JP3896723B2 - 窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体よりなるレーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクの記録密度は、光ディスクに集光される光ビームのスポットサイズが小さい程高くなり、光ビームのスポットサイズは光の波長の二乗に比例する。このため、光ディスクの記録密度を上げるためには光源である半導体レーザ装置の発振波長を短くすることが必要である。
【0003】
現在CDには、主として波長780nm(赤外)領域で発光するGaAlAs半導体レーザ装置が用いられ、CDより記録密度の高いDVDには、波長650nm(赤色)領域で発光するInGaAlP半導体レーザ装置が用いられている。さらにDVDの記録密度を上げて高い品質の画像等を記録するためには、波長の短い青色領域で発光する半導体レーザ装置が必要である。
【0004】
このような半導体レーザ装置を実現できる半導体レーザ素子に用いる半導体レーザ材料として、近年開発された窒化物半導体(InX AlY Ga1−X−Y N,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)が注目を浴びている。
【0005】
窒化物半導体レーザ素子は、サファイア、SiC、ZnO等の異種材料よりなる基板上に窒化物半導体レーザ材料をエピタキシャル成長させることにより形成されることが多い。サファイアやZnOのような絶縁性の基板上に窒化物半導体レーザ材料をエピタキシャル成長させてレーザ素子を作る場合は、p型窒化物半導体層とn型窒化物半導体層のそれぞれからp電極、n電極を同一面側に形成しなければならない。
【0006】
しかし最近では、窒化物半導体そのもの(InX AlY Ga1−X−Y N,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)で基板を作製できる技術開発が行われており、この場合は基板の裏面にn電極を設けることができる。
【0007】
図11は従来の窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図、図12は図11の窒化物半導体レーザ素子を光共振面側からみた正面図である。
【0008】
従来の窒化物半導体レーザ素子は、図11および図12に示すように、基板21上にn型窒化物半導体層22、活性層23、およびp型窒化物半導体層24が順に積層された構造を有している。このp型窒化物半導体層24上面にSiO2等よりなる電流狭窄用絶縁膜25を介して、p電極26を形成する。さらに、n型窒化物半導体層22が露出するように、p型窒化物半導体層24、活性層23、およびn型窒化物半導体層22の一部をエッチングして除去し、露出した活性層23より発光する帯状のレーザ共振器を形成する。そして、露出したn型窒化物半導体層22上にn電極27を形成する。このようにして、帯状のレーザ共振器と直交する窒化物半導体の裂開面、もしくは化学的異方性エッチング面のいずれかをレーザの発光端面とした窒化物半導体レーザ素子が形成される。
【0009】
ところで、半導体レーザ素子を形成するには、半導体層にレーザを発振させるための光共振面を形成することが重要である。光共振面はレーザを発振させるために平坦な鏡面状であることが必要であり、従来のGaAs系及びInGaAlP系の化合物半導体よりなる半導体レーザ素子は、結晶の性質上へき開性を有しているため、このへき開性を利用してへき開した面を半導体レーザ素子の光共振面として形成する。
【0010】
一方、窒化物半導体は六方晶系であり、従来のGaAs系と異なり、へき開性を有していない。さらに、窒化物半導体はサファイア基板の表面に成長形成されることが多く、サファイアもまた結晶の性質上、へき開性を有していない。従って、窒化物半導体でレーザ素子を作成する場合、GaAs系のようにへき開面を光共振面とすることは困難である。
【0011】
そこで、このような問題点を解消し、へき開性を有さない窒化物半導体に光共振面を形成する技術が、特開平8−153931号公報等に提案されている。
【0012】
特開平8−153931号公報記載の窒化ガリウム系化合物半導体レーザ素子の製造方法は、サファイア基板を特定の面方位で割ることによって窒化物半導体層に光共振面を形成することができるという知見に基づいて案出されたものである。これは、サファイア基板の(0001)面の表面に窒化ガリウム系化合物半導体をレーザ素子の構造に積層した後、そのサファイア基板を各側面の内のいずれかの面方位で割ることにより半導体レーザ素子の光共振面を作製するものである。これにより、へき開性のないサファイア基板上に積層した窒化物半導体層からへき開面と同様の光共振面が得られレーザ発振が可能となることが示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開平8−153931号公報等に記載されているように、サファイア基板を特定の面方位で割ること、すなわち裂開により窒化物半導体層の光共振面を形成する方法で製造される窒化物半導体レーザ素子においては、裂開時の衝撃により、裂開面である光共振面の上部に形成されているp電極が浮いたり、剥がれたり、光共振面にだれたりしやすくなってしまう。そして、窒化物半導体系レーザでは水平方向の電流広がりが極めて小さいため、このように電極が半導体層から浮いた部分は可飽和吸収領域となるので、閾値が変動して高くなったり、ヒステリシス特性を持ったりしてばらつくため、レーザ特性が不安定になってしまい信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができない。また光共振面にp電極がだれると、1ミクロン程度あるレーザスポット径にかかってしまう可能性が高いので良好なレーザパターンが得られない。
【0014】
