JP3904714B2 - 2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法 - Google Patents

2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法に関するものであリ、詳しくは、粒径分布が狭く且つ小粒径である2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法に関するものである。2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸(以下、ジメチロールアルカン酸と言う)は、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナール(以下、ジメチロールアルカナールと言う)の酸化により得られ、ポリエステル、ポリウレタン、アルキッド樹脂などの製造原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
ジメチロールアルカナールは、塩基の存在下、α−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒドと適当量のホルムアルデヒドとを縮合反応させることにより得られる(化学式(I)参照)。この際、2−置換アクロレインが副生する。一方、ジメチロールアルカン酸は、ジメチロールアルカナールの酸化により得られる(化学式(II)参照)。そして、上記の2−置換アクロレインは、塩基の存在下での適当量のホルムアルデヒドとの反応によりジメチロールアルカナールに変換される(化学式(III)参照)。
【0003】
【化1】
Figure 0003904714
【0004】
ジメチロールアルカナールの製造に使用する塩基(縮合触媒)としては、水酸化ナトリウム(特公昭52−20965号公報、特開昭62−263141号公報)、炭酸ナトリウム(米国特許3,312,736号明細書)、トリエチルアミン(特公平4−55181号公報)、ジメチルアミノネオペンタノール(ドイツ特許2507461号明細書)等が提案されている。
【0005】
そして、例えば、米国特許3,312,736号明細書には、ジメチロールアルカナールの生成からジメチロールアルカン酸の回収までの一貫したプロセスとして、水媒体中において炭酸ナトリウムの存在下にn−ブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させた後、過酸化水素で処理し、得られた反応液から炭酸ナトリウムに由来する無機物をスルホン酸型陽イオン交換樹脂で除去し、蒸発処理した後、酢酸ブチルで再晶析して2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の結晶を濾別する方法が記載されている。また、英国特許第1,177,555号明細書および「ChemisheBerichte」(第95巻,102頁(1962年))には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の晶析溶媒として酢酸エチルが記載されている。
【0006】
しかしながら、ジメチロールアルカン酸の晶析溶媒に上記の様な酢酸エステルを使用した場合、得られる結晶は、粒径分布が広く且つ大粒径であり、従って、溶解性に劣るという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、粒径分布が狭く且つ小粒径であり、従って、溶解性に優れた2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、未反応ホルムアルデヒドの回収負荷を軽減し、且つ、ホルムアルデヒド残存量を抑制して2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を高収率で得ることが出来る2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、水媒体中、塩基の存在下、α−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させる2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナール生成工程(A1)と、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナールを含有する水溶液(a)を酸化処理する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸生成工程(B)と、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を含有する水溶液(b)から2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を分離するアルカン酸回収工程(C)を順次に包含する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法であって、上記のアルカン酸回収工程(C)において、水溶液(b)中の水を有機溶媒で置換した後に有機溶媒溶液からアルカン酸を晶析させるに当たり、上記の有機溶媒として、ジアルキルケトンを使用することを特徴とする、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施態様に従う連続的製造方法の一例を示すフローシートである。本発明の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸(ジメチロールアルカン酸)の製造方法は、少なくとも、アルカナール生成工程(A1)、アルカン酸生成工程(B)、アルカン酸回収工程(C)を順次に包含する。そして、本発明において、アルカン酸回収工程(C)は特定の有機溶媒を使用した晶析手段により行われる。
