JP3870851B2 - 車線逸脱防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制動装置の制動を制御してヨーモーメントを発生させて車線逸脱を防止する車線逸脱防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような技術として、特開平11−34829号公報に開示されている技術(以下、先行技術という。)がある。この先行技術は、制駆動力の左右差により車線からの車両の逸脱を防止する装置についてのものであり、自車両前方の車線を検出し、その検出した車線からの逸脱量又は逸脱予測値に従って、車両の左右に付与する制駆動力を制御することで、車線からの車両の逸脱を防止する構成になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記先行技術では、前述の逸脱防止のための制駆動力とは別の縦方向の制動力がカーブ途中等で加わった場合においても、逸脱防止のための制駆動力が変化しない構成となっている。よって、カーブ走行中の車両は、縦方向の制動力により減速することでも曲がるようになる(ヨーレイトゲインが大きくなる)のであるが、前記先行技術では、前記制駆動力をそのまま逸脱防止のために制御してしまうので、その結果、逸脱防止のための制御量が大きくなりすぎるという問題があった。これでは、逸脱防止のための制御がドライバに違和感を与えてしまうことになる。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、車線逸脱防止のための制御量を最適値にすることができる車線逸脱防止装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するために、本発明に係る車線逸脱防止装置では、ヨーモーメント決定手段は、ヨーモーメント発生手段による制動以外の制動を検出した場合、当該検出した旋回運動中の制動によるヨーイング運動量の発生を見込んで、車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントを小さくしている。
【0006】
カーブを車両が走行中に制動が加わると、車両はさらに曲がるようになる。よって、カーブを車両が走行中に制動が加わると、車両にヨーモーメントが付与されたと等価な現象を呈するようになる。このようなことから、本発明に係る車線逸脱防止装置は、車線逸脱防止用のヨーモーメントを、そのように制動が加わることにより生ずる車両挙動としてのヨーイング運動量を見込んで、車線逸脱防止用のヨーモーメントを決定している。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、車線逸脱防止用のヨーモーメントの付与或いはそれ以外の影響による車両挙動が、車線逸脱防止用として付与したヨーモーメントによるものと等価な挙動を示す場合、その車両挙動を見込むことで、車線逸脱防止用として付与するヨーモーメントを車線逸脱防止に最適な値として最終的に決定することができるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、第1の実施の形態について、図1乃至図8を用いて説明する。図1は、実施の形態の車線逸脱防止装置の構成を示す。図1に示すように、カメラ装置1、ブレーキ液圧制動装置2、操舵ハンドル4、車輪速センサ5、レーダ装置6、マスタ圧検出部7及びコントローラ10を備えている。
【0009】
ここで、カメラ装置1は、自車両の走行車線の白線を認識し、自車両の左側白線から自車両中心までの横距離、走行車線幅及び前方の曲率を検出し、コントローラ10に出力する。また、車輪速センサ5は、各車輪の車輪速を検出し、コントローラ10に出力する。また、レーダ装置6は、自車両の前方の障害物との距離を検出し、コントローラ10に出力する。なお、このレーダ装置6は、前方の障害物との車間情報を取得するものであればよく、ミリ波レーダや車間距離情報を取得可能なセンサでもよい。マスタ圧検出部7は、ドライバがブレーキペダルを踏んだことによって発生するブレーキ液圧を検出し、コントローラ10に出力する。
【0010】
コントローラ10は、構成各部の制御等をするように構成されており、特に前記各センサ部との関係においては、当該各センサ部からの入力信号に基づいて目標ブレーキ液圧を算出し、ブレーキ液圧制御装置2にその算出結果に対応する指令信号を出力するような構成をなしている。