そこで、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれを防止する技術が特開平10−27939号公報に開示されている。特開平10−27939号公報記載の技術は、裂開面側のp電極端面が裂開面よりも内側にあることにより、裂開時のブレークによる衝撃が電極端面に伝わらないようにし、電極の剥がれ等を防止したものである。ところが、このようにp電極端面を裂開面よりも内側に形成すると、窒化物半導体は、電流が厚み方向に垂直な方向に広がりにくい傾向にあるため、p電極が光共振面まで形成されていない部分は可飽和吸収領域となりやすい。そうなると閾値が変動して高くなったり、ヒステリシス特性を持ったりしてばらつくためレーザ特性が不安定になってしまう。
【0015】
また、裂開面である光共振面の上部に形成されているp電極の密着性が強固であり、かつp電極そのものの硬度が大きいまたは延性や展性が小さい場合、これによって裂開面が乱されて、均一で良好な光共振面が得られないことがある。
【0016】
本発明は、裂開により光共振面を形成する窒化物半導体レーザ素子において、上記のような課題が生じない、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の1番目の窒化物半導体レーザ素子は、基板上にn型窒化物半導体層と活性層とp型窒化物半導体層とが順に積層され、前記基板裏面または前記n型窒化物半導体層、およびp型窒化物半導体層にそれぞれn電極およびp電極がそれぞれ積層され、積層方向に裂開した裂開面が光共振面とされる窒化物半導体レーザ素子において、前記p電極は、前記p型窒化物半導体層の表面に積層され前記裂開面に臨む接触部p電極と、前記接触部p電極に電気的に接続可能な開口部を備える絶縁膜を介してその上面に形成され前記裂開面よりも内側に端面を持つ主p電極とから構成されることを特徴としたものである。
【0018】
これにより、p電極を構成する接触部p電極のp型窒化物半導体層との接触面の端部が裂開面にあることによってp電極とp型窒化物半導体層との電気的接触を損なうことなく接触面積を保ちつつ、p電極を構成する主p電極が裂開面よりも内側にあることによってp電極が裂開時に受ける衝撃を少なくすることができ、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれやだれ等の裂開異常を防止して、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0019】
また、本発明の2番目の窒化物半導体レーザ素子は、基板上にn型窒化物半導体層と活性層とp型窒化物半導体層とが順に積層され、前記基板裏面または前記n型窒化物半導体層、およびp型窒化物半導体層にそれぞれn電極およびp電極がそれぞれ積層され、積層方向に裂開した裂開面が光共振面とされる窒化物半導体レーザ素子において、前記p電極は、絶縁膜を介して前記p型窒化物半導体層と電気的に接続された前記裂開面に臨む薄膜部p電極及び前記裂開面よりも内側に端面を持つ厚膜部p電極から構成されることを特徴としたものである。
【0020】
薄膜部p電極と厚膜部p電極はもともと一体であり、かつ真空中で成膜した後、薄膜部p電極をエッチングしてp電極として一括形成するから、相互の物理的密着性は非常に良い。また薄膜部p電極と厚膜部p電極を別々に成膜した場合と比較すると相互の電気的接触は格段に良好である。そして、p電極を構成する薄膜部p電極のp型窒化物半導体層との接触面の端部が裂開面にあることによってp電極とp型窒化物半導体層との電気的接触を損なうことなく接触面積を保ちつつ、p電極を構成する厚膜部p電極が裂開面よりも内側にあることによってp電極が裂開時に受ける衝撃を非常に少なくすることができ、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれやだれ等の裂開異常を防止して、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。更に薄膜部p電極と厚膜部p電極とを一体で成膜して一括してエッチングするので電極工程を半分に減らすことができ、容易な製造プロセスで作成が可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、基板上にn型窒化物半導体層と活性層とp型窒化物半導体層とが順に積層され、前記p型窒化物半導体層上には電流狭窄用絶縁膜が形成され、前記基板裏面または前記n型窒化物半導体層、およびp型窒化物半導体層にそれぞれn電極およびp電極がそれぞれ積層され、積層方向に裂開した裂開面が光共振面とされる窒化物半導体レーザ素子において、前記p電極は、前記裂開面に臨み前記p型窒化物半導体層の表面の前記電流狭窄用絶縁膜に挟まれた部分に積層された接触部p電極と、接触部p電極の上面に形成され前記裂開面よりも内側に端面を持つ主p電極とから構成され、前記接触部p電極の厚みが前記主p電極の厚みより薄く、かつ前記電流狭窄用絶縁膜の厚みより薄いことを特徴とする窒化物半導体レーザ素子であり、p電極を構成する接触部p電極のp型窒化物半導体層との接触面の端部が裂開面にあることによってp電極とp型窒化物半導体層との電気的接触を損なうことなく接触面積を保ちつつ、p電極を構成する主p電極が裂開面よりも内側にあることによってp電極が裂開時に受ける衝撃を少なくすることができ、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれやだれ等の裂開異常を防止することができる。
【0024】
請求項に記載の発明は、前記接触部p電極の厚みが、10〜1000オングストロームである請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子であり、ワイヤーボンディングに必要なp電極の厚み5000オングストローム程度に対して接触面の端部のp電極の厚みが10〜1000オングストローム、好ましくは20〜500オングストロームであることから、裂開時にp電極の端部が変形してp型窒化物半導体層側に垂れ下がる、いわゆるだれが生じることがなくなる。このような裂開異常を防止することにより、光共振面からのレーザ発振へ悪影響を及ぼすことがなくなる。この接触面の端部のp電極の厚みが10オングストロームより小さい場合には、接触部p電極とp型窒化物半導体層表面間の電気抵抗が大きくなり、上面に主p電極が形成されていない箇所は、電気的にバリアが発生することになり、窒化物半導体系レーザでは水平方向の電流広がりが極めて小さいため、可飽和吸収領域となったり、閾値電圧がばらついたりしてレーザ特性が不安定になってしまうことがある。一方、1000オングストロームより大きい場合には、この厚みが大きくなるにつれ、p型窒化物半導体層表面への密着力よりも接触部p電極の裂開時に受ける衝撃力が大きくなってくるので、p電極の浮きや剥がれ等を完全に防止することができなくなる。
