JP3885134B2 - 転写活性化因子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は転写活性化因子、より詳細には、該因子が遺伝子に挿入された場合に、その挿入された周辺ないしは近傍に位置する遺伝子の転写を促進するか若しくは該遺伝子の転写が不活性化されるのを抑制する性質を有する因子に関する。さらに本発明は、当該転写活性化因子を含有するトランスジェニック植物に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子操作において、従来、高等生物への遺伝子の導入のほとんどは、原核生物におけるプラスミドに相当するものがないため、核ゲノム挿入型の遺伝子導入である。
【0003】
かかる核ゲノム挿入型の遺伝子導入には、挿入する所望の遺伝子を結合したベクターを、パーティクル・ガン法,リポフェクション法及びエレクトロポレーション法などによって高等生物の核ゲノムに導入する物理的方法と、前記ベクターをウイルス又は微生物に一旦導入して、そのウイルスもしくは微生物が有しているDNA移送・挿入系を利用して高等生物の核ゲノムに導入する生物的方法とがある。
【0004】
しかし、これら物理的方法及び生物的方法はいずれも、高等生物に挿入された遺伝子の発現活性が個体ごとに異なり一定しないという問題がある。この原因の多くは、位置効果(position effect)によるサイレンシングである(Peach ら,Plant. Mol. Biol. 17 : 46-60 (1991)) 。かかる位置効果は酵母を始めとする多くの真核生物に見られる現象であり、挿入された遺伝子そのものの塩基配列は全く変わっていないにもかかわらず、その遺伝子が染色体上のどの位置に挿入されるかによってその発現活性が大きく変わってしまい、場合によってはその遺伝子の発現が不活性化(ジーン・サイレンシング)されてしまう現象である(細胞の分子生物学,Molecular Biology of the Cell,第3版,434-435(1995))。
【0005】
かかるジーン・サイレンシング現象に基づいて、高等生物における核ゲノム中の遺伝子はすべてが均一に転写されるわけではないこと、活発に転写されている遺伝子領域(活性化領域(active site))と全く転写されていない遺伝子領域(不活性化領域(cryptic site ))とが混在していることが報告されている。不活性化領域に挿入された遺伝子は、転写に必要とされるタンパク質が全くアプローチできないためか、またはこの領域においてはゲノムDNAのメチル化が生じてヌクレオソーム構造が変化したり、ヘテロクロマチン化するために、全く転写が起こらず、結果として遺伝子発現の不活性化(ジーン・サイレンシング)が生じていることが知られている(Ngら、Curr.Opin.Genet.Dev.,9:158-163(1999);Matzkeら、Curr.Opin.,Plant Biol.1:142-148(1999))。
【0006】
また、このジーン・サイレンシングは、X染色体に見られるように、同一生物体の中でも細胞の分化状態によって異なることが知られている。さらに、現在のところ未解明の機構によってジーン・サイレンシングが生じると、それはその個体でのみならず、交配によって生じた次世代の子孫にまで伝達されることが知られている(細胞の分子生物学,Molecular Biology of the Cell,第3版,434-453(1995))。
【0007】
ところで、遺伝子操作において、所望の遺伝子(外来遺伝子)を、ジーン・ノックアウト法で用いられる相同組み換え法を除く、物理的方法もしくは生物的方法のいずれかの方法で高等生物細胞に導入した場合、その遺伝子が細胞の核ゲノムのどの領域に挿入されるかは細胞ごとに全く異なり、またそれを人為的に制御することはほぼ不可能である。このため、外来遺伝子を高等生物細胞に導入すると、外来遺伝子を核ゲノムの活性化領域に含む細胞と不活性化領域に含む細胞とが不確定に形成されることになる。
【0008】
外来遺伝子が不活性化領域に挿入されると、その領域の不活性な場の影響を受けるために、外来遺伝子の発現が著しく低下・消失してしまうことが知られており、また活性化領域に外来遺伝子が挿入された場合であってもジーン・サイレンシングによって外来遺伝子の発現が細胞***を繰り返して生長が進むにつれ不安定化し、低下していくことが知られている(Peach ら,Plant Mol. Biol. 17 : 46-60 (1991)) 。
【0009】
外来遺伝子の発現が不活性になる原因として主として考えられているのは、核DNAの染色体内での構造である。その核DNAの構造に関与している因子としては、MAR(matrix attachment region,SAR(scaffold attachment region)とも呼ばれる)配列がある。これは核ゲノムDNAを核マトリクスにアンカーする配列として見い出されたものである。動物において、MARを含むニワトリのAエレメントを挿入したい外来遺伝子に結合して遺伝子導入した時、挿入した外来遺伝子の発現が上昇することが示された(Stief ら,Nature 341 : 343-345 (1989)) が、その後の研究(Bonifer ら,Nucleic Acids Res. 22:4202-4210 (1994),Poljak ら,Nucleic Acids Res.22:4386-4394 (1994)) によって、MARは遺伝子の発現効率の上昇に寄与するが、それ単独では位置効果を打ち消さないことが明らかになった。植物においても、形質転換体を用いてMARの効果を調べる研究が行われているが、再現性のある結果は得られておらず、MAR単独では位置効果を打ち消すことができるとは考えられていない(飯,植物のゲノムサイエンス 153-160 (1996)、秀潤社) 。
【0010】
現在、遺伝子組み換え食品として遺伝子組み換え植物が開発されている。しかし、そこで克服すべき最も重要な問題は、前述するように、外来遺伝子の発現不活性化をもたらすジーン・サイレンシング現象である。遺伝子組み換え植物の開発においては、ジーン・サイレンシング現象を回避するために、非常に数多くの植物個体の中からジーン・サイレンシングをなるべく引き起こさない位置に外来遺伝子が挿入された植物個体を選抜すること、さらに長年にわたって交配を繰り返してもジーン・サイレンシングを起こらない植物個体を選抜することが必要とされている。このため、このような選抜には数多くの植物個体を育て且つ何代も交配を重ねなくてならないことから、多大なる労力と時間がかかるだけでなく、広い土地が必要であるという土壌面積上の問題がある。
【0011】
このため、ジーン・サイレンシングを回避する他の戦略として、位置効果によるジーン・サイレンシングを抑制するか、挿入された外来遺伝子自身の転写を活性化する方法、具体的にはかかる性質のいずれかを有する所謂「転写活性化因子」を開発することが、植物の遺伝子組み換えにおいて最も重要かつ早急な課題となっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、位置効果によるジーン・サイレンシングという遺伝子不活性化現象を抑制する性質を有するか、またはその近傍若しくは周辺領域に位置する遺伝子の転写を活性化する性質を有する、所謂「転写活性化因子」を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく日夜鋭意研究を重ねていたところ、植物のゲノムDNAに導入した外来遺伝子の近傍若しくは周辺領域に可動性因子を挿入することによって、位置効果によるジーン・サイレンシング現象が有意に抑制されることを見出し、さらに、当該ジーン・サイレンシング抑制効果によるか若しくは上記可動性因子によって外来遺伝子の転写が活性化されることによって、該外来遺伝子の発現が増強されることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づいてさらに研究を重ねることにより、さらに上記可動性因子を植物の遺伝子組み換え用ベクターに組み込むことによって構築されたベクターが、位置効果によるジーン・サイレンシング現象を有意に抑制し得る、外来遺伝子の発現用カセットとして極めて有用なものであることを確信した。
【0014】
本発明は、これららの知見に基づいて完成されたものである。
【0015】
すなわち、本発明は下記に掲げるMITE様因子及び転写活性因子である:
項1.下記(a)のDNAからなるMITE様因子:
(a)配列番号1の塩基配列からなるDNA。
項2.下記(a)又は(b)のDNAからなるMITE様因子を可動性因子として含むことを特徴とする転写活性化因子:
(a)配列番号1の塩基配列からなるDNA
(b)(a)のDNAと塩基配列において90%以上のホモロジーを有する
−2kb以下のDNAであって、
−5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全若しくは不完全な逆反復配列を有し、
−当該両末端領域に位置する末端逆反復配列中、または両方の末端逆反復配列に挟まれた中間領域中に、式(1):XttgcaaY(式中、Xはg又はtを、Yはa又はcを示す)、または式(2):Zatgcaa(式中、Zはt又はaを示す)で示される塩基配列の少なくとも1つを、連続又は非連続に反復して含有し、
−ゲノム遺伝子の挿入位置において(A)nG(A)n [nは1以上の整数]の重複を引き起こす
MITE様因子をコードするDNA。
項3.可動性因子が、
下記(a)又は(b)のDNAからなるMITE様因子:
(a)配列番号1の塩基配列からなるDNA
(b)(a)のDNAと塩基配列において90%以上のホモロジーを有する
−2kb以下のDNAであって、
−5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全若しくは不完全な逆反復配列を有し、
−当該両末端領域に位置する末端逆反復配列中、または両方の末端逆反復配列に挟まれた中間領域中に、式(1):XttgcaaY(式中、Xはg又はtを、Yはa又はcを示す)、または式(2):Zatgcaa(式中、Zはt又はaを示す)で示される塩基配列の少なくとも1つを、連続又は非連続に反復して含有し、
−ゲノム遺伝子の挿入位置において(A)nG(A)n [nは1以上の整数]の重複を引き起こす
MITE様因子をコードするDNA、及び
下記(c)又は(d)のDNAからなるMITE様因子:
(c)配列番号2の塩基配列からなるDNA
(d)(c)のDNAと塩基配列において90%以上のホモロジーを有する
