JP3911262B2 - 耐摩耗性膜被覆物品及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性膜被覆物品及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば自動車部品、各種機械の部品、各種工具や、自動車部品、機械部品等の成形に用いる金型等の成形用型等の物品であって、耐摩耗性膜を被覆した耐摩耗性膜被覆物品に関する。本発明はまた、かかる耐摩耗性膜被覆物品の製造方法にも関係する。
物品に耐摩耗性を付与する膜として、窒化チタン(TiN)膜、窒化チタンアルミニゥム〔(Ti,Al)N〕膜のようなチタン系の窒化膜、炭化チタン(TiC)膜のようなチタン系の炭化膜、さらには、炭窒化チタン(TiCN)膜、炭窒化チタンアルミニゥム〔(Ti,Al)(N,C)〕膜のようなチタン系の炭窒化膜などが知られている。
また、特許第3039381号公報は、TiN膜、TiC膜よりも耐高温酸化特性に優れた耐摩耗性膜としてAl−Cr−N系膜を提案している。
特開平9−41127号公報は、TiN膜、TiC膜、TiCN膜、さらにはAlを添加した〔(Ti,Al)N〕膜、〔(Ti,Al)C〕膜、〔(Ti,Al)(N,C)〕膜よりも耐高温酸化特性に優れた耐摩耗性膜としてアルミニゥム(Al)とX(Xはクロム、バナジゥム又はモリブデン)の窒化物、炭化物、炭窒化物等の膜を提案しており、該膜におけるAlとXの組成は(Al1-y y )(0<y≦0.3)としている。
特開2000−271699号公報は、機械部品等の鉄系部品、アルミニゥム合金部品等を得る金型、鋳型等の成形型の表面に、耐熱性、表面高度を向上させるために形成する膜として(Al1-x Crx )N膜(但し、1.0 >x ≧0.02)を開示している。
特許第3039381号公報 特開平9−41127号公報 特開2000−271699号公報
これら従来の膜のうち、特許第3039381号公報に記載のAl−Cr−N系膜、特開平9−41127号公報に記載の(Al1-y y )(0<y≦0.3)の炭窒化物膜等及び特開2000−271699号公報記載の(Al1-x Crx )N膜(但し1.0 >x ≧0.02)はそれなりに高温においても耐摩耗性を示すと考えられるが、硬度に関する検討が未だ十分になされていないのが実情である。
しかしながら、より一層確実に高温においても耐摩耗性を維持できる皮膜の出現が要請されている。
何故なら、例えば、金属材料のエンドミル等の切削工具による切削加工を例にとると、今日においては、環境悪化を招く恐れのある潤滑剤を用いないで、或いは用いたとしても潤滑剤使用量を少量化するため液体のまま用いるのではなく噴霧して用いて切削加工を行うことが求められており、しかも、最終製品の一層の低コスト化のために、切削加工時間の一層の短縮化、従って加工時に大きい熱を発する高速切削が求められている。
このような要請に応え得る切削工具は、高温においても十分耐摩耗性を維持、発揮し得るものでなければならず、従って、該工具に被覆する耐摩耗性膜は、潤滑剤を用いない、或いは潤滑剤を噴霧して用いる高速切削加工時の高熱に曝されても劣化し難く、耐摩耗性を発揮、維持できるものでなければならない。
いま切削工具を例にとったが、高温においても十分耐摩耗性を維持、発揮し得る膜で被覆されることが要請される物品は、切削工具に限定されず、前記の成形用型もその1例である。
そこで本発明は、高温においても劣化し難く所望の耐摩耗性を維持、発揮し得る耐摩耗性膜で被覆された耐摩耗性膜被覆物品を提供することを課題とする。
また、本発明はかかる耐摩耗性膜を膜被覆対象物品に生産性高く形成でき、ひいてはかかる耐摩耗性膜被覆物品をそれだけ生産性良好に製造できる耐摩耗性膜被覆物品の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため本発明は、次の物品及び物品製造方法を提供する。
(1)耐摩耗性膜被覆物品
クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜が少なくとも一層被覆された耐摩耗性膜被覆物品であって、該クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜は、クロム(Cr)、アルミニゥム(Al)、炭素(C)及び窒素(N)の組成が、〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 原子比x 、y は0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) である耐摩耗性膜被覆物品。
