JP3891240B2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)用の燃料噴射ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、特開平6−249134号公報に開示されているように、駆動軸に対し駆動力伝達部材を偏心して組み付け、駆動軸の回転に伴い回転せずに公転運動する駆動力伝達部材がプランジャを往復駆動し、加圧室に吸入した燃料をプランジャが加圧する燃料噴射ポンプが知られている。
【0003】
このような燃料噴射ポンプの一例を図3および図4に示す。燃料噴射ポンプ100は、駆動軸120の周囲に120°間隔で配置されたプランジャ110により燃料を加圧する所謂ラジアルポンプである。プランジャ110はシリンダ101に往復摺動自在に支持されている。タペット112はカム121の外周に摺動自在に組み付けられたカムリング122と摺動する。プランジャ110のタペット112側端部の外周壁に環状溝110aが形成されており、環状溝110aにスナップリング114が嵌合している。ロアシート113はタペット112に嵌合しており、スプリング115によりカムリング122側に付勢されている。ロアシート113がスナップリング114に係止されることにより、プランジャ110はタペット112に押圧される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
駆動軸120およびカム121の回転に伴いカムリング122が公転運動すると、カムリング122とタペット112とが平面同士で摺動し、プランジャ110が軸方向に往復移動する。タペット112がカムリング122と摺動することによりタペット112およびロアシート113はカムリング122とタペット112との摺動方向、つまりプランジャ110の軸と直交する方向に力を受ける。プランジャ110の軸と直交する方向に力を受けるタペット112をプランジャ110が支持しタペット112から力を受ける位置は、環状溝110aよりも反シリンダ101側である。環状溝110aよりも反シリンダ101側で軸と直交する方向にプランジャ110に力が加わると、環状溝110aに応力が集中し、プランジャ110が損傷する恐れがある。
本発明の目的は、プランジャの損傷を防止する燃料噴射ポンプを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1または3記載の燃料噴射ポンプによると、付勢手段の付勢力によりカムリングに向け連結部材がプランジャを押圧している。この連結部材を係止する係止部として、プランジャに凹部や凸部が形成されている。摺動部材がカムリングと摺動すると、プランジャの軸と直交する方向に摺動部材および連結部材が力を受ける。
この直交する方向の力がプランジャに作用するように摺動部材または連結部材をプランジャが支持し、その支持する位置が係止部より反シリンダ側にあると、プランジャの軸と直交する方向にプランジャが受ける力により凹状または凸状に形成された係止部またはその周囲との境界の角部に応力が集中しプランジャが損傷することがある。
しかし、請求項1または3記載の燃料噴射ポンプでは、プランジャの軸と直交する方向でプランジャが連結部材を支持し連結部材から力を受ける位置を係止部よりシリンダ側にすることにより、係止部に応力が集中せずプランジャの損傷を防止できる。
【0006】
本発明の請求項2記載の燃料噴射ポンプによると、摺動部材と連結部材とは一体に形成されている。部品点数が減少するので燃料噴射ポンプの組付け工数が減少する。
【0007】
本発明の請求項4記載の燃料噴射ポンプによると、プランジャに形成された大径部が係止部を構成するので、プランジャと別部材を使用することなくカムリングに向けプランジャを押圧する連結部材を係止できる。したがって、部品点数が減少し、燃量噴射ポンプの組付け工数が減少する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例を図に基づいて説明する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例による燃料噴射ポンプを図1に示す。燃料噴射ポンプ10は、従来例で説明した図4と同様に、駆動軸30の外周に120°間隔でプランジャ20が配置されているラジアルポンプであり、図1に一つのプランジャ20周辺部の構成を示す。
【0009】
