JP3874874B2 - 超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイヤモンド粒等の超砥粒の集合体を焼結することによって形成される超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具に関するものであり、特に、その前逃げ面のところに、微細な平行条痕を無数に設けるようにした切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、精密機械加工部品のうち、特に、光学機械部品等においては、特定の加工面が鏡面状態では無く、規則正しい微細な凹凸からなる一定の表面粗さを有するものであることが要求されている。このような要求に応えるために、切削工具の先端部に微細なダイヤモンド粒等の超砥粒の焼結体からなる刃先チップを設け、この部分に特殊な加工を施すことによって、切れ刃稜のところに微細凹凸部を設けるようにした超砥粒焼結体を有する切削工具が開発され、特許第2533049号に関する登録公報等により、すでに公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このものは、前逃げ面のところを、まず、研磨痕の無い状態に仕上げ、しかる後に、切れ刃稜のところに微小幅の面取り部を設け、この部分を平滑な状態に仕上げるとともに、この仕上げ加工によって、当該面取り部のところに、上記焼結手段によって設けられていた各ダイヤモンド粒からなる微細な切れ刃を形成させるようにしているものである。これらのことより、この従来のものにおいて形成される刃先部(切れ刃稜)のところに設けられる各切れ刃の大きさ、あるいは各切れ刃間の間隔等は、各砥粒の形状あるいは焼結の具合い等によって異なるものである。すなわち、このような構成からなる切れ刃稜のところに形成される各切れ刃の形状は、微視的に見て不揃いの状態となっている。従って、このような刃先チップを有する切削工具にて加工の成された被加工物の、その加工面は、規則正しい凹凸面を得ることが難しい。このような問題点を解決するために、切れ刃稜のところに、規則正しい複数の凹凸状条痕を設けるようにした超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明においては、ダイヤモンド粒等の超砥粒を、複数個焼き固めることによって形成される超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具に関して、当該超砥粒焼結体製刃先チップの、そのすくい面及び前逃げ面のところを研磨痕の無い状態に仕上げ、このように研磨痕の無い状態に仕上げられた上記前逃げ面及び当該前逃げ面と上記すくい面とが交わるところに形成される切れ刃稜のところに、0.1ないし2.0μmの粗さからなる凹凸状の条痕を、複数本、平行に設けるようにした構成を採ることとした。
【0005】
このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては次のような作用を呈することとなる。すなわち、本発明における切削工具は、その刃先のすくい面のところが研磨痕の無い鏡面状に仕上げられているとともに、前逃げ面及び当該前逃げ面と上記すくい面との交叉稜線にて形成される切れ刃稜のところには、一定の規則正しい間隔をもって形成された凹凸部からなる条痕が平行に、かつ、全面及び全幅にわたって設けられるようになっている。従って、このような切削工具を用いてワークへの加工が行なわれると、そのときのワーク加工面には、微視的にみて、規則正しい凹凸面が形成されることとなる。すなわち、所定の表面粗さを有する加工面が得られることとなる。
【0006】
次に、請求項2記載の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記請求項1記載のものと同じである。その特徴とするところは、複数のダイヤモンド粒あるいは立方晶窒化ホウ素粒(CBN)からなる超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具に関して、その刃先チップのところに設けられる上記各超砥粒の粒径を、25μm以下の値を有するものに限定するようにしたことである。このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、単結晶のものに比べて、比較的低コストのダイヤモンド粒等を用いた切削工具にて、表面粗さが0.1〜2μmの規則正しい加工面を得ることができるようになる。
