JP3889219B2 - 回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、清涼飲料水の容器等に利用されているポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)の廃棄物から、その原料としてのテレフタル酸を工業的に回収する方法、及び、その際に使用する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PETを分解し、原料となるモノマーを回収する方法としては、従来から、さまざまな方法が提案されている。その代表的なものとしては、▲1▼気相もしくは液相下メタノールによりPETを解重合し、テレフタル酸ジメチルを生成させるメタノリシス法、▲2▼エチレングリコール(以下、EGと略す)によりPETを解重合し、反応中間体であるテレフタル酸ビスヒドロキシエチルを生成させてポリマー原料として使用するグリコリシス法、あるいは▲3▼生成したテレフタル酸ビスヒドロキシエチルをメタノールによりテレフタル酸ジメチルに変換するエステル交換法がある。
【0003】
しかしながら、▲1▼のメタノリシス法では、反応温度が177℃前後と低いため、反応を長時間行う必要がある。▲2▼のグリコリシス法では、▲1▼同様、反応を長時間行う必要があるという点に加え、完全なモノマーまで分解するのは困難である。また、生成したテレフタル酸ビスヒドロキシエチルの一部は、EGに溶解するので、その分離は煩瑣となり、収率がよくない。▲3▼のエステル交換法では、生成したEGとメタノールの分離、及びメタノールに溶解するテレフタル酸ジメチルとメタノールとの分離がともに困難である。
【0004】
そこで、この種の問題を解決すべく、▲4▼アルカリ水溶液によりPETを加水分解して、生成するテレフタル酸金属塩を酸により中和し、テレフタル酸を析出させる加水分解法や、▲5▼EG中で加アルカリ分解する特開平9−286744号公報に記載する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、▲4▼の加水分解法や、▲5▼の公報記載の方法も、いまだ処理時間を短くするに十分な方法とはいえない。また、従来の方法は、実験室段階のものにすぎないため、実用的かつ工業的なプロセスの確立が要請されている。
【0006】
そこで、本発明の課題は、テレフタル酸の回収率が高い上に、処理時間が短く、しかも、実用的かつ工業的なプロセスとなる回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法、及びその際に使用する装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
溶媒及びアルカリの存在下で、回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品をテレフタル酸塩とエチレングリコールとに熱分解する過程と、熱分解スラリーから溶媒を除去する過程を含み、前記テレフタル酸塩からテレフタル酸を回収するにあたり、
前記熱分解スラリーを大気圧または減圧下で溶媒を蒸発させて固形テレフタル酸塩を得ることを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法。
【0008】
(作用効果)
熱分解スラリーから溶媒を除去(テレフタル酸塩と溶媒とに分離)するに、ろ過機や遠心分離機といった機械を使用する場合、テレフタル酸塩の粒子が細いため、溶媒の除去量を一定にすることができず、処理時間もかかる。しかし、本発明においては、大気圧または減圧下で溶媒を蒸発させることによるので、溶媒の除去量を自由に調整でき、しかも瞬時に行うことができる。
【0009】
<請求項2記載の発明>
横型の反応分解室と、この内部に投入される溶媒、アルカリ及び回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品を撹拌する撹拌手段及び加熱手段と、前記反応分解室の上部に連通する減圧室と、この減圧室に連結された真空化手段とを備え、
前記反応分解室内の溶媒は前記減圧室を通して除去され、得られた固形テレフタル酸塩はテレフタル酸の回収工程に移行される構成とされたことを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の回収装置。
【0010】
(作用効果)
反応分解室の上部に連通する減圧室と、この減圧室に連結された真空化手段とを備えるので、反応分解室内を真空化して溶媒を蒸発させることができ、請求項1記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
