JP3887464B2 - 光学活性グリシド酸エステル及び光学活性グリセリン酸エステルの製造方法 - Google Patents

光学活性グリシド酸エステル及び光学活性グリセリン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品及び農薬の合成中間体として有用である光学活性グリシド酸エステル及び/又は光学活性グリセリン酸エステルの製造方法に関する。詳しくは、本発明は、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子をベクタープラスミドに連結した組換え体プラスミドを宿主微生物に導入した形質転換微生物による光学活性グリシド酸エステル及び/又は光学活性グリセリン酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性グリシド酸エステルの合成方法としては、光学活性3−ハロ乳酸を経由して合成する方法がある。例えば、クロロピルビン酸を酵素で立体選択的に還元して得られる光学活性3−クロロ乳酸をアルカリで閉環して合成する方法がある[J.Am.Chem.Soc., 104, 4458-4460 (1982)] 。この光学活性3−ハロ乳酸の製法としては、特開昭61−268197号公報に示されるように微生物を用いてラセミ3−ハロ乳酸の一方の対掌体のみを代謝して合成する方法や、特開平2−113890号公報に示されるようにα,β−ジハロプロピオン酸に2−ハロ酸デハロゲナーゼを作用させて合成する方法が知られている。しかしながら、上記のような方法は生産性が極めて低いという欠点を有する。
【0003】
また、光学活性グリシド酸エステルの他の合成方法として、セリンを原料として、αハロゲノ化した後閉環して合成する方法(特公平6−6539号公報、FR2609032)も知られているが、この方法においては強酸を用いるので特殊な装置を必要とするという不都合がある。またこの方法は、有害な一酸化窒素ガスに対する対策が必要であるという問題もある。さらに、グリシド酸エステルのエナンチオマー混合物を、エステル水解酵素を用いて不斉分割する方法(特開平5−276966号公報)が知られている。しかしながら、この方法では、収率、光学純度とも満足のいく値が得られていない。
【0004】
一方、光学活性グリセリン酸エステルの合成法としては、セリンを亜硝酸と反応させて合成する方法 [Chem.Phys.Lipids, 16, 115-122 (1976)] が知られているが、この方法も、上記光学活性グリシド酸エステルの合成の場合と同様の問題がある。また、マンニトールから多段階で合成する方法 [Tetrahedron Lett., 37(3), 355-356 (1996)] なども知られているが、収率が極めて低い。
【0005】
本発明者らは、ラセミ体グリシド酸エステルを立体選択的に水和開環する能力を有する微生物の培養物、菌体又は菌体処理物を、グリシド酸エステルに作用させて光学活性グリシド酸エステル及び/又は光学活性グリセリン酸エステルを合成する方法を確立しているが(特願平8-236628号公報)、さらにその生産性の向上が望まれるところである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、医薬品や農薬などの有効な製造中間体である光学活性グリシド酸エステル及び/又は光学活性グリセリン酸エステルの有効な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子をベクタープラスミドに連結した組換え体プラスミドを宿主微生物に導入した高活性な形質転換微生物を利用することにより、極めて効率的に光学活性グリシド酸エステル及び/又は光学活性グリセリン酸エステルを合成できること見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、一般式(1):
【0008】
【化4】
Figure 0003887464
(但し、式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す)
で示されるラセミ体グリシド酸エステルを、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子を含む組換え体プラスミドで形質転換された形質転換微生物の培養物、菌体又は菌体処理物の存在下で立体選択的に水和開環することを特徴とする、一般式(2):
【0009】
【化5】
Figure 0003887464
(式中、Rは前記のとおりである。*が付された炭素原子は不斉炭素原子である。)
で表される光学活性グリシド酸エステル及び/又は一般式(3):
【0010】
【化6】
Figure 0003887464
(式中、Rは前記のとおりである。*が付された炭素原子は不斉炭素原子である。)
で示される光学活性グリセリン酸エステルの製造方法である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記一般式(1)〜(3)において、Rで表されるアルキル基は、通常、炭素原子数1〜18のアルキル基であり、直鎖状、分岐状のいずれの構造でもよい。具体的には、メチル、エチル、n-ブチル、iso-ブチル、tert- ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、ステアリル等が例示される。
【0012】
