JP3879293B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に関し、特に、ポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、前記ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備えた燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば内燃機関(ディーゼルエンジン)の燃料噴射装置には、ディーゼル燃料噴射ポンプが用いられており、このポンプには、プランジャの往復動により拡縮するポンプ室が設けられている。
【0003】
前記燃料噴射装置は、ポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備え、ポンプ室からの燃料圧送途中にスピル弁を開閉制御して燃料噴射量を制御する。
【0004】
また、近年、上述したポンプは、低公害、低燃費の社会的ニーズから高噴射圧化が進んでいる。それに伴い、ポンプ室の高圧化に対応し、スピル弁の高応答性と高保持力が要求されて、スピル弁が大型化すると共に、スピル弁のソレノイドへの駆動電流が増大している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
こうした従来の装置では、通電電流の増加は、スピル弁及び通電回路の発熱を促進し、その対策として冷却装置が必要となる。
また、この発熱対策として、スピル弁への通電時間を短くするために、閉弁時期をできるだけ遅らせている。この様な状態で、燃料遮断弁が閉故障(閉弁した状態で故障)すると、低速域では、スピル弁からの燃料吸入が充分に行われるため、燃料遮断弁の閉故障による噴射量異常が現れないが、高速域では、燃料遮断弁の閉故障による燃料吸入不足から、ポンプの破損を招く場合がある。
【0006】
この対策として、燃料遮断弁の閉故障を検出する技術が考えられる。例えば、ポンプ室に燃料を供給する供給流路がポンプ室と連通し、燃料吸入する時期に、例えばアイドル時や始動時において、一時的にスピル弁の閉弁時期を早めることで、スピル弁側からの燃料吸入を遮断し、それによりエンストが発生した場合には、閉故障したと判断することができる。
【0007】
ところが、この技術では、センサ精度による誤認識(例えばアイドル時等を検出するためのニュートラルスイッチの故障)や、エンジン系の故障又は外乱等によりエンストした場合には、燃料遮断弁の閉故障であると誤判定する可能性がある。
【0008】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、燃料遮断弁の故障を正確に判断できる燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)かかる目的を達成するための請求項1の発明は、
プランジャの往復動により拡縮するポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、前記ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備え、内燃機関に燃料を噴射するための噴射量指令値に応じて前記スピル弁の開閉を制御する燃料噴射装置において、前記内燃機関のアイドル運転時に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化から、前記燃料遮断弁の異常を判定するアイドル運転時異常判定手段と、前記内燃機関の始動時に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化から、前記燃料遮断弁の異常を判定する始動時異常判定手段と、を備え、前記内燃機関のアイドル運転時又は始動時に対応して、前記アイドル運転時異常判定手段と前記始動時異常判定手段とを切り換えて、前記燃料遮断弁の異常を検出することを特徴とする燃料噴射装置を要旨とする。
【0010】
本発明では、アイドル運転時であるか始動時であるかを区別し、アイドル運転時の場合には、アイドル運転時異常判定手段を実行し、始動時の場合には、始動時異常判定手段を実行する。
具体的には、アイドル運転時異常判定手段により、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化(例えば内燃機関の停止(エンスト)の発生)から、燃料遮断弁の異常を判定する。
【0011】
つまり、燃料遮断弁が閉故障している場合に、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制すると、ポンプ室内に導入される燃料が少なくなり、結果として噴射量が低減して例えばエンストが発生する。よって、ここでは、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより例えばエンストが発生した場合には、燃料遮断弁に閉故障が発生したと判断するものである。
【0012】
同様な原理により、始動時異常判定手段により、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化(例えばエンストの発生)から、燃料遮断弁の異常を判定することができる。
この様に、本発明では、アイドル運転時の場合には、アイドル運転時異常判定手段を実行し、始動時の場合には、始動時異常判定手段を実行するので、速やかに且つ確実に燃料遮断弁の異常を判定することができる。
【0013】
つまり、両異常判定手段を適宜切り換えて実行することにより、異常判定を行うタイミングが速くなり、しかも複数回異常判定を行う場合には、その判定の頻度が大きくなるので、速やかな判定が可能となる。また、アイドル運転時と始動時の様に、異なる状況において異常判定を行うことにより、誤差やノイズ等の影響を排除して、正確な異常判定を行うことができる。
【0014】
(2)請求項2の発明は、
前記燃料の吸入を抑制する手段は、前記供給流路が前記ポンプ室と連通し、燃料吸入する時期にまで、前記スピル弁の閉弁時期を一時的に早める前出し制御手段であることを特徴とする前記請求項1に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0015】
本発明は、燃料の吸入を抑制する手段を例示したものであり、ここでは、前出し制御手段により、供給流路がポンプ室と連通し、燃料吸入する時期にまで、スピル弁の閉弁時期を一時的に早める。
例えば図3に示す様に、供給流路の開かれている期間(詳しくはカムリフトの吸入が行われる期間)まで、スピル弁の閉弁時期を早める。これにより、供給流路が開いている場合であっても、スピル弁側からは、燃料の吸入が抑制されるので、仮に供給流路に配置された燃料遮断弁が閉故障している場合には、例えばエンストが発生する。従って、このエンストの発生の有無により、燃料遮断弁の異常を判定することができる。
【0016】
(3)請求項3の発明は、
前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、その変化の回数をカウントし、該カウント数に基づいて、前記燃料遮断弁の異常の程度を判断することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0017】
本発明は、燃料遮断弁の異常の程度を判定する手段を例示したものである。例えばアイドル運転時異常判定手段や始動時異常判定手段により、燃料の供給を抑制した場合に、運転状態の変化(例えばエンスト)が発生したときには、1回で結論をだすのでなく、各異常判定手段を実行した際に例えばエンストした回数をカウントしてゆく。従って、例えば、カウント数が多くなった場合には、燃料遮断弁が完全に故障していると判断でき、それほどカウント数が多くない場合には、燃料遮断弁の故障の可能性があると判断することができる。よって、そのカウント数に対応した判断結果に応じて、例えば噴射量の低減等の適切な対応策を実施することができる。
【0018】
(4)請求項4の発明は、
前記アイドル運転時異常判定手段を実行し、それにより前記内燃機関の運転状態が変化した場合には、次に前記始動時異常判定手段を実行することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0019】
本発明では、アイドル運転時異常判定手段のみを連続的に実施するのではなく、アイドル運転時異常判定手段の実行によって運転状態の変化(例えばエンスト)が発生した直後には、始動時異常判定手段を実行する。
例えば、一旦エンストした場合には、通常は始動がなされるので、例えばエンスト直後に、始動時異常判定手段を実施することにより、次にアイドル運転時異常判定手段を実施した場合に比べて、速やかな異常判定が可能となる。
【0020】
(5)請求項5の発明は、