しかも、この溶媒の除去を、反応分解を行う反応分解室を利用して行うことになるので、設備構成機器の削減、熱の有効利用を図ることができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
アルカリとして炭酸塩を使用され、反応分解室内は発生する炭酸ガスでシールされる請求項1記載の回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の回収装置。
【0012】
(作用効果)
アルカリとして炭酸塩を使用するので、熱分解開始と同時に炭酸ガスが発生する。したがって、不活性ガス(例えば、窒素ガス)の供給が不要になる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
溶媒及びアルカリの存在下で、回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品をテレフタル酸塩とエチレングリコールとに熱分解する反応分解装置と、
前記溶媒の沸点以上の温度に維持された加熱面を有する蒸発容器と、前記熱分解スラリーを前記加熱面に流下させる流下手段とを備え、
前記蒸発容器内で蒸発した溶媒は回収して前記反応分解装置に供給する構成としたことを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の回収装置。
【0014】
(作用効果)
溶媒とテレフタル酸塩とを含有する熱分解スラリーを、流下手段によって、溶媒の沸点以上の温度に維持された加熱面と接触させることができるので、溶媒を瞬時に蒸発させることができる。
また、加熱面の温度を調整することで、溶媒の除去量を自由に調整することができる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
溶媒及びアルカリの存在下で、回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品をテレフタル酸塩とエチレングリコールとに熱分解する過程と、熱分解スラリーから溶媒を除去する過程を含み、溶媒が除去された固形テレフタル酸塩を水で溶解させテレフタル酸を回収するにあたり、
前記溶媒の除去に当たり、熱分解スラリーを大気圧または減圧下で溶媒を蒸発させることにより行い、かつ前記固形テレフタル酸塩が含有する量を20〜30質量%となるように行うことを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法。
【0016】
(作用効果)
溶媒及びエチレングリコールの除去を、固形テレフタル酸塩の含有する溶媒の量が20〜30質量%となるように行うので、固形テレフタル酸塩を溶解する際の、水の使用量を減らすことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、熱分解スラリーを大気圧または減圧下で溶媒を蒸発させて固形テレフタル酸塩を得ることを特徴とするものであり(請求項1記載の発明)、その装置としては、特に、横型の反応分解室と、この内部に投入される溶媒、アルカリ及び回収PET粉砕品を撹拌する撹拌手段及び加熱手段と、反応分解室の上部に連通する減圧室と、この減圧室に連結された真空化手段とを備え、反応分解室内の溶媒は減圧室を通して除去され、得られた固形テレフタル酸塩はテレフタル酸の回収工程に移行される構成とされたもの(請求項2記載の発明)、または溶媒及びアルカリの存在下で、回収PET粉砕品をテレフタル酸塩とEGとに熱分解する反応分解装置と、溶媒の沸点以上の温度に維持された加熱面を有する蒸発容器と、熱分解スラリーを加熱面に流下させる流下手段とを備え、蒸発容器内で蒸発した溶媒は回収して反応分解装置に供給する構成としたもの(請求項4記載の発明)、を使用することを特徴とするものである。そこで、本実施の形態の説明においては、まず、固液分離を固液分離機や遠心分離機等の機械を用いて行う場合(基本形態)を説明し、その後に、請求項2記載の発明に係る装置で行う場合(本発明に係る第1の実施の形態)と、請求項4記載の発明に係る装置で行う場合(本発明に係る第2の実施の形態)とを説明する。また、本発明においては、溶媒として、水、EG、プロピレングリコール(PG)、シリコンオイル等を使用することができるが、基本形態および本発明に係る実施の形態においては、EGを使用する場合について説明する。
【0018】
『第1の基本形態』
図1〜図4及び図6は第1の基本形態を示したものである。本形態においては、回収PET粉砕品を原料とする。この粉砕品とは、PETボトルなどのPET廃棄物を切断、破断、あるいは粉砕したもの等を含む意義である。好適には2〜8mm角程度の粉砕品である。