【0007】
次に、請求項3記載の発明について説明する。このものは、上記請求項1記載の発明にかかる切削工具の、その製造方法に関するものである。すなわち、本発明においては、超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具の、その製造方法を、まず、ダイヤモンド粒等からなる超砥粒を、複数個、所定の焼結材を介して焼き固めることによって超砥粒焼結体製刃先チップを形成する工程と、このような構成の刃先チップを所定のシャンクに取り付けるとともに、このような構成の上記刃先チップの、その先端部のところに形成されるすくい面及び前逃げ面を研磨痕の無い状態に仕上げる工程と、このように仕上げられた上記前逃げ面のところを、所定の粒径を有する微細ダイヤモンド粒(ダイヤモンドパウダ)と油との混じり合った状態のもの(混合物)を金属製回転ディスクとの間に常時介在させるようにするとともに、常に一定方向から流動させるようにした状態にて研磨する工程と、からなるようにした。
【0008】
このような工程を採ることにより、所定の凹凸状条痕を有する切削工具を効率良く製造することができるようになる。すなわち、まず、本発明においては、超砥粒焼結体からなる刃先チップの、その先端部に形成されるすくい面及び前逃げ面のところを、ダイヤモンド砥石を用いて鏡面状に研磨する。
【0009】
特に、この研磨作業においては、上記焼結材にて焼結結合された各超砥粒が、上記すくい面あるいは前逃げ面のところからこぼれ落ちないようにする。すなわち、上記各面を鏡面状態に仕上げる。このように鏡面仕上げの行なわれたところに、次に、所定の粒径を有する微細ダイヤモンド粒(ダイヤモンドパウダ)と油との混ぜ合わされたもの(混合物)を、上記前逃げ面のところに金属製回転ディスクを回転接触させた状態で、当該前逃げ面と金属製回転ディスクとの接触面のところに一定の割合で定常的に流し込むようにして、上記前逃げ面のところを加工(研磨)する。この混合物を定常的に流し込みながら行なう研磨作業によって、上記前逃げ面のところには、所定の間隔を有する凹凸状の条痕が、平行に、かつ、無数に形成されることとなる。この凹凸状条痕の形成(加工)において、本発明のものにおいては、当該前逃げ面のところが超砥粒及び焼結材を包括した状態であらかじめ鏡面状に仕上げられているところから、これら超砥粒も含めた全体の面(前逃げ面)が、規則正しい凹凸状の条痕を有する状態に仕上げられることとなる(図3参照)。すなわち、規則正しい微細な切れ刃を有する前逃げ面が形成されることとなる。従って、従来のものにおけるような砥粒の大きさ、あるいは焼結材にて固定された各砥粒間の間隔等によって、切れ刃間の間隔が不規則に決定されてしまうというようなことが無い。
【0010】
次に、請求項4記載の発明について説明する。このものも、その基本的な点は、上記請求項3記載のものと同じである。その特徴とするところは、鏡面仕上げの行なわれた前逃げ面のところに無数の平行条痕を設けるに当って、当該鏡面仕上げされた前逃げ面と金属製回転ディスクとの間に流し込まれるものであって、油とダイヤモンドパウダとからなる混合物を形成する、そのダイヤモンドパウダの径(粒径)を、10μm以下の値のものに限定するようにしたことである。このようなダイヤモンドパウダを有する混合物を、上記前逃げ面と金属製回転ディスクとの間に、常時一定の割合で、一定の方向から流し込むようにすることによって、上記鏡面仕上げの成された前逃げ面のところには、上記ダイヤモンドパウダの流動によって、一定の方向に無数の平行溝(条痕)が、0.1から2.0μmの粗さをもって形成されることとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1ないし図5を基に説明する。本発明の実施の形態に関するものの構成は、図1に示す如く、ダイヤモンド粒等の超砥粒5を基礎とした焼結体にて形成される刃先チップ1と、当該刃先チップ1の取り付けられるシャンク2と、当該シャンク2の先端部に上記刃先チップ1を取り付けるものであって、ロー付け等の接合手段、あるいは機械的な締結手段等からなる結合手段3と、からなることを基本とするものである。このような基本構成において、上記刃先チップ1は、ダイヤモンド粒または立方晶窒化ホウ素(CBN)粒等の超砥粒を基礎に、これらがコバルト(Co)等の金属材料からなる結合材(焼結材)6を介して、焼結手段にて一体的に成形されるようになっているものである。このような焼結チップ(刃先チップ)1が、ロー付け等の接合手段を含む結合手段3にてシャンク2の先端部に取り付けられるとともに、このようにして取り付けられた刃先チップ1の、その先端部のところが所定の加工を受けることによって、超砥粒焼結体製刃先チップ1を有する切削工具が形成されることとなる。