前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数に応じて、前記アイドル運転時異常判定手段と前記始動時異常判定手段とを切り換えることを特徴とする前記請求項4に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0021】
本発明は、前記請求項4の発明を例示したものである。例えばアイドル運転時異常判定手段により運転状態の変化(例えばエンスト)が発生した直後には、(そのアイドル運転時からカウントすると)カウント数は1であるので、カウント数が1の場合に、始動時異常判定手段を実施するのである。但し、ここでは、それより前のカウント数とは別なカウント数を用いた場合を考えている。
【0022】
尚、両異常判定手段の実施における例えば全エンスト数が0の場合には、燃料遮断弁が故障していないか、まだ判定していないため、頻度の高いアイドル運転時異常判定手段を実施することが望ましい。
(6)請求項6の発明は、
前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、ポンプの破損を防止可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0023】
本発明では、スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、運転状態の変化(例えばエンスト)が発生したときには、燃料遮断弁に閉故障が発生したと判断して、ポンプの破損を防止可能な程度まで、噴射量を低減する。
つまり、燃料遮断弁に閉故障が発生しているときに、通常(燃料遮断弁の正常時)と同様に、多くの燃料を噴射しようとすると、特定条件(高回転高負荷)で、燃料吸入不足によりプランジャが油膜切れとなり固着するという問題が生じ、ポンプが破損する可能性があるので、本発明では、その様な場合には、燃料の噴射量を低減するのである。これにより、始動不能等の不具合の発生を防止することができる。
【0024】
(7)請求項7の発明は、
前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数が、第1判定値以上の場合に、ポンプの破損を防止可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項6に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0025】
本発明は、前記請求項6の発明を例示したものである。ここでは、運転状態が変化(例えばエンスト)した回数をカウントし、そのカウント数が第1判定値(例えば1回)以上の場合に、ポンプの破損を防止可能な程度まで、噴射量を低減するので、確実にポンプの破損を防止できる。
【0026】
(8)請求項8の発明は、
前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、車両の退避行動が可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0027】
本発明では、スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、運転状態の変化(例えばエンスト)が発生したときには、燃料遮断弁に閉故障が発生したと判断して、車両の退避行動が可能な程度まで、噴射量を低減する。
つまり、燃料遮断弁に閉故障が発生しているときでも、危険の回避等のために、車両を走行させたい場合があるので、本発明では、その様な場合には、例えばスピル弁を調節して、ポンプの破損を起こさないレベルにおいて、車両の退避行動が可能な程度まで燃料の噴射量を低減するのである。これにより、安全性が向上する。
【0028】
(9)請求項9の発明は、
前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数が、前記第1判定値を上回る第2判定値以上の場合には、車両の退避行動が可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項8に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0029】
本発明は、前記請求項8の発明を例示したものである。ここでは、運転状態が変化(例えばエンスト)した回数をカウントし、そのカウント数が第1判定値を上回る第2判定値(例えば10回)以上の場合に、車両の退避行動が可能な程度まで、噴射量を低減するので、一層安全な走行が可能である。
【0030】
(10)請求項10の発明は、
前記ポンプの破損を防止可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量よりも、前記車両の退避行動が可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量を低減することを特徴とする前記請求項6〜9のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0031】
本発明は、噴射量の低減の程度を例示したものである。ここでは、例えば図8に例示する様に、ポンプの破損を防止可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量よりも、車両の退避行動が可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量を低減している。
【0032】
よって、例えば図8の領域▲1▼にまで噴射量を低減することにより、ポンプの破損を防止できる。また、たとえ、燃料遮断弁が完全に故障している場合でも、領域▲2▼まで噴射量を低減することにより、ポンプの破損を防止するとともに、スピル弁を調節することにより、車両の退避行動が可能となる。
【0033】
尚、スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、内燃機関の運転状態が変化(例えばエンスト)したときには、例えば故障ランプを点灯して、運転者に異常を報知することが望ましい。その場合には、例えばエンストした回数をカウントし、そのカウント数が所定の報知判定値以上の場合には、異常を報知する手段を採用できる。
【0034】
尚、前記各請求項において、内燃機関の運転状態の変化としては、例えば内燃機関の停止(エンスト)が挙げられる。
また、前記エンスト以外に、内燃機関の運転状態の変化としては、例えばエンジン回転数の落込みの程度の変化(即ち過度の落込み)が挙げられる。従って、例えば前出し制御手段によりスピル弁の閉弁時期を一時的に早めた場合に、実際に発生したエンジン回転数の落込み量が、(燃料遮断弁が正常の場合に)前出し制御手段により発生する落込み量より大きいときには、燃料遮断弁の閉故障であると判断することができる。
【0035】
更に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制する方法としては、スピル弁側からの燃料吸入の禁止(カット)が挙げられるが、上述した内燃機関の運転状態の変化を検出できる程度まで、燃料の吸入量を低減する方法も考えられる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料噴射装置の実施の形態の例(実施例)を、図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例)
a)図1に示すように、本実施例の燃料噴射装置は、内燃機関(ディーゼルエンジン)に燃料を噴射供給する装置であり、そのため、図示しない燃料室から燃料を汲み上げる噴射ポンプ(ディーゼル燃料噴射ポンプ)1を備えている。
【0037】
前記噴射ポンプ1には、往復動可能に支持されたプランジャ3が設けられており、このプランジャ3には、カムプレート5が取り付けられ、カムプレート5に対向してカムローラ7が設けられている。
よって、図示しない内燃機関の駆動軸の回転と共にカムプレート5が回転すると、カムプレート5はプランジャ3と共に往復動する。このプランジャ3の往復動により、ポンプ室9の容積が拡縮し、ポンプ室9内の燃料が加圧されて、燃料噴射弁11に供給される。燃料噴射弁11に供給された燃料は、図示しない燃焼室内に噴射される。
【0038】
前記ポンプ室9には、供給流路13とスピル流路15とが接続されており、供給流路13とスピル流路15とは図示しない燃料室に連通されている。
また、供給流路13には、燃料遮断弁(FCV)17が介装されており、スピル流路15には、スピル弁(SPV)19が介装されている。本実施例では、燃料遮断弁17は、励磁信号が入力されたときに開弁し、常時は、図示しないばねの付勢力により閉弁する構造(常閉弁)であり、スピル弁19は、励磁信号が入力されたときに閉弁し、常時は、図示しないばねの付勢力により開弁する構造(常開弁)である。
【0039】
更に、上述した構造の燃料噴射装置を制御するために、電子制御回路(ECU)が設けられている。この電子制御回路21は、周知のCPU23、ROM25、RAM27を論理演算回路の中心として構成され、外部と入出力を行う入出力回路29をコモンバス31を介して相互に接続されている。
