JP3893817B2 - 自動車のペダル支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のダッシュパネル後方に配置されかつシリンダ側のロッドに連結された操作ペダルの支持構造に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車の衝突(前突)時には、その衝突を回避するためにドライバーがブレーキペダルを踏んで自動車を制動しているにも拘わらず、自動車が停止せずに衝突してしまうという、ブレーキペダルの踏込み状態での衝突が多いのが実情である。
【0003】
その場合、衝突に伴って車体前部が衝突エネルギーを吸収しながら潰れ、エンジンルーム内に配置されているエンジンが、その後側に位置するブレーキ装置のマスタシリンダを押しながら後退するが、このマスタシリンダに対し、ダッシュパネル後方に位置するブレーキペダルがオペレーティングロッドを介して連結されているので、マスタシリンダの後退移動に伴いオペレーティングロッドを介してプレーキペダルも押されて後退することとなる。その結果、衝突直前までブレーキペダルを踏んでいるドライバの足に衝突荷重が作用して大きなキックバックが生じ、そのドライバーの膝に衝撃がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、従来、このような問題に対処するために種々の対策が提案されている。例えば特開平9−216528号公報に示されるものでは、ダッシュパネルに固定されたペダルブラケットに回転リンクを車幅方向の固定軸を介して揺動可能に支持するとともに、この回転リンクに車幅方向の回転軸を介してブレーキペダルを連結支持し、回転リンクと車室内の車体側部材であるインパネメンバとの間に固定軸の上側を通るスプリングを掛け渡して、回転リンクを後回りに方向に回動付勢し、インパネメンバに、衝突によりペダルブラケットと共に後退移動する回転リンクに当接する当接部を設け、衝突に伴ってペダルブラケットが後退移動したときにブレーキペダルの支持部分である回転リンクをインパネメンバの当接部に当接させて前回りに回動させながら脱落させることで、ブレーキペダル下端のペダル部が後退移動しないようにし、ドライバーの足にブレーキペダルからの衝突荷重が作用するのを防ぐようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のものでは、インパネメンバに当接部を設けて、この当接部への当接によって回転リンクを回動させるようになっているものの、衝突時にその当接部に回転リンクを的確に当接させることは困難であり、その作動の信頼性が低いばかりか、構造も複雑となって高価格につくという難がある。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、ダッシュパネルの後方に配置されるブレーキペダル等の操作ペダルの支持構造を改良することで、簡単でかつ高い信頼性を持つ構造としながら、自動車の衝突時に操作ペダルが後退移動するのを確実に防止しようとすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、ダッシュパネルに固定されるブラケットに対し、操作ペダルを支持するための今1つのブラケットをその前端下部にて揺動可能に支持する。そして、このブラケットの後端上部を車体側部材に自動車の所定以上の衝突荷重の作用によって離脱可能に取付固定することにより、衝突時には、この操作ペダルの支持されたブラケットを後端上部の車体側部材からの離脱により操作ペダルと共に後回りに回動させて、その操作ペダルの後退移動を防止するようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、自動車のダッシュパネル後方に配設されかつシリンダ側のロッドに連結された操作ペダルの支持構造であって、上記ダッシュパネルに固定された第1ブラケットと、前端下部が上記第1ブラケットに揺動可能に枢着され、上記操作ペダルが揺動可能に枢着された第2ブラケットとを備えている。そして、上記第2ブラケットの後端上部を車室の車体側部材に、自動車の衝突時の衝突荷重により移動して離脱するように取り付ける。また、上記第1及び第2ブラケット間に、第2ブラケットの後端上部が車体側部材から離脱したときに、第2ブラケットが前端下部の第1ブラケットとの枢着位置を中心として後回りに回動するのを促進する回動促進手段を設ける。
