JP3903156B2 - ハブユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪が装着されるハブユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のハブユニットの基本構成について図6および図7を参照して説明する。図6は、ハブユニットの縦断面図、図7は、図6の(7)−(7)線に沿う断面図である。ここでは、駆動輪側に用いられるハブユニットが例に挙げられる。
【0003】
図中、1はハブユニット、2はハブホイール、3は複列外向きアンギュラ玉軸受、4はドライブシャフト、5はディスクブレーキ装置のディスクロータ、6はシャフトケース、7はディスクブレーキ装置のブレーキパッドである。
【0004】
なお、ディスクロータ5は、ハブホイール2のフランジ10の外端面に対して密着するようにあてがわれた状態で取り付けられる。このディスクロータ5は、フランジ10の円周数箇所に設けられる貫通孔(ボルト取付用貫通孔)11に貫通状態で非分離に嵌入されるボルト12によって、固定される。
【0005】
そもそも、ディスクロータ5の取り付けは、ハブユニット1をドライブシャフト4に対して取り付けた後で行われるために、フランジ10のボルト取付用貫通孔11に対してボルト12を予め取り付けておかなくてはならないし、また、ハブユニット1単品を取り扱う段階において、前述したボルト12が脱落すると困るので、ボルト12をボルト取付用貫通孔11に対して非分離に取り付けるようにしている。
【0006】
従来では、前述したボルト12をボルト取付用貫通孔11に対して非分離とするために、ボルト12のねじ軸部において頭部側の領域にのみセレーション13を形成しており、ボルト12のセレーション13を、ボルト取付用貫通孔11の円形内周面に対して食い込ませるように嵌入装着する形態になっている。
【0007】
なお、上記ハブユニット1では、複列外向きアンギュラ玉玉軸受3の外輪をシャフトケース6にボルト止めするために、ハブホイール2のフランジ10の円周二箇所に六角レンチなどの作業工具(ハブユニット1の設置場所に対する設置作業用の工具)を挿通する作業用貫通孔14A,14Bが2つ設けられている。このようにハブホイール2のフランジ10に、2つの作業用貫通孔14A,14Bを設ける関係により、フランジ10の回転バランスを調整するための回転バランス用貫通孔15を1つ設けるようにしている。
【0008】
そして、この場合、従来、作業用貫通孔14A,14Bは前記作業工具を通し所要の作業を行ううえで必要な大きさの外形寸法を有する一方、回転バランス用貫通孔15は、回転バランスを保つことを目的とするうえで、作業用貫通孔14A,14Bより小さな外形寸法に設定されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ハブホイール2の回転によりディスクロータ5が面振れすると、ディスクロータ5に対するブレーキパッド7の当接具合が低下して不都合である。
このような面振れを可及的に小さく抑制するにはフランジ10の外端面に対してのディスクロータ5の取り付け上における傾き姿勢を抑制することが要求される。
【0010】
従来のハブユニット1の場合、フランジ10に切削ドリル等で作業用貫通孔14A,14Bおよび回転バランス用貫通孔15を形成するときに、切削ドリルの刃先の突き抜け方向に向けて作業用貫通孔14A,14Bや回転バランス用貫通孔15周辺に加工前後の応力バランスの変化により凸状に変形された凸状部が発生する。
【0011】
そして、この凸状部の高さは作業用貫通孔14A,14Bや回転バランス用貫通孔15それぞれの外形寸法の大きさに比例するうえ、フランジ10の外端面に対する作業用貫通孔14と回転バランス用貫通孔15の配置位置が、円周方向において不均等になっている。
【0012】
そのため、作業用貫通孔14A,14Bそれぞれにおける上記凸状部の高さの差異と、フランジ10の外端面の円周方向における凸状部の形成位置の不均等により、フランジ10の外端面に対してディスクロータ5は傾いた不安定な姿勢で取り付けられ、フランジ10の回転に伴いディスクロータ5に面振れを起こさせやすいものとなる。
【0013】
なお、この場合、このような凸状部を機械加工してフランジ10の外端面上から除去するにしても相当な労力とコストとがかかる。
【0014】