−1kb以下のDNAであって、
−5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全若しくは不完全な逆反復配列を有し、
−ゲノム遺伝子の挿入位置においてTAの重複を引き起こす
MITE様因子をコードするDNA
のタンデム結合体である項2に記載する転写活性化因子。
項4.可動性因子が配列番号3の塩基配列からなるDNAである項3記載の転写活性化因子。
【0016】
また、本発明は上記に掲げる転写活性化因子を含有する導入遺伝子発現用カセットである。具体的には下記に掲げるカセットを挙げることができる:
項5項2乃至4のいずれかに記載の転写活性化因子、並びに該因子に作動可能に結合したDNA配列を含む、植物における導入遺伝子発現用カセット。
項6.転写活性化因子に作動可能に結合したDNA配列がプロモーター及び/又はターミネーターである項5記載の導入遺伝子発現用カセット。
項7.転写活性化因子に作動可能に結合したDNA配列として、更に発現させる所望の導入遺伝子配列を含む項6記載の導入遺伝子発現用カセット。
【0017】
さらに本発明は、上記に掲げられる転写活性化因子(例えば導入遺伝子発現用カセットとして)を含むプラスミドであり、さらにはかかるプラスミドを利用して転写活性化因子が導入されたトランスジェニック植物に関するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は転写活性化因子に関する。
【0019】
なお、本発明でいう転写活性化因子とは、その因子の近傍乃至は周辺領域に位置する遺伝子群の転写を促進する性質を有する因子、並びにゲノムDNAなどに導入した所望の外来遺伝子が位置効果によってジーン・サイレンシングされて不活性化することを抑制する性質を有する因子を包括するものである。これまでに知られている転写活性化をつかさどる因子は,エンハンサーとして特定の遺伝子のプロモーターの近傍に存在し,当該プロモーターに直接シスに作用することによって転写を活性化するものである。これに対し,本発明の転写活性化因子は,前述するように、プロモーターに対する位置に関係なく、近傍乃至は周辺領域に位置する単一ないしは複数の遺伝子群の転写を促進するものである点で、さらに内在する転写不活性化現象を抑制することによって実質上転写を促進するものを包含する点で、従来の転写活性化因子の概念よりもより広い概念を意味するものである。
【0020】
本発明の転写活性化因子は、1以上の可動性因子を含むことを特徴とするものである。
【0021】
ここで可動性因子は、大きくDNA型(トランスポゾンおよび挿入配列)、RNA型(レトロトランスポゾン)(Berg ら編集,Moblie DNA (1989))、並びにこれらのいずれにも属さないもの、すなわちminiature-inverted repeat transposable element (MITE) (Wessler ら,Curr. Opin. Genet. Dev. 5 : 914-821 (1995)) の3種類に大別される。
【0022】
本発明の転写活性化因子には、可動性因子としてこれらの少なくとも1種を、同一種若しくは異種の別を問うことなく、1以上含有するものがいずれも包含される。好ましくは可動性因子としてMITEを含有するものである。
【0023】
MITEは、Bureauらによって1992年に初めてTourist属として見い出された可動性因子であり(Bureau ら,Plant Cell 4: 1283-1294 (1992)) 、それ以来、植物、昆虫並びに動物のゲノムからも各種のMITEが見い出されている。一般にMITEは、(1) その5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全もしくは不完全な逆反復配列を有する(この点でDNA型可動性因子と類似する。)、(2) その逆反復配列の両末端側に、DNA型可動性因子がゲノムDNAに挿入される際に生じるのと同様に、2塩基対以上の同方向反復配列を有する標的重複配列様の配列が見い出される、及び(3) 大きさが一般的に2kb以下である、といった特徴を有するものとして定義される (Wessler ら,Curr. Opin. Genet. Dev. 5 : 914-821 (1995)) 。
【0024】
本発明においては、可動性因子として、かかる定義の範疇に属するいずれのMITEを用いることができる。
【0025】
中でも好適なMITEとしては、ゲノム遺伝子の挿入位置に(A)nG(A)nの重複をもたらすことを特徴とする可動性因子を挙げることができる(以下、かかるMITEを便宜上「IS2因子」とも称する。)。
【0026】
ここでnは1以上の整数であればよく、特に制限されないが、具体的には2〜6、好ましくは3〜5、より好ましくは4を挙げることができる。かかるIS2因子は、より具体的には、大きさが2kb程度以下、好ましくは0.2〜2kb程度のDNAであり、その5’末端領域及び3’末端領域に互いに逆向きの反復配列(末端逆反復配列)を有するものである。
【0027】
またIS2因子は、他の構造的な特徴として、その塩基配列中に式(1):
XttgcaaY(式中、Xはg又はtを、Yはa又はcを示す)(配列番号4〜7)、または式(2):
Zatgcaa(式中、Zはt又はaを示す)(配列番号8〜9)
で示される塩基配列の少なくとも1つを、連続又は非連続に反復して含有するものである。かかる反復配列の位置及びその数は特に制限はなく、IS2因子の両末端領域に位置する末端逆反復配列中、または両方(5’末端領域、3’末端領域)の末端逆反復配列間に挟まれた中間領域中に含まれていても良い。
【0028】
かかるIS2因子として具体的には、図1に示すように、上記式(1)及び式(2)で示される反復配列を複数、末端逆反復配列間の中間領域中に含み、また式(1)で示される反復配列を複数、末端逆反復配列中に含む構造を有するものを挙げることができる。
【0029】
またIS2因子が有する末端逆反復配列は、両者が互いに厳格に相補的な配列である必要はなく、5’末端領域と3’末端領域とがストリンジェントな条件で互いにハイブリダイズし、その結果、IS2因子が図1に示すようにステム構造となるものであれば足りる。この意味でIS2因子は、末端逆反復配列として完全のみならず不完全な逆反復配列を有するものを包含するものである。
【0030】
本発明で用いられる具体的なIS2因子としては、末端逆反復配列として、5’末端領域に配列番号10の塩基配列を有し、また3’末端領域に配列番号11の塩基配列を有するものを例示することができる。IS2因子としてより具体的には、配列番号1で示す塩基配列を有するものである。なお、IS2因子は、それ自身の機能または活性を実質的に有する機能的同等物であるかぎり、5’または3’末端逆反復配列もしくはこれらの反復配列に挟まれた中間領域に位置する配列において、1つまたは複数のヌクレオチドが置換、付加または欠失していてもよく、本発明で用いられるMITE様因子はかかるMITEの機能的同等物を包含するものである。
【0031】
好ましい機能的同等物としては、配列番号1の塩基配列を有するMITE(IS2因子)の機能または活性(少なくとも本発明でいう転写活性化作用)を実質的に有し、ゲノム遺伝子への挿入位置において(A)nG(A)n [nは1以上の整数]の重複を引き起こし、かつ上記IS2因子(配列番号1)とストリンジェントな条件でハイブリダイズするものを挙げることができる。尚、ストリンジェントな条件としては、1×SSC、0.1%w/w SDS中、50℃以上で1時間の条件を挙げることができる。より具体的には、機能的同等物として、上記IS2因子の機能、特に本発明の転写活性化作用を有するとともに、配列番号1で示されるIS2因子と比べた場合に、塩基配列において70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上のホモロジーを有するものを挙げることができる。
【0032】
また、他の好適なMITEとしては、ゲノム遺伝子への挿入位置にTAの重複をもたらし、かつ末端逆反復配列として5’末端領域に配列番号12の塩基配列を、また3’末端領域に配列番号13の塩基配列を有することを特徴とする可動性因子を挙げることができる(以下、かかるMITEを「IS1因子」ともいう。)。かかるIS1因子としては、具体的には大きさが1kb程度以下、好ましくは100bp〜500bp程度のDNAを挙げることができる。
【0033】
IS1因子として具体的には、図2に示す構造を有するものを例示することができる。より具体的には配列番号2で示される塩基配列を有するものが例示できる。なお、IS1因子は、それ自身の機能または活性を実質的に有する機能的同等物であるかぎり、5’または3’末端逆反復配列もしくはこれらの反復配列に挟まれた中間領域に位置する配列において、1つまたは複数のヌクレオチドが置換、付加または欠失していてもよく、本発明で用いるMITE様因子はかかる機能的同等物を包含するものである。
【0034】
好ましい機能的同等物としては、配列番号2の塩基配列を有するIS1因子の機能または活性(少なくとも本発明でいう転写活性化作用)を実質的に有し、挿入位置においてTAの重複を引き起こし、かつ上記IS1因子(配列番号2)とストリンジェントな条件でハイブリダイズするものを挙げることができる。尚、ストリンジェントな条件としては、前述するように、1×SSC、0.1%w/w SDS中、50℃以上で1時間の条件を挙げることができる。より具体的には、機能的同等物として、上記IS1因子の機能、特に本発明の転写活性化作用を有するとともに、配列番号2で示されるIS1因子と比べた場合に、塩基配列において70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上のホモロジーを有するものを挙げることができる。
【0035】
これらのIS2因子及びIS1因子は、後述するようにニンジンのゲノム、具体的にはニンジンのフェニルアラニンアンモニアリアーゼ遺伝子から本発明者によって新たに見出されたものであり、本明細書の実施例の記載に従って単離・取得することができる。
【0036】
本発明の転写活性化因子は、好適には、前述するIS2因子、IS1因子及びそれらの機能的同等物の少なくとも1つの塩基配列を含むものである。
【0037】
