JP3898160B2 - 反転式トップセパレーターを備えた連続蒸解缶装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存の気相蒸解缶を改変し、満液蒸解缶と同じモードで操作することができる連続式蒸解缶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
細砕セルロース繊維材を連続蒸解して、紙製品の原料であるセルロースパルプを製造する技術には、実質的に二種の蒸解缶:満液蒸解缶と、2相または気相蒸解缶とがある。満液蒸解缶は、耐圧の槽で、内部に細砕セルロース繊維材と液が満杯になっているものであり、この槽へ液を入れたりあるいは槽かから液を抜いたりすると、通常大気圧より高い槽内圧力は影響を受ける。気相蒸解缶は、液が満杯になっておらず、頂部には大気圧より高い圧力のスチームが充満している。このガスゾーンは、下部の液ゾーンに較べて圧縮性が高いので、気相蒸解缶内の圧力は、普通、蒸解缶頂部に存在するガスの圧力によって定まる。従来技術の気相蒸解缶は、米国特許第3,380,883号、第3,429,773号、第3,532,594号、第3,578,554号、および第3,802,956号の各明細書に記載されている。
【0003】
パルプ薬剤と細砕セルロース繊維材とを反応させて化学パルプを製造するには、140〜180℃の範囲の温度が必要である。大気圧条件では、セルロース材を処理するのに使われる薬剤水溶液は、そのような温度では沸騰してしまうので、商業的化学パルプ製造工程は、少なくとも約5バールゲージ(すなわち、少なくとも約70psiゲージ)の圧力の下で耐圧槽の中で行われるのが普通である。
【0004】
これら二種の蒸解缶の操作法の間の顕著な差の一つは、蒸解缶の内容物が所望の140〜180℃へ如何に加熱されるかである。満液蒸解缶では、細砕セルロース繊維材(普通は木材チップ)と蒸解液とは、加熱液循環手段、すなわち、一本または複数の循環ループによって加熱されるのが普通である。液は、普通、蒸解缶から、例えば、円環式スクリーンアセンブリとポンプとを用いて抜き出され、間接熱交換器でスチームで加熱され、槽の中心に挿入されているパイプを用いて槽内のセルロース材に再導入される。気相蒸解缶では、チップは、スチームにチップを曝すことによって加熱されるのが普通である。このスチーム加熱は、蒸解缶の頂部にあるスチーム充満ゾーンにチップが導入される時に行われるのが普通である。
【0005】
加熱方法に加えて、満液蒸解缶と気相蒸解缶との操作は、槽内のチップと液のレベルを監視、制御するのに用いられる方法においても異なる。満液蒸解缶は液が満杯であるので、チップのレベルだけを監視すればよい。満液蒸解缶のチップレベルは、普通、機械式回転羽根を用いて監視される。回転羽根の曲がり(たわみ)を電子式ストレインゲージなどのデバイスで検出する。普通は二個以上、好ましくは三個以上の電子/機械式デバイスを満液蒸解缶の内面に備える。回転羽根の位置にチップがあるかないかは、チップで各回転羽根が曲がる(たわむ)か動かされる程度で決定される。各回転羽根の動かされかたは、ストレインゲージで検出され、満液蒸解缶内のチップの概略レベルが数学的アルゴリズムで決定され、パーセント表示される。オペレーターは、満液蒸解缶出入のパルプ量を変えてチップレベルを変化させることができる。
【0006】
気相蒸解缶では、二つのレベルを監視し、制御しなければならない。チップのレベルは、満液蒸解缶と同様であるが、これに液のレベルが加わる。しかし、満液蒸解缶とは異なり、気相蒸解缶ではチップは蒸解缶の頂部の液に浸漬してはいない。気相蒸解缶の性質上、チップを加熱スチームに直接曝す必要があるので、気相蒸解缶のチップレベルは液面の上になる。この浸漬されていない(露出した)チップ面は、普通、蒸解缶の側面に取り付けられたガンマ線放射/検出デバイスで検出される。気相蒸解缶の液面は、従来の液圧検出デバイス、例えば、「DPセル」で検出される。
【0007】
更に、チップは、二種類の蒸解缶には異なる機械装置で導入される。木材チップ、または他の細砕セルロース繊維材は、普通、別個の供給装置を用いて連続蒸解缶の入口へ供給される。供給装置に普通備えられるのは、脱気、加熱、加圧の装置や、チップと液とのスラリーを蒸解缶へ移送する前にチップに蒸解液を混ぜる装置である。満液蒸解缶の場合は、このチップ/液スラリーは、この技術分野で「トップセパレータ」と呼ばれる下向きのスクリュー式コンベヤーで導入される。気相蒸解缶では、スラリーが気相へ導入されるので、チップ/液のスラリーは、スクリュー式コンベヤーで上向きに輸送され、コンベヤーの頂部でチップと液が溢流し、スチーム充満の雰囲気に自由落下する。この上向き流と、チップと液の溢流とは、気相蒸解缶に理想的に適合したものである。何故ならスラリーを蒸解缶へ導入する時のガスの漏洩が防止されるとともに、過剰の液を除去するのに堰式液貯留部ができるからである。この装置は、「反転式トップセパレーター」としてこの技術分野で知られている。両装置とも、スラリーから過剰の液を分離し、この液を、スラリー化用液の源として供給システム(例えば、従来の高圧フィーダー)へ戻すことができる。これらの装置の機能は同じようなものではあるが、蒸解缶の形式に応じて明確に適用される。
【0008】
従来、満液蒸解缶と気相蒸解缶の構造と操作は、明確に異なるものである。一の形式の蒸解缶を他の形式の蒸解缶と同じように操作しようということは、当業者なら考えもしない筈である。少なくともそれぞれの蒸解缶に顕著な改造を加えなければならない。例えば、気相蒸解缶には、満液蒸解缶の加熱に必要な円環式スクリーンや液循環は同じ数だけは備わっていないのが普通である。また、満液蒸解缶には、気相蒸解缶が必要とする液面上のチップレベルを検出するデバイスは備わっていない。更に、二種の頂部セパレータは構造も操作モードも異なっている。
【0009】
気相蒸解缶には、満液蒸解缶に比較して欠点が幾つかある。例えば、木材チップをスチームに直接曝すのはチップ繊維に有害な恐れがある。チップをスチームに曝すことによって普通起こる温度の急激な変化は、チップに不均一処理を引き起こす恐れがある。例えば、チップに蒸解薬剤が均一に浸透しない場合は、この温度上昇によって蒸解薬剤と、チップのセルロース成分と非セルロース成分との間に不均一反応が起こる恐れがある。この結果、パルプの品質が低下し、例えば、紙の強度が落ちることになることもあるし、不均一脱リグニンとなることもある。液満杯の満液蒸解缶では、より均一の加熱と処理が行われるので、液に浸漬されているチップに不均一処理が行われる危険性は少ない。
【0010】
気相蒸解缶は、チップと液の相対的レベルの変化に敏感でもある。気相蒸解缶ではチップを蒸解温度まで加熱する主要素は、スチーム雰囲気にある滞留時間であるので、この滞留時間が少なくなれば、加熱が不足することを意味する。従って、気相蒸解缶では、チップレベルは、適切な加熱を確実に行うには、液面上に十分に高く常時維持する必要がある。スチーム雰囲気の滞留時間が少なくなると、チップの加熱が不十分となり、生成パルプ中に未蒸解チップ粒子、つまり「滓」が増えることになる。であるから、気相蒸解缶の運転員は、チップと液の相対的レベルを連続的に監視し、調節しなければならない。この問題は、循環液を用いて加熱する満液蒸解缶には存在しない。
【0011】
また、気相蒸解缶の液面上に存在するチップ山は、不均一な圧力分布を引き起こしやすいので、蒸解缶のチップの垂直運動に不均一性をもたらす。すなわち、これら不均一性は「チップ柱運動」と呼ばれるものに影響を与える。液に浸漬されていると、チップ重量は、液から受ける浮力である程度軽くなる。しかし、浸漬されていない方のチップは、蒸解缶中のチップ分布次第で、下方のチップに上方から押付力を及ぼす。チップは、普通、蒸解缶の中心付近から導入されるので、円錐形のチップ山ができ、蒸解缶の壁よりもチップ柱の中央部に下向きの荷重が大きくかかる。このように中心付近に余分の荷重がかかり、一方、槽の壁には摩擦力がある関係で、蒸解缶の中央部でチップが下降する動き、つまり「チャネリング」として知られる現象が促進される。この結果起こるチップの不均一運動によって、チップは不均一処理されることになる。これが起こると、滓が増え、紙強度が低下し、蒸解液の消費量が増え、蒸解缶の操作性が悪くなる。一方、満液蒸解缶では、チップ柱の荷重変化や不均一運動は起こらない。
