JP3899370B2 - 自動分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液、尿等の検体を、比色タイプの乾式分析素子、電解質タイプなどの乾式分析素子に点着し、検体中の所定の生化学物質の物質濃度、イオン活量等の成分を求める生化学分析装置等の自動分析装置に関し、特に乾式分析素子に付与された素子情報の読み取り処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、検体の小滴を点着供給するだけでこの検体中に含まれている特定の化学成分または有形成分を定量分析することのできる比色タイプの乾式分析素子や検体に含まれる特定イオンのイオン活量を測定することのできる電解質タイプの乾式分析素子が開発され、実用化されている。これらの乾式分析素子を用いた生化学分析装置は、簡単かつ迅速に検体の分析を行うことができるので、医療機関、研究所等において好適に用いられている。
【0003】
比色タイプの乾式分析素子を使用する比色測定法は、検体を乾式分析素子に点着した後、これをインキュベータ内で所定時間恒温保持して呈色反応(色素生成反応)させ、次いで検体中の所定の生化学物質と乾式分析素子に含まれる試薬との組み合わせにより予め選定された波長を含む測定用照射光をこの乾式分析素子に照射してその光学濃度を測定し、この光学濃度から、予め求めておいた光学濃度と所定の生化学物質の物質濃度との対応を表す検量線を用いて該生化学物質の濃度を求めるものである。一方、電解質タイプの乾式分析素子を使用する電位差測定法は、上記の光学濃度を測定する代わりに、同種の乾式イオン選択電極の2個1組からなる電極対に点着された検体中に含まれる特定イオンの活量を、参照液を用いてポテンシオメトリで定量分析することにより求めるものである。
【0004】
上記いずれの方法においても、液状の検体は検体容器(採血管等)に収容して装置にセットするとともに、その測定に必要な乾式分析素子を装置に搭載し、乾式分析素子を搭載位置から点着部およびインキュベータへ搬送する一方、点着機構の点着ノズルによって検体を搭載位置から点着部へ供給して乾式分析素子へ点着するものである。
【0005】
また、乾式分析素子を構成する試薬の種類によって測定項目が異なり、この試薬種別すなわち測定項目に応じて点着方式、測光方式などが異なり、個々の乾式分析素子にはその試薬種別を含む素子情報が、バーコード記録方式等によって付与されている。この乾式分析素子を用いて測定を行う場合には、サンプルトレイから乾式分析素子を取り出して、素子情報を読み取り、読み取った素子情報に基づいて、その乾式分析素子の測定項目に応じた測定動作を行うように制御している。さらに、乾式分析素子の試薬には、その試薬ロット差により測定誤差を有するものがあり、この試薬ロット差を補正するための試薬ロット情報を、乾式分析素子の容器に磁気カードを添付し、分析装置では容器を開封して新たな試薬ロットの乾式分析素子を使用する場合には、添付カードを分析装置に読み込ませて試薬ロット差を補正して分析結果を演算することが実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−264535号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記乾式分析素子に付与する素子情報に試薬種別情報の他に試薬ロット情報も加えることが考えられるが、小さな乾式分析素子に付与する情報量が増大することに伴って、その読み取りエラーが発生する可能性が上昇し、これに伴う分析処理の稼働率の低下を招く問題がある。
【0008】
具体的には、乾式分析素子に付与された素子情報の読み取りにエラーが発生したときは、測定を中断して素子情報を別途入力するか、乾式分析素子を交換し、または、その乾式分析素子に対する測定は中止してスキップし、次の乾式分析素子の測定を続行するように設定される。この測定が中止された検体については、該当する測定項目の乾式分析素子に、再度検体を点着して測定する再測定を行わなければならず、いずれの場合においても、測定作業が煩雑となる。
【0009】
特に、乾式分析素子の試薬種別によっては、試薬ロットが異なってもその影響による測定誤差が精度上問題とならないものも存在し、このような乾式分析素子についても、試薬ロット情報の読み取りのエラーに伴って測定を中止したり、再測定を行うように設定することは処理効率の低下原因となる。
【0010】
