である。
【００１８】
この発明の成形同時加飾装置は、加飾シート３７、６７を固定型３１、可動型６１間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品８１の表面に加飾シート３７、６７を接着する成形同時加飾装置において、加飾シート６７を垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置４０と、加飾シート３７を水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置１０とを備えるように構成されている（図１〜４参照）。
【００１９】
金型は、基本的には固定型３１と可動型６１からなり、型閉じ状態、型開き状態にできると共に、固定型３１のキャビティ面３４と可動型６１のキャビティ面６４とによって形成されるキャビティ空間に溶融樹脂を射出できる構成となっている。樹脂成形品８１の両面に加飾を行うために、２枚の加飾シート３７、６７の間に溶融樹脂を射出する必要があるので、たとえば、成形品の側面にゲートを有するように構成するとよい。また、金型は、中間プレート（図示せず）、成形品突き出しプレート（図示せず）、フィルムクランプ３２、３３、６２、６３などの付随的な部材を備えるものであってもよい。
【００２０】
水平方向加飾シート送り装置１０は、加飾シート３７を水平方向に供給および巻取を行うものであり、たとえば、シート供給手段１１、シート巻き取り手段１２、第１シート幅センサ１３、第２シート幅センサ１４、シート長さセンサ１５、上流側シートガイドローラ１６、１７、下流側シートガイドローラ１８、１９、上流側ガイドローラ駆動手段２２、下流側ガイドローラ駆動手段２３、制御手段（図示せず）を備えるものである（図１〜２参照）。
【００２１】
シート供給手段１１は、加飾シート３７が金型３１表面に位置するように供給するものであり、長尺の加飾シート３７が巻き取られたリールが、成形機の固定盤３０（固定側プラテン）に取り付けられた上流側フレーム２４に支持されたものである。供給された加飾シート３７に適切な張力を付与するため、リールの軸にパウダークラッチ（図示せず）を設けるように構成してもよい。
【００２２】
シート供給手段１１から供給された加飾シート３７を金型３１のキャビティ３４面に導くため、上流側フレーム２４には、任意の数の上流側シートガイドローラ１６、１７が支持される。金型に最も近く配置される加飾シート３７を支持する上流側シートガイドローラ１６は、上流側ガイドローラ駆動手段２２により垂直方向に移動可能に構成する。上流側ガイドローラ駆動手段２２としては、たとえば、ボールねじをサーボモータやステップモータで回転させて上流側シートガイドローラ１６の軸を上下させる構成や、エアシリンダを用いて上流側シートガイドローラ１６の軸を上下させる構成などを採用することができる。
【００２３】
シート巻き取り手段１２は、金型表面に位置する加飾シート３７を巻き取るものであり、加飾シート３７が巻き取られたリールが固定盤３０に取り付けられた下流側フレーム２５に支持されたものである。供給された加飾シート３７に適切な張力を付与するため、リールの駆動にＤＣサーボモータを用いるように構成してもよい。
【００２４】
金型のキャビティ３４面を通過した加飾シート３７をシート巻き取り手段１２に導くため、下流側フレーム２５には、任意の数の下流側シートガイドローラ１８、１９が支持される。金型に最も近く配置される加飾シート３７を支持する下流側シートガイドローラ１８は、下流側ガイドローラ駆動手段２３により垂直方向に移動可能に構成する。下流側ガイドローラ駆動手段２３は、上流側ガイドローラ駆動手段２２と同様に構成することができる。
【００２５】
加飾シート３７、６７としては、転写材を用いる。転写材は、基体シート７１上に、剥離層７２、図柄層７３、接着層７４などからなる転写層が設けられたものである（図５参照）。基体シート７１からの転写層の剥離性がよい場合には、基体シート７１上に転写層を直接設ければよい。基体シート７１からの転写層の剥離性を改善するために、基体シート７１上に転写層を設ける前に、離型層（図示せず）を全面的に形成してもよい。図柄層７３は、図柄７５や送り方向マーク７６、幅方向マーク７７などを表現するための層である。図柄層７３は、剥離層７２の上に印刷層や金属薄膜層などで形成する。また、金属薄膜層を設ける際に、他の転写層と金属薄膜層との密着性を向上させるために、アンカー層（図示せず）を設けてもよい。接着層７４は、樹脂成形品８１の表面に上記の各層を接着するための層である。
