JP3887533B2 - 電力系統の保護制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナログ入力回路を通して取り込んだ電力系統の電気量を所定のサンプリング周波数でA/D変換した後、そのディジタル信号を演算処理装置に取り込んで系統保護に必要な演算処理をおこなうディジタル形保護継電装置と、上位系からの制御信号をもとに電力機器の状態を制御するためのディジタル形制御装置を備えた電力系統の保護制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
配変用変電所の電力系統もしくは小規模な電力系統を内部事故から保護するディジタル形保護継電装置と、電力系統につながる機器の監視もしくは制御をするディジタル形制御装置とは、従来、別々の装置として設置していた。しかし、近年では、ハードウェアの集積技術の進歩、電子部品の小型化、低消費電力化により装置の小型化が図られ、これにより、両装置を一体もしくは一つの筐体で構成したディジタル形保護制御装置が製作されている。
【0003】
このディジタル形保護制御装置は、保護機能において、電力系統の内外部判定を行う主検出部と、事故の有無を判別する事故検出部とに分かれており、それぞれ異なったハードウエアで構成した処理部にて構成していた。また、制御機能においても、保護機能とは異なったハードウエアで構成した処理部で構成していた。したがって、ディジタル形保護制御装置は3台の処理部を実装して、機能を構成していることが一般的であった。
これは、1箇所のハードウエアの故障で保護機能が誤判定して誤って遮断器を引き外すような誤動作を防止することと、保護機能が停止している場合でも制御機能を継続動作させること、もしくは、制御機能が停止している場合でも保護機能を継続動作させることで、電力系統の稼動率を低下させないための施策であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来技術では、保護機能と制御機能とでハードウェアを分離し、さらに保護機能としてハードウェアを二重化していたことによって演算部を構成するプリント基板の枚数が最低でも3枚必要となり、ハードウェア規模が大きくなるため、配電盤の標準寸法の筐体に入らない場合があった。また、用品コストが高く装置コストが高価になってしまう問題があった。
さらに、必要なプリント基板を限られた大きさの筐体に実装すると、回路を構成する部品から発熱したエネルギーを放出するスペースが確保できない状態となることがあり、自己加熱によって電子回路の周囲温度が規定値を超えて、寿命を短縮させることとなる可能性も考えられ、これは装置の信頼性を下げることにもなっていた。
【0005】
すなわち、従来技術では、電力系統の内外部事故を判定する主検出部と、電力系統の事故有無を判定する事故検出部と、電力機器の状態を制御する機器制御部とでハードウェアを分離していたため、ハードウェア規模が大きくなり、それにともなって所要コストが大きくなっていた。
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、より簡素なハードウェア構成で、これまでと同様に保護機能と制御機能の独立させ、かつ保護機能を二重化した保護制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の保護制御装置は、電力系統から電力量を取り込み、アナログ量をディジタル量に変換する第1のA/D変換部と、前記第1のA/D変換部に接続された保護演算処理部に設けられ、前記第1のA/D変換部から出力される前記ディジタル量から電力系統の事故を判定する主検出部と、前記第1のA/D変換部から出力される前記ディジタル量から前記電力系統の事故有無を判定する事故検出部と、前記電力系統を構成する電力機器の状態を制御する機器制御部とを備え、且つ、前記保護演算処理部とはハードウェア的に分離された制御処理部と、前記制御処理部に設けられ、外部から制御信号を入力できる外部信号入力部と、前記主検出部からの事故検出信号と、前記外部信号入力部からの制御信号または前記事故検出部からの事故検出信号との論理積により、電力系統を保護するためのトリップ信号を出力するための論理回路を有することを特徴とする。
【0007】
この請求項1の発明によれば、事故検出部からの出力信号が得られない場合でも、外部から制御信号が入力されたときには、トリップ出力が出力される。また、外部からの制御信号は遠隔地からの制御信号も入力できるため、制御処理部に不良が発生した場合でも、遠隔地からの制御によってトリップ出力を行うことが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(1.第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による保護制御装置の構成を示すブロック図である。
