JP3879976B2 - プレーナ型電磁アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気信号を用いることにより、磁界発生手段に挟まれた半導体基板の可動部を自在に揺動し得るプレーナ型電磁アクチュエータに関し、特に、上記半導体基板の可動部に設けられた駆動コイルに与える磁界を確保すると共に、装置全体の部品点数を減らして製造工程の効率化を図ることができるプレーナ型電磁アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体製造技術を利用して形成可能な超小型のプレーナ型電磁アクチュエータに関する技術の開発が進められている。従来のこの種のプレーナ型電磁アクチュエータ1は、例えば図4に示すように、支持部材2上に、駆動コイル4を備えた可動部3が揺動可能に形成された半導体基板5と、この半導体基板5を挟んで対向配置され上記駆動コイル4に磁界H(図5参照)を与える磁界発生手段6a,6bと、この磁界発生手段6a,6bの周囲に配置された磁路形成手段7とを備えてなっていた。
【0003】
そして、このようなプレーナ型電磁アクチュエータ1は、上記半導体基板5の可動部3の周縁部に設けられた駆動コイル4に電気信号が流れると、図5に示す磁界発生手段6a,6bの間に発生する磁界Hによって上記駆動コイル4にローレンツ力が働くため、上記駆動コイル4に流れる電流を一定時間ごとに交互に逆向きに流すことにより、上記可動部3が矢印Cに示すように揺動するようになっていた。
【0004】
ここで、図5に示すように、左側の磁界発生手段6aのN極から出て右側の磁界発生手段6bのS極に入る磁力線は、該磁界発生手段6a,6bの中心面8の付近では該中心面8に沿って形成され、また上記中心面8から上下方向に離れるほど外側にふくらんで形成されている。そのため、上記磁界発生手段6a,6bの中心面8の付近が最も磁束密度が高く、磁界Hの強さが最大となっている。したがって、上記半導体基板5は、上記支持部材2の上方にて、半導体基板5の駆動コイル4を含む面と、上記磁界発生手段6a,6bの中心面8とが合致するように配置されていた。すなわち、上記支持部材2の表面には、例えば図5に示すような台座部9,9が設けられ、この台座部9,9上に半導体基板5が載置されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来のプレーナ型電磁アクチュエータ1においては、上記支持部材2の表面に、上記半導体基板5の高さを調節するための台座部9を設けていたので、上記磁界発生手段6a,6bによって上記半導体基板5の駆動コイル4に対して効率的な磁界Hを与えるためには、上記台座部9,9の高さ精度を向上し、さらに該台座部9,9上に半導体基板5を載置するときの取り付け精度を高めなければならなかった。そのため、装置全体の製造工程に手間がかかるという問題点があった。また、上記台座部9自体は、上記半導体基板5の可動部3が揺動する動作に直接寄与するものでなかった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、上記半導体基板の可動部に設けられた駆動コイルに与える磁界を確保すると共に、装置全体の部品点数を減らして製造工程の効率化を図ることができるプレーナ型電磁アクチュエータを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるプレーナ型電磁アクチュエータは、支持部材上に、駆動コイルを備えた可動部が揺動可能に形成された半導体基板と、この半導体基板を挟んで対向配置され上記駆動コイルに磁界を与える磁界発生手段と、この磁界発生手段の周囲に配置された磁路形成手段とを備えてなるプレーナ型電磁アクチュエータにおいて、上記支持部材の表面に上記半導体基板を直接載置し、この半導体基板の可動部に備えられた駆動コイルを含む面に、上記磁界発生手段の上下方向の中心面を一致させるように、上記支持部材の磁界発生手段に対応する位置にあけられた貫通孔に上記磁界発生手段の一部を挿入して該磁界発生手段を配置し、上記磁路形成手段を、上記支持部材の表面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲んで該磁界発生手段を固定する部材と、上記支持部材の裏面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲んで該磁界発生手段を固定する部材とで構成したものである。
【0008】