【0025】
請求項に記載の発明は、前記主p電極の前記裂開面側の端面が、前記裂開面から1〜500μmの範囲にある請求項1からのいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子であり、これによって、ワイヤーボンディングに必要な主p電極の長さを保持し、安定して電流を伝えることが可能となる。この主p電極の前記裂開面側の端面が、裂開面から1μmより近い場合には、裂開の位置精度がそれほど高くないことと、裂開時の衝撃が主p電極に伝わってしまうことになって裂開異常や浮きや剥がれ等が生じることがあり、500μmより遠い場合は、ワイヤーボンディングに必要な主p電極の長さが少なくなって、ワイヤーボンディングが困難となる。
【0028】
請求項に記載の発明は、前記裂開面側のn電極端面が、前記裂開面よりも内側となるように形成された請求項1からのいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子としたものであり、裂開時にn電極に直接衝撃が伝わることがなくなるため、n電極が浮いたり、剥がれたりするのを防止することができる。
【0029】
請求項に記載の発明は、前記裂開面側のn電極端面と前記裂開面との間に、前記n型窒化物半導体層の一部または全部が除去された割溝形成用切欠部が形成された請求項記載の窒化物半導体レーザ素子としたものであり、裂開したい光共振面の面積を減らすことができるので、精度良く光共振面を作成できる。また裂開時にn電極に伝わる衝撃が少なくなるため、裂開時にn電極が浮いたり、剥がれたりするのをさらに防止することができる。
【0034】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図、図2は図1の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図である。
【0035】
図に示すように、本発明の第1実施の形態における窒化物半導体レーザ素子は、基板1上にn型窒化物半導体層2、活性層3、およびp型窒化物半導体層4が順に積層され、積層方向の裂開面Sが光共振面とされ、活性層3より発光する帯状のレーザ共振器を構成している。
【0036】
p型窒化物半導体層4上面には、SiO2よりなる絶縁膜5を形成し、さらに、p型窒化物半導体層4、活性層3、およびn型窒化物半導体層2の一部をエッチングしてn型窒化物半導体層2を露出させてある。
【0037】
p型窒化物半導体層4上の絶縁膜5は、活性層3に電流を狭窄して注入するために帯状に除去され、露出させたp型窒化物半導体層4の表面上にNiとAuの積層構造からなる接触部p電極6が配置されている。または、p型窒化物半導体層4の表面上にNiとAuの積層構造からなる接触部p電極6を帯状に配置した後、絶縁膜5を成膜し接触部p電極6上の絶縁膜5を帯状に除去してもよい。それからTiとAuの積層構造からなる主p電極7を配置する。同様に、n型窒化物半導体層2の上面にはTiとAuの積層構造からなるn電極8が配置されている。
【0038】
p電極は、露出させたp型窒化物半導体層4の表面に積層され裂開面Sに臨む接触部p電極6と、その上面に形成され裂開面Sよりも1〜500μm程度内側に端面7aを持つ主p電極7から構成される。
【0039】
このように、p電極を構成する接触部p電極6とp型窒化物半導体層4との接触面が裂開面Sまであることによって、p電極とp型窒化物半導体層4との接触面積が保たれ、電流を安定して伝わらせることが可能となる。また、p電極を構成する主p電極7の裂開面S側の端面7aが裂開面Sよりも内側に形成されることによって、p電極が裂開時に受ける衝撃を少なくすることができ、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができる。
【0040】
また、接触部p電極6の厚みは、主p電極7の厚みよりも薄くなるように、主p電極7の厚み5000オングストローム程度に対して100〜200オングストローム程度となるようにしている。
【0041】
このように、裂開面Sまで形成された接触部p電極6の厚みを主p電極7の厚みよりも薄くすることによって、裂開時に接触部p電極6が受ける衝撃は、接触部p電極6が主p電極7と同じ厚みのときよりも少なくなり、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができる。また、裂開時に接触部p電極6の端部が変形してp型窒化物半導体層側に垂れ下がる、いわゆるだれが生じることがないため、光共振面からのレーザ発振に悪影響を及ぼすことがない。
【0042】
一方、主p電極7は裂開時の衝撃の影響を受けることがなく、主p電極7へワイヤーボンディングする際に必要な厚みの5000オングストローム程度とすることができるため、ワイヤーボンディング時に主p電極7が変形することがなく、電流を安定して伝えることができる。
【0043】
以上のように、p電極が裂開時に受ける衝撃を少なくすることによって、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができ、電流の過飽和領域が発生しなくなるため、閾値が上昇したり、不安定になったりすることがなくなる。したがって、レーザ発振時の閾値電圧を低くすることができ、発熱量が少なく室温での連続発振が可能な安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0044】
なお、本実施の形態1においては、n電極8がn型窒化物半導体層2の上面に配置されているが、基板1を窒化物半導体そのもので作製し、n電極8を基板1の裏面に設けておくことも可能である。
【0045】
(実施の形態2)