図2は、このコントローラ10の具体的な構成を示す。なお、この図2では、矢印にて処理手順或いは各構成部間の信号の流れを示している。コントローラ10は、この図2に示すように、車両情報検出部11、目標モーメント算出部12、車速推定値算出部13、ヨーレイト推定値算出部14、目標ヨーレイト補正量算出部15、補正後目標ヨーモーメント算出部16及びブレーキ液圧算出部17を備えている。
【0011】
車両情報検出部11は、前記各センサ部からの信号に基づいて各情報を取得する。すなわち、車両情報検出部11は、前記車輪速センサ5から車輪速、図示しない舵角センサからハンドル舵角、カメラ装置1から撮像情報及びレーダ装置6から車間距離等の各種情報を検出する。
目標ヨーモーメント算出部12は、通常の車線逸脱防止用の制御理論により目標ヨーモーメントを算出する。すなわち例えば、目標ヨーモーメント算出部12は、前記車両情報検出部11が検出した撮像情報に基づいて自車両が走行している車線に対する逸脱偏位量を算出するとともに、その逸脱偏位量を小さくするように車両へヨーモーメントを与えるための目標ヨーモーメントを算出する。
【0012】
車速推定値算出部13は、車間制御による目標減速度、コーナ減速制御による目標減速度及びドライバがブレーキペダルを踏んだことによる目標ブレーキ液圧から目標減速度をそれぞれ算出し、セレクトハイ(最高値を選択)して目標減速度を選択する。そして、車速推定値算出部13は、この選択した目標減速度からt秒後の車速を推定する。
【0013】
ヨーレイト推定値算出部14は、車速推定値算出部13が算出した前記t秒後の推定車速を使用し、t秒後のヨーレイトを推定する。ここで、推定されるヨーレイトは、車線逸脱防止ロジックが介入する前のヨーレイト、すなわち前記目標ヨーモーメント算出部12が通常の車線逸脱防止用の制御理論による目標ヨーモーメントの算出とは関係なく独立して得たヨーレイトとなる。このヨーレイトの推定は、幾何学的に求まる算出式を用いて行っている。これについては後で詳述する。
【0014】
目標ヨーレイト補正量算出部15は、前記ヨーレイト推定値算出部14が算出したヨーレイトと、前記ヨーレイト推定値算出部14が算出した前記t秒後のヨーレイト推定値とを比較し、ヨーレイト補正量を算出する。
補正後目標ヨーレイト算出部16は、前記目標ヨーモーメント算出部12が算出した目標ヨーモーメントと前記目標ヨーレイト補正量算出部15が算出したヨーレイト補正量を用い、補正後目標ヨーモーメントを算出する。
【0015】
ブレーキ液圧算出部17は、補正後目標ヨーレイト算出部16が算出した補正後目標ヨーモーメントを用い、ブレーキ液圧を算出し、ブレーキ液圧制動装置2にそのブレーキ液圧に対応する指令を与える。
次に、コントローラ10を構成する車速推定値算出部13、ヨーレイト推定値算出部14、目標ヨーレイト補正量算出部15及び補正値目標ヨーモーメント算出部16それぞれの処理内容の詳細を説明する。
【0016】
図3は、車速推定値算出部13の処理手順を示す。
この図3に示すように、先ず、車速推定値算出部13は、ステップS1において、ハンドル角、車輪速、マスタ圧及び車間距離情報が入力される。そして、車速推定値算出部13は、ステップS2〜ステップS5において、これら情報に基づいて処理を行う。
【0017】
すなわち、ステップS2では、車速推定値算出部13は、車間制御の目標減速度を算出する。
ここで、車間制御とは、例えばACC制御(オートクルーズコントロール)のことであり、先行車と所定の車間距離を保って自車速を制御するものである。すなわち、車間制御では、先行車が加速すればスロットルを制御し、先行車が減速すれば、ブレーキをかける制御を行うようになっている。
【0018】
このような車速制御に基づいて、車速推定値算出部13は、先行車が減速した場合には、目標減速度として正数値を出力し、スロットルを制御するような加速の場合或いはコースティングの場合には目標減速度としてゼロを出力する。
また、ステップS3では、車速推定値算出部13は、コーナ減速制御の目標減速度を算出する。
【0019】
ここで、コーナ減速制御とは、コーナでオーバスピード(旋廻走行時に超過速度)であると判断した場合に、車速を目標値まで減速させるシステムであり、コーナ減速制御の目標減速度は、その減速のための目標減速度をなす。車速推定値算出部13は、コーナでオーバスピードと判断した場合、目標減速度として正数値を出力する。