【0009】
上記の構成によると、第2ブラケットの前端下部は第1ブラケットに枢着されている一方、後端上部は車体側部材に取り付けられているので、通常時には第2ブラケットが第1ブラケットと一体化された状態となり、この第2ブラケットに揺動可能に枢着された操作ペダルの踏み操作によりロッドが移動して、その動きがシリンダに伝達される。
【0010】
これに対し、自動車の衝突時に後退するエンジンに押されてダッシュパネル及びシリンダが後退移動すると、このダッシュパネルに固定された第1ブラケットと、シリンダ側のロッドに連結された操作ペダル及び該ペダルを支持している第2ブラケットとが後退し、この第2ブラケットの後退移動によりその後端上部が車体側部材から離脱して、第2ブラケットは前端下部のみにて第1ブラケットに支持された片持ち状態となる。このとき、例えばドライバーが操作ペダルを踏んでいる状態等では、上記片持ち状態の第2ブラケットは上記操作ペダルと共に前端下部の第1ブラケットとの枢着点を中心に後回りに回動しながら車体側部材から脱落し、このことで操作ペダルも下部のペダル部を前方に移動させるように回動して、上記シリンダ側のロッドが後退しても操作ペダルは該ロッドと同様の動きでは後退しなくなり、よって衝突時の操作ペダルの後退移動を防いで、操作ペダルを踏んでいるドライバーの足に衝突荷重が作用するのを防止できる。
【0011】
そして、上記操作ペダルを支持している第2ブラケットの前端下部を第1ブラケットに枢着し、後端上部を車体側部材に離脱可能に取付固定するだけの構造であるので、操作ペダルが支持された回転リンクを車体側部材の当接部に当接させて回転させる従来の構造に比較すると、衝突時に確実に第2ブラケットの後端上部を車体側部材から離脱させて操作ペダルの後退移動を防止でき、衝突時の作動信頼性を高めることができるとともに、構造も極めて簡単になってコストダウンを図ることができる。
【0012】
また、第1及び第2ブラケット間に回動促進手段が設けられているので、後端上部が車体側部材から離脱した第2ブラケットは回動促進手段によりスムーズに後回りに回動して脱落するようになり、仮に操作ペダルのドライバーによる踏み力が下がったとしても、その操作ペダルの後退移動をより一層確実に防止することができる。
【0013】
請求項2の発明では、上記第2ブラケットを第1ブラケット内に該第1ブラケットと一部が重なるように配置し、その第2ブラケットの後端上部は第1ブラケットに共締めして車体側部材に取付固定する。また、請求項3の発明では、第2ブラケットを第1ブラケット外の後側に配置し、その第2ブラケットの前端上部を第1ブラケットの後部に離脱可能に係合する。こうすると、第2ブラケットの具体的構造が容易に得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(参考形態)
図1は参考形態の全体構成を示し、1は自動車の車体の一部を構成するダッシュパネルで、その前側(図で左側)には図外のエンジンが収容されるエンジンルームR1が、また後部(図で右側)には車室R2がそれぞれ区画形成され、このダッシュパネル1下部の後方、つまり車室R2内下部の前端部には、運転席(図示せず)に着座したドライバーによって踏込み操作される操作ペダルとしてのブレーキペダル16が配設されている。
【0015】
すなわち、上記ダッシュパネル1下部の後面には第1ブラケット5がボルト部材6,6,…により固定されている。尚、この各ボルト部材6は後述のマスタバック19をダッシュパネル1の前面側に取付固定するためのもので、ダッシュパネル1を貫通してその後面に突出しており、この各ボルト部材6に第1ブラケット5が取付固定される。上記第1ブラケット5は、ダッシュパネル1にそれと平行にかつダッシュパネル1から所定間隔をあけた状態で取り付けられる板状の固定部5aと、この固定部5aから後側上方に向かって延びかつ下側に開放された断面略コ字形状の支持部5bとを備え、この支持部5bの後端上部は、車体の一部をなす車幅方向に延びて車室R2における車体側部材としてのカウルメンバ2の下面に、締結ボルト10により後述の第2ブラケット12と共締めされて固定されている。上記カウルメンバ2は、自動車の衝突時(前突時)に車室R2内の乗員のスペースを確保するために後退移動しない構造のものとされる。