【0010】
先ず、アルカナール生成工程(A1)について説明する。この工程おいては、水媒体中において塩基の存在下にα−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒド(以下、単に「脂肪族アルデヒド」と略記する)とホルムアルデヒドとを反応させてアルカナールを得る。同時に2−置換アクロレインが副生する。図1においては、アルカナール生成工程(A1)に脂肪族アルデヒド(1)とホルムアルデヒド(2)と塩基(縮合触媒)(3)が供給される。
【0011】
本発明で使用する脂肪族アルデヒドは、一般式:R−CH2CHOで表される。上記のRは置換されていてもよい直鎖または分岐の飽和アルキル基を表す。Rの炭素数は、通常1〜7である。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、isoーヘキシル等が挙げられる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル及びiso−プロピル基である。上記の置換基は、反応条件下で不活性であれば特に制限されないが、代表的には、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基である。
【0012】
本発明で使用する脂肪族アルデヒドは、α−炭素原子に2個の水素原子を有するアルデヒドであり、その具体例としては、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、iso−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、iso−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、iso−ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、iso−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、iso−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、iso−ノニルアルデヒド等が挙げられる。そして、後述のアルカナール生成工程(A2)(2−置換アクロレインのアルカナールへの変換工程)を備えたプロセスの場合は、2−置換アクロレインが副生し易い脂肪族アルデヒド、すなわち、上記の一般式におけるRの炭素数が2以上の脂肪族アルデヒド(プロピオンアルデヒドより炭素数の多い脂肪族アルデヒド)が好適に使用される。
【0013】
一方、ホルムアルデヒドは、取り扱いの面から水で希釈したものが好ましく、その濃度は、通常5〜60重量%、好ましくは30〜55重量%の範囲である。
【0014】
塩基(縮合触媒)としては、例えば、特開昭52−124213号公報、特開平4−55181号公報、ドイツ特許947,419号公報、同2,507,461号公報、米国特許3,312,736号明細書、英国特許1,317,106号公報に記載されている各種の塩基、例えば、アルカリ金属の水酸化物または炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、第3級アミン化合物などが挙げられる。これらの塩基は2種以上を併用してもよい。
【0015】
アルカリ金属の水酸化物と炭酸塩の具体例としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。第3級アミン化合物としては、炭素数が通常3〜20、好ましくは3〜15の脂肪族、脂環式または複素環式アミンが挙げられ、これらの中では脂肪族第3級アミンが好ましい。
【0016】
上記の脂肪族第3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−isoープロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−iso−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミンの様な対称トリアルキルアミン;メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、エチルジ−iso−プロピルアミン、ジメチル−tert−ブチルアミンの様な非対称トリアルキルアミン;N,N−テトラメチル−エチレンジアミン、トリエチレンジアミンの様なジアミン;N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−シクロヘキシルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルフォリン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノネオペンタノールの様な置換基を有するアミン;トリベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミンの様な芳香環を有するアミン;トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)−メチルアミンの様な第3級アミノ基を有するポリアミン、テトラエチルアンモニウム・ヒドロキシドの様なテトラアルキルアンモニウム・ヒドロキシド等が挙げられる。これらの中ではトリアルキルアミンが好ましい。また、本発明においては、不溶性の塩基として、陰イオン交換樹脂を使用することも出来る。
【0017】
