JP3886559B2 - 不定形セルパターンを生成する方法および装置 - Google Patents

不定形セルパターンを生成する方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多数の不定形セルからなるパターンをコンピュータを利用して生成するための生成方法および生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータグラフィックスの技術進歩により、種々の模様やパターンをコンピュータを利用して生成する手法が確立されてきており、手描では到底不可能であった斬新な模様をコンピュータを利用して比較的簡単に生成することが可能になってきている。また、もとになるデジタル画像に対して種々のエフェクトをかけることにより、全く新しいイメージをもった画像を生成する技術も普及しており、グラフィックデザイン用のアプリケーションソフトウエアも様々なものが市販されるに至っている。このような模様やパターンは、チラシやカタログ類などの紙製品への印刷をはじめとして、壁板やドアなどの建材表面への印刷やエンボス加工、家具表面を構成する化粧板への印刷やエンボス加工など、あらゆる分野で広く利用されている。また、最近では、いわゆるマルチメディアの普及により、単にディスプレイ画面に表示することだけを目的として、種々の模様やパターンが利用されることも少なくない。
【0003】
このように、コンピュータを利用して生成されるパターンの一態様として、多数の不定形セルからなるパターンが用いられている。この不定形セルパターンは、動物の皮膚、植物の細胞や微細組織などを表現するのに適しており、コンピュータグラフィックスの分野において、動植物のモデリングを行う際に表面にマッピングするテクスチャ模様として用いられることが多い。
【0004】
この不定形セルパターンは、小さな不定形多角形を多数セル状に配置してなるパターンであり、このようなパターンをコンピュータを利用して生成するための手法としては、ボロノイ図(Voronoi diagram )を利用する方法が一般的である。ボロノイ図は、平面上に多数の母点を定義し、各母点の勢力圏を数学的に定義し、こうして定義された個々の勢力圏からなる多角形によって平面を構成することにより得られ、いわば平面を多数のセルに分割した図ともいうべきものである。予め、母点の分布状態の設定と勢力圏の数学的定義とを行っておけば、コンピュータによる数学的な演算によって、比較的容易にボロノイ図を得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、現在のコンピュータグラフィックスの分野においては、ボロノイ図を利用して不定形セルパターンを生成するのが一般的である。通常は、平面上に一様乱数を用いて全くランダムに母点を定義し、これらの母点に基づいてボロノイ図を作成して不定形セルパターンを生成する方法が採られている。しかしながら、こうして生成された不定形セルパターンは、確かに、不規則な大きさおよび不規則な形状をもった多数のセルの集合からなるパターンにはなるが、動物の皮膚、植物の細胞や微細組織など、動植物の組織を表現するパターンとしては、不自然さが残り、決して十分なパターンにはなっていないのが実情である。特に、従来の方法では、動植物に特有な「流れ」の要素を表現することができず、動植物としての生命感に乏しいパターンしか得られない。
【0006】
そこで本発明は、動植物に特有な「流れ」の要素を表現することにより、生命感のある不定形セルパターンを生成する新規な手法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、多数の不定形セルからなるパターンを生成する方法において、
コンピュータが、個々のセルの核となるべき多数の母点を規則的に配置する第1の段階と、
コンピュータが、空間的に自己相似的なベクトルを表現することができるフラクタル場を用意する第2の段階と、
コンピュータが、配置した多数の母点を、用意したフラクタル場を用いてそれぞれ変位させる第3の段階と、
コンピュータが、変位後の母点に対するボロノイ図を作成する第4の段階と、
を行い、作成したボロノイ図に基づいてパターンを生成するようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る方法において、
第1の段階で、母点を二次元平面上に配置し、
第2の段階で、所定のスカラー値を自己相似的に二次元平面上の各格子点に定義した二次元フラクタル格子を用意し、
第3の段階で、母点が配置された平面上に二次元フラクタル格子を重ね、各母点と各格子点との相互位置関係に基づいて、各母点に特定の格子点を対応づけ、対応する格子点に定義されたスカラー値に基づいて各母点を所定方向に変位させるようにしたものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る方法において、
第1の段階で、母点をXY平面上に配置し、
第2の段階で、2つのそれぞれ独立した二次元フラクタル格子を用意し、
第3の段階で、各母点を、第1の二次元フラクタル格子の格子点に定義されたスカラー値に基づいてX軸方向に移動させ、第2の二次元フラクタル格子の格子点に定義されたスカラー値に基づいてY軸方向に移動させるようにしたものである。
【0010】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜3の態様に係る方法において、
第1の段階で、三角形、四角形もしくは六角形からなるボロノイ多角形が形成されるように、所定平面上に規則的に母点を配置するようにしたものである。
【0011】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜4の態様に係る方法において、
第4の段階で、任意の点をユークリッド距離が最も小さい母点の勢力圏に所属させることによりボロノイ図を作成するようにしたものである。
【0012】
(6) 本発明の第6の態様は、多数の不定形セルからなるパターンを生成する装置において、
所定のパラメータを入力するパラメータ入力手段と、