【0019】
(反応分解工程)
まず、本形態においては、回収PET粉砕品の反応分解を行うが、この反応分解は、図2に詳細例を示すスクリュウプレス型横型反応分解装置を使用して行うことができる。この横型反応分解装置は、本体部1Aとこの本体部1Aの先端に位置する先細部1Bとを有する筒体1内に、先細部1Bに対応した部分が先細のスクリュウコンベア2を備えたもので、この横型反応分解装置内に、回収PET粉砕品と、PET等モル相当または過剰のアルカリと、EGとを投入し、主に本体部1A内で、常圧で回収PET粉砕品をテレフタル酸塩とEGとに反応分解し、反応分解スラリーを先細部1Bから絞り出すものである。
【0020】
本体部1Aの基部には、回収PET粉砕品及びアルカリを投入するための投入口3を有し、スクリュウコンベア2の回転軸には、EGを投入するための投入口4を有する。筒体1は、周囲にジャケットが備わっており、このジャケットには熱媒体の入口5及び出口6が備わっている。
【0021】
回収PET粉砕品およびアルカリを投入口3から、EGを投入口4から投入すると、スクリュウコンベア2が、主に本体部1A内において、回収PET粉砕品とアルカリとEGとを攪拌しつつ先端側に送り、回収PET粉砕品をテレフタル酸塩とEGとに連続的に反応分解する。
【0022】
また、生成した反応分解スラリーは先細部1Bから絞り出す。したがって、バックミキシングせず均一に前方に送るのみの処理となる。
【0023】
さらに、先細部1B及びスクリュウコンベア2の先端部を先細にして絞り手段としたことにより、EGの添加量を少なくすることができ、しかも、次のろ過工程(固液分離工程)における時間当たりのろ過効率が高くなる。ちなみに、生成した反応分解スラリー中のEGの量は、絞り手段を設けない場合、約70質量%になるのに対し、絞り手段を設けた場合は約30質量%になる。
【0024】
添加するアルカリとしては、炭酸ナトリウムを主体とし、20%以下の範囲で水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含有させたものを使用することができる。水酸化ナトリウムを含有させると、より効率的に反応分解する。炭酸ナトリウム等の炭酸塩を使用すると、反応分解開始と同時に炭酸ガスが発生するため、不活性ガス(たとえば窒素ガス)の供給が不要になる。炭酸ナトリウムは、そのコストが水酸化ナトリウムの約1/2なので、経済的である。
【0025】
発生する炭酸ガスは、ガス通路7より系外へ排出する。ガス通路7には切替バルブを設置してあり、炭酸ガスの排出と不活性ガス(たとえば窒素ガス)の供給との切替ができるようになっている。
【0026】
反応分解開始前に、予め、回収PET粉砕品に直接噴霧などの手法によりアルカリを接触させると、EGを並存させる場合と比較して、反応開始時間を1/5〜1/8に短縮できる。反応分解温度としては、例えば120〜190℃とすることができる。
【0027】
(固液分離・溶解・不純物除去工程)
反応分解工程で生成したテレフタル酸塩とEGとを含有する反応分解スラリーは、ポンプや輸送管などにより、固液分離・溶解・不純物除去機、例えば、図3に詳細を示す水平ベルト型真空ろ過溶解機102に送る(図1の水平ベルト型真空ろ過溶解機102は模式的に示してある)。この水平ベルト型真空ろ過溶解機102は、そのろ過セクションで、前記反応分解スラリーからEGを分離する。分離の詳細な方法は、次述するが、これによらず、遠心分離機などの分離機により行うこともできる。
【0028】
反応分解スラリー中のEGは、真空ポンプ61により、ろ液槽71に吸引し、このろ液槽71に集めたEGは、ポンプ42により、輸送管12を通して、ろ液槽81に集める。このろ液槽81に集めた粗EGは、適宜の時点で、ポンプ43により、輸送管13を通して精製塔110に通液し、不純物を除去する。この不純物の除去は、蒸留操作、または膜分離により行うこともできる。
【0029】
不純物を除去した前記EGは、輸送管14を通して、ろ液槽82に集める。このろ液槽82に集めたEGは、適宜の時点で、ポンプ52により輸送管30を通してスクリュウプレス型横型反応分解装置に送り、反応分解の溶媒原料として再利用する。
【0030】
不純物を除去していない粗EGもテレフタル酸の純度に影響しない限り、反応分解の溶媒原料として再利用することができる。また、精製したEGの一部は、系より抜き出して、PETの合成原料などに利用することができる。
【0031】