【0016】
そして、図2に拡大して示す如く、第1ブラケット5の支持部5bにおける後端上部の上壁部には、上記締結ボルト10の頭部10aの外径よりも小さい幅を有する前後方向に延びる長孔7が形成されており、この長孔7の後端部7aに締結ボルト10を挿通してそれをカウルメンバ2に締結することで、第1ブラケット5の後端上部がカウルメンバ2に所定以上の荷重により後退移動可能に取付固定されている。尚、第1ブラケット5の固定部5aの中心部には後述のオペレーティングロッド18が挿通される開口(図示せず)が形成されている。また、支持部5bの縦壁部における中間部下端には該下端部を上側に切り欠いてなる切欠凹部8が形成されている。
【0017】
上記第1ブラケット5の支持部5b内には第2ブラケット12が左右方向(自動車の車幅方向)から見て支持部5bと略重なるように配置されている。この第2ブラケット12は、上記第1ブラケット5の支持部5bと同様に下側に開放された断面コ字形状のもので、その前端下部が第1ブラケット5の支持部5b前端にかしめピン11により鉛直面に沿って揺動可能に枢着されている。
【0018】
上記第2ブラケット12の後端上部は、上記カウルメンバ2(車室の車体側部材)に、自動車の衝突時の所定以上の衝突荷重により移動して離脱するように取り付けられている。つまり、第2ブラケット12の後端上部の上壁部は、第1ブラケット5の支持部5bにおける後端上部の上壁部の下側に重なるように配置されており、この第2ブラケット12の上壁部には、図2に拡大して示すように、前後方向に延びる長孔13が形成されている。この長孔13は、上記第1ブラケット5の長孔7とは異なり、後端部に位置していて上記締結ボルト10の頭部10aの外径よりも小さい幅の小幅部13aと、この小幅部13aの前側に連続し、締結ボルト10の頭部10aの外径よりも大きい幅の大幅部13bとからなり、この長孔13後端の小幅部13aを第1ブラケット5の長孔7の後端部7aに一致させ、それら小幅部13a及び後端部7aに締結ボルト10を挿通してそれをカウルメンバ2に締結することで、第2ブラケット12の後端上部が第1ブラケット5の後端上部と共にカウルメンバ2に取付固定されている。そして、所定以上の衝突荷重により第2ブラケット12が第1ブラケット5と共に後退移動したときに、第1ブラケット5の後端上部にあっては、その長孔7内を締結ボルト10が後端部7aから前側に向かって相対的に移動するのみでカウルメンバ2から離脱しないが、第2ブラケット12の後端上部については、図2に仮想線にて示すように、その長孔13内を締結ボルト10が後端の小幅部13aから前側の大幅部13bに相対移動して、その大幅部13bで締結ボルト10の頭部10aが抜け出るようになっている。このことで、第2ブラケット12の後端上部はカウルメンバ2に、自動車の衝突時の衝突荷重により後側に移動して離脱可能に取り付けられている。
【0019】
そして、上記第2ブラケット12における上端部近傍の縦壁部間には左右方向(自動車の車幅方向)に延びるペダル支持軸15が掛け渡され、このペダル支持軸15には上記ブレーキペダル16の上端部が鉛直面に沿って揺動可能に支持されている。このブレーキペダル16は細長い板状のもので、その下端部にはドライバーが足を載せて踏み込むペダル部16aが設けられている。尚、上記ペダル支持軸15の左右端部は上記第1ブラケット5の切欠凹部8内に突出するように配置されている。
【0020】
上記ブレーキペダル16の中間部にはオペレーティングロッド18(シリンダ側のロッド)後端のジョイント部18aがピン18bを介して連結されている。このオペレーティングロッド18のブレーキペダル16との連結位置であるピン18bの位置は、ブレーキペダル16がドライバーにより踏み操作されて後回りに回動した状態において、上記第2ブラケット12の前端下部の第1ブラケット5との枢着位置であるかしめピン11と略一致した位置に設定されている。
【0021】