【0012】
しかし、必要に応じて下向きに力を更に加えることができる能力は、有利なこともある。チップ山の下向きの動きを制限して置くと、例えば、運転条件が乱れた時とか、望ましい場合には、未浸漬のチップ山を使って下向きに荷重を掛け、チップ柱の下向きの動きを促進することが考えられる。従って、液面に相対的にチップレベルを変化させる自由度を持つと、運転員は蒸解缶を制御する付加的な柔軟性を有することになる。このオプションは、従来の満液蒸解缶には本質的に欠けているものである。この能力は従来の気相蒸解缶にも本質的に持たせられていない。気相蒸解缶の気相ゾーンに必要な滞留時間で制約されているからである。従って、蒸解缶にこのような能力を賦与することは技術的に新規である。
【0013】
更に、気相蒸解缶のチップ柱レベルを監視・制御するために普通用いられるガンマ線放射/検出器も望ましいものではない。放射線を発するデバイスは、どんな種類のものであれ、工場では望ましくない。安全の問題があるばかりか、運用・維持に資格者が必要だからである。このようなデバイスを必要としない蒸解缶、例えば、満液蒸解缶が、工場経営者や維持管理者にとって好ましい。
【0014】
満液蒸解缶の方が、より効率的に、より均一にチップの加熱を行うことができる。向流加熱循環系を有する満液蒸解缶は、チップ柱に対する熱と蒸解薬剤の分散をより効率的に、より均一に行うことができることが示されている。例えば、アールストローム マシーナリー社から市販され、米国特許第5,489,363号、第5,547,012号、および第5,536,366号の各明細書に記載のローソリッド(登録商標「Lo−Solids」)蒸解に用いられる満液蒸解缶では、加熱された蒸解液兼希釈液の流れが設けられ、これを、下向きに流れるチップに対して向流に流すと、チップ柱の加熱をより均一に行うことができるし、チップ柱への液分散をより均一に行うことができる。特に、前に気相蒸解缶として構成された蒸解缶を構成し直して、向流加熱循環系を有する満液蒸解缶とすれば、元の気相蒸解缶が持っていた加熱機能と薬剤分散機能を置き換え、更には改良することができる。スチームに直接曝してチップを加熱することは、スチームエネルギーの効率的利用法でないし、更にセルロース繊維を損傷させるばかりか、装置に新たな液を持ち込んでしまうことにもなる。新たに持ち込まれた液、すなわち、スチームの凝縮液が、チップに存在する所望の液を希釈してしまうだけである。この水分を持ち込んでしまうことは、チップをスチームに直接曝す場合の本質的問題である。スチームの直接曝露を行うと、満液蒸解缶に較べ、蒸気蒸解缶では液/木材比が更に0.1〜0.3上がることになる。この追加の液は蒸解プロセスでは何ら益となることはなく、回収装置での蒸発必要量を上げるに過ぎないので不利である。更に、この加熱媒体であるスチーム凝縮液を後段のパルプ製造工程で損失してしまうことになる。これは、間接スチーム加熱の場合と全く対照的である。間接スチーム加熱では、加熱媒体は実質的になくならず、スチーム回路に循環され、必要に応じて他のところで使用もできるし、あるいはスチームを発生するのに再使用することもできる。本発明は、エネルギーと液のこの非効率な使用を回避するものである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術の欠点を解消した連続式蒸解缶装置を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の蒸解缶は、気相蒸解缶を超える明快な利点を幾つか有するのみならず、既存の気相蒸解缶を改変し、あるいは「付け替えて」、満液蒸解缶と同じモードで、より効率的に操作するのに用いることができる。
【0017】
既存の気相蒸解缶は、普通、満液蒸解缶としては操作することは不可能である。ハードウェアとオペレーションに決定的な違いがあるからである。特に、普通、気相蒸解缶を満液蒸解缶として運転できないのは、気相蒸解缶では液にチップを浸漬する前に加熱スチームにチップを直接曝露することが必須だからである。しかし、本発明では、気相蒸解缶を、満液蒸解缶として効果的に機能するように転換させることが可能であり、しかもその運転上・性能上の利点を保持し、更にチップ加熱に要する有利なメカニズムも提供するのである。
【0018】
気相型の運転の利点も幾つかは存在する。例えば、チップと液のレベルの上にガス充満の空間があるお陰で、圧力調節に対して蒸解缶への液流の変動が小さくなり得る。満液蒸解缶では槽内の圧力は、導入液、例えば、従来の圧力制御バルブ経由で導入される洗浄濾液の量を制御することによって調節される。他にも変化する条件があれば、これは圧力制御される流れに過剰な変動を与えかねない。しかし、気相蒸解缶では圧力はガス充満空間の圧力を制御して調節される。これは、普通、蒸解缶の頂部のガス充満空間の近くにある入口を通して圧縮ガスを入れることによって行われる。蒸解缶の頂部にガスを導入しても、液の流れやその下のチップ柱の動きは干渉されない。従って、そのようなガス充満空間があれば、これにスチームや圧縮ガスを含ませて、変動を緩和することになるので、蒸解缶への液の流れが、より安定化する。
【0019】
更に、加熱モードを一つから別のモードにスイッチする能力を持たせることも有利である。例えば、加熱循環スクリーンが満液式加熱の際に、満一閉塞した場合、本発明に従って設計された蒸解缶の運転員は、チップを蒸解温度に加熱するのに、蒸解缶の頂部にスチームを導入するというオプションを有し、加熱スクリーンを使わないで、閉塞物を取り除くためにチップ柱で「拭き」とり掃除したり、液で逆洗浄する余裕が生じる。
【0020】
従来技術の気相蒸解缶でもチップを向流蒸解液で処理する例も幾つかある。しかし、これらの蒸解缶では、クラフト蒸解の前に、「予備加水分解」と呼ばれる工程を行うのが普通である。予備加水分解とは、セルロース材の酸処理であり、セルロースのヘミセルロース成分を除去し、比較的純粋な形のセルロースを得ようとするものである。このようなパルプは、「ビスコースパルプ」あるいは「溶解パルプ」と呼ばれ、レーヨン繊維やセロファンなどのセルロースフィルムの製造原料に使われる。例えば、米国特許第3,380,883号に示されるように、このチップは連続蒸解缶の気相で加水分解処理され、次いでアルカリ液に浸漬されて酸による加水分解反応が停止され、その後アルカリクラフトパルプ製造反応が開始される。このアルカリ処理は向流的に行われる。
【0021】
このビスコースパルプ製造工程は、本発明のクラフトプロセスとは明確に異なる(本発明はビスコースパルプの製造には適用されない)。クラフトパルプからヘミセルロースを除くことは望ましくない(ヘミセルロースは、クラフトパルプの強度などに重要である)ばかりか、例えば、米国特許第3,380,883号に記載の処理は、明らかに、予備加水分解処理をしてから次にクラフト処理をするという特別な要求に対する問題に対処するものである。アルカリ液の向流の流れは、明らかに、アルカリ液から酸性液を分離するのに助けになるから行われている。
【0022】
本発明は、また、ガス充満空間に加えて、蒸解缶の頂部に前処理または浸透ゾーンを備えた蒸解缶を提供する。従来の気相蒸解缶では、蒸解缶の頂部へ導入されるチップは、普通、高温のスチーム、つまり、130℃を超え、普通は150℃を超える温度のスチームに直接曝露される。これらの温度では、蒸解プロセスが始まってしまうので、更に前処理するとか浸透操作を行う余裕はない。この理由は、前と同じく、従来の気相蒸解缶では、チップの温度を所望の蒸解温度、すなわち、160〜170℃に上げるのにこのスチーム加熱に実質的に依存するからである。
【0023】