上記一般式(1)〜(3)において、Rで表されるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル等が例示される。
上記一般式(1)〜(3)において、Rで表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ベンジル基等が例示される。
【0013】
本発明において原料となるグリシド酸エステルはいかなる方法で合成されたものでもよいが、例えば、汎用的な工業原料であるアクリル酸エステルをエポキシ化することにより容易に合成することができる。
【0014】
本発明で用いるエポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子としては、グリシド酸エステルを立体選択的に加水分解して光学活性なグリシド酸エステルを残存させ、また、光学活性なグリセリン酸エステルを生成する酵素をコードするものであれば特に限定されるものではない。
【0015】
上記遺伝子は、具体的には、アグロバクテリウム(Agrobacterium) DH094 株(FERM P-15959)、アグロバクテリウム sp. DH079株(FERM P-11651)等から取得することができる。これらの遺伝子供与体微生物は、上記番号にて生命工学工業技術研究所に寄託されている。DH079 株の菌学的性質は特開平4-94689 号公報に記載されており、DH094 株の菌学的性質は以下のとおりである。DH094 株は Bergey's Manual of Systematic Bacteriology, volume 1 (1984)に従って検索すると、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter) と同定された。
【0016】
Figure 0003887464
Figure 0003887464
【0017】
本発明で用いるエポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子は、1,3−ジクロロ−2−プロパノールから光学活性3−クロロ−1,2−プロパンジオールに変換する反応に関与する、アグロバクテリウム・ラジオバクター DH094株由来の酵素遺伝子の一部をなしている。
【0018】
すなわち、1,3−ジクロロ−2−プロパノールより光学活性3−クロロ−1,2−プロパンジオールが生成する反応は、1,3−ジクロロ−2−プロパノールからエピクロルヒドリンに変換する反応とエピクロルヒドリンから光学活性3−クロロ−1,2−プロパンジオールに変換する反応の2段階からなるが、この2段階反応のうちの1段階めの反応に関与するのが、ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子であり、2段階めの反応に関与するのが、エポキシ加水分解酵素遺伝子である(特願平9−31400号)。
【0019】
本発明において、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子のクローニングは、特願平9−31400号に記載の方法に従って行うことができる。
まず、アグロバクテリウム・ラジオバクター DH094株から1,3−ジクロロ−2−プロパノールから光学活性3−クロロ−1,2−プロパンジオールへの変換に関わる酵素領域の遺伝子を取得し、これをプラスミドに導入して組換えプラスミドを得る。次に該組換えプラスミドより種々の制限酵素を用いて欠失プラスミドを作成し、これらで宿主微生物を形質転換し、得られた形質転換微生物を培養する。その後、培養物の上記2つの各酵素活性を確認することにより、両酵素をコードする遺伝子の位置を推定する。
【0020】
エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子の全塩基配列の解析は、目的とする酵素遺伝子を含有することを確認した組換えプラスミドを用い、例えば蛍光シーケンサーにより行なうことができる。また、該塩基配列を有する遺伝子によって翻訳されるポリペプチドのアミノ酸配列を確定する。このアミノ酸配列は、配列番号1に示される通りである。このようにして確定されたアミノ酸配列をコードする遺伝子が本発明に用いるエポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子である。
【0021】
また、配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換された配列をコードするDNAを得るには、多くの方法を用いることができる。例えば、点変異又は欠失変異を生じさせるために遺伝子を変異源処理する方法;遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去又は付加し、そして遺伝子を連結する方法;オリゴヌクレオチド変異誘発法等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いるベクターとしては、プラスミドベクター(例えばpUC18 、pUC19 、pUC118、pUC119等) 、ファージベクター(例えばλgt11等) の何れもが利用できる。
形質転換に用いる宿主微生物は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、E.coli JM109株あるいはE.coli JM105株等が利用できる。
【0023】
