JP3898249B2 - 転写媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被転写体に粘着層を転写するための転写媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
被転写体に粘着剤層を感圧又は感熱的に転写するため、基材フィルムに、粘着剤層を剥離可能に形成した糊テープが知られている。しかし、この糊テープを用いて被転写体に粘着剤層を転写し、粘着剤層に、メモ用紙などの被貼付基材などを一旦接着すると、粘着剤層の粘着力が大きいため、粘着剤層から被貼付基材が剥離不能である。そのため、粘着剤層に対して被貼付基材を繰り返し粘着させることができない。
【0003】
一方、被貼付基材に対して再剥離可能な糊テープを用いると、粘着剤層を壁などの被転写体に転写し、粘着層の表面を利用して、「ポストイット」的に同一又は異なる被貼付基材を繰り返し貼合せて表示できるという利点がある。
特開平5−239413号公報には、支持体と、この支持体に対して剥離可能なアクリレートベースの感圧接着剤フィルムとを有する接着剤転写テープにおいて、感圧性の接着剤フィルムが微細なアルギン酸を含む転写テープが開示されている。この転写テープは、アクリレートベースの接着剤の水性分散液に、アルギン酸塩の水溶液を添加し、水性混合物を撹拌下に酸性に調整してアルギン酸を微細な分散状態で沈澱させた分散液を、支持体に塗布し、水分を蒸発させることにより得られる。
しかし、前記転写テープにおいて、接着剤フィルム中には微細なアルギン酸が均一に分散しているため、被転写体に対する粘着力と、被貼付基材に対する粘着力とが同じである。そのため、被転写体に対する粘着力を大きくすると、被貼付基材を再剥離可能に貼合せることができず、被貼付基材に対する再剥離性を高めるため、粘着力を小さくすると、被転写体に対する粘着力が低下し、長時間に亘り表示できなくなる。また、接着層の粘着力を小さくすると、メモ用紙などの被貼付基材を接着層から剥離するとき、接着層が層間剥離し、被貼付基材に粘性を有する接着剤が残存し、被貼付基材の取扱い性を損なう。さらに、分散体の接着剤を含む水性混合物のpHを酸性にしてアルギン酸を析出させるため、接着剤粒子の分散安定性や水性混合物の安定性が低下するだけでなく、接着剤や分散液の種類が限定される虞がある。
【0004】
さらに、前記先行文献には、表示物などの被貼付基材を再剥離可能とするため、支持体に、粘着力の小さな第1の接着層と、粘着力が大きな第2の接着層とを順次形成し、第1の基材に接着剤フィルムを転写すると、表面側に位置する第1の接着剤層を利用して第2の基材を繰り返し再剥離できることも記載されている。
しかし、支持体に粘着力の小さな接着剤を塗布した後、粘着力の大きな接着剤を塗布すると、表面側に粘着力が大きな第2の接着層が位置するため、塗工性も含めて生産効率が低下し、転写テープを連続的に効率よく製造することが困難である。また、粘着力の異なる複数種の接着剤を用いるため、コスト的にも不利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、被転写体に対しては強固に接着できるにも拘らず、被貼付基材に対しては再剥離可能な粘着層を有する転写媒体およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、汎用の粘着剤を用いても、粘着層の粘着力を利用して被貼付基材を長期間に亘り繰返し剥離可能な転写媒体およびその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記の如き優れた特性を有する転写媒体を簡便かつ効率よく安価に製造できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、非造膜性層を介して基材に粘着層を形成すると、粘着層の粘着剤が前記非造膜層の非造膜部を通じて基材の表面に分散した状態で滲出すること、前記粘着層とともに非造膜層を被転写体に転写させると、粘着剤本来の大きな粘着力により粘着層を被転写体に接着できるとともに、転写した剥離層の表面では粘着力を低減できることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の転写媒体は、基材の一方の面に、非造膜性樹脂を含む塗布剤を塗布して形成された非造膜性の剥離層と粘着層とが順次形成されている。この転写媒体において、前記剥離層の非造膜部を通じて、粘着層の粘着剤は基材面に滲出する。転写媒体が巻回されたテープ状などである場合、基材の他方の面には離型層を形成する。