【0012】
次に、このような基本構成からなる本超砥粒焼結体製刃先チップ1を有する切削工具の、その製造方法(手順)について説明する。まず、図1に示すように、シャンク2の先端部のところに取り付けられる刃先チップ1のところであって、すくい面12及び前逃げ面11を形成するところを、鏡面状に仕上げる。具体的には、図2に示す如く、すくい面12及び前逃げ面11のところを、所定のダイヤモンド砥石を用いて鏡面状に仕上げる。なお、この鏡面仕上げの手順については、すでにすくい面のところが鏡面状に仕上げられた焼結チップを持って来て、上記シャンク2の先端部に取付け、その後、上記前逃げ面11のところを所定の状態に仕上げることも考えられる。このような鏡面仕上げ工程において、初期の状態においては、図2の(A)に示す如く、その表面部の超砥粒5’が脱落する。そして、このような研磨作業を続けることによって、図2の(B)に示す如く、脱落した超砥粒5’は取り除かれる。そして更に、このような研磨作業を続けることによって、最終的には、図2の(C)に示す如く、すくい面12及び前逃げ面11が、共に鏡面状に仕上げられた刃先チップ1が形成されることとなる。
【0013】
次に、このように、すくい面12及び前逃げ面11のところが共に鏡面仕上げの成された状態のものについて、更に上記前逃げ面11のところを、10μm以下の粒径を有する微細ダイヤモンド粒(ダイヤモンドパウダ)とオリーブ油を初めとした各種油とが所定の割合に混ぜ合わされることによって形成された混合物(研磨剤)を用いて研磨する。具体的には、上記前逃げ面11のところに、鋳物等からなる金属製回転ディスクを、所定の相対回転速度を有する状態で接触させるとともに、このような接触面のところに、上記研磨剤を、上方から一定の割合で流し込むようにする。その結果、上記前逃げ面11のところに設けられることとなった各超砥粒5の、その鏡面仕上げの成されたところには、複数条の条痕111が平行に形成されることとなる。すなわち、図3に示す如く、これら各条痕111の集合体によって、上記前逃げ面11及び切れ刃稜121のところには、無数の平行条痕が形成されることとなる。なお、上記鋳物製回転ディスクの上記前逃げ面11への押し付け(接触)に当っては、上記鋳物製回転ディスクを、その回転軸に対して直角方向に、所定の速度にて揺動運動をさせるようにする。これによって、鋳物製回転ディスクの接触面(表面)には局部的な摩耗等が生じないようになり、その結果、上記前逃げ面11のところは、うねり等の無い平面となり、このような平面のところに、無数の平行条痕111が形成されることとなる。そして、この条痕の大きさ、すなわち、図4に示すような山と谷との間の深さは、ほぼ0.1から2.0μmの値に規制されることとなる。なお、このような微細平行条痕111の成形に用いられる研磨剤の、その溶媒となる油としては、上記オリーブ油の外に、各種植物性油脂、動物性油脂、または鉱油あるいは合成油等からなる作動油、更にはシリコーン油等の液体状重合体からなるもの等が挙げられる。
【0014】
このような構成からなる切削工具を用いて、例えば、アルミニウム合金製素材の切削を行なった場合の、その結果について、図5を基に説明する。なお、このときに用いられる素材のその形状(ディメンション)は、直径が80mm、厚みが1.2mm、全長が355mmのものである。また、切削条件としては、ワークの回転数が3000r.p.m 、送り速度0.1mm/rev 、切り込み量0.01mmである。その結果は、図5に示す如く、加工初期から加工距離4000kmに達した後においても、表面粗さはRmax 0.3ないし0.5の値を保持し、加工面の形状は規則正しい凹凸面を形成していることが判る。