本発明では、蒸解の開始を蒸解缶の頂部に限定するものではない。蒸解缶の頂部より下のところでチップを蒸解温度に加熱すること、好ましくは向流満液式加熱を行うことによって、加熱ゾーンの上の蒸解缶部を、低い温度で、例えば、前処理に用いることができる。例えば、蒸解缶の上部を、蒸解温度より低い温度でチップの並流または向流浸透操作に用いることができる。この処理ゾーンの温度は、80〜150℃、普通は90〜140℃、好ましくは100〜130℃である。この処理の温度は、ガス充満の空間に導入されるスチームの圧力や温度を調節することによって、蒸解ゾーンの温度とは別個に制御することができる。この処理の時間は、5分から2時間であるが、好ましくは10分から60分である。
【0024】
本発明の前処理温度を制御できる能力は、収率または強度向上剤、例えば、アントラキノンとその誘導体または同等品、またはポリサルファイドとその誘導体または同等品を有するチップの処理に特に有利である。例えば、アントラキノンでの処理は、普通、90〜110℃の温度に限定され、ポリサルファイドでの処理は、普通、90〜140℃の温度に限定される。従来の気相蒸解缶では蒸解缶の頂部でそのような処理を行おうとしても効果はなかった。スチームの温度が高いので、普通、添加物に干渉してしまうか、時には添加物を単純に分解してしまうからである。
【0025】
本発明は、多重基数式蒸解缶装置、例えば、蒸解缶の前に設けられる浸透槽を有する二槽式装置にも適用できる。本発明は、一槽式装置と同じように多槽式装置にも同じような柔軟性を持たせるものである。例えば、二槽式装置での浸透時間は、第二槽の頂部の蒸解温度より低い温度で行うことにより、長くすることができる。現在の二槽式気相装置では、第二槽の頂部に高温スチームを導入するので、制約がある。
【0026】
本発明の装置を用いる方法の態様の一つでは、既存のセルロースパルプ気相蒸解缶を実質的に満液蒸解缶として機能するように改造する方法が提供される。なお、この既存気相蒸解缶は、頂部と底部、頂部の反転式トップセパレーター、蒸解缶の液面より上のチップレベルを検出するデバイス、反転式トップセパレーターから第一距離に位置する蒸解缶第一液面、およびポンプを含むトリム循環系(ただし、普通は加熱装置は含まない)を備えている。本方法は、(a)チップレベルを検出するデバイスを除去または動かさないようにし、(b)反転式トップセパレーターから垂直に位置する第二液面を、第一距離よりもはるかに短い第二距離に設け、(c)トリム循環系を改造または取替して循環系の液を加熱する加熱装置を組み込むものである。普通は、液面センサは、液面を変えても動かす必要がない「DPセル」である。この「DPセル」は、参照レベルより上の水柱のヘッドを検出する。
【0027】
本発明の装置を用いる方法には、更に(d)加熱装置付の循環系と反転式トップセパレーターとの間で蒸解缶から液を抜き出すスクリーンアセンブリを設けるのを含めてもよい。本法には、上の(a)〜(d)の後に(e)改造された蒸解缶を運転するに際し、蒸解缶液面をチップレベルより上であるが反転式トップセパレーターより下に維持し、(f)液面より上のガス充満ゾーンを温度160℃未満、圧力50〜200psig(0.34〜1.38MPa)に維持し、(g)蒸解缶の底部近くからセルロースパルプを抜き出すのを含めてもよい。すなわち、ガス充満ゾーンのガスは通常大気圧より高く、例えば、50〜200psig(0.34〜1.38MPa)で、好ましくは80〜150psi(0.55〜1.03MPa)ゲージである。ガス充満ゾーンの温度は160℃未満で、普通は140℃未満で、好ましくは130℃未満である。ガス充満ゾーンのガスは空気、窒素または他の如何なるガスでもよく、スチームでもかまわないが、好ましいのは圧縮されたガスである。
【0028】
本発明の装置を用いる方法の別の態様では、頂部と底部、頂部に反転式トップセパレーター、底部に排出口を備えたセルロースパルプ蒸解缶を運転する方法が提供される。本方法は、(a)細砕セルロース繊維材と蒸解液(例えば、クラフト蒸解液)とのスラリーを反転式トップセパレーターから蒸解缶へ導入し、(b)蒸解缶液面を反転式トップセパレーターの下に確立し、(c)蒸解缶セルロース繊維材レベルを前記トップセパレーターの下(例えば、液面の下)に確立し、(d)液面より上のガス充満ゾーンを温度160℃未満、圧力50〜200psig(0.34〜1.38MPa)に確立し、(e)蒸解缶の底部近くからセルロース(例えば、クラフト)パルプを抜き出すものである。上記ステップ(d)は、ガス充満ゾーンの温度約130℃未満、圧力80〜150psig(0.55〜1.03MPa)を維持するように行われる。更に(f)液面より下のセルロース材とこれに接触する高温蒸解液との向流を確立することによって蒸解缶の頂部近くの蒸解缶セルロース材を均一に加熱する。ステップ(f)は、溶解有機物を高濃度に含有する液を抜き出し、循環ループを確立し、循環ループに抜き出された液を加熱し、蒸解液と、蒸解液とは異なる補充液とを導入するように行われる。補充液は、溶解有機物の濃度が低いものである。
【0029】
本発明の態様では、セルロースチップから化学セルロースパルプを製造する連続式蒸解缶装置が提供される。この装置は、頂部と底部を有する連続式蒸解缶、蒸解缶頂部のセパレーターであって、チップと液とを蒸解缶槽へ導入し、チップから液をある程度分離するセパレーター、セパレーターの下に蒸解槽液面を確立する手段、セパレーターの下(例えば、液面の下)に蒸解槽チップレベルを確立する手段、満液式加熱を行って蒸解槽チップを蒸解温度に上げる手段、液面より上の蒸解缶にガス充満ゾーンを確立する手段、および蒸解槽底部近くからパルプを抜き出す手段を備える。
【0030】
セパレーターは、反転式トップセパレーターが好ましいが、ガスを上にして液面を維持できる分離装置なら如何なる装置でも用いて差し支えない。ガス充満ゾーンを確立する手段は、ガス充満ゾーンへ圧縮ガスを導入する手段を備えるのが好ましいが、この機能を果たす如何なる従来構造も用いて差し支えない。蒸解缶でチップを満液式に加熱する手段は、蒸解缶頂部近くに、循環スクリーン、ポンプ、間接加熱器、導管を備えた循環ループを備え、ポンプでスクリーンから抜き出された液を加熱器で加熱し、導管で蒸解缶へ戻すものが好ましいが、その機能を果たす他の如何なる従来構造も用いて差し支えない。しかし、チップを満液式に加熱する手段は、普通、更に、循環スクリーンとセパレーターとの間の抜き出しスクリーンを備え、チップを加熱するために、これと加熱された液との向流の流れを確立する。
【0031】
チップレベルを確立する手段の一部として、蒸解缶は、普通、チップレベルを検出する手段を備える。例えば、電子ストレインゲージ付の従来的機械的回転羽根のような電子/機械デバイス一基または複数基を備える。しかし、この究極の機能を果たす好適な従来構造は如何なるものでもチップレベル確立手段として用いて差し支えない。同様に、液面確立手段は、DPセルが好ましいが、その究極の機能を果たす好適な従来構造は如何なるものでも液面確立のために用いて差し支えない。
【0032】
本発明の装置を用いる方法の更に別の態様では、頂部と底部を備えた連続式セルロース蒸解槽を運転する方法が提供される。本方法は、(a)チップと液とを蒸解槽へ導入し、分離ゾーンでチップから液を幾分分離し、(b)蒸解槽液面を分離ゾーンの下に確立し、(c)蒸解槽チップレベルを分離ゾーンの下(例えば、液面の下)に確立し、(d)蒸解槽チップを満液式に加熱し、蒸解温度まで上げ、(e)液面より上に蒸解缶のガス充満ゾーンを確立し、(f)蒸解槽の底部近くからパルプを抜き出すものである。ステップ(e)は、液面の上蒸解槽の頂部に圧縮ガス(例えば、不活性ガス)を加えて行うことができる。ガス充満ゾーンは、温度約140℃未満、圧力80〜200psig(0.55〜1.38MPa)であるのが好ましい。ステップ(d)は、チップレベルより下でチップから液を取り出し、取り出された液を加熱し、その温度を上げ、その温度が少なくとも約130℃(例えば、160℃〜180℃またはこれ以上)とし、チップレベルの下の再導入ゾーンで、この加熱された液を蒸解缶へ戻して再循環することによって行うのが好ましい。
【0033】