アルカナール生成工程(A1)で生成するジメチロールアルカナールは、例えば、原料の脂肪族アルデヒドがプロピオンアルデヒドの場合はジメチロールプロパナール、n−ブチルアルデヒドの場合はジメチロールブタナールである。同時に副生する2−置換アクロレイン(2−アルキルアクロレイン)の具体例としては、2−メチルアクロレイン、2−エチルアクロレイン、2−プロピルアクロレイン、2−ブチルアクロレイン、2−ペンチルアクロレイン、2−ヘキシルアクロレイン等が挙げられる。アルカナール生成工程(A1)の反応条件については後述する。
【0018】
次に、アクロレイン分離工程(E)について説明する。この工程においては、アルカナール生成工程(A1)の反応液から2−置換アクロレインに富む成分を回収する。図1においては、アクロレイン分離工程(E)にアルカナール生成工程(A1)の反応液(4)が供給される。そして、2−置換アクロレインに富む成分(5)とジメチロールアルカナールに富む成分(塩基含有水溶液)(6)とに分離される。成分(5)における2−置換アクロレインの濃度は、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%の範囲である。一方、成分(6)におけるジメチロールアルカナールの濃度は、通常10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%の範囲である。具体的な分離手段としては、蒸留法、溶媒抽出法またはこれら適宜の順序で組合せた方法が挙げられる。特に蒸留法は簡便であり好ましい。成分(5)は、2−置換アクロレインの他、未反応の脂肪族アルデヒド、ホルムアルデヒド、水、メタノール、塩基(縮合触媒)を含んでいてもよい。
【0019】
次に、アルカナール生成工程(A2)について説明する。この工程においては、水媒体中において水溶性塩基の存在下にホルムアルデヒドとアクロレイン分離工程(E)で回収した2−置換アクロレインとを反応させる。図1においては、アルカナール生成工程(A2)にホルムアルデヒド(2)と2−置換アクロレインに富む成分(5)と塩基(縮合触媒)(3)が供給される。そして、2−置換アクロレインがジメチロールアルカナールに変換される。アルカナール生成工程(A2)のホルムアルデヒド含有反応液(18)の少なくとも一部は、アルカナール生成工程(A1)に循環される(図1においては全量を循環している)。水溶性塩基としては、アルカナール生成工程(A1)で使用したのと同様の塩基を使用することが出来る。なお、アルカナール生成工程(A1)及び(A2)で使用する塩基の種類は異なっていてもよい。アルカナール生成工程(A2)の反応条件については後述する。
【0020】
ところで、塩基の存在下、脂肪族アルデヒドに対するホルムアルデヒドのモル比が2〜10の条件では、ジメチロールアルカナールの他に、2−置換アクロレインが相当量で副生する。その副生量は、アルデヒドの種類、塩基の種類および使用量、反応温度などの条件により支配されるが、例えば、トリエチルアミンの存在下、60℃付近でn−ブチルアルデヒドとホルムアルデヒドの反応を行った場合、約20%の2−エチルアクロレインが副生する。2−置換アクロレインは、ジメチロールアルカナールの前駆体である2−ヒドロキシメチルアルカナールの脱水反応により生成すること、また、2−ヒドロキシメチルアルカナールと2−置換アクロレインとの間には平衡関係が存在することが知られている。従って、脂肪族アルデヒド:ホルムアルデヒドのモル比の低い条件では2−置換アクロレインの副生は避けられない。
【0021】
脂肪族アルデヒドに対するホルムアルデヒドのモル比が10を超える場合は、2−置換アクロレインの副生を抑制し、ジメチロールアルカナールを高収率で得ることが出来る。しかしながら、この場合、残存する過剰のホルムアルデヒドの分離やリサイクル等の煩雑な操作が必要なため、コスト高になる。更に、ジメチロールアルカナール中にホルムアルデヒドが過剰に残存することにより、後段の酸化工程において、高価な酸化剤を多量必要とし、また、副反応を誘起する問題もある。
【0022】
一方、2−置換アクロレインは、塩基と水の存在下、ホルムアルデヒドとの反応により、ジメチロールアルカナールに変換される。斯かる変換方法としては、以下の方法が提案されている。
【0023】
特開昭52−124213号公報には、トリエチルアミンによる2−エチルアクロレインとホルムアルデヒド水溶液との反応により、ジメチロールブタナールを得る方法が例示されている。しかしながら、この方法の場合、反応効率を高めるため、2−エチルアクロレインに対して大過剰のホルムアルデヒドを使用しているため、過剰量のホルムアルデヒドの分離が必要となり工業的に不利である。
【0024】
ドイツ特許2507461号公報には、例えばN,N−ジメチルアミノネオペンタノールの存在下、n−ブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとを1段目の反応器で反応させた後、反応液から未反応のn−ブチルアルデヒドと副生した2−エチルアクロレインを蒸留により分離し、得られた留分に、更に、ホルムアルデヒドとアミンを添加して2段目の反応を行う方法が提案されている。しかしながら、この方法の場合、化学量論量のホルムアルデヒドを使用としているため、収率が低い。
【0025】
ジメチロールアルカナールの酸化によるジメチロールアルカン酸の製造方法としては、過酸化水素により酸化する方法(例えば米国特許3,312,736号明細書)、セリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、ニオブ、モリブデン及びタングステンから成る群から選ばれた少なくとも一種の元素の化合物を触媒とし、過酸化水素により酸化する方法(特開昭62−263141号公報)、過イソ酪酸により酸化する方法(有機合成化学協会誌,36,1095(1978))等が知られている。