本発明の転写媒体は、基材の一方の面に、非造膜性樹脂を含む塗布剤と、粘着剤とを順次塗布することにより製造できる。
【0008】
前記転写媒体では、粘着層の粘着剤が非造膜性の剥離層を含浸し、剥離層の非造膜部を通じて粘着剤が基材面に滲出しているようである。そのため、粘着層を剥離層とともに非転写体に転写すると、非転写体に接する粘着層は粘着剤本来の粘着力F1を発現し、剥離層の表面(すなわち、転写状態で表面側に位置し、被貼付基材を接着する面)では粘着力F2が低減する(F1>F2)。従って、被転写体に対しては強固に接着できるにも拘らず、層間剥離を生じさせることなく、被貼付基材に対しては再剥離可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明の形態をより詳細に説明する。
図1は本発明の転写媒体の一例を模式的に示す概略断面図であり、図2は被転写体に転写した粘着層の使用状態を示す概略断面図である。
この例の転写媒体は、可撓性基材1と、この基材の一方の面に形成された非造膜性剥離層2と、この剥離層の上に形成され、被転写体に転写される粘着層4と、前記基材1の他方の面に形成された離型層5とで構成されている。前記剥離層2には、非造膜性に起因して多数の非造膜部(クラック、連通孔など)3が形成され、この非造膜部3を通じて、粘着層4の粘着剤は基材1の面に至っている。
【0010】
前記基材1は、剥離層とともに粘着層が被転写体に転写可能である限り、特に制限されず、金属、ガラスなどのセラミックスなどであってもよいが、プラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、スチレン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610などのポリアミド、ポリカーボネート、セルロースアセテートなどの繊維素系ポリマーなど;紙類、例えば、グラシン紙、ワックスやシリコーン化合物などの撥水剤や離型剤により処理された撥水処理紙などが挙げられる。好ましい基材には、可撓性を有する基材(例えば、プラスチック基材など)が含まれ、撥水処理や離型処理が施されていてもよい。
前記基材の形態は、用途に応じて選択でき、フィルム又はシート状などであってもよいが、巻回して使用する場合にはテープ状(特にプラスチックテープ)である場合が多い。
基材の厚みは、被転写体に対する転写効率や可撓性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜30μm程度である場合が多い。
【0011】
非造膜性剥離層2は、種々の非造膜性組成物、例えば、非造膜性樹脂を含む溶液又は分散液状組成物などで形成できる。非造膜性樹脂には、例えば、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどが含まれる。
【0012】
好ましい非造膜性樹脂には、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂などが含まれる。セルロース系樹脂には、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが含まれる。アクリル系樹脂には、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸C1-4 アルキルエステルを主たる成分とする樹脂が含まれ、共重合性モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸C1-10アルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン系モノマーなど)との共重合体であってもよい。好ましいアクリル系樹脂には、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸C1-10アルキルエステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸C1-10アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン−アクリル酸C1-10アルキルエステル共重合体などが含まれる。