このような構成により、支持部材の表面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲む磁路形成手段を構成する部材と、支持部材の裏面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲む磁路形成手段を構成する部材とによって、支持部材の磁界発生手段に対応する位置にあけられた貫通孔に磁界発生手段の一部を挿入し、支持部材の表面に直接載置された半導体基板の可動部に備えられた駆動コイルを含む面に上記磁界発生手段の上下方向の中心面を一致させるように配置した状態で磁界発生手段を固定する。
【0011】
さらに、上記支持部材は、非磁性材料からなるものである。これにより、上記非磁性材料からなる支持部材が上記磁界発生手段と磁気結合せず、磁路を形成しないようにする。
【0012】
また、上記支持部材は、その表面に直接載置される半導体基板の可動部に相当する位置に、該可動部の大きさよりも広い面積の凹部を備えてもよい。これにより、上記可動部の大きさよりも広い面積の凹部によって、上記半導体基板の可動部が揺動する空間が確保される。
【0013】
さらにまた、上記支持部材は、その表面に直接載置される半導体基板の可動部に相当する位置に、該可動部の大きさよりも広い開口部を備えてもよい。これにより、上記可動部の大きさよりも広い開口部によって、上記半導体基板の可動部が揺動する空間が確保される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるプレーナ型電磁アクチュエータの実施形態を示す斜視図である。このプレーナ型電磁アクチュエータ10は、半導体製造技術を利用して形成された可動部3を電気信号を用いて自在に揺動制御する装置で、支持部材11上に、半導体基板5と、磁界発生手段6a,6bと、磁路形成手段7とを備えてなる。
【0016】
上記支持部材11は、上記プレーナ型電磁アクチュエータ10の基礎となる部材で、後述の磁路形成手段7の外形よりも大きく形成されている。上記支持部材11上には、半導体基板5が配置されている。この半導体基板5は、半導体製造技術を利用して可動部3を形成するもので、シリコン層を含んでなる。ここで、上記半導体基板5は、一軸回りに揺動可能な可動部3が形成されたものとして説明する。
【0017】
すなわち、上記半導体基板5には、平板状の可動部3と、該可動部3を揺動可能に軸支するトーションバー12,12とが、例えば異方エッチング法により一体的に形成されている。ここで、上記可動部3及びトーションバー12は、上記半導体基板5自体の厚さに比べて薄く形成されており、上記支持部材11上に設置される半導体基板5の可動部3が所定の角度だけ回動できるようになっている。そして、上記可動部3の周縁部には、図1に示すように、駆動コイル4が設けられている。なお、上記駆動コイル4は、例えば電鋳コイル法を施して形成することができる。
【0018】
また、図1に示すように、例えば、上記トーションバー12,12と直交する方向にて、上記半導体基板5の左右両端には、該半導体基板5を挟んで一対の磁界発生手段6a,6bが対向配置されている。この磁界発生手段6a,6bは、上記半導体基板5の可動部3に設けられた駆動コイル4に磁界Hを与えるもので、例えば永久磁石から成り、例えば左側の磁界発生手段6aのN極と右側の磁界発生手段6bのS極とを互いに対向させて配置されている。
【0019】
また、図1に示すように、上記磁界発生手段6a,6bの周囲には、磁路形成手段7が配置されている。この磁路形成手段7は、上記磁界発生手段6a,6b間に発生する磁界が周囲に漏れるのを低減するもので、枠状の形状を有し、例えば鉄などの磁性材料からなる。
【0020】
ここで、本発明においては、図2に示すように、上記支持部材11の表面の略中央部には、上記半導体基板5が直接載置されており、この半導体基板5の駆動コイル4を含む面に、上記磁界発生手段6a,6bの上下方向の中心面8を一致させるように該磁界発生手段6a,6bが配置されている。このとき、上記支持部材11には、上記磁界発生手段6a,6bに対応する位置に、図2に示すように、該磁界発生手段6a,6bが貫通する大きさの一対の貫通孔13,13があけられている。そして、上記磁界発生手段6a,6bは、その一部を上記貫通孔13,13に挿入して保持され、その中心面8に上記半導体基板5の駆動コイル4を含む面が一致するように配置されている。これにより、上述の支持部材11の表面に直接載置された半導体基板5の駆動コイル4に対して、上記磁界発生手段6a,6bによって最大又はそれに近似する強さの磁界Hを与えることができ、上記プレーナ型電磁アクチュエータ10を効率的に作動することができる。また、上記支持部材11の表面に半導体基板5が直接配置されているので、従来のように半導体基板5の高さを調節するための台座部9(図5参照)を設けなくてもよく、装置全体の部品点数を減らして製造工程の効率化を図ることができる。