【0026】
しかしながら、前述の公知方法で製造したジメチロールアルカナールを酸化する場合、ジメチロールアルカナールの収率が低い上、残存ホルムアルデヒド含有量が多いため、多量の酸化剤が必要となり、従って、高純度の製品を収率良く得ることは出来ない。
【0027】
上述の様に、従来技術においては、高収率でジメチロールアルカナールを得ることが出来、且つ、ホルムアルデヒドの残存量を抑制できる方法は見出されていなかった。
【0028】
そこで、未反応ホルムアルデヒドの回収負荷を軽減し、且つ、ホルムアルデヒド残存量を抑制してジメチロールアルカナールを高収率で得るとの観点から、本発明の好ましい実施態様においては、アルカナール生成工程(A1)及び(A2)の全工程中の脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのモル比(I)を1:1〜1:5の範囲に調節し、アルカナール生成工程(A2)における2−置換アクロレインとホルムアルデヒドとのモル比(II)を1:3〜1:100の範囲に調節するのが好ましい。ジメチロールアルカナール中に残存するホルムアルデヒドの量をより低減できるという観点から、上記のモル比(I)は1:1〜1:3の範囲が更に好ましく、上記のモル比(II)は1:3〜1:50の範囲が更に好ましい。
【0029】
アルカナール生成工程(A1)における、脂肪族アルデヒドの仕込み量に対する2−置換アクロレイン副生比は、脂肪族アルデヒドに対するホルムアルデヒド仕込み比に影響を受ける。そこで、アルカナール生成工程(A1)における、脂肪族アルデヒドと2−置換アクロレインとの存在比は、好ましくは1:0.01〜1:2、更に好ましくは1:0.05〜1:1の範囲になる様に調節するのがよい。2−置換アクロレインの副生量が少ない条件では、アルカナール生成工程(A2)において、2−置換アクロレインからのジメチロールアルカナールへの変換量が少なくなるため、アクロレイン分離工程(E)の存在意義が薄れる。一方、2−置換アクロレインの生成量が少ない条件では、必然的に脂肪族アルデヒドに対するホルムアルデヒドの使用量が多くなるため、過剰ホルムアルデヒドの除去の負荷が大きくなり、工業的に不利である。
【0030】
アルカナール生成工程(A1)における塩基の使用量は、脂肪族アルデヒド1モルに対し、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.02〜0.5モルの範囲である。アルカナール生成工程(A2)における塩基の使用量は、2−置換アクロレイン1モルに対し、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.02〜0.5モルの範囲である。
【0031】
上記の各工程の反応温度は、塩基の種類および使用量に依存するが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を使用する場合は、通常−10〜100℃、好ましくは10〜80℃である。第3級アミンを使用する場合は、通常−10℃〜120℃、好ましくは10℃〜100℃の範囲である。また、反応は、常圧下の他、減圧下または加圧下で行ってもよい。
【0032】
次に、アルカン酸生成工程(B)について説明する。この工程においては、ジメチロールアルカナール含有する水溶液(a)を酸化処理してアルカン酸を得る。上記の水溶液中には、アルカナール生成工程(A1)で使用した水溶性塩基が含まれていてもよい。図1においては、アクロレイン分離工程(E)で回収したジメチロールアルカナールに富む成分の塩基含有水溶液(6)と酸化剤(7)とがアルカン酸生成工程(B)に供給される。そして、ジメチロールアルカナールの酸化によりジメチロールアルカン酸が生成する。
【0033】
酸化方法としては、前述の公知方法、すなわち、過酸化水素により酸化する方法(米国特許3,312,736号明細書)、セリウム、チタン、ジルコニウム等の触媒の存在下に過酸化水素により酸化する方法(特開昭62−263141号公報)、過イソ酪酸により酸化する方法(有機合成化学協会誌,36,1095(1978))等を採用することが出来る。特に過酸化水素による酸化が好ましい。
【0034】
過酸化水素としては、通常20〜60重量%の水溶液が使用される。過酸化水素の使用量は、ジメチロールアルカナール1モルに対し、通常0.2〜2モル、好ましくは0.4〜1.5モルの範囲である。一方、酸化反応系でのジメチロールアルカナールの濃度は、通常5〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲である。酸化反応の温度は、通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲である。上記の酸化反応は、未反応のジメチロールアルカナールが残存しなくなるまで行う。
【0035】
次に、アルカン酸回収工程(C)について説明する。この工程においては、ジメチロールアルカン酸と塩基とを含有する水溶液(b)からジメチロールアルカン酸を分離する。具体的には、上記の水溶液(b)に1当量以下の鉱酸(水溶液中の塩基(縮合触媒)に対する割合)を添加して塩基を塩に変換し、次いで、水溶液(b)中の水を有機溶媒で置換し、析出した鉱酸塩を分離した後、有機溶媒溶液からアルカン酸を晶析させる。上記のアルカン酸回収工程(C)における前段処理は、前述の縮合触媒に水溶性塩基を使用した場合に採用される。
【0036】
上記の様な特定の前処理を備えた晶析手段によれば、水に対する溶解性の大きいジメチロールアルカン酸と塩基との水溶液から、容易にジメチロールアルカン酸と鉱酸塩となった塩基とを分離することが出来る。図1においては、水溶液(b)(8)と鉱酸(9)と有機溶媒(10)がアルカン酸回収工程(C)に供給され、水(11)と鉱酸塩(12)とがアルカン酸回収工程(C)から除去される。そして、ジメチロールアルカン酸の結晶(13)と母液の有機溶媒溶液(濾液)(14)とに固液分離される。