(2)耐摩耗性膜被覆物品の製造方法
上記(1)に記載の耐摩耗性膜被覆物品の製造方法であり、クロムとアルミニゥムの合金をカソード材料とし、又はクロム及びアルミニゥムをそれぞれカソード材料として該カソード材料を真空アーク放電より蒸発させて炭窒化のための反応性ガスと反応させることで耐摩耗性膜被覆対象物品にクロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜を少なくとも一層被覆する耐摩耗性膜被覆物品の製造方法。
本発明に係る耐摩耗性膜被覆物品は、〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) である、高温においても劣化し難く、所望の耐摩耗性を維持、発揮し得るCrとAlの炭窒化膜(換言すれば、Cr−Al−C−N系膜)で被覆されているから、該膜で被覆された部分は高温環境で使用される等してたとえ高温(例えば1000℃程度の高温)に曝されても摩耗し難く、該物品部分の所期の性能を発揮できる。
また、本発明に係る耐摩耗性膜被覆物品の製造方法によると、かかる耐摩耗性膜を膜被覆対象物品に生産性高く形成でき、ひいてはかかる耐摩耗性膜被覆物品をそれだけ生産性良好に製造できる。
上記(1)の物品、(2)の方法において、x 、y は換言すれば原子%を示しており、x 、y を原子%とするならば、0.3 <x <0.9 は30原子%<x <90原子%であり、0.15<y <0.75 は15原子%<y <75原子%である。
上記(2)の方法における炭窒化のための反応性ガスとしては、(1) 窒素ガス、アンモニアガス等から選ばれた窒素含有ガスと炭化水素ガス、或いは(2) 窒素含有ガスと炭化水素ガスの混合ガスを例示できる。炭化水素ガスとしては、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス等のメタン系炭化水素ガス、アセチレンガスのごときアセチレン系炭化水素ガス、さらにはエチレン系炭化水素ガスから選ばれた少なくとも一種の炭化水素ガスを例示できる。
かかるCrとAlの炭窒化膜は、物品に一層形成されるだけでもよいが、物品によっては、或いは物品の使用条件等によっては、複数層形成されてもよい。 また、かかるCrとAlの炭窒化膜は、物品に応じて、物品の全体にわたり形成されてもよく、物品の一部に形成されてもよい。
本発明に係る耐摩耗性膜被覆物品は、CrとAlの炭窒化膜の物品への密着性を向上させるために、該物品及び膜との密着性が良好な下地層を該膜と物品との間に有する。また、下地層を有する物品を得るため、本発明に係る耐摩耗性被覆物品の製造方法では、CrとAlの炭窒化膜の形成工程に先立って耐摩耗性膜被覆対象物品に下地層を被覆し、該下地層上に前記CrとAlの炭窒化膜を少なくとも一層被覆する。
かかる下地層として、クロムアルミニゥムの窒化膜(換言すればCr−Al−N系膜)を挙げることができる。
該下地層は、例えば、クロムとアルミニゥムの合金をカソード材料とし、或いはクロム及びアルミニゥムをそれぞれカソード材料として該カソード材料を真空アーク放電により蒸発させて窒化のための反応性ガス(窒素ガス、アンモニアガス等の窒素含有ガス)と反応させて前記耐摩耗性膜被覆対象物品に形成することができる。
なお、クロムとアルミニゥムの合金からなるカソード材料には実用上クロムとアルミニゥムの合金からなるカソード材料とみて差し支えないクロムとアルミニゥムの合金を主成分とするカソード材料も含まれる。同様に、クロムからなるカソード材料には実用上クロムからなるカソード材料とみて差し支えないクロムを主成分とするカソード材料も含まれ、アルミニゥムからなるカソード材料には実用上アルミニゥムからなるカソード材料とみて差し支えないアルミニゥムを主成分とするカソード材料も含まれる。
前記物品の前記CrとAlの炭窒化膜が少なくとも一層被覆された部分の材質は、該膜を密着性よく形成できるものであれば特に制限はないが、代表例として、WC−Co系、WC−TiC−Co系、TaC−Ni系、Cr3 2 −Ni系等の超硬合金を挙げることができる。超硬合金を前記CrとAlの炭窒化膜で被覆することで、該超硬合金の特性を十分発揮させることができる。この他、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼等も例示できる。