上記オペレーティングロッド18は、上記第1ブラケット5における固定部5aの開口と、ダッシュパネル1に貫通形成した開口(図示せず)とを通ってエンジンルームR1へ延び、その前端部は、エンジンルームR1の後端部に位置する、ブレーキ装置のマスタシリンダ(図示せず)にマスタバック19(倍力装置)を介して駆動連結されており、ブレーキペダル16のペダル部16aを踏み込んでブレーキペダル16を図1で時計回り方向に回動させたときに、オペレーティングロッド18を前側に押してマスタバック19を作動させ、そのマスタバック19によりマスタシリンダに対する押圧力を増大させながらマスタシリンダによりブレーキをかけるようになっている。
【0022】
次に、上記参考形態の作用について説明する。自動車が衝突しない通常時には、図1に示す如く、第2ブラケット12の前端下部は第1ブラケット5の前端下部にかしめピン11により枢着されている。一方、第2ブラケット12の後端上部は締結ボルト10により第1ブラケット5の支持部5bの後端上部と共締めされてカウルメンバ2に固定されている。具体的には、図2に示す如く、第2ブラケット12の後端下部における長孔13後端の小幅部13aと第1ブラケット5における長孔7の後端部7aとが一致して両者に締結ボルト10が挿通され、この締結ボルト10はカウルメンバ2に締結されている。このため、第2ブラケット12が前端下部及び後端上部の双方で移動不能に固定されており、自動車の制動時にドライバーがブレーキペダル16を踏み操作すると、通常と同様の動作が行われる。すなわち、ブレーキペダル16の踏み操作に伴ってオペレーティングロッド18が前進移動するとともに、そのオペレーティングロッド18の押圧力がマスタバック19で増大されてマスタシリンダに伝達され、このマスタシリンダからのブレーキ圧が各車輪のホイールシリンダ(図示せず)に伝達されて自動車が制動される。
【0023】
これに対し、上記のようにドライバーがブレーキペダル16を踏み込んだ制動状態のまま自動車が衝突(前突)すると、車体前部が潰れながら後退するために、エンジンルームR1内のエンジンが後退し、このエンジンに押されてマスタシリンダ、マスタバック19及びオペレーティングロッド18が後退移動し、このオペレーティングロッド18に一体的に連結されているブレーキペダル16も後退し始める。また、所定以上の衝突荷重を受けてダッシュパネル1も後退し、このダッシュパネル1に固定されている第1ブラケット5が第2ブラケット12と共に後退する。一方、これら両ブラケット5,12の後端上部が固定されているカウルメンバ2は、自動車の衝突によっても車室R2内の乗員のスペースを確保するために後退移動せずに停止したままに保たれるので、上記第1及び第2ブラケット5,12の後退移動に伴い、図2に仮想線にて示すように、第1ブラケット5の後端上部の長孔7内を締結ボルト10が後端部7aから前側に向かって相対的に移動するのみとなり、この第1ブラケット5の後端上部はカウルメンバ2から離脱しない。しかし、第2ブラケット12の後端上部においては、その長孔13内を締結ボルト10が後端の小幅部13aから前側の大幅部13bに相対移動して、その大幅部13bで締結ボルト10の頭部10aが抜け出る。このことで、図3に実線にて示すように、両ブラケット5,12のうち第2ブラケット12の後端上部のみの取付固定が外れて、その後端上部がカウルメンバ2から離脱し、第2ブラケット12は前端下部のみにて第1ブラケット5に支持された片持ち状態となる。そして、このとき、ドライバーがブレーキペダル16を踏み続けている自動車の制動状態にあるので、このブレーキペダル16に作用するモーメントにより、図3で仮想線にて示すように、上記片持ち状態の第2ブラケット12がブレーキペダル16と共に前端下部の第1ブラケット5との枢着点(かしめピン11)を中心に後回りに回動しながらカウルメンバ2から脱落する。その結果、ブレーキペダル16は下部のペダル部16aを前方に移動させるように後傾し、上記のようにオペレーティングロッド18ロッドが後退してもブレーキペダル16は同様の動きで後退しなくなり、よって衝突時のブレーキペダル16の後退移動を防いで、そのブレーキペダル16を踏んでいるドライバーの足に衝突荷重が作用するのを回避できる。
【0024】