【0020】
また、ステップS4では、車速推定値算出部13は、ドライバ操作としてのブレーキペダル操作によって発生するマスタ圧を検出して、その検出値をドライバの目標ブレーキ液圧値として出力する。さらに、車速推定値算出部13は、続くステップS5において、その目標ブレーキ液圧値を目標減速度に換算する。
車速推定値算出部13は、以上のステップS2〜ステップS5にて得た各目標減速度を使用して、ステップS6及びステップS7において、セレクトハイにより目標減速度を選択し、その選択した目標減速度を出力する。
【0021】
そして、車速推定値算出部13は、ステップS8において、t秒後の推定車速を算出する。
ここで、所定時間であるt秒として、前記目標ヨーモーメント算出部12で使用される前方注視点時間を用いる。前方注視点は、一般に、車両の横偏位と目標コースとのずれを検出するための車両から距離Xにある基準位置であり、人の制御動作をモデル化した際に使用するもので、その距離Xが下記(1)式として与えれるものである。
【0022】
X=T×V ・・・(1)
ここで、Vは自車速であり、Tが前記前方注視点時間となる。このように距離Xは速度の関数となり、前方注視点は速度に応じて変化するものとなる。そして、この(1)式に示すように、前方注視点時間は、前記コースとのずれが生じるであろうX/Vなる時間を示す値となる。
【0023】
すなわち、目標ヨーモーメント算出部12では、このような前方注視点時間後に横偏位が小さくなるように目標ヨーモーメントを算出しており、これにより、逸脱制御では、この前方注視点時間後に横偏位が小さくなるように車両の位置を修正する制御をしているのである。
このように目標ヨーモーメント算出部12で目標ヨーレイトを算出に使用している前方注視点時間とt秒とを一致させている。すなわち、車速推定値算出部13は、目標ヨーモーメント算出部12が目標ヨーモーメントの決定に用いる基準(前方注視転時間)と同一基準(t秒)により車速の推定している。
【0024】
そして、このように決定しているt秒後の推定車速Vtを下記(2)式として与えている。
Vt=Vi−Xg/t ・・・(2)
ここで、Viは現在の自車両車速であり、Xgは目標減速度(正数)であり、tは前方注視点時間である。
【0025】
次に、ヨーレイト推定値算出部14の処理内容を説明する。図4は、その処理手順を示す。
先ず、ヨーレイト推定値算出部14は、ステップS11において、前記車速推定値算出部13が算出したt秒後の推定車速Vtを用い、t秒後のヨーレイト推定値φtを算出する。その算出は、下記(3)式により行う。
【0026】
φt=(1/(1+A・Vt2))・(Vt/L)・δ ・・・(3)
ここで、Aはスタビリティファクタであり、Lはホイルベースであり、δは実舵角である。なお、図5は、この(3)式により得られる特性を示すものであり、ヨーレイト推定値φtと実舵角δとの比φt/δと、推定車速Vtとの関係を示している。この図5に示すように、ある一定の舵角で考えれば、ある速度まで車速が減速すると、ヨーレイトは大きくなる特性を示すことがわかる。
【0027】
次に、目標ヨーレイト補正量算出部15の処理内容を説明する。図6は、その処理手順を示す。目標ヨーレイト補正量算出部15は、前記ヨーレイト推定値算出部14が算出したt秒後のヨーレイト推定値φtを用い、目標ヨーレイト補正量を算出する処理内容になっている。
すなわち、先ず、目標ヨーレイト補正量算出部15は、ステップS21で入力された前記t秒後のヨーレイト推定値φtを用い、ステップS22において、現在のヨーレイト推定値φiを算出する。その算出は、下記(4)式により行う。
【0028】
φi=(1/(1+A・Vi2))・(Vi/L)・δ ・・・(4)
ここで、Aはスタビリティファクタであり、Viは現在の車速であり、Lはホイルベースであり、δは実舵角である。このように、(4)式は、前記t秒後のヨーレイト推定値を求めるために使用した算出式と同様となる。
なお、現在のヨーレイトを(4)式を用いて推定としているがこのようにして現在のヨーレイトを得ることに限定されるものではなく、ヨーレイトセンサを搭載して、そのヨーレイトセンサにより取得したヨーレイトセンサ値と、この(3)式として得られるヨーレイト推定値をセレクトハイして、現在のヨーレイトを選択するようにしてもよい。
【0029】