図1において、1は電力系統、2はこの電力系統1に接続された本実施の形態の保護制御装置である。保護制御装置2は、電力系統1と接続して電気量を取り込む第1のA/D変換部10と、第1のA/D変換部10に接続された保護演算処理部5を備えている。この保護演算処理部5には主検出部11が実装されており、この主検出部11の出力側には、主検出部11の判定結果を接点出力する主検出信号出力部12が接続されている。
【0017】
一方、前記第1のA/D変換部10に対しては、前記保護演算処理部5と並列に制御処理部6が接続されている。この制御処理部6には、事故検出部13と、機器制御部15と、制御処理部6の状態を監視する監視部20とが実装されている。このうち、事故検出部13の出力側には、事故検出部の判定結果を接点出力する事故検出信号出力部14が接続されている。
【0018】
前記主検出信号出力部12の出力接点12s、事故検出信号出力部14の出力接点14sおよび監視部20の出力接点20sは、論理回路30を構成しており、そのトリップ出力30sは、主検出信号出力部12からの出力接点12sと事故検出信号出力部14からの出力接点14sとの論理積にて出力される。さらに、制御処理部6において不良が発生したことを検出したときに監視部20から出力される接点20sと、前記事故検出信号出力部14の出力接点14sは並列に接続されている。
【0019】
なお、本実施の形態では、主検出信号出力部12および事故検出信号出力部14からの出力信号を検出する論理回路30としてにリレー接点を適用したが、これ以外にもトランジスタなどの半導体素子やその他の接点およびそれに類するものを適用する場合がある。
【0020】
上記ような構成を有する第1の実施の形態によれば、従来、主検出部11、事故検出部13、機器制御部15をそれぞれ別々のハードウェアに収納していたものが、主検出部11を保護演算処理部5に、事故検出部13と機器制御部15とを制御処理部6に収納することにより、より簡素なハードウェア構成とすることができ、装置全体を安価に抑えることができる。
【0021】
また、電力系統1に事故が発生したときに制御処理部6に不良が発生して事故検出部13が正常に機能できず、事故検出信号出力部14からの出力がない場合(出力接点14sがオープンの場合)でも、制御処理部6の不良を監視部20にて検出し、監視部20からの出力接点20sによって事故検出信号出力部14からの出力接点14sをバイパスし、主検出信号出力部12からの出力接点12sを通じてトリップ出力30sが出力されるようにすることで、電力系統1を保護することが可能となる。
【0022】
(2.第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態による保護制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図2において図1と同一部分および相当部分については、同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、主検出部11は第1のA/D変換部10から、また事故検出部13は、前記第1のA/D変換部10と並列に設けられた第2のA/D変換部16からディジタル変換した電気量を取り込む構成としている。
【0023】
図1に示す第1の実施の形態では、第1のA/D変換部10に不良が発生することによって取り込む電気量の値が異常となると、主検出部11、事故検出部13ともに誤った事故判定をしてしまい、トリップ出力30sが誤って出力されることがある。しかし、本実施の形態によれば、電気量を取り込むA/D変換部を、第1のA/D変換部10と第2のA/D変換部16とに分離して、主検出部11と事故検出部13に個別に割り当てることにより、一方のA/D変換部が不良となった場合でも誤ってトリップ出力30sを出力しないようにすることが可能となる。
【0024】
(3.第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態による保護制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図3において図1と同一部分および相当部分については、同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、各信号出力部からの出力信号を検出してトリップ出力30sを出力するための論理回路30の構成を変形したものであって、この実施の形態における論理回路30では、図1に示す第1の実施の形態における監視部20から出力される接点20sに代えて、事故検出信号出力部14へ渡す信号を、事故検出部13の判定結果と監視部20からの監視不良信号との論理和とするような構成としている。
【0025】
上記実施の形態によれば、電力系統1に事故が発生したときに制御処理部6に不良が発生して事故検出部13が正常に機能しない場合でも、制御処理部6の不良を監視部20にて検出し、その監視部20からの出力信号と事故検出部13の判定結果との論理和にて事故検出信号出力部14からその出力接点14sへ事故検出信号を出力することにより、トリップ出力30sを出力して電力系統1を保護することが可能となる。
【0026】