また、前記CrとAlの炭窒化膜の被覆対象物品としては、特段の制限はないが、かかる膜の特性がも最も求められるものの例として切削工具(バイト、ドリル、リーマ、フライス、エンドミル等)や成形金型(冷間鍛造金型、温間鍛造金型、ダイカスト金型、プラスチック成形用金型、ゴム成形用金型等)を挙げることができ、中でも、潤滑剤無しの条件下で(無潤滑で)又は潤滑剤の噴霧条件下で使用される切削工具を挙げることができる。
本発明によると、高温においても劣化し難く所望の耐摩耗性を維持、発揮し得る耐摩耗性膜で被覆され、従ってたとえ高温で使用してもそれだけ摩耗し難く、所期の性能を発揮できる耐摩耗性膜被覆物品を提供することができる。
また、本発明によると、かかる耐摩耗性膜を膜被覆対象物品に生産性高く形成でき、ひいてはかかる耐摩耗性膜被覆物品をそれだけ生産性良好に製造できる耐摩耗性膜被覆物品の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は耐摩耗性膜Fを被覆した物品の1例である切削工具(図示例ではエンドミルEM)を示しており、図(A)はその側面図、図(B)は図(A)のX−X線に沿う切断拡大端面図、図(C) は図(B)と同様の図であるが、耐摩耗性膜形成の前に下地層を形成し、その上に耐摩耗性膜を形成したエンドミルを示している。
なお、図1に示すエンドミルEMはJIS B4116によるストレート2枚刃ストレートシャンク型のエンドミルである。
耐摩耗性膜Fは、クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 原子比x 、y は0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) である。下地層fはそれには限定されないが、ここではクロムアルミニゥム膜(CrAl膜)(参考的な下地層)又はクロムアルミニゥムの窒化膜(CrAlN膜)である。
いずれのエンドミルEMも、潤滑剤無しでエアブローのみで、或いは潤滑剤を噴霧しながら、高速回転させて被削材を切削すると、該切削に伴って高熱が発生し、切削刃の部分Cが高温に曝される。にもかかわらず、耐摩耗性膜Fは劣化し難く、十分に耐摩耗性を維持、発揮する。従って、エンドミルEMは摩耗が抑制される状態でその所期の性能を十分発揮し得る。
次にエンドミルEMの製造例について説明する。図2は耐摩耗性膜被覆エンドミルを得るための真空アーク蒸着装置の1例を上方から見て、且つ、一部を断面で示す図である。図3は同エンドミルを得るための真空アーク蒸着装置の他の例を上方から見て、且つ、一部を断面で示す図である。
図2、図3に示す装置は、カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物品を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物品上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダに支持される被成膜物体へ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含んでいるタイプのものである。
図2に示す装置では磁場形成部材が付設されたダクトは真っ直ぐ延びるダクトであるが、図3に示す装置では、磁場形成部材が付設されたダクトは湾曲ダクトであり、磁場形成部材はこのダクトに沿う偏向磁場を形成する。
なお、このように磁場形成部材を付設したダクトを有しないタイプの真空アーク蒸着装置も本発明に係る耐摩耗性膜被覆物品の製造に用いることができる。
先ず、図2に示す装置とそれによる耐摩耗性膜被覆エンドミルの製造について説明する。
図2に示す装置Aは、蒸発源1、成膜室2、蒸発源1と成膜室2を接続するダクト3及び成膜室2内に設置された、ここでの被成膜物品であるエンドミルEMを支持するホルダ4を備えている。
蒸発源1は、カソード11、トリガー電極12、アーク放電用電源13等を備えている。ダクト3の後部にはカソード装着部30が形成されており、カソード11は該装着部30に絶縁部材14を介して装着されている。