本発明の装置を用いる別の態様では、頂部と底部、頂部に反転式トップセパレーター、底部に排出口、頂部で約3〜5メートルの第一直径部分、および頂部より下で少なくとも約7メートル(例えば、7〜12メートル)の第二直径部分を備えたセルロース蒸解缶を運転する方法が提供される。本方法は、(a)細砕セルロース繊維材と、遊離液を含むクラフト蒸解液とを、第一直径の反転式トップセパレーター経由で蒸解缶へ導入し、(b)蒸解缶液面を反転式トップセパレーターの下に確立し、(c)蒸解缶細砕セルロース繊維材レベルをトップセパレーターの下(好ましくは、必ずしも必要ではないが、第二直径部分)に確立し、(d)液面より上のガス充満ゾーンを温度約160℃未満、圧力50〜200psig(0.34〜1.38MPa)に確立し、(e)蒸解缶の底部近くからクラフトパルプを、日量約1,000トンを超える速度で抜き出すものである。ステップ(d)は、上に記載のように行うのが好ましい。液面とチップレベルとが狭い上部にある蒸解缶の場合は、ステップ(c)は、チップレベルを上部に確立するように行われる。
【0034】
本発明の装置を用いる方法は、更に、反転式トップセパレーターの少なくとも一つの位置(例えば、複数の異なる位置)から液を抜き出し、導入された細砕セルロース繊維材スラリーから遊離液の実質的大部分(例えば、90%以上)を除き、液を蒸解缶へ(例えば、細砕セルロース繊維材レベルより上へ)導入し、少なくとも部分的にはステップ(b)の液面確立を行うようにすることができる。
【0035】
ステップ(a)と(b)とは、反転式トップセパレーターの二つの(またはそれ以上の)異なる位置(例えば、円周上に互いに約30〜180゜間隔で配置された)から液を抜き出し、この液を二つの異なるラインで異なる目的で用いるように行うのが好ましい。ステップ(b)は、普通、第一直径部分で液面を確立するように行われる。更に、(f)第二直径部分(例えば、チップレベルより上)から液を抜き出し、(g)抜き出された液の部分を循環・加熱し、(h)抜き出された部分を第一直径部分の液面の下に再導入する別のステップもある。ステップ(h)は、第一直径部分の円周の回りの複数の異なる位置に液を再導入することによって行って差し支えない。
【0036】
本発明の装置を用いる更に別の態様では、頂部と底部を備えた連続式セルロース蒸解槽を運転する方法が提供される。本方法は、(a)チップと液とを蒸解槽へ導入し、分離ゾーンでチップから液を幾分分離し、(b)蒸解槽液面を分離ゾーンの下に確立し、(c)蒸解槽チップレベルを分離ゾーンの下に確立する際に、チップレベルと液面との間に遊離液が存在するようにし、(d)蒸解槽でチップを満液式に加熱する際に、遊離液部から液を抜き出し、抜き出された液を加熱し、加熱された液を液面より下の蒸解缶へ再導入するようにし、(e)液面より上に蒸解缶のガス充満ゾーンを確立し、(f)蒸解槽の底部近くからパルプを抜き出すものである。反転式トップセパレーターを、分離ゾーンへ設けることも差し支え無く、本方法は、更に、反転式トップセパレーターの少なくとも一つの位置(好ましくは、複数の離れた位置)から液を抜き出し、導入された細砕セルロース繊維材スラリーから遊離液の実質的全部を除き、液を蒸解缶へ(例えば、細砕セルロース繊維材レベルより上へ)導入し、少なくとも部分的にはステップ(b)の液面確立を行うようにすることができる。
【0037】
本発明の別の態様では、セルロースチップから化学セルロースパルプを製造する連続式蒸解缶装置が提供される。この装置は、頂部と底部を有し、頂部で約3〜5メートルの第一直径部分、および頂部より下で少なくとも約7メートルの第二直径部分を備えた連続式蒸解槽、蒸解槽頂部の第一直径部の反転式セパレーターであって、チップと液とを蒸解缶槽へ導入し、チップから液をある程度分離する反転式セパレーター、反転式セパレーターの下でその第一直径部に蒸解槽液面を確立する手段、液面の下(例えば、第二直径部)に蒸解槽チップレベルを確立する手段、満液式加熱を行って蒸解槽チップを蒸解温度に上げる手段、液面より上の蒸解缶にガス充満ゾーンを確立する手段、および蒸解槽底部近くからパルプを抜き出す手段を備える。
【0038】
反転式トップセパレーターは、円周上に間隔を開けて配置された少なくとも第一と第二の抜き出し導管を備え、これらから液を抜き出し、抜き出し導管は、蒸解缶の異なる外部構造に連結されているのが好ましい。また、蒸解缶には、第一直径部分と第二直径部分の間に肩の部分があるのが好ましく、抜き出しスクリーンは、この肩の部分の真下の第二直径部分に設けられる。蒸解缶でチップを満液式に加熱する手段は、抜き出しスクリーンと抜き出しスクリーンに接続された循環ループを備える。循環ループは、ポンプ、間接加熱器、導管を備え、ポンプでスクリーンから抜き出された液は、加熱器で加熱され、次いで導管で蒸解缶へ戻される。導管は、第一直径部分の円周の回りの複数の異なる位置の蒸解缶へ液を再導入するのが好ましい。
【0039】
本発明の更に別の態様では、セルロースチップから化学セルロースパルプを製造する連続式蒸解缶装置が提供される。この装置は、頂部と底部を有し、頂部で第一直径部分、および頂部より下で第二直径部分を備え、第二直径部分が第一直径部分より少なくとも20%大きく(例えば、100〜300%)、第一直径部分と第二直径部分の間に肩の部分が形成されている連続式蒸解槽、肩の部分の真下の第二直径部分に設けられる抜き出しスクリーン、蒸解槽頂部の第一直径部の反転式セパレーターであって、チップと液とを蒸解缶槽へ導入し、チップから液をある程度分離する反転式セパレーター、反転式セパレーターの下でその第一直径部に蒸解槽液面を確立する手段、液面の下(例えば、第二直径部分)に蒸解槽チップレベルを確立する手段、満液式加熱を行って蒸解槽チップを蒸解温度に上げる手段、液面より上の蒸解缶にガス充満ゾーンを確立する手段、および蒸解槽底部近くからパルプを抜き出す手段を備える。
【0040】
本発明の装置を用いる方法の別の態様では、直前に記載されているような連続式セルロース蒸解缶を運転する方法が提供される。本方法は、(a)チップと液とを蒸解槽の第一直径部分へ導入し、分離ゾーンでチップから液を幾分分離し、(b)蒸解槽液面を分離ゾーンの下であるが第一直径部分に確立し、(c)蒸解槽チップレベルを分離ゾーンの下(例えば、抜き出しスクリーンの下で第二直径部分)に確立し、(d)蒸解槽でチップを満液式に加熱する際に、抜き出しスクリーン経由でチップレベルの上から液を抜き出し、抜き出された液を加熱し、加熱された液を液面より下で第一直径部分で蒸解缶へ再導入するようにし、(e)液面より上に蒸解缶のガス充満ゾーンを確立し、(f)蒸解槽の底部近くからパルプを抜き出すものである。
【0041】
本発明の装置を用いる方法の別の態様では、頂部と底部、頂部に反転式トップセパレーター、底部に排出口を備えたセルロースパルプ蒸解缶を運転する方法が提供される。本方法は、(a)細砕セルロース繊維材と、セルロース繊維材のチップを結合していない遊離液を含む液とを、反転式トップセパレーター経由で蒸解缶へ導入し、(b)蒸解缶液面を反転式トップセパレーターの最下部よりも上に確立し、(c)蒸解缶細砕セルロース繊維材レベルをトップセパレーターの下に確立し、(d)反転式トップセパレーターの少なくとも一箇所から液を抜き出し、導入された細砕セルロース繊維材スラリーから遊離液を取り出し、(e)蒸解缶の底部近くからクラフトパルプを(例えば、日量1,000トンを超える速度で)抜き出すものである。
【0042】
上記の方法を行うに際しては、ステップ(d)は、トップセパレーター近くの細砕セルロース繊維材に関して液の向流流れが起こるように行うことができるし、及び/又はステップ(d)は、抜き出された液から繊維をインライン抜き出し装置で除去するように行うこともできるし、及び/又はステップ(d)は、抜き出された液を少なくとも5℃冷却するように行うこともできるし、及び/又はステップ(d)は、周囲に配置された複数の個所から液を抜き出するように行うこともできるし、ステップ(b)は、蒸解缶を実質的に完全に満液状態に充填するように行うこともできる。反転式トップセパレーターには、多孔式のスクリュー翼を備えさせることができ、そうすれば、ステップ(d)は、この多孔式のスクリュー翼を用いて液の流れの通過を助けるように行うこともできる。蒸解缶は、頂部で約3〜5メートルの第一直径部分、および頂部より下で少なくとも約7メートルの第二直径部分を備え、この場合、反転式トップセパレーターは、第一直径部に収めることができ、ステップ(c)は第二直径部に細砕セルロース繊維材のレベルを確立するように行うことができる。また、蒸解缶は実質的に完全に向流流れで操作することができる。