(4.第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態による保護制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図4において図1と同一部分および相当部分については、同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、図1に示す第1実施の形態の監視部20に代えて、外部信号入力部17を制御処理部6に収納する構成としている。また、外部から制御信号18が入力されたとき、外部信号入力部17からの出力接点17sによって事故検出信号出力部14からの出力接点14sをバイパスし、主検出信号出力部12からの出力接点12sを通じてトリップ出力30sが出力されるように構成されている。
【0027】
このような構成の第4実施の形態においては、事故検出信号出力部14からの出力信号が得られない場合でも、外部から制御信号18が入力されたときには、外部信号入力部17の出力接点17sがオンとなるので、主検出信号出力部12の出力接点12sを通じてトリップ出力30sが出力される。また、外部からの制御信号18は遠隔地からの制御信号も入力できるため、制御処理部に不良が発生した場合でも、遠隔地からの制御によってトリップ出力30sが出力される状態にすることが可能となる。
【0028】
(5.第5の実施の形態)
図5は、本発明の第5の実施の形態による保護制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図5において図1と同一部分および相当部分については、同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態では、図1の監視部20を制御処理部6に代えて保護演算処理部5に設けた構成としている。
【0029】
この第5の実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様に、主検出部11を保護演算処理部5、事故検出部13と機器制御部15とを制御処理部6に収納することにより、より簡素なハードウェア構成とすることができ、安価に抑えることができる。また、電力系統1に事故が発生したときに制御処理部6に不良が発生して事故検出部13が正常に機能できない場合でも、制御処理部6の不良を保護演算処理部5に設けた監視部20にて検出し、監視部20からの出力信号によってその出力接点20sをオンとして、事故検出信号出力部14からの出力接点14sをバイパスし、主検出信号出力部12の出力接点21sからの出力信号によってトリップ出力30sが出力されるようにすることで、電力系統1を保護することが可能となる。
【0030】
(6.他の実施の形態)
本発明は、図示の実施の形態に限定されるものではなく、図2に示した第2のA/D変換部を図3から図5の実施の形態に組み合わせることも可能である。また、図3のような論理回路を、図4または図5の実施の形態に組み合わせることもできる。
【0031】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、事故検出部と機器制御部とを同じハードウェアである制御処理部に収納し、かつ不適合によって保護演算処理部と制御処理部が相互に影響を及ぼさないよう接点出力方式を工夫することにより、制御処理部側が異常となっても保護機能が正常に機能するよう保護機能を二重化したディジタル形保護制御装置を、最小限のハードウェア規模でより安価に提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第5の実施の形態の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1…電力系統
2…保護制御装置
5…保護演算処理部
6…制御処理部
11…主検出部
12…主検出信号出力部
12s…出力接点
13…事故検出部
14…事故検出信号出力部
14s…出力接点
15…機器制御部
17…外部信号入力部
17s…出力接点
18…制御信号
20…監視部
20s…出力接点
30…論理回路
30s…トリップ出力
Claims (1)
- 電力系統から電力量を取り込み、アナログ量をディジタル量に変換する第1のA/D変換部と、
前記第1のA/D変換部に接続された保護演算処理部に設けられ、前記第1のA/D変換部から出力される前記ディジタル量から電力系統の事故を判定する主検出部と、
前記第1のA/D変換部から出力される前記ディジタル量から前記電力系統の事故有無を判定する事故検出部と、
前記電力系統を構成する電力機器の状態を制御する機器制御部とを備え、
且つ、前記保護演算処理部とはハードウェア的に分離された制御処理部と、前記制御処理部に設けられ、外部から制御信号を入力できる外部信号入力部と、前記主検出部からの事故検出信号と、
前記外部信号入力部からの制御信号または前記事故検出部からの事故検出信号との論理積により、電力系統を保護するためのトリップ信号を出力するための論理回路を有することを特徴とする電力系統の保護制御装置。
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