図3は本発明の第2実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図、図4は図3の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図である。
【0046】
本発明の第2実施の形態における窒化物半導体レーザ素子は、その主な部分は第1実施の形態と同様の構造であるが、n電極8の裂開面S側の端面8aを、あらかじめ裂開面Sとなる位置より内側に形成したものである。
【0047】
裂開により光共振面を形成する際に、光共振面として裂開したいライン上にn電極8が存在していると、裂開時の衝撃をn電極8が受けてしまい、浮きや剥がれを生じたりするのであるが、このように、あらかじめ裂開面Sとなる位置より内側に形成するようにするとn電極8が受ける衝撃が少なくなり、浮きや剥がれが生じにくくなり、窒化物半導体系レーザでは水平方向の電流広がりが極めて小さいため、浮きや剥がれが原因となる電流の可飽和吸収領域が発生しないため、閾値が上昇したり、不安定になったりすることがない。すなわち、レーザ発振時の閾値電圧を低くして、発熱量が少なく室温での連続発振が可能な信頼性の高い窒化物半導体素子が得られるようになる。
【0048】
n電極は裂開面Sより内側に形成すると、電流が流れ込む面積が減少して抵抗が高くなりがちなのであるが、n電極8は、p電極よりも比較的面積が大きいため、裂開面Sより内側に形成しても、閾値が上昇したり、不安定になったりする影響は少なく、むしろn電極8の浮きや剥がれが少ないことによる高信頼性の窒化物半導体レーザ素子が得られることになる。
【0049】
(実施の形態3)
図5は本発明の第3実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図、図6は図5の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図である。
【0050】
本発明の第3実施の形態における窒化物半導体レーザ素子は、その主な部分は第1実施の形態と同様の構造であるが、n電極8の裂開面S側の端面8aを、あらかじめ裂開面Sとなる位置より内側に形成したのち、n型窒化物半導体層2の一部または全部が除去された割溝形成用切欠部9を形成する。
【0051】
裂開により光共振面を形成する際に、光共振面として裂開したいライン上にn電極8が存在していると、裂開時の衝撃をn電極8が受けてしまい、浮きや剥がれを生じたりするのであるが、このように、あらかじめ裂開面Sとなる位置より内側に形成し、さらに裂開面Sとn電極8の裂開面S側の端面8aとの間に、n型窒化物半導体層2の一部または全部が除去された割溝形成用切欠部9を形成してから裂開するようにすると裂開時の衝撃の影響を全く受けなくなるため、n電極8は浮いたり剥がれたりすることが全くなくなり、電流の可飽和吸収領域が発生しないため、閾値が上昇したり、不安定になったりすることがなくなる。すなわち、レーザ発振時の閾値電圧を低くして、発熱量が少なく室温での連続発振が可能な信頼性の高い窒化物半導体素子が得られる。
【0052】
(実施の形態4)
図7は本発明の第4実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図、図8は図7のレーザ共振器長手方向の中央部の断面図である。
【0053】
本発明の第4実施の形態における窒化物半導体レーザ素子は、その主な部分は第1実施の形態と同様の構造であるが、p電極は、p型窒化物半導体層4の表面に積層され裂開面Sに臨む接触部p電極6と、接触部p電極6に電気的に接続可能な開口部を備える絶縁膜を介してその上面に形成され裂開面Sよりも内側に端面を持つ主p電極とから構成されている。
【0054】
このように、p型窒化物半導体層の表面に積層され裂開面Sに臨む接触部p電極と、接触部p電極6に電気的に接続可能な開口部を備える絶縁膜を介してその上面に形成され裂開面よりも内側に端面を持つ主p電極7とからp電極を構成することにより、裂開時の衝撃を受ける接触部p電極6がこの絶縁膜5によって押さえ込まれることになり、接触部p電極6が裂開時の衝撃で浮いたり、剥がれたりすることをさらに防止することができるようになる。すなわち、電流の可飽和吸収領域が発生しなくなるため、閾値が上昇したり、不安定になったりすることがなくなる。これによって、室温のみならず80℃を超えるような高温動作環境にあってもしきい値の温度変化量を一定範囲内に収めることができ、光ディスクなど種々の情報機器用の光源として十分な信頼性を確保することができる。
【0055】
(実施の形態5)
図9は本発明の第5実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図、図10は図9の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図である。
【0056】
図に示すように、本発明の第5実施の形態における窒化物半導体レーザ素子は、基板1上にn型窒化物半導体層2、活性層3、およびp型窒化物半導体層4が順に積層され、積層方向の裂開面Sが光共振面とされ、活性層3より発光する帯状のレーザ共振器を構成している。
【0057】
p型窒化物半導体層4上面には、SiO2よりなる絶縁膜5を形成し、さらに、p型窒化物半導体層4、活性層3、およびn型窒化物半導体層2の一部をエッチングしてn型窒化物半導体層2を露出させてある。
【0058】
p型窒化物半導体層4上の絶縁膜5は、活性層3に電流を狭窄して注入するために帯状に除去され、露出させたp型窒化物半導体層4の表面上にNiとAuの積層構造からなる厚膜部p電極10が配置される。それから厚膜部p電極10はエッチングにより、端面10aを持ちNiとAuの積層構造からなる厚膜部p電極10と、NiまたはNiとAuの積層構造からなる薄膜部p電極10bとに区分される。
【0059】
すなわち、p電極は、露出させたp型窒化物半導体層4の表面に積層され裂開面Sに臨む薄膜部p電極10bと、その上面に形成され裂開面Sよりも1〜500μm程度内側に端面10aを持つ厚膜部p電極10から構成される。
【0060】