【0040】
前記入出力回路29には、内燃機関の運転状態を検出するために、車速を検出する車速センサ33、冷却水温を検出する水温センサ35、エンジン回転数を検出する回転数センサ37、運転者により操作される図示しないアクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサ39、ギヤのニュートラルを検出するニュートラススイッチ(SW)41、イグニッションキーのオン・オフを検出するIGスイッチ43等が接続されている。
【0041】
また、入出力回路29には、運転者に(燃料遮断弁17の)異常の発生を報知する故障ランプ45、燃料噴射弁11やスピル弁19を駆動するドライブ回路47等が接続されている。
従って、電子制御回路21のCPU23では、各センサやスイッチからの信号を入出力回路29を介して入力し、これらの信号及びROM25、RAM27内のデータや予め記憶された制御プログラムに基づいて、内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射量等を算出し、その算出値に基づいて入出力回路29を介してドライブ回路47に駆動信号を出力する。
【0042】
よって、ドライブ回路47では、駆動信号を受けて、燃料噴射弁17やスピル弁19に励磁信号を出力して、燃料噴射弁11やスピル弁19の開閉状態を制御して、燃料噴射量を調節する。
b)次に、前述した電子制御回路47において行われる制御処理について説明する。
【0043】
(i)まず、スピル弁19の基本的な制御処理(SPV開閉制御処理)について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
図2に示す様に、まず、内燃機関の運転が開始されると、ステップ(S)100にて、回転数センサ37により検出されたエンジン回転数NEとアクセルセンサ32により検出されたアクセル開度ACCPFとから、図示しないマップ等に基づいて噴射量指令値QFINを算出する。
【0044】
次に、ステップ110にて、スピル弁19の閉弁時期QPANGFを、回転数センサ37により検出されたエンジン回転数NEと前回の開弁時期QANGFとから算出する。
そして、ステップ120にて、スピル弁19の開弁時期QANGFを、回転数センサ37により検出されたエンジン回転数NEと噴射量指令値QFINとから算出する。
【0045】
続いて、ステップ130にて、この算出した閉弁時期QPANGFと開弁時期QANGFとに応じた駆動信号を、ドライブ回路47に出力する。ドライブ回路67は、この駆動信号を受けてスピル弁19に駆動電流を出力する。
本実施例では、図3に示すように、供給流路13は、ポンプ室9が圧縮された後に、プランジャ3の回転及びプランジャ3先端のスリットにより連通されて、プランジャ3の後退と共に、ポンプ室9には、供給流路13及びスピル流路15から燃料が吸入される。そして、ポンプ室9が拡張された後、供給流路13は遮断される。
【0046】
スピル弁19は、プランジャ3がポンプ室9を圧縮し始める閉弁時期QPANGFに閉弁され、これによりポンプ室9から圧縮された燃料が燃料噴射弁11に供給される。また、開弁時期QANGFとなると、スピル弁19が開弁されて、ポンプ室9からスピル流路15を通って燃料が燃料室に戻される。よって、閉弁時期QPANGFと開弁時期QANGFとの間の期間で燃料噴射弁11から燃料が噴射される。
【0047】
そして、上述したSPV開閉制御処理が繰り返し実行されている間、後に詳述する様に、図3(ハ)の点線で示すスピル弁19の前出し制御処理が繰り返し実行される。
(ii)次に、燃料遮断弁17の基本的な制御処理(FCV開閉制御処理)について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
図4に示す様に、まず、ステップ200にて、イグニッションキーがオン(ON)されたか否かを、IGスイッチ43がオンであるか否かによって判定する。
ここで肯定判断されると、ステップ210にて、ドライブ回路47により、燃料遮断弁17に通電し、供給流路13を開いて、燃料をポンプ室9に供給する。これにより、燃料はカムリフトに応じて吸入される。
【0049】
一方、ステップ220では、イグニッションキーがオフ(OFF)されたか否かを、IGスイッチ43がオフであるか否かによって判定する。
ここで肯定判断されると、ステップ230にて、ドライブ回路47により、燃料遮断弁17への通電を停止し、供給流路13を閉じて、燃料のポンプ室9への供給を中止する。これにより、燃料の吸入がカットされる。
【0050】
(iii)次に、本実施例の制御処理の要部である燃料遮断弁17の故障判定処理(FCV閉故障判定処理)について説明する。
図5のフローチャートに示す様に、ステップ300にて、故障カウンタが、完全な故障であることを示す第2判定値KFCV2(例えば10回)未満であるか否かを判定する。ここで否定判断されると、後述するステップ350に進み、一方肯定判断されると、ステップ310に進む。尚、この故障カウンタとは、後述する(A),(B)の両異常判定処理に伴うエンストが発生する毎に計数されるカウンタである。
【0051】
ステップ310では、故障カウンタが、両判定の切替タイミングを示すKRUN(例えば1回)を下回るか否かによって、次にどちらの異常判定処理を行うべきかを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ320に進み、一方否定判断されると、ステップ330に進む。
【0052】
つまり、故障カウンタがKRUNを下回る場合(即ち故障カウンタが0の場合)には、燃料遮断弁17が故障していないか、或は、まだ異常判定を実施していないかであるので、その時には、頻度の高い(A)アイドル運転時異常判定手段を実施するためにステップ320に進み、そうでない場合には、(B)始動時異常判定処理を実施するためにステップ330に進むのである。
【0053】
従って、ステップ320では、後に図6にて詳述するように、(A)アイドル時異常判定処理を行う、一方、ステップ330では、後に図7にて詳述するように、(B)始動時異常判定処理を行う。
続くステップ340では、故障カウンタが第2判定値KFCV2(例えば10回)以上であるか否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ350に進み、一方否定判断されると、ステップ360に進む。
【0054】
ステップ350では、故障カウンタ数が10回以上と多く、完全な故障の発生、即ち燃料遮断弁17が確実に閉故障していると判断されたので、その対策を実施する。
具体的には、最大噴射量FULLQを車両の退避走行が可能な程度に低減する。例えば図8の1点鎖線で示すように、最大噴射量FULLQを低減して、噴射量を領域▲2▼内の少ない範囲に設定する。また、運転者への警告(ウォーニング)にために故障ランプ45を点灯するとともに、異常の内容をダイアグコードに記憶する。
【0055】
一方、ステップ350では、故障カウンタが前記第2判定値より小さい第1判定値KFCV1(例えば1回)以上であるか否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ370に進み、一方否定判断されると、ステップ380に進む。
【0056】
ステップ360では、故障カウンタ数が1〜9回であり、燃料遮断弁17の閉故障の可能性が高いので、その対策を実施する。
具体的には、最大噴射量FULLQを噴射ポンプ1の破損を防止できる程度に低減する。例えば図8の破線で示すように、最大噴射量FULLQを低減して、噴射量を領域▲1▼以下(▲2▼を含むこともある)内の少ない範囲に設定する。また、異常の内容をダイアグコードに記憶する。
【0057】
一方、ステップ380では、故障カウンタ数が0回であり、燃料遮断弁17は正常であると判断できるので、例えば図8の実線で示すように、通常の最大噴射量以下の領域で噴射量を設定する。
(iv)次に、前記ステップ320にて実施される(A)アイドル時異常判定処理について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0058】
図6のステップ400にて、まず、アイドル運転時(アイドル時)であるかどうかを、アイドル条件を満たすか否かにより判定する。ここで肯定判断されるとステップ410に進み、一方否定判断されると、一旦本処理を終了する。
このアイドル条件とは、例えばアクセルセンサ32により検出されたアクセル開度が0%、車速センサ33により検出された車速が0km/h、ニュートラルSW41がギアのニュートラルを示すON、回転数センサ30により検出されたエンジン回転数が所定のアイドル回転数の範囲内、水温センサ35により検出された水温が60℃以上であり、それらの全ての条件を満たした場合に、アイドル時であると判定する。