【0021】
さらに、上記支持部材11上の磁路形成手段7に対応する位置には、図2に示すように、磁路形成手段7が貫通する大きさの貫通孔14があけられている。そして、上記磁路形成手段7は、その一部を上記貫通孔14に挿入して保持され、上記磁界発生手段6a,6bと同様に、その中心面8が上記支持部材11の表面付近に形成されるように配置されている。これにより、上記磁路形成手段7によって、上記左側の磁界発生手段6aのS極から出た磁力線(図示省略)が右側の磁界発生手段6bのN極に入る経路が形成され、上記磁界発生手段6a,6bの間に発生する磁界Hが周囲に漏れるのを低減することができ、該磁界Hの強さを向上することができる。したがって、上記磁界発生手段6a,6bが、上記半導体基板5の可動部3に設けられた駆動コイル4に与える磁界Hの強さをより向上することができる。
【0022】
そして、上記支持部材11は、非磁性材料からなる。これにより、上記非磁性材料からなる支持部材が上記磁界発生手段と磁気結合せず、磁路を形成しないようにすることができる。したがって、図2に示す半導体基板5の駆動コイル4に与える磁界Hの強さが影響を受けないようにできる。
【0023】
また、図示省略したが、上記支持部材11には、その表面に直接載置される半導体基板5の可動部3に相当する位置に、該可動部3の大きさよりも広い面積の凹部を備えてもよい。これにより、上記可動部3の大きさよりも広い面積の凹部によって、上記半導体基板5の可動部3が揺動する空間を確保することができる。したがって、例えば上記半導体基板5の可動部3が大きく揺動しても、その動作が上記支持部材11によって妨げられない。
【0024】
図3は本発明によるプレーナ型電磁アクチュエータの第2の実施形態を示す図1のA−A線断面図である。この実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ10の支持部材15においては、該支持部材15に直接載置された半導体基板5の可動部3に相当する位置に、該可動部3の大きさよりも広い開口部16が設けられている。これにより、上記開口部16によって、上記半導体基板5の可動部3が揺動する空間を確保することができる。この場合は、例えば上記半導体基板5の可動部3が、図3に示す矢印Dのように大きく揺動しても、その動作が上記支持部材15によって妨げられない。また、例えば図3に示すように、上記可動部3の下面に全反射ミラー17を形成し、該全反射ミラー17にレーザー光18を照射することにより、上記プレーナ型電磁アクチュエータ10をガルバノミラーとして適用することができる。
【0025】
また、図3に示す支持部材15は、図2に示す支持部材11に設けられた貫通孔14を設けずに、磁路形成手段7として上記支持部材15の表面側及び裏面側にそれぞれ磁路形成手段7a,7bを備えるようにしてもよい。この場合、上記磁路形成手段7aは、上記支持部材15の表面側にて上記磁界発生手段6a,6bの周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲む枠状の磁性材料からなる部材であり、上記磁路形成手段7bは、上記支持部材15の裏面側にて上記磁界発生手段6a,6bの周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲む枠状の磁性材料からなる部材である。これにより、上記上下2個の磁路形成手段7a,7bによって、上記磁界発生手段6a,6bが取り囲まれて固定され、磁界Hが周囲に漏れるのを低減することができる。この場合は、上記半導体基板5の駆動コイル4に与える磁界Hの強さを向上することができる。
【0026】
なお、上述の説明において、上記半導体基板5は、一軸回りに揺動可能な可動部3が形成されたものとして説明したが、これに限られず、例えば直交する二軸回りに揺動可能な可動部が形成されたもの(図示省略)でもよい。また、上記磁界発生手段6a,6bは、図1に示すように、トーションバー12,12と直交する方向に上記半導体基板5を挟んで対向配置されたものとして説明したが、上記半導体基板5の構成にあわせて配置すればよい。