【００２６】
加飾シート３７、６７に形成された図柄７５を、金型３１、６１のキャビティ形状３１に位置合わせするために、加飾シート３７、６７は、各図柄７５から一定間隔で図柄７５ごとに点状に形成される送り方向マーク７６（アイマークともいう）と、各図柄７５から一定間隔で線上に形成される幅方向マーク７７（フローラインともいう）とを有するように構成する（図６参照）。
【００２７】
金型の上流側には、シート長さセンサ１５と第１シート幅センサ１３とを配置する。また、金型の下流側には、第２シート幅センサ１４を配置する。
【００２８】
加飾シート３７は、シート供給手段１１から供給され、上流側シートガイドローラ１６、１７を通り、金型のキャビティ面３４を通過し、下流側シートガイドローラ１８、１９を通り、シート巻き取り手段１２に巻き取られる。
【００２９】
水平方向（加飾シート３７の送り方向）への加飾シート３７の供給は、加飾シート３７に形成された図柄７５が、金型のキャビティ形状３４に対して所定の位置に配置されるようにするため、間欠的に送り出される。
【００３０】
まず、サイクルスタートの信号が入力されると、上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８が機械原点に復帰し、水平方向の送りが開始される。
【００３１】
送り方向マーク７６の一端がシート長さセンサ１５により検出されると加飾シート３７の供給速度を小さくし、送り方向マーク７６の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート３７を供給した後、停止させる。
【００３２】
次いで、垂直方向（加飾シート３７の幅方向）に加飾シート３７を移動させる。上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８をそれぞれ上流側ガイドローラ駆動手段２２および下流側ガイドローラ駆動手段２３によって垂直方向に移動させることによって、金型のキャビティ面３４に配置された加飾シート３７を垂直方向に移動させ、幅方向マーク７７の一端が第１シート幅センサ１３および第２シート幅センサ１４により検出されると加飾シート３７の移動速度を小さくし、幅方向マーク７７の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート３７を移動させた後、停止させる。なお、垂直方向の位置合わせにおいて、第１シート幅センサ１３および第２シート幅センサ１４の２つのセンサを用いるのは、加飾シート３７の傾きを調整するためである。
【００３３】
また、加飾シート３７を上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８の表面に固定する棒状の加飾シートクランプ２０、２１を備えるようにし、加飾シート３７が水平方向に移動する際には解放状態とし、加飾シート３７を垂直方向に移動させる際には挟持状態として、より確実に加飾シート３７を垂直方向に移動させるように構成してもよい。加飾シートクランプ２０、２１は、エアシリンダなどの加飾シートクランプ駆動装置２６、２７を用いて駆動するように構成することができる。
【００３４】
制御手段（図示せず）は、水平方向加飾シート送り装置１０が備える各手段を上記したように作用させるためのものである。
【００３５】
このように、垂直方向の加飾シート３７の位置合わせを、一組のシートガイドローラ１６、１８を垂直方向に移動させることによって行うように構成することにより、わずかな駆動力によって位置合わせを行うことが可能になる。なお、上流側フレーム２４および下流側フレーム２５を垂直方向に移動させると、水平方向加飾シート送り装置１０の大半の重量を上下動させることとなり、そのためには水平方向加飾シート送り装置１０が大きな駆動力と強度とを備える必要があり、垂直方向に加飾シートを供給する加飾シート送り装置４０と比べて大がかりなものとなってしまう。
【００３６】
垂直方向加飾シート送り装置４０は、加飾シート６７を垂直方向に供給および巻取を行うものであり、たとえば、シート供給手段４１、シート巻き取り手段４２、第１シート幅センサ４３、第２シート幅センサ４４、シート長さセンサ４５、上流側シートガイドローラ４６、４７、下流側シートガイドローラ４８、４９、５０、上流側フレーム駆動手段（図示せず）、下流側フレーム駆動手段（図示せず）、制御手段（図示せず）を備えるものである（図３〜４参照）。