【0037】
上記の鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられるが、特に硫酸が好ましい。鉱酸の使用量は、水溶液中の塩基(縮合触媒)に対する割合として1当量以下、好ましくは0.85〜1当量の範囲である。1当量を超えて鉱酸を添加した場合は、残存する蟻酸とヒドロキシメチル基とのエステル化などによりジメチロールアルカン酸の収率が低下する。また、鉱酸の添加量が余りにも少ない場合は、ジメチロールアルカン酸と塩基との塩がジメチロールアルカン酸の結晶中に混入する。
【0038】
水溶液(b)中の水を有機溶媒で置換する方法は、例えば、水溶液(b)中の大部分の水を留去した後に残渣に有機溶媒を添加する方法、水溶液(b)に有機溶媒を添加した後に相分離して水相を除去する方法などが挙げられる。水溶液(b)からの水の留去には、減圧で水溶液を加熱して水を留去する方法、水溶液に有機溶媒を添加し、溶媒と共に水を蒸発させて除去する方法などが採用される。この場合、水溶液(b)の温度が通常100℃以下、好ましくは80℃以下になる様に減圧度を調節するのが好ましい。水溶液(b)の温度が高過ぎる場合は、ジメチロールアルカン酸が脱水縮合して酸無水物となり、残存する蟻酸とジメチロールアルカン酸のメチロール基とが反応して蟻酸エステルが生成し、ジメチロールアルカン酸の収率が低下する。
【0039】
本発明においては、上記の有機溶媒として、ジアルキルケトンを使用することが重要である。すなわち、晶析溶媒としてジアルキルケトンを使用することにより、粒径分布が狭く且つ小粒径であり、従って、溶解性に優れ、ポリエステル、ポリウレタン、アルキッド樹脂などの製造原料として使用する際の溶解操作が容易なアルカン酸が得られる。ジアルキルケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、エチル−n−プロピルケトン、エチル−n−ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。アセトンは水との相互溶解度が余りにも大きいため、その回収などの観点からの不利益がある。斯かる観点から、非対称のジアルキルケトンが好ましく、価格の面から、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。
【0040】
有機溶媒(ジアルキルケトン)の使用量は、ジメチロールアルカン酸に対する重量比として、通常1〜10倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲である。有機溶媒の使用量が多過ぎる場合は、ジメチロールアルカン酸の溶解量が増大して晶析率が低下し、また、少な過ぎる場合はジメチロールアルカン酸の純度が低下する。
【0041】
有機溶媒に置換された溶液から鉱酸塩を除去する場合、当該有機溶媒溶液中の水分は次の様に調節するのが好ましい。すなわち、ジメチロールプロピオン酸以外のジメチロールアルカン酸の場合は、通常5重量%以内、好ましくは1重量%以内、また、ジメチロールプロピオン酸の場合は、10重量%以内、好ましくは5重量%以内に調節する。斯かる水分調節を行わない場合は、鉱酸塩が溶解し、晶析後のジメチロールアルカン酸に混入することがある。
【0042】
有機溶媒溶液から析出した鉱酸塩を濾過して除去する場合、当該有機溶媒溶液の温度が低過ぎると、ジメチロールアルカン酸の結晶が析出し、その回収率が低下する。従って、濾過はジメチロールアルカン酸が溶解する温度で行うのが好ましい。
【0043】
鉱酸塩を濾過した後、冷却晶析により、ジメチロールアルカン酸を結晶として取り出すことが出来る。冷却温度は、通常30〜−10℃、好ましくは10〜−5℃の範囲である。ジメチロールアルカン酸の晶析時における有機溶媒溶液中の水の量は、アルカン酸に対して20重量%以下に調節するのが好ましい。有機溶媒溶液中の水の量が多過ぎる場合は、ジメチロールアルカン酸の晶析率が低下する他、結晶析出温度も低下するため、より低温まで冷却しなくてはならず、エネルギー的にも得策でない。有機溶媒溶液中の水の量は、好ましくは10重量%以下である。斯かる水分調節は、通常、鉱酸塩を除去する場合の前記の水分調節によって達成することが出来る。なお、取り出した結晶中に鉱酸塩が残存している場合は、有機溶媒に結晶を再度加熱溶解して熱時濾過し、濾液から再度晶析させることにより、残存する鉱酸塩の大部分を除去することが出来る。
【0044】
次に、アルカン酸再回収工程(D)について説明する。この工程においては、前記のアルカン酸回収工程(C)の晶析後の固液分離により回収され且つ未晶析のアルカン酸を含む有機溶媒溶液(濾液)に無機塩基の水溶液を添加してアルカン酸を塩に変換し、次いで、分離した水相から水を留去してアルカン酸塩を回収する。すなわち、前記のアルカン酸回収工程(C)における濾液中には、ジメチロールアルカン酸が通常5〜8重量%の濃度で溶解しており、斯かるジメチロールアルカン酸は、不純物との混合溶液として存在するため、溶媒の留去操作だけでは回収することが出来ない。
【0045】
そこで、本発明においては、上記の濾液に無機塩基を添加し、ジメチロールアルカン酸の塩として濾液から分離して回収する。図1においては、アルカン酸回収工程(C)で回収された濾液(14)と無機塩基の水溶液(15)がアルカン酸再回収工程(D)に供給され、相分離した有機相(16)と水相から留去した水(17)とがアルカン酸再回収工程(D)から除去される。そして、ジメチロールアルカン酸塩(19)が回収される。
【0046】