カソード11は形成しようとする膜に応じて選択した材料で形成される。ここでのカソード11はクロムとアルミニウムの合金〔Crx Al1-x ( 0.3 <x <0.9 )〕である。このカソードに対するアノードはここでは接地された成膜室2がこれを兼ねている。なお、アノードについては、例えば図1に鎖線で示すようにダクト3内においてカソード11の端部を囲むアノードANを設ける等してもよい。
トリガー電極12はダクト3内においてカソード11の端面(蒸発面)111に臨んでおり、図示を省略した往復駆動装置によりカソード蒸発面に対し接触離反可能である。図1においては、トリガー電極12はカソード11を貫通しているかの如く示されているが、カソード11を貫通しているのではなく、図1には現れていないカソード周囲の壁体に往復動可能に通されている。
アーク放電用電源13はカソード11とアノードとの間にアーク放電用電圧を印加できるように、また、カソード11とアノード間のアーク放電を誘発するためにカソード11とトリガー電極12との間にトリガー用電圧を印加できるように、カソード11等に配線接続されている。トリガー電極12はアーク電流が流れないように抵抗15を介して接地されている。
ダクト3は一方では既述のように絶縁部材14を介してカソード11が装着されており、他方では絶縁部材21を介して成膜室2に接続されている。ダクト3には磁場形成用コイル31が周設されており、該コイルは電源32に接続されている。該電源から通電することで、ダクト3に後述するプラズマ集束のための磁場を形成できる。
成膜室2には、排気装置22が接続されており、これにより成膜室2内及びこれに連通する前記ダクト3内を所定の成膜圧に減圧維持することができる。成膜室2には、成膜用の反応性ガスを導入するガス導入部23も設けられている。
ホルダ4は、図1に示す例では、図示省略の駆動装置により回転駆動可能の縦軸41と、これに支持された回転台42と、回転台42上に配設され、図示省略の連動機構により回転台の回転に連動して公転しつつ自転する複数の保持穴部43を備えたものである。各保持穴部43はここに被成膜物品であるエンドミルEMをその切削刃部分を上に向けて差し込む穴部である。図示の例では保持穴部43は一本のエンドミルEMを差し込み立設できるものであるが、穴部を例えば円状配列で複数有し、複数本のエンドミルを差し込み立設できるものでもよい。
以上説明した図1に示す真空アーク蒸着装置Aによると、次のようにしてエンドミルEMの切削刃部分Cに耐摩耗性膜〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) を被覆形成できる。
まず、ホルダ4上に成膜前のエンドミルEMを搭載する。次いで排気装置22を運転して成膜室2及びダクト3内から排気し、それらを成膜圧力まで減圧する。
また、ホルダ4上のエンドミルEMには、膜形成用イオンを引き寄せるためのバイアス電圧を図示省略の電源から印加する。成膜中、ホルダ4上のエンドミルEMは回転台42の回転により公転させつつ自転させる。
かかる状態で、蒸発源1におけるトリガー電極12をカソード11の蒸発面111に接触させ、引き続き引き離す。これにより電極12とカソード11間に火花が発生し、これが引き金となってアノード(成膜室2)とカソード11との間に真空アーク放電が誘発される。このアーク放電によりカソード材料が加熱され、カソード材料が蒸発し、さらにカソード11前方にイオン化カソード材料を含むプラズマが形成され始める。
また、磁場形成コイル31へ電源32から通電してダクト3内に磁場を形成しておく。さらに、ガス導入部23から成膜室2内へ反応性ガスを所定量導入する。反応性ガスは本例では(Cy 1-y )( 0.15<y <0.75) を得るための所定混合量比で混合された窒素ガスとメタンガス等の炭化水素ガスの混合ガスである。
蒸発源1において生成された前記プラズマは磁場形成コイル31により形成されたダクト内磁場により集束し、その後エンドミルEMへの膜形成のために適度に広がり、イオン化されたカソード材料(ここではクロムイオンとアルミニゥムイオン)がエンドミルEMの切削刃部分Cへ向け飛翔するとともに導入された反応性ガスと反応し、かくして各エンドミルEMの切削刃部分Cにクロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) が形成される。