【0059】
そして、アイドル時であると判断されると、ステップ410にて、スピル弁19の閉弁時期QPANGFを、KTSPV1時間(例えば1.5秒)前出しする処理を実行する。この前出し制御処理では、前記ステップ110の処理の実行により算出した閉弁時期QPANGFを、図3(ハ)に破線で示すように、供給流路13が連通してポンプ室9へ燃料を吸入する工程の時期にまで早める処理を行う。
【0060】
本実施例では、供給流路13が連通した直後の時期にまでスピル弁19の閉弁時期を早めている。尚、供給流路13が連通する前の時期にまでスピル弁19の閉弁時期を早めると、ポンプ室9への燃料供給は供給流路13のみとなる。この状態において、燃料遮断弁17が閉状態で故障している場合、ポンプ室9にはまったく燃料が供給されなくなる。
【0061】
つまり、燃料遮断弁17が閉弁した状態で故障したときには、供給流路13からポンプ室8には燃料が供給されなくなり、また、スピル弁19の閉弁時期を早めることにより、スピル流路15からもポンプ室9に燃料が供給されなくなるので、前記前出し制御処理によって、エンストを起こすのである。尚、エンストを起こしても、アイドル運転中であるので、安全性が害されることはない。
【0062】
次に、ステップ420では、判定時間KTENST1(例えば2.5秒)内に、エンストしているか否かを判断する。ここで肯定判断されるとステップ430に進み、一方否定判断されるとステップ450に進む。尚、エンストしたか否かは、回転数センサ30により検出されるエンジン回転数NEが0となったか否か等により判断すればよい。
【0063】
ステップ430では、エンストしたので、燃料遮断弁17に閉故障が発生したと判断し、続くステップ440にて、故障カウンタをインクリメントし、一旦本処理を終了する。
一方、ステップ450では、エンストしないので、燃料遮断弁17は正常に動作していると判断して、続くステップ460にて、故障カウンタをクリアして、一旦本処理を一旦終了する。
【0064】
(v)次に、前記ステップ330にて実施される(B)始動時異常判定処理について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
図7にステップ500にて、まず、始動時であるかどうかを、始動条件を満たすか否かにより判定する。ここで肯定判断されるとステップ510に進み、一方否定判断されると、一旦本処理を終了する。
【0065】
この始動条件とは、例えばIGSW43がON(即ちスタータの始動を示すON)、回転数センサ30により検出されたエンジン回転数が所定の700rpm以上、水温センサ35により検出された水温が60℃以上であり、それらの全ての条件を満たした場合に、始動時であると判定する。
【0066】
そして、始動時であると判断されると、ステップ510にて、スピル弁19の閉弁時期QPANGFを、KTSPV2時間(例えば1.5秒)前出しする処理を実行する。
次に、ステップ520では、判定時間KTENST2(例えば2.5秒)内に、エンストしているか否かを判断する。ここで肯定判断されるとステップ530に進み、一方否定判断されるとステップ550に進む。
【0067】
ステップ530では、エンストしたので、燃料遮断弁17に閉故障が発生したと判断し、続くステップ540にて、故障カウンタをインクリメントし、一旦本処理を終了する。
一方、ステップ550では、エンストしないので(即ち始動できたので)、燃料遮断弁17は正常に動作していると判断して、続くステップ560にて、故障カウンタをクリアして、一旦本処理を一旦終了する。
【0068】
尚、この場合でも、同様に燃料遮断弁17の故障を検出できると共に、始動時に判断するので、安全性が害されることはない。
c)以上詳述した様に、本実施例では、故障カウンタのカウント数に応じて、アイドル時異常判定処理と始動時判定処理とを切り換えて実行しているので、燃料遮断弁17の閉故障を迅速に且つ正確に検出することができる。
【0069】
例えば、まず、アイドル時異常判定処理により故障を判定することで、判定処理の回数が多くなり(通常の運転状態では、始動1個に対してアイドル数個のため)、それにより、早めに異常を検出することができる。また、アイドル時異常判定処理によりエンストが発生した場合には、次に始動がなされるはずであるので、この様に、アイドル時異常判定処理の直後に始動時異常判定処理を実行することにより、連続してアイドル時異常判定処理を実行する場合と比較して、速やかに異常の検出ができる。
【0070】
また、同じ様なアイドル時異常判定処理を繰り返す場合には、何等かの原因(例えばアイドル時に特有の異常やノイズ)により、正確に判定が行えない可能性もあるが、始動時異常判定処理も行うことにより、判定の精度が向上するという効果がある。
【0071】
更に、本実施例では、故障カウンタのカウンタ数が1〜9回のそれほど多くない場合には、燃料遮断弁17の閉故障の可能性があると判断して、噴射ポンプ1が破損しない程度に最大噴射量を低減している。これにより、噴射ポンプ1の破損を防止できるので、始動不能等の不具合を回避できる。
【0072】
その上、本実施例では、故障カウンタのカウンタ数が10回以上と多い場合には、燃料遮断弁17が完全に故障していると判断して、車両の退避走行が可能な程度に大きく最大噴射量を低減している。これにより、噴射ポンプ1の破損を防止しつつ、車両の退避走行できるので、安全性が向上する。
【0073】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の燃料噴射装置の概略構成図である。
【図2】 実施例の電子制御回路で行われるSPV開閉制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】 実施例のスピル弁と供給流路の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】 実施例の電子制御回路で行われるFCV開閉制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】 実施例の電子制御回路で行われるFCV閉故障判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】 実施例の電子制御回路で行われるアイドル時異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】 実施例の電子制御回路で行われる始動時異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】 実施例の電子制御回路に記憶された燃料噴射量のマップの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1…噴射ポンプ 3…プランジャ
9…ポンプ室 11…燃料噴射弁
13…供給流路 15…スピル流路
17…燃料遮断弁 19…スピル弁
21…電子制御回路 33…車速センサ
35…水温センサ 37…アクセルセンサ
39…回転数センサ 41…ニュートラルスイッチ
43…IGスイッチ 45…故障ランプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に関し、特に、ポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、前記ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備えた燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば内燃機関(ディーゼルエンジン)の燃料噴射装置には、ディーゼル燃料噴射ポンプが用いられており、このポンプには、プランジャの往復動により拡縮するポンプ室が設けられている。
【0003】
前記燃料噴射装置は、ポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備え、ポンプ室からの燃料圧送途中にスピル弁を開閉制御して燃料噴射量を制御する。
【0004】
また、近年、上述したポンプは、低公害、低燃費の社会的ニーズから高噴射圧化が進んでいる。それに伴い、ポンプ室の高圧化に対応し、スピル弁の高応答性と高保持力が要求されて、スピル弁が大型化すると共に、スピル弁のソレノイドへの駆動電流が増大している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
こうした従来の装置では、通電電流の増加は、スピル弁及び通電回路の発熱を促進し、その対策として冷却装置が必要となる。
また、この発熱対策として、スピル弁への通電時間を短くするために、閉弁時期をできるだけ遅らせている。この様な状態で、燃料遮断弁が閉故障(閉弁した状態で故障)すると、低速域では、スピル弁からの燃料吸入が充分に行われるため、燃料遮断弁の閉故障による噴射量異常が現れないが、高速域では、燃料遮断弁の閉故障による燃料吸入不足から、ポンプの破損を招く場合がある。