本発明はかかる点に鑑み、乾式分析素子に試薬ロット情報を含む素子情報を付与した際の試薬ロット情報の読み取りにエラーがあった場合などに対応して再測定することなく測定が効率よく行えるようにした自動分析装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動分析装置は、乾式分析素子に付与された素子情報を読み取る読み取り機を備え、前記乾式分析素子に検体を点着し、前記素子情報に対応した分析情報に基づいて前記検体の成分を測定演算する自動分析装置において、
前記乾式分析素子に付与された素子情報は、試薬ロット差を補正するための試薬ロット情報を含み、前記読み取り機による前記素子情報の読み取りにおいて、前記試薬ロット情報の読み取りにエラーが発生した場合に、予め取得していた特定の試薬ロットに対応する分析情報に基づいて測定演算処理を実行し、その分析結果に注意を促す注意マークを付加するエラー処理機能を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
前記注意マークが付加された分析結果に対し、正規の試薬ロット情報が入力された際に、前記分析結果の再演算を行う再演算機能をさらに備えるのが好適である。
【0013】
また、本発明の他の自動分析装置は、乾式分析素子に付与された素子情報を読み取る読み取り機を備え、前記乾式分析素子に検体を点着し、前記素子情報に対応した分析情報に基づいて前記検体の成分を測定演算する自動分析装置において、
前記乾式分析素子に付与された素子情報は、測定項目を規定する試薬種別情報と、試薬ロット差を補正するための試薬ロット情報とを含み、前記読み取り機による前記素子情報の読み取り処理には、予め特定の試薬種別に試薬ロット無視の設定を行い、前記読み取り機により前記試薬ロット無視の試薬種別情報を読み取った乾式分析素子に対しては、前記試薬ロット情報の読み取り状態にかかわらず、予め取得していた分析情報に基づいて測定演算処理を実行する機能を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の効果】
上記のような本発明によれば、乾式分析素子には試薬種別情報と試薬ロット情報とを含む素子情報が付与され、その試薬ロット情報の読み取りにエラーが発生した場合に、予め取得していた試薬ロットに対応する分析情報に基づいて測定演算処理を実行し、その分析結果に注意を促す注意マークを付加するエラー処理機能を備えたことにより、試薬ロット情報の読み取りエラーがあっても測定が中断されず、測定を実行することにより再測定を不要として効率のよい分析処理が行え、分析結果には注意マークが付加されて読み取りエラーがあったことが判別でき、分析結果の信頼性が高まる。
【0015】
また、注意マークが付加された分析結果に対し、正規の試薬ロット情報の入力により再演算を行う再演算機能をさらに備えたものでは、再度の検体点着測定によらずに測定精度の高い分析結果を得ることができる。
【0016】
一方、他の本発明によれば、乾式分析素子に付与された素子情報を読み取る読み取り機の読み取り処理に、試薬ロット無視に設定された試薬種別情報を読み取った乾式分析素子に対しては、予め取得していた分析情報に基づいて測定演算処理を実行する機能を備えたことにより、試薬ロット差により分析結果の精度に実質的に影響を受けない試薬種別については試薬ロット情報の読み込み状態にかかわらず測定を実行し、読み込みエラーがあった場合においても不必要な分析中止が生じることなく、分析精度を維持しつつ効率のよい測定が実施できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。この実施形態では生化学分析装置による自動分析装置の例であり、図1は一実施形態の生化学分析装置の外観を示す斜視図、図2は生化学分析装置の概略機構を示す部分断面正面図、図3は生化学分析装置の素子搬送位置での要部機構の平面図、図4は乾式分析素子の搬送経路部分の断面正面図、図5はサンプルトレイが読み取り位置へ移動した状態を示す概略平面図、図6は乾式分析素子の平面図および底面図、図7は読み取り処理のフローチャートである。
【0018】
図1〜図5により生化学分析装置1の全体構成を説明する。この生化学分析装置1の測定機構は、サンプルトレイ2、点着部3、第1のインキュベータ4、第2のインキュベータ5、点着機構6、素子搬送機構7、移送機構8、チップ廃却部9、素子廃却機構10などを備えてなる。
【0019】