スチレン系樹脂には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマーを主たる成分とする樹脂が含まれ、共重合性モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル、無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイミド誘導体、アクリロニトリルなど)との共重合体であってもよい。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体などが含まれる。
【0013】
前記非造膜性樹脂は、有機溶媒又は水に溶解した溶液として使用してもよく、非造膜性樹脂粒子が分散したエマルジョンなどの分散体としても使用できる。非造膜性樹脂は、水性エマルジョンなどの分散体として使用する場合が多い。このような非造膜性樹脂を含む塗布剤を基材に塗布すると、乾燥塗膜にクラック状、多孔質状などの非造膜部を形成できる。すなわち、非造膜性樹脂が溶解した組成物を基材に塗布すると、乾燥塗膜にクラック、ボイドなどの非造膜部(欠陥部)が形成される。また、非造膜性樹脂粒子を含む分散体(エマルジョン)を基材に塗布すると、乾燥塗膜の粒子間には、非造膜部として空隙部や間隙部が形成される。そのため、非造膜部に粘着剤が含浸して滲出するため、粘着剤が基材面に至り散在した粘着部として露出する。
【0014】
前記非造膜性組成物は、前記非造膜性樹脂に加えて無機粉粒体(シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウムなど)、塗布剤の溶媒に不溶な有機粉粒体(例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、熱硬化性樹脂など)を含んでいてもよい。このような組成物では、非造膜性樹脂をバインダーとして利用できるため、基材に対する塗布性をさほど低下させることなく円滑に塗布でき、粉粒体の間に、非造膜性樹脂による非造膜部としての空隙部や間隙部を形成できる。
【0015】
なお、粘着剤の滲出を損なわない限り、非造膜性組成物は、造膜性のバインダー(例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの低ガラス転移温度の樹脂)を含んでいてもよく、造膜性バインダーは、溶媒に可溶であってもよく、エマルジョンなどの分散体であってもよい。
【0016】
剥離層2の厚みは、粘着層の粘着剤が浸透又は滲出可能であればよく、例えば、0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1.5μm(例えば、0.3〜1μm)程度である場合が多い。
このような剥離層は、前記非造膜性材料を含む塗布液を基材に塗布することにより形成できる。前記塗布液の塗布量は、例えば、乾燥後の塗布量0.1〜2g/m2 、好ましくは0.2〜1.5g/m2 、さらに好ましくは0.3〜1g/m2 程度である。
【0017】
前記剥離層2上に形成された粘着層4は、種々の粘着剤、例えば、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴムなど)、アクリル系重合体、ビニルエーテル系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系重合体、ポリウレタン、シリコーン樹脂などで形成できる。
【0018】
好ましい粘着層は、アクリル系重合体で構成されたアクリル系粘着剤を含んでいる。アクリル系重合体としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸−C1-10アルキルエステルを主たる成分とする重合体を用いる場合が多く、アクリル系重合体は、前記アクリル酸アルキルエステルと、共重合性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(メチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなど)、スチレン系モノマー(スチレン、α−メチルスチレンなど)、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどとの共重合体であってもよい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルを用いる場合が多く、共重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチルなどを用いる場合が多い。
