JP3885625B2 - 自動受信利得制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バースト波を取り扱う時分割複信(TDD)型無線機の自動受信利得制御のための方法及びその方法を実現するための回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の、バースト波を取り扱うTDD型無線機の自動受信利得制御(AGC; Automatic Gain Control)の方法は、下記の通りであった。
【0003】
A) バースト波の受信電力を連続的にサンプリングする。
B) サンプリング結果に基づき受信電力レベルの値判定を行い、標準となる受信電力レベルとの比較結果を後段の回路への出力レベルに即時帰還する(レベルの増幅または抑圧)(定常状態)。
C) 従ってフェージングや降雨などが発生し受信電力レベルが低下した場合、後段の回路への出力レベルも低下するが、A)、B)の処理により定常状態と同様に戻る。
D) またフェージングや反射波などにより受信電力レベルが上昇した場合、後段の回路への出力レベルも上昇するが、A)、B)の処理により、後段の回路への出力レベルは定常状態に戻る。
【0004】
従来のTDD型無線機のAGC回路技術においては、移動無線通信などの、刻々と伝搬状態が変化する環境に対応するために、高速サンプリングと即時帰還形AGC回路を無線機に具備する必要があった。
【0005】
しかしながら無線機に、所望の電波と区別のつかない過大なレベルの干渉波(他の無線機からのバースト波)が入力した場合、バースト型干渉波のレベルを補償するためのレベル抑圧動作がAGC回路に働き、干渉波と次の所望のバースト波の受信電力レベル差が大きいときには、AGC回路の所要動作量も大きくなり、AGC回路は追従できなくなる(無線機の振幅検出系が不安定になる)おそれがあった。またその結果最悪の場合通信が遮断されるおそれもあった。
【0006】
これを回避するためには、より広いレンジを高速に動作可能なAGC回路が要求され、実現性やコストに問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を改善するもので、その目的は過大なレベルの干渉波が入力しても良好に動作する自動受信利得制御方法及び装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、無線機の受信電力レベルを移動平均化処理して得たレベルとあらかじめ設定された値との差分に従って自動的に受信利得を制御する方法であって、この移動平均化処理が、受信電力レベルをディジタル信号に変換するA/D変換ステップと、所定の期間である最大値抽出ブロックにおけるA/D変換の出力の最大値を保持するステップと、複数の最大値抽出ブロックにおける最大値の平均値により平均受信電力レベルを決定するステップとを有することにある。
【0010】
本発明の別の特徴は、無線機の受信電力レベルを検出する受信電力レベル検出回路と、該検出回路の出力をディジタル信号に変換するA/D変換器と、該A/D変換器の出力の所定の期間である最大値抽出ブロック毎の最大値を保持する最大値保持回路と、複数の前記最大値抽出ブロックにおける前記最大値の平均をとり平均受信電力レベルを決定する平均化処理回路と、該平均受信電力レベルとあらかじめ設定された値との差分を決定する受信電力レベル判定回路とを有し、該差分に従って可変増幅器の利得を制御する自動受信利得制御装置にある。
【0011】
本発明によると、AGC回路は、一定時間間隔で受信電力レベルをサンプリングする。AGC回路はサンプリングされた受信電力レベル群について、ある範囲(最大値抽出ブロック)の中で最大値を決定・抽出し、更に複数の最大値抽出ブロック間(平均化ウィンドウ)で最大値の単純移動平均法(移動平均処理)を適用し、(あらかじめ設定されておいた)標準受信電力レベルとの差分を計算することによりAGC回路の動作範囲を決定する。
【0012】
本発明を使用すれば、高いレベルのバースト型干渉波の入力を受けても、単純移動平均法(移動平均処理)による判定受信電力レベルの平滑化が行われるため、AGC回路の動作量は、本発明を適用しない場合に比較して少なくて済む。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のアルゴリズムの動作原理を示す。