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、ダイヤモンド粒等の超砥粒を焼結することによって形成される超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具に関して、その製造方法を、ダイヤモンド粒等からなる超砥粒を、複数個、所定の焼結材を介して焼き固めることによって超砥粒焼結体製刃先チップを形成する工程と、このような刃先チップを所定のシャンクに取り付けるとともに、当該刃先チップの、その先端部のところに形成されるすくい面及び前逃げ面を、研磨痕の無い状態に仕上げる工程と、このように仕上げられた上記前逃げ面のところを、所定の粒径を有する微細ダイヤモンド粒(ダイヤモンドパウダ)と油との混じり合った状態のもの(混合物)を金属製回転ディスクとの間に常時介在させるようにするとともに、常に一定方向から流動させるようにした状態にて研磨する工程と、からなるようにしたので、上記前逃げ面及び切れ刃稜のところに、規則正しい凹凸状の条痕を平行に有する切削工具を、効率良く形成(製造)することができるようになった。特に、前逃げ面のところをあらかじめ鏡面状に仕上げておき、その後で、所定の粒径を有するダイヤモンドパウダ等からなる研磨剤を用いて研磨するようにしたので、上記前逃げ面のところには、所定の粗さを有する規則正しい凹凸断面形状からなる切削刃面が形成されるようになった。従って、このような切削工具を用いてワークを加工することによって、ワークの加工面にも規則正しい凹凸状条痕を形成させることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる切削工具の全体構成を示す正面図である。
【図2】本発明にかかる刃先チップの製造工程を示す図である。
【図3】本発明にかかる刃先チップの前逃げ面及び切れ刃稜のところに形成された凹凸状条痕を示す図である。
【図4】本発明にかかる前逃げ面のところに形成された凹凸状条痕を示す拡大図である。
【図5】本発明にかかる切削工具にて加工を行なった場合におけるワークの表面粗さの推移状態を示す図である。
【符号の説明】
1 刃先チップ
11 前逃げ面
111 条痕
12 すくい面
121 切れ刃稜
2 シャンク
3 結合手段(接合手段)
5 超砥粒
5’ 超砥粒
6 焼結材(結合材)
Claims (4)
- ダイヤモンド粒または立方晶窒化ホウ素(CBN)粒からなる超砥粒を、複数個焼き固めることによって形成される超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具において、当該超砥粒焼結体製刃先チップの、そのすくい面及び前逃げ面のところを研摩痕の無い状態に仕上げ、このように研摩痕の無い状態に仕上げられた上記前逃げ面のところに、0.1から2.0μmの粗さを有する凹凸状の条痕を、複数本平行に設けるようにしたことを特徴とする超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具。
- 請求項1記載の超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具において、上記超砥粒焼結体製刃先チップを形成する各超砥粒の大きさを、その粒径において、25μm以下の値のものに限定するようにしたことを特徴とする超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具。
- ダイヤモンド粒または立方晶窒化ホウ素(CBN)粒からなる超砥粒を、複数個、所定の焼結材を介して焼き固めることによって超砥粒焼結体製刃先チップを形成する工程と、このような構成からなる刃先チップを所定のシャンクに取り付けるとともに、このような構成の上記刃先チップの、その先端部のところに形成されるすくい面及び前逃げ面を研摩痕の無い状態に仕上げる工程と、このように仕上げられた上記前逃げ面のところを、所定の粒径を有する微細ダイヤモンド粒(ダイヤモンドパウダ)と油との混じり合った状態のもの(混合物)を金属製回転ディスクとの間に常時介在させるようにするとともに、常に一定方向から流動させるようにした状態にて研摩する工程と、からなるようにしたことを特徴とする超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具の製造方法。
- 請求項3記載の超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具の製造方法において、上記前逃げ面と金属製回転ディスクとの間に、油とともに流し込まれる微細ダイヤモンド粒(ダイヤモンドパウダ)の、その粒径の大きさを、10μm以下の値のものに限定するようにしたことを特徴とする超砥粒焼結体製刃先チップを有する切削工具の製造方法。
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