乱数を発生させる乱数発生手段と、
個々のセルの核となるべき多数の母点を、入力したパラメータに基づいて規則的に配置する母点配置手段と、
空間的に自己相似的なベクトルを表現することができるフラクタル場を、入力したパラメータに基づいて発生させるフラクタル場発生手段と、
多数の母点をフラクタル場を用いてそれぞれ変位させる母点変位手段と、
変位後の母点に対するボロノイ図を作成するボロノイ図作成手段と、
ボロノイ図に基づいてパターンを生成し、これを出力するパターン出力手段と、
を設けるようにしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。はじめに、説明の便宜上、ボロノイ図についての簡単な説明を行うことにする。いま、図1に示すように、平面上に6個の母点M1〜M6を定義する。そして、この平面上の任意の点Pをどの母点の勢力圏に所属させるかという事項を数学的に定義する。通常、もっとも一般的に行われている定義は、「ユークリッド距離(いわゆる幾何学的な二点間の距離)が最も小さい母点の勢力圏に所属させる」という定義である。図1に示す例では、点Pに対して最もユークリッド距離が近い母点は母点M2であるから、点Pは母点M2の勢力圏に所属することになる。このように、平面上のすべての点を、母点M1〜M6のいずれかに所属させると、図2に示すように、各母点の勢力圏を示す多角形が得られる。この図2では、ハッチングを施した多角形が母点M2の勢力圏に相当する。すなわち、母点M2は、このハッチング領域内のすべての点に対してユークリッド距離が最も小さい母点となる。こうして得られる多角形はボロノイ多角形と呼ばれ、このボロノイ多角形の集合がボロノイ図(Voronoi diagram )になる。要するに、ボロノイ図とは、平面上にn個の母点M1,M2,…,Mi,…Mnを定義したときの各母点の勢力圏を示す多角形の集合により、平面を分割した状態を示す図ということができる。
【0016】
このボロノイ図を作成するにあたり、予め規則的に母点を配置しておくようにすると、作成されるボロノイ図が示す平面分割パターンも規則的なものになる。たとえば、図3に示すように、同一の正三角形によって平面を埋め尽くすようにし、個々の正三角形の頂点位置に個々の母点Miをそれぞれ定義してみる。このように規則的に配置された多数の母点Miに基づいてボロノイ図を作成すると、図4に示すような多数の正六角形Hiがボロノイ多角形として得られることになり、平面はこの正六角形群によって規則的に分割される。
【0017】
このように完全に規則的なセルパターンは、動植物の組織を表現するパターンとしては不適当である。そこで、動植物の組織を表現するために、図3に示す規則的な母点配置に対して、予めランダムな変位を与えておく手法が従来から採られている。たとえば、図3に示されている平面をXY平面とし、図示された正三角形の頂点として規則的に配置された個々の母点Mi(xi,yi)に対して、X軸方向の変位量ΔxとY軸方向の変位量Δyとをそれぞれ各母点ごとに乱数として発生させ、この変位量Δx,Δyに基づいて各母点の新たな位置をMi(xi+Δx,yi+Δy)とする変位(移動)を行う。個々の母点ごとにこのような変位を行えば、全体的にランダムに配置された母点群が得られることになる。このランダム配置された母点群についてボロノイ図を求めると、得られるセルパターンは不定形セルパターンとなり、動植物の組織を表現するパターンとしてより好ましいものになる。図5は、このような従来の手法により得られた不定形セルパターンの一例を示す図である。すなわち、この図5のパターンは、図3に示すように規則的に配置した母点に対して、一様乱数を用いたランダムな変位を行い、変位後の母点についてボロノイ図を求めることにより得られたパターンである。
【0018】
この図5に示すパターンは、不定形のセルからなるパターンという意味では、確かに動植物の組織を表現するパターンとして利用可能であるが、動植物に特有な「流れ」の要素が表現されていないため、動植物としての生命感に乏しいパターンと言わざるを得ない。本願発明者は、動植物としての生命感に富んだ表現を行うためには、この「流れ」の要素をパターン中に表現することが不可欠であると考えており、従来の手法によって生成された不定形セルパターンに「流れ」の要素が表現されない理由は、規則的に配置された母点を変位させる過程において、個々の母点の変位量がそれぞれ全く独立して設定されているためであると考えている。すなわち、個々の母点ごとにそれぞれ一様乱数を用いてランダムな変位量を設定したとしても、隣接する母点同士でこの変位量に何ら相関関係がなければ、個々の母点が全く勝手に変位している状態しか得られず、そこには、動植物に特有な「流れ」の要素の入り込む余地はないのである。
【0019】
本願発明者は、この「流れ」の要素をパターン内に取り込むために、フラクタル場を利用することを見いだした。一般に、「フラクタル場」とは、空間的な自己相似性をもった場を意味し、特に、空間的な自己相似性をもったフラクタル図形が、自然界の多くのものを表現するのに適していることは広く知られている。フラクタル図形の特徴は、ミクロ的に見ても、マクロ的に見ても、その複雑さは常に同じであるという点にある。自然界に見られる海岸線の形状、樹木や葉脈の形状、雪の結晶の形状、などは、いずれもこのフラクタル図形の代表的なものであり、ミクロ的に見てもマクロ的に見ても、入り組んだ独特の形状をしている。このような性質は一般に自己相似性と呼ばれており、フラクタル理論の本質は、この自己相似性にある。
【0020】
このフラクタル理論を、より一般的に拡張すると、所定のスカラー値を自己相似的に個々の格子点に定義したフラクタル格子を考えることができる。たとえば、二次元フラクタル格子は、二次元平面上に配列された各格子点のそれぞれに、所定のスカラー値を定義したものであり、二次元スカラー場を与えるものである。この二次元スカラー場において、各スカラー値は、自然なゆらぎをもって空間的に変化することになる。別言すれば、この変化のパターンは、ミクロ的に見ても、マクロ的に見ても、その複雑さは常に同じ、すなわち自己相似的になる。また、この二次元スカラー場に定義された個々のスカラー値に方向性を与えることにより、二次元ベクトル場を定義することも可能である。本発明の基本思想は、このように方向性が定義されたフラクタル場に基づいて、規則的な母点を変位させることにより、「流れ」の要素を不定形セルパターン中に取り込む点にある。