例えば、半導体基板に形成された直交する二軸回りに揺動可能な可動部の一の対角線方向に上記磁界発生手段6a,6bを対向配置してもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る発明によれば、支持部材の表面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲んだ部材と、支持部材の裏面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲んだ部材とで磁路形成手段を構成することができ、この二つの部材によって、支持部材の磁界発生手段に対応する位置にあけられた貫通孔に磁界発生手段の一部を挿入し、支持部材の表面に直接載置された半導体基板の可動部に備えられた駆動コイルを含む面に、磁界発生手段の上下方向の中心面を一致させるように配置した状態で磁界発生手段を固定することができる。これにより、上記駆動コイルに与える磁界を確保することができ、プレーナ型電磁アクチュエータを効率的に作動することができる。また、駆動コイルを含む面と磁界発生手段の上下方向の中心面とを一致させるために上記半導体基板を載置するための台座部のような特別な部材を省略化することができ、装置全体の部品点数を減らして製造工程の効率化を図ることができる。さらに、上記磁路形成手段によって、磁界が周囲に漏れるのを低減することができ、上記磁界発生手段の間に発生する磁界の強さを向上することができる。
【0030】
また、請求項2に係る発明によれば、支持部材は、非磁性材料からなるものであることにより、上記非磁性材料からなる支持部材が上記磁界発生手段と磁気結合せず、磁路を形成しないようにすることができる。したがって、半導体基板の駆動コイルに与える磁界の強さが影響を受けないようにできる。
【0031】
さらに、請求項3に係る発明によれば、支持部材は、その表面に直接載置される半導体基板の可動部に相当する位置に、該可動部の大きさよりも広い面積の凹部を備えたことにより、上記可動部の大きさよりも広い面積の凹部によって、上記半導体基板の可動部が揺動する空間を確保することができる。したがって、上記半導体基板の可動部が大きく揺動しても、その動作が上記支持部材によって妨げられない。
【0032】
そして、請求項4に係る発明によれば、支持部材は、その表面に直接載置される半導体基板の可動部に相当する位置に、該可動部の大きさよりも広い開口部を備えたことにより、上記可動部の大きさよりも広い開口部によって、上記半導体基板の可動部が揺動する空間を確保することができる。したがって、上記可動部が大きく揺動しても、その動作が上記支持部材によって妨げられない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるプレーナ型電磁アクチュエータの実施形態を示す斜視図である。
【図2】 上記プレーナ型電磁アクチュエータの動作を説明するA−A線断面図である。
【図3】 上記プレーナ型電磁アクチュエータの第2の実施形態を示すA−A線断面図である。
【図4】 従来のプレーナ型電磁アクチュエータを説明する斜視図である。
【図5】 上記プレーナ型電磁アクチュエータの動作を説明するB−B線断面図である。
Claims (4)
- 支持部材上に、駆動コイルを備えた可動部が揺動可能に形成された半導体基板と、この半導体基板を挟んで対向配置され上記駆動コイルに磁界を与える磁界発生手段と、この磁界発生手段の周囲に配置された磁路形成手段とを備えてなるプレーナ型電磁アクチュエータにおいて、
上記支持部材の表面に上記半導体基板を直接載置し、この半導体基板の可動部に備えられた駆動コイルを含む面に、上記磁界発生手段の上下方向の中心面を一致させるように、上記支持部材の磁界発生手段に対応する位置にあけられた貫通孔に上記磁界発生手段の一部を挿入して該磁界発生手段を配置し、上記磁路形成手段を、上記支持部材の表面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲んで該磁界発生手段を固定する部材と、上記支持部材の裏面側にて磁界発生手段の周りをその突出部分と略同じ高さで取り囲んで該磁界発生手段を固定する部材とで構成したことを特徴とするプレーナ型電磁アクチュエータ。 - 上記支持部材は、非磁性材料から成ることを特徴とした請求項1記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
- 上記支持部材は、その表面に直接載置される半導体基板の可動部に相当する位置に、該可動部の大きさよりも広い面積の凹部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
- 上記支持部材は、その表面に直接載置される半導体基板の可動部に相当する位置に、該可動部の大きさよりも広い開口部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
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