【0006】
この対策として、燃料遮断弁の閉故障を検出する技術が考えられる。例えば、ポンプ室に燃料を供給する供給流路がポンプ室と連通し、燃料吸入する時期に、例えばアイドル時や始動時において、一時的にスピル弁の閉弁時期を早めることで、スピル弁側からの燃料吸入を遮断し、それによりエンストが発生した場合には、閉故障したと判断することができる。
【0007】
ところが、この技術では、センサ精度による誤認識(例えばアイドル時等を検出するためのニュートラルスイッチの故障)や、エンジン系の故障又は外乱等によりエンストした場合には、燃料遮断弁の閉故障であると誤判定する可能性がある。
【0008】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、燃料遮断弁の故障を正確に判断できる燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)かかる目的を達成するための請求項1の発明は、
プランジャの往復動により拡縮するポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、前記ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備え、内燃機関に燃料を噴射するための噴射量指令値に応じて前記スピル弁の開閉を制御する燃料噴射装置において、前記内燃機関のアイドル運転時に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化から、前記燃料遮断弁の異常を判定するアイドル運転時異常判定手段と、前記内燃機関の始動時に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化から、前記燃料遮断弁の異常を判定する始動時異常判定手段と、を備え、前記内燃機関のアイドル運転時又は始動時に対応して、前記アイドル運転時異常判定手段と前記始動時異常判定手段とを切り換えて、前記燃料遮断弁の異常を検出することを特徴とする燃料噴射装置を要旨とする。
【0010】
本発明では、アイドル運転時であるか始動時であるかを区別し、アイドル運転時の場合には、アイドル運転時異常判定手段を実行し、始動時の場合には、始動時異常判定手段を実行する。
具体的には、アイドル運転時異常判定手段により、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化(例えば内燃機関の停止(エンスト)の発生)から、燃料遮断弁の異常を判定する。
【0011】
つまり、燃料遮断弁が閉故障している場合に、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制すると、ポンプ室内に導入される燃料が少なくなり、結果として噴射量が低減して例えばエンストが発生する。よって、ここでは、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより例えばエンストが発生した場合には、燃料遮断弁に閉故障が発生したと判断するものである。
【0012】
同様な原理により、始動時異常判定手段により、スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化(例えばエンストの発生)から、燃料遮断弁の異常を判定することができる。
この様に、本発明では、アイドル運転時の場合には、アイドル運転時異常判定手段を実行し、始動時の場合には、始動時異常判定手段を実行するので、速やかに且つ確実に燃料遮断弁の異常を判定することができる。
【0013】
つまり、両異常判定手段を適宜切り換えて実行することにより、異常判定を行うタイミングが速くなり、しかも複数回異常判定を行う場合には、その判定の頻度が大きくなるので、速やかな判定が可能となる。また、アイドル運転時と始動時の様に、異なる状況において異常判定を行うことにより、誤差やノイズ等の影響を排除して、正確な異常判定を行うことができる。
【0014】
(2)請求項2の発明は、
前記燃料の吸入を抑制する手段は、前記供給流路が前記ポンプ室と連通し、燃料吸入する時期にまで、前記スピル弁の閉弁時期を一時的に早める前出し制御手段であることを特徴とする前記請求項1に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0015】
本発明は、燃料の吸入を抑制する手段を例示したものであり、ここでは、前出し制御手段により、供給流路がポンプ室と連通し、燃料吸入する時期にまで、スピル弁の閉弁時期を一時的に早める。
例えば図3に示す様に、供給流路の開かれている期間(詳しくはカムリフトの吸入が行われる期間)まで、スピル弁の閉弁時期を早める。これにより、供給流路が開いている場合であっても、スピル弁側からは、燃料の吸入が抑制されるので、仮に供給流路に配置された燃料遮断弁が閉故障している場合には、例えばエンストが発生する。従って、このエンストの発生の有無により、燃料遮断弁の異常を判定することができる。
【0016】
(3)請求項3の発明は、
前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、その変化の回数をカウントし、該カウント数に基づいて、前記燃料遮断弁の異常の程度を判断することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0017】
本発明は、燃料遮断弁の異常の程度を判定する手段を例示したものである。例えばアイドル運転時異常判定手段や始動時異常判定手段により、燃料の供給を抑制した場合に、運転状態の変化(例えばエンスト)が発生したときには、1回で結論をだすのでなく、各異常判定手段を実行した際に例えばエンストした回数をカウントしてゆく。従って、例えば、カウント数が多くなった場合には、燃料遮断弁が完全に故障していると判断でき、それほどカウント数が多くない場合には、燃料遮断弁の故障の可能性があると判断することができる。よって、そのカウント数に対応した判断結果に応じて、例えば噴射量の低減等の適切な対応策を実施することができる。
【0018】
(4)請求項4の発明は、
前記アイドル運転時異常判定手段を実行し、それにより前記内燃機関の運転状態が変化した場合には、次に前記始動時異常判定手段を実行することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0019】
本発明では、アイドル運転時異常判定手段のみを連続的に実施するのではなく、アイドル運転時異常判定手段の実行によって運転状態の変化(例えばエンスト)が発生した直後には、始動時異常判定手段を実行する。
例えば、一旦エンストした場合には、通常は始動がなされるので、例えばエンスト直後に、始動時異常判定手段を実施することにより、次にアイドル運転時異常判定手段を実施した場合に比べて、速やかな異常判定が可能となる。
【0020】
(5)請求項5の発明は、
前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数に応じて、前記アイドル運転時異常判定手段と前記始動時異常判定手段とを切り換えることを特徴とする前記請求項4に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0021】
本発明は、前記請求項4の発明を例示したものである。例えばアイドル運転時異常判定手段により運転状態の変化(例えばエンスト)が発生した直後には、(そのアイドル運転時からカウントすると)カウント数は1であるので、カウント数が1の場合に、始動時異常判定手段を実施するのである。但し、ここでは、それより前のカウント数とは別なカウント数を用いた場合を考えている。
【0022】
尚、両異常判定手段の実施における例えば全エンスト数が0の場合には、燃料遮断弁が故障していないか、まだ判定していないため、頻度の高いアイドル運転時異常判定手段を実施することが望ましい。
(6)請求項6の発明は、
前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、ポンプの破損を防止可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0023】
本発明では、スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、運転状態の変化(例えばエンスト)が発生したときには、燃料遮断弁に閉故障が発生したと判断して、ポンプの破損を防止可能な程度まで、噴射量を低減する。
つまり、燃料遮断弁に閉故障が発生しているときに、通常(燃料遮断弁の正常時)と同様に、多くの燃料を噴射しようとすると、特定条件(高回転高負荷)で、燃料吸入不足によりプランジャが油膜切れとなり固着するという問題が生じ、ポンプが破損する可能性があるので、本発明では、その様な場合には、燃料の噴射量を低減するのである。これにより、始動不能等の不具合の発生を防止することができる。