上記機構を備えた生化学分析装置1の外観は、図1のように、全体を囲むように箱状に形成された装置筐体20の前側上部が左右の前カバー53,54で覆われている。左側の前カバー53の表面には操作パネル55が設置され、その内部には下部に第1のインキュベータ4、素子廃却機構10が配設され、透明材料による右側の前カバー54の内部にはサンプルトレイ2が設置され、サンプルトレイ2と第1のインキュベータ4との間には点着部3、第2のインキュベータ5、移送機構8、チップ廃却部9が配設され、上部には左右に移動する点着機構6が設置されている。
【0020】
また、筐体20の上部の左側にプリンタ57が設置され、筐体20の上面に設けられたプリンタ57の排紙口57aより、不図示の印刷された記録紙が排出される。一方、筐体20の上部の右側にはカードリーダ56が設置されている。
【0021】
ここで、本発明に使用する乾式分析素子12を図6に基づき説明する。図6は比色タイプの乾式分析素子12を示し、点着された検体の呈色度合を測定するために使用される。この乾式分析素子12はプラスチックによる表裏の矩形状のマウント部12a内に試薬層を有する測定要素12bが保持されてなる。図6(a)に示す表面のマウント部12aの中央には、点着孔12cが開口されて測定要素12bの表面が露出し、この部分に検体の点着が行われる。また、図6(b)に示す裏面のマウント部12aの中央には、測光孔12dが開口されて測定要素12bの裏面が露出し、この部分の呈色度合が生化学分析装置1の後述の測光ヘッド96によって測定される。この比色タイプの乾式分析素子12は、異なる試薬(塗布物)で構成された測定要素12bによって測定項目が異なる複数種類のものが同一形状に設けられ、その試薬種別情報(測定項目番号、検体種番号など)と、試薬ロット情報(製造ロット番号、その他製造に係わる固有の番号)とを含む素子情報が設定符号化されたドット配列パターン12eが付与されている。
【0022】
このドット配列パターン12eによる素子情報は、試薬種別情報および試薬ロット情報を含み、乾式分析素子12の裏面のマウント部12aにおける前部と後部の幅方向の中央部分にドット印刷によって形成されている。また、中央の測光孔12dの近傍には、試薬種別情報を含み試薬ロット情報は含まない横縞状のバーコードパターン12fが印刷によって形成されている。また、乾式分析素子12の表面のマウント部12aには、測定項目名12gが印字されている。
【0023】
なお、バーコードパターン12fは、従来機種の分析装置にも使用可能とするためのものである。生化学分析装置1におけるカードリーダ56は、従来タイプの試薬ロット情報が付与されていない乾式分析素子12と、それに添付された試薬ロット情報が記録された磁気カードを用いて測定する際に使用する。また、電解質タイプの乾式分析素子は図示してないが、上記と同様のパターン12e,12fの印刷によって素子情報が付与される。
【0024】
次に、図3に示すように前記サンプルトレイ2は円形で、検体を収容した検体容器11、未使用の乾式分析素子12(比色タイプの乾式分析素子および電解質タイプの乾式分析素子)を収容した素子カートリッジ13、消耗品(ノズルチップ14、希釈液容器15、混合カップ16および参照液容器17)を搭載する。なお、検体容器11は検体アダプタ18を介して搭載され、ノズルチップ14はチップラック19に多数収納されて搭載される。
【0025】
点着部3は、サンプルトレイ2の中心線の延長上に配置され、搬送された乾式分析素子12に血漿、全血、血清、尿などの検体の点着が行われるもので、点着機構6によって比色測定タイプの乾式分析素子12には検体を、電解質タイプの乾式分析素子12には検体と参照液を点着する。この点着部3に続いてノズルチップ14が廃却されるチップ廃却部9が配置されている。
【0026】
第1のインキュベータ4は円形で、チップ廃却部9の延長位置に配置され、比色タイプの乾式分析素子12を収容して所定時間恒温保持し、比色測定を行う。第2のインキュベータ5(図3参照)は、点着部3の側方における隣接位置に配設され、電解質タイプの乾式分析素子12を収容して所定時間恒温保持し、電位差測定を行う。
【0027】
素子搬送機構7(図4参照)は、詳細は示していないが、前記サンプルトレイ2の内部に配設され、このサンプルトレイ2の中心と第1のインキュベータ4の中心とを結び、点着部3およびチップ廃却部9を通る直線状の素子搬送経路R(図3)に沿って、乾式分析素子12をサンプルトレイ2から点着部3へ、さらに第1のインキュベータ4へ搬送する素子搬送部材71(搬送バー)を備える。素子搬送部材71はガイドロッド38により摺動自在に支持され、不図示の駆動機構によって往復移動操作され、先端部は縦板34のガイド穴34aに挿入され、このガイド穴34aを摺動する。
【0028】