【００３７】
シート供給手段４１は、加飾シート６７を金型６１表面に位置するように供給するものであり、長尺の加飾シート６７が巻き取られたリールが、横方向に移動可能に成形機の可動盤６０（可動側プラテン）に取り付けられた上流側フレーム５１に支持されたものである。供給された加飾シート６７に適切な張力を付与するため、リールの軸にパウダークラッチ（図示せず）を設けるように構成してもよい。また、上流側フレーム５１を可動盤６０に対して横方向に移動可能にするためには、たとえば、案内レール５３とガイド５５とを組み合わせ、上流側フレーム駆動手段（図示せず）により移動させるように構成するとよい。
【００３８】
シート供給手段４１から供給された加飾シート６７を金型のキャビティ面６４に導くため、上流側フレーム５１には、任意の数の上流側シートガイドローラ４６、４７が支持される。
【００３９】
シート巻き取り手段４２は、金型６１表面に位置する加飾シート６７を巻き取るものであり、加飾シート６７が巻き取られたリールが横方向に移動可能に成形機の可動盤６０に取り付けられた下流側フレーム５２に支持されたものである。供給された加飾シート６７に適切な張力を付与するため、リールの駆動にＤＣサーボモータを用いるように構成してもよい。下流側フレーム５２を可動盤６０に対して横方向に移動可能にするためには、たとえば、案内レール５４とガイド５６とを組み合わせ、上流側フレーム駆動手段（図示せず）により移動させるように構成するとよい。
【００４０】
金型のキャビティ面６４を通過した加飾シート６７をシート巻き取り手段４２に導くため、下流側フレーム５２には、任意の数の下流側シートガイドローラ４８、４９、５０が支持される。
【００４１】
加飾シート６７に形成された図柄７５を、金型のキャビティ形状６４に位置合わせするために、加飾シート６７は、各図柄７５から一定間隔で図柄７５ごとに点状に形成される送り方向マーク７６と、各図柄７５から一定間隔で線上に形成される幅方向マーク７７とを有するように構成する。
【００４２】
金型の上流側には、シート長さセンサ４５と第１シート幅センサ４３とを配置する。また、金型の下流側には、第２シート幅センサ４４を配置する。
【００４３】
加飾シート６７は、シート供給手段４１から供給され、上流側シートガイドローラ４６、４７を通り、金型のキャビティ面６４を通過し、下流側シートガイドローラ４８、４９、５０を通り、シート巻き取り手段４２に巻き取られる。
【００４４】
垂直方向（加飾シート６７の送り方向）への加飾シート６７の供給は、加飾シート６７に形成された図柄７５が、金型のキャビティ形状６４に対して所定の位置に配置されるようにするため、間欠的に送り出される。
【００４５】
まず、サイクルスタートの信号が入力されると、上流側フレーム５１および下流側フレーム５２が機械原点に復帰し、垂直方向の送りが開始される。
【００４６】
送り方向マーク７６の一端がシート長さセンサ４５により検出されると加飾シート６７の供給速度を小さくし、送り方向マーク７６の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート６７を供給した後、停止させる。
【００４７】
次いで、水平方向（加飾シート６７の幅方向）に加飾シート６７を移動させる。上流側フレーム５１および下流側フレーム５２をそれぞれ上流側フレーム駆動手段（図示せず）および下流側フレーム駆動手段（図示せず）によって水平方向に移動させることによって、加飾シート６７の金型のキャビティ面６４に配置された箇所を水平方向に移動させ、幅方向マーク７７の一端が第１シート幅センサ４３および第２シート幅センサ４４により検出されると加飾シート６７の移動速度を小さくし、幅方向マーク７７の他端が検出されると所定の長さだけ加飾シート６７を移動させた後、停止させる。水平方向の位置合わせにおいて、第１シート幅センサ４３および第２シート幅センサ４４の２つのセンサを用いるのは、加飾シート６７の傾きを調整するためである。
【００４８】
制御手段は、垂直方向加飾シート送り装置４０が備える各手段を上記したように作用させるためのものである。
【００４９】