【0043】
本発明の別の態様に従えば、セルロースチップから化学セルロースパルプを製造する連続式蒸解缶装置が提供され、該装置は、頂部と底部を備え、頂部には第一の小径部分と前記頂部の下には第二の大径部分とを有する連続式蒸解缶;前記蒸解缶頂部の前記第一直径部分の反転式セパレーターであって、チップと液とを前記蒸解缶へ導入し、チップから液をある程度分離する反転式トップセパレーター;満液式加熱を行って前記蒸解缶のチップを蒸解温度に上げる手段;前記反転式トップセパレーターから液を抜き出す手段;および前記蒸解缶の底部近くからパルプを抜き出す手段を備え、該蒸解缶装置が、蒸解缶液面を前記反転式トップセパレーターの最下部よりも上にし、チップレベルを蒸解缶液面の下にして運転されることを特徴とする。
【0044】
前記反転式トップセパレーターから液を抜き出す手段は、液を抜き出すために、円周上に間隔を開けて配置された少なくとも第一と第二の抜き出し導管を備えることができるが、前記抜き出し導管は、前記蒸解缶の異なる外部構造に連結されている。蒸解缶には、前記第一直径部分と第二直径部分の間に肩の部分を備えさせることができ、更に抜き出しスクリーンを、前記肩の部分の真下の前記第二直径部分に設けることができる。この装置には、更に前記蒸解缶でチップを満液式に加熱する手段が備えられ、これには、前記抜き出しスクリーンと、前記抜き出しスクリーンに接続された循環ループを備えることができる。前記循環ループは、ポンプ、間接加熱器、導管を備え、前記ポンプで前記スクリーンから抜き出された液は、前記加熱器で加熱され、次いで前記導管で前記蒸解缶へ戻される。反転式トップセパレーターには、多孔式のスクリュー翼を備えさせることができる。抜き出し手段は、少なくとも一本の導管を備え、更に、前記導管に接続されたインライン抜きだし装置を備えることができ、蒸解缶は、実質的に完全に満液状態、つまり液面が前記反転式トップセパレーターと前記蒸解缶の頂部との間にあるようにし、小さなガス空間が前記蒸解缶の頂部と前記液面との間にあるようにすることができる。
【0045】
本発明のこの目的および他の目的は、以下の詳細な図面の説明をよく吟味し、特許請求の範囲を読めば一層明白となろう。
【0046】
【発明の実施の形態】
さて、添付図面を詳細に説明する。
図1と図2は、従来の二種類の連続蒸解缶の上部を示す。気相蒸解缶10の頂部が図1に示され、満液蒸解缶20については、図2に示される。これらの蒸解缶は、パルプ製造装置では、唯一の蒸解槽である場合もあるし、例えば、二槽の内の一槽である場合もある。後者の場合、装置には第二の槽、当該技術分野で浸透槽として知られるものが備えられる。これらの蒸解缶には、普通、細砕セルロース繊維材(普通は木材チップ)と蒸解液(例えば、クラフト白液)とのスラリーが受け入れられる。このスラリーは、普通、供給装置、例えば、米国、ニューヨーク州グレンス フォールス(Glens Falls)のアールストロームマシーナリー社(Ahlstrom Machinery)から販売のローレベル(登録商標「Lo−Level」)供給装置で先ず処理される。図1の気相蒸解缶には、普通、導管11にチップと液のスラリーが供給される。蒸解缶へ供給されるスラリーは、当該技術分野で「反転式トップセパレーター」として知られる従来の垂直配置のスクリューコンベヤー12を用いて行われる。スラリーはセパレーター12に上向きに送られ、チップと液は、矢印13で示されるようにセパレーター12の頂部から放出される。スラリーが上向きに送られるにつれて、円筒スクリーン14を用いて過剰の液がスラリーから取り除かれ、導管15を経て供給装置へ戻される。セパレーター12から放出されたチップと液13は、ガス充満ゾーン16から落下して、チップ山17へ到る。チップのスチーム加熱を続けるために、チップ山17は、図1に見られるように、蒸解液レベル18より上に維持される。スチーム加熱後、チップは蒸解液に浸漬され、図1に18として示される液面から下に動いて行き、蒸解プロセスが続行する。
【0047】
チップ柱とチップ山17全体の熱分布を改良するために、気相蒸解缶10には液抜き出しスクリーン19と循環系21とが備えられている。液を半径方向に外側に抜き出し、真ん中に配置しているパイプ24を経てチップ柱へと戻す。循環系21は、普通、ポンプ25を備えるが、液加熱器25’を備えてもよい。液抜き出しスクリーン19と関連循環系21(ポンプ25とパイプ24とを含む)は、当該技術分野で「トリム循環」と呼ばれている。トリム循環スクリーン19の下では熱と薬剤とも均一な分布状態になり、蒸解プロセスは続行する。
【0048】
気相蒸解缶10では、チップ山17のレベルは、普通、ガンマ線源と検出器で監視されている。これらは、図1の26と26’にそれぞれ概略示され、チップ山17の近くに対向して配置されている。線源と検出器26と26’は、山17にチップがあるかないかを検出し、チップレベルは、槽10へ流れ込むスラリーを変化させるか、槽10から流出するパルプを変化させるかして制御することができる。パルプを槽10の底部から抜き出すのは、全く従来の抜き出し装置を用いて行われる。
【0049】
チップレベルに加えて、気相蒸解缶10では液面も監視し、制御しなければならない。液面18は、普通、従来の液面検出器を用いて監視される。これは、図1の27に概略示され、例えば、「DPセル」または類似品であり、参照レベルより上の液柱のヘッドを検出する。
【0050】
ガス充満ゾーン16の圧力、温度も蒸解缶10では監視しなければならない。ゾーン16の圧力は、普通、空気圧縮機を用いて維持される。圧縮機は、参照圧力の低下に応答して、空気、あるいは蒸解缶10の化学プロセスに不活性な他のガス、例えば、殆ど純粋な窒素ガスを蒸解缶の頂部へ送入する。過剰の圧力、例えば、流入するチップスラリーに同伴されるガスによって起こされる圧力は、普通、図1の28のところに概略示される従来の圧力逃がしデバイスを用いて放出される。ゾーン16のところの温度は、スチーム源23から導管22を経て圧力スチームを加えることによって監視・制御される。
【0051】
図1の気相蒸解缶10と同じように、図2の従来の満液蒸解缶20は導管60経由でチップと液のスラリーが供給装置から供給される。蒸解缶20へ供給されるスラリーは、下向きのスクリューコンベヤーである従来の「トップセパレーター」61を用いて行われる。セパレーター61から導入される液は2重線矢印62で示され、チップは単線矢印63で示される。スラリーがコンベヤー61で下向きに送られるにつれて、円筒スクリーン64を通って過剰の液がスラリーから取り除かれ、導管65を経て供給装置(例えば、高圧フィーダー)へ戻される。
【0052】
セパレーター61から落とされたチップ63は、チップレベル66を形成する。蒸解缶20は満液状態であるから、チップレベル66の上のゾーン67は液で満杯であり、ガスゾーンは普通は存在しない。満液の槽20中のチップのレベルは、普通、槽の内表面に沿って設置される一基または複数基数の従来の機械的回転羽根68(例えば、米国、ニューヨーク州グレンス フォールスのアールストローム社が「K−1000」という名称で販売)を関連する電子式ストレインゲージと一緒に用いて監視される。チップがあるか、ないかは羽根68の回転運動によって検出され、チップレベルは数学的アルゴリズムに基づいて、パーセントで計算される。ガンマー放射線機器(例えば、図1の26と26’)はいらない。気相蒸解缶の場合と同じように、満液蒸解缶20のチップレベルは、スラリーの流入量を変えるか、蒸解されたチップの流出量を変えるかによって制御することができる。
【0053】