【0014】
無線機からの入力(a)は検波回路を通じてAGC回路に入力される(b)。検波出力に対し常に定時間間隔でサンプリングを実施し(c)、サンプリング結果(受信電力レベル)について最大値保持(MAX HOLD)型の処理(d)を行う。MAX HOLD型処理の実施結果は最大値抽出ブロックの終端において抽出され、メモリに蓄積される。一定数の最大値抽出ブロック(平均化ウィンドウ)において蓄積された複数の(受信電力レベルの)最大値について単純平均法(移動平均処理)を適用(e)し、平均受信電力レベルを決定する(f)。この平均受信電力レベルと(あらかじめ設定されておいた)標準受信電力レベルの差分を計算し、AGC回路の動作量を決定する。
【0015】
なお、図1の無線機入力(a)で、10,11,12,13は所望のTDMバーストを示し、10a,11a,12aは干渉波入力を示す。
【0016】
図1の動作▲1▼〜▲6▼は次のとおりである。
【0017】
▲1▼:干渉波の入力によりブロック内の最大値が上昇。
▲2▼:所望のTDMバーストによりブロック内の最大値が上昇。
▲3▼:レベルの高い干渉波の入力によりブロック内の最大値が更に上昇。
▲4▼:所望のTDMバーストが入力するが、▲3▼での干渉波の入力レベルより低いレベルであるため、最大値は上昇しない。
▲5▼:ブロックの終わりで最大値を読み込み、メモリに蓄積後、消去。
▲6▼:蓄積された最大値は平均化ウィンドウの中で単純平均法(移動平均処理)を実施し、平均受信電力レベルを決定。その後、標準受信電力レベルと差分を計算し、AGC回路の動作量とする。
【0018】
図2に、本発明のアルゴリズムを用いた移動平均処理例を示す。TDMフレーム長は1.024msecとし、サンプリング間隔は1μsec、最大値抽出ブロック長は2msecであり、10の最大値抽出ブロック毎に移動平均処理を実施することとした。すなわち移動平均処理は例えば、図中の“AVR_1”の場合は“MAX_1”から“MAX_10”までを単純平均し、“AVR_2”の場合は“MAX_2”から“MAX_11”までを単純平均するものである。また無線機(子局)は、下りバースト受信時は-48〜-50dBmの範囲で所望波を受信し、上りバースト送信時間においては、-55〜-70dBmの範囲で電波が受信されるものとし、およそ1平均化ウィンドウあたりに3回程度の干渉波の入力(-35〜-40dBmの範囲)があるものとした。
【0019】
この図において所望波の受信レベルと干渉波の受信レベルには最大15dBの差が存在するが、本発明のアルゴリズムによる平均化結果の相対的変動(隣接する平均化ウィンドウ間での平均化結果の差)は1dBである。すなわち従来の技術(即時帰還形)ではAGC回路に対し1サンプリング間隔である1μsecで15dBの動作量が要求されるが、本発明のアルゴリズムを使用することにより、2msecで1dBの動作量で済むため、過大なレベルのバースト型干渉波を受信したときのAGC回路に求められる動作量が低減されていることが分かる。
【0020】
図3は、本発明のアルゴリズムを実現した回路の例であり、時分割多重通信(TDM)方式を採用した1対多方向(Point-to-Multipoint)型無線方式の子局を例に取って、本発明の一実施形態を示したブロック図である。
【0021】
無線機10は、送信系20と受信系30を有する。
【0022】
入力信号はハイブリッド回路40を介して送信系回路20に印加され、増幅器(21,23)により増幅され、ミキサー22により周波数変換される。送信系回路20の出力は送/受切替スイッチ44を介してアンテナ46に印加され空中に発射される。
【0023】
アンテナ46で受信した電波は、送受切替スイッチ44を介して受信系回路30に印加される。受信系回路30は低ノイズ増幅器(LNA)31、ミキサ32、増幅器33を有し、ミキサ32により周波数変換された受信信号はハイブリッド回路40を介して出力信号として取り出される。送信系と受信系の動作の切替は、切替制御信号により送/受切替スイッチ44と局部発振器/切替部42を切替えることにより行われる。
【0024】
受信電力レベル検出回路51は、アンテナやLNA(低雑音増幅器)31等を通じて受信した電力レベルを検出するものである。