移送機構8は点着部3を兼ねて設置され、点着部3から第2のインキュベータ5へ、素子搬送経路Rと直交する方向に、電解質タイプの乾式分析素子12を移送する。
【0029】
点着機構6は上部に配設され、昇降移動する点着ノズル45が前述の素子搬送経路Rと同一直線上を移動し、検体および参照液の点着、希釈液による検体の希釈混合を行う。点着ノズル45は、先端にノズルチップ14を装着し、該ノズルチップ14内に検体、参照液等を吸引し吐出するもので、その吸引吐出を行う不図示のシリンジ手段が付設され、使用後のノズルチップ14はチップ廃却部9で外されて落下廃却される。
【0030】
素子廃却機構10(図3参照)は第1のインキュベータ4に付設され、測定後の比色タイプの乾式分析素子12を第1のインキュベータ4の中心部に押し出して落下廃棄する。なお、前記素子搬送機構7によって廃却することもできる。また、第2のインキュベータ5で測定した後の電解質タイプの乾式分析素子12は、前記移送機構8によって廃却穴69に廃棄される。
【0031】
また、サンプルトレイ2の近傍には、血液から血漿を分離する不図示の血液濾過ユニットが設置されている。
【0032】
各部の機構を具体的に説明する。まず、サンプルトレイ2は、正転方向および逆転方向に回転駆動される円盤状の回転ディスク21と、その中央部の円盤状の非回転部22とを有する。
【0033】
回転ディスク21には、図3に示すように、各検体を収容した採血管等の検体容器11を検体アダプタ18を介して保持するA〜Eの5つの検体搭載部23と、これに隣接して各検体の測定項目に対応して通常複数の種類が必要とされる未使用の乾式分析素子12を積み重ねた状態で収容した素子カートリッジ13を保持する5つの素子搭載部24と、多数のノズルチップ14を保持孔に並んで収容したチップラック19を保持する2つのチップ搭載部25と、希釈液を収容した3つの希釈液容器15を保持する希釈液搭載部26と、希釈液と検体とを混合するための混合カップ16(多数のカップ状凹部が配置された成形品)を保持するカップ搭載部27とが円弧状に配置されている。
【0034】
また、非回転部22には、素子搬送経路Rの延長上で点着ノズル45の移動範囲に、参照液を収容した参照液容器17を保持する筒状の参照液搭載部28を備え、この参照液搭載部28には、参照液容器17の開口部を開閉する蒸発防止蓋35(図2)が設置されている。
【0035】
蒸発防止蓋35は、下端が非回転部22に揺動可能に枢支された揺動部材37に保持され、閉方向に付勢されている。揺動部材37の上端係止部37aが点着機構6の移動フレーム42の下端角部42aと当接可能であり、参照液の吸引時に近接移動した移動フレーム42により揺動部材37が開方向に揺動され、蒸発防止蓋35が参照液容器17を開口して点着ノズル45による参照液吸引が可能となる。その他の状態では蒸発防止蓋35が参照液容器17の開口部を閉塞して参照液の蒸発を防止し、その濃度変化による測定精度の低下を阻止する。
【0036】
前記回転ディスク21は、外周部が支持ローラ31で支持され、中心部が不図示の支持軸に回転自在に保持されている。また、回転ディスク21の外周には、不図示のタイミングベルトが巻き掛けられ、駆動モータによって正転方向または逆転方向に回転駆動される。非回転部22は上記支持軸に回転不能に取り付けられている。
【0037】
前記素子カートリッジ13は、図4に示すように、上方から未使用の乾式分析素子12が混在状態で通常複数枚重ねられて挿入される。前記素子搭載部24に装填されると、下端部が素子搭載部24の底壁24aに保持され、素子搬送面と同一高さに最下端部の乾式分析素子12が位置し、最下端部の前面側には1枚の乾式分析素子12のみが通過し得る開口13aが、後面側には素子搬送部材71が挿通可能な開口13bが形成されている。
【0038】
また、乾式分析素子12の下面に付与された素子情報を素子カートリッジ13の下方から読み取れるように、素子カートリッジ13の底面には窓部13cが、素子搭載部24の底壁24aにも窓部24bがそれぞれ形成されている。
【0039】
そして、サンプルトレイ2の下方に、乾式分析素子12のドット配列パターン12eによる素子情報を読み取る読み取り機33が設置されている。この読み取り機33は、図3に示す素子搬送位置から、サンプルトレイ2の作動により、回転ディスク21が回動し、図5に示すように、検体容器11(検体搭載部23)が点着ノズル45の移動経路(素子搬送経路R)上の吸引位置に移動したときに、その検体の測定に使用する乾式分析素子12を収容した素子カートリッジ13(素子搭載部24)が移動した位置の下方に設置されている。つまり、図示の場合、読み取り機33は、検体搭載部23と素子搭載部24との位相ピッチだけ素子搬送経路Rからずれた位相角度で、素子搭載部24の回転位置に設置されている。なお、図3では回転ディスク21を一部切除して読み取り機33を示し、図4では読み取り機33を便宜的に素子搬送経路Rにある素子搭載部24の下方に示している。