そして、目標ヨーレイト補正量算出部15は、ステップS23において、そのようにして得た現在のヨーレイト推定値φiと、前記ヨーレイト推定値算出部14が算出したt秒後に予想されるヨーレイト推定値φtとの差を得て、ヨーレイト変化量を示す差分値Δφを算出する。
続いて、目標ヨーレイト補正量算出部15は、ステップS24において、その差分値Δφが0より大きい値であるか否かを判定して、その差分値Δφが0より大きい場合にはステップS25に進み補正量をΔφとし、すなわちその差分値を補正量として採用し、その差分値Δφが0以下である場合にはステップS26に進み補正量を0にする。
【0030】
そして、前記補正後目標ヨーモーメント算出部16は、この目標ヨーレイト補正量算出部15が得た補正量Δφから補正係数Kを得る。図7は、補正量Δφと補正係数Kとの関係を示す。この関係において、補正係数Kはある値a(ただし、a>0)〜1まで変化しており、補正量Δφが0から値bまでの間にある場合、補正量Δφの増加に対して補正係数Kは減少する特性を示すようになっている。補正後目標ヨーモーメント算出部16は、このような特性からなる補正係数Kを前記補正量Δφに基づいて得る。
【0031】
なお、図7では、補正量Δφの増加に対して補正係数Kが減少する領域で、補正量Δφと補正係数Kとの関係が線形関係になっているが、非線形関係であってもよい。
さらに、補正後目標ヨーモーメント算出部16は、このようにして得た補正係数Kを前記目標ヨーモーメント算出部12が算出した目標ヨーモーメントに補正係数Kを積算して最終的な補正後目標ヨーモーメントを得る。これにより、ヨーレイトの前記補正量Δφにより目標ヨーモーメントが補正されて最終的な補正後目標ヨーモーメントが得られたことになる。
【0032】
前記ブレーキ液圧算出部17では、この目標ヨーレイト補正後算出部16が算出した補正後目標ヨーレイトを発生させるためのブレーキ液圧を算出して、ブレーキ液圧制動装置2にそのブレーキ液圧に対応する指令を与え、ブレーキ液圧制動装置2では、その指令振動に応じて車線逸脱防止制御としての制動動作を行う。
【0033】
なお、以上の構成において、車速推定値算出部13、ヨーレイト推定値算出部14、目標ヨーレイト補正量算出部15及び補正後目標ヨーモーメント算出部16は、車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントの大きさを決定するヨーモーメント決定手段をなし、後述のヨーモーメント発生手段による制動以外の制動を検出した場合、当該検出した制動により生じるヨーイング運動量であるヨーレイトを見込んで、車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントの大きさを決定するように構成されており、また、目標ヨーモーメント算出部12は、前記ヨーモーメント決定手段が決定したヨーモーメントを制動装置を構成するブレーキ液圧制動装置2による制動を制御して発生させるヨーモーメント発生手段をなす。ここで、補正後目標ヨーモーメント算出部16は、結果的には、ヨーモーメントをブレーキ液圧制動装置2による制動を制御して発生させてもいるので、前記ヨーモーメント発生手段の一部をなしているともいえる。
【0034】
さらに、車速推定値算出部13は、前記ヨーモーメント発生手段による制動以外の制動による車速を推定する車速推定手段をなし、ヨーレイト推定値算出部14及び目標ヨーレイト補正量算出部は、その車速推定手段が算出した車速に基づいてヨーイング運動量の変化量であるヨーレイト変化量Δφを推定するヨーイング運動変化量推定手段をなしている。
【0035】
このような構成により実現される作用或いは一連の動作は次のようになる。
車線からの車両の逸脱により、目標ヨーモーメント算出部12では、逸脱偏位量を小さくする目標ヨーモーメントが算出される。
このとき、車速推定値算出部13では、車間制御による目標減速度、コーナ減速制御による目標減速度及びドライバがブレーキペダルを踏んだことによる目標ブレーキ液圧から目標減速度がそれぞれ算出され、セレクトハイにより目標減速度が選択されて、この目標減速度からt秒後の車速が推定される。ヨーレイト推定値算出部14では、この車速推定値算出部13が算出した前記t秒後の推定車速を使用し、t秒後のヨーレイトが推定され、さらに、目標ヨーレイト補正量算出部15において、この推定されたt秒後のヨーレイト推定値と目標ヨーモーメント算出部12が得た車線逸脱防止ロジック介入前のヨーレイトとに基づいてヨーレイト補正量が算出される。