シリンダ11はプランジャ20を往復摺動自在に支持している。シリンダ11の一方の開口端は封止栓13で閉塞されている。プランジャ20の封止栓13側のシリンダ11内に燃料加圧室12が形成されている。燃料加圧室12は、図示しない燃料流入路および燃料流出路と連通しており、各燃料路に燃料流れ方向を規制する逆止弁が配設されている。燃料加圧室12に吸入される燃料量は、燃料流入側に設置されている図示しない調量弁によりエンジン運転状態にしたがい制御されている。
【0010】
プランジャ20は、円柱部21および大径部22を有している。係止部としての大径部22は円柱部21よりも大径に形成されており、燃料加圧室12と反対側のプランジャ20端部に形成されている。円柱部21を研摩する際に大径部22が研摩されることを防止する研摩逃がしとして、円柱部21と大径部22との境界に環状の切欠23が形成されている。
【0011】
摺動部材としてのタペット24は大径部22と当接しており、連結部材としてのロアシート25に圧入されている。ロアシート25は、プランジャ20の大径部22周囲の形状に合わせ、小径部26および大径部27を有している。小径部26の内径は円柱部21の外径とほぼ同一径であり、大径部27の内径はプランジャ20の大径部22の外径より大きい。付勢手段としてのスプリング28がロアシート25をカムリング32に向けて付勢することにより、プランジャ20およびタペット24はカムリング32に向けて付勢されている。
【0012】
断面円形状のカム31は駆動軸30に対し偏心して一体形成されている。環状に形成されたカムリング32の内周にブッシュ33が圧入されており、ブッシュ33の内周壁とカム31の外周壁とが摺動自在になるようにカムリング32はカム31に嵌合している。カムリング32の外周壁に120°間隔に摺動平面32aが形成されている。各摺動平面32aは、各タペット24に形成されている摺動平面24aと摺動する。
【0013】
駆動軸30およびカム31の回転にともないカムリング32が自転することなく公転運動すると、摺動平面32aと摺動平面24aとが摺動する。プランジャ20はロアシート25を介しスプリング28によりカムリング32に向けて付勢されているので、プランジャ20はカムリング32の公転運動にともない往復移動する。プランジャ20が下降すると燃料加圧室12内に燃料が吸入され、プランジャ20が上昇すると燃料加圧室12の燃料が加圧される。加圧された燃料は図示しないコモンレールに供給され、コモンレールから図示しないインジェクタに高圧燃料が供給される。
【0014】
カムリング32の摺動平面32aとタペット24の摺動平面24aとが摺動すると、摺動抵抗によりタペット24に摺動方向、つまりプランジャ20の軸と直交する方向に力が加わり、タペット24が圧入しているロアシート25にも摺動方向に力が加わる。タペット24とカムリング32との摺動方向に力を受けるロアシート25をプランジャ20の円柱部21が支持し、ロアシート25を支持することによりプランジャ20は軸と直交する方向に力を受ける。
【0015】
第1実施例では、ロアシート25から摺動方向にプランジャ20が力を受ける位置より係止部である大径部22周囲の切欠23が反シリンダ11側に位置しているので、切欠23に応力が集中せず、シリンダ11と小径部26との間に位置する円柱部21に均等に応力が分散する。したがって、プランジャ20の損傷を防止できる。また、プランジャ20以外に別部材を使用することなくカムリング32に向けプランジャ20を押圧するロアシート25を係止するので部品点数が増加しない。したがって、燃料噴射ポンプ10の組付け工数が減少する。
【0016】
第1実施例では、円柱部21を研摩する際に大径部22が研摩されることを防止する切欠23を円柱部21と大径部22との境界に形成した。しかし、切欠を形成しなくても、大径部22にプランジャ20の軸と直交する方向に力が加われば、円柱部21と大径部22との境界である角部に応力が集中し、プランジャが破損する恐れがある。この場合にも、ロアシート25から摺動方向にプランジャ20が力を受ける位置より大径部22が反シリンダ11側に位置しているので、円柱部21と大径部22との境界である角部に応力が集中せず、プランジャ20の損傷を防止できる。
【0017】
(第2実施例)
本発明の第2実施例による燃料噴射ポンプを図2に示す。第1実施例と実質的に同一構成部分に同一符号を付し、説明を省略する。
燃料噴射ポンプ40のプランジャ41は、ほぼ同一径の円柱状に形成されている。プランジャ41のカムリング32側端部の外周壁に係止部としての環状溝42が形成されており、この環状溝42にスナップリング43が嵌合している。
【0018】