【0021】
図6は、本発明に係る不定形セルパターンの生成方法の基本手順を示す流れ図である。まず、ステップS1において、個々のセルの核となるべき多数の母点を規則的に配置する。たとえば、図3に示すように、規則的に配置された多数の母点Miが定義されることになる。続くステップS2において、空間的に自己相似的なベクトルを表現することができるフラクタル場が用意される。具体的には、二次元フラクタルスカラー場を用意し、このスカラー場に方向性を定義することにより、フラクタルベクトル場として利用すればよい。そして、ステップS3において、ステップS1で配置した多数の母点を、ステップS2で用意したフラクタルベクトル場の示す方向へそれぞれ移動させる。これにより、個々の母点は、それぞれ変位することになるが、個々の母点の変位方向および変位量は、フラクタル場に基づいて決定されているため、この変位態様には、全体として自然界の「流れ」の要素が取り込まれていることになる。別言すれば、各母点の規則的な配置に対する変位態様は、自己相似性を有することになる。最後に、ステップS4において、この変位後の母点に対するボロノイ図が作成される。すなわち、二次元平面がボロノイ多角形によって分割されることになり、不定形セルパターンが得られる。
【0022】
図7は、この図6に示す本発明に係る手法により得られた不定形セルパターンの一例を示す図である。すなわち、この図7のパターンは、図3に示すように規則的に配置した母点に対して、フラクタル場を用いた自己相似的な変位を行い、変位後の母点についてボロノイ図を求めることにより得られたパターンである。図5に示す従来のセルパターンと比較すると、いずれも不定形のセルからなるパターンという点では同じであるが、図7に示すパターンでは、明らかに動植物に特有な「流れ」の要素が表現されていることがわかる。たとえば、コンピュータグラフィックスの分野において、ワニやトカゲなどの爬虫類の皮膚にマッピングするテクスチャ模様として、図5に示すセルパターンと、図7に示すセルパターンとを比較してみれば、後者の方が動物の皮膚としての生命感が感じられることが認識できよう。
【0023】
【実施例】
続いて、本発明をより具体的な実施例に基づいて説明する。
【0024】
§1. 一次元フラクタル格子
本発明の根本的な思想は、フラクタル場によって表現される自然なゆらぎを、不定形セルパターンに反映させる点にある。そこで、はじめに、このフラクタル場についての簡単な説明を行うことにする。ここでは、一次元に配列された個々の格子点にスカラー量を定義してなる一次元フラクタル格子について、図を参照しながら説明する。
【0025】
いま、図8に示すように、1本の線上に所定の距離だけ離して2つの格子点A,B(図では二重の円で示す)を定義し、これら各格子点A,Bにそれぞれスカラー値a,bを定義する。このように定義した2つの格子点A,Bは、初期段階(以下、第0段階と呼ぶ)の格子点であり、スカラー値a,bは、この2つの格子点A,Bに設定されたいわば初期条件である。
【0026】
続いて、図9に示すように、2つの格子点A,Bの中点に、第1段階の格子点Cを定義する。このとき、この格子点Cに対しても、スカラー値cを定義することになるが、このスカラー値cはスカラー値a,bに基づいて、所定の演算によって定義することになる。図9は、格子点Cのスカラー値cがまだ定まっていない状態を示している。なお、ここでは、スカラー値が未定義の状態の格子点を一重の円で示し、スカラー値が定義された状態の格子点を二重の円で示すことにする。スカラー値cは、次のような演算式
c=(a+b)/2 + T・RND (1)
によって計算される。ここで、aおよびbは、格子点AおよびBについて定義されたスカラー値であり、Tはゆらぎの最大半振幅値、RNDは、−1≦RND≦+1なる任意の乱数である。このように、スカラー値cの定義には、乱数が用いられており、偶然の要素が左右することになる。ただし、スカラー値cとしては、全くデタラメな値が定義されるわけではなく、両隣の格子点A,Bのスカラー値a,bと、最大半振幅値Tと、によって制限を受けることになる。すなわち、上述の式(1) に示されているように、スカラー値a,bの平均値に、−T〜+Tの範囲内の任意の値(乱数によって定まる)を加えた値が、スカラー値cの値となる。したがって、最大半振幅値Tは、平均値からずれるゆらぎの程度を制限するパラメータとなる。
【0027】
こうして、第1段階の格子点Cについてのスカラー値cが定義できたら、続いて、図10に示すように、格子点A,Cの中点および格子点C,Bの中点に、それぞれ第2段階の格子点D,Eを定義する。そして、これら格子点D,Eに対して、それぞれスカラー値d,eを、
d=(a+c)/2 + (1/2)・T・RND (2)
e=(c+b)/2 + (1/2)・T・RND (3)
なる式によって計算する。ここで、上述したように、Tはゆらぎの最大半振幅値、RNDは、−1≦RND≦+1なる任意の乱数である。式(2) ,(3) は、式(1) と非常に似ているが、最大半振幅値Tに(1/2)なる係数がかかっている点は留意すべきである。
【0028】
続いて、第2段階までで定義された5つの格子点A,D,C,E,Bのそれぞれ中点に、第3段階の格子点を定義し、これらの格子点にもスカラー値を計算して定義する。たとえば、格子点A,Dの中点として定義された格子点F(図示されていない)についてのスカラー値fは、
f=(a+d)/2 + (1/4)・T・RND (4)
なる式によって計算される。この式(4) では、最大半振幅値Tに(1/4)なる係数がかかっている。
【0029】