EGを分離して回収したテレフタル酸塩は、水平ベルト型真空ろ過溶解機102の溶解セクションに連続的に移動し、上部から散布する温水によって溶解する。温水としては、例えば、テレフタル酸塩の3〜5倍量、約80℃のものを使用することができ、テレフタル酸塩の水溶液を生成する。この温水に代えて、後述の吸着塔における洗浄水、固液分離・洗浄工程における排水、及び濃縮・晶析・芒硝分離工程における蒸発水分を冷却して得た凝縮水等を用いることもできる。
【0032】
テレフタル酸塩の水溶液は、真空ポンプ61により、水溶液分離槽72に吸引する。吸引した水溶液はポンプ51により、輸送管18を通して、次の溶解性不純物除去器に送る。
【0033】
水平ベルト型真空ろ過溶解機102に備わるろ布96の下流端には、スクレーパ98を対向して配置してあり、不溶解性不純物を除去するようになっている。
【0034】
(不純物除去工程)
テレフタル酸塩の水溶液は、ポンプ51により、輸送管18を通して、不純物除去器、例えば、堅型円筒吸着用活性炭充填カラム104に、好適には5〜10mm/m2・minで通液する。これにより、テレフタル酸塩水溶液に混入する溶解性の不純物を除去することができる。通液後、活性炭は、温水で洗浄する。洗浄排水は、輸送管16を通して、水平ベルト型真空ろ過溶解機102へ再生洗浄水として戻し、再利用することができる。また、微粉炭除去のため、粒状炭または造粒炭を純水で逆洗いしておくとよい。この工程における不純物の除去は、イオン交換樹脂の併用、イオン交換樹脂による吸着、あるいは、膜分離などによって行うこともできる。
【0035】
(中和・析出工程)
不純物を除去したテレフタル酸塩水溶液は、中和槽114で、酸によりpH2〜4程度に中和する。添加する酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の鉱酸を使用することができるが、硫酸を使用するのが好ましい。
【0036】
中和槽114では、酸を均一に撹拌及び混合させて中和反応を確実に行う必要がある。中和反応により生成したテレフタル酸のスラリーは、堅型円筒撹拌槽からなる析出槽105に集める。この析出槽105は、熱媒体92が通るジャケット91を備えている。
【0037】
中和槽114においては、酸を添加すると、瞬時に中和反応が起こり、テレフタル酸の微少な結晶が生成するが、この微小な結晶の集合体は、未反応の酸を内部に包合してしまう。そして、この内部に包合した酸は、析出槽105において内部より浸出し、時間が遅れ再度中和反応を起こすことになる。このことは、pH調整、テレフタル酸の生成にとって障害となる。
【0038】
そこで、かかる事態を防止するため、図4に示すように、中和槽114において、撹拌機114Aによる撹拌と同時に、付設した超音波発生装置114Bによって、超音波による微振動をテレフタル酸のスラリーに起こさせるとよい。これにより、テレフタル酸微小結晶による酸の包合を防止することができ、pH調整がよくなるので、テレフタル酸の生成がよくなる。
【0039】
中和槽114は析出槽105と比べて容量が小さくてよく、1/50〜1/500程度とすることができる。
【0040】
中和槽114においては、撹拌機114Aにより撹拌している状態で、酸(硫酸)を撹拌軸内に供給し、この撹拌軸内と連通する撹拌羽根114Cの軸114D内を通してテレフタル酸塩水溶液(テレフタル酸のスラリー)中に噴出させる。これにより、撹拌及び混合効果が高いものとなる。結果、単に酸(硫酸)を中和槽114の上部より供給する場合より、テレフタル酸微小結晶による酸の包合防止効果が大きくなり、テレフタル酸の結晶粒径が均一化する。
【0041】
析出槽105に集めたテレフタル酸スラリーは析出槽で撹拌する。これにより、テレフタル酸の結晶粒径が均一化するとともに、結晶サイズも成長する。
【0042】
この析出槽105では、50〜95℃、例えば約85℃の加熱状態を維持したまま撹拌を行い、均一に成長した結晶を底部よりポンプ45により抜き出す。これにより、テレフタル酸とアルカリ塩とを含有するスラリー中の、テレフタル酸の結晶粒子の粒度分布が均一化し(図5参照。(A)は常温、(B)は加熱の場合をそれぞれ示す)、固液分離工程でのろ過速度が表1のように高まる。
【0043】
【表1】
【0044】
(固液分離・洗浄工程)
中和・析出工程で生成したテレフタル酸の析出スラリーは、ポンプ45により、輸送管17を通して、固液分離機、例えば水平ベルト型真空ろ過機106に送る。
【0045】
この水平ベルト型真空ろ過機106の詳細を、図6をもとに説明する。まず、析出スラリーは、ろ布96上に送り、水平方向(本図面では、左から右方向)に移動する。この移動の際、スラリーが含有する酸、アルカリ塩は、真空ポンプ61により、ろ布96と同様に移動する真空箱97に吸引し、輸送管26Aを通して、ろ液槽71Aに集める。