タペット45は摺動部46および連結部47から一体に形成されており、カムリング32と摺動する摺動部材と、カムリング32側にプランジャ41を押圧する連結部材とを兼ねている。摺動部46はカムリング32の摺動平面32aと摺動する摺動平面46aを有している。連結部47は、プランジャ41の外径とほぼ同一の内径を有する小径部47aと、プランジャ41の外径より内径が大きい大径部47bを有している。小径部47aはスナップリング43に当接している。スプリング28がカムリング32に向けタペット45を付勢することにより、プランジャ41がカムリング32に向け付勢されている。
【0019】
カムリング32の摺動平面32aがタペット45の摺動平面46aと摺動すると、摺動抵抗によりタペット45に摺動方向、つまりプランジャ41の軸と直交する方向に力が加わるので、タペット45の小径部47aがプランジャ41に摺動方向に力を加える。
【0020】
第2実施例では、環状溝42がタペット45の小径部47aから摺動方向に力を受ける位置より反シリンダ11側に位置しているので、環状溝42に応力が集中せず、シリンダ11と小径部47aとの間に位置するプランジャ41に均等に応力が分散する。したがって、プランジャ41の損傷を防止できる。また、タペット45は摺動部材および連結部材を兼ね一体に形成されているので、部品点数が減少し、燃料噴射ポンプ40の組付け工数が減少する。
【0021】
以上説明した本発明の実施の形態を示す上記複数の実施例では、カムリングと摺動部材との摺動方向に連結部材から力を受けるプランジャの位置が、プランジャに形成した角部または環状溝のような応力の集中しやすい部位よりもシリンダ側である。したがって、連結部材からプランジャの軸と直交する方向に受ける力が均等にプランジャに加わるので、プランジャの損傷を防止できる。
【0022】
上記複数の実施例では、ラジアルポンプについて説明したが、駆動軸の外周の一方向にだけプランジャを配設した燃料噴射ポンプにも本発明の構成を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による燃料噴射ポンプの一つのプランジャ周辺を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例による燃料噴射ポンプの一つのプランジャ周辺を示す断面図である。
【図3】従来の燃料噴射ポンプの一つのプランジャ周辺を示す断面図である。
【図4】従来の燃料噴射ポンプを示す横断面図である。
【符号の説明】
10 燃料噴射ポンプ
11 シリンダ
12 燃料加圧室
20 プランジャ
22 大径部(係止部)
24 タペット(摺動部材)
25 ロアシート(連結部材)
28 スプリング(付勢手段)
30 駆動軸
31 カ ム
32 カムリング
40 燃料噴射ポンプ
41 プランジャ
42 環状溝(係止部)
45 タペット
46 摺動部(摺動部材)
47 連結部(連結部材)
Claims (4)
- 燃料加圧室に吸入した燃料を加圧するプランジャと、
前記プランジャを往復摺動自在に支持するシリンダと、
駆動軸に対し偏心しており、前記駆動軸とともに回転するカムと、
前記カムの外周に前記カムと摺動自在に組付けられているカムリングと、
前記カムリングと摺動するとともに前記カムリングと反対側で前記プランジャと当接し、前記駆動軸の駆動力を前記プランジャに伝達する摺動部材と、
前記カムリングに向けて前記プランジャを押圧し、前記摺動部材が前記カムリングと摺動することにより前記摺動部材とともに前記プランジャの軸と直交する方向に力を受け、この直交する方向の力が前記プランジャに作用するように前記プランジャに支持される連結部材と、
前記カムリングに向け前記連結部材を付勢する付勢手段とを備え、
前記プランジャは、前記カムリングに向け前記プランジャを押圧する前記連結部材を係止するとともに、前記カムリング側の部分において前記連結部材との間に径方向の隙間を形成する係止部を有し、
前記プランジャの軸と直交する方向に前記プランジャが前記連結部材から力を受けて支持する位置は、前記係止部の設置位置よりも前記シリンダ側であることを特徴とする燃料噴射ポンプ。 - 前記摺動部材と前記連結部材とは一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射ポンプ。
- 前記係止部は前記プランジャに形成されている溝であり、前記溝に嵌合しているスナップリングを備え、前記スナップリングは前記カムリングに向け前記連結部材から押圧されていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料噴射ポンプ。
- 前記係止部は前記プランジャに形成されている大径部であることを特徴とする請求項1または2記載の燃料噴射ポンプ。
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