より具体的には、本発明の転写活性化因子としては、▲1▼IS1因子又はその機能的同等物の塩基配列を有するもの、▲2▼IS2因子又はその機能的同等物の塩基配列を有するもの、▲3▼IS1因子若しくはその機能的同等物の塩基配列とIS2因子若しくはその機能的同等物の塩基配列をタンデムに結合してなる塩基配列を有するもの(IS1因子とIS2因子の順は不同)、▲4▼IS1因子(若しくはIS2因子)又はその機能的同等物の塩基配列を任意の塩基配列を介して、IS2因子(若しくはIS1因子)又はその機能的同等物の塩基配列と結合してなる塩基配列を有するもの、などを例示することができる。転写活性化因子として、好ましくはIS2因子若しくはその機能的同等物、IS1因子(若しくはIS2因子)若しくはその機能的同等物とIS2因子(若しくはIS1因子)若しくはその機能的同等物とのタンデム結合体を挙げることができ、後者のものとして具体的には配列番号3に記載する塩基配列を有するものを挙げることができる。
なお、上記▲4▼に掲げる転写活性化因子において、IS1因子とIS2因子(順不同)との間に位置する塩基配列は、本発明の効果を妨げない限り特に制限されず、任意の塩基配列を用いることができる。具体的には、制限はされないが、一例としてニンジンPALプロモーター配列に由来するものを挙げることができる。また、かかる塩基配列は、通常5〜1000bp、好ましくは300〜500bpの塩基長を有することができる。かかる態様の転写活性化因子としては、具体的には配列番号14に掲げる塩基配列を有するものを例示することができる。
【0038】
本発明の転写活性化因子は、植物体に導入する所望の遺伝子配列(導入遺伝子配列(外来遺伝子配列を含む))に作動可能に結合することができ、さらに該導入遺伝子配列を結合した転写活性化因子は、植物機能性プロモーターや植物機能性ターミネーター等の機能性DNA配列に作動可能に結合することができる。
【0039】
なお、本発明において「作動可能に結合する」とは、転写活性化因子が、上記導入遺伝子配列または各種の機能性DNA配列に対して、挿入位置及び方向に係わらず、これらの配列に影響を及ぼし得るに十分な程度に該配列の近傍に位置することを意味する。
【0040】
本発明において、導入遺伝子としては植物中での発現が所望されるDNAを、該植物に対して同種若しくは異種の如何を問わず、挙げることができる。かかる導入遺伝子には、例えばβ−グルクロニダーゼをコードする遺伝子;抗生物質耐性遺伝子;殺虫及び殺菌タンパク質毒素をコードする遺伝子;耐病原菌化合物;過敏応答化合物、例えばペルオキシダーゼ、グルカナーゼ、及びキチナーゼ、並びにフィトアレキシンを合成する遺伝子;農薬、除草剤及び殺菌剤耐性遺伝子;植物酵素(例えばタンパク質、スターチ、糖及び脂肪の含量又はその質に関連した酵素)を合成する遺伝子及びそれらの調節因子遺伝子;植物酵素阻害剤、例えばプロテアーゼ及びアミラーゼ阻害剤に関する遺伝子;植物ホルモン合成に係わる遺伝子;昆虫ホルモン及びフェロモンの合成に係わる遺伝子;医薬及び栄養化合物、例えばβ−カロチンやビタミン合成に係わる遺伝子;並びに植物中に存在するヌクレオチド配列に干渉するアンチセンス転写物質が含まれるが、それらに何ら限定されるものではない(TRANSGENIC PLANT, 第1巻、Academic Press 1993)。
【0041】
また本発明は、前述する転写活性化因子、並びにそれに作動可能に結合してなるDNA配列を含む、植物への適用に適した遺伝子発現用カセットに関する。なお、本発明で遺伝子発現用カセットとは、植物に導入するために用いられるプラスミド並びにそのサブフラグメントを意味する。
【0042】
ここで転写活性化因子に作動可能に結合してなるDNA配列としては、プロモーター又はターミネーター等の機能性DNA配列を挙げることができ、さらに前述する導入遺伝子配列を含めることができる。
【0043】
ここでプロモーターとは、該プロモーターの下流に目的とするタンパク質の構造遺伝子を連結した場合、該タンパク質の植物細胞内における発現を制御する能力を有するDNA配列を包含するものであり、植物の形質転換のために当業界で用いられているあらゆる植物機能性プロモーターが含まれる。従来から植物の形質転換用に多数のプロモーターが用いられており、これらには例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)から単離されるプロモーターである、オクトピンシンターゼ(ocs)プロモーター(L.Comai et al.,1985;C.Waldron et al.,1985)、マンノピンシンターゼ(mas)プロモーター、及びノパリンシンターゼ(nos)プロモーターが含まれる。また、カリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower Mosaic Virus)35Sプロモーターは、双子葉類の形質転換に汎用されているプロモーターであり、本発明においても好適に使用できる。また35Sプロモーターの改変物、例えば2つの並列35Sプロモーター(R.Kay et al.,1987)およびmas−35Sプロモーター(L.Comai et al., 1990)なども用いることができる。さらに、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター(J.Paszkowski et al.,1984;)やゴマノハグサモザイクウイルス由来の34Sプロモーター(M.Sanger et al.,1990)をも含めることもできる。また、植物由来のプロモーターであるアクチン・プロモーター、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット(rbcS)プロモーター等も例示できる。
【0044】
またターミネーターとは、植物細胞内で目的の構造遺伝子を効率よく転写終結させる能力を有するDNA配列を包含するものであり、植物の形質転換のために当業界で用いられているあらゆる植物機能性ターミネーターが含まれる。具体的には、例えばノパリンシンターゼ(nos)ターミネーターを代表的なものとして挙げることができる。
【0045】
本発明の転写活性化因子、または該因子を含む本発明の導入遺伝子発現用カセットは、広く植物一般に対して、導入された遺伝子の該植物内での発現誘導もしくは発現調節に用いることができる。
【0046】
植物としては、特に制限はされないが、特に農業上有用な植物を、単子葉植物と双子葉植物の別なく、挙げることができる。例えば単子葉類には、トウモロコシ、イネ、小麦、大麦、モロコシ、カラス麦、ライ麦、キビ等の穀物類作物、ユリ、ラン、アヤメ、ヤシ、チューリップ、スゲなどの各種観葉植物が含まれる。また双子葉類には、キク、キンギョソウ、カーネーション、モクレン、ケシ、キャベツ、バラ、エンドウ、ポインセチア、ワタ、サボテン、ニンジン、コケモモ、ハッカ、ヒマワリ、トマト、ニレ、オーク、カエデ、ポプラ、ダイズ、メロン、テンサイ、ナタネ、ジャガイモ、レタスなどが含まれる。
【0047】
さらに本発明は、本発明の転写活性化因子、または該因子を含む本発明の導入遺伝子発現用カセットを含むことによって、導入された所望の外来遺伝子の位置効果によるジーン・サイレンシング現象(不活性化現象)が抑制されるか、若しくは外来遺伝子の転写が活性化されてなるトランスジェニック植物を提供するものである。なお、当該トランスジェニック植物には、これら植物の子孫も包含される。
【0048】
なお、ここで「植物」とは、完全な植物体のみならず、例えば葉、種子、球根、さし穂などの植物体の一部を包含する趣旨で用いられ、さらにはプロトプラスト、植物カルス及びメリクロン増殖体などの植物細胞をも包含するものである。
【0049】
かかるトランスジェニック植物を作成する方法は、特に制限されず、当業界で慣用されている任意のDNA導入方法を使用することができる。具体的には、本発明の転写活性化因子、または該因子を含む導入遺伝子発現用カセットを含む発現プラスミドを用いて植物細胞にDNAを導入する方法であり、例えば、アグロバクテリウム法、電気的導入法(エレクトロポーレーション)、パーティクルガン法などの公知の方法を挙げることができる。
【0050】
かくして得られる本発明の転写活性化因子、該因子を含む導入遺伝子発現用カセット、または発現プラスミドを含有する植物細胞は、例えば、S.B.Gelvin,R.A.Schilperoot adn D.P.S.Verma著:Plant Molecular Biology Manual (1991)、Kluwer Academic Publishers や Valvekens et al. Proc Natl. Acad. Sci., 85: 5536-5540 (1988) に記載される植物組織培養技術で用いられる通常の方法に準じて再生することにより、該植物細胞に由来する植物体またはその一部を得ることができる。
【0051】
なお、本発明の発現プラスミドは、植物細胞に導入する所望のDNA配列(導入遺伝子)とともに転写活性化因子並びにプロモーターやターミネーター等の機能性DNA配列を含むものであればよいが、これらのDNA配列が互いに作動可能に結合されていることが好ましい。なお、ここで作動可能に結合しているとは、プラスミドが意図された目的のために作用することを意味する。具体的には、当該プラスミドが植物細胞内に導入された場合に、該プラスミドに含まれるプロモーターが不活性化されることなく、転写活性化因子の制御のもとで所望の導入遺伝子(構造遺伝子)が発現され、またその発現がターミネーターの働きによって効率よく転写終結されることを包含する。
【0052】
また本発明は、植物中で導入遺伝子を発現させる方法を包含する。かかる方法は、少なくとも、前述するような導入遺伝子を組み込んだ導入遺伝子発現用カセットを植物に導入する工程、及び該植物において前記導入遺伝子を発現させる工程によって行うことができる。なお、植物への導入遺伝子発現用カセット(DNA)の導入並びに導入遺伝子の発現は、いずれも当業界における公知方法を用いて行うことができる(Plant Molecular Biology Manual 1991, Kluwer Academic Publishers)。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明はかかる実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本発明で用いられる遺伝子工学的技術並びに分子生物学的実験操作(制限酵素処理条件,ライゲーション反応条件,大腸菌へのトランスフォーメーション方法等)は、一般に広く用いられている方法、例えばJ.,Sambrook, E., F., Frisch,T.,Maniatis著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド・スプリング・ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory press)発行、1989年、及びD.,M.,Glover著、DNAクローニング、IRL発行、1985年などに記載されている方法に従って行うことができる。