図1の蒸解缶10と対照的に、山66の頂部にあるチップは、普通、完全に蒸解温度になるまでは加熱しないで、むしろ蒸解が始まらないように加熱しなければならない。これは、普通、一本または複数本数の加熱蒸解循環ループ70を用いて行われる。加熱は並流でも向流でも行い得るが、図2に示される循環ループ70はチップを向流的に加熱している。スラリーは、先ず導管78経由でスラリーから液を抜き出す液除去(抜き出し)スクリーン71を通過する。導管78経由で抜き出された液は、薬剤回収へ送っても、あるいは蒸解缶20の前のチップ前処理に送ってもよい。このように液を抜き出すと、二重線矢印76で示されるように、遊離液の流れが誘発され、単線矢印77で示される下向チップ流れに向流に流れる。加熱された液76は、循環系70から得られる。液は、先ずスクリーン72、導管73、ポンプ79経由でスラリーから分離され、間接スチーム加熱器74で(例えば、135℃〜170℃の温度へ)加熱され、真ん中に配置された戻り導管75によってスクリーン72の近くに戻される。蒸解液、例えば、クラフト白液が、普通、この循環系に添加される。米国特許第5,489,363号、第5,547,012号、および第5,536,366号に記載され、アールストローム社で販売のローソリッド(登録商標「Lo−Solids」)蒸解が、槽20で行われる場合は、導管73経由で取り出された液の一部を薬剤回収装置に送り、これを、溶解有機物の濃度の小さい液と置き換えて、例えば、蒸解液と希釈液(または希釈水)との組み合わせとしても差し支えない。
循環系70で蒸解温度まで加熱後は、スラリーを蒸解することができるが、更にスクリーン72の下で処理することもできる。
【0054】
図3は、本発明の好ましい態様の一つを行う蒸解缶30を示す。蒸解缶30は蒸解缶10を改造することによって構成される。その際、センサ素子26,26’を除去するか、または動かさないようにし、回転羽根68を追加し、更に加熱器74を追加し、そして恐らく「トリム循環系」を再配置することになる。普通、DPセル27は、位置も変えず、取り外しもしない。別法としては、蒸解缶30を全く新設してもよい。
【0055】
図1の装置で用いる場合と同じように、導管31とアールストローム社販売の従来の反転式トップセパレーター32とを経由して気相蒸解缶30の頂部にチップと液のスラリーが供給される。このスラリーは、普通、温度90〜130℃で蒸解缶30へ導入される。この温度は、蒸解缶30の前の供給装置でチップを処理する仕方に依存する。例えば、供給装置が、米国、ニューヨーク州グレンス フォールスのアールストローム マシーナリー社から販売され、米国特許第5,5476,572号、および1995年4月25日出願の米国出願第08/428,302号の各明細書に記載されるローレベル(登録商標「Lo−Level」)供給装置である場合は、スラリーは、約95〜100℃で蒸解缶に入る。チップが、従来の供給装置、例えば、水平設置の加圧スチーム処理槽で供給される場合は、スラリーは、115〜120℃で蒸解缶に入る。従来のように、トップセパレーター32は、スラリーが上向きに送られるにつれて、過剰の液をスラリーから取り除き、チップと液とを矢印33で示すように排出する。除かれた液は、導管34を経て上流工程、例えば、アールストローム社販売の高圧フィーダーまたは浸透槽へ戻される。
【0056】
チップ33は、ガス雰囲気35に曝され、その後液面36の所に入り、落下してチップ山37へ到る。液面36の上のガス雰囲気35は、普通、空気またはチップと液のスラリーと一緒に蒸解缶30へ同伴されるガスで構成される。必要でもあり、望むならば、この空気を他のガス、例えば、スチーム、窒素で、あるいは処理や所望の圧力を維持するのに使うことができる他の好適なガスで補充することができる。サルファイトパルプ製造装置では、ガス空間35は、普通、二酸化硫黄(SO2)ガスが充満している。雰囲気35は、温度160℃未満、普通は140℃未満、好ましくは130℃未満(120℃未満のこともある)で圧力は50〜200psig(0.34〜1.38MPa)、好ましくは80〜200psig(0.55〜1.38MPa)、例えば、80〜150psi(0.55〜1.03MPa)ゲージに維持される。空間35の圧力を維持するためには、従来技術に普通なように、圧縮されたガスを源39から導管38を経て導入してよい。また、当該技術分野で既知のように、過剰な圧力は、従来の圧力逃がしデバイス80を用いて逃がすことができる。蒸解缶30の頂部では、矢印42で示されるチップは、2重線矢印43で示される液と並流に流れる。
【0057】
液面36は、普通、従来の液面指示計、例えば、「DPセル」27で監視される。もっとも、他のデバイスも用いることができる。液面は蒸解缶30への液の出入りを調節することによって、例えば、導管51または蒸解缶30への液を増減する他の導管の流出量を調節することによって変えることができる。チップレベル37も、チップレベル37の近くの蒸解缶30壁に取り付けられた1基または複数基数の従来の機械式回転羽根とストレインゲージ装置との組み合わせ68を用いて独立に監視される。従来のように、チップのレベル37は、蒸解缶30へ流入するチップの流れを増加または減少することによって、または蒸解缶30から流出するパルプの流れを増加または減少することによって調節することができる。
【0058】
流入するチップは、ガス雰囲気35中ではスチームに曝されないのが好ましいので、チップの蒸解温度への加熱は、満液式に、例えば、一つまたはそれ以上の液循環系を用いて行うのが好ましい。チップを処理する好ましい方法の一つは、スクリーンアセンブリ40と41とを用いることである。液は、スクリーンアセンブリ41を経て導管44を経て、普通は、従来のポンプ53を用いて取り出される。取り出された液は、間接熱交換器45を経て(例えば、少なくとも130℃へ)加熱され、その後で導管46を経てスクリーン41の近くに戻される。普通は、蒸解液、例えば、クラフト白液または黒液が導管47から導管44へ添加される。好ましくは、米国特許第5,489,363号、第5,547,012号、および第5,536,366号に記載され、アールストローム社で販売されているローソリッド(登録商標「Lo−Solids」)蒸解も、蒸解缶30で行われる。この場合は、希釈液、例えば、洗滌濾過液、漂白プラント濾液、または弱黒液のような溶解有機物の濃度の小さい液を、導管48経由で導管44へ添加することができる。
【0059】
導管46経由で蒸解缶30へ再挿入される加熱された液は、矢印50にて示される下向き流のチップに対し、2重線矢印49で示されるように向流に流れるのが好ましい。液49は、液がスクリーン40経由で導管51へ取り出された結果、向流的に誘発される。液の流れ49は、普通、下向き流のチップ50を140〜180℃の蒸解温度まで加熱する。図3に示される液の流れは、向流であるけれども、加熱された並流の液も、向流液の代わりに、または向流液と一緒に用いることができる。導管51の液は、薬剤回収系に送ることもできるし、蒸解缶30の処理前もしくは処理中にチップを前処理するのに用いることができる。 選択肢としては、戻し循環系52も設けることができる。
【0060】
スクリーン41を通過した後、加熱されたチップスラリーは、普通、パルプ製造プロセスを続行する温度に維持されるが、蒸解缶30の後半のゾーンで更に何らかの処理を施し、その後で排出することも差し支えない。
【0061】
雰囲気35の温度は低いから(好ましくは130℃以下)、収率および/または強度向上剤(例えば、アントラキノンとその誘導体、および/またはポリサルファイドとその誘導体または同等品)を用いて、これら添加剤を損なうことなく、パルプを処理し、その後でパルプを槽30へ導入することができる。雰囲気35の温度は、アントラキノンまたはその誘導体での処理(または連続処理)が行われるならば、90〜110℃に維持すべきであるし、ポリサルファイドまたはその誘導体または同等品での処理(または連続処理)が行われるならば、90〜140℃に維持すべきである。雰囲気35での処理の時間は、5分から2時間であるが、好ましくは約10分から60分であり、所望の条件は、図3の38の箇所に導入されるスチームの温度、圧力を調節することによって維持される。
【0062】
図4は、本発明の別の態様である連続蒸解缶装置100を示すもので、図3に示される態様と同じようである。図4に示されるものの多くは、図3に示されるものと同一でないにしても似たものであるので、図3の番号の頭に「1」を付けて示すものとする。例えば、図4の反転式トップセパレーター132は図3の反転式トップセパレーター32と同じようなものである。
【0063】
