JP3873295B2 - 複合ロ−ラおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、一般産業機器の回転駆動部に用いられる複合ローラおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エスカレータ用ステップローラ、エレベータ用ガイドローラ、各種台車や遊戯車両(コースタ)の車輪ローラ、自動ドア、医療ベッド用キャスタ、そしてOA機器架台用ローラ等の広汎な機器にあって、それらに内蔵の回転駆動部用の伝動ローラとして、あるいは機器自体を移動させたり搬送したりするための車輪ローラとして回転ローラが使用されている。
これらの回転ローラはいずれも厳しい駆動条件下で使用されるために、消耗も激しく短寿命に終わることが多い。消耗による不良化には、例えばローラ表面層に用いられるゴム等の弾性部材の亀裂、割れおよび芯金部材との接合剥離が大半を占めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
亀裂や割れの原因には、ローラへの負荷荷重と回転周速度との関係で、特にローラ表面層の弾性ゴム部材に圧縮応力と引張応力による繰返し応力がかかることなどがあり、それによってときには破断に至ることがある。繰返し応力を低減させるには、負荷を軽減して弾性歪などを減少させる必要がある。そのため、一般には、ローラ表面層である弾性ゴム部材に高硬度の材質のものを用いて対応している。また、芯金部材との剥離の問題は、上記弾性歪の発生の他、回転周速度が大きい場合はローラ全体が発熱し、芯金部材とローラ表面層との熱膨張率の差によって、接合層に引張応力が作用し、接着剤が熱劣化してその接着強度が低下することが原因となる場合が多い。特に、芯金部材の材質にステンレス鋼、銅、アルミニウム等を用いた場合は、ローラ表面層の弾性ゴム部材との間で接着剤による十分な接合強度が得られないといった難点があり、また鉄とか鋳物の場合には耐食性が低く、腐食によって弾性ゴム部材との接合力が低下するなどの問題がある。
本発明は、芯金部材とそのローラ表面層との剥離などに対する耐久性を飛躍的に向上させることで一般産業機器に広汎に使用される複合ローラおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の複合ローラは、車軸または回転軸に支持される芯金としてのハブ部材を有し、このハブ部材の外周に沿って緩衝、防振および吸音する表面弾性部材を接合して一体化されてなるものであって、該表面弾性部材が、補強層および弾性材被覆層からなる積層体であり、補強層は結合剤含浸紐材を捲回してハブ部材の外周面に嵌合される断面山形状の輪環状に加熱処理したものであり、この補強層の上から弾性材被覆層を接合して構成されている。
かかる複合ローラは、芯治具の外周面に沿って結合剤を含浸させた紐材を連続捲回して断面山形状で輪環状に補強層を形成した後、補強層の外周面に沿って弾性材被覆層を形成し、弾性材被覆層を形成させた補強層を加熱処理した後に芯治具から取り外してこれらの積層体である表面弾性部材を形成し、該表面弾性部材をハブ部材の外周面に嵌合させて接合することによって製造される。
かかる複合ローラはまた、芯治具の外周面に沿って結合剤を含浸させた紐材を連続捲回して断面山形状で輪環状の補強層を形成して加熱処理した後、この輪環状の補強層を芯治具から取り外して金型にセットし、補強層の外周面に沿って弾性材被覆層を射出成形またはプレス成形してこれらの積層体である表面弾性部材を形成し、金型から離型された輪環状の表面弾性部材をハブ部材の外周面に嵌合させて接合することによっても製造される。
【0005】
【作用】
表面弾性部材は輪環状に単体成形され、ハブ部材の外周面への嵌合により接合して一体化される。緩衝、防振、吸音するための表面弾性部材は、補強層とこの上に成形される弾性材被覆層との2層からなる積層体であり、補強層は結合剤 ( バインダー ) を含浸させた紐材を連続捲回して断面山形状の輪環状(ハブ部材の外周面に嵌合して接合できる内径を有する)に加熱処理される。紐材による補強層の断面を山形状とすることで、表面弾性部材ではそのローラ幅方向の両端部と中央部において、負荷荷重や回転周速度による圧縮応力と引張応力との繰返し応力に対して強化され、表面弾性部材の亀裂、割れあるいはローラ自身の発生熱による劣化等で消耗不良化を最小限に抑えることができ、耐久性が高められる。
【0006】
【実施例】
以下、本発明による複合ローラおよびその製造方法の実施例を図に基づいて説明する。