このように、p電極を構成する薄膜部p電極10bとp型窒化物半導体層4との接触面が裂開面Sまであることによって、p電極とp型窒化物半導体層4との接触面積が保たれ、電流を安定して伝わらせることが可能となる。一方、p電極を構成する厚膜部p電極10の裂開面S側の端面10aが裂開面Sよりも内側に形成されることによって、p電極が裂開時に受ける衝撃を少なくすることができ、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができる。
【0061】
また、薄膜部p電極10bの厚みは、厚膜部p電極10の厚みよりも薄くなるように、厚膜部p電極10の厚み5000オングストローム程度に対して100〜200オングストローム程度となるようにしている。
【0062】
このように、裂開面Sまで形成された薄膜部p電極10bの厚みを厚膜部p電極10の厚みよりも薄くすることによって、薄膜部p電極10bをエッチングしないときに比べて少なくなり、p型窒化物半導体層4との接触面積が同じでありながら、裂開時に受ける衝撃をより小さな体積で受けることができるので、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれやだれ等の裂開異常を防止することができる。またもともと一体である薄膜部p電極10bと厚膜部p電極10は真空中で成膜された後、薄膜部p電極10bをエッチングしてp電極として一括形成するから、相互の物理的密着性は非常に良いため裂開時に薄膜部p電極10bが受ける衝撃を、膜厚の厚い厚膜部p電極10に迅速かつ自然に伝達して急速に緩和することができる。
【0063】
したがって、裂開時に薄膜部p電極10bの端部が変形してp型窒化物半導体層4側に垂れ下がる、いわゆるだれが生じることがないため、光共振面からのレーザ発振に悪影響を及ぼすことがない。
【0064】
また厚膜部p電極10は、p電極へワイヤーボンディングする際に必要な厚みの5000オングストローム程度とすることができるため、ワイヤーボンディング時に厚膜部p電極10が変形することがなく、電流を安定して伝えることができる。また接触式で外部からp電極にコンタクトをとる場合でも、厚膜部p電極10はそれに必要な面積を取ることが可能である。また更に薄膜部p電極10bと厚膜部p電極10はもともと一体であるので相互の電気的接触は格段に良好である。
【0065】
以上のように、p電極が裂開時に受ける衝撃を少なくすることによって、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができ、電流の過飽和領域が発生しなくなるため、閾値が上昇したり、不安定になったりすることがなくなる。したがって、レーザ発振時の閾値電圧を低くすることができ、発熱量が少なく室温での連続発振が可能な安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0066】
なお、本実施の形態5においては、n電極8がn型窒化物半導体層2の上面に配置されているが、基板1を窒化物半導体そのもので作製し、n電極8を基板1の裏面に設けておくことも可能である。
【0067】
【実施例】
次に、本発明の具体例を説明する。
【0068】
本実施例は、有機金属気相成長法を用いて成長した窒化ガリウム系半導体層により作製される窒化物半導体レーザ素子を示すものである。
【0069】
(実施例1)
本実施例を図1および図2を参照しながら説明する。
【0070】
まず、基板表面がC面であって表面を鏡面に仕上げたサファイア等の基板1を反応管内の基板ホルダーに載置した後、基板1の表面温度を1100℃に10分間保ち、水素ガスを流しながら基板1を加熱することにより、基板1の表面に付着している有機物の汚れや水分を取り除くクリーニングを行う。
【0071】
次に、基板1の表面温度を600℃まで降下させ、主キャリアガスとしての窒素ガスを10リットル/分、アンモニアを5リットル/分、トリメチルアルミニウム(以下、「TMA」と記す)を含むTMA用のキャリアガスを20cc/分で流しながら、AlNからなるバッファ層であるn型窒化物半導体層2を25nmの厚さとなるように成長させる。その後、TMAのキャリアガスの供給を止めて1050℃まで昇温させた後、主キャリアガスとして、窒素ガスを9リットル/分、水素ガスを0.95リットル/分で流しながら、新たにトリメチルガリウム(以下、「TMG」と記す)用のキャリアガスを4cc/分、Si源である10ppmのSiH4(モノシラン)ガスを10cc/分で流しながら60分間成長させて、SiをドープしたGaNからなる第1のn型層を2μmの厚さで成長させる。このとき、第1のn型層のキャリア濃度は1×1018cm-3とする。
【0072】
第1のn型層の成長後、引き続いて主キャリアガスとTMG用のキャリアガスとをそのままの流量で流しながら、SiH4ガスの流量のみを50cc/分に変更して6分間流して、SiをドープしたGaNからなる第2のn型層を0.2μmの厚さで成長させる。このとき、第2のn型層のキャリア濃度は5×1018cm-3とする。
【0073】
第1のn型層と第2のn型層でn型窒化物半導体層2が形成される。
【0074】
n型窒化物半導体層2を成長形成後、TMG用のキャリアガスとSiH4ガスを止め、基板1の表面温度を750℃まで降下させ、新たに主キャリアガスとして窒素ガスを10リットル/分、TMG用のキャリアガスを2cc/分、トリメチルインジウム(以下、「TMI」と記す)用のキャリアガスを200cc/分で流しながら30秒間成長させて、ノンドープのInGaNからなる活性層3を6nmの厚さで成長させる。
【0075】
さらに、活性層3の成膜後、TMI用のキャリアガスとTMG用のキャリアガスを止め、基板1の表面温度を1050℃まで上昇させ、新たに主キャリアガスとして窒素ガスを9リットル/分、水素ガスを0.94リットル/分、TMG用のキャリアガスを4cc/分、TMA用のキャリアガスを6cc/分、Mg源であるビスシクロペンタジエニルマグネシウム(以下、「Cp2Mg」と記す)用のキャリアガスを50cc/分で流しながら4分間成長させて、MgをドープしたAlGaNからなる第1のp型層を0.1μmの厚さで成長させる。
【0076】