【0025】
受信電力レベル検出回路51からの出力はアナログ→ディジタル変換器(A/D変換器)52を通じてサンプリング(量子化)され、最大値保持(MAX HOLD)回路53に出力される。
【0026】
MAX HOLD型処理回路53では最大値抽出ブロック(あらかじめ定められた複数のTDMバースト単位)の終端において最大値が抽出され、平均化処理回路54に出力される。
【0027】
平均化処理回路54に入力された最大値はメモリに蓄積され、あらかじめ定められた複数の最大値抽出ブロックからなる平均化ウィンドウ単位で、蓄積された最大値について単純平均法(移動平均処理)を適用し、平均受信電力レベルを決定すると、受信電力レベル判定回路55に出力される。また平均受信電力レベルの決定・出力後は、最大値はリセット・消去される。
【0028】
受信電力レベル判定回路55には、あらかじめ設定された標準受信電力レベルが記憶されており、平均化処理回路54からの入力信号(平均受信電力レベル)との差分を判定(0、正または負の値)し、その差をAGC制御回路56に出力する。
【0029】
AGC制御回路56は、受信電力のための可変増幅器の制御を行うためのものであり、受信電力レベル判定回路55からの入力信号(差分)に基づき、可変増幅器33の増幅量を制御する。
【0030】
このように非常に簡素な回路で、本発明を実施可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように本発明をAGC動作に適用することにより、バースト型干渉波の入力を受けた場合でも、時間軸上における判定受信電力レベルの差が小さくなり、単位時間内におけるAGC回路への所要動作量が小さくなる(単純平均法(移動平均処理)を適用する範囲の時間で動作すれば良い)という利点がある。
【0032】
また固定無線通信方式においては、伝搬路環境が非常に安定していることからもともと高速なAGC回路は不要であるが、比較的低速のAGC回路を使用したとしても、過大なレベルのバースト型干渉波の入力があった場合、AGC回路への所要動作量が大きくなることには変わりがない。しかしながら本発明のアルゴリズムを適用すれば、過大なレベルのバースト型干渉波のAGC回路動作量への影響を低減することが可能であり、その結果比較的小さな動作量のAGC回路の適用が可能になるため、固定無線通信方式への導入にも大きな利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動作原理を示す図である。
【図2A】本発明を用いた移動平均処理例である。
【図2B】本発明を用いた移動平均処理例である。
【図3】本発明の一実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 無線機
20 送信系
30 受信系
33 可変増幅器
51 受信電力レベル検出回路
52 A/D変換器
53 MAX HOLD回路
54 平均化処理回路
55 受信電力レベル判定回路
56 AGC制御回路
Claims (2)
- 無線機の受信電力レベルを移動平均化処理して得たレベルとあらかじめ設定された値との差分に従って自動的に受信利得を制御する方法であって、
前記移動平均化処理が、前記受信電力レベルをディジタル信号に変換するA/D変換ステップと、所定の期間である最大値抽出ブロックにおけるA/D変換の出力の最大値を保持するステップと、複数の前記最大値抽出ブロックにおける前記最大値の平均値により平均受信電力レベルを決定するステップとを有することを特徴とする自動受信利得制御方法。 - 無線機の受信電力レベルを検出する受信電力レベル検出回路と、
該検出回路の出力をディジタル信号に変換するA/D変換器と、
該A/D変換器の出力の所定の期間である最大値抽出ブロック毎の最大値を保持する最大値保持回路と、
複数の前記最大値抽出ブロックにおける前記最大値の平均をとり平均受信電力レベルを決定する平均化処理回路と、
該平均受信電力レベルとあらかじめ設定された値との差分を決定する受信電力レベル判定回路とを有し、
該差分に従って可変増幅器の利得を制御することを特徴とする自動受信利得制御装置。
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