理解を容易にするために、以上のステップを実際の数値を用いて説明してみる。たとえば、図11に示すように、第0段階の格子点A,Bに対して、それぞれスカラー値「50」,「80」を初期条件として設定した場合を考える。このような2つの格子点A,Bの中点として、図12に示すように、第1段階の格子点Cが定義されることになるが、この場合、この格子点Cについて定義されるスカラー値cは、前述の式(1) により、
c=(50+80)/2+T・RND (1)
なる演算で与えられる。ここでは、ゆらぎの最大半振幅値T=5と設定し、上式の演算時には、たまたま乱数RND=+0.6になったものとしよう。この場合、演算により求まるスカラー値c=68となる。
【0030】
続いて、格子点A,Cおよび格子点C,Bの中点として、図13に示すように、第2段階の格子点Dおよび格子点Eが定義されることになるが、この場合、これらの格子点D,Eについて定義されるスカラー値d,eは、前述の式(2) ,(3) により、
d=(50+68)/2+(1/2)・T・RND (2)
e=(68+80)/2+(1/2)・T・RND (3)
なる演算で与えられる。ここで、上各式の演算時に、たまたま乱数RND=−0.4、RND=+0.8になったものとすると、演算により求まるスカラー値d=58、e=76となる。結局、第2段階の格子点についてのスカラー値が求まった段階では、図14に示すように、5つの格子点A,D,C,E,Bについて、それぞれスカラー値が定義されたことになる。
【0031】
同様にして、これらの5つの格子点A,D,C,E,Bのそれぞれ中点に、第3段階の格子点を定義し、これらの格子点にもスカラー値を計算して定義し、更に、第4段階、第5段階、…、と同じ操作を繰り返し実行してゆく。このような操作を所定の有限回数nだけ繰り返し行ってゆけば、第0段階の格子点A,Bの間に多数の格子点が定義され、これら各格子点には所定のスカラー値が定義されることになる。なお、第n段階の格子点についてのスカラー値sの計算方法を一般式で示せば、
s=(α+β)/2+(1/2(n−1))・T・RND (5)
となる。ここで、αおよびβは、その格子点の両隣の格子点のスカラー値(第(n−1)段階で計算されている)であり、上述したように、Tはゆらぎの最大半振幅値、RNDは、−1≦RND≦+1なる任意の乱数である。
【0032】
このような方法によって、所定のスカラー値をもった格子点を多数定義すると、これらの格子点は一次元フラクタル格子を構成することになる。このようなフラクタル格子の発生方法は、一般にランダム中点変位法と呼ばれている方法である。上述の具体例では、この一次元フラクタル格子の左端点に「50」、右端点に「80」、というスカラー値が定義され、これら両端点の間に定義された多数の格子点にも、それぞれ特有のスカラー値が定義される。いま、こうして求まった一次元フラクタル格子の配列方向を横軸にとり、個々のスカラー値を縦軸にとると、図15に示すようなグラフが描かれることになる。このようなグラフは、たとえば、自然界の海岸線の形状に似た性質をもつ。すなわち、個々のスカラー値は、部分的に大きくなったり小さくなったりと、様々な分布をとることになるが、この分布パターンの複雑さは、ミクロ的に見ても、マクロ的に見ても同じになることが知られている。この性質をより具体的に説明すれば、図15において、格子点AB間のグラフの複雑さも、格子点AD間のグラフの複雑さも、同じであり、また、この格子点ADの間のごく微小区間を虫めがねで拡大して見た場合も、やはり同じ複雑さをもっているということである。別言すれば、個々のスカラー値は自己相似的に個々の格子点に定義されており、自然なゆらぎをもって空間的に増減変化していることになる。
【0033】
§2. 二次元フラクタル格子
以上、単純な一次元のフラクタル格子をランダム中点変位法によって発生させる方法を、具体例を掲げながら説明を行ったが、後述する実施例において実際に用いられるフラクタル格子は、格子点が平面的に配列された二次元フラクタル格子である。そこで、ここでは、上述の一次元フラクタル格子で説明したランダム中点変位法を二次元に適用した方法の一例を述べておく。二次元フラクタル格子を発生させるには、第0段階の格子点として、図16に示すように、正方形の4頂点に格子点A,B,C,Dを配置し、それぞれスカラー値a,b,c,dを定義する。ここで、この正方形は、最終的に生成された二次元フラクタル格子の外形を形成する外形矩形である。
【0034】
続いて、図17に示すように、格子点AB間、BC間、CD間、DA間のそれぞれ中点に、第1段階の格子点E,F,G,Hを定義するとともに、4つの格子点ABCDの対角線の交点に、もうひとつの第1段階の格子点Iを定義する。そして、これら5つの格子点について、それぞれスカラー値e,f,g,h,iを定義するが、これは次のような演算式
e=(a+b)/2 + T・RND (6)
f=(b+c)/2 + T・RND (7)
g=(c+d)/2 + T・RND (8)
h=(d+a)/2 + T・RND (9)
i= (a+b+c+d)/4 + T・RND (10)
によって計算される。なお、一次元フラクタル格子の例と同様に、Tはゆらぎの最大半振幅値、RNDは、−1≦RND≦+1なる任意の乱数である。
【0035】
こうして、第1段階の格子点E,F,G,H,Iについてのスカラー値e,f,g,h,iが定義できたら、続いて、図18に示すように、隣接する各格子点の中点および4つの格子点の対角線の交点に、それぞれ第2段階の格子点J,K,L,M,N,…を定義する(繁雑になるのを避けるため、図18では、格子点J,K,L,M,Nのみ格子点名を表示してある)。そして、これらの各格子点について、それぞれスカラー値j,k,l,m,n,…を定義するが、これは次のような演算式(j〜nまでについての演算式のみを示す)
j=(a+e)/2 + (1/2)・T・RND (11)
k=(e+i)/2 + (1/2)・T・RND (12)
l=(i+h)/2 + (1/2)・T・RND (13)
m=(h+a)/2 + (1/2)・T・RND (14)
n= (a+e+i+h)/4 + (1/2)・T・RND (15)
によって計算する。この第2段階の格子点のスカラー値を求める式では、前述した一次元フラクタル格子の場合と同様に、最大半振幅値Tに(1/2)なる係数がかかっている。