【0040】
上記読み取り機33は、ドット記録方式に対応してCCDカメラで構成される。この読み取り機33による乾式分析素子12の素子情報の読み取りは、対応する検体容器11からの検体吸引および乾式分析素子12の搬送に先行して行う。そして、乾式分析素子12に付与された素子情報の読み取りによって得られた6桁または4桁の数字から試薬種別情報、試薬ロット情報等を求めることができ、さらに、記録パターン等から、表裏および前後方向が認識できる。これにより、セット不良が検出でき、ワーニングを発することが可能である。さらに、測定項目によっては、参照液、希釈液が必要な場合があり、そのための消耗品14〜17が不足する場合、検体の種類と乾式分析素子12の分析項目との不一致等があった場合にもワーニングを発することが可能である。素子情報の読み取りのエラー処理機能については図7に基づき説明する。
【0041】
また、前記検体アダプタ18は筒状に形成され、上部から検体容器11が挿入される。この検体アダプタ18は、不図示の識別部を有し、検体の種類(処理情報)、検体容器11の種類(サイズ)等の情報が設定され、測定の初期時点でサンプルトレイ2の外周部に配設された識別センサ30(図3)によってその識別が読み取られ、検体の希釈の有無、血漿濾過の有無などが判別されると共に、検体容器11のサイズに伴う液面変動量が算出され、それに応じた処理制御が行われる。血漿濾過が必要な検体容器11に対しては、アダプタ18に検体容器11を挿入した上に、濾過フィルターを備えたホルダーがスペーサ(いずれも不図示)を介して装着される。
【0042】
点着部3および移送機構8は、サンプルトレイ2と第1のインキュベータ4との間に素子搬送経路Rと直交する方向に長い支持台61を備え、その上に移動可能に摺動枠62が設置されている。この摺動枠62には、点着用開口63a(図4)が形成された第1素子押え63および第2素子押え64が隣接して一体に移動可能に装着されている。第1素子押え63(第2素子押え64も同様)は、支持台61に面する底面に、前記素子移動経路Rに沿って乾式分析素子12が通過する凹部63bを有する。また、摺動枠62は、一端部がガイドバー65に案内され、他端部側の長溝62aにピン66が係合され、さらに、ラックギヤ62bに駆動モータ68の駆動ギヤ67が噛合して移動される。支持台61には、第2のインキュベータ5および廃却穴69が設置されている。
【0043】
そして、図3のように、第1素子押え63が点着部3に位置している際には、点着後の比色タイプの乾式分析素子12は素子搬送機構によって押し出されて第1のインキュベータ4に移送される。一方、電解質タイプの乾式分析素子12への点着が行われると、摺動枠62が移動されて点着後の乾式分析素子12は第1素子押え63に保持されたまま支持台61上を滑るように第2のインキュベータ5に移送され、電位差測定が行われる。その際には、第2素子押え64が点着部3(点着位置)に移動し、その後に搬送される比色タイプの乾式分析素子12に対する検体の点着および第1のインキュベータ4への搬送が可能である。第2のインキュベータ5での測定が完了すると、摺動枠62がさらに移動されて測定後の乾式分析素子12を廃却穴69に移送して落下廃却する。
【0044】
なお、比色タイプの乾式分析素子12を搬送する際には第2素子押え64を点着部3に移動させておき、電解質タイプの乾式分析素子12が搬送されるときのみ、第1素子押え63を点着部3に移動させるようにしてもよい。
【0045】
点着機構6(図2)は、固定フレーム40の水平ガイドレール41に、横方向に移動可能に保持された移動フレーム42を備え、この移動フレーム42に昇降移動可能に2本の点着ノズル45が設置されている。移動フレーム42には中央に縦ガイドレール43が固着され、この縦ガイドレール43の両側に2つのノズル固定台44が摺動自在に保持されている。ノズル固定台44の下部には、それぞれ点着ノズル45の上端部が固着され、上部に上方に延びる軸状部材が駆動伝達部材47に挿通されている。ノズル固定台44と駆動伝達部材47との間に介装された圧縮バネにより、ノズルチップ14の嵌合力を得るようになっている。ノズル固定台44は駆動伝達部材47と一体に上下移動可能であると共に、点着ノズル45の先端部にノズルチップ14を嵌合する際に、圧縮バネの圧縮でノズル固定台44に対して駆動伝達部材47が下降移動可能である。上記駆動伝達部材47は、上下のプーリ49に張設されたベルト50に固定され、不図示のモーターによるベルト50の走行に応じて上下移動する。なお、ベルト50の外側部位には、バランスウェイト51が取り付けられ、非駆動時の点着ノズル45の下降移動が防止される。