【0046】
ろ布96は、温水で洗浄するが、この洗浄水は、いったんろ布洗浄装置27Aに集め、その後、ポンプ50により、輸送管27を通して、洗浄装置27B1に集める。この洗浄装置27B1に集めた洗浄水は、スラリーから酸、アルカリ塩を吸引除去して得たテレフタル酸の洗浄に使用する。さらに、このテレフタル酸を洗浄した洗浄水は、真空ポンプ61により、真空箱97に吸引し、輸送管28を通して、ろ液槽72Aに集める。このろ液槽72Aに集めた洗浄水は、ポンプ51により、輸送管29を通して、洗浄装置27B2に集め、再び、テレフタル酸の洗浄水として使用する。
【0047】
再度、テレフタル酸を洗浄した洗浄水は真空ポンプ61により真空箱97に吸引し、輸送管26Bを通して、ろ液槽71Bに集める。ろ液槽71Bに集めた洗浄水は、上流のテレフタル酸塩の溶解に利用することもできる。
【0048】
このような向流洗浄により、表2に示すようにテレフタル酸の純度が高まる。
【0049】
【表2】
【0050】
(濃縮・晶析・芒硝分離(アルカリ塩回収)工程)
ろ液槽71A,71Bに集めたアルカリ塩は、ポンプ42A,42Bにより、輸送管20を通して、いったんろ液槽83に集める。その後、ポンプ48により、輸送管21および水分蒸発のための加熱器32を通して、結晶缶33に供給する。
【0051】
結晶缶33は真空ポンプ62により減圧状態にしてあるので、アルカリ塩スラリー中の水分は蒸発し、蒸発した水分は減圧管31中に設けた冷却器34により冷却凝縮し、固液分離・溶解・不純物除去工程で使用する水として、あるいは固液分離・洗浄工程で使用するろ布及びケーキ洗浄水として再利用する。
【0052】
結晶缶33での結晶スラリーは、ポンプ46により、輸送管19を通して、遠心分離機108に送る。この遠心分離機108は、アルカリ塩と、EG及びアルカリに固液分離する。分離したアルカリ塩は、ベルトコンベア113により、間接加熱乾燥機、たとえばジャケット94、シャフト95に熱媒体を循環することができる構造を有したパドル式回転真空乾燥機109に送る。この乾燥機109において、真空下で乾燥することにより、純度の高いアルカリ塩を回収する。
【0053】
中和工程で硫酸を使用すると、ここでは、アルカリ塩として、芒硝を回収することができ、各種用途の製品とすることができる。
【0054】
また、この際、分離するEG及びアルカリは、輸送管23を通して、いったんろ液槽84に集め、さらに、ポンプ49により輸送管24を通して、前述のろ液槽81に混入する。その後の処理は、前述同様である。
【0055】
(乾燥・粉砕工程)
他方、水平ベルト型真空ろ過機106で洗浄したテレフタル酸は、ベルトコンベア112により、間接加熱乾燥機、例えばジャケット94、シャフト95に熱媒体を循環することができる構造を有したパドル式回転真空乾燥機107に送る。この乾燥機107は、真空ポンプ63により真空としてあるため、テレフタル酸の乾燥を短時間で、しかも変質させることなく行うことができる。これにより、純度の高いテレフタル酸を回収することができる。乾燥の際に蒸発する水分は、輸送管25を通して冷却した後、輸送管22を通して、ろ液槽83に集める。
【0056】
続く回収テレフタル酸の粉砕は公知の手段により行うことができる。
【0057】
『第2の基本形態』
図7は第2の基本形態を示したものである。この形態は、竪型円筒撹拌槽101を用いて反応分解を行うものである。竪型円筒撹拌槽101は、熱媒体92が流通する加熱ジャケット91を外壁に有し、温度調節用の冷却水コイル93を内部に有し、例えば160℃〜180℃の温度条件及び常圧で、30〜90分程度撹拌して反応分解を図る。
【0058】
テレフタル酸塩とEGとに分解した反応分解スラリーは、ポンプ41により輸送管11を通して直接、図3に示す水平ベルト型真空ろ過溶解機102に送ることができる他、絞り装置100で絞り操作を行った後、水平ベルト型真空ろ過溶解機102に送ることができる。
【0059】
絞り装置100は、スクリュウプレス型構造を有するもので、本体部内に先細のスクリュウコンベア100Aを配置したものである。絞り装置100本体部の適宜の位置から、ポンプ47により、EGを竪型円筒撹拌槽101に返送することができる。絞り装置100を設けることで、EGの補給量を少なくすることができるとともに、次のろ過工程(固液分離工程)における時間当たりのろ過効率を高いものとすることができる。
【0060】
『第3の基本形態』
図8及び図9は第3の基本形態を示したものである。この形態は、第2の基本形態と同様に、竪型円筒撹拌槽101を用いて反応分解を行うものである。