そして、補正後目標ヨーレイト算出部16では、この目標ヨーモーメント算出部12が算出した目標ヨーモーメントと目標ヨーレイト補正量算出部15が算出したヨーレイト補正量を用い、補正後目標ヨーモーメントを算出し、ブレーキ液圧算出部17にて、その補正後目標ヨーレイト算出部16が算出した補正後目標ヨーモーメントを用いて、ブレーキ液圧が算出されて、ブレーキ液圧制動装置2にそのブレーキ液圧に対応する指令が与えられる。これにより、補正されたヨーモーメントを目標値としてブレーキ液圧制動装置2により所定量のブレーキがかけられ、車両の車両姿勢が修正されることで、車線逸脱防止制御が実現される。このような制御による効果について、図8を用いて説明する。
【0036】
図8において、走行軌跡▲1▼は、車両が縦方向の減速をしていないときのものであり、走行軌跡▲2▼は、縦方向の減速をしているときのものである。そして、この走行軌跡▲1▼及び走行軌跡▲2▼は逸脱防止制御を実施していない場合のものである。また、走行軌跡▲3▼は、目標とする車両軌跡である。
このように、走行軌道▲1▼と走行軌道▲2▼との比較から、ハンドル角が一定であれば減速するだけでもカーブの内側に車両20は曲がるようになることがわかる。そして、従来では、車両が減速することを考慮していないので、走行軌道▲1▼のラインを走行するであろうことを前提として車両に対して逸脱防止制御を実施しており、このとき、逸脱防止用のヨーモーメントをM1だけ発生させていた。
【0037】
しかし、実際は、減速によって車両は走行軌道▲2▼のラインを走行するようになるので、従来では、逸脱防止制御においてヨーモーメントM1をそのまま発生させてしまうことで、走行軌道▲4▼のラインに車両姿勢が修正されて、目標の走行軌道▲3▼のラインよりも内側に大きく戻されてしまっていた。
一方、本発明では、減速することを前提とし、補正量Δφを考慮しているので、前記モーメントM1よりも小さいヨーモーメントM2を逸脱防止制御において発生するようになるので、目標の走行軌道▲3▼のラインに車両姿勢が修正されるようになる。
【0038】
このように、減速値を推定してその減速値に対応する補正量Δφを求め、この補正量Δφを目標ヨーモーメントに反映させることにより、逸脱防止制御用の制御量が大きく出過ぎないようにすることが可能になり、ドライバに違和感を与えてしまうことを防止することができる。
また、前述したように、車速推定値算出部13は、目標ヨーモーメント算出部12が目標ヨーモーメントの決定に用いる基準(前方注視転時間)と同一基準(t秒)により車速の推定している。
【0039】
ここで、車両も前方注視点でどのくらい減速しているかが問題となるが、そのように車速を推定する基準時間t秒を前方注視点時間に一致させることで、車速推定値出部13と目標ヨーモーメント算出部12のロジック間での整合性がとれるようになる。
これにより、前記目標ヨーモーメントの補正に使用する前記補正量Δφがこの車速推定値算出部13が推定した推定速度の関数となっていることから、最適な補正量Δφによって目標ヨーモーメントの補正がなされたことになり、逸脱防止制御用の制御量の超過を確実に防止することができるようになる。
【0040】
次に、第2の実施の形態を説明する。
逸脱防止制御では、その逸脱防止用にヨーモーメントを発生させており、図9に示すように、そのヨーモーメントMを車輪21,21の制動操作により発生させている。このようなことから、逸脱防止制御の実施により、結果的に、図9に示すように、車両後方に向かう力Fが車両に発生し、車両が減速するようになる。 よって、この逸脱防止制御に起因した減速度により、車両挙動が見かけ上ヨーレイトゲインが大きくなった、すなわちヨーレイトの変化率が大きくなったのと同様な挙動を示すようになるので、この減速度を考慮しないと、逸脱防止制御の制御量が大きくなってしまう場合がある。
【0041】
そこで、第2の実施の形態では、逸脱防止制御にてその逸脱防止用に発生させるヨーモーメント起因の減速挙動を考慮するようにしている。
すなわち、先ず、コントローラ10(例えば、車速推定算出部13)は、逸脱防止用のヨーモーメントより発生する減速度を求める。例えば、下記(5)式の関係から逸脱防止用のヨーモーメントに対応する減速度を求める。
【0042】
a=Const・M ・・・(5)
aは減速度であり、Mは目標ヨーモーメントである。また、Constは車両諸元に基づいた値であり、例えば、次のように与えられる。