図1および図2は、本発明の実施例の一部断面による斜視図および正面断面図を示している。複合ローラ1は回転軸線C−C上の図示せぬ回転シャフト、ホイールまたは回転軸受を介して機器に軸支され、それらの回転軸に嵌合支持される芯金のハブ部材2を有している。図には、ハブ部材2はベアリング等を嵌着して取り付けられるよう輪環状に形成したものが示されてはいるが、それに限定されることはなく、完全に円形としたもので回転シャフトを挿通させるなど、回転駆動部の形態に自在に対応させることができる。ハブ部材2の材質は、機器や使用条件によって自在に対応させ、鉄、鋳鉄およびアルミニウム等の金属はもとより、樹脂、木材など多種多様なものが用いられる。こうしたハブ部材2の外周面には、緩衝、防振および吸音機能を兼備した表面弾性部材3が接着剤、かしめ嵌合あるいは溶着などいずれか好適手段でもって嵌合され、接合されている。
【0007】
表面弾性部材3は、ローラ幅B方向にハブ部材2と同一幅を有し、この発明でいう補強層10と弾性材被覆層20との積層体である。ハブ部材2の外周面に沿って接合される下層の補強層10は次のような構成となっている。この補強層10は長尺の紐材11を結合剤に含浸させた後に連続して断面山形状に捲回し、ハブ部材2の外周面に接合可能な内径を有する輪環状に成形されるものである。紐材11の材質には、綿または絹等の天然繊維、ナイロンまたはテトロン等の合成繊維、ガラスウール、カーボンファイバー、セラミックスファイバー、ポリイミド系樹脂材、そして金属または合金材(鋼線、銅線、アルミニウム線)等の広汎にわたる材料が可能であり、機器や使用条件に相応する耐久性を備えたものが選定される。かかる材質でもって形成された紐材11はエポキシ樹脂、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を結合剤(バインダー)として含浸させて、引張力等に対し強化されている。こうした紐材11の長尺のものをハブ部材2の外周面にその幅B一杯に連続して巻き付け、ローラ転圧後に含浸された結合剤を加熱処理してやや小さな両端部の凸部12、12と中央部の凸部13とによる断面「山」形状に形成されている。
【0008】
また、上記補強層10の上からコーティングされる弾性材被覆層20は、ウレタンゴムやシリコ−ンゴム等のゴム状弾性材、あるいはTPU(熱可塑性ウレタン)を溶融状態から射出成形などして、補強層10の上からこれを完全に被覆するような形で所定の厚さに成形されている。この弾性材被覆層20によって、ローラ駆動時に作用する機器からの負荷荷重を緩衝し、防振、吸音など機能させている。
【0009】
このように補強層10および弾性材被覆層20を積層した全体が輪環状の表面弾性部材3は、別に単体成形されてハブ部材2の外周面へ接合される。表面弾性部材3はハブ部材2の外周面に接着剤、かしめ嵌合、溶着等いずれか好適手段でもって嵌合、接合され、一体化して複合ローラ1が得られる。
【0010】
次に、図3および図4によって、本発明の製造方法の第1実施例として、ハブ部材2の外周面に接合される前の工程として表面弾性部材3の製造例を説明する。まず、図3に示すように、成形治具としての芯治具4を用い、紐材11による補強層10がハブ部材2の外周面に接合できる内径を有する輪環状に成形される。即ち、エポキシ樹脂、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のバインダー液中に浸漬させて含浸させた長尺の紐材11が準備され、この紐材11を芯治具4に連続して巻き付ける。巻き付けによってローラ幅B方向でいう両端部に凸部12、12を形成し、幅中央には凸部13を形成する。複合ローラ1として使用中の負荷や回転周速度で発生する圧縮応力と引張応力の繰返し応力分布の強弱を配慮し、両端部の凸部12、12は幅中央部の凸部13よりもやや小さめに形成され、あたかも山の形状の如くになっている。山形にする成形はローラ転圧などによって行うことができる。
【0011】
成形により補強層形成過程を終えると、図4に示すように、芯治具4に担持された状態で更に補強層10の上からこれを完全に被覆するような形で所定の厚さに弾性材被覆層20を例えば表面コートした後に、弾性材被覆層を形成させた補強層を加熱処理などして設ける。補強層10と弾性材被覆層20が一体化した積層体を芯治具4から抜き外し、表面弾性部材3が得られる。次いで、抜き外された輪環状の表面弾性部材3を既に準備されているハブ部材2の外周面に適宜手段で嵌合し、接合して一体化し、複合ローラ1を製造する。
【0012】
これに対して、図5は本発明による製造方法の第2実施例を示している。この第2実施例の製造方法では、表面弾性部材3における加熱処理工程は、図3に示された補強層10に対してのみ行われる。すなわち、図3のように、補強層10が紐材11の連続捲回により断面山形状に成形された後、芯治具4上に取り付けたままの状態でその山形の補強層10を加熱処理する。加熱処理後、補強層10を芯治具4から抜き外す。この段階で弾性材被覆層20は未だ設けられていない。輪環状の補強層10は上下金型5、6にセットされ、所要材質によるポリマー溶融材を金型で射出成形する。冷却後、離型によって補強層10の上に弾性材被覆層20が積層された表面弾性部材3を得る。この表面弾性部材3を既に準備されているハブ部材2の外周面に適宜手段で嵌合し、接合して一体化し、複合ローラ1を製造する。
【0013】