引き続き、TMA用のキャリアガスのみを止め、1050℃にて、新たに主キャリアガスとして窒素ガスを9リットル/分、水素ガスを0.90リットル/分と、TMG用のキャリアガスを4cc/分、Cp2Mg用のキャリアガスを100cc/分で流しながら3分間成長させ、MgをドープしたGaNからなる第2のp型層を0.1μmの厚さで成長させる。
【0077】
この第1のp型層と第2のp型層でp型窒化物半導体層4が形成される。
【0078】
そして、p型窒化物半導体層4成長後には、原料ガスであるTMG用のキャリアガスとアンモニアを止め、窒素ガスと水素ガスをそのままの流量で流しながら室温まで冷却した後、ウエハを反応管から取り出す。
【0079】
このようにして形成した窒化ガリウム系化合物半導体からなる量子井戸構造を含む積層構造に対して、その表面上にSiO2膜からなる絶縁膜5をプラズマCVD法により堆積させる。絶縁膜5の成膜条件は、基板温度を350℃とし、酸素ガスを4cc/分、テトラエチルオルソシリケートを100cc/分で流しながら、RFパワー250Wで30分成膜し、1μmの厚さのSiO2膜を形成する。
【0080】
次に、このように形成したウェハにレーザ構造を形成し、窒化物半導体レーザ素子を作製する。
【0081】
まず、窒化物半導体層を所望のパターンで形成する方法として、まず除去する部分の絶縁膜5をバッファードフッ酸等のウェットエッチャントにより除去し、所定の形状のマスクを形成する。その後、化学的異方性のドライエッチングによりp型窒化物半導体層4、活性層3、およびn型窒化物半導体層2の一部を除去し、基板にほぼ平行な平面を露出させる。
【0082】
それから、活性層3に電流を狭窄して注入するために、p型窒化物半導体層4上の絶縁膜5を帯状に除去する。絶縁膜5の除去は、所定のストライプ形状のマスクを形成し、バッファードフッ酸等のウェットエッチャントにより行う。まず、レジストを塗付し、接触部p電極6を成膜したい領域にレジストが残らないようにパターンニングする。次に、NiとAuの積層構造からなる接触部p電極6を蒸着法により連続成膜した後、溶剤でレジストを除去するとレジスト上の接触部p電極6は同時に除去され、所望のパターンの接触部p電極6が残る。それから、再度レジストを塗付し、主p電極7を成膜したい領域にレジストが残らないようにパターンニングする。さらに、TiとAuの積層構造からなる主p電極7を蒸着法により連続成膜した後、溶剤でレジストを除去するとレジスト上の主p電極7は同時に除去され、所望のパターンの主p電極7が残る。
【0083】
次に、n電極8を露出させたn型窒化物半導体層2上に形成する。このとき、n電極8の厚みは3000〜5000オングストロームとなるようにする。n電極8はTiとAuの積層構造となるように蒸着法で形成する。
【0084】
この後、基板1の裏面を研磨して50μmにまで薄くする。研磨後、窒化物半導体レーザ構造が形成されたウェハをレーザ素子に分割する。
【0085】
まず、スクライブ装置を用いてp型窒化物半導体層4上に形成した帯状のパターンのストライプ方向に対して垂直方向に第1の割溝を形成する。第1の割溝は溝幅5μm、溝深さ1μm程度である。この第1の割溝に沿って、第1の割溝の反対側からブレーキング装置を用いてウェハを圧し割る。このようにして形成した端面をレーザ素子の光共振面とする。第1の割溝は平行方向に600μmピッチで形成してレーザ素子の共振器長を600μmとする。
【0086】
次に、p型窒化物半導体層4上に形成した帯状のパターンに対して平行な方向に、レーザ素子単体に分割できるように400μmピッチでスクライブ装置を用いて第2の割溝を形成する。この割溝に沿って割り溝の反対側からブレーキング装置を用いて圧し割り、窒化物半導体レーザ素子を作製する。これにより600μm×400μmサイズの窒化物半導体レーザ素子が作製される。
【0087】
このとき、接触部p電極6は光共振面に全くだれていなかった。この窒化物半導体レーザ素子をヒートシンクに設置し、室温で通電を行いレーザ発振を試みたところ、同一ウエハから得られたレーザ素子の80%以上について、閾値電流100〜200mA、ばらつき±10%以内の収率で、発振波長410nmのレーザ発振が確認された。
【0088】
(実施例2)
実施例1と同様の手順により、第2実施の形態において説明した図3および図4に示す窒化物半導体レーザ素子を作製する。但し、n電極8は光共振面から20μm内側となるように形成する。
【0089】
この窒化物半導体レーザ素子の光共振面を裂開法で形成しても、n電極8の浮きはほとんど確認されず、剥離は全くなかった。
【0090】
この窒化物半導体レーザ素子をヒートシンクに設置し、室温で通電を行いレーザ発振を試みたところ、同一ウエハから得られたレーザ素子の85%以上について、閾値電流100〜200mA、ばらつき±10%以内の収率で、発振波長410nmのレーザ発振が確認された。
【0091】
(実施例3)
実施例1と同様の手順により、第3実施の形態において説明した図5および図6に示す窒化物半導体レーザ素子を作製する。但し、n型窒化物半導体層2に設けた割溝形成用切欠部9の深さは1.5〜2.0μmとなるように形成する。
【0092】
この窒化物半導体レーザ素子の光共振面を裂開法で形成しても、n電極の浮きは全く確認されず、剥離も全くなかった。
【0093】
この窒化物半導体レーザ素子をヒートシンクに設置し、室温で通電を行いレーザ発振を試みたところ、同一ウエハから得られたレーザ素子の80%以上について、閾値電流100〜200mA、ばらつき±10%以内の収率で、発振波長410nmのレーザ発振が確認された。
【0094】
(実施例4)
実施例1と同様の手順により、第4実施の形態において説明した図7および図8に示す窒化物半導体レーザ素子を作製する。但し、接触部p電極6を形成した後は次のように作製する。
【0095】
まず、接触部p電極6全体を覆うように絶縁膜5を成膜する。それからレジストを塗付し、主p電極7を成膜したい領域にレジストが残らないようにパターンニングする。次に、接触部p電極6と主p電極7がコンタクトする領域をあけるために、絶縁膜5をフッ酸等のウエットエッチャントでエッチングする。または、ドライエッチングを行ってもよい。さらに、TiとAuの積層構造からなる主p電極7を蒸着法により連続成膜した後、溶剤でレジストを除去するとレジスト上の主p電極7は同時に除去され、図7および図8に示す窒化物半導体レーザ素子が得られる。