図4の装置は、チップと液のスラリーを蒸解缶130へ供給する導管131を備える。スラリーは、セパレーター132へ導入され、セパレーターはスクリューコンベヤーでスラリーを上方へ持ち上げ、一方、スラリー中の液は、従来のように円筒スクリーン、小空間、導管134を経て除かれる。チップと未除去の液とは、矢印133で示されるようにセパレーターから排出され、スチーム(またはガス)雰囲気135に曝される。スチーム(またはガス)は源139から導管138経由で導入される。チップと過剰の液とは、液面136として記された液の所へ落下し、チップはチップ山137の所に堆積する。液とチップとのレベルは、普通、図1、図2、および図3に示される態様に関して記載のように調節される。
【0064】
蒸解缶装置100と図3の装置との相違は、図4の装置が第一直径部分(入口部)95を有する蒸解缶130を備え、この部分が第二直径部分(主ボディ)98より小さい直径であるということである。第二直径部分98は第一直径部分95よりも少なくとも20%大きい(例えば、約100%〜300%大きい)。この部分95は、大規模の蒸解缶、例えば、日量1,000トン以上生産する蒸解缶130でセルロース材を処理するときに好ましい。この部分95は、普通は、約3〜5メートルしかない直径を有するが、一方、蒸解缶130の主槽(第二直径部分98)は約7〜12メートル以上の直径を有することもある。この態様は、主槽の直径とは異なる入口部直径を有する蒸解缶に限定されるわけでなく、部分95と部分98との直径が大体同じでも本発明は依然として有効である。部分95と部分98との直径の差は、如何に本発明を既存の装置に導入することができるか、特に既存の二槽式満液蒸解缶装置に導入できるかについて特に示唆的である。そのような設備の場合は、主な改造項目として、既存の入口またはトップセパレーターを、図4に示される反転式トップセパレーター132と入口131とに置き換えればよいのである。
【0065】
図4の態様はトップセパレーター132からの液出口86を備え、導管134経由で抜き出される液の他にトップセパレーターからも液を取り出す。出口134,86は、(設けられる他の出口と同様に)円周上に互いに約30〜120 0間隔で配置されるのが好ましい。この新しく設けられた液出口86があると、導管134経由で普通取り出されるよりもたくさんの液をセパレーター132から取りだし、供給装置、例えば、米国、ニューヨーク州グレンス フォールスのアールストローム マシーナリー社から販売されている高圧フィーダーまたはローレベル(登録商標「Lo−Level 」)供給装置へのスラリー液、または前処理槽の底部へのスラリー液、例えば、浸透槽に対するスルース液を供給することができる。導管86の流出量は、生産パルプトン当たり0.5〜5立方メートル(すなわち、m3/tp)の範囲であるが、普通は約1〜3m3/tpである。
【0066】
導入されたチップスラリーから遊離液の実質的全部を取り出すために他の方法も用いることができる。例えば、セパレーター132自体の構造を変えて、例えば、セパレーター132のスクリューと抽出スクリーン部分を従来よりも長くして、あるいは、実質的にプラグフィーダーとして機能する先細スクリュー型プレス構造を持たせて、殆ど遊離液を含まない(例えば、普通は遊離液の最初の量の10%未満、好ましくは約5%未満)か、あるいは全く含まないスラリーを排出することも可能である。あるいは、単純に、図4に見られる追加導管86’を設けることによって、より多くの液をBC戻り導管134自体から抜き出すことができる。
【0067】
反転式トップセパレーター132から液を取り出す上記の方法は、導管131に導入され前の処理で用いられた処理液を、液面136として示されるセパレーター132下存在の液から隔離するのに特に適用し得る。例えば、槽130に先立つ処理が、冷却液による処理(1996年8月7日出願の第08/911,366号明細書に記載のような)の場合、導管134では過剰な冷却液が除けなかったにしても、導管86からは除けるので、液面136で示される熱い液には、冷たい液はほんの僅かしか、あるいは全く導入されないで済む。また、この装置が有利なのは、槽130に存在している液から他の前処理液、例えば、アントラキノンまたはポリサルファイドまたは硫化水素およびこれらの同等品と誘導体のような強度または収率向上添加剤含有の液を隔離する時である。導管86から除かれた液は、薬剤回収系へ送ることもできるし、必要に応じて、漂白プラントを含めてパルプミルの何処でも用いることができる。
【0068】
図4には、加熱循環系85が示され、これに関連するものとして、肩99の直下に配置された抜き出しスクリーン87、導管88、ポンプ89、導管90、間接スチーム加熱器91、戻り導管92、液分散ヘッダー93、および複数の入口ノズル94がある。この循環は、トップセパレーター132の下にある液を抜き出し、加熱し、所望に応じて、新規液を添加するのに用いられる。例えば、クラフト白液または黒液などの蒸解液、または蒸解添加剤を含む他の液、またはスクリーン87の所にある液よりも溶解固形物濃度が小さい希釈液を、導管96経由で循環85へ導入することができる。液を導管96経由で導入すると同時に、または導入する代わりに、液を導管97から抜き出すこともできる。例えば、蒸解缶130の上部で液の向流の流れが望ましい時には、導管96から液を導入するのではなく、導管97から液を抜き出すこともできる。図4に示される装置は、既存の二槽式満液蒸解缶装置を改造するのに特に適用できる。この場合、既存の頂部循環スクリーンが液抜き出しスクリーン87として用いられる。一槽式蒸解缶と気相蒸解缶も本発明を実施できるように改造できる。
【0069】
図3の蒸解缶の運転と同じように、蒸解缶130の運転では、供給装置からまたは前の処理から、例えば、浸透槽から送られてきた細砕セルロース繊維材、例えば、針葉樹チップのスラリーは、導管131経由で反転式トップセパレーター132へ導入され、液がセパレーターから除かれ、前の装置または槽へ導管134経由で戻される。これらは従来と同じである。また従来のように、セパレーター132のスクリューコンベヤーがスラリーを上方へ持ち上げ、液は除かれるから、その結果、チップと残っていた液は、矢印133で示されるように、セパレーター132の堰の頂部から滝のように落下する。セパレーター132から排出されたチップはガス/スチーム雰囲気135から下に落ちて、槽130にある液に入って、液面136が形成される。次にチップはチップ山137に沈積し、その後所望のように処理される。例えば、処理できる方法としては、次の米国特許第5,489,363号、第5,536,366号、第5,547,012号、第5,575,890号、第5,620,562号、および第5,662,775号の明細書などに記載のローソリッド(登録商標「Lo−Solids」)蒸解プロセス、または米国特許第5,635,026号の明細書に記載のEAPC(登録商標)蒸解プロセスが挙げられる。しかし、本発明では、導管86経由でセパレーター132から更に液を抜き出すことができる。この付加的に液を抜き出すことは、導管131から導入された遊離液(すなわち、チップと結合していない)が液面136で示される内部液へ流れるのを制約し、あるいは実質的に無くして(つまり、遊離液の約10%以下しか残らない)しまうのに好ましいことである。また、更に加熱したり液を添加することも、例えば、液面136の液面センサで制御されるライン96中の弁を用いて、上記のように循環85で行うことができる。
139の所で導入される圧縮されたガス/スチームは、図3の態様と同じ方法で導入し、同じ条件を確立することが好ましい。
【0070】
図3と図4に関して記載された本発明は、細砕セルロース繊維材を処理して、木材パルプを製造する方法、または既存の気相蒸解缶を改造してクラフトパルプを製造する方法を提供するものであり、この方法を用いると、チップの加熱や処理が、より均一となり、チップレベル変動に対して変化が敏感でなくなり、チャネリングが起き難くなり、チップレベルを検出するのに放射線源の手当をする必要がなくなり、結果として運転のし易い蒸解缶が提供される。
【0071】