【0054】
実施例1
1)標的植物、標的遺伝子
MITE様因子の探索にあたり、標的植物としてニンジン(Daucus carota L.cv.Kurodagosun)を用い、標的遺伝子として当該ニンジンのフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(Phenylalanine ammonia-lyase:PAL)遺伝子を用いた。
【0055】
2) ニンジンPAL遺伝子 gDCPAL3 および gDCPAL4 のクローニング
ニンジン核DNAライブラリーから、ニンジン核遺伝子をクローニングした。なお、ニンジン核DNAライブラリーは、本発明者による先行文献(Ozeki, Y., Davies, E. and Takeda, J.;Structure and expression of chalcone synthase gene in carrot suspension cultured cells regulated by 2,4-D. Plant Cell Physiol., 34 : 1029-1037 (1993))の記載に従って、ニンジン培養細胞 (Ozeki, Y. and Komamine, A.;Induction of anthocyanin synthesis in relation to embryogenesis in a carrot suspension culture ; Correlation of metabolic differentiation with morphological differentiation. Physiol. Plantarum, 53 : 570-577 (1981))からλEMBL3 ベクター(東洋紡績(株)製)を用いて作成した。
【0056】
具体的には、ニンジンの核DNAを、Murray and Thompson(1980)の方法(Murray,M.G. and Thompson,W.F.;Rapid isolation of high molecular weight plant DNA. Nucl. Acids Res. 8: 4321-4325 (1980))に従って、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)溶液を用いて凍結乾燥したニンジンから調製した。得られた核DNAを Sau3AIで部分消化し、ショ糖濃度勾配法によってサイズ分画した。15〜20kbpの範囲にあるDNA画分を集めて、BamHI消化したλEMBL3ベクターにライゲーションして、ファージ粒子内にパッケージングすることによってニンジン核ライブラリーを構築した。
【0057】
次いで、ニンジン核ライブラリーからニンジンPALゲノムクローンを、Ozekiら(1990)の文献(Ozeki, Y., Matsui, K., Sakuta, M., Matsuoka, M., Ohashi, Y., Kano-Murakami, Y., Yamamoto, N. and Tanaka, Y.; Differential regulation of phenylalanine ammonia-lyase genes during anthocyanin synthesis and by transfer effect in carrot cell suspension cultures. Physiol. Plantarum, 80 : 379-387 (1990))に記載の方法でクローニングされた PAL cDNA (ANT-PAL cDNA) をプローブとして用いて、スクリーニングした(Sambrook et al. 1989)。なお、ニンジン核ライブラリーのスクリーニングのハイブリダイゼーションは、6×SSC,60mM リン酸ナトリウム(pH6.8),10mM EDTA,1%SDS,0.02% ポリビニルピロリドン,0.02% Ficoll 400, 及び100μg/ml 変性サケ***DNAを含む溶液で68℃で終夜処理することにより行った。また、メンブランの洗浄は、2×SSC,0.5% SDSの溶液中で室温15分で2回、0.1×SSC若しくは1×SSC,0.1% SDSの溶液中で室温10分で2回、最後に0.1×SSC溶液中68℃で30分を2回行うことによって実施した。
【0058】
その結果、8個のポジティブ・クローンが得られた。かかるクローンについて制限酵素マップを作成したところ,それらは2種類に分類され,それらをおのおの gDCPAL3 および gDCPAL4 と命名した。
【0059】
gDCPAL3 について,Sambrook et al. (1989) に記載された方法でポジティブ・クローンのλファージを培養し,λDNAを抽出して Bam HI で切断し,ナイロン膜にサザン・トランスファーを行った。これを、前記ANT-PAL cDNA を EcoRIで切断したDNA断片(984 bp)の 5' 端を [32P] で標識したものをプローブとして、サザン解析を行い、該プローブがハイブリダイズする 2.77 kbp のDNA断片を得た。このDNA断片を、Bam HI で切断し calf intestine alakaline phosphatase (CIP) 処理した pBluescript SK プラスミドにサブ・クローニングしてgDCPAL3-pro/SKを得た(図3参照)。次いで得られたプラスミドgDCPAL3-pro/SKを、制限酵素Sal I と Apa Iで切断し,Sambrook et al. (1989) に記載された方法で Exonuclease III および Mung bean nuclease を用いて、一連の欠失 DNA 断片群を作成し、これらを用いてgDCPAL3のDNAの塩基配列を決定した。Ozeki and Takeda (1994)の文献(J. Regulation of phenylalanine ammonia-lyase genes in carrot suspension cultured cells. Plant Cell, Tissue and Organ Culture, 38 : 221-225 (1994))に記載される、ニンジンから抽出した mRNA を用いたプライマー・エクステンション法によって見い出されたバンドの位置から転写開始点 (+1) を決定した。
【0060】
gDCPAL4 についても同様にして、上記に対応するプラスミドgDCPAL4-pro/SKを作成して、gDCPAL4のDNAの塩基配列並びにその転写開始点を決定した。具体的には、ポジティブ・クローンgDCPAL4 のλファージから得たλ DNA を Hind IIIと Bam HI で切断し、同上のプローブを用いてサザン解析を行い、プローブがハイブリダイズする 1.63 kbp の DNA 断片を Hind III とBam HI で切断し、CIP 処理した pBluescript SK プラスミドにサブ・クローニングしてgDCPAL4-pro/SKを得た。次いで得られたプラスミドgDCPAL4-pro/SKを、制限酵素Xba I と BstX Iで切断し,Sambrook et al. (1989) に記載された方法で Exonuclease III および Mung bean nuclease を用いて、一連の欠失 DNA 断片群を作成し、これらを用いてgDCPAL4の DNA の塩基配列を決定した。
【0061】
3)結果
決定した gDCPAL3 および gDCPAL4 の塩基配列を比較したところ,gDCPAL3 プロモーター領域には gDCPAL4には見られない不完全な逆向き繰り返し配列を持った minuture inverted-repeat transposable element (MITE)が、-1897 〜-1599 (長さ 299 bp) および -1157 〜 -389 (長さ 769 bp) の2箇所に存在することがわかった(図4)。これらの配列をそれぞれIS1およびIS2と命名した。
【0062】
これらの配列並びに挿入位置周辺の塩基配列について、それぞれオートシークエンサー(ABI社製)でシークエンスを行った。IS1の塩基配列を配列番号2に、IS2の塩基配列を配列番号1にそれぞれ示す。
【0063】
これらのIS1及びIS2の性状は下記の通りであった。
▲1▼IS1
配列番号2に示す塩基配列(全長299bp)からなり、5’末端領域及び3’末端領域にはそれぞれ互いに不完全な逆反復配列(32bp)を有し、また標的遺伝子であるゲノムへの挿入位置にはTAの標的重複配列が見られた。このことからすでに報告されている Stowaway 属 (Bureau, T. E. and Wessler, S. R. Stowaway : a new family of inverted repeat elements associated with the genes of both monocotyledonous and dicotyledonous plants.;Plant Cell, 6 : 907-16 (1994)) に属する新規なMITE因子の遺伝子配列であることが推定された。IS1因子のステム構造、並びに末端逆反復配列領域及び挿入位置領域の構造を、図2に示す。
【0064】
また得られた塩基配列の情報をもとに、市販のデータベース(例えばGENE TYX-MAC/CD1995)を用いて塩基配列及びアミノ酸配列のホモロジー解析を行ったところ、すでに報告されている Stowaway 属 (Bureau and Wessler (1994)) に属するMITE因子の遺伝子配列と末端逆反復配列において70〜90%の割合でホモロジーがあり、このことから当該因子がStowaway 属に属する可動性因子であることが確認された(図5)。
【0065】
▲2▼IS2
配列番号1の塩基配列(全長769bp)からなり、5’末端領域及び3’末端領域に不完全な逆反復配列(158bp)を有し、また標的遺伝子であるゲノムへの挿入位置にAAAAGAAAAの標的重複配列が見られた。塩基配列のホモロジー比較を行ったが、既知可動性因子との相同性が見られず、このことから従来の可動性因子ファミリーに属さない新規なファミリーを構成する可動性因子、特にMITE様因子であることが判明した。IS2因子の全体構造(ステム構造)を図1に、その末端逆反復配列領域及び挿入位置領域の構造(塩基配列)を図6に示す。