したがって、本発明は、ハブユニットにおいて、作業用貫通孔や回転バランス用貫通孔などの形成に際してのフランジの外端面からの凸状部の高さの差異を解消して、ハブホイールのフランジ外端面に対するディスクロータの取り付け姿勢を安定させることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のハブユニットは、ハブホイールの外周に形成された円形のフランジの外端面にディスクブレーキ装置のディスクロータが取り付けられるハブユニットであって、前記フランジには、同一径の複数のボルト取付用貫通孔と、複数の作業用貫通孔とが周方向に等間隔に切削形成され、前記各作業用貫通孔は、切削ドリルで形成する際に孔周辺に発生する凸状部が、フランジの外端面円周方向に均等に発生し、かつ、凸状部それぞれの高さが同一となるように同一径に切削形成されている。
【0017】
本発明によると、前記作業用貫通孔を形成しても、その作業用貫通孔周辺に発生する凸状部は、フランジの外端面円周方向に均等に発生し、かつ、それぞれの高さはほぼ同一となるから、ハブホイールのフランジ外端面に対するディスクロータの取り付け姿勢を安定させることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様として、前記フランジには、前記ボルト取付用貫通孔と前記作業用貫通孔とが、それぞれ等間隔に形成されている。また、本発明の好ましい実施態様として、前記作業用貫通孔は、その中心が前記ボルト取付用孔の中心よりも径方向内側に配置されている。さらに、本発明の好ましい実施態様として、前記作業用貫通孔は、楕円形に形成されている。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0028】
図1および図2に本発明の一実施形態を示している。図1は、実施形態のハブユニットの縦断面図、図2は、図1の(2)−(2)線に沿う断面図である。これらの図において、図6ないし図8と同一の部分には同一の符号を付している。
【0029】
図中、1はハブユニット、2はハブホイール、3は複列外向きアンギュラ玉軸受、4はドライブシャフト、5はディスクブレーキ装置のディスクロータ、6はシャフトケース、7はディスクブレーキ装置のブレーキパッドである。
【0030】
ディスクロータ5は、ハブホイール2のフランジ10の外端面に対して密着するようにあてがわれ、フランジ10の円周数箇所、実施形態では5箇所、において均等間隔に設けられているボルト取付用貫通孔11に貫通状態で非分離に嵌入されるボルト12によって当該フランジ10の外端面に固定される。
【0031】
ボルト12のねじ軸部において頭部側の領域にはセレーション13が形成されている。ボルト12のセレーション13は、ボルト取付用貫通孔11の円形内周面に対して食い込ませられ、これによって、ボルト12は、ボルト取付用貫通孔11に嵌入装着される。各ボルト取付用貫通孔11は、互いに対して、フランジ10における円周方向均等間隔に設けられている。
【0032】
この実施形態で特徴とする構成は、フランジ10において周方向で隣り合うボルト取付用貫通孔11の間の各領域それぞれに、作業用貫通孔14が設けられているとともに、作業用貫通孔14は、円周等間隔でかつ互いに同一外形寸法に設定されているである。
【0033】
この場合、ボルト取付用貫通孔11と作業用貫通孔14は、円周等間隔に設けられている。
【0034】
したがって、実施形態によると、作業用貫通孔14を形成しても、その作業用貫通孔14周辺に発生する凸状部は、フランジ10の外端面円周方向に均等に発生し、かつ、それぞれの高さはほぼ同一となるから、ハブホイール2のフランジ10外端面に対するディスクロータ5の取り付け姿勢を安定させられる。
【0035】
したがって、ボルト12を非分離としたフランジ10の外端面に対してディスクロータ5を高精度で密着させることが可能になり、ディスクロータ5の回転精度の向上に貢献できるようになる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0037】
(1)実施形態では、フランジ10において周方向で隣り合うボルト取付用貫通孔11の間の領域のすべてに作業用貫通孔14が設けられているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば図3で示すように、フランジ10において周方向で隣り合うボルト取付用貫通孔11の間の領域のうち、少なくとも1箇所に作業用貫通孔14を設け、残りの領域のすべてに、その作業用貫通孔14の形成に関係して回転バランス用貫通孔15を設け、作業用貫通孔14と回転バランス用貫通孔15の外形寸法が同一であればよい。