【0024】
(7)請求項7の発明は、
前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数が、第1判定値以上の場合に、ポンプの破損を防止可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項6に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0025】
本発明は、前記請求項6の発明を例示したものである。ここでは、運転状態が変化(例えばエンスト)した回数をカウントし、そのカウント数が第1判定値(例えば1回)以上の場合に、ポンプの破損を防止可能な程度まで、噴射量を低減するので、確実にポンプの破損を防止できる。
【0026】
(8)請求項8の発明は、
前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、車両の退避行動が可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0027】
本発明では、スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、運転状態の変化(例えばエンスト)が発生したときには、燃料遮断弁に閉故障が発生したと判断して、車両の退避行動が可能な程度まで、噴射量を低減する。
つまり、燃料遮断弁に閉故障が発生しているときでも、危険の回避等のために、車両を走行させたい場合があるので、本発明では、その様な場合には、例えばスピル弁を調節して、ポンプの破損を起こさないレベルにおいて、車両の退避行動が可能な程度まで燃料の噴射量を低減するのである。これにより、安全性が向上する。
【0028】
(9)請求項9の発明は、
前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数が、前記第1判定値を上回る第2判定値以上の場合には、車両の退避行動が可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項8に記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0029】
本発明は、前記請求項8の発明を例示したものである。ここでは、運転状態が変化(例えばエンスト)した回数をカウントし、そのカウント数が第1判定値を上回る第2判定値(例えば10回)以上の場合に、車両の退避行動が可能な程度まで、噴射量を低減するので、一層安全な走行が可能である。
【0030】
(10)請求項10の発明は、
前記ポンプの破損を防止可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量よりも、前記車両の退避行動が可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量を低減することを特徴とする前記請求項6〜9のいずれかに記載の燃料噴射装置を要旨とする。
【0031】
本発明は、噴射量の低減の程度を例示したものである。ここでは、例えば図8に例示する様に、ポンプの破損を防止可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量よりも、車両の退避行動が可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量を低減している。
【0032】
よって、例えば図8の領域▲1▼にまで噴射量を低減することにより、ポンプの破損を防止できる。また、たとえ、燃料遮断弁が完全に故障している場合でも、領域▲2▼まで噴射量を低減することにより、ポンプの破損を防止するとともに、スピル弁を調節することにより、車両の退避行動が可能となる。
【0033】
尚、スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、内燃機関の運転状態が変化(例えばエンスト)したときには、例えば故障ランプを点灯して、運転者に異常を報知することが望ましい。その場合には、例えばエンストした回数をカウントし、そのカウント数が所定の報知判定値以上の場合には、異常を報知する手段を採用できる。
【0034】
尚、前記各請求項において、内燃機関の運転状態の変化としては、例えば内燃機関の停止(エンスト)が挙げられる。
また、前記エンスト以外に、内燃機関の運転状態の変化としては、例えばエンジン回転数の落込みの程度の変化(即ち過度の落込み)が挙げられる。従って、例えば前出し制御手段によりスピル弁の閉弁時期を一時的に早めた場合に、実際に発生したエンジン回転数の落込み量が、(燃料遮断弁が正常の場合に)前出し制御手段により発生する落込み量より大きいときには、燃料遮断弁の閉故障であると判断することができる。
【0035】
更に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制する方法としては、スピル弁側からの燃料吸入の禁止(カット)が挙げられるが、上述した内燃機関の運転状態の変化を検出できる程度まで、燃料の吸入量を低減する方法も考えられる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料噴射装置の実施の形態の例(実施例)を、図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例)
a)図1に示すように、本実施例の燃料噴射装置は、内燃機関(ディーゼルエンジン)に燃料を噴射供給する装置であり、そのため、図示しない燃料室から燃料を汲み上げる噴射ポンプ(ディーゼル燃料噴射ポンプ)1を備えている。
【0037】
前記噴射ポンプ1には、往復動可能に支持されたプランジャ3が設けられており、このプランジャ3には、カムプレート5が取り付けられ、カムプレート5に対向してカムローラ7が設けられている。
よって、図示しない内燃機関の駆動軸の回転と共にカムプレート5が回転すると、カムプレート5はプランジャ3と共に往復動する。このプランジャ3の往復動により、ポンプ室9の容積が拡縮し、ポンプ室9内の燃料が加圧されて、燃料噴射弁11に供給される。燃料噴射弁11に供給された燃料は、図示しない燃焼室内に噴射される。
【0038】
前記ポンプ室9には、供給流路13とスピル流路15とが接続されており、供給流路13とスピル流路15とは図示しない燃料室に連通されている。
また、供給流路13には、燃料遮断弁(FCV)17が介装されており、スピル流路15には、スピル弁(SPV)19が介装されている。本実施例では、燃料遮断弁17は、励磁信号が入力されたときに開弁し、常時は、図示しないばねの付勢力により閉弁する構造(常閉弁)であり、スピル弁19は、励磁信号が入力されたときに閉弁し、常時は、図示しないばねの付勢力により開弁する構造(常開弁)である。
【0039】
更に、上述した構造の燃料噴射装置を制御するために、電子制御回路(ECU)が設けられている。この電子制御回路21は、周知のCPU23、ROM25、RAM27を論理演算回路の中心として構成され、外部と入出力を行う入出力回路29をコモンバス31を介して相互に接続されている。
【0040】
前記入出力回路29には、内燃機関の運転状態を検出するために、車速を検出する車速センサ33、冷却水温を検出する水温センサ35、エンジン回転数を検出する回転数センサ37、運転者により操作される図示しないアクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサ39、ギヤのニュートラルを検出するニュートラススイッチ(SW)41、イグニッションキーのオン・オフを検出するIGスイッチ43等が接続されている。
【0041】
また、入出力回路29には、運転者に(燃料遮断弁17の)異常の発生を報知する故障ランプ45、燃料噴射弁11やスピル弁19を駆動するドライブ回路47等が接続されている。
従って、電子制御回路21のCPU23では、各センサやスイッチからの信号を入出力回路29を介して入力し、これらの信号及びROM25、RAM27内のデータや予め記憶された制御プログラムに基づいて、内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射量等を算出し、その算出値に基づいて入出力回路29を介してドライブ回路47に駆動信号を出力する。
【0042】
よって、ドライブ回路47では、駆動信号を受けて、燃料噴射弁17やスピル弁19に励磁信号を出力して、燃料噴射弁11やスピル弁19の開閉状態を制御して、燃料噴射量を調節する。
b)次に、前述した電子制御回路47において行われる制御処理について説明する。
【0043】
(i)まず、スピル弁19の基本的な制御処理(SPV開閉制御処理)について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