【0066】
実施例2
(1) IS1, IS2, IS12 および MU3 のクローニング
(i) IS1 のクローニング(図7)
実施例1において塩基配列の決定のために作成した gDCPAL3 プロモーター領域の 3' 端からの欠失 DNA 断片を有するプラスミドの中から,-1581 まで欠失したプラスミド (gDCPAL3-IS1/SK) を選び,これを KpnI で切断し,T4 DNA polymerase を用いて末端平滑化した後, Sca I で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によって 321 bp の DNA 断片を切り出した。これを、Hinc II で切断し CIP 処理した pBluescript SK プラスミドにサブ・クローニングした。このサブ・クローニングによって得られた複数の独立クローンの大腸菌コロニーからプラスミドを抽出し,その塩基配列を決定することによって,DNA 断片の挿入方向を調べ,pBluescript SK プラスミドのマルチ・クローニング部位の Kpn I 側に IS1の 5'端側が挿入されているものを選び,これを IS1/SK とした。また pBI221 (Clontech Inc.) を Hind III および Sma I で切断して得られたカリフラワーモザイクウイルス 35S プロモーター (35S) 断片をアガロース・ゲル電気泳動によって切り出し,Hind III および Sma I で切断し CIP 処理した pBluescript SK プラスミドにサブ・クローニングし,これを 35S/SK とした。IS1/SK を Kpn I と Hind III で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によってインサート DNA 断片を切り出し,これを Kpn I と Hind III で切断し CIP 処理した 35S/SK プラスミドにサブ・クローニングし,35S プロモーター領域の上流域にIS1領域を有する IS1-35S/SK を得た。
【0067】
(ii)IS2 のクローニング(図8)
実施例1において塩基配列の決定のために作成した gDCPAL3 プロモーター領域の 3' 端からの欠失 DNA 断片を有するプラスミドから, -389 まで欠失したプラスミド (gDCPAL3-IS12/SK) を選び,これを、KpnI で切断し,T4 DNA polymerase を用いて末端平滑化した後, Dde I で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によって 797 bp の DNA 断片を切り出し,これを、Hinc II で切断し CIP 処理した pBluescript SK プラスミドにサブ・クローニングした。このサブ・クローニングによって得られた複数の独立クローンの大腸菌コロニーからプラスミドを抽出し,その塩基配列を決定することによって,DNA 断片の挿入方向を調べ,pBluescript SK プラスミドのマルチ・クローニング部位の Kpn I 側に IS2 の 5'端側が挿入されているものを選び,これを IS2/SK-1 とし,またその反対方向,すなわち KpnI 側に IS2 の 3'端側が挿入されているものを IS2/SK-2 (reverse) とした。
【0068】
IS2/SK-1 を Kpn I と Hind III で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によってインサート DNA 断片を切り出し,これを、Kpn I と Hind III で切断し CIP 処理した 35S/SK プラスミドにサブ・クローニングし,35S プロモーター領域の上流域にIS2領域(正鎖)を有するIS2-35S/SK を得た。
【0069】
(iii)IS12 (IS1 と IS2 のタンデム結合体)のクローニング(図9)
(ii)で得られたIS2/SK-2 (reverse) を KpnI で切断し,T4 DNA polymerase を用いて末端平滑化した後, Hind III で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によってインサート DNA 断片を切り出した。これを、Pst I で切断して T4 DNA polymerase による末端平滑化後, Hind III で切断し CIP 処理した IS1-35S/SKプラスミドにサブ・クローニングし,35S プロモーター領域の上流域にIS1領域と IS2領域とをタンデムに有するIS12-35S/SK を得た。
【0070】
(iv)MU3のクローニング(図10)
MU3 は gDCPAL3-IS12/SK を KpnI で切断し,T4 DNA polymerase を用いて末端平滑化した後, Sca I で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によって 1,514 bp の DNA 断片を切り出した。これを、Hinc II で切断し CIP 処理した pBluescript SK プラスミドにサブ・クローニングした。このサブ・クローニングによって得られた複数の独立クローンの大腸菌コロニーからプラスミドを抽出し,その塩基配列を決定することによって,DNA 断片の挿入方向を調べ,pBluescript SK プラスミドのマルチ・クローニング部位の Kpn I 側に IS1 の 5'端側が挿入されているものを選び,これを MU3/SK とした。MU3/SK を Kpn I と Hind III で切断し,アガロース・ゲル電気泳動によってインサート DNA 断片を切り出した。これを、Kpn I と Hind III で切断し CIP 処理した 35S/SK プラスミドにサブ・クローニングし,35S プロモーター領域の上流域にIS1領域 と IS2領域とを、gDLPAL3に由来する領域の配列(441 bp)を介して、有するMU3-35S/SK を得た。
(2) IS1, IS2, IS12およびMU3の植物遺伝子発現ベクターへの組み込み(図11)
pABN-Hm1(Mita, S., Suzuki-Fujii, K. and Nakamura, K. Sugar-inducible expression of a gene for β-amylase in Arabidopsis thaliana. Plant Physiol., 107 : 895-904 (1995) 、名古屋大学・中村研三先生より分与)を Hind III で切断し,β-amylase プロモーター (1.7 kb) を切り出し,T4 DNA polymerase を用いて末端平滑化した後, Xba I で切断し,CIP 処理した後,Ti-プラスミド領域、並びにカナマイシン耐性遺伝子〔nos-プロモーター・ネオマイシンホスフォトランスフェラーゼII 遺伝子のコード領域 (nptII)・nos ターミネーター〕、β-グルクロニダ−ゼ遺伝子のコード領域 (GUS)・nos ターミネーター、及びハイグロマイシン耐性遺伝子〔35S プロモーター・ハイグロマイシンホスフォトランスフェラーゼ遺伝子のコード領域 (HPT)・nos ターミネーター〕を含む 10 kbp の DNA 断片をアガロース電気泳動によって分離した。これに、35S/SK を Hind III で切断し,T4 DNA polymerase を用いて末端平滑化した後, Xba I で切断して得られた 35S 断片をサブ・クローニングし、pAB35S を作成した。
【0071】
この pAB35S を Xho I および Xba I で切断して,CIP 処理した後,アガロース電気泳動によって 35S DNA 断片を切り除いてベクターを調製した。一方、前述により調製されたIS1-35S/SK ,IS2-35S/SK ,IS12-35S/SK ,及びMU3-35S/SKの各々を Xho I および Xba I で切断してアガロース電気泳動によってインサート用のDNA断片(導入遺伝子発現用カセット)を切り出した。かかるDNA断片を上記のベクターにライゲーションし,大腸菌 DH5αにトランスフォーメーションした。得られた大腸菌をカナマイシン 25 μg/L を含む LB 寒天培地(1%バクトトリプトン,0.5%イーストエキストラクト,1% 塩化ナトリウム ,1.5% 細菌培地用寒天末)にまき,得られたコロニーからプラスミドを迅速プラスミド DNA 抽出法により抽出し,得られたプラスミドの制限酵素マップを調べることによって,図11に示すように、pIS1-35S/AB35S, pIS2-35S/AB35S, pIS12-35S/AB35Sおよび pMU3-35S/AB35Sの各コンストラクト、すなわちカナマイシン耐性を示すnptII遺伝子と構造遺伝子であるGUS遺伝子との間に上記の各導入遺伝子発現用カセットがそれぞれ組み込まれてなるコンストラクトが作成されていることが確認された。
【0072】
(3) Agrobacterium tumefaciens のコンピテントセル作製
A. tumefaciens EHA 101 のグリセロールストックから白金耳で菌体をとり,YEP 固体培地(イーストエキストラクト 1%,バクトペプトン 1%,塩化ナトリウム 0.5% の YEP 培地に 1.5% になるように細菌培地用寒天末を加えてオートクレーブして固化させたもの。以下同じ)に塗布し、28 ℃ で 2 日間 ,暗黒下で培養した。増殖した A. tumefaciens の単コロニーを爪楊枝でかきとり,1.5 ml の YEP 培地に植菌し 28 ℃ で一晩振とう培養した。500 ml フラスコに 80 ml YEP 培地を入れ,増殖した A. tumefaciens の菌液を 0.8 ml 加え,28 ℃ で OD600= 0.4 まで振とう培養した。これを氷冷したあと,あらかじめ氷冷しておいた遠心管に移し,6,000 rpm で 5 分間,4 ℃ のもとで遠心し,上澄みを除いて 10 %グリセロールを 20 ml 加え懸濁した。この操作を 3 回繰り返し,培地を完全に除いてA. tumefaciensのコンピテントセルを取得した。ストック用に、400 μl の 10 % グリセロールに懸濁後,チューブに 40 μl ずつ分注し,液体窒素中で急速凍結した。
【0073】
(4) プラスミド DNA の A. tumefaciens への導入