無機塩基としては、アルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ金属炭酸塩、または、アルカリ土類金属水酸化物あるいはアルカリ土類金属炭酸塩の様なアルカリ金属で構成される塩基が好適に使用される。
【0047】
上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等、また、アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。一方、アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等、アルカリ土類金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
【0048】
上記の無機塩基は水と共に濾液に添加される。無機塩基の使用量は、水と共に添加した際のpHが通常8〜10、好ましくはpH8.5〜9.5の範囲となる様な量にするのがよい。無機塩基を添加する際の濾液の温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜50℃の範囲である。そして、攪拌により、ジメチロールアルカン酸塩の水溶液または固体が水層側に回収される。水溶液で回収した場合は、水を留去することにより、更に、必要ならば、ジメチロールアルカン酸塩の溶解性が小さい溶媒を添加して冷却晶析させることにより、粉末として回収することが出来る。
【0049】
水溶液で回収した後、ジメチロールアルカン酸塩を粉末状で取り出す場合、水の蒸発は、50〜100℃で常圧または減圧で行う。この場合、蒸発残分中の水分は、ジメチロールアルカン酸塩が極めて水に溶け易いため、通常10重量%以下、好ましくは2重量%以下にするのがよい。水を留去した後、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類を添加してジメチロールアルカン酸塩を分散させて濾過することにより、粉末として取り出すことも出来る。
【0050】
本発明の製造方法は、図1に示すプロセスに従って連続的に行うことが出来るが、バッチ方式またはセミ連続方式であってもよい。特に、規模によっては、バッチ方式またはセミ連続方式が好ましく、特に、アルカン酸回収工程(C)以降はバッチ方式で行うことが好ましいことが多い。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1
<アルカナール生成工程(A1)>
還流冷却器を備えた500ml丸底フラスコ内に、n−ブチルアルデヒド72g(1mol)、52重量%ホルムアルデヒド水溶液98g(1.7mol)を反応器に仕込み、40℃に加温しながら30重量%NaOH水溶液10.6g(0.08mol)を滴下後、液温60℃で1時間反応を実施した。このときのn−ブチルアルデヒド:ホルムアルデヒド:NaOH仕込み比は、モル比で1:1.7:0.08であった
【0053】
n−ブチルアルデヒドの転化率は94モル%,ジメチロールブタナールとジメチロールブタナールのホルムアルデヒド付加体の合計収率は40モル%、 同合計選択率は43モル%あった。ここで、ジメチロールブタナールのホルムアルデヒド付加体とは、後段の酸化工程において、目的物であるジメチロールブタン酸に変化し得る成分である。このときの2−エチルアクロレイン収率は23モル%であった。また、n−ブチルアルデヒドを基準のホルムアルデヒド残存量は20モル%であった。
【0054】
<アクロレイン分離工程(E)>
次いで、90℃、常圧の条件、アルカナール生成工程(A1)の反応液を蒸留し、塔頂から2−エチルアクロレインに富む留分(2−エチルアクロレイン79重量%、n−ブチルアルデヒド21重量%)23gを分離し、塔底からジメチロールブタナールに富む留分(ジメチロールブタナールの33重量%水溶液)158gを得た。
【0055】
<アルカナール生成工程(A2)>
次いで、52重量%ホルムアルデヒド水溶液98g(1.7mol)にアクロレイン分離工程(E)からの留分(2−エチルアクロレイン量17g,0.2mol)を加え、40℃に加温しながら、30重量%NaOH水溶液2.7g(0.02mol)を滴下した後、液温を40℃で、1時間保持して、2−エチルアクロレインの反応を行った。このときの2−エチルアクロレイン:ホルムアルデヒド:NaOH仕込み比は、モル比で1:8.5:0.1であった。
【0056】
2−エチルアクロレイン基準のジメチロールブタナールとジメチロールブタナールのホルムアルデヒド付加体の合計収率は70モル%であった。また、n−ブチルアルデヒドを基準のホルムアルデヒドの残存量は140モル%であった。
【0057】
<2回目のアルカナール生成工程(A1)>
次に、アルカナール生成工程(A2)で得られた反応液を60℃に保持しながら、n−ブチルアルデヒド72g(1mol)を加えた後、30重量%NaOH8g(0.06mol)を滴下し、n−ブチルアルデヒドと未反応ホルムアルデヒドとの反応を40℃、1時間実施した。この反応工程は、アルカナール生成工程(A2)で得られた反応液を前記のアルカナール生成工程(A1)のホルムアルデヒド成分として使用した場合と見なすことが出来る。
【0058】
2回目のアルカナール生成工程(A1)におけるn−ブチルアルデヒドの転化率(仕込み基準)は78モル%、ジメチロールブタナールとジメチロールブタナールのホルアルデヒド付加体の合計収率(仕込み基準)は53モル%、同合計選択率は68モル%であった。このときの2−エチルアクロレインの収率は20モル%であり、1回目のアルカナール生成工程(A1)の場合と略同等であった。また、n−ブチルアルデヒドを基準のホルムアルデヒドの残存量は19モル%であった。
【0059】