【0046】
また、移動フレーム42は不図示のベルト駆動機構によって横方向に駆動され、2つのノズル固定台44は独自に上下移動するように、その横移動および上下移動が制御され、2つの点着ノズル45は、一体に横移動すると共に、独自に上下移動するようになっている。例えば、一方の点着ノズル45は検体用であり、他方の点着ノズル45は希釈液用および参照液用である。
【0047】
両点着ノズル45は棒状に形成され、内部に軸方向に延びるエア通路が設けられ、下端にはピペット状のノズルチップ14がシール状態で嵌合される。この点着ノズル45にはそれぞれ不図示のシリンジポンプ等に接続されたエアチューブが連結され、吸引・吐出圧が供給される。また、この吸引圧力の変化に基づき検体等の液面検出が行えるようになっている。
【0048】
チップ廃却部9は、搬送経路Rを上下方向に交差して設けられ、上部材81および下部材82を備える。このチップ廃却部9における支持台61には、楕円形に開口された落下口83が形成されている。上部材81は支持台61の上面に固着され、落下口83の直上部位には係合切欠き84が設けられ、下部材82は支持台61の下面に落下口83の下方を囲むように筒状に形成され、落下するノズルチップ14をガイドするようになっている。
【0049】
そして、ノズルチップ14が装着されている点着ノズル45を、上部材81内に下降させてから横方向に移動させ、その係合切欠き84にノズルチップ14の上端を係合してから、点着ノズル45を上昇移動させてノズルチップ14を抜き取り、外れたノズルチップ14は落下口83を通して落下廃却される。
【0050】
比色測定を行う第1のインキュベータ4は、外周部に円環状の回転部材87を備え、この回転部材87は内周下部に固着された傾斜回転筒88が下部のベアリング89に支持されて回転自在である。回転部材87の上部に上位部材90が一体に回転可能に配設されている。上位部材90の底面は平坦であり、回転部材87の上面には円周上に所定間隔で複数(図2の場合13個)の凹部が形成されて両部材87,90間にスリット状空間による素子室91が形成され、この素子室91の底面の高さは搬送面の高さと同一に設けられている。また、傾斜回転筒88の内孔は測定後の乾式分析素子12の廃却孔92に形成され、素子室91の乾式分析素子12がそのまま中心側に移動されて落下廃却される。
【0051】
上位部材90には図示しない加熱手段が配設され、その温度調整によって素子室91内の乾式分析素子12を所定温度に恒温保持する。また上位部材90には、図4に示すように、素子室91に対応して乾式分析素子12のマウントを上から押えて検体の蒸発防止を行う押え部材93が配設されている。上位部材90の上面には保温カバー94が配設される一方、この第1のインキュベータ4は全体が遮光カバー95によって覆われる。さらに、回転部材87の各素子室91の底面中央には測光用の開口91aが形成され、この開口91aを通して図2に示す位置に配設された測光ヘッド96による乾式分析素子12の反射光学濃度の測定が行われる。第1のインキュベータ4の回転駆動は、不図示のベルト機構により行われ、往復回転駆動される。
【0052】
廃却機構10は、外周側から中心方向に素子室91内に進退移動する廃却バー101を備えている。この廃却バー101は後端部が水平方向に走行するベルト102に固定され、駆動モータ103の駆動によるベルト102の走行に応じ、素子室91から測定後の乾式分析素子12を押し出して廃却する。なお、廃却孔92の下方には測定後の乾式分析素子12を回収する回収箱が配設される。
【0053】
また、イオン活量を測定する第2のインキュベータ5は、前述の摺動枠62の第1素子押え63が上位部材となり、その底部の凹部によって測定本体97の上面との間に1つの素子室が形成される。この第2のインキュベータ5には、図示しない加熱手段が配設され、その温度調整によって乾式分析素子12のイオン活量を測定する部分を所定温度に恒温加熱する。さらに、測定本体97の側辺部にはイオン活量測定のための3対の電位測定用プローブ98が出没して乾式分析素子12のイオン選択電極に接触可能に設けられている。