なお、以上の如き製造工程にあって、図6に示すように、ハブ部材2の外周面全域には、表面弾性部材3の補強層10との接合に備え、表面を凹凸部もしくは刻み溝2aなどを加工しておき、補強層10の食い付きを良好ならしめて、接合強度を高めるようにすることが望ましい。刻み溝2aに代わる手段としては、ショットブラスト、ローレットがけ、あるいはグルービング等による表面荒しも可能である。
【0014】
上記実施例から明らかなように、表面弾性部材3では、その内部に補強層10として紐材11を連続捲回して弾性材被覆層20に埋設させた形となっているので、表面弾性部材3に強い堅締力が働き、エア侵入による剥離の心配も解消される。また、表面弾性部材3の熱膨張に対して補強し得るので、ハブ部材2の外周面との間、更には補強層10と弾性材被覆層20との間の各層間接合部にかかる繰返し応力は軽減される。また、所要の耐久性の確保はもとより、緩衝、防振、吸音を兼備することは、それらを優先するとそれだけ表面弾性部材は材質的にも低硬度となり、磨滅、亀裂、割れの原因となるが、各実施例ではそれら全てを払拭できる利点がある。搭載例についていえば、例えばジェットコースターの如き非常に過酷な条件下で使用されても所要の耐久性が得られ、またプリンタの如きOA機器用給紙器では耐久性はもとより、防振および防音に格別な効果を発揮できる。
【0015】
【発明の効果】
本発明による複合ローラは、芯金となるハブ部材の外周面を表面弾性部材で被覆してあって、緩衝、防振、吸音するその表面弾性部材に紐材を断面山形状に連続捲回した補強層が形成されているので、表面弾性部材が負荷荷重や回転周速度によって発生する圧縮応力や引張応力の繰返し応力に対して強化され、亀裂、割れ、あるいはローラ自身の発生熱による劣化等で不良化するのを最小限に抑え、耐久性が格段に向上して多種多様な機器の回転駆動部に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例の複合ローラの一部断面による斜視図である。
【図2】実施例の複合ローラの正面断面図である。
【図3】本発明による製造方法の第1実施例として複合ローラの製造工程で補強層形成段階を示す正面断面図である。
【図4】製造方法の第1実施例として複合ローラの製造工程で弾性材被覆形成段階を示す正面断面図である。
【図5】本発明による製造方法の第2実施例として複合ローラの製造工程で金型を用いた射出成形に形態を示す正面断面図である。
【図6】各実施例に用いられる芯金としてのハブ部材の外周面を表面荒しした形態の部分的な正面断面図である。
【符号の説明】
1 複合ローラ
2 ハブ部材
3 表面弾性部材
4 芯治具
5、6 金型
10 補強層
11 紐材
12、13 紐材による大小凸部
20 弾性材被覆層
Claims (4)
- 車軸または回転軸に支持される芯金としてのハブ部材を有し、このハブ部材の外周に沿って表面弾性部材を接合して一体化されてなる複合ローラであって、
該表面弾性部材が、補強層および弾性材被覆層からなる積層体であり、補強層は結合剤含浸紐材を捲回してハブ部材の外周面に嵌合される断面山形状の輪環状に加熱処理したもので、この補強層の上から弾性材被覆層を接合していることを特徴とする複合ローラ。 - 車軸または回転軸に支持される芯金としてのハブ部材を有し、このハブ部材の外周に沿って表面弾性部材を接合して一体化されてなる複合ローラの製造方法であって、
芯治具の外周面に沿って結合剤を含浸させた紐材を連続捲回して断面山形状で輪環状の補強層を形成した後、補強層の外周面に沿って弾性材被覆層を形成し、弾性材被覆層を形成させた補強層を加熱処理した後に芯治具から取り外してこれらの積層体である表面弾性部材を形成し、該表面弾性部材をハブ部材の外周面に嵌合させて接合することを特徴とする複合ローラの製造方法。 - 車軸または回転軸に支持される芯金としてのハブ部材を有し、このハブ部材の外周に沿って表面弾性部材を接合して一体化されてなる複合ローラの製造方法であって、
芯治具の外周面に沿って結合剤を含浸させた紐材を連続捲回して断面山形状で輪環状の補強層を形成して加熱処理した後、この輪環状の補強層を芯治具から取り外して金型にセットし、補強層の外周面に沿って弾性材被覆層を射出成形またはプレス成形してこれらの積層体である表面弾性部材を形成し、金型から離型された輪環状の表面弾性部材をハブ部材の外周面に嵌合させて接合することを特徴とする複合ローラの製造方法。 - 表面弾性部材が接合されるハブ部材の外周面に、予め凹凸部または刻み溝が形成されている請求項2または3記載の複合ローラの製造方法。
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- 1995-03-14 JP JP08181695A patent/JP3873295B2/ja not_active Expired - Fee Related
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