水平方向加飾シート送り装置１０と垂直方向加飾シート送り装置４０とを用いて加飾シート３７、６７の位置決めが完了した後、固定型３１と可動型６１に対して加飾シート３７、６７をそれぞれ密着させる。加飾シート３７、６７を金型に密着させるには、フィルムクランプ３２、３３、６２、６３を用いるとよい。また、金型に吸引孔（図示せず）を設け、加飾シート３７、６７を吸引するように構成してもよい。また、加飾シート３７、６７を金型に密着させる際に、加飾シート３７、６７を加熱して軟化させるように構成してもよい。加熱手段としては、温度８０〜２６０℃程度に加熱することができる電熱式のヒータ（図示せず）などを用いるとよい。
【００５０】
また、加飾シートクランプ２０、２１を用いて上流側シートガイドローラ１６および下流側シートガイドローラ１８の表面に加飾シート３７を固定した場合は、加飾シート３７を金型に密着させた後に、加飾シートクランプ２０、２１を解放させる。
【００５１】
次いで、固定型３１と可動型６１の型締めを行う。その後、固定型３１に設けたゲート（図示せず）から溶融樹脂を金型３１、６１内に射出充満させ、樹脂成形品８１を形成するのと同時にその両面に加飾シート３７、６７を接着させる。
【００５２】
溶融樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ＡＢＳ樹脂、ＡＳ樹脂、ＡＮ樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂や、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。
【００５３】
被転写物である樹脂成形品８１を冷却した後、金型３１、６１を開き、加飾シート３７、６７の基体シート７１を剥離し、樹脂成形品８１を取り出す。このようにして、樹脂成形品８１の両面に転写層が転移した成形同時加飾成形品８０を得ることができる（図７参照）。
【００５４】
成形同時加飾装置において、加飾シート６７を垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置４０と、加飾シート３７を水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置１０とを備えるように構成することにより、垂直方向加飾シート送り装置４０のシート供給手段４１とシート巻き取り手段４２が金型の上下に配置され、水平方向加飾シート送り装置１０のシート供給手段１１とシート巻き取り手段１２が金型の左右に配置されることになり、２台の加飾シート送り装置を用いて樹脂成形品の両面に加飾を行う場合、加飾シート送り装置の設置スペースが干渉することを防止することができる。
【００５５】
なお、上記の説明では、固定盤３０に水平方向加飾シート送り装置１０を配置し、可動盤６０に垂直方向加飾シート送り装置４０を配置したが、固定盤３０に垂直方向加飾シート送り装置４０を配置し、可動盤６０に水平方向加飾シート送り装置１０を配置してもよい。
【００５６】
また、固定盤３０に水平方向加飾シート送り装置１０のみを配置し、成形品の片面にのみ成形同時加飾を行うように構成してもよい。また、可動盤６０に水平方向加飾シート送り装置１０のみを配置し、成形品の片面にのみ成形同時加飾を行うように構成してもよい。このように構成することにより、成形品の片面にのみ成形同時加飾を行う場合、成形同時加飾装置の上方や前後方向に加飾シート送り装置の設置スペースの余裕が少ない場合であっても対応可能になる。
【００５７】
また、加飾シート３７、６７として、インサート材を用いることもできる。インサート材は、樹脂成形品８１に加飾シート３７、６７を接着した後、基体シート７１を剥離しないため、その層構成は、剥離層７２を備えない点において転写材と異なる。また、成形後に加飾シート３７、６７を巻き取ることができるようにするために、金型内で加飾シート３７、６７を打ち抜くなどの処理を行うことが必要になる。
【００５８】
【発明の効果】
この発明は、以上のような構成を採るので、以下のような効果を奏する。
【００５９】
この発明の成形同時加飾装置は、加飾シートを成形金型間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品表面に加飾シートを接着する成形同時加飾装置において、加飾シートを垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置と、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置とを備えるように構成したので、成形同時加飾装置における加飾シート送り装置の設置スペースが狭い場合であっても加飾シート送り装置を配置することができる。
