JP3891667B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、NMRという)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化する核磁気共鳴撮影(以下、MRIという)装置を用いたイメージング方法に関し、特にスピンの拡散の影響を強調して画像化する拡散MR撮影方法(以下、拡散イメージングという)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年エコープレナーイメージング(EPI)を使って、拡散スピンからの信号を強度に抑制した画像を得る拡散強調イメージングが行われている。拡散強調イメージングでは、移動するスピンの位相をディフェイズする拡散傾斜磁場を印加するため、被検体のわずかな動きにより画像が乱れることが知られている。これを回避するために、1回のRFパルス照射で1枚の画像に必要なエコー信号を計測するシングルショットEPIで撮影することが試みられている。シングルショットEPIは被検体の動きが無視できる反面、得られる画像の空間分解能は必ずしも高くはない。
【0003】
空間分解能を向上するには、1枚の画像に必要なエコー信号を分割して取得するマルチショットシーケンスでの拡散強調イメージングが必須である。しかしマルチショットシーケンスでは、複数のRFパルス照射を行う間(ショット間)に体動による取得信号の位相乱れを生じることが場合がある。
【0004】
マルチショットシーケンスにおけるショット間の位相乱れを補正する方法としてナビゲーションエコー法が知られている「正常及び虚血ヒト脳のナビゲートされた拡散イメージング」Alex J. de Crespignyら、マグネチックレゾナンスインメディスン33,pp720−728(1995)、米国特許4937526号,米国特許5254948号など)。この方法は、図7に示すようにショットごとに体動モニターとして位相エンコードを付加しないエコー(ナビゲーションエコーという)を取得し、このエコー信号を用いて本計測エコーの動きによる変動を補正する。なお、本方法では、ナビゲーションエコーと本計測エコー間では被検体の位置は変化しないものとしている。
【0005】
一方、拡散スパイラルイメージングでは、k空間の中心にある計測データ(位相エンコード0のデータ)の位相値をモニターして、信号を補正する方法および位相変化が大きい場合データを再取得し、新たに計測されたデータで置換する方法が提案されている(「リアルタイム体動モニタリング及びインターリーブスパイラル拡散強調イメージングのための体動補正」T.Tsukamotoら,4th ISMRM(Canada),p.221(1997))。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上述したナビゲーションエコー等を用いた従来の位相補正法では、拡散イメージングにおける体動による取得信号の乱れを完全には除去できない場合があった。これは、拡散イメージングでは移動するスピンの位相をディフェイズする強い拡散傾斜磁場を印加するため、この拡散傾斜磁場の印加の間(100ms以下)に体動によるスピンの移動があると本来的には停止しているスピンの位相が回転し、疑似的にオフセット位相エンコードが付与されるためと考えられる。このため、良好な画像を得られるときと得られないときがあり、画質がばらつくという問題があった。
【0007】
また位相変化が大きいときにデータを再取得する方法では、計測が長引く可能性がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の拡散イメージングでは、RFパルス照射毎に被検体の動きをモニターするためのナビゲーションエコーを発生させ、ナビゲーションエコーの所定のパラメータから基準値を求め、各ナビゲーションエコーのパラメータと基準値との比較結果が許容値以内か否かを判定し、許容値以上のナビゲーションエコーと同じ繰り返し単位内で取得されたエコー信号を別のエコー信号で置換する。上記判定により許容値を超えると判断された場合に、置換する別のエコー信号としては、置換すべきエコー信号の複素共役エコーから複素共役変換して求めたデータを用いることが好ましい。
【0009】
複素共役エコーも上記判定により許容値を超えると判断される場合もありえるが、確率的には無視し得る程度であり、複素共役エコーを利用できる。また複素共役エコーが利用できない場合にのみ再計測し、新たに計測されたデータで置換する。これにより撮影時間の延長を防止することができる。
【0010】
計測エコーを採用するか否かを判定するための基準は、ナビゲーションエコーの生データの積分値やピーク値を用いてもよいが、好適にはナビゲーションエコーを1次元フーリエ変換して得られる投影パターンから求める。ナビゲーションエコーを用いた位相補正方法では位相補正の基準として1次元フーリエ変換したデータを用いるので、このデータをそのまま利用することができる。この場合、各ナビゲーションエコーについて投影パターンの面積或いはピーク値をパラメータとして求め、これらのうち特定の1つを基準値としてもよいし、平均値を求めそれを基準値としてもよい。