【0036】
以下、同様に、第3段階、第4段階、…、第n段階の処理を繰り返し実行してゆけば、二次元平面上に配列された多数の格子点について、スカラー値が定義されることになる。
【0037】
以上の処理を、一般論として説明すると、まず、第0段階において、外形矩形のそれぞれ4隅位置に4つの格子点を定義し、各格子点にそれぞれ所定のスカラー値を定義する。そして、以下、第i段階の処理として、次のような処理を順次実行すればよい。すなわち、まず、第(i−1)段階までに定義された格子点を内部に含まない現段階での最小矩形を認識する。たとえば、i=1の第1段階の場合は、図16に示す矩形ABCDが最小矩形(第0段階までに定義された格子点A,B,C,Dを内部に含まない矩形)であり、i=2の第2段階の場合は、図17に示す4つの矩形AEIH,EBFI,HIGD,IFCGがそれぞれ最小矩形(第1段階までに定義された格子点A〜Iをいずれも内部に含まない矩形)である。
【0038】
そして、この最小矩形の各辺の中点およびこの最小矩形の中心点に、第i段階に定義すべき格子点を生成する(たとえば、i=1の第1段階の場合は、図17に示すように、最小矩形ABCDの各辺の中点E,F,G,Hおよび中心点Iに、定義すべき格子点が生成されている)。更に、これらの格子点のうち、各辺の中点に生成した格子点については、その辺の端点に存在する第(i−1)段階までに定義された2つの格子点のもつスカラー値に乱数を作用させることによって得られるスカラー値を与える。たとえば、図17に示す格子点Eについては、2つの格子点A,Bのもつスカラー値a,bに乱数RNDを作用させることによって得られたスカラー値eが与えられている。一般に、第n段階において隣接する格子点の中点として定義される格子点についてのスカラー値s1の計算方法を式で示せば、
s1=(α+β)/2+(1/2(n−1))・T・RND (16)
となる。ここで、αおよびβは、その格子点の両隣の格子点のスカラー値(第(n−1)段階で計算されている)である。
【0039】
一方、最小矩形の中心点に生成した格子点については、その最小矩形の4隅位置に存在する第(i−1)段階までに定義された4つの格子点のもつスカラー値に乱数を作用させることによって得られるスカラー値を与える。たとえば、図17に示す格子点Iについては、4つの格子点A,B,C,Dのもつスカラー値a,b,c,dに乱数RNDを作用させることによって得られたスカラー値iが与えられている。一般に、第n段階において最小矩形の中心点として定義される格子点についてのスカラー値s2の計算方法を式で示せば、
s2= (α+β+γ+δ)/4+(1/2(n−1))・T・RND (17)
となる。ここで、α,β,γ,δは、その最小矩形の4つの隅にある格子点のスカラー値(第(n−1)段階で計算されている)である。
【0040】
このような方法によって生成された二次元フラクタル格子は、結局、二次元平面的に広がったスカラー場を与えるものになる。そこで、この二次元フラクタル格子の面を水平面上にとり、各スカラー値を垂直方向の高さ(標高)としてグラフにプロットすれば山岳の***構造のような凹凸パターンが表現できる。このような***構造は、自然界に存在する実際の山岳の***構造の凹凸パターンと似た性質をもつことが知られている。すなわち、凹凸構造の複雑さは、ミクロ的に見ても、マクロ的に見ても同じになり、この凹凸構造の一部を虫めがねで拡大して見た場合も、やはり同じ複雑さをもっている。別言すれば、二次元平面上に分布した個々のスカラー値は自己相似的に配置されており、自然なゆらぎをもって空間的に増減変化していることになる。
【0041】
§3. 不定形セルパターンの生成
さて、上述の§2において、二次元フラクタル格子を発生させる具体的な方法を例示したが、ここでは、この二次元フラクタル格子を用いて、不定形セルパターンを生成する具体的な手順を説明する。
【0042】
本発明に係る方法は、図6の流れ図に示されているように、ステップS1〜S4の4つの段階から構成される。まず、ステップS1において、母点が規則的に配置される。この実施例では、図3に示すように、二次元平面上を埋め尽くすように多数の同一の正三角形を定義し、これら正三角形の頂点として母点の配置を行っている。このように、平面を埋め尽くす正三角形の頂点として母点配置を行い、この規則的な配置のままで「ユークリッド距離が最小」となる母点の勢力圏を定義するようにしてボロノイ図を作成すると、図4に示すように、平面を埋め尽くす正六角形からなるボロノイ多角形が形成されることになる。もっとも、平面を埋め尽くすことができる多角形としては、六角形の他に、三角形や四角形も存在し、五角形と六角形との組み合わせによっても平面を埋め尽くすことが可能である。そこで、このステップS1の処理では、規則性をもった多数のボロノイ多角形が形成されるように、所定平面上に規則的に母点を配置すれば十分であり、母点配置は、図3に示すような正三角形の頂点位置に限定されるものではない。具体的には、たとえば、平面上に整列させた正方形の頂点位置、天地が交互になるように平面上に並べた二等辺三角形の頂点位置、平面上に整列させた六角形の頂点位置、平面上に整列させた平行四辺形の頂点位置などに母点を配置することもできる。ただ、図3に示すような正三角形の頂点位置に母点を配置すれば、正六角形(円に近い図形)からなるボロノイ多角形が得られるので、動物の皮膚や植物の細胞を表現する上では最も好ましい。
【0043】