【0054】
なお、不図示の血漿濾過ユニットは、サンプルトレイ2に保持された検体容器11(採血管)の内部に挿入され上端開口部に取り付けられたガラス繊維からなるフィルターを有する不図示のホルダーを介して血液から血漿を分離吸引し、ホルダー上端のカップ部に濾過された血漿を保持するようになっている。
【0055】
上記のような生化学分析装置1の動作、測定条件の設定等は、筐体20に設置された前記操作パネル55からの入力によって行われる。この操作パネル55(インターフェース)は、表示画面、スタートキー、ストップキー、検体キー、消耗品キー、手動キー、緊急キー、キャリブレーションキー、テンキー、印刷キーなど、指先で押して各種の指示操作を行う操作キーが配設されている。この操作パネル55は、不図示の制御系に接続され、そこに登録されている制御プログラムに基づく測定演算処理が設定され、自動測定動作、手動測定動作、緊急測定動作、キャリブレーション動作、印刷動作などが選択実行され、測定値に基づき前記素子情報に対応する分析情報によって分析結果を(成分濃度)を算出するようになっている。そして、測定結果を出力記録するため、設定値の確認などのために、これらのデータをプリンタ57によって印刷する。
【0056】
図7は読み取り機33による乾式分析素子12に付与された素子情報の読み取り処理を示すフローチャートである。
【0057】
まず、測定スタート後、ステップS1で乾式分析素子12の素子情報すなわち試薬種別(測定項目)および試薬ロット情報の読み込みを行う。つまり、読み取り機33によって、乾式分析素子12に付与されているドット配列パターン12eによる素子情報を読み取って、試薬種別/試薬試薬ロット情報を取り込む。
【0058】
そして、ステップS2で試薬種別の読み取りが正常に行われたか否かを判定する。この判定がYESで試薬種別の読み取りが正常に行われた場合には、ステップS3でその試薬種別が試薬ロット無視に設定されているが否かを判定する。
【0059】
ステップS3の判定がNOで、試薬ロット情報に応じた分析結果の演算を行う場合には、ステップS4で試薬ロット情報の読み取りが正常に行われたか否かを判定する。この判定がYESで試薬ロット情報の読み取りが正常に行われた場合には、ステップS5で試薬ロット情報から、登録されている分析情報を検索し、それに基づいて分析結果を算出する。つまり、予め装置のメモリには、各試薬ロットに対応する分析情報が入力されており、読み込まれた試薬ロット情報から該当する分析情報を検索して、それに基づいて測定値を補正しつつ検体の成分濃度等の分析結果を算出するものである。
【0060】
上記ステップS4の判定がNOで、試薬ロット情報の読み取りにエラーがあった場合には、ステップS6で予め登録されている試薬ロットに対応する複数の分析情報の1つに基づいて分析結果を算出する。そして、ステップS7で、この算出結果には試薬ロット情報が異なっている可能性があるので、注意マーク(ワーニング情報)を付加する。
【0061】
また、上記注意マークが付加された分析結果については、示してないが、試薬ロットが異なる場合に分析結果を再演算して正確な値を求める再演算処理機能を備えている。これは、ユーザーが乾式分析素子12の容器等よりその試薬ロットを確認し、算出に使用した試薬ロットと異なることが判明した場合に、試薬ロット情報を入力して再演算指令を行うことによって、正確な試薬ロットに対応した分析結果を算出するものである。
【0062】
つまり、上記読み取りエラー処理は、1つの試薬種別に対する試薬ロットに応じた分析情報が複数あり、この複数の分析情報を予め登録しておき、使用する乾式分析素子12に付与された試薬ロット情報に応じてその選択を行い、分析結果の算出に用いるものである。そして、乾式分析素子12の試薬ロット情報が読み込めない場合に、特定の試薬ロットに対応する1つの分析情報で分析結果を算出し、それが実際は異なる試薬ロットであったことが判明した際には、正しい試薬ロット情報を入力することによって、正しい試薬ロットに応じた分析情報を用いて再演算して正確な分析結果を算出するものである。
【0063】
また、前記ステップS3の判定がYESで、該当する試薬種別が試薬ロット無視に設定されている場合には、ステップS8で予め保存された乾式分析素子12に応じた分析情報に基づいて分析結果を算出する。つまり、試薬ロット情報が正常に読み取られたときも、その読み取りにエラーがあった場合でも、その試薬ロット情報の有無にかかわらず、乾式分析素子12の種類毎に備えた分析情報に基づいて分析結果を演算する。
【0064】