アルカナール生成工程(A2)と2回目のアルカナール生成工程(A1)における n−ブチルアルデヒド:2−エチルアクロレイン:ホルムルデヒド:NaOHの総仕込みモル比は、1:0.2:1.7:0.8であった。ここで、2−エチルアクロレインとホルムアルデヒドの総仕込みモル比とは、2回目のアルカナール生成工程(A1)におけるn−ブチルアルデヒド仕込みに対する、アルカナール生成工程(A2)における2−エチルアクロレインとホルムアルデヒドの総仕込みモル比を示す。
【0060】
以後、同一の操作を繰り返し行った場合、アルカナール生成工程(A1)とアルカナール生成工程(A2)における n−ブチルアルデヒド:2−エチルアクロレイン:ホルムルデヒド:NaOHの総仕込みモル比は、上述した比率で維持され、定常状態で反応が進行すると考えられる。この様に少なくともアルカナール生成工程(A1)とアルカナール生成工程(A2)を含むプロセスにより、ホルムアルデヒド/n−ブチルアルデヒド総仕込みモル比が低い条件下で目的生成物の収率向上が達成される。
【0061】
<アルカン酸生成工程(B)>
アクロレイン分離工程(E)の蒸留塔の塔底から回収した留分(アルカナールの46重量%水溶液)156gを60℃に加温し、35重量%過酸化水素水51g(0.52モル)を2時間で滴下した後、更に5時間反応させた。酸化反応後、2回目のアルカナール生成工程(A1)において消費されたn−ブチルアルデヒド基準のジメチロールブタン酸の収率は55モル%であった。
【0062】
<アルカン酸回収工程(C)>
上記酸化反応液200gに47重量%硫酸7.9g(0.038モル:対NaOH0.95当量)を加えてNaOH由来のナトリウムを硫酸ナトリウムとした後、水浴の温度を60℃として減圧下で水を留去した。反応液中から水を90g留去した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)208gを添加した。反応液中の水分は0.7重量%となった。水分の低下に伴って析出する硫酸ナトリウムを濾過して除き、濾液を0℃まで冷却してジメチロールブタン酸の結晶を析出させた。このときの晶析率は82重量%であった。また、回収したn−ブチルアルデヒドを除き、転化したn−ブチルアルデヒドを基準としたジメチロールブタン酸の収率は45モル%であった。次いで、固液分離してジメチロールブタン酸をンを回収し、バット上に広げて減圧下60℃で24時間乾燥した。
【0063】
得られたジメチロールブタン酸の篩による粒度分布の測定結果は、表1に示す通りであり、各種の溶媒に対する溶解試験の結果は、表2に示す通りであった。また、ジメチロールブタン酸結晶中のNa濃度は17ppm、(SO4)-2濃度は6ppmであった。
【0064】
実施例2
実施例1において、ジメチロールブタン酸の結晶を濾過により分離した後の濾液から更に次の要領でジメチロールブタン酸ナトリウム塩を回収した以外は、実施例1と同じ方法により、ジメチロールブタン酸の結晶を製造した。すなわち、ジメチロールブタン酸濃度が6重量%(回収したn−ブチルアルデヒドを除き、転化したn−ブチルアルデヒド基準では10モル%の収率相当)の上記の濾液に20重量%NaOH水溶液62gを滴下して攪拌した。この溶液のpHは9.0となった。
【0065】
次いで、上記の溶液を静置して2層に分離し、下層の水層のみを分液して取り出した。この水溶液から、減圧下に水を留去し、蒸発残分中の水分が1.2重量%となったところで、メタノール131gを添加して65℃に加熱しながら攪拌し、ジメチロールブタン酸ナトリウム塩を分散させた。その後、5℃に冷却し、濾過してジメチロールブタン酸ナトリウム塩を取り出した。ジメチロールブタン酸ナトリウム塩の収率は、回収したn−ブチルアルデヒドを除き、転化したn−ブチルアルデヒド基準で9モル%、濾液からの回収率で93重量%であった。
【0066】
比較例1
実施例1において、アルカン酸回収工程(C)で使用する有機溶媒をMIBKから酢酸エチルに変更した以外は、実施例1と同様に、ジメチロールブタン酸の結晶を得た。粒度分布の測定結果および各種の溶媒に対する溶解試験の結果をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0067】
【表1】
Figure 0003904714
【0068】
【表2】
Figure 0003904714
【0069】
表1に示す結果から明らかな通り、晶析溶媒としてジアルキルケトンを使用する本発明によれば、粒径分布がよりシャープである(二次凝集が少ない)と共に粒径のより小さいアルカン酸が得られる。そして、斯かるアルカン酸は、表2に示す通り、各種の有機溶媒に迅速に溶解する。
【0070】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、粒径分布が狭く且つ小粒径であり、溶解性に優れた2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法が提供される。また、本発明によれば、未反応ホルムアルデヒドの回収負荷を軽減し、且つ、ホルムアルデヒド残存量を抑制して2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を高収率で得ることが出来る。従って、本発明の工業的な利用価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続的製造方法の一例を示すフローシート
【符号の説明】
A1:アルカナール生成工程
A2:アルカナール生成工程
B:アルカン酸生成工程
C:アルカン酸回収工程
D:アルカン酸再回収工程
E:アクロレイン分離工程
1:脂肪族アルデヒド
2:ホルムアルデヒド
3:塩基(縮合触媒)
4:アルカナール生成工程(A1)の反応液
5:2−置換アクロレインに富む成分
6:ジメチロールアルカナールに富む成分(塩基含有水溶液)
7:酸化剤
8:ジメチロールアルカ酸と塩基とを含有する水溶液
9:鉱酸
10:有機溶媒
11:水