本発明の形質転換微生物は、これを含む培養液、分離した菌体又は菌体処理物として用いられる。これら形質転換微生物の培養は、通常は液体培養で行われるが、固体培養によっても行うことができる。培地は、通常、微生物が生育しうるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、LB培地等を用いることができる。菌体収量を高めるために、炭素源としてグルコースやグリセロール等を添加することも有効である。培養は10〜50℃の温度で、pH2〜11の範囲で行われる。微生物の生育を促進させるために通気攪拌を行ってもよい。
【0024】
ラセミ体グリシド酸エステルを立体選択的に水和開環して生成する光学活性グリシド酸エステルあるいは残存する光学活性グリセリン酸エステルを得る方法としては、上記のように培養して得た微生物の培養液あるいは遠心分離などにより得た菌体の懸濁液に基質を添加する方法、菌体処理物(例えば、菌体破砕物、粗酵素・精製酵素等の菌体抽出物等)あるいは常法により固定化した菌体又は菌体処理物等の懸濁液に基質を添加する方法等がある。
【0025】
基質の添加方法は特に制限されるものではないが、反応時に一括添加あるいは分割して添加することができ、また、基質を適当な有機溶媒に溶解させて添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。反応は、通常、培養液あるいは緩衝液等の水溶媒液中で基質が溶解あるいは分散した状態で行われるが、水と相溶性のメタノール、エタノール、tert−ブチルアルコール、アセトン等の有機溶媒を添加して基質の溶解度を高めることや、トルエン、エーテル、ヘキサンや酢酸エステル等の有機溶媒を用いて2相系で反応を行うこともできる。
【0026】
反応液中の基質濃度は、特に制限はなく、通常、0.01〜30重量%である。また、反応温度は、通常、1〜60℃であり、好ましくは5〜40℃である。さらに、反応液のpHは、通常、4〜10であり、好ましくは6〜8である。
生成した光学活性グリセリン酸エステル及び残存する光学活性グリシド酸エステルの反応液中からの単離は、常法に従えばよく、例えば、抽出、蒸留あるいはカラムクロマトグラフィー等など公知の方法により行うことができる。
【0027】
また、光学活性グリシド酸エステル及び光学活性グリセリン酸エステルは常法により、容易に各々対応するカルボン酸に加水分解することができ、また、グリシド酸及びグリセリン酸もまた各々対応するエステルに変換することができるので、これらの化合物の利用目的に従った応用が可能である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
尚、基質である各種グリシド酸エステルは、アクリル酸エステルに有機相/水相の2相系媒体中で次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作用させる常法にて合成したものを用いた。
【0029】
〔実施例1〕 エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子を含む組換え体プラスミドで形質転換された形質転換微生物の作成
(1) アグロバクテリウム・ラジオバクター DH094株染色体DNAの調製とDNAライブラリーの作成:
アグロバクテリウム・ラジオバクター DH094 株から Saito and Miuraの方法〔Biochim. Biophys. Acta 72, 619 (1963) 参照〕により染色体DNAを分離し、これを制限酵素 Sau3AI で部分分解後、6kb以上の断片をアガロースゲル電気泳動により分離、取得した。これを BamHIで切断したベクタープラスミド pUC118 に挿入し組換え体DNAのライブラリーを作成した。
【0030】
(2) 形質転換微生物の作成および組換え体DNAの選別:
(1)で調製した組換え体ライブラリーによる形質転換微生物を作成した。形質転換は、宿主微生物として E. coli JM109株を用い、塩化カルシウム法〔J. Mol. Biol. 53, 154 (1970)〕により行った。その中からハロヒドリンエポキシダーゼ活性を示すようになったものを選別した。選別は以下のようにして行った。アンピシリン(100μg/ml) と IPTG(1mM)を含む LB 寒天培地(1%バクトトリプトン、 0.5%バクトイーストエキス、 0.5%NaCl、 1.5%寒天)にコロニーを形成させた。10mMトリス−塩酸緩衝液(pH 7.5)、0.02%ブロモクレゾールパープル、1%1,3−ジクロロ−2−プロパノールを染み込ませたロ紙にコロニーを移し室温にて数時間放置した。ハロヒドリンエポキシダーゼ活性を持つコロニーは塩酸を遊離しコロニー付近のpHは低下し、pH指示薬であるブロモクレゾールパープルは青紫色から黄色に変化するため、肉眼観察によりハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を持つ株を選別することができる。
こうして得られた形質転換株から再びプラスミドDNAを取り出し、選別された目的のプラスミドを得た。このプラスミドを pDHD001と名付けた。
【0031】
(3) pDHD001〜pDHD004 の制限酵素地図の作成とハロヒドリンエポキシダーゼ、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子の位置の確認:
(2) で得られたプラスミドpDHD001 について制限酵素地図を作成した(図1)。その後、数種の制限酵素で切断し、より小さなDNA断片を持つプラスミドを作成した。これらのプラスミドによって形質転換された組換え体のハロヒドリンエポキシダーゼ活性を上記と同様にして確認し、その有無により目的遺伝子の含まれている領域を調べた。これらのプラスミドのうちの一つ pDHD002を pDHD001を制限酵素 SacI による切断後、セルフライゲーションにより得、pDH002の制限酵素地図を作成し(図2)、上記と同様により小さな断片を持つプラスミドを作製した。これらのプラスミドのうちの一つ pDHD003を pDHD002を制限酵素 PstI による切断後、セルフライゲーションにより得た(図2)。
次に、プラスミド pDHD003より欠失プラスミドを作製した。欠失プラスミドの作製は、各制限酵素切断部位を利用して、もしくは、TAKARAデレーションキット(宝酒造(株))を利用して行った。
【0032】
各欠失プラスミドをJM109 株に導入し、アンピシリン (50μg/ml) と IPTG(1mM)を含むLB培地(1%バクトトリプトン、 0.5%バクトイーストエキス、 0.5%NaCl) に JM109/pDHD003を植菌し37℃にて16時間振盪培養を行った。こうして得られた培養液から遠心分離により菌体を回収し、50mM Tris-硫酸緩衝液(pH 8.0)50mlで2回洗浄後50mlの1M Tris-塩酸緩衝液(pH 8.0)に懸濁し菌体懸濁液を調製した。得られた菌体懸濁液を用い、エポキシ加水分解酵素活性は50mMエピクロロヒドリンを基質として、20℃にて30分間反応し生成した3-クロロ-1, 2-プロパンジオールをガスクロマトグラフィーにて定量することにより測定した。また、ハロヒドリンエポキシダーゼ活性の検出は上記と同様にして行った。その結果、この断片中にエポキシ加水分解酵素、ハロヒドリンエポキシダーゼの順にそれらをコードする遺伝子がならんでいることが推定された(図3)。
尚、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子のみを有する欠失プラスミド pDHD004の制限地図を図4に示す。
【0033】
(4) エポキシ加水分解酵素遺伝子の解析
プラスミドpDHD003 のDH094 株由来のDNAの塩基配列をファルマシア社蛍光シーケンサー ALF II を用いて決定した。その塩基配列を配列番号3に示す。また、これに対応するアミノ酸配列を塩基配列とともに配列番号4に示したところ、2つのオープンリーディングフレームが見いだされた。このうち、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子は、最初のオープンリーディングフレームに該当する。その塩基配列を配列番号2、対応するアミノ酸配列を配列番号1にそれぞれ示す。
なお、pDHD003 で形質転換した大腸菌JM109 株(JM109/pDHD003) は、 FERM P-15960 として生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0034】
〔実施例2〕
LB培地(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、0.5% NaCl)100 mlを500 ml容三角フラスコに入れてオートクレーブ滅菌した後、アンピシリン(50μg/ml) とIPTG(1mM) を添加し、E. coli JM109/pDHD003 を植菌して37℃にて20時間振盪培養を行った。培養後、菌体を遠心分離にて集菌し、培養液と同量の50 mM KH2PO4−Na2HPO4 緩衝液(pH7.7)で2回洗浄した後、25mlの同緩衝液に懸濁し、菌体懸濁液とした。この菌体懸濁液5 mlにトルエン5 ml、グリシド酸エチルエステル0.9 mlを加えて、15℃で24時間撹拌し、反応した。水層をガスクロマトグラフィーで分析した結果、グリセリン酸エチルエステルの生成が確認され、その光学純度は94.5% e.e(S-体)であった。尚、トルエン層をガスクロマトグラフィーで分析した結果、R-体及びS-体のグリシド酸エチルエステルの残存率は、それぞれ98% 、32% であった。
【0035】
〔実施例3〕
実施例2と同様にしてE. coli JM109/pDHD004 を培養、集菌、洗浄した後、菌体を培養液と同量の50 mM KH2PO4−Na2HPO4 緩衝液(pH7.7)に懸濁した。この菌体懸濁液5 mlに50 mM KH2PO4−Na2HPO4 緩衝液(pH7.7) 5ml、グリシド酸メチルエステル50μlを添加して20℃で3.5 時間反応した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、グリシド酸メチルエステルの残存率は52%であり、その光学純度は92.0% e.e. (R-体) であった。
【0036】
〔実施例4〕
実施例3で用いた菌体懸濁液5 mlに50 mM KH2PO4−Na2HPO4 緩衝液(pH7.7) 5ml、グリシド酸n−ブチルエステル50μlを添加して20℃で3時間反応した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、グリシド酸n−ブチルエステルの残存率は48% であり、その光学純度は95.7% e.e. (R-体) であった。また、生成したグリセリン酸n−ブチルエステルの光学純度は95.4% e.e. (S-体)であった。
【0037】
〔実施例5〕