(2)で得られた各種コンストラクト(プラスミド pIS1-35S/AB35S, pIS2-35S/AB35S, pIS12-35S/AB35Sおよび pMU3-35S/AB35S)を、エレクトロポレーション(島津製作所製 GTE - 10 使用)により A. tumefaciens コンピテントセルに導入した。
【0074】
具体的には、(3)で調製したコンピテントセル 40 μl に、(2) で作成したプラスミド pIS1-35S/AB35S(IS1), pIS2-35S/AB35S(IS2), pIS12-35S/AB35S(IS12)および pMU3-35S/AB35S(MU3)、並びに比較対照のために、転写活性化因子(IS1および/またはIS2)を組み込んでいないプラスミドpAB35S(35S)を、それぞれ約 100 ng ずつ混合して,エレクトロポレーション用セルに移した。電気パルス( 1.2 kV ,35 μF ,550 Ω )を与え,すばやく1ml の YEP 培地を加えて 28 ℃ で 1 時間培養した。50 μl ほどとって,50 μg /L のハイグロマイシンを含む YEP 固体培地に塗布し,28 ℃ で 2 日間,暗黒下で培養した。生えてきた単コロニーを再び 50μg /Lのハイグロマイシンを含む別の YEP 固体培地に白金耳を用いて軽く広げ,28 ℃ で 24 時間培養した。この菌体の一部をとり,50μg /Lのハイグロマイシンを含む YEP 培地 5 ml に植菌し 28 ℃ で一晩振とう培養した。
【0075】
実施例3
(1)タバコ培養細胞への転写活性化因子を含むコンストラクトの導入
上記実施例2で調製した、pIS1-35S/AB35S(IS1), pIS2-35S/AB35S(IS2)及び pIS12-35S/AB35S(IS12)の各コンストラクトをそれぞれ導入したA. tumefaciens(以下、形質転換A. tumefaciensという)を用いて、タバコ培養細胞にコンストラクトIS1, IS2及びIS12をそれぞれ導入した。またコントロールとしてpAB35S(35S)を導入したA. tumefaciensを用いて同様に実験を行った。
【0076】
まずYEP 液体培地 5 ml 中で培養した上記形質転換 A. tumefaciens を 50 ml遠心管に移し,3,000 rpmで 10 分間遠心分離した。上清を捨て,Linsmaier & Skoog 培地 (Linsmair, E.M. and Skoog, F.;Physiol. Plantarum 18, 100-127 (1965); 以下 Lins 培地 という) を 25 ml 加えて懸濁し,再び 3,000 rpmで 10 分間,室温で遠心した後,上清を捨てた。この操作を 4 回繰り返した。集菌した A. tumefaciens に,OD600 = 0.2 となるように Lins 培地を加えて懸濁し,これに10 μg / ml となるようにアセトシリンゴンを加えて再び懸濁した。
【0077】
一方、各コンストラクトを導入するタバコ培養細胞 BY-2 (東京大学大学院理学系研究科・長田敏行博士から分与)としては、予め2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 ( 2,4-D ) を含む Lins 培地 45 ml で培養し,一週間ごとに懸濁培養細胞液 1 ml を新しい Lins 培地に植え継ぎ、植え継いでから約 100 時間経過し,対数増殖期にはいった細胞を使用した。
【0078】
当該タバコ培養細胞 BY-2(4 ml)を90 mm 滅菌シャーレにまき,その上から上記の操作で洗浄した形質転換 A. tumefaciens を 100 μl,均一になるように加えた。軽く混合した後,暗黒下,22 ℃ で 3 日間共存培養した。
【0079】
その後,該培養細胞液に 12 ml の Lins 培地を加えて懸濁し,50 ml 遠心管に移して,1,000 rpm で 1 分間遠心分離した後,上清を捨てた。この操作を 4 回繰り返した。その後クラフォランを 250 μg / ml 含む Lins 培地を 12 ml 加えて更にもう一度同様の操作を行った。上清を捨てた後,沈殿した細胞に約 25 ml のLins 培地を加えて懸濁し,血球検査板を用いて培地 0.25 μl 中の細胞数を計測した。1 枚のプレート当たりの細胞数が 4 x 105,6 x 105,8 x 105,10 x 105,15 x 105 となるように,100 μg / ml または 300 μg / ml のカナマイシンを含む Lins 固体選択培地 (クラフォラン 250 μg / ml 含む) に均一に播いて,暗黒下,28 ℃ で,培養した。1ヵ月後,プレート上に生じた遺伝子導入タバコ培養細胞(形質転換カルス)の数及び形成率を計測した。結果を表1および図12に示す。
【0080】
【表1】
Figure 0003885134
【0081】
この結果から、タバコ培養細胞にコンストラクトIS2またはIS12を挿入することによって、カナマイシン含有培地での形質転換カルスの形成率が上昇すること、並びにその形成率はこれらのコンストラクトが挿入されていないタバコ培養細胞(35S)の形質転換カルスの形成率よりも高いことがわかった。具体的には、コンストラクトIS2またはIS12が導入された形質転換カルス(遺伝子導入タバコ培養細胞)の形成率は,これらのコンストラクトが導入されていないコントロール(35S)よりも 1.6〜2.6 倍高かった。
【0082】
特に培地のカナマイシン濃度が 300 μg / ml の場合において,コンストラクトIS2 または IS12 を導入することによって形質転換カルスの形成効率がコントロール(35S)の10 倍以上になることが観察された。このことは,コンストラクトIS2 またはIS12 が挿入されることによって,その近傍乃至は周辺領域にある、カナマイシン耐性を示す ntpII 遺伝子の発現が高まることを示唆するものである。
【0083】
(2)形質転換タバコ・カルスにおける GUS 活性の測定
上記の結果に基づいて、挿入した上記コンストラクトが構造遺伝子の発現を高めているかどうかを確認するために,コンストラクトとして上記pIS12-35S/AB35S (IS12)を用いて、レポーターである GUS 遺伝子の発現を調べた。
【0084】
GUS 遺伝子の発現は、まず、複数の形質転換タバコ・カルスよりランダムに独立のカルスを選び,そのカルスから核 DNA を抽出してサザン解析法によって遺伝子導入がなされていることを確認し、次いでそのカルス・タンパク質を抽出し,GUS 活性を測定することによって行った。具体的には、形質転換したタバコ・カルスを0.75 g とり、 GUS - Light ( Tropix ) を用いて蛋白質を抽出した。Bio - Rad プロテインアッセイキットを用いて蛋白質濃度測定を行った後、 GUS - Light ( Tropix ) 及びルミノメーターLumat LB9501( ベルトールドジャパン )を用いて5 秒間 GUS 活性を計測した。結果を図13に示す。なお、図中縦軸に示すGUS 活性は、ルミノメーターで得られた発光量をタンパク質量で割った、蛋白質量あたりの発光量として示したものである。
【0085】
図13からわかるように、形質転換タバコ・カルスにおいてコンストラクトIS12 を挿入したものの方が,コンストラクトを含まないpAB35S (35S)を挿入したコントロールと比較して,平均して約 2.6 倍 GUS活性が上昇しており,このことからコンストラクトIS12 の挿入によって有意にGUS遺伝子の発現が高まることが判明した。
【0086】
これは、すなわち 上記コンストラクトに含まれる各因子(IS1因子、IS2因子、及びこれらの因子の結合体(IS12因子等))が転写活性化因子であることを示すものである。
【0087】
実施例4 タバコ植物体(葉)への転写活性化因子を含むコンストラクトの導入(リーフディスク法)
実施例2で調製した、コンストラクトpIS1-35S/AB35S(IS1), pIS2-35S/AB35S(IS2)及び pIS12-35S/AB35S(IS12)を導入したA. tumefaciens(以下、形質転換A. tumefaciensという)を用いて、リーフディスク法で、タバコ葉にコンストラクトIS1, IS2 及び IS12をそれぞれ導入した。またコントロールとして上記コンストラクトを含まないpAB35S(35S)を導入したA. tumefaciensを用いて同様に実験を行った。
【0088】
具体的には、まずタバコ(SR 1) の葉を 10 % 次亜塩素酸溶液に浸け,スターラーで軽くかき混ぜながら2分間薬さじで気泡をとり,液を新しくして更に5分間同様の操作を行なった。葉を取りだし滅菌水につけて軽くかき混ぜた。次亜塩素酸溶液を新しい溶液に置き換えて、同様の操作を計 3 回行なった。滅菌したペーパータオルを用いて軽く水気を除いた後 コルクボーラーで葉をくりぬきリーフディスクとし(葉脈は除く),これを10 ml の滅菌水につけた。このようにして調製したリーフディスクを、YEP 培地5 mlで培養した上記形質転換 A. tumefaciens (滅菌水でOD600 = 0.25 に調整したもの)中に1 分間浸けた。次いで、リーフディスクごと菌液を滅菌ペーパータオルにあけ,別の滅菌ペーパータオルで水分を除いた。
【0089】
葉の裏側を上にして MS 培地(Murashige, T. and Skoog, F. ; Physiol. Plantarum 15, 473-497 (1962))に 40mg/L アセトシリンゴン、0.2% ゲランガムを配合した MS 感染培地上におき,25 ℃ で 2 日間,暗黒下で培養した。その後それぞれのリーフディスクを MS 再分化培地(MS 培地に、0.1mg/L ナフタレン酢酸、1mg/L ベンジルアデニン、150mg/L カナマイシン、500mg/L クラフォラン、0.2% ゲランガムを配合した培地)で拭くようにして除菌を行ったあと,同様に葉の裏側を上にして別の MS 再分化培地で 25 ℃ のもとで培養した。2 週間ごとに新しい MS 再分化培地に植え替え、1ヵ月後,再生シュートの数を計測した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
Figure 0003885134
【0091】