【0096】
この窒化物半導体レーザ素子をヒートシンクに設置し、室温で通電を行いレーザ発振を試みたところ、同一ウエハから得られたレーザ素子の90%以上について、閾値電流100〜200mA、ばらつき±10%以内の収率で、発振波長410nmのレーザ発振が確認された。
【0097】
(実施例5)
実施例1と同様の手順により、第5実施の形態において説明した図9および図10に示す窒化物半導体レーザ素子を作製する。但し、窒化物半導体層をストライプ状にエッチングした後、露出させたp型窒化物半導体層4の表面上にNiとAuの積層構造からなる厚膜部p電極10が配置される。それから、厚膜部p電極10はエッチングにより、端面10aを持ちNiとAuの積層構造からなる厚膜部p電極10と、NiまたはNiとAuの積層構造からなる薄膜部p電極10bとに区分される。
【0098】
このとき、薄膜部p電極10bは光共振面に全くだれていなかった。この窒化物半導体レーザ素子をヒートシンクに設置し、室温で通電を行いレーザ発振を試みたところ、同一ウエハから得られたレーザ素子の90%以上について、閾値電流80〜90mA、ばらつき±10%以内の収率で、発振波長410nmのレーザ発振が確認された。
【0099】
【発明の効果】
本発明によって、以下の効果を奏することができる。
【0100】
(1)請求項1記載の発明によって、p電極が裂開時に受ける衝撃を少なくして、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができる。窒化物半導体系レーザでは水平方向の電流広がりが極めて小さいため、浮きや剥がれを防止することにより電流の可飽和吸収領域が発生しなくなるため、閾値が変動して高くなったり、ヒステリシス特性を持ったりしてばらつくような不安定なレーザ特性がなくなる。したがって、レーザ発振時の閾値電圧を低くすることができ、発熱量が少なく室温での連続発振が可能な安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0101】
(2)請求項2記載の発明によって、裂開時にp電極が受ける衝撃は接触部p電極に吸収させ、p型窒化物半導体層からの電流は接触部p電極を介して主p電極へと伝わらせることができるようになり、安定した電流によって安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0102】
(3)請求項3記載の発明によって、裂開時に接触部p電極が受ける衝撃は、接触部p電極が主p電極と同じ厚みのときよりも少なくなり、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができる。また、主p電極はp電極へワイヤーボンディングする際に必要な厚みとすることができるため、ワイヤーボンディング時に主p電極が変形することがなく、電流を安定して伝えることができるようになり、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0103】
(4)請求項4記載の発明によって、裂開時にだれが生じることがなくなるため、光共振面からのレーザ発信に悪影響を及ぼすことがなく、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0104】
(5)請求項5記載の発明によって、ワイヤーボンディングに必要な主p電極の長さを保持し、安定して電流を伝えることが可能となり、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0105】
(6)請求項6記載の発明によって、絶縁膜の開口部を前記裂開面よりも内側に形成することにより、接触部p電極が裂開時の衝撃で浮いたり、剥がれたりすることを更に防止することができる。
【0106】
(7)請求項7記載の発明によって、裂開時の衝撃を受ける接触部p電極の少なくとも一部を絶縁膜で覆って押さえ込むことにより、接触部p電極が裂開時の衝撃で浮いたり、剥がれたりすることをさらに防止することができ、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0107】
(8)請求項8記載の発明によって、裂開時にn電極に直接衝撃が伝わることがなくなるため、裂開時にn電極が浮いたり、剥がれたりするのを防止することができ、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0108】
(9)請求項9記載の発明によって、裂開時にn電極に伝わる衝撃が少なくなるため、裂開時にn電極が浮いたり、剥がれたりするのをさらに防止することができ、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0109】
(10)請求項10記載の発明によって、p電極が裂開時に受ける衝撃を少なくして、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれ等を防止することができる。窒化物半導体系レーザでは水平方向の電流広がりが極めて小さいため、こうすることより電流の可飽和吸収領域が発生しなくなるため、閾値が変動して高くなったり、ヒステリシス特性を持ったりしてばらつくような不安定なレーザ特性がなくなる。したがって、レーザ発振時の閾値電圧を低くすることができ、発熱量が少なく室温での連続発振が可能な安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0110】
(11)請求項11に記載の発明によって、裂開時に薄膜部p電極が受ける衝撃は、薄膜部p電極をエッチングしないときに比べて少なくなり、裂開時の衝撃によるp電極の浮きや剥がれやだれ等の裂開異常を防止することができる。またもともと一体である薄膜部p電極と厚膜部p電極は相互の物理的密着性は非常に良いため、裂開時に薄膜部p電極が受ける衝撃を、膜厚の厚い厚膜部p電極に迅速かつ自然に伝達して急速に緩和することができるので、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0111】