【００６０】
この発明の水平方向加飾シート送り装置は、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸を垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成したので、成形同時加飾装置における加飾シート送り装置の設置スペースが狭い場合であっても加飾シート送り装置を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す正面図である。
【図２】この発明の水平方向加飾シート送り装置を示す上面図である。
【図３】この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す正面図である。
【図４】この発明の成形同時加飾装置に用いる垂直方向加飾シート送り装置を示す側面図である。
【図５】この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図６】この発明の成形同時加飾装置に用いる加飾シートの一実施例を示す平面図である。
【図７】この発明の成形同時加飾装置によって形成した成形同時加飾成形品の一実施例を示す断面である。
【符号の説明】
１０ 水平方向加飾シート送り装置
１１ シート供給手段
１２ シート巻き取り手段
１３ 第１シート幅センサ
１４ 第２シート幅センサ
１５ シート長さセンサ
１６、１７ 上流側シートガイドローラ
１８、１９ 下流側シートガイドローラ
２０、２１ 加飾シートクランプ
２２ 上流側ガイドローラ駆動手段
２３ 下流側ガイドローラ駆動手段
２４ 上流側フレーム
２５ 下流側フレーム
２６、２７ 加飾シートクランプ駆動装置
３０ 固定盤
３１ 固定型
３２、３３ フィルムクランプ
３４ キャビティ
３７ 加飾シート
４０ 垂直方向加飾シート送り装置
４１ シート供給手段
４２ シート巻き取り手段
４３ 第１シート幅センサ
４４ 第２シート幅センサ
４５ シート長さセンサ
４６、４７ 上流側シートガイドローラ
４８、４９、５０ 下流側シートガイドローラ
５１ 上流側フレーム
５２ 下流側フレーム
５３、５４ 案内レール
５５、５６ ガイド
６０ 可動盤
６１ 可動型
６２、６３ フィルムクランプ
６４ キャビティ
６７ 加飾シート
７１ 基体シート
７２ 剥離層
７３ 図柄層
７４ 接着層
７５ 図柄
７６ 送り方向マーク
７７ 幅方向マーク
８０ 成形同時加飾成形品
８１ 樹脂成形品
Claims (4)
- 加飾シートを成形金型間に挟み込み、金型内に溶融樹脂を射出し、樹脂成形品表面に加飾シートを接着する成形同時加飾装置であって、加飾シートを垂直方向に供給および巻取を行う垂直方向加飾シート送り装置と、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行う水平方向加飾シート送り装置とを備えることを特徴とする成形同時加飾装置において、水平方向加飾シート送り装置が、加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸をガイドローラー駆動手段により垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うものである成形同時加飾装置。
- 一組のシートガイドローラが、加飾シートをシートガイドローラの表面に固定する加飾シートクランプを備える請求項１記載の成形同時加飾装置。
- 加飾シートを水平方向に供給および巻取を行うとともに、金型表面に供給される加飾シートの上流側と下流側に配置される一組のシートガイドローラの軸をガイドローラー駆動手段により垂直方向に移動させることにより加飾シートを垂直方向に移動させて加飾シートの金型に対する位置合わせを行うように構成されていることを特徴とする水平方向加飾シート送り装置。
- 一組のシートガイドローラが、加飾シートをシートガイドローラの表面に固定する加飾シートクランプを備える請求項３記載の水平方向加飾シート送り装置。
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