結果からわかるように、タバコ植物体の場合, コンストラクトIS1または IS2を含むことにより,シュートの再生効率がコンストラクトを含まないコントロール(35S)の約 1.4 倍になり,特に IS1 と IS2 の両方をタンデムで含む場合(IS12)はコントロールの約 2 倍のシュートが得られた。このことから、本発明の因子(IS1因子、IS2因子及びこれらの結合体(IS12等))は、タバコ植物体においても、該因子の近傍乃至は周辺領域にあるカナマイシン耐性遺伝子(ntpII 遺伝子)の活性を高めることがわかる。この結果は、本発明の因子が転写活性化因子であるとする上記実施例3の判断を支持するものである。
【0092】
実施例5 ニンジン不定胚への転写活性化因子を含むコンストラクトの導入実施例2で調製した、各コンストラクトpIS1-35S/AB35S(IS1), pIS2-35S/AB35S(IS2)、pIS12-35S/AB35S(IS12)及び pMU3-35S/AB35S(MU3)を導入したA. tumefaciens(以下、形質転換A. tumefaciensという)を用いて、ニンジン不定胚に各コンストラクトIS1, IS2,IS12及びMU3をそれぞれ導入した。またコントロールとして上記コンストラクトを含まないpAB35S(35S)を導入したA. tumefaciensを用いて同様に実験を行った。
【0093】
具体的には、まずニンジン胚軸を約1cmずつに切断し 4.5 × 10-6 M の 2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸:2,4-dichlorophenoxyacetic acid)を含む MS 培地に入れ暗黒下で 24 時間培養した後,2,4-D を含まない MS 培地に入れ暗黒下で 3 日間培養した。培地を替えて同様にして7 日間培養し,ニンジン不定胚を作成した。
【0094】
一方、YEP 培地 5 ml で培養した上記形質転換 A. tumefaciens を 3,000 rpm で 10 分間遠心し,上澄みを除いて MS 培地を約 30 ml 加えて懸濁した。この操作を 2 回繰り返しYEP 培地を完全に除いた。その後 3,000 rpm で 10 分間遠心して上澄みを除き,10 mg / lのアセトシリンゴンを含む MS 培地を加えて OD600 = 0.3 前後になるように調整した。
【0095】
これに網を用いて集めた上記のニンジン不定胚を加え5分間軽く振とうした。滅菌ペーパータオルで不定胚の水分を除き,10 mg/L のアセトシリンゴンを含む MS 培地に浸けて 22 ℃ で 3 日間,暗黒下で培養した。滅菌ペーパータオルで不定胚の水分を除き,500 μg/L のカルベニシリンを含む MS培地に浸して軽く振るようにして洗い,同様に水分を除去した後 500 μg/L のカルベニシリン及び 100 μg/L のカナマイシンを含む MS寒天培地(0.8% 寒天を含む)において暗黒下で培養した。1.5〜2ヵ月後,カルスを再生したヒポコチルの数を計測した。結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
Figure 0003885134
【0097】
表3からわかるように、ニンジン不定胚についても、タバコ・カルスの場合と同様に、2,4-D を含む培地(+2,4-D)で培養した脱分化的増殖条件下、並びに2,4-D を含まない培地中(−2,4-D)で培養した分化的増殖条件下のいずれも培養条件下においても、コンストラクトIS1,IS2,IS12及びMU3の挿入によって再生効率の向上が見られた。もっとも再生効率の向上が見られたのはコンストラクト IS2 が挿入されたニンジン不定胚であった。
【0098】
実施例6 イネへの転写活性化因子を含むコンストラクトの導入
実施例2で調製した、コンストラクトpIS1-35S/AB35S(IS1)及び pIS2-35S/AB35S(IS2)を導入したA. tumefaciens(以下、形質転換A. tumefaciensという)を用いて、イネ種子にコンストラクトIS1 及び IS2をそれぞれ導入した。またコントロールとして上記コンストラクトを含まないpAB35S(35S)を導入したA. tumefaciensを用いて同様に実験を行った。
【0099】
具体的には、まずイネ完熟種子(日本晴)の中から形,色などが正常なものを選抜し,乳鉢で軽く擦り,籾を取り除いた。50 ml のファルコンチューブに籾を取り除いた種子を入れ,2.5% 次亜塩素酸ナトリウムを加え,100〜120 rpm で 20 分間振とうした。その後上澄みを捨て滅菌水を加え,穏やかに振とうした。この操作を 3 回繰り返した後,種子をカルス誘導培地に置いた。これを 28 ℃ ,暗黒下で培養した。
【0100】
3〜4 週間後,胚盤がカルス化し,黄色化したシュートが伸びてきたカルスの中で,直径 2〜3 mm で数個がこぼれ落ちているようなもののみを新しいカルス誘導培地に置き,28 ℃で 7 日間,暗黒下で培養した。
【0101】
一方、上記形質転換 A. tumefaciensを YEP 固体培地に植菌し,28 ℃で 3 日間,暗黒下で培養した。薬さじを用いて A. tumefaciens をかきとり,アセトシリンゴンを 40 mg/l 補填した AAI 培地(Toriyama, K. and Hirata, K. ; Plant Science 41, 179-183 (1985))に加えて OD600 = 0.18〜0.2 に調整した。これを 25 ℃で 1 時間,暗黒下で振とう培養した。
【0102】
上記で培養したイネ・カルスを滅菌した茶こしに入れ,培養した上記 A. tumefaciens 懸濁液を加えた。カルス全体が浸るように茶こしを時々揺すりながら 3分間振とうした後,茶こしごと滅菌したペーパータオルの上にのせ,余分な菌液を除いた。カルスを共存培養培地に置き,25 ℃で 3 日間,暗黒下で培養した。
【0103】
次いで共存培養したカルスを茶こしに集め,クラフォランを 500 mg/l 加えた滅菌水に浸して茶こしを揺すり A. tumefaciens を洗い落とした後,茶こしごと滅菌したペーパータオルの上にのせ,水分を除いた。同様の操作を計 4 回行なった。カルスを選抜培地に置き,28 ℃,暗黒下で培養した。3〜4 週間後,多数のカルスからランダムに選び出し,カルスの一部をとってGUS 染色液(0.75 mM X-Gulc (5-bromo-4-choloro-3-indolyl-β-D-glucronic acid),0.5 mM フェリシアン化カリウム,0.5 mM フェロシアン化カリウム,0.3% Triton X-100, 20%メタノール,50 mM リン酸緩衝液(pH 7.0))に入れ,37 ℃,一晩反応させ,GUS 活性を検出した。カルスが青く染色されGUS 活性が検出されたカルスが遺伝子導入された形質転換イネ・カルスである。その結果を表4に示す。
【0104】
【表4】
Figure 0003885134
【0105】
表4の結果からわかるように、コンストラクトIS1及びIS2の導入によってそれぞれコントロール(35S)の約 1.5 倍及び約 2 倍、形質転換効率が上昇することが認められた。こがみられ,これら IS1 および IS2 が単独で形質転換効率を高めることが示された。
以上の実施例1〜6から本発明の転写活性化因子(IS1、IS2、IS12、MU3)を用いることによって、再生効率(形質転換効率)が高まることが示された。その理由としては、次の3つの可能性が考えられる。
▲1▼ Ti-plasimid の植物細胞への導入効率が高くなった可能性、
▲2▼ nos-プロモーターの活性が IS1 または/および IS2因子 によって上昇したために nptII 遺伝子の転写が促進されて多量の遺伝子産物が生産されたために、選抜に用いたカナマイシン含有培地で生育できる細胞の数が増え、その結果細胞からの再生効率が高くなった可能性、
▲3▼ IS1 または/および IS2因子 がこれらを含む近傍乃至は周辺の遺伝子領域の活性化を行うか,もしくは該遺伝子領域が不活性化することを防いでいる可能性。
【0106】
Ti-plasimid による遺伝子の導入は植物染色体の決まった位置に挿入されることはなく,どこに挿入されるかは決まっていない。このため,染色体の構造によって決定している active site に挿入されるか,あるいはゲノム DNA のメチル化などによってその近傍の遺伝子が不活性化されてしまっている cryptic site に挿入されるかは偶然による。もしも導入遺伝子が cryptic site に挿入された場合には,その染色体の『場』の影響を受けるため,その導入遺伝子も不活性化されると考えられている。
【0107】
上記の実施例において用いたコンストラクトは、本発明の転写活性化因子(IS1または/およびIS2因子)が nptII 遺伝子(カナマイシン耐性遺伝子)のターミネーター側、すなわちカナマイシン耐性遺伝子のnos-プロモーターの反対側に挿入されたものである。従って、これらの因子がカナマイシン耐性遺伝子のプロモーターにシスに作用することはない。
【0108】
しかし上記の実施例から、本発明の転写活性化因子がnos-プロモーターに直接作用できない位置に挿入された状況でも、タバコ培養細胞においてカナマイシン耐性細胞(形質転換タバコ・カルス)の数が増加すること,特に培地中のカナマイシン濃度が 300 mM と高い場合においてもカナマイシン耐性細胞の数が多くなること(実施例3(1))が示され、また上記コンストラクトを種々の植物種の植物細胞に導入することによってカナマイシン耐性を示す植物の再生効率が高まる(実施例4〜6)という結果が得られた。この結果は、IS1または/およびIS2因子が、nos-プロモーターに対して直接シス活性化を引き起こす態様ではなく,該因子の近傍に位置するカナマイシン耐性遺伝子に働きかけることによって該カナマイシン耐性遺伝子の活性を維持した(活性化と不活性化抑制の両者の意味を含む)細胞数が多くなったことを示す。すなわち、これは,本発明の転写活性化因子は,エンハンサーとして特定の遺伝子のプロモーターの近傍に存在して該プロモーターにシスに作用することによって転写を活性化する従来の転写活性化因子とは異なり,該因子がゲノム遺伝子に挿入されることによってそれが挿入された近傍および周辺領域の単一ないしは複数の遺伝子群に作用して(作用する遺伝子のプロモーターに対する位置および方向に関係なく)、転写活性を促進するといった上記▲3▼の機作を有する転写活性化因子であることを示すものである。
【0109】