続いて、ステップS2において、フラクタル場が用意される。この実施例では、2組の独立した二次元フラクタル格子を、§2で述べた方法で発生させている。そして、ステップS3において、この2組の二次元フラクタル格子を用いた母点の変位が行われる。図19は、この母点変位処理の概念図である。図の上段に示されているXY平面は、ステップS1において、母点が規則的に配置された平面であり、所定の座標値xi,yiで示される位置に配置された母点Mi(xi,yi)が多数定義されている。一方、図の中段に示されている二次元フラクタル格子L1および図の下段に示されている二次元フラクタル格子L2は、いずれもステップS2において用意された格子であり、図18に示すように、二次元平面上に行列状に定義された多数の格子点を有し、各格子点には所定のスカラー値が定義されている。前述したように、このスカラー値の分布は、自己相似的になっている。なお、図18に示されている二次元フラクタル格子は、5行5列の25個の格子点しかもたない非常に小さな格子であるが、実際に用いる二次元フラクタル格子L1,L2は、より多数の格子点をもち、少なくともXY平面上に定義された母点Miの密度と同程度の密度で格子点が定義されている必要がある。したがって、ステップS2では、ステップS1で定義した母点密度を考慮して、十分な格子点密度をもった大きさの二次元フラクタル格子を用意する必要がある。
【0044】
ステップS3の母点変位処理は、XY平面上に定義された母点Mi(xi,yi)を、XY平面上において、X軸方向に変位量Δxだけ移動させ、Y軸方向に変位量Δyだけ移動させ、変位処理後の母点Mi(xi+Δx,yi+Δy)を得る処理である。ここで、変位量Δx,Δyは、図19に矢印で示すように、母点Miの位置座標(xi,yi)に対応する格子点に基づいて決定される。すなわち、変位量Δxは、二次元フラクタル格子L1の位置座標(xi,yi)に対応する位置に配置された格子点Q1iのもつスカラー値S1に基づいて決定され、変位量Δyは、二次元フラクタル格子L2の位置座標(xi,yi)に対応する位置に配置された格子点Q2iのもつスカラー値S2に基づいて決定される。このように、二次元フラクタル格子L1,L2は、いずれもそれ自身はスカラー値を与えるフラクタル場であるが、二次元フラクタル格子L1はX軸方向の変位量Δxを示し、二次元フラクタル格子L2はY軸方向の変位量Δyを示す、というように方向性を定義することにより、ベクトル場の表現が可能になる。なお、この実施例では、各格子点に定義されたスカラー値S1,S2をそのままΔx,Δyの値として用いている。別言すれば、母点の変位量としてそのまま用いるのに適当なスカラー値をもった二次元フラクタル格子が得られるように、ステップS2の過程において、初期条件および最大半振幅値Tを設定しておくことになる。
【0045】
図20は、このステップS3の母点変位処理の手順を詳細に示した流れ図である。まず、ステップS31において、1つの母点Mi(xi,yi)を選択し、ステップS32において、選択した母点Miの座標(xi,yi)を抽出する。そして、ステップS33において、第1の二次元フラクタル格子L1内の座標(xi,yi)に近接する格子点Q1iを決定し、この格子点Q1iのもつスカラー値S1を抽出する。同様に、ステップS34において、第2の二次元フラクタル格子L2内の座標(xi,yi)に近接する格子点Q2iを決定し、この格子点Q2iのもつスカラー値S2を抽出する。そして、ステップS35において、母点Miの新座標(xi´,yi´)を、xi´=xi+S1、yi´=yi+S2なる演算によって求め、変位後の母点Mi(xi´,yi´)を得る。結局、図21に示すように、選択された母点Mi(xi,yi)は、X軸方向にΔx(=S1)、Y軸方向にΔy(=S2)だけ図の矢印の方向に移動し、変位後の母点Mi(xi´,yi´)が得られることになる。以上の処理を、全母点が選択されるまで、ステップS36からステップS31へと戻ることにより繰り返し実行する。
【0046】
なお、上述の実施例では、格子点から得たスカラー値S1,S2をそれぞれX軸方向の変位量ΔxおよびY軸方向の変位量Δyとして用いて母点Miの変位を行っているが、母点Miのもとの位置を原点とした極座標値として、スカラー値S1,S2を用いるようにしてもよい。すなわち、図22に示すように、母点Mi(xi,yi)の位置を原点として極座標系を定義し、変位後の母点Mi(xi´,yi´)の位置を極座標値(r,θ)で表わすことにする。そして、二次元フラクタル格子L1から得たスカラー値S1および二次元フラクタル格子L2から得たスカラー値S2を、それぞれr=S1、θ=S2として用いるのである。この場合、二次元フラクタル格子L1のもつフラクタル場は変位量に自然なゆらぎを与える役目を果たし、二次元フラクタル格子L2のもつフラクタル場は変位方向に自然なゆらぎを与える役目を果たすことになる。
【0047】
こうして、XY平面上に定義したすべての母点Miについての変位が完了したら、図6に示す流れ図の最後の段階、すなわち、ステップS4におけるボロノイ図の作成が行われる。この実施例では、「任意の点をユークリッド距離が最も小さい母点の勢力圏に所属させる」という条件によりボロノイ図を作成している。図7に示す不定形セルパターンは、二次元フラクタル格子を用いて変位させた母点について、このような条件で作成したボロノイ図のパターンである。このパターンを構成する個々のセルは、フラクタル場に基づく揺らぎをもって分布した核を有しており、この核に対して生成されたボロノイ図により不定形セルが表現されていることになる。
【0048】
なお、特定の配置をもった多数の母点に基づいてボロノイ図を作成するための条件としては、上述の実施例では、「ユークリッド距離が最小」という条件を用いていた。通常、「ボロノイ図」と言えば、このように「ユークリッド距離が最小」という条件を用いて作成されたものを指すのが一般的であるが、本発明では、ボロノイ図を作成するための条件として、この他にも種々の条件を設定することができる。たとえば、図23に示すXY座標系では、母点Mと任意の点Pとの間の「ユークリッド距離」は、(dx+dy1/2で表わされるが、この「ユークリッド距離」の代わりに、たとえば、(k1・dx+k2・dy1/2で表される特殊な距離を定義し、「この特殊な距離が最小」という条件を設定してもよい。この場合、パラメータk1,k2の値を変えることにより、いろいろ異なるボロノイ図を得ることができる。
【0049】