下地層fを形成するときは、かかるCrとAlの炭窒化膜Fを形成するに先立って下地層を形成する。下地層fとしてCrAl膜(参考例)又はCrAlN膜を形成するときは、カソード11としてクロムとアルミニゥムの合金を採用し、CrAlN膜を形成するときは、さらに、反応性ガスとして窒素ガス等の窒素含有ガスを成膜室2内に所定量導入する。
いずれにしても成膜中、ダクト3内の磁場によりプラズマが集束した高密度プラズマ領域においては、その領域へ飛来することがあるカソード材料の巨大溶融粒子が該高密度プラズマにより分解され、それだけ被成膜物品への巨大溶融粒子の飛来を抑制して被成膜物品上に良質の膜を形成することができる。
以上説明した真空アーク蒸着装置Aにおいては、ダクト3は真っ直ぐ延びたものであるが、図3に示す真空アーク蒸着装置Bのように、湾曲したダクト3’を採用してもよい。かかるダクト3’を採用するときにも、該ダクト3’に磁場形成コイル31’を周設し、これに電源32’から通電することでダクト内に磁場を形成することができる。
次に、図2に示すタイプの真空アーク蒸着装置においてエンドミルEMにCrとAlの炭窒化膜を形成した参考実験例1〜5及び比較実験例1〜4を表1にまとめて示す。該参考実験例及び比較実験例においては、〔Cr/(Cr+Al)〕の値、換言すれば前記x の値及び〔C/(C+N)〕の値、換言すれば前記y の値を種々変えた。また、CrとAlの炭窒化膜を形成するに先立って下地層(CrAl又はCrAlN)を形成し、その上にCrとAlの炭窒化膜を形成した参考実験例6及び本発明に係る実験例7についても表1に示す。さらに、図2に示すタイプの装置においてエンドミルEMに、カソード11としてTiとAlの合金からなるものを採用するとともに反応性ガスとして窒素ガスを用いて従来のTiAlN膜を形成した例、及びカソード11としてCrとAlの合金からなるもの採用するとともに反応性ガスとして窒素ガスを用いて従来のCrAlNを形成した例も表1に示す。
これらの耐摩耗性膜の形成は、いずれも成膜圧力を3.0Pa、カソードへのアーク電流を100アンペア、エンドミルへのバイアス電圧を−50Vとして、膜厚2μmを得るように行った。
また、下地層の形成は、いずれも成膜圧力を3.0Pa、カソードへのアーク電流を100アンペア、エンドミルへのバイアス電圧を−50Vとして、膜厚1μmを得るように行った。
以上の実験に用いたエンドミルEMの本体の詳細は以下のとおりである。
・JIS B4116で定めるエンドミル
・切削刃の部分が超硬合金(WC−Co系)で形成されている。
・切削刃の部分が10mm径に形成されており、切削刃による切り込み深さは半径方向に1mm、軸方向に10mmである。
表1に示す各エンドミルについて評価するため、エンドミルに形成された耐摩耗性膜の室温及び1000℃にて1時間加熱後のそれぞれにおけるマイクロビッカース硬度(Hmv)の測定、並びにダイヤモンド圧子に荷重を加えて引っ掻くスクラッチ試験による膜密着性評価(種々の荷重による膜剥離荷重による評価)及び切削性評価(逃げ面摩耗量による評価)を行った。その結果も表1にまとめて示す。
切削性評価は次の条件で行った。
・被削材:ダイス鋼(SKD61)
・エンドミル回転速度:1000回転/分
・エンドミル送り速度:134mm/分
・切削方式:ダウンカット、無潤滑、エアブロー
表1から分かるように、耐摩耗性膜としてCrとAlの炭窒化膜〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) を形成した参考実験例1〜5のエンドミル、さらにはかかる耐摩耗性膜の下に下地層を含む参考実験例6及び本発明に係る実験例7のエンドミルは、1000℃加熱後においても耐摩耗性膜は高硬度を示すとともに耐摩耗性膜のエンドミル本体への密着性も良好であり(特に下地層を設けたもの、中でも下地層としてCrAlN下地層を設けたもの)は密着性良好であり)、その結果、切削性評価欄に示されるように、エンドミルの切削使用による摩耗量は、耐摩耗性膜が切削使用時に高温に曝されるにも拘らず、比較実験例や従来例によるエンドミルと比べると少なく抑制された。
本発明は、例えば自動車部品、各種機械の部品、各種工具や、自動車部品、機械部品等の成形に用いる金型等の成形用型等の物品であって、たとえ高温に曝されてもなお耐摩耗性を維持、発揮し得る耐摩耗性膜で被覆された物品を提供することに適用できる。