【0061】
また、竪型円筒撹拌槽101にて反応分解を行った反応分解スラリーは、ポンプ41により、輸送管11を通して、図9に示す、水平ベルト型真空ろ過機106A(第1の基本形態における後段の水平ベルト型真空ろ過機106と同様の構造を有する)に送る。この水平ベルト型真空ろ過機106においては、EGを除去するとともに、洗浄水によって洗浄を行う。
【0062】
EGを除去して回収したテレフタル酸塩は、ケーキ輸送ベルトコンベア111により、水平ベルト型真空ろ過機106Aとは別に設置した竪型円筒撹拌槽103に投入する。この竪型円筒撹拌槽103では、例えばテレフタル酸塩の3倍量、約80℃の温水を投入してテレフタル酸塩を溶解する。この温水としては、前述の系内での再生水、ならびに堅型円筒吸着用活性炭充填カラム104における洗浄排水を輸送管16により戻した再生洗浄水を利用することができる。
【0063】
テレフタル酸塩の水溶液は、ポンプ44により、輸送管15を通して、溶解性不純物除去器、例えば堅型円筒吸着用活性炭充填カラム104に供給する。この際、テレフタル酸塩の水溶液は、竪型円筒撹拌槽103に付設したチェックフィルター99などにより、不溶解性不純物を除去しておくことが好ましい。
【0064】
なお、この第3の基本形態においても、第2の基本形態と同様に、テレフタル酸塩とEGとに分解した反応分解スラリーは、予め絞り装置100で絞り操作を行った後、水平ベルト型真空ろ過機106Aに供給することができる。
【0065】
『その他の基本形態』
テレフタル酸塩とEGとの反応分解スラリーからEGを分離するのに際して、水平ベルト型真空ろ過溶解機102によることなく、遠心分離機などの分離機を用いることができることについては、先に述べたとおりである。また、上記各実施の形態の要素を適宜組み合わせてシステムを構築することが可能である。
【0066】
『第1の実施の形態』
まず、図10及び図11に、第1の実施の形態を示した。この形態においては、回収PET粉砕品からテレフタル酸塩水溶液を生成するまでの工程を、分解分離溶解装置120のみで行う。
【0067】
分解分離溶解装置120は、減圧室121と、この減圧室121の下面部121Aと連通しており水平方向を軸とする横型の反応分解室122とを有する。減圧室121には、回収PET粉砕品及びアルカリを減圧室121内に供給するための供給口124と、溶媒(本実施の形態ではEG)及び固形テレフタル酸塩を溶解するための水を、減圧室121内に供給するための供給口123と、分解分離溶解装置120内を真空にするための、真空化ポンプ等の真空化手段(図示せず)とつながる吸引口125とが備わっている。また、反応分解室122の周縁部122A外側面には、加熱手段、本実施の形態では熱媒体の通るジャケット126Bが備わり、反応分解室122内には、反応分解室122の軸方向を軸とし、反応分解室122の周縁部122A内側面にまで延出する攪拌羽根127が備わっている。さらに、減圧室121の周縁部外側面にも加熱手段、本実施の形態では熱媒体の通るジャケット126Aを備えた。
【0068】
分解分離溶解装置120においては、まず、供給口123を通して、減圧室121内にEG(溶媒)を供給する。供給したEGは、減圧室121の下面部121Aを通って、反応分解室122に溜まるので、この溜まったEGを、ジャケット126Bにより120〜190℃、本実施の形態では180℃に加熱する。EGを加熱したら、供給口124を通して、回収PET粉砕品及びアルカリを供給し、攪拌羽根127によって攪拌する。この攪拌により、回収PET粉砕品がテレフタル酸塩とEGとに反応分解する(反応分解工程)。
【0069】
先にも述べたが、この際に添加するアルカリとして、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を使用すると、反応分解開始と同時に炭酸ガスが発生するため、不活性ガス(たとえば窒素ガス)の供給が不要になる。
【0070】
反応分解が終了したら、加熱状態を保ち、かつ攪拌手段、本実施の形態では攪拌羽根127による攪拌を続けたまま、真空化手段(図示せず)によって吸引口125から吸引を行い、分解分離溶解装置120内(減圧室121及び反応分解室122内)を真空状態にする。これにより、EGは蒸発し、吸引口125を通って、系外に排出するので、固形テレフタル酸塩が反応分解室122内に残ることになる。(固液分離工程)。この際、EGの蒸発は、残留する固形テレフタル酸塩の含有するEGの量が20〜30質量%となるように行うのが好ましい。
【0071】