あるいは、「四隣接距離」あるいは「八隣接距離」なるものを定義し、「この隣接距離が最小」という条件を設定してもよい。ここで、「四隣接距離」あるいは「八隣接距離」は、次のような距離をいう。いま、図24(a) に示すような画素配列を定義し、中央の画素Pに対して、その上下左右に隣接するハッチングを施して示す4個の画素を「四隣接画素」と呼ぶことにする。同様に、図24(b) に示すような画素配列を定義し、中央の画素Pに対して、その上下左右および斜めに隣接するハッチングを施して示す8個の画素を「八隣接画素」と呼ぶことにする。ここで、図25に示すような画素配列を考えれば、画素M(図23の母点Mに対応)と画素P(図23の点Pに対応)との間の「四隣接距離」は、「必ず四隣接画素のいずれか1つに移動する、という移動条件に従って画素Pから画素Mへ到達するために必要な最小移動回数」として定義され、同様に、画素Mと画素Pとの間の「八隣接距離」は、「必ず八隣接画素のいずれか1つに移動する、という移動条件に従って画素Pから画素Mへ到達するために必要な最小移動回数」として定義される。この図25に示す例では、画素Pと画素Mとの間の「四隣接距離」は8となり、「八隣接距離」は5となる。
【0050】
この他にも種々の条件でボロノイ図を作成することが可能である。要するに、本明細書における「ボロノイ図」とは、母点の空間的な勢力圏を何らかの形で数学的に定義することにより得られる勢力分布図であれば、どのような定義によって得られたものでもかまわない。数学的には、たとえば、「裁口ボロノイ図」、「最遠点ボロノイ図」、「円のボロノイ図」など種々のボロノイ図が知られている。また、これまで説明してきたボロノイ図は、いずれも二次元平面上に定義された勢力分布図であったが、三次元空間もしくはそれ以上の多次元空間に定義された勢力分布図を用いてもかまわない。たとえば、ステップS1において、三次元空間内に母点配置を行い、ステップS2において、三次元フラクタル格子を3組用意し、この3組の三次元フラクタル格子によって各軸方向の変位量Δx,Δy,Δzを決定して変位を行えば、この三次元空間内に分布した母点に基づいて三次元ボロノイ図を作成することができる。この三次元ボロノイ図を二次元平面に投影すれば、二次元の不定形セルパターンが生成できる。
【0051】
§4. 不定形セルパターンの生成装置
図26は、この実施例に用いる装置構成を示すブロック図である。ここでは説明の便宜上、個々の機能ごとに異なるブロック構成要素として示してあるが、実際には、これらの各構成要素は、コンピュータハードウエアおよびソフトウエアの有機的な結合により実現される。
【0052】
パラメータ入力手段1は、他の手段における処理で利用される種々のパラメータを入力するための装置であり、最終的に生成すべき不定形セルパターン画像のサイズ、母点の数、母点の初期配置パターン(ステップS1における規則的配置を決めるためのパターン)、母点の変動量(ステップS3における変位処理による最大変位量)などのパラメータが入力される。乱数発生手段2は、たとえば、一様分布の乱数を発生させる装置で、ここで発生させた乱数はフラクタル場を発生させる際に利用される。母点配置手段3は、パラメータ入力手段1によって入力された画像のサイズ、母点の数、母点の初期配置パターンに基づいて、個々のセルの核となるべき多数の母点を規則的に配置する機能を有する。たとえば、画像のサイズとして所定の縦横寸法が入力され、母点の数:28、母点の初期配置パターン:正三角形の頂点位置、というパラメータが入力されていた場合、この母点配置手段3によって、図3に示すような母点の規則的配置が得られることになる。
【0053】
一方、フラクタル場発生手段4は、パラメータ入力手段1によって入力されたパラメータに基づいて、空間的に自己相似的なベクトルを表現することができるフラクタル場を発生させる装置であり、乱数発生装置2で発生させた乱数を用いて、たとえば、図18に示すような二次元フラクタル格子が発生されることになる。ここで、最終的に得られる格子点の密度や数は、パラメータとして入力された画像のサイズや母点の数に基づいて決定され、最大半振幅値Tはパラメータとして入力された母点の変動量に基づいて決定される。
【0054】
母点変位手段5は、母点配置手段3によって規則的に配置された多数の母点のそれぞれを、フラクタル場発生手段4で発生したフラクタル場を用いて変位させる処理を行う手段であり、ボロノイ図作成手段6は、変位後の母点に対するボロノイ図を作成する処理を行う手段である。これらの各処理の内容は、既に述べたとおりである。こうして、ボロノイ図が作成されると、パターン出力手段7によって、このボロノイ図によって示されている不定形セルパターンが出力される。コンピュータグラフィックス用のテクスチャパターンとして利用するのであれば、コンピュータの外部記憶装置へデジタルパターンデータとして出力することになるし、印刷物として利用するのであれば、コンピュータから刷版装置などへ出力し、印刷工程を行えばよい。
【0055】
このように、パラメータ入力手段1によって種々のパラメータ設定を行うことができるような構成にしておけば、魚類の鱗、爬虫類の皮膚、植物の繊維質など、生成したい不定形セルパターンの種類に応じて適宜パラメータ設定を変更することにより、最適なパターンの生成が可能になる。
【0056】
なお、本発明によって生成された不定形セルパターンは、いわゆる平面的な画面表示や印刷物に利用されるだけではなく、立体的な印刷(たとえば、エンボス加工)にも利用することができる。本明細書における「印刷」なる文言は、いわゆる「エンボス加工」といった立体加工をも含む意味で用いており、「印刷物」なる文言は、「立体的な印刷物」ともいうべきエンボス加工品をも含む広い意味で用いている。
【0057】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、動植物に特有な「流れ」の要素を表現することができ、生命感のある不定形セルパターンを生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平面上に6個の母点M1〜M6を定義した状態を示す図である。
【図2】図1に示す各母点の勢力圏を示すボロノイ多角形を示す図である。
【図3】平面を埋め尽くす正三角形の各頂点として規則的な母点Miを定義した例を示す図である。
【図4】図3に示すように規則的に配置された母点Miに基づいて作成されたボロノイ図を示す図である。