前記粘着剤は、溶液又は分散体として使用できるが、塗工作業性などの点から水性エマルジョンなどの分散体として用いる場合が多い。
【0019】
粘着層の厚みは、剥離層を通じて粘着剤が基材面に滲出可能であればよく、例えば、3〜50μm、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜20μm程度であり、10〜30μm程度である場合が多い。
粘着層は、前記粘着剤を含む塗布剤を前記剥離層上に塗布することにより形成できる。塗布剤の塗布量は、乾燥後の塗布量3〜50g/m2 、好ましくは5〜30g/m2 、さらに好ましくは10〜30g/m2 程度である。
【0020】
粘着層は、前記粘着剤に加えて、種々の添加剤、例えば、着色剤(染料、顔料、蛍光染料、蛍光顔料など)、安定剤(酸化防止剤や紫外線吸収剤など)、粘着付与剤(ロジンエステル、石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂など)、可塑剤(フタル酸エステルなど)などを含んでいてもよい。また、粘着層は、粘着性を調整するため、充填剤などを含んでいてもよい。
【0021】
前記のように、粘着層4の粘着剤は、剥離層2を含浸し、剥離層の非造膜部(連通孔など)3を通じて基材1の表面に分散した状態で滲出しているようである。すなわち、基材と接する剥離層の面には連通孔を通じて粘着剤が滲出して、散在した接着部を形成している。そのため、基材と接する剥離層の面は、被転写体に接する粘着層の表面に比べて、基材と接する剥離層の面に占める粘着剤の面積が小さくなり、剥離層の面に露呈する一部の粘着剤でしか接着できない。従って、剥離層の面に占める粘着剤の面積割合(剥離層に対する非造膜部の割合)を、例えば、粘着剤の粘着力に応じて、非造膜性樹脂の種類、非造膜性樹脂粒子のサイズなどにより調整することにより、基材に対する剥離層の粘着力をコントロールできる。
基材1に対する剥離層2の粘着力は、30〜100g/cmである。
また、粘着層4の粘着力は200〜450g/cmであることが好ましく、250〜350g/cm程度であることが特に好ましい。粘着層4の粘着力が200g/cm未満である場合、被転写体6への接着力が十分ではない。また、450g/cmより大きい場合、被貼着基材7に対する接着力が強すぎ、被貼着基材7を再剥離することが困難となるためである。
【0022】
なお、剥離層2の一方の面は、その前面で粘着層4に接着している。そして、剥離層の他方の面は、その一部に浸出した粘着材により基材1に接着されている。したがって、被転写材6に粘着層4を転写する際、剥離層2は粘着層4と共に転写される。
【0023】
前記基材の他方の面に形成された離型層5は、慣用の離型剤、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素化合物、ワックス、高級脂肪酸又はその塩、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドなどの低表面張力の面を形成可能な離型剤で形成できる。基材のうち粘着剤とは反対側の面に離型層を形成すると、転写媒体を巻回して使用する場合、粘着層同士の自己接着を防止できる。離型層の厚みは特に制限されず、例えば、0.1〜2μm程度であってもよく、離型剤は基材に含浸していてもよい。
【0024】
このような転写媒体は、図2に示されるように、被転写体6(例えば、壁,机,ボード,ファイルや書類の標識又は識別部位や表示部位,封筒の糊代など)に粘着層4を転写すると、表面側には、粘着剤が粘着部として分散状態で表面に露呈した剥離層2が位置する。そのため、被転写体6に対しては粘着剤本来の粘着力F1で接着できるのに対して、被貼付基材7(例えば、メモ用紙、標識又は識別片など)に対しては、剥離層表面に露呈した粘着剤の粘着力F2(F1>F2)で接着できる。そのため、剥離層2の表面で弱められた粘着剤の粘着力F2を利用して、被貼付基材7を再剥離可能に貼付できる。また、剥離層2に粘着剤が含浸しており、転写に際して剥離層2が層間剥離することもない。上記F1とF2とは、(F1−F2)≧30g/cmであることが好ましい。これは、(F1−F2)≧30g/cmであれば、被貼付基材7を再剥離することが容易にできるためである。また、その際に、粘着層4の層間剥離を確実に防止できるためである。
【0025】