固液分離工程においては、固形テレフタル酸塩が反応室122の周縁部122A内側面に付着する虞がある。しかし、本実施の形態においては、攪拌羽根127が反応分解室122の周縁部122A内側面にまで延出するようになっており、特に、攪拌羽根127の先端部には掻き取り部127Aを設けてあるのでかかる虞がない。
【0072】
EGの蒸発除去が終了したら、供給口123を通して、分解分離溶解装置120内に、固形テレフタル酸塩の3〜5質量倍の水を供給し、攪拌羽根127で攪拌して固形テレフタル酸塩を溶解する(溶解工程)。この時、反応分解室122内を90℃程度に加熱すると、溶解が容易になる。
【0073】
溶解により生成したテレフタル酸塩水溶液は、弁128を通して、分解分離溶解装置120から取り出し、次の工程に送る。以後の処理は、基本形態で説明したのと同様である。
【0074】
『第2の実施の形態』
次に、第2の実施の形態であるが、これは、図12に模式的に示した。この形態においては、基本形態におけるテレフタル酸塩とEGとの固液分離を固液分離機や遠心分離機等の機械を使用せず、溶媒除去装置130で行うものである。
【0075】
溶媒除去装置130は、蒸発容器131に、反応分解工程(装置)からの熱分解スラリーを供給するための供給口132と、除去した溶媒(本実施の形態においては、EG)及び回収PET粉砕品のモノマーであるEGを系外に排出するための溶媒排出口133とを備えている。また、本体131内には、供給口132から流下手段(図示せず)により流下した熱分解スラリーが接触する位置に、軸部の熱媒体134Aにより加熱面134Bが溶媒の沸点以上、特に、溶媒としてEGを使用する本実施の形態においては200℃以上になる筒状の回転ロール134を備えている。
【0076】
溶媒除去装置130においては、まず、流下手段により、供給口132を通して、蒸発容器131内に熱分解スラリーを流下する。流下した熱分解スラリーは、蒸発容器131内の回転ロール134と接触する。この回転ロール134は、軸部を中心に回転しており、加熱面134Bが溶媒の沸点以上の温度となっているので、回転ロール134と接触した溶媒は瞬時に蒸発することになる。加熱面は、ロール状でなく平板状とすることもできるが、ロール状とし回転させる方が加熱面の温度を一定に保つことができるので好ましい。蒸発したEGは、回収して反応分解工程(装置)に返送することができる。また、回転ロール134の回転速度、及び加熱面134Bの温度を調整すれば、EGの蒸発量を調整することができる。
【0077】
熱分解スラリーは、EGが蒸発すると、固形テレフタル酸塩を主成分とする固体となり、本体131の下方へ落下することになる。蒸発容器131の下方へ落下した固形分は、排出口135を通して、系外に排出し、溶解工程に送る。以後の処理は、基本形態で説明したのと同様である。
【0078】
なお、このように固形テレフタル酸塩として溶解工程に送ることなく、本体131内に水を供給し、本体131内で溶解してテレフタル酸塩水溶液とすることもできる。
【0079】
【実施例】
150mmφ×200mmHの加熱ジャケットを外壁に有する竪型円筒撹拌槽にEG1800gを満たし、180℃に昇温した後、6〜8mm角の回収した粉砕PET600gと炭酸ナトリウム360gとを投入し、30分間攪拌した。
次いで、真空ポンプにて竪型円筒撹拌槽内を100mmHgとし、30分間攪拌しながらEGを蒸発させ、固形物を得た。この固形物のEG含有量は20質量%であった。
さらに、竪型円筒撹拌槽内に固形物の5質量倍の水を供給し、テレフタル酸塩水溶液を得た。このテレフタル酸塩水溶液は、含有する未反応PETやPP、PEといった不溶解不純物を除去するため、傾斜スクリーンを通した。この時の、未反応PETは18gで、反応率は97%であった。
【0080】
【発明の効果】
以上で説明したとおり、本発明に係る回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法、及びその際に使用する装置によれば、テレフタル酸の回収率が高い上に、処理時間が短く、しかも、実用的かつ工業的なプロセスとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の基本形態全体のフローシートである。
【図2】 横型反応分解装置の概念図である。
【図3】水平ベルト型真空ろ過溶解機の概念図である。
【図4】中和槽の構成例の概要図である。
【図5】中和工程での加熱の有無による、テレフタル酸の粒度分布グラフである。
【図6】水平ベルト型真空ろ過機の概要図である。
【図7】第2の基本形態全体のフローシートである。
【図8】第3の基本形態全体のフローシートである。
【図9】第3の基本形態における前段の固液分離工程に用いる水平ベルト型真空ろ過機の概要図である。