図(A)は耐摩耗性膜被覆物品の1例である耐摩耗性膜被覆エンドミルの側面図であり、図(B)は図(A)のX−X線に沿う切断拡大端面図であり、図(C) は下地層及び耐摩耗性膜を有するエンドミルの図(B)と同様の切断拡大端面図である。 真空アーク蒸着装置の1例を上方からみて、且つ、一部を断面で示す図である。 真空アーク蒸着装置の他の例を示す図である。
符号の説明
EM エンドミル
C エンドミルの切削刃部分
F 耐摩耗性膜
f 下地層
A 真空アーク蒸着装置
1 蒸発源
11 カソード
111 カソード蒸発面
12 トリガー電極
13 アーク放電用電源
14 絶縁部材
15 抵抗
2 成膜室
21 絶縁部材
22 排気装置
23 ガス導入部
3 ダクト
30 カソード装着部
31 磁場形成用コイル
32 電源
AN アノード
4 ホルダ
41 縦軸
42 回転台
43 エンドミルの保持穴部
B 真空アーク蒸着装置
1’ 蒸発源
3’ 湾曲ダクト
31’ 磁場形成コイル
32’ 電源

Claims (8)

  1. クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜が少なくとも一層被覆された耐摩耗性膜被覆物品であって、該クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜は、クロム(Cr)、アルミニゥム(Al)、炭素(C)及び窒素(N)の組成が、〔Crx Al1-x (Cy 1-y )〕( 原子比x 、y は0.3 <x <0.9 、0.15<y <0.75) であり、クロムアルミニゥムの窒化膜を前記クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜と物品との間に下地層として有していることを特徴とする耐摩耗性膜被覆物品。
  2. 前記物品の前記クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜が少なくとも一層被覆された部分の材質は超硬合金、炭素工具鋼、合金工具鋼及び高速度鋼から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の耐摩耗性膜被覆物品。
  3. 前記物品は潤滑剤無しの条件下で又は潤滑剤の噴霧条件下で使用される切削工具である請求項1又は2記載の耐摩耗性膜被覆物品。
  4. 前記物品は成形用金型である請求項1又は2記載の耐摩耗性膜被覆物品。
  5. 請求項1記載の耐摩耗性膜被覆物品の製造方法であり、耐摩耗性膜被覆対象物品に下地層を被覆し、該下地層上にクロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜を少なくとも一層被覆し、
    該下地層は、クロムとアルミニゥムの合金をカソード材料とし、又はクロム及びアルミニゥムをそれぞれカソード材料として該カソード材料を真空アーク放電により蒸発させて窒化のための反応性ガスと反応させて前記耐摩耗性膜被覆対象物品に形成し、前記クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜は、クロムとアルミニゥムの合金をカソード材料とし、又はクロム及びアルミニゥムをそれぞれカソード材料として該カソード材料を真空アーク放電により蒸発させて炭窒化のための反応性ガスと反応させることで前記下地層上に少なくとも一層被覆する耐摩耗性膜被覆物品の製造方法。
  6. 前記クロム(Cr)とアルミニゥム(Al)の炭窒化膜が少なくとも一層被覆される前記物品の部分の材質は超硬合金、炭素工具鋼、合金工具鋼及び高速度鋼から選ばれた少なくとも1種である請求項5記載の耐摩耗性膜被覆物品の製造方法。
  7. 前記物品は潤滑剤無しの条件下で又は潤滑剤の噴霧条件下で使用される切削工具である請求項5又は6記載の耐摩耗性膜被覆物品の製造方法。
  8. 前記物品は成形用金型である請求項5又は6記載の耐摩耗性膜被覆物品の製造方法。
JP2003312945A 2003-09-04 2003-09-04 耐摩耗性膜被覆物品及びその製造方法 Expired - Fee Related JP3911262B2 (ja)

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