【0011】
本発明者らが拡散イメージングにおける画質の劣化について研究した結果、画質が劣化する場合、マルチショットのうちの極わずかな数のショットで、被検体の投影パターンが著しく変動していることがわかった。従って逆に拡散傾斜磁場の印加の間の体動を被検体の投影パタンで検出することにより高精度で体動の有無を判断できる。
【0012】
本発明ではこのように高精度な判断に従い、該当するショットで得られた本計測データの質をチェックする。その結果、体動が許容値を超えたショットでは、ナビゲーションエコー法等の位相補正法では補正しきれないと判断し、そのショットで得られた本計測データを棄却する。これにより体動起因の画像乱れのない拡散画像を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の拡散イメージングの1実施例を図面を参照して説明する。
図4は本発明が適用される典型的なMRI装置の概要を示す図で、被検体401の周囲に静磁場を磁場を発生する磁石402と、該空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル403と、この領域に高周波磁場を発生するRFコイル404と、被検体401が発生するMR信号を検出するRFプローブ405とを備えている。
【0014】
傾斜磁場コイル403は、X,Y,Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源409からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。一般にはこれらの組み合わせで任意の3軸方向(スライス方向,位相エンコード方向及び読み出し方向)の傾斜磁場を発生する。RFコイル404はRF送信部410の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ405の信号は、信号検出部406で検出され、信号処理部407で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像は表示部408で表示される。
【0015】
傾斜磁場電源409,RF送信部410,信号検出部406は制御部411で制御され、制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれており、本発明では拡散イメージングのためのパルスシーケンスが実行される。ベッド412は被検体が横たわるためのものである。
【0016】
次に本実施例による拡散イメージングを説明する。図1はその手順を示す図で、まず拡散イメージングのためのパルスシーケンスを実行することにより、エコー信号(MR信号)を計測する(101)。パルスシーケンスは、例えば図2に示すようなマルチショット拡散EPIシーケンスが採用され、1の繰り返し単位で1つのナビゲーションエコーの計測と複数のエコー信号の計測が行われ、それを複数回繰り返すことにより1枚の画像再構成に必要なエコー信号を取得する。尚、ここでは4ショットとして説明する。
【0017】
図2に示す拡散EPIシーケンスは、4ショットSE EPIシーケンスを基本としており、90°パルス201と180°パルス202の照射後、読み出し傾斜磁場Gr203を極性を反転させながら印加してエコー信号205を発生させるとともに位相エンコード傾斜磁場Gp204を印加し、各エコー信号205に異なる位相エンコードを付与する。位相エンコード数を256とした場合、1ショットで計測されるエコー信号205は64である。また180°パルス202の前後に拡散強調傾斜磁場パルス206が追加される。図では、読み出し傾斜磁場Gr,位相エンコード傾斜磁場Gp,スライス傾斜磁場Gsの全方向に拡散強調傾斜磁場パルスが追加してあるが、これらの内の1方向でもよく、通常は1方向が選ばれる。
【0018】
尚、拡散イメージングにおける画質の低下は位相エンコード方向に拡散傾斜磁場を印加した場合に顕著となる。これは読み出し傾斜磁場203に比べ位相エンコード傾斜磁場204の大きさが小さいので、位相エンコード方向の拡散傾斜磁場印加の間に生じた動きによるオフセット量が相対的に大きな影響を与えるためである。従って、本発明は位相エンコード方向に拡散傾斜磁場を印加する場合に特に有効である。
【0019】
更に本シーケンスでは拡散強調傾斜磁場パルス206の印加後に、体動をモニターするナビゲーンョンエコー検出用傾斜磁場パルス207を読み出しGr方向に追加してある。
【0020】
このようなシーケンスを4回繰り返すことにより、1枚の画像再構成に必要なエコー信号(本計測データ)と各ショット毎に1つのナビゲーションエコー208が得られる。ショット毎のナビゲーンョンエコー208は、読み出しGr方向への体動による信号の変動(位相変動)を補正するための公知の位相補正方法に使用される他、以下詳述するようにこれら位相補正方法では除去できない変動が生じた場合を判定するために使用される。