【図10】 第1の実施の形態における分解分離溶解装置の模式的縦断面図である。
【図11】 第1の実施の形態における分解分離溶解装置の模式的横断面図である。
【図12】第2の実施の形態における溶媒除去装置の模式的説明図である。
【符号の説明】
1…筒体、1A…本体部、1B…先細部、2,100A…スクリュウコンベア、3,4…投入口、5…熱媒体の入口、6…熱媒体の出口、7…ガス通路、11〜25,26A,26B,27〜30…輸送管、27A…ろ布洗浄装置、27B1,27B2…洗浄装置、31…減圧管、32…加熱器、33…結晶缶、34…冷却器、41,42,42A,42B,43〜52…ポンプ、61〜63…真空ポンプ、71,71A,71B,72A,81〜84…ろ液槽、72…水溶液分離槽、91,94…ジャケット、92…熱媒体、93…冷却水コイル、95…シャフト、96…ろ布、97…真空箱、98…スクレーパ、99…チェックフィルター、100…絞り装置、101,103…竪型円筒撹拌槽、102…水平ベルト型真空ろ過溶解機、104…堅型円筒吸着用活性炭充填カラム、105…析出槽、106,106A…水平ベルト型真空ろ過機、107,109…パドル式回転真空乾燥機、108…遠心分離機、110…精製塔、111〜113…ベルトコンベア、114…中和槽、114A…撹拌機、114B…超音波発生装置、114C…撹拌羽根、114D…撹拌羽根の軸、120…分解分離溶解装置、121…減圧室、121A…下面部、122…反応分解室、123,124…供給口、125…吸引口、126A,126B…ジャケット、127…攪拌羽根、127A…掻き取り部、128…弁、130…溶媒除去装置、131…蒸発容器、132…供給口、133…溶媒排出口、134…回転ロール、134A…熱媒体、134B…加熱面、135…排出口。
Claims (5)
- 溶媒及びアルカリの存在下で、回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品をテレフタル酸塩とエチレングリコールとに熱分解する過程と、熱分解スラリーから溶媒を除去する過程を含み、前記テレフタル酸塩からテレフタル酸を回収するにあたり、
前記熱分解スラリーを大気圧または減圧下で溶媒を蒸発させて固形テレフタル酸塩を得ることを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法。 - 横型の反応分解室と、この内部に投入される溶媒、アルカリ及び回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品を撹拌する撹拌手段及び加熱手段と、前記反応分解室の上部に連通する減圧室と、この減圧室に連結された真空化手段とを備え、
前記反応分解室内の溶媒は前記減圧室を通して除去され、得られた固形テレフタル酸塩はテレフタル酸の回収工程に移行される構成とされたことを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の回収装置。 - アルカリとして炭酸塩を使用され、反応分解室内は発生する炭酸ガスでシールされる請求項1記載の回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の回収装置。
- 溶媒及びアルカリの存在下で、回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品をテレフタル酸塩とエチレングリコールとに熱分解する反応分解装置と、
前記溶媒の沸点以上の温度に維持された加熱面を有する蒸発容器と、前記熱分解スラリーを前記加熱面に流下させる流下手段とを備え、
前記蒸発容器内で蒸発した溶媒は回収して前記反応分解装置に供給する構成としたことを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の回収装置。 - 溶媒及びアルカリの存在下で、回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品をテレフタル酸塩とエチレングリコールとに熱分解する過程と、熱分解スラリーから溶媒を除去する過程を含み、溶媒が除去された固形テレフタル酸塩を水で溶解させテレフタル酸を回収するにあたり、
前記溶媒の除去に当たり、熱分解スラリーを大気圧または減圧下で溶媒を蒸発させることにより行い、かつ前記固形テレフタル酸塩が含有する量を20〜30質量%となるように行うことを特徴とする回収ポリエチレンテレフタレート粉砕品からのテレフタル酸の工業的回収方法。
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