また前記実施例で用いたコンストラクトは、IS1または/およびIS2因子がGUS遺伝子の35S-プロモーターの側に挿入されてなるものである。実施例3(2)において、当該コンストラクトを導入したタバコ培養細胞の GUS 活性が上昇したことから,本発明の転写活性化因子がその下流近傍に位置する 35S プロモーターにも作用してGUS遺伝子の転写活性を上昇させることが明確になった。この結果は前述する判断を支持するものであり、本発明の転写活性化因子が上記▲3▼の作用、すなわち「IS1または/およびIS2因子 がこれらを含む近傍の遺伝子領域の活性化を行うか,もしくは該遺伝子領域が不活性化することを防いでいる」ことを示すものである。
【0110】
また上記実施例において、本発明の転写活性化因子を用いることによって,培養細胞のみならず(実施例3)、植物体についても実際に、タバコ・リーフディスク法におけるタバコ植物体の再生効率が高まること(実施例4),ニンジンのヒポコチルからの植物体再生のもとになるエンブリオジェニック・カルスの形成効率が高まること(実施例5),イネの植物体再生のもとになるカルスの形成効率が高まること(実施例6)が示された。これらの結果は,植物のゲノム遺伝子に導入した外来遺伝子が位置効果によってジーン・サイレンシング(不活性化)されてしまい,植物体の再生やカルスの形成ができなくなってしまう植物細胞に対して、本発明の転写活性化因子がその植物体の再生効率や形成効率を高めることができ、実用性の上でも有用であることを示すものである。
【0111】
また最近、MITE が MAR と同様に核マトリクスに結合することが示された(Tikhonovら、Plant Cell 12 : 249-264 (2000))ことから、MITE は核内で MAR と同様な役割を果たしているものと考えられる。このことから、本発明の転写活性化因子である MITE によれば、遺伝子組み換え植物の作出に単独で用いるのみならず、MAR 等の因子と組み合わせて用いることによって、植物体の再生効率や形成効率をさらに高めることができるものと期待できる。
【0112】
【発明の効果】
遺伝子組み換え植物の作出において,克服すべき最も重要な問題は,外来遺伝子の発現不活性化をもたらすジーン・サイレンシング現象である。遺伝子組み換え植物の開発においては,ジーン・サイレンシング現象を回避するために,非常に数多くの植物個体の中からジーン・サイレンシングをなるべく引き起こさない位置に外来遺伝子が挿入された植物個体を選抜する必要がある。
【0113】
本発明における転写活性化因子(IS1因子 または/および IS2因子)は、一面において、植物における遺伝子導入において位置効果(position effect)による遺伝子発現の不活性化現象(ジーン・サイレンシング現象)を抑制し解消する作用を有する因子であると考えられる。従って,本発明の転写活性化因子を遺伝子組み換え植物の作出に単独もしくは核DNA構造に関与するMAR(matrix attachment region)等の他の因子と組み合わせて用いることによって,遺伝子の発現を安定に行うことができ,その結果,遺伝子導入後に通常行うスクリーニングの回数および育種すべき組み換え植物体の蒔数を顕著に減らすことが可能になると期待される。
【0114】
ユリ、キク、コムギ等のようなゲノム・サイズが大きい植物は、ゲノム内における不活性化領域(cryptic site)も大きいため、導入した外来遺伝子の殆どが不活性化領域に挿入されてしまう。このため、かかる植物については遺伝子組み換え植物体の作出が非常に困難で、実際上不可能であった。しかしながら、本発明の転写活性化因子によれば植物のゲノム遺伝子に導入された外来遺伝子がサイレンシングされるのを有意に抑制することができるため、上記のように従来遺伝子組み換えが困難とされていた植物種に対しても効率よく外来遺伝子を導入することができ、遺伝子組み換え植物体が作出できるものと期待される。
【0115】
また本発明の転写活性化因子は、それが挿入された遺伝子領域の近傍若しくは周辺に位置する遺伝子を活性化(転写の活性化を含む)する作用を有する因子でもあると考えられる。従って、本発明の転写活性化因子によれば,上記のようなゲノム・サイズが大きいためにサイレンシングが頻発して遺伝子組換え植物体の作出が困難であった植物における遺伝子組換えを実用化ならしめるのみならず,これまでにすでに実用化されているダイズ,トウモロコシ,ジャガイモ,トマトなどの植物種における遺伝子組換えにおいても,たとえば除草剤耐性遺伝子,殺虫タンパク質遺伝子などの有用形質遺伝子のプロモーター上流もしくはその近傍にこの転写活性化因子を挿入して用いることによって,遺伝子導入効率が上昇するとともに,これら有用形質遺伝子の転写活性を上昇させることが可能になり,従来法によって得られていた遺伝子組換え植物体の作成法より,さらに高生産・高品質の遺伝子組換え植物体を作出することができるものと期待される。
【0116】
【配列表】
Figure 0003885134
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMITE様因子、IS2因子の構造を示す。
【図2】本発明のMITE様因子、IS1因子の構造、及びその末端逆反復配列、挿入重複配列(下線部分のTA)を示す。
【図3】gDCPAL3-pro/SK の構築方法を示す概略図である。
【図4】ニンジン PAL 遺伝子 gDCPAL3 および gDCPAL4 との構造を比較した図である。
【図5】本発明のMITE様因子(IS1因子)の塩基配列を、従来公知のStowaway 属の塩基配列 (Bureau および Wessler、Plant Cell, 6 : 907-917(1994)) と比較した結果を示す図である。黒字に白抜きの配列が相同性の見られる末端逆反復配列である。
【図6】本発明のMITE様因子、IS2因子の末端に見られる不完全逆反復配列、挿入重複配列(下線矢印部分のAAAAGAAAA)を示す。
【図7】IS1-35S/SK の構築方法を示す概略図である。
【図8】IS2-35S/SK の構築方法を示す概略図である。
【図9】IS12-35S/SK の構築方法を示す概略図である。
【図10】MU3-35S/SK の構築方法を示す概略図である。
【図11】pIS1-35S/AB35S、pIS2-35S/AB35S、pIS12-35S/AB35S 及び pMU3-35S/AB35S の構築方法を示す概略図である。
【図12】選択培地(カナマイシン添加培地)においてコンストラクトpIS1-35S/AB35S(IS1)、pIS2-35S/AB35S(IS2)、pIS12-35S/AB35S(IS12)及び pAB35S(35S)(コントロール)を導入した形質質転換タバコBY-2培養細胞の再生カルス数を比較した実施例3(1)の結果を示す図である。なお、図の上段及び下段は、カナマイシンをそれぞれ100μg/ml及び300μg/mlの割合で含有する選択培地を使用した結果を示す図である。
【図13】pAB35S(35S)を導入したタバコ・カルス(コントロール)のGUS活性(左図)および pIS12-35S/AB35S(IS12)を導入したタバコ・カルスのGUS活性(右図)を比較した実施例3(2)の結果を示す図である。

Claims (10)

  1. 下記(a)のDNAからなるMITE様因子:
    (a)配列番号1の塩基配列からなるDNA。
  2. 下記(a)又は(b)のDNAからなるMITE様因子を可動性因子として含むことを特徴とする転写活性化因子:
    (a)配列番号1の塩基配列からなるDNA
    (b)(a)のDNAと塩基配列において90%以上のホモロジーを有する
    −2kb以下のDNAであって、
    −5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全若しくは不完全な逆反復配列を有し、
    −当該両末端領域に位置する末端逆反復配列中、または両方の末端逆反復配列に挟まれた中間領域中に、式(1):XttgcaaY(式中、Xはg又はtを、Yはa又はcを示す)、または式(2):Zatgcaa(式中、Zはt又はaを示す)で示される塩基配列の少なくとも1つを、連続又は非連続に反復して含有し、
    −ゲノム遺伝子の挿入位置において(A)nG(A)n [nは1以上の整数]の重複を引き起こす
    MITE様因子をコードするDNA。
  3. 可動性因子が、
    下記(a)又は(b)のDNAからなるMITE様因子:
    (a)配列番号1の塩基配列からなるDNA
    (b)(a)のDNAと塩基配列において90%以上のホモロジーを有する
    −2kb以下のDNAであって、
    −5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全若しくは不完全な逆反復配列を有し、
    −当該両末端領域に位置する末端逆反復配列中、または両方の末端逆反復配列に挟まれた中間領域中に、式(1):XttgcaaY(式中、Xはg又はtを、Yはa又はcを示す)、または式(2):Zatgcaa(式中、Zはt又はaを示す)で示される塩基配列の少なくとも1つを、連続又は非連続に反復して含有し、
    −ゲノム遺伝子の挿入位置において(A)nG(A)n [nは1以上の整数]の重複を引き起こす
    MITE様因子をコードするDNA、及び
    下記(c)又は(d)のDNAからなるMITE様因子:
    (c)配列番号2の塩基配列からなるDNA
    (d)(c)のDNAと塩基配列において90%以上のホモロジーを有する
    −1kb以下のDNAであって、
    −5’末端領域及び3’末端領域の両領域に完全若しくは不完全な逆反復配列を有し、
    −ゲノム遺伝子の挿入位置においてTAの重複を引き起こす
    MITE様因子をコードするDNA
    のタンデム結合体である請求項3または4に記載する転写活性化因子。
  4. 可動性因子が配列番号3の塩基配列からなるDNAである請求項記載の転写活性化因子。
  5. 請求項2乃至4のいずれかに記載の転写活性化因子、並びに該因子に作動可能に結合したDNA配列を含む、植物における導入遺伝子発現用カセット。
  6. 転写活性化因子に作動可能に結合したDNA配列がプロモーター及び/又はターミネーターである請求項記載の導入遺伝子発現用カセット。
  7. 転写活性化因子に作動可能に結合したDNA配列として、更に発現させる所望の導入遺伝子配列を含む請求項記載の導入遺伝子発現用カセット。
  8. 請求項2乃至4のいずれかに記載の転写活性化因子を含むプラスミド。
  9. 請求項5乃至7のいずれかに記載の導入遺伝子発現用カセットを含むプラスミド。
  10. 請求項5乃至7のいずれかに記載の導入遺伝子発現用カセットを含むトランスジェニック植物。
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