図2に示す様に、まず、内燃機関の運転が開始されると、ステップ(S)100にて、回転数センサ37により検出されたエンジン回転数NEとアクセルセンサ32により検出されたアクセル開度ACCPFとから、図示しないマップ等に基づいて噴射量指令値QFINを算出する。
【0044】
次に、ステップ110にて、スピル弁19の閉弁時期QPANGFを、回転数センサ37により検出されたエンジン回転数NEと前回の開弁時期QANGFとから算出する。
そして、ステップ120にて、スピル弁19の開弁時期QANGFを、回転数センサ37により検出されたエンジン回転数NEと噴射量指令値QFINとから算出する。
【0045】
続いて、ステップ130にて、この算出した閉弁時期QPANGFと開弁時期QANGFとに応じた駆動信号を、ドライブ回路47に出力する。ドライブ回路67は、この駆動信号を受けてスピル弁19に駆動電流を出力する。
本実施例では、図3に示すように、供給流路13は、ポンプ室9が圧縮された後に、プランジャ3の回転及びプランジャ3先端のスリットにより連通されて、プランジャ3の後退と共に、ポンプ室9には、供給流路13及びスピル流路15から燃料が吸入される。そして、ポンプ室9が拡張された後、供給流路13は遮断される。
【0046】
スピル弁19は、プランジャ3がポンプ室9を圧縮し始める閉弁時期QPANGFに閉弁され、これによりポンプ室9から圧縮された燃料が燃料噴射弁11に供給される。また、開弁時期QANGFとなると、スピル弁19が開弁されて、ポンプ室9からスピル流路15を通って燃料が燃料室に戻される。よって、閉弁時期QPANGFと開弁時期QANGFとの間の期間で燃料噴射弁11から燃料が噴射される。
【0047】
そして、上述したSPV開閉制御処理が繰り返し実行されている間、後に詳述する様に、図3(ハ)の点線で示すスピル弁19の前出し制御処理が繰り返し実行される。
(ii)次に、燃料遮断弁17の基本的な制御処理(FCV開閉制御処理)について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
図4に示す様に、まず、ステップ200にて、イグニッションキーがオン(ON)されたか否かを、IGスイッチ43がオンであるか否かによって判定する。
ここで肯定判断されると、ステップ210にて、ドライブ回路47により、燃料遮断弁17に通電し、供給流路13を開いて、燃料をポンプ室9に供給する。これにより、燃料はカムリフトに応じて吸入される。
【0049】
一方、ステップ220では、イグニッションキーがオフ(OFF)されたか否かを、IGスイッチ43がオフであるか否かによって判定する。
ここで肯定判断されると、ステップ230にて、ドライブ回路47により、燃料遮断弁17への通電を停止し、供給流路13を閉じて、燃料のポンプ室9への供給を中止する。これにより、燃料の吸入がカットされる。
【0050】
(iii)次に、本実施例の制御処理の要部である燃料遮断弁17の故障判定処理(FCV閉故障判定処理)について説明する。
図5のフローチャートに示す様に、ステップ300にて、故障カウンタが、完全な故障であることを示す第2判定値KFCV2(例えば10回)未満であるか否かを判定する。ここで否定判断されると、後述するステップ350に進み、一方肯定判断されると、ステップ310に進む。尚、この故障カウンタとは、後述する(A),(B)の両異常判定処理に伴うエンストが発生する毎に計数されるカウンタである。
【0051】
ステップ310では、故障カウンタが、両判定の切替タイミングを示すKRUN(例えば1回)を下回るか否かによって、次にどちらの異常判定処理を行うべきかを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ320に進み、一方否定判断されると、ステップ330に進む。
【0052】
つまり、故障カウンタがKRUNを下回る場合(即ち故障カウンタが0の場合)には、燃料遮断弁17が故障していないか、或は、まだ異常判定を実施していないかであるので、その時には、頻度の高い(A)アイドル運転時異常判定手段を実施するためにステップ320に進み、そうでない場合には、(B)始動時異常判定処理を実施するためにステップ330に進むのである。
【0053】
従って、ステップ320では、後に図6にて詳述するように、(A)アイドル時異常判定処理を行う、一方、ステップ330では、後に図7にて詳述するように、(B)始動時異常判定処理を行う。
続くステップ340では、故障カウンタが第2判定値KFCV2(例えば10回)以上であるか否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ350に進み、一方否定判断されると、ステップ360に進む。
【0054】
ステップ350では、故障カウンタ数が10回以上と多く、完全な故障の発生、即ち燃料遮断弁17が確実に閉故障していると判断されたので、その対策を実施する。
具体的には、最大噴射量FULLQを車両の退避走行が可能な程度に低減する。例えば図8の1点鎖線で示すように、最大噴射量FULLQを低減して、噴射量を領域▲2▼内の少ない範囲に設定する。また、運転者への警告(ウォーニング)にために故障ランプ45を点灯するとともに、異常の内容をダイアグコードに記憶する。
【0055】
一方、ステップ350では、故障カウンタが前記第2判定値より小さい第1判定値KFCV1(例えば1回)以上であるか否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ370に進み、一方否定判断されると、ステップ380に進む。
【0056】
ステップ360では、故障カウンタ数が1〜9回であり、燃料遮断弁17の閉故障の可能性が高いので、その対策を実施する。
具体的には、最大噴射量FULLQを噴射ポンプ1の破損を防止できる程度に低減する。例えば図8の破線で示すように、最大噴射量FULLQを低減して、噴射量を領域▲1▼以下(▲2▼を含むこともある)内の少ない範囲に設定する。また、異常の内容をダイアグコードに記憶する。
【0057】
一方、ステップ380では、故障カウンタ数が0回であり、燃料遮断弁17は正常であると判断できるので、例えば図8の実線で示すように、通常の最大噴射量以下の領域で噴射量を設定する。
(iv)次に、前記ステップ320にて実施される(A)アイドル時異常判定処理について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0058】
図6のステップ400にて、まず、アイドル運転時(アイドル時)であるかどうかを、アイドル条件を満たすか否かにより判定する。ここで肯定判断されるとステップ410に進み、一方否定判断されると、一旦本処理を終了する。
このアイドル条件とは、例えばアクセルセンサ32により検出されたアクセル開度が0%、車速センサ33により検出された車速が0km/h、ニュートラルSW41がギアのニュートラルを示すON、回転数センサ30により検出されたエンジン回転数が所定のアイドル回転数の範囲内、水温センサ35により検出された水温が60℃以上であり、それらの全ての条件を満たした場合に、アイドル時であると判定する。
【0059】
そして、アイドル時であると判断されると、ステップ410にて、スピル弁19の閉弁時期QPANGFを、KTSPV1時間(例えば1.5秒)前出しする処理を実行する。この前出し制御処理では、前記ステップ110の処理の実行により算出した閉弁時期QPANGFを、図3(ハ)に破線で示すように、供給流路13が連通してポンプ室9へ燃料を吸入する工程の時期にまで早める処理を行う。
【0060】
本実施例では、供給流路13が連通した直後の時期にまでスピル弁19の閉弁時期を早めている。尚、供給流路13が連通する前の時期にまでスピル弁19の閉弁時期を早めると、ポンプ室9への燃料供給は供給流路13のみとなる。この状態において、燃料遮断弁17が閉状態で故障している場合、ポンプ室9にはまったく燃料が供給されなくなる。
【0061】
つまり、燃料遮断弁17が閉弁した状態で故障したときには、供給流路13からポンプ室8には燃料が供給されなくなり、また、スピル弁19の閉弁時期を早めることにより、スピル流路15からもポンプ室9に燃料が供給されなくなるので、前記前出し制御処理によって、エンストを起こすのである。尚、エンストを起こしても、アイドル運転中であるので、安全性が害されることはない。
【0062】
次に、ステップ420では、判定時間KTENST1(例えば2.5秒)内に、エンストしているか否かを判断する。ここで肯定判断されるとステップ430に進み、一方否定判断されるとステップ450に進む。尚、エンストしたか否かは、回転数センサ30により検出されるエンジン回転数NEが0となったか否か等により判断すればよい。
【0063】
ステップ430では、エンストしたので、燃料遮断弁17に閉故障が発生したと判断し、続くステップ440にて、故障カウンタをインクリメントし、一旦本処理を終了する。
一方、ステップ450では、エンストしないので、燃料遮断弁17は正常に動作していると判断して、続くステップ460にて、故障カウンタをクリアして、一旦本処理を一旦終了する。