【図5】従来のボロノイ図を用いた手法により得られた不定形セルパターンの一例を示す図である。
【図6】本発明に係る不定形セルパターンの生成方法の基本手順を示す流れ図である。
【図7】本発明に係る手法により得られた不定形セルパターンの一例を示す図である。
【図8】一次元フラクタル格子を発生させる第0段階の状態を示す図である。
【図9】一次元フラクタル格子を発生させる第1段階の状態を示す図である。
【図10】一次元フラクタル格子を発生させる第2段階の状態を示す図である。
【図11】一次元フラクタル格子を発生させる第0段階において、各格子点に定義された具体的なスカラー値を示す図である。
【図12】一次元フラクタル格子を発生させる第1段階において、各格子点に定義された具体的なスカラー値を示す図である。
【図13】一次元フラクタル格子を発生させる第2段階において、各格子点に定義された具体的なスカラー値を示す図である。
【図14】5つの格子点からなる一次元フラクタル格子において、各格子点に定義された具体的なスカラー値を示す図である。
【図15】多数の格子点からなる一次元フラクタル格子の自然なゆらぎを示すグラフである。
【図16】二次元単位フラクタル格子を発生させる第0段階の状態を示す図である。
【図17】二次元単位フラクタル格子を発生させる第1段階の状態を示す図である。
【図18】二次元単位フラクタル格子を発生させる第2段階の状態を示す図である。
【図19】図6のステップS3に示す母点変位処理の概念図である。
【図20】図6のステップS3の母点変位処理の手順を詳細に示した流れ図である。
【図21】XY直交座標系におけるX軸方向の移動量ΔxとY軸方向の移動量Δyとを用いて母点Miを変位した例を示す図である。
【図22】rθ極座標系における距離rと角度θとを用いて母点Miを変位した例を示す図である。
【図23】ボロノイ図を作成する際に定義する母点Mと任意の点Pとの間の距離の定義方法の一例を示す図である。
【図24】所定の画素Pに対する「四隣接画素」および「八隣接画素」を示す図である。
【図25】「四隣接距離」あるいは「八隣接距離」を説明するための図である。
【図26】本発明の一実施例に係る装置構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…パラメータ入力手段
2…乱数発生手段
3…母点配置手段
4…フラクタル場発生手段
5…母点変位手段
6…ボロノイ図作成手段
7…パターン出力手段
Hi…正六角形状のボロノイ多角形
L1,L2…二次元フラクタル格子
M1〜M6,Mi…母点
P…任意の点
Q1i、Q2i…フラクタル格子の格子点
S1,S2…フラクタル格子で定義されたスカラー値
XY…XY平面
xi,yi…座標値
Δx,Δy…変位量
dy,dy…距離

Claims (6)

  1. 多数の不定形セルからなるパターンを生成する方法であって、
    コンピュータが、個々のセルの核となるべき多数の母点を規則的に配置する第1の段階と、
    コンピュータが、空間的に自己相似的なベクトルを表現することができるフラクタル場を用意する第2の段階と、
    コンピュータが、前記多数の母点を前記フラクタル場を用いてそれぞれ変位させる第3の段階と、
    コンピュータが、変位後の母点に対するボロノイ図を作成する第4の段階と、
    を有し、前記ボロノイ図に基づいてパターンを生成することを特徴とする不定形セルパターンを生成する方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、
    第1の段階で、母点を二次元平面上に配置し、
    第2の段階で、所定のスカラー値を自己相似的に二次元平面上の各格子点に定義した二次元フラクタル格子を用意し、
    第3の段階で、母点が配置された平面上に前記二次元フラクタル格子を重ね、各母点と各格子点との相互位置関係に基づいて、各母点に特定の格子点を対応づけ、対応する格子点に定義されたスカラー値に基づいて各母点を所定方向に変位させることを特徴とする不定形セルパターンを生成する方法。
  3. 請求項2に記載の方法において、
    第1の段階で、母点をXY平面上に配置し、
    第2の段階で、2つのそれぞれ独立した二次元フラクタル格子を用意し、
    第3の段階で、各母点を、第1の二次元フラクタル格子の格子点に定義されたスカラー値に基づいてX軸方向に移動させ、第2の二次元フラクタル格子の格子点に定義されたスカラー値に基づいてY軸方向に移動させることを特徴とする不定形セルパターンを生成する方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、
    第1の段階で、三角形、四角形もしくは六角形からなるボロノイ多角形が形成されるように、所定平面上に規則的に母点を配置することを特徴とする不定形セルパターンを生成する方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、
    第4の段階で、任意の点をユークリッド距離が最も小さい母点の勢力圏に所属させることによりボロノイ図を作成することを特徴とする不定形セルパターンを生成する方法。
  6. 多数の不定形セルからなるパターンを生成する装置であって、
    所定のパラメータを入力するパラメータ入力手段と、
    乱数を発生させる乱数発生手段と、
    個々のセルの核となるべき多数の母点を前記パラメータに基づいて規則的に配置する母点配置手段と、
    空間的に自己相似的なベクトルを表現することができるフラクタル場を前記パラメータに基づいて発生させるフラクタル場発生手段と、
    前記多数の母点を前記フラクタル場を用いてそれぞれ変位させる母点変位手段と、
    変位後の母点に対するボロノイ図を作成するボロノイ図作成手段と、
    前記ボロノイ図に基づいてパターンを生成し、これを出力するパターン出力手段と、
    を備えることを特徴とする不定形セルパターンを生成する装置。
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