【0021】
このため、各ナビゲーンョンエコーデータ(ナビエコーデータと略記する)からプロファイルPi(x)(iはi番目のナビゲーンョンエコーであることを示し、xは読み出し方向の位置を表す)を作成する(図1、ステップ102)。プロファイルは、ナビゲーンョンエコー208を1次元フーリエ変換し、絶対値化することにより得られる。
【0022】
図5に各ナビゲーンョンエコーから得られたプロファイル501〜504を示す。これらのプロファイルは、被検体が人頭,撮影断面が横断面の時を示しており、図では、4つのプロファイルのうちi=3のプロファイル503のみが大きく形状が異なっている。この原因は、拡散傾斜磁場302を印加中に被検体が動いたことによる。
【0023】
次にこれらプロファイルをもとに体動判定の基準値を求める。この実施例では、まず各プロファイルの面積を求める。面積は、次式(1)により各プロファイル501〜504を積分することにより求める。
Vi=∫Pi(x)dx (1)
これらの値から基準値を求める(103)。基準値としては、特定のプロファイルの値を用いてもよいし、各プロファイルの値Vの平均値を用いてもよい。また平均値からのずれが最小である値を用いてもよい。ここでは、i=1のナビゲーションエコーのプロファイル501の面積を基準値Refとして用いることとし、各プロファイルの面積と基準値との差の絶対値Diを求める。
Ref=∫P1(x)dx (2)
Di=|Ref−Vi|/Ref (3)
【0024】
次に差の絶対値Diを予め設定された閾値Thと比較し、Di>Thであれば、i番目のショットで計測された本計測データは画像再構成に使わず、Di≦Thであれば、i番目の本計測データを使うこととする。
【0025】
図5の例では、D1=0.00,D2=0.05,D3=0.40,D4=0.07であり、閾値Th=0.20とすると、i=3の本計測データは利用しないことになる。尚、閾値Thは公知の位相補正方法では補正できない位相変動に対応する値を予め設定しておく。また閾値を設定する代わりに、基準値として各プロファイルの面積から分散求め、分散以下か否かで判定するようにしてもよい。
【0026】
このように判定した結果、i番目のショットで計測された本計測データを画像再構成に使用しないと判断された場合には、この位相エンコードのデータを別のデータで補充する(105)。別のデータとしては、対応するショットの計測を再度行い、新たに計測されたデータを用いることもできるが、本実施例ではまず優先的に複素共役エコーのデータを用いる。
【0027】
本発明者らが拡散イメージングにおける画質の劣化について研究した結果では、画質の劣化はマルチショットのうちの極わずかな数のショットにおける著しい変動により生じていることがわかった。従って、画像再構成に使用できないと判断された計測データは、多くの場合、画像再構成に使用可能な複素共役エコーが存在する。
【0028】
そこで図3に示すようにまず各ナビゲーションエコーのプロファイルが基準値以内か、即ちi番目の本計測データが画像再構成に使用できるか否かを判定した後(303)、使用しない(棄却する)と判断された本計測データについて画像再構成に使用可能な複素共役エコーが存在するか否かを判定する(304)。
【0029】
図5の例では、ステップ104で棄却することとしたi=3のエコーの対応する複素共役エコーは、i=2のエコーであり、このエコーはD2≦Thを満たしている。このような複素共役エコーを複素共役変換して求めたデータで、棄却したデータを置換する。この複素共役変換方法はハーフスキャンイメージングで用いられる技術の応用であり、当業者に公知なように、下式によって求められる。
【数1】
【0030】
尚、この変換式では簡単のために2×2のデータマトリックスについて示しているが、実際にはエコーのデータ番号と位相エンコード数によって決まるマトリックスとなる。
【0031】
一方、棄却すべき計測データの複素共役データもまた棄却データの場合には、置換すべきデータがないことになるので、そのショットを再計測し、再計測後のデータで置換する。この場合、不足する2ショットのデータをそれぞれ再取得してもよいが、好適には互いに複素共役関係にあるデータのうち一方のショットのデータのみを再取得することとし、他方については上式により複素共役変換して求めたデータで置換する。また再取得されたデータについても画像再構成に使用できるデータか否かの判定を行うことが好ましい。
【0032】
最終的に、体動の範囲が許容値の範囲であると判断されたデータのみを用いて画像再構成する(106)。このように体動が大きく通常の位相補正方法では補正ができないデータについては、事前に棄却して、補正可能なデータのみで画像再構成することにより、良好な画質の画像を得ることができる。また棄却データを置換するデータとして、複素共役データを利用することにより再計測の機会をできるだけ少なくし、撮影時間の延長を防止することができる。