図5の態様では、本発明に従った図4の態様と同じような連続蒸解缶装置100Aが提供される。違いは、蒸解缶槽130Aが実質的に満液状態であるので、液とチップの上に圧縮ガスゾーンが存在しないことである。この態様では、図4の態様に対応する構造は、同じ参照数字で示されている。
【0072】
槽130Aは、実質的に満液状態なので、図4の態様の液面136、導管138、またはガス源139、またはこれらに関連する構造は備えていない。図5の態様は、これらの部品や構造が不要なので、既存の単槽式または二槽式蒸解缶、例えば、気相蒸解缶を改造して取り付けるのに特に有利である。この態様で導管134,86,86’経由で取り出される液は、繊維を含んでいたり、所望の温度より高温なことがあるので、導管134,86,86’の中の一本または複数の導管に、繊維を濾過したり、液を冷却する装置を備え、その後で該液をパルプミルの他の箇所に(例えば、二槽式装置の浸透槽の底部でのスラリー化用液として)使用することも差し支えない。例えば、この目的のために、図5ではインライン抜き出し装置101が導管134に示されている。このようなインライン抜き出し装置101は、米国特許第5,401,361号明細書の図2に示されているようなもの(この特許の開示を本明細書に参考文献として引用する)でよく、あるいは抜き出し装置101の代わりに従来の間接熱交換器を設け、導管134中の液を、例えば、少なくとも5℃だけ冷却(例えば、約10〜30℃の範囲で冷却)するのもよい。
【0073】
図5の蒸解缶130Aの望ましい運転モードでは、液が導管134,86,86’の中の一本または複数の導管経由で抜き出されるので、矢印102で概略示されるように、蒸解缶槽130A頂部に向流の液流れが生じる。この向流の液流れは、例えば、図5の85の箇所に示されている循環で加熱することができる。この循環は、図5に循環103として概略示されているように、導管86,86’,134の中の一本に取り付けられるだけである。加熱された液は、槽130Aに再導入したり、アントラキノンのような強度または収率向上添加剤でセルロース材を処理するのに用いることができる。このような状況下では、循環85は必要がなく、むしろ液を加熱するためには槽130Aの下側の循環を用いることができる。
【0074】
図6の蒸解缶装置の態様100Bは、図5の装置と実質的に同じで、違いは、槽130Bが実質的に満液状態に保たれているのではなく、図6の104の箇所に概略示されているように液はセパレーター132の上部の所まで充満しているだけなので、圧縮ガス源139で示されているように、槽130Bの頂部と液面104との間の小さなガス相容積部分へガスを加えることができることである。
【0075】
図5および図6の態様双方では、内部トップセパレーター132は液が順方向でも逆方向でも自由に流れるように操作可能である。蒸解缶130A、130Bの頂部で、液とセルロース材(例えば、チップ)とが向流にも並流にもなることができ、所望に応じて、蒸解缶130A、130B全体を向流にすることもできる。また、どちらの態様でも、図7に概略示されるように、多孔式のスクリュー翼106をトップセパレーター132のスクリュー翼として用いることができる。スクリュー翼106は、シャフト105の周りに回転自在であり、液の流れを通過させるのを助けるのに好適なように、どんな形式でも、どんな寸法でも、どんな数の孔107を用いたものでも差し支えない。
【0076】
本発明については、最も実際的かつ好ましい態様であると現在考えられているものについて本明細書に示し、かつ説明したものであるので、本発明の範囲内で多くの部分的改変を行い得ることは当業者には明白であろう。従って、本発明の特許請求の範囲については、すべての等価の構造および方法を含むように最も広く解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の気相蒸解缶の典型的な入口部と上部の概略側面図で、一部断面、一部立面を示す図である。
【図2】 従来の満液蒸解缶の典型的な入口部と上部の概略側面図で、図1と同じような図である。
【図3】 本発明の蒸解缶であって、本発明の方法を行うのに使用される蒸解缶の典型的な入口部と上部の概略側面図で、図1と図2と同じような図である。
【図4】 本発明の蒸解缶の別の態様を示す図で、図3と同じような図である。
【図5】 本発明の装置を用いて蒸解方法を行うための、本発明の蒸解缶の別の態様を示す図で、図4と同じような図である。
【図6】 図5の態様と多くの類似点がある更に別の態様の連続蒸解缶を示す図である。
【図7】 図5と図6の蒸解缶の反転式トップセパレーターのスクリューの例示的変形の上面図で、シャフトの断面を一緒に示している図である。
【符号の説明】
10,20,30,130,130A,130B…蒸解缶、11,15,22,31,34,38,44,46,47,51,60,65,73,75,78,86,86’,88,90,92,96,97,131,134,138…導管、12,32,61,132…反転式トップパレーター、13,33,42,43,49,62,63,76,77,102,133…矢印、14,64…円筒スクリーン、16,35,135…ガス充満ゾーン,17,37,66,137…チップ山、18,36,104,136…液面、19,71,72,87…液抜き出しスクリーン、21,52,70,85,103…循環系、23,139…スチーム源、24…パイプ,25,53,79,89…ポンプ、25’…液加熱器、26,26‘…ガンマ線源/センサ、27…DPセル、28,80…圧力逃がし、39,139…ガス源、37,55…チップレベル、40,41…スクリーンアセンブリ、45,91…間接加熱器、67…液満杯ゾーン、68…回転羽根、74…加熱器、93…ヘッダー、94…入口ノズル、95…第一直径部分、98…第二直径部分、100,100A…蒸解缶装置、101…インライン抜き出し装置、106…スクリュー翼、105…シャフト、107…孔。
Claims (6)
- 連続式蒸解缶装置であって、
頂部と底部を備え、頂部には第一の小径部分と前記頂部の下には第二の大径部分とを有する連続式蒸解缶;
前記蒸解缶の前記第一の小径部分の反転式トップセパレーターであって、チップと液とを前記蒸解缶へ導入し、チップから液をある程度分離する反転式セパレーター;
満液式加熱を行って前記蒸解缶のチップを蒸解温度に上げる手段;
前記反転式トップセパレーターから液を抜き出す手段;および
前記蒸解缶の底部近くからパルプを抜き出す手段を備え、
満液式加熱を行って前記蒸解缶のチップを蒸解温度に上げる前記手段が、抜き出しスクリーンと前記抜き出しスクリーンに接続された循環ループとを含んでおり、前記循環ループは、ポンプ、間接加熱器および導管を備え、前記ポンプで前記スクリーンから抜き出された液が、前記加熱器で加熱され、次いで前記導管で前記蒸解缶へ戻される
ことを特徴とする連続式蒸解缶装置。 - 前記反転式トップセパレーターから液を抜き出す前記手段が、液を抜き出すために、円周上に間隔を開けて配置された少なくとも第一と第二の抜き出し導管を備え、前記抜き出し導管が、前記蒸解缶の異なる外部構造に連結されることを特徴とする請求項1に記載の連続式蒸解缶装置。
- 前記蒸解缶が、前記第一の小径部分と第二の大径部分の間に肩の部分を備え、前記抜き出しスクリーンが、前記肩の部分の真下の前記第二の大径部分に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の連続式蒸解缶装置。
- 前記反転式トップセパレーターが、多孔式のスクリュー翼を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記の液を抜き出す手段が、少なくとも一本の導管を備え、前記導管に接続されたインライン抜き出し装置を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 蒸解缶液面が、前記反転式トップセパレーターの最下部と前記蒸解缶の頂部との間にあるようにし、ガス空間が前記蒸解缶の頂部と前記液面との間にあるようにすることを特徴とする請求項1に記載の装置。
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