なお、基材のうち粘着層と反対側の面は、必ずしも離型処理する必要はない。また、剥離層および粘着層を被転写体に有効に転写するためには、基材と剥離層との間に離型層を形成するのが有利である。この離型層は前記と同様に離型剤を塗布したり、基材に含浸させることにより形成できる。基材と剥離層との間の離型層は、前記剥離層と同様に、粘着層の粘着剤が基材表面に滲出可能であってもよい。
【0026】
好ましい転写媒体は、リールから繰出し可能なテープ状の転写媒体である。テープ状の転写媒体が巻き取られた繰出しリールは、通常、転写装置のケーシング内に回転可能に収容されている。
すなわち、転写装置は、テープ状転写媒体が巻き取られた繰出しリールを回転可能に収容するケーシングと、このケーシングに形成された開口部と、この開口部から外方に突出し、かつ粘着層が外面に面した状態で、繰出しリールから繰り出された転写媒体が掛け渡される突出転写部と、粘着層を被転写体に転写した後の基材をケーシング内で巻き取るため、ケーシング内で回転可能に収容された巻取リールと、前記繰出しリールからの繰出しに連動して巻取リールで基材を巻き取るため、繰出しリールの回転を巻取リールに伝達する回転伝達手段(ギヤなど)とで構成されている。なお、繰出しリールから繰り出された転写媒体は、緊張状態で、突出転写部を経て巻取リールに掛け渡されている。また、突出転写部で被転写体に粘着層をシャープに切断して転写するため、突出転写部の先端は、比較的鋭角である場合が多い。このような転写装置を用いると、転写装置を被転写体に対して相対的に押圧しながら移動させ、転写部の外面に位置する粘着層を剥離層とともに被転写体に転写可能である。
【0027】
本発明の転写媒体は、基材の一方の面に、必要に応じて離型剤を塗布し、非造膜性樹脂を含む塗布剤と、粘着剤とを順次塗布することにより製造できる。また、基材の他方の面にも離型剤を塗布してもよい。粘着剤の塗布は、非造膜性樹脂を含む塗布剤を塗布して乾燥させた後で行ってもよいが、通常、塗布剤と粘着剤とを順次塗布した後、乾燥してもよい。なお、基材の両面が離型剤により処理されている場合には、基材の一方の面に塗布剤と粘着剤とを順次塗布し、乾燥することにより転写媒体を製造できる。
リールから繰出し可能なテープ状転写媒体は、粘着剤層を表面側に位置させてリールに巻き取る場合が多い。この場合は、粘着層が設けられた反対側の面に、離型層5を形成することが好ましい。これは、リールに巻いた状態で、粘着層が基材に接着することを防止するためである。
本発明の転写媒体は、写真、メモ用紙、識別,標識又は表示片などの被貼付基材を繰返し貼付するのに有用である。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)の一方の面に、非造膜性樹脂組成物としてのアクリル系樹脂(水性アクリル系樹脂,大日本印刷(株)製)を乾燥後の塗布量約1g/cm2 で塗布した後、橙色に着色したアクリル系粘着剤(水性アクリル系樹脂エマルジョン,東亜合成(株)製)を乾燥後の塗布量約15g/cm2 で塗布した。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の面には、シリコーン系離型剤(大日本印刷(株)製)を塗布し、離型層を形成することにより、フィルム状転写媒体を作成した。
【0029】
実施例2
非造膜性樹脂組成物としてのアクリル系樹脂に代えて、セルロース系樹脂(エチルセルロース(東亜合成(株)製))を用いる他は、実施例1と同様にしてフィルム状転写媒体を作成した。
【0030】
比較例
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)の両面に、実施例1の離型剤を塗布した後、一方の離型層に、非造膜性樹脂組成物を塗布することなく、実施例1のアクリル系粘着剤を、実施例1と同様にして塗布し、フィルム状転写媒体を得た。
【0031】
評価試験
上記実施例1〜2と比較例で得られた転写媒体の基材フィルム側の面の接着力(すなわち基材フィルムの塗布面と粘着層との接着力F1)と反対側の面の接着力(すなわち基材フィルムの非塗布面と粘着層との接着力F2)をJIS Z 0237の方法により調べた。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1及び2で得られた転写媒体は、粘着層による粘着力F1が大きいにも関わらず、フィルムと剥離層との粘着力F2は小さい。そのため、被貼付部材たる上記普通紙2を再剥離することができる。なお、比較例で得られた転写媒体は粘着力F1とF2がほぼ同じ値を示し、被貼付部材たる普通紙2を正常に再剥離することができなかった。