そして、この参考形態においては、上記ブレーキペダル16を支持している第2ブラケット12の前端下部を第1ブラケット5にかしめピン11により枢着し、第2ブラケット12の後端上部はカウルメンバ2に締結ボルト10により離脱可能に取付固定するだけであるので、ブレーキペダルが支持された回転リンクをインパネメンバの当接部に当接させて回転させる従来の構造に比べ、衝突時に確実に第2ブラケット12の後端上部をカウルメンバ2から離脱させてブレーキペダル16の後退移動を防止でき、衝突時の作動信頼性を高めることができる。しかも、構造も極めて簡単になってコストダウンを図ることができる。
【0025】
また、第2ブラケット12の前端下部を第1ブラケット5に枢着しているかしめピン11の位置が、ドライバーによって踏み操作された状態にあるブレーキペダル16とオペレーティングロッド18との連結位置(ピン18bの位置)と略一致しているので、上記のように衝突に伴い第2ブラケット12の後端上部がカウルメンバ2から離脱して第2ブラケット12が後回りに回動する際に、オペレーティングロッド18からの衝突荷重を受けてブレーキペダル16の動きが不安定になることはなく、ブレーキペダル16の後退移動の防止を安定して確保することができる。
【0026】
(実施形態1)
図4は本発明の実施形態1を示す(尚、以下の各実施形態では図1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)。この実施形態では、上記参考形態の構造に加え、第1ブラケット5の支持部5bにおける中間部の上壁部下面と、第2ブラケット12の中間部の上壁部上面との間に回動促進手段としての圧縮ばね21が縮装されており、第2ブラケット12の後端上部がカウルメンバ2から離脱したときに、その第2ブラケット12を圧縮ばね21の回動付勢力により、前端下部の第1ブラケット5との枢着位置(かしめピン11)を中心として後回りに回動するのを促進するようにしている。
【0027】
したがって、この実施形態においては、後端上部がカウルメンバ2から離脱した第2ブラケット12は、圧縮ばね21の付勢力によりスムーズに後回りに回動してカウルメンバ2から脱落するようになる。それ故、仮に衝突直後にドライバーのブレーキペダル16の踏込み力が下がったとしても、第2ブラケット12のカウルメンバ2からの脱落が強制的に行われ、ブレーキペダル16の後退移動をより一層確実に防止することができる利点がある。尚、第1ブラケット5の前端下部を後側に延長して、その後端部と第2ブラケット12の後端上部との間に引張ばねを伸装するようにすることもできる。
【0028】
(実施形態2)
図5及び図6は実施形態2を示し、上記参考形態及び実施形態1では、第2ブラケット12を第1ブラケット5内にそれと略重なるように配置し、第2ブラケット12の後端上部をカウルメンバ2に第1ブラケット5と共締めして取付固定しているのに対し、第2ブラケット12を第1ブラケット5外の後側に配置し、その第2ブラケット12の前端上部を第1ブラケット5の後端上部に離脱可能に係合したものである。
【0029】
すなわち、この実施形態では、第1ブラケット5は後端上部でカウルメンバ2に取付固定されておらず、前端の固定部5aのみがダッシュパネル1に固定されている。また、第2ブラケット12の前端下部は前側に突出していて、その突出部分の先端にてかしめピン11により第1ブラケット5に揺動可能に枢着されている。そして、この第2ブラケット12の後端上部がその長孔13を貫通する締結ボルト10によりカウルメンバ2に締結固定されている。上記長孔13は、参考形態のものと同様に、後端の小幅部13aと前側の大幅部13bとからなり(図2参照)、その小幅部13aにて締結ボルト10により固定されている。
【0030】
第1ブラケット5の後端上部における左右の各縦壁部には、略前後方向に延びる貫通孔23と、この貫通孔23の下側に位置し、第1ブラケット5の縦壁の一部をそれと直交する左右方向に折り曲げてなるプレート状の突起部24とが形成されている。
【0031】
一方、第2ブラケット12の前端上部における左右の各縦壁部には、上記第1ブラケット5の貫通孔23に合致するように切り欠かれた前側に開口する切欠き26と、この切欠き26の下側に位置し、第2ブラケット12の縦壁の一部をそれと直交する左右方向に折り曲げてなるプレート状の突起部27とが形成され、この突起部27は上記第1ブラケット5の突起部24と当接している。これら両突起部24,27は、第2ブラケット12の後端上部がカウルメンバ2から離脱したときに、その第2ブラケット12を前端下部のかしめピン11の位置を中心として後回りに回動するのを促進する回動促進手段を構成している。