【0033】
尚、以上の実施例では、本計測データが画像再構成に使用可能か否かの判定をナビゲーションエコーのプロファイルの面積を基準に行うこととして説明したが、プロファイルのピーク値を基準にしてもよい。更にナビゲーションエコーをフーリエ変換する前の信号の積分値或いはピーク値を求め、これを基準に行うことも可能である。
【0034】
また以上の実施例では、ナビゲーションエコーを用いて各ショットのデータを画像再構成に使用可能か否かの判定を行う場合のみを説明したが、各ショットで計測されたナビゲーションエコーを公知の位相補正法によりショット間の位相補正に用いることができるのは言うまでもない。
【0035】
図6は、本発明の方法を公知のナビゲーンョン補正技術と組み合わせた例であり、図1における基準プロファイル作成ステップ103と判定ステップ104との間に各ショットの体動補正ステップ107が挿入されている点が異なる。この場合、体動補正ステップ107では、まずステップ102でナビゲーションエコーを1次元フーリエ変換して得られた信号から位相を求め、基準となるナビゲーションエコー、例えばi=1のナビゲーションエコーの位相との差を求める。次いで本計測データの位相を対応するナビゲーションエコーについて求められた位相差により補正する。
【0036】
しかる後に図1の実施例と同様にショット毎のデータ採否の判定を行い(104)、体動の範囲が許容値の範囲であると判断されたデータのみを用いて画像再構成する。この場合、画像再構成に採用したエコーのデータはナビゲーションエコーにより位相補正されているので再構成画像もさらに良好になる。
【0037】
尚、以上の実施例では拡散イメージングのパルスシーケンスとしてマルチショットEPIシーケンスを例にして説明したが、本発明はk−空間を螺旋状に走査する拡散スパイラルイメージングにも適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明の拡散イメージングによれば従来のナビゲーションエコーを用いた位相補正法では補正できない体動変動がある場合に、それを投影パターンの形状で判定するので、高精度でデータの取捨選択が可能になり、画質が向上する。また本発明の拡散イメージングでは、棄却することとしたデータを、複素共役変換により求めたデータで置換することにより、撮影時間の延長を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の手順示す流れ図。
【図2】本発明の他の実施例の手順を示す流れ図。
【図3】本発明の一実施例が適用されるパルスシーケンスのパタン図。
【図4】本発明が適用されるMRI装置の構成図。
【図5】本発明の動作を説明するグラフ。
【図6】本発明の他の一実施例の手順を示す流れ図。
【図7】従来の位相補正方法を示す流れ図。
【符号の説明】
201,202 RFパルス
206 エコー信号(本計測データ)
207 拡散傾斜磁場パルス
208 ナビゲーションエコー
Claims (3)
- 被検体の組織を構成する原子核スピンを励起するRFパルスの照射と、前記原子核スピンのうち移動するスピンの位相をディフェイズする拡散傾斜磁場の印加と、前記被検体から発生する複数のエコー信号を異なる位相エンコードを付与して計測するステップとを含むパルスシーケンスを繰り返す計測制御手段と、前記移動スピンからの信号を高度に抑制した拡散強調画像を形成する信号処理手段とを有する磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記RFパルス照射毎に前記被検体の動きをモニターするためのナビゲーションエコーを発生させ、
前記信号処理手段は、前記ナビゲーションエコーの所定のパラメータから基準値を求め、各ナビゲーションエコーのパラメータと前記基準値との比較結果が許容値以内か否かを判定し、前記許容値を超えるナビゲーションエコーと同じ繰り返し単位内で取得されたエコー信号を別のエコー信号で置換することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 前記別のエコー信号として、置換すべきエコー信号の複素共役エコーから複素共役変換して求めたデータを用いることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記信号処理手段は、前記複素共役エコーと共に計測された前記ナビゲーションエコーのパラメータと前記基準値との比較結果が許容値以内か否かを判定し、
前記計測制御手段は、前記比較結果が許容値を超える場合に、前記置換すべきエコー信号又はその複素共役エコーの内の少なくとも一方を再計測して置換することを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
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