【0064】
(v)次に、前記ステップ330にて実施される(B)始動時異常判定処理について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
図7にステップ500にて、まず、始動時であるかどうかを、始動条件を満たすか否かにより判定する。ここで肯定判断されるとステップ510に進み、一方否定判断されると、一旦本処理を終了する。
【0065】
この始動条件とは、例えばIGSW43がON(即ちスタータの始動を示すON)、回転数センサ30により検出されたエンジン回転数が所定の700rpm以上、水温センサ35により検出された水温が60℃以上であり、それらの全ての条件を満たした場合に、始動時であると判定する。
【0066】
そして、始動時であると判断されると、ステップ510にて、スピル弁19の閉弁時期QPANGFを、KTSPV2時間(例えば1.5秒)前出しする処理を実行する。
次に、ステップ520では、判定時間KTENST2(例えば2.5秒)内に、エンストしているか否かを判断する。ここで肯定判断されるとステップ530に進み、一方否定判断されるとステップ550に進む。
【0067】
ステップ530では、エンストしたので、燃料遮断弁17に閉故障が発生したと判断し、続くステップ540にて、故障カウンタをインクリメントし、一旦本処理を終了する。
一方、ステップ550では、エンストしないので(即ち始動できたので)、燃料遮断弁17は正常に動作していると判断して、続くステップ560にて、故障カウンタをクリアして、一旦本処理を一旦終了する。
【0068】
尚、この場合でも、同様に燃料遮断弁17の故障を検出できると共に、始動時に判断するので、安全性が害されることはない。
c)以上詳述した様に、本実施例では、故障カウンタのカウント数に応じて、アイドル時異常判定処理と始動時判定処理とを切り換えて実行しているので、燃料遮断弁17の閉故障を迅速に且つ正確に検出することができる。
【0069】
例えば、まず、アイドル時異常判定処理により故障を判定することで、判定処理の回数が多くなり(通常の運転状態では、始動1個に対してアイドル数個のため)、それにより、早めに異常を検出することができる。また、アイドル時異常判定処理によりエンストが発生した場合には、次に始動がなされるはずであるので、この様に、アイドル時異常判定処理の直後に始動時異常判定処理を実行することにより、連続してアイドル時異常判定処理を実行する場合と比較して、速やかに異常の検出ができる。
【0070】
また、同じ様なアイドル時異常判定処理を繰り返す場合には、何等かの原因(例えばアイドル時に特有の異常やノイズ)により、正確に判定が行えない可能性もあるが、始動時異常判定処理も行うことにより、判定の精度が向上するという効果がある。
【0071】
更に、本実施例では、故障カウンタのカウンタ数が1〜9回のそれほど多くない場合には、燃料遮断弁17の閉故障の可能性があると判断して、噴射ポンプ1が破損しない程度に最大噴射量を低減している。これにより、噴射ポンプ1の破損を防止できるので、始動不能等の不具合を回避できる。
【0072】
その上、本実施例では、故障カウンタのカウンタ数が10回以上と多い場合には、燃料遮断弁17が完全に故障していると判断して、車両の退避走行が可能な程度に大きく最大噴射量を低減している。これにより、噴射ポンプ1の破損を防止しつつ、車両の退避走行できるので、安全性が向上する。
【0073】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の燃料噴射装置の概略構成図である。
【図2】 実施例の電子制御回路で行われるSPV開閉制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】 実施例のスピル弁と供給流路の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】 実施例の電子制御回路で行われるFCV開閉制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】 実施例の電子制御回路で行われるFCV閉故障判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】 実施例の電子制御回路で行われるアイドル時異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】 実施例の電子制御回路で行われる始動時異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】 実施例の電子制御回路に記憶された燃料噴射量のマップの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1…噴射ポンプ 3…プランジャ
9…ポンプ室 11…燃料噴射弁
13…供給流路 15…スピル流路
17…燃料遮断弁 19…スピル弁
21…電子制御回路 33…車速センサ
35…水温センサ 37…アクセルセンサ
39…回転数センサ 41…ニュートラルスイッチ
43…IGスイッチ 45…故障ランプ
Claims (10)
- プランジャの往復動により拡縮するポンプ室に燃料を供給する供給流路に介装された燃料遮断弁と、前記ポンプ室から燃料を逃し又はポンプ室に燃料を供給するスピル流路に介装されたスピル弁とを備え、
内燃機関に燃料を噴射するための噴射量指令値に応じて前記スピル弁の開閉を制御する燃料噴射装置において、
前記内燃機関のアイドル運転時に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化から、前記燃料遮断弁の異常を判定するアイドル運転時異常判定手段と、
前記内燃機関の始動時に、前記スピル弁側からの燃料の吸入を抑制し、それにより発生する内燃機関の運転状態の変化から、前記燃料遮断弁の異常を判定する始動時異常判定手段と、
を備え、
前記内燃機関のアイドル運転時又は始動時に対応して、前記アイドル運転時異常判定手段と前記始動時異常判定手段とを切り換えて、前記燃料遮断弁の異常を検出することを特徴とする燃料噴射装置。 - 前記燃料の吸入を抑制する手段は、前記供給流路が前記ポンプ室と連通し、燃料吸入する時期にまで、前記スピル弁の閉弁時期を一時的に早める前出し制御手段であることを特徴とする前記請求項1に記載の燃料噴射装置。
- 前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、その変化した回数をカウントし、該カウント数に基づいて、前記燃料遮断弁の異常の程度を判断することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の燃料噴射装置。
- 前記アイドル運転時異常判定手段を実行し、それにより前記内燃機関の運転状態が変化した場合には、次に前記始動時異常判定手段を実行することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の燃料噴射装置。
- 前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数に応じて、前記アイドル運転時異常判定手段と前記始動時異常判定手段とを切り換えることを特徴とする前記請求項4に記載の燃料噴射装置。
- 前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、ポンプの破損を防止可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の燃料噴射装置。
- 前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数が、第1判定値以上の場合に、ポンプの破損を防止可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項6に記載の燃料噴射装置。
- 前記スピル弁側からの燃料の供給を抑制した場合に、前記内燃機関の運転状態が変化したときには、車両の退避行動が可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載の燃料噴射装置。
- 前記内燃機関の運転状態が変化した回数をカウントし、そのカウント数が、前記第1判定値を上回る第2判定値以上の場合には、車両の退避行動が可能な程度まで、前記噴射量を低減することを特徴とする前記請求項8に記載の燃料噴射装置。
- 前記ポンプの破損を防止可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量よりも、前記車両の退避行動が可能な程度まで噴射量を低減する場合における最大噴射量を低減することを特徴とする前記請求項6〜9のいずれかに記載の燃料噴射装置。
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