【0032】
さらに、上記切欠き26の内奥部である後端部には、切欠き26の上下両側縁部を対向するように部分的に突出させてなる係合突起28,28が一体に形成され、この係合突起28,28により切欠き26内が内奥部(後端部)のボルト挿通部26aと、開口側(前側)のボルトスライド部26bとに区画されている。さらに、上記第1ブラケット5の左右の縦壁部の後端上部と、第2ブラケット12の左右の縦壁部の前端上部とは各々の突起部24,27を当接させた状態で突き合わされ、この突合わせ状態では、第1ブラケット5の貫通孔23と第2ブラケット12の切欠き26とが貫通孔23の後端部と切欠き26後端のボルト挿通部26aとを左右方向に対応させて合致し、この一致している貫通孔23の後端部と切欠き26後端のボルト挿通部26aとに亘り左右方向に延びる連結ボルト30が図外のスナップリングにより抜止めされて挿通されている。つまり、この連結ボルト30により、第2ブラケット12の前端上部が第1ブラケット5の後端上部と係合され、連結ボルト30を第2ブラケット12に対し相対的に前側に移動させて第2ブラケット12の切欠き26のボルト挿通部26aから係合突起28,28を越えてボルトスライド部26bに移行させることで、第2ブラケット12の前端上部を第1ブラケット5の後端上部から離脱させるようにしている。
【0033】
さらに、上記カウルメンバ2の下面には下方に突出する突出部2aが形成され、この突出部2aは、上記第2ブラケット12の上壁部に形成した切欠き(図示せず)を通って左右の縦壁部間に位置しており、自動車の衝突荷重を受けて第2ブラケット12が第1ブラケット5と共に後退移動したときに、その第2ブラケット12の前端上部の縦壁部間に架設されている連結ボルト30の中間部をカウルメンバ2の突出部2aに当接させて連結ボルト30の後退移動を規制することで、その連結ボルト30を第2ブラケット12の切欠き26のボルト挿通部26aから係合突起28,28を越えてボルトスライド部26bに移行させるようになっている。
【0034】
したがって、この実施形態の場合、自動車の衝突によりダッシュパネル1が後退すると、それに固定されている第1ブラケット5と、該第1ブラケット5にかしめピン11及び連結ボルト30を介して連結されている第2ブラケット12も後退する。この第2ブラケット12の後退移動により、その後端上部の長孔13内を締結ボルト10が後端の小幅部13aから前側の大幅部13bに相対移動して、その大幅部13bで締結ボルト10の頭部10aが抜け出し、このことで第2ブラケット12の後端上部のカウルメンバ2への取付固定が外れて、その第2ブラケット12の後端上部がカウルメンバ2から離脱する。
【0035】
また、このような第2ブラケット12の後端上部のカウルメンバ2からの離脱と略同時に、第2ブラケット12の前端上部の縦壁部間に架設されている上記連結ボルト30の中間部がカウルメンバ2の突出部2a前面に当接して連結ボルト30の後退移動が停止規制され、このことで、連結ボルト30が相対的に前側に移動して第2ブラケット12の切欠き26のボルト挿通部26aから係合突起28,28を潰しながら越えてボルトスライド部26bに移行し、第2ブラケット12の前端上部と第1ブラケット5の後端上部との係合が解除される。
【0036】
これらの結果、第2ブラケット12は前端下部のかしめピン11のみにて第1ブラケット5に支持された片持ち状態となり、この片持ち状態の第2ブラケット12は、ドライバーの踏み操作に伴うブレーキペダル16へのモーメントにより、ブレーキペダル16と共に前端下部の第1ブラケット5との枢着点(かしめピン11)を中心に後回りに回動しながらカウルメンバ2から脱落する。よって、この実施形態でも簡単な構造で、衝突時のブレーキペダル16の後退移動を防いでドライバーの足に衝突荷重が作用するのを防止することができる。
【0037】
また、この実施形態では、上記のように衝突荷重を受けて第1ブラケット5が後退するとき、第2ブラケット12の前端上部の突起部27が第1ブラケット5の後端上部の突起部24に押される。このため、後端上部がカウルメンバ2から離脱した第2ブラケット12はスムーズに後回りに回動してカウルメンバ2から脱落するようになり、ドライバーのブレーキペダル16に対する踏込み力が下がったとしても、第2ブラケット12のカウルメンバ2からの脱落を強制的に行って、ブレーキペダル16の後退移動をより一層確実に防止することができる。