【0038】
つまり、フランジ10において周方向で隣り合うボルト取付用貫通孔11間の領域に設けられる貫通孔は、そのすべてが作業用貫通孔14であっても、1つないし複数の作業用貫通孔14とし残りを回転バランス用貫通孔15とした貫通孔の組み合わせであってよい。
【0039】
この場合、作業用貫通孔14や回転バランス用貫通孔15のそれぞれは、互いに対して円周等間隔に設置され、かつ、同一外形寸法に設定されているとともに、作業用貫通孔14の個々は、それぞれ周方向で隣り合うボルト取付用貫通孔11に対してほぼ均等な離隔距離でもって配置されている。
【0040】
(2)実施形態では、作業用貫通孔14は、円形であったが、例えば、図4で示すように、楕円形やその他の形状であっても外形寸法が同一であればよい。つまり、作業用貫通孔14は、六角レンチなどの所要の工具が通れる形状であればよく、必ずしも、円形である必要はないからである。もちろん、回転バランス用貫通孔15も楕円形やその他の形状であっても同様である。
【0041】
(3)実施形態では、作業用貫通孔14は、ボルト取付用貫通孔11から円周方向において等距離の位置に形成されているが、例えば、図5で示すように円周方向で不等距離の位置に形成されるものが参考例として考えられる。
【0042】
(4)実施形態では、作業用貫通孔14や回転バランス用貫通孔15は、各ボルト取付用貫通孔11の間に1つであったが、これに限定されるものではなく、それぞれ複数の作業用貫通孔14や回転バランス用貫通孔15が設けられてもそれぞれの外形寸法が同一であり、ほぼ互いに円周方向等距離にあればよい。
【0043】
(5)実施形態では、貫通孔14,15は、それぞれ、作業用またはバランス用であったが、これに限定されるものではなく、ダミー用の貫通孔であっても、そのダミー用の貫通孔が、作業用貫通孔14や回転バランス用貫通孔15と円周方向等距離でかつ同一の外形寸法であればよい。
【0044】
(6)実施形態では、ハブユニット1として駆動輪用を例示したが、図示しない周知の従動輪用のものでも本発明を適用できる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、作業用貫通孔や回転バランス用貫通孔を形成しても、それら貫通孔周辺に発生する凸状部は、フランジの外端面円周方向に均等に発生し、かつ、それぞれの高さはほぼ同一となるから、ハブホイールのフランジ外端面に対するディスクロータの取り付け姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態のハブユニットの縦断面図
【図2】 図1の(2)−(2)線に沿う断面図
【図3】 フランジの他の変形例に係る図2対応図
【図4】 フランジの他の変形例に係る図2対応図
【図5】 フランジの参考例に係る図2対応図
【図6】 従来のハブユニットの縦断面図
【図7】 図6の(7)−(7)線に沿う断面図
【符号の説明】
1 ハブユニット
2 ハブホイール
3 ドライブシャフト
5 ディスクロータ
10 ハブホイール
11 ボルト取付用貫通孔
12 ボルト
13 ボルトのセレーション
14 作業用貫通孔
15 回転バランス用貫通孔
Claims (4)
- ハブホイールの外周に形成された円形のフランジの外端面にディスクブレーキ装置のディスクロータが取り付けられるハブユニットであって、
前記フランジには、同一径の複数のボルト取付用貫通孔と、複数の作業用貫通孔とが周方向に等間隔に切削形成され、
前記各作業用貫通孔は、切削ドリルで形成する際に孔周辺に発生する凸状部が、フランジの外端面円周方向に均等に発生し、かつ、凸状部それぞれの高さが同一となるように同一径に切削形成されていることを特徴とするハブユニット。 - 請求項1に記載のハブユニットにおいて、
前記フランジには、前記ボルト取付用貫通孔と前記作業用貫通孔とが、それぞれ等間隔に形成されていることを特徴とするハブユニット。 - 請求項1に記載のハブユニットにおいて、
前記作業用貫通孔は、その中心が前記ボルト取付用孔の中心よりも径方向内側に配置されていることを特徴とするハブユニット。 - 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のハブユニットにおいて、
前記作業用貫通孔は、楕円形に形成されていることを特徴とするハブユニット。
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