実施例3で用いた菌体懸濁液10mlにグリシド酸シクロヘキシルエステル27.5μlを添加して20℃で1時間反応した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、グリシド酸シクロヘキシルエステルの残存率は75% であり、生成したグリセリン酸シクロヘキシルエステルの光学純度は100% e.e. (S- 体)であった。
【0038】
〔実施例6〕
実施例3で用いた菌体懸濁液5ml にn−ヘキサン5ml 、グリシド酸n−ブチルエステル0.48mlを添加して20℃で20時間反応した。n−ヘキサン層をガスクロマトグラフィーで分析した結果、グリシド酸n−ブチルエステルの残存率は71%であり、また、水層を分析した結果、生成したグリセリン酸n−ブチルエステルの光学純度は96.6% e.e. (S-体)であった。
【0039】
〔実施例7〕
実施例2で用いた菌体懸濁液0.25mlに50 mM KH2PO4−Na2HPO4 緩衝液(pH7.7)0.25 ml 、100 重量%グリシド酸ベンジルエステルを含むトルエン50μlを添加して30℃で1時間反応した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、グリシド酸ベンジルエステルの残存率は62% であり、生成したグリセリン酸ベンジルエステルの光学純度は100% e.e. (S- 体)であった。
【0040】
〔比較例1および実施例8〕
グリセロール1%、ポリペプトン0.5%、肉エキス0.3%、酵母エキス0.3%、KH2PO4 0.15%、K2HPO4 0.3% からなる培地(pH7.2)100mlに、アグロバクテリウム・ラジオバクター DH094株を接種し、30℃で3 日間振盪培養した。この培養液から菌体を遠心分離により集菌し、実施例2と同様にして菌体懸濁液を調製した。この菌体懸濁液に、表1中に記載の菌濃度になるように50mM KH2PO4 −Na2HPO4 緩衝液(pH7.7)を加えて15mlとし、これに10(w/v)%のグリシド酸エチルエステルを含むトルエン15mlを加えて20℃で反応を行った。また、実施例3と同様に調製したE.coli JM109/pDHD004を用いて同様の反応を行った。トルエン相をガスクロマトグラフィー分析し、基質グリシド酸エチルエステルの残存率および光学純度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003887464
【0042】
このように組換え体を用いることにより少ない菌体量で効率よく光学活性グリシド酸エチルエステルを製造することができる。
【0043】
【配列表】
Figure 0003887464
Figure 0003887464
【0044】
Figure 0003887464
【0045】
Figure 0003887464
Figure 0003887464
【0046】
Figure 0003887464
Figure 0003887464
Figure 0003887464
Figure 0003887464
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、エポキシ加水分解酵素をコードする遺伝子を導入した形質転換微生物により、医薬品や農薬などの有効な製造中間体である光学活性グリシド酸エステル及び/又は光学活性グリセリン酸エステルを高収率で、かつ高い光学純度で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 pDHD001 の制限酵素地図を示す。
【図2】 pDHD002 、 pDHD003の制限酵素地図を示す。
【図3】 pDHD003より作製された欠失プラスミド、およびそれらにより形質転換された組換え体の酵素活性を示す。
【図4】 pDHD003 、pDHD004 の制限酵素地図を示す。

Claims (1)

  1. 一般式(1):
    Figure 0003887464
    (但し、式中、Rは炭素原子数1〜18のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又はベンジル基を表す)
    で示されるラセミ体グリシド酸エステルを、(a) 配列番号1記載のアミノ酸配列からなるタンパク質か、(b) 配列番号1記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつエポキシ加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え体プラスミドで形質転換された形質転換微生物の培養物、菌体又は菌体処理物の存在下で立体選択的に水和開環することを特徴とする、一般式(2):
    Figure 0003887464
    (式中、Rは前記のとおりである。*が付された炭素原子は不斉炭素原子である。)
    で表される光学活性(R体)グリシド酸エステル及び/又は一般式(3):
    Figure 0003887464
    (式中、Rは前記のとおりである。*が付された炭素原子は不斉炭素原子である。)
    で示される光学活性(S体)グリセリン酸エステルの製造方法。
JP19864797A 1997-07-24 1997-07-24 光学活性グリシド酸エステル及び光学活性グリセリン酸エステルの製造方法 Expired - Fee Related JP3887464B2 (ja)

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