(12)請求項12に記載の発明によって、ワイヤーボンディングに必要なp電極の厚みに対して接触面の端部のp電極の厚みが薄いことから、裂開時にp電極の端部が変形してp型窒化物半導体層側に垂れ下がる、いわゆるだれが生じることがなくなる。また、厚膜部p電極はp電極へワイヤーボンディングする際に必要な厚みとすることができるため、ワイヤーボンディング時に厚膜部p電極が変形することがなく、電流を安定して伝えることができるようになり、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【0112】
(13)請求項13に記載の発明によって、ワイヤーボンディングに必要な厚膜部p電極の長さを保持し、安定して電流を伝えることが可能となり、安定したレーザ特性を持つ信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図
【図2】図1の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図
【図3】本発明の第2実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図
【図4】図3の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図
【図5】本発明の第3実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図
【図6】図5の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図
【図7】本発明の第4実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図
【図8】図7のレーザ共振器長手方向の中央部の断面図
【図9】本発明の第5実施の形態における窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図
【図10】図9の窒化物半導体レーザ素子を裂開面S側からみた正面図
【図11】従来の窒化物半導体レーザ素子を示す斜視図
【図12】図11の窒化物半導体レーザ素子を光共振面側からみた正面図
【符号の説明】
1 基板
2 n型窒化物半導体層
3 活性層
4 p型窒化物半導体層
5 絶縁膜
6 接触部p電極
7 主p電極
7a 端面
8 n電極
8a 端面
9 割溝形成用切欠部
10 厚膜部p電極
10a 端面
10b 薄膜部p電極

Claims (6)

  1. 基板上にn型窒化物半導体層と活性層とp型窒化物半導体層とが順に積層され、前記p型窒化物半導体層上には電流狭窄用絶縁膜が形成され、前記基板裏面または前記n型窒化物半導体層、およびp型窒化物半導体層にそれぞれn電極およびp電極がそれぞれ積層され、積層方向に裂開した裂開面が光共振面とされる窒化物半導体レーザ素子において、前記p電極は、前記裂開面に臨み前記p型窒化物半導体層の表面の前記電流狭窄用絶縁膜に挟まれた部分に積層された接触部p電極と、接触部p電極の上面に形成され前記裂開面よりも内側に端面を持つ主p電極とから構成され、前記接触部p電極の厚みが前記主p電極の厚みより薄く、かつ前記電流狭窄用絶縁膜の厚みより薄いことを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記接触部p電極の厚みが、10〜1000オングストロームであることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記主p電極の前記裂開面側の端面が、前記裂開面から1〜500μmの範囲にあることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記裂開面側のn電極端面が、前記裂開面よりも内側となるように形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記裂開面側のn電極端面と前記裂開面との間に、前記n型窒化物半導体層の一部または全部が除去された割溝形成用切欠部が形成されたことを特徴とする請求項4記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 基板上にn型窒化物半導体層と活性層とp型窒化物半導体層とが順に積層され、前記p型窒化物半導体層上には電流狭窄用絶縁膜と、接触部p電極と主p電極とからなるp電極が積層され、前記基板裏面または前記n型窒化物半導体層にn電極が積層され、積層方向に裂開した裂開面が光共振面とされる窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、
    p型窒化物半導体層の表面に絶縁膜を形成する工程と、
    p型窒化物半導体層の表面と前記絶縁膜上にレジストを塗布する工程と、
    接触部p電極を成膜する領域にレジストが残らないようにパターンニングする工程と、
    前記裂開面に臨む接触部p電極を成膜する領域の前記絶縁膜を除去し、電流狭窄用絶縁膜を形成する工程と、
    接触部p電極となる電極材料をパターンニングしたレジストとp型窒化物半導体層の表面上に前記電流狭窄用絶縁膜より薄い厚みで成膜した後、レジストを除去することによりレジスト上の電極材料を除去し、接触部p電極を成膜する工程と、
    再度レジストを塗布し、前記裂開面よりも内側に端面を持つ主p電極を成膜したい領域にレジストが残らないようにパターンニングする工程と、
    主p電極となる電極材料をパターンニングしたレジストと前記接触部p電極上に成膜した後、レジストを除去することによりレジスト上の電極材料を除去し、主p電極を成膜する工程と、
    を少なくとも順に有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の製造方法
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