【0038】
尚、上記参考形態及び各実施形態では、操作ペダルをブレーキペダル16としているが、本発明は、自動車のダッシュパネル1後方に揺動可能に配設され、かつシリンダ側のロッドが連結された操作ペダルであれば適用することができる。
【0039】
また、第2ブラケット12のカウルメンバ2への取付構造は上記参考形態及び各実施形態のものに限定されず、また車体側部材はカウルメンバ2以外のものであってもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明した如く、請求項1〜3の発明によると、自動車のダッシュパネル後方に配置されてシリンダ側のロッドに連結される操作ペダルの支持構造において、ダッシュパネルに第1ブラケットを固定して、その第1ブラケットに第2ブラケットの前端下部を揺動可能に支持し、この第2ブラケットの後端上部は車室の車体側部材に衝突荷重により離脱可能に取り付け、この第2ブラケットに操作ペダルを支持し、第1及び第2ブラケット間に設けた回動促進手段により、第2ブラケットの後端上部が車体側部材から離脱したときに、第2ブラケットを前端下部を中心として後回りに強制的に回動させるようにしたことにより、自動車の衝突時に第2ブラケットの後端上部を車体側部材から離脱させ、その車体側部材から離脱した第2ブラケットを操作ペダルと共にスムーズに後回りに回動させながら脱落させることができ、よって、極めて簡単で作動信頼性の高い構造としつつ、衝突時に操作ペダルがシリンダ側のロッドにより押されて後退移動するのをより一層確実に防いで、ドライバーの足に対する衝突荷重の作用を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考形態に係るペダル支持構造の全体構成を概略的に示す側面図である。
【図2】 両ブラケットの後端上部のカウルメンバに対する取付構造を概略的に示す平面図である。
【図3】 自動車の衝突時の各部材の動きを概略的に示す側面図である。
【図4】 本発明の実施形態1を示す図1相当図である。
【図5】 実施形態2を示す図1相当図である。
【図6】 実施形態2において第1ブラケットの後端上部と第2ブラケットの前端上部との係合部分を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 ダッシュパネル
2 カウルメンバ(車体側部材)
5 第1ブラケット
11 かしめピン
12 第2ブラケット
13 長孔
16 ブレーキペダル(操作ペダル)
18 オペレーティングロッド(シリンダ側のロッド)
21 圧縮ばね(回動促進手段)
24,27 突起部(回動促進手段)
R1 エンジンルーム
R2 車室
Claims (3)
- 自動車のダッシュパネル後方に配設されかつシリンダ側のロッドに連結された操作ペダルの支持構造であって、
上記ダッシュパネルに固定された第1ブラケットと、
前端下部が上記第1ブラケットに揺動可能に枢着され、上記操作ペダルが揺動可能に枢着された第2ブラケットとを備え、
上記第2ブラケットの後端上部は車室の車体側部材に、自動車の衝突時の衝突荷重により移動して離脱するように取り付けられ、
上記第1及び第2ブラケット間に、第2ブラケットの後端上部が車体側部材から離脱したときに、第2ブラケットが前端下部の第1ブラケットとの枢着位置を中心として後回りに回動するのを促進する回動促進手段が設けられていることを特徴とする自動車のペダル支持構造。 - 請求項1の自動車のペダル支持構造において、
第2ブラケットは第1ブラケット内に該第1ブラケットと一部が重なるように配置されており、
上記第2ブラケットの後端上部は第1ブラケットに共締めされて車体側部材に取付固定されていることを特徴とする自動車のペダル支持構造。 - 請求項1の自動車のペダル支持構造において、
第2ブラケットは第1ブラケット外の後側に配置されており、
上記第2ブラケットの前端上部は第1ブラケットの後部に離脱可能に係合されていることを特徴とする自動車のペダル支持構造。
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