上記試薬ロット無視に設定される試薬種別は、乾式分析素子12の試薬ロット差による誤差が精度上問題とならず、試薬ロット情報を必要としないものである。しかし、乾式分析素子12には製造管理等からロット番号等のロット情報が付与されており、その情報の読み取りが行われ、その読み取りのエラーに伴って測定が中止されることが防止できることになる。
【0065】
一方、前記ステップS2の判定がNOで試薬種別が読み取れなっかった場合には、ステップS9で分析測定を中止する。
【0066】
本実施形態によれば、試薬ロット情報の読み取りにエラーがあっても、測定を中止することなく、試薬ロットと整合していない可能性がある分析情報を使用して分析結果を演算し、必要に応じて再演算処理を行って修正できるようにした。これにより、再度の検体点着測定を不要とする。試薬ロット無視できるものは、それを明確に設定して読み取りエラーによる影響を受けないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の生化学分析装置の外観を示す斜視図
【図2】生化学分析装置の概略構成を示す部分断面正面図
【図3】図2の生化学分析装置の素子搬送位置での点着機構を除く要部機構の平面図
【図4】乾式分析素子の搬送経路部分の断面正面図
【図5】サンプルトレイが読み取り位置へ移動した状態を示す概略平面図
【図6】乾式分析素子の平面図および底面図
【図7】乾式分析素子に付与された素子情報の読み込み処理を示すフローチャート
【符号の説明】
1 自動分析装置(生化学分析装置)
2 サンプルトレイ
3 点着部
6 点着機構
11 検体容器
12 乾式分析素子
12e ドット配列パターン(素子情報)
13 素子カートリッジ
14 ノズルチップ
33 読み取り機
45 点着ノズル
55 操作パネル
Claims (4)
- 乾式分析素子に付与された素子情報を読み取る読み取り機を備え、前記乾式分析素子に検体を点着し、前記素子情報に対応した分析情報に基づいて前記検体の成分を測定演算する自動分析装置において、
前記乾式分析素子に付与された素子情報は、試薬ロット差を補正するための試薬ロット情報を含み、
前記読み取り機による前記素子情報の読み取りにおいて、前記試薬ロット情報の読み取りにエラーが発生した場合に、予め取得していた特定の試薬ロットに対応する分析情報に基づいて測定演算処理を実行し、その分析結果に注意を促す注意マークを付加するエラー処理機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。 - 乾式分析素子に付与された素子情報を読み取る読み取り機を備え、前記乾式分析素子に検体を点着し、前記素子情報に対応した分析情報に基づいて前記検体の成分を測定演算する自動分析装置において、
前記乾式分析素子に付与された素子情報は、測定項目を規定する試薬種別情報と、試薬ロット差を補正するための試薬ロット情報とを含み、
前記読み取り機による前記素子情報の読み取りにおいて、前記試薬種別情報の読み取りが行え、前記試薬ロット情報の読み取りにエラーが発生した場合に、予め取得していた特定の試薬ロットに対応する分析情報に基づいて測定演算処理を実行し、その分析結果に注意を促す注意マークを付加するエラー処理機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。 - 前記注意マークが付加された分析結果に対し、正規の試薬ロット情報が入力された際に、前記分析結果の再演算を行う再演算機能をさらに備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
- 乾式分析素子に付与された素子情報を読み取る読み取り機を備え、前記乾式分析素子に検体を点着し、前記素子情報に対応した分析情報に基づいて前記検体の成分を測定演算する自動分析装置において、
前記乾式分析素子に付与された素子情報は、測定項目を規定する試薬種別情報と、試薬ロット差を補正するための試薬ロット情報とを含み、
前記読み取り機による前記素子情報の読み取り処理には、予め特定の試薬種別に試薬ロット無視の設定を行い、前記読み取り機により前記試薬ロット無視の試薬種別情報を読み取った乾式分析素子に対しては、前記試薬ロット情報の読み取り状態にかかわらず、予め取得していた分析情報に基づいて測定演算処理を実行する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。
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