【0033】
実施例1〜2及び比較例で得られた転写媒体をそれぞれ幅6mmにスリットしてリールに巻き取り、得られた繰出しリールを市販の転写装置(ゼネラル(株)、「ピタタ」)に装着した。ついで、各転写媒体の粘着層を普通紙1(三菱製紙(株)製、「スピードダイヤ」)に転写した。転写された粘着層を別の普通紙2(同上)に押圧して2枚の普通紙を接着した後、両者を剥離させ、剥離後の状態を目視で確認した。
その結果、実施例1〜2で得られた転写媒体を用いて粘着層を転写させると、普通紙1と普通紙2は容易に剥離し、転写媒体の転写層は、普通紙1のみに残り、普通紙2には全く残っていなかった。また、普通紙2のうち粘着層が接着されていた接着部では、紙の剥がれ、破れ等は認められなかった。
一方、比較例で得られた転写媒体の粘着層を転写させると、普通紙1及び普通紙2は容易に剥離できず、両者を無理矢理剥離させたところ、普通紙2は粘着層が接着されていた接着部から破れた。
【0034】
【発明の効果】
本発明の転写媒体は、非造膜性剥離層と粘着層とを組み合わせているため、被転写体に対しては強固に接着できるにも拘らず、被貼付基材に対しては低減した粘着力により再剥離可能である。また、添加剤などで粘着力を調整することなく、汎用の粘着剤を用いても、粘着層の粘着力を利用して被貼付基材を長期間に亘り繰返し剥離可能である。
本発明の方法では、非造膜性塗布剤と粘着剤とを基材に順次塗布するという簡単な操作で、前記の如き優れた特性を有する転写媒体を簡便かつ効率よく安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の転写媒体の一例を模式的に示す概略断面図である。
【図2】図2は被転写体に転写した粘着層の使用状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…基材
2…非造膜性剥離層
3…非造膜部
4…粘着層
5…離型層
6…被転写体
7…被貼付基材
Claims (8)
- 基材の一方の面に、非造膜性の剥離層と粘着層とが順次形成されている転写媒体であって、前記非造膜性の剥離層が非造膜性樹脂を含む塗布剤を塗布して形成され、非造膜性樹脂の非造膜性に起因して形成された非造膜部を通じて、粘着層の粘着剤が基材面に滲出し、前記基材に対する剥離層の粘着力が30〜100g/cmであり、被貼付基材を繰り返し剥離可能である転写媒体。
- 基材の他方の面に離型層が形成されている請求項1記載の転写媒体。
- 基材と剥離層との間に離型層が形成されている請求項1記載の転写媒体。
- プラスチックテープの一方の面に、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂から選ばれた少くとも一種の樹脂を含み、かつ乾燥後の塗布量が0.1〜2g/m2の非造膜性剥離層と、アクリル系粘着剤を含み、かつ乾燥後の塗布量が5〜30g/m2の粘着層とが順次形成され、前記テープの他方の面に離型層が形成されているとともに、繰出し可能にリールに巻き取られている請求項1記載の転写媒体。
- 基材の一方の面に、(1)非造膜性樹脂を含む塗布剤を塗布して形成された非造膜性剥離層と、(2)粘着剤で構成され、かつ前記剥離層の非造膜部を通じて前記基材面に滲出している粘着層とが順次形成され、前記基材の他方の面に離型層が形成されているとともに、前記基材に対する剥離層の粘着力が30〜100g/cmである転写媒体。
- 基材の一方の面に、非造膜性樹脂を含む塗布剤と、粘着剤とを順次塗布する請求項1記載の転写媒体を製造する方法。
- 剥離層面の接着力(F2)と剥離層が形成されていない面の接着力(F1)との差(F1−F2)が30g/cm以上である請求項1記載の転写媒体。
- 請求項1記載の転写媒体であってテープ状の転写媒体が巻き取られた繰出しリールを、回転可能に収容するケーシングと、このケーシングに形成された開口部と、この開口部から外方に突出し、かつ粘着層が外面に面した状態で、繰出しリールから繰り出された転写媒体が掛け渡される突出転写部と、粘着層を被転写体に転写した後の基材をケーシング内で巻き取るため、ケーシング内で回転可能に収容された巻取リールと、前記繰出しリールからの繰出しに連動して巻取リールで基材を巻き取るため、繰出しリールの回転を巻取リールに伝達する回転伝達手段とで構成されている転写装置。
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