12:鉱酸塩
13:ジメチロールアルカン酸の結晶
14:有機溶媒溶液(濾液)
15:無機塩基の水溶液
16:有機相
17:水
18:ホルムアルデヒド含有反応液
19:ジメチロールアルカン酸塩

Claims (7)

  1. 水媒体中、塩基の存在下、α−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させる2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナール生成工程(А1)と、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナールを含有する水溶液(a)を酸化処理する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸生成工程(B)と、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を含有する水溶液(b)から2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を分離するアルカン酸回収工程(C)と、晶析後の固液分離により回収され且つ未晶析のアルカン酸を含む有機溶媒溶液に無機塩基の水溶液を添加してアルカン酸を塩に変換し、次いで、分離した水相から水を留去してアルカン酸塩を回収するアルカン酸再回収工程(D)とを順次に包含する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法であって、上記のアルカン酸回収工程(C)において、水溶液(b)中の水を有機溶媒で置換した後に有機溶媒溶液からアルカン酸を晶析させるに当たり、上記の有機溶媒として、ジアルキルケトンを使用することを特徴とする、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法。
  2. 水媒体中、塩基の存在下、α−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させる2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナール生成工程(А1)と、水媒体中において塩基の存在下にホルムアルデヒドとアルカナール生成工程(A1)で副生した2−置換アクロレインとを反応させる2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナール生成工程(A2)と、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナールを含有する水溶液(a)を酸化処理する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸生成工程(B)と、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を含有する水溶液(b)から2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を分離するアルカン酸回収工程(C)を順次に包含する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法であって、上記のアルカン酸回収工程(C)において、水溶液(b)中の水を有機溶媒で置換した後に有機溶媒溶液からアルカン酸を晶析させるに当たり、上記の有機溶媒として、ジアルキルケトンを使用することを特徴とする、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法。
  3. 晶析後の固液分離により回収され且つ未晶析のアルカン酸を含む有機溶媒溶液に無機塩基の水溶液を添加してアルカン酸を塩に変換し、次いで、分離した水相から水を留去してアルカン酸塩を回収するアルカン酸再回収工程(D)を包含する請求項2に記載の製造方法。
  4. ジアルキルケトンがメチルイソブチルケトンである請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
  5. アルカン酸の晶析時における有機溶媒溶液中の水の量をアルカン酸に対して20重量%以下に調節する請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
  6. アルカナール生成工程(A1)の反応液から2−置換アクロレインに富む成分を回収するアクロレイン分離工程(E)と、水媒体中において塩基の存在下にホルムアルデヒドとアクロレイン分離工程(E)で回収した2−置換アクロレインとを反応させる2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナール生成工程(A2)とを包含し、アルカナール生成工程(A2)のホルムアルデヒド含有反応液の少なくとも一部をアルカナール生成工程(A1)に循環し、アルカナール生成工程(A1)及び(A2)の全工程中のα−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのモル比(I)を1:1〜1:5の範囲に調節し、アルカナール生成工程(A2)における2−置換アクロレインとホルムアルデヒドとのモル比(II)を1:3〜1:100の範囲に調節する請求項 1〜5の何れかに記載の製造方法。
  7. 前記アルカン酸回収工程(C)において、水溶液(b)に1当量以下の鉱酸(水溶液中の塩基に対する割合)を添加して塩基を塩に変換し、次いで、水溶液(b)中の水を有機溶媒で置換し、析出した鉱酸塩を分離した後、有機溶媒溶液からアルカン酸を晶析させる請求項1〜6の何れかに記載の製造方法。
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