目標ヨーモーメント算出部12が算出した目標ヨーモーメントをMとし、車両重量をmとし、トレッドの1/2の値をL2としたとき、前記車両後方に向かう力Fは、下記(6)式として与えられる。
【0043】
F=m・a=M/L2 ・・・(6)
この(6)式を減速度aについて示すと下記(7)式になる。
a=M/(m・L2) ・・・(7)
この(7)式の1/(m・L2)をConstとしている。
また、このようにConstは車両諸元より求まるが、補正値を積算しても良い。すなわち、下記(8)式の関係から、補正値Bを用い、逸脱防止用のヨーモーメントに対応する減速度を求めてもよい。
【0044】
a=B・Const・M ・・・(8)
この場合、補正値Bをチューニングパラメータとして実車に応じた値にすることで、減速度aを実車に応じて決定することができるようになる。
そして、コントローラ10は、このように求めた減速度を、前記ステップ6においてセレクトハイで比較して、第1の実施の形態と同様に、t秒後の推定車速を算出する。コントローラ10は、それ以後の処理で、このように算出した推定車速に基づいて前述の第1の実施の形態と同様な処理を行う。すなわち、ヨーレイト推定値算出部14により、車速推定値算出部13が算出した前記t秒後の車速を使用し、t秒後のヨーレイトを推定する。そして、目標ヨーレイト補正量算出部15により、車線逸脱防止ロジックが介入する前のヨーレイト、すなわち前記目標ヨーモーメント算出部12が通常の車線逸脱防止用の制御理論による目標ヨーモーメントの算出とは関係なく得たヨーレイトと、前記ヨーレイト推定値算出部14が算出した前記t秒後のヨーレイト推定値とを比較し、ヨーレイト補正量を算出する。それから、補正後目標ヨーレイト算出部16により、前記目標ヨーモーメント算出部12が算出した目標ヨーモーメントと前記目標ヨーレイト補正量算出部15が算出したヨーレイト補正量を用い、補正後目標ヨーモーメントを算出する。そして、ブレーキ液圧算出部17では、補正後目標ヨーレイト算出部16が算出した補正後目標ヨーモーメントを用い、ブレーキ液圧を算出し、ブレーキ液圧制動装置2にそのブレーキ液圧に対応する指令を与える。
【0045】
この第2の実施の形態のように構成することで、車線逸脱防止用に付与するヨーモーメント起因のヨーレイトゲインの見かけ上の増加、すなわちヨーイング運動量変化率の変化量の増加を見込むことができ、車線逸脱防止用に付与するヨーモーメント起因の車両挙動を考慮して逸脱防止用の制御量を決定することができるようになる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施の形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、前述の実施の形態では、各種処理に使用する式或いは特性図を具体的に挙げて説明しているが、これに限定されないことはいうまでもない。すなわち例えば、目標ヨーモーメント算出部12が決定した目標ヨーモーメントの補正をヨーレイトやヨーレイトゲイン等に着目して行っているが、他の値に着目してその補正を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】コントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】前記コントローラの車速推定値算出部の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】前記コントローラのヨーレイト推定値算出部の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】前記ヨーレイト推定値算出部により得られる特性であって、ヨーレイト推定値φtと実舵角δとの比φt/δと、推定車速Vtとの関係を示す特性図である。
【図6】前記コントローラの目標ヨーレイト補正量算出部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】前記コントローラの補正後目標ヨーモーメント算出部が補正量Δφから補正係数Kを得るために使用する特性図である。
【図8】本発明の効果の説明に使用した図である。
【図9】第2の実施の形態を説明するために使用した図である。
【符号の説明】
1 カメラ装置
2 ブレーキ液圧制動装置
4 操舵ハンドル
5 車輪速センサ
6 レーダ装置
10 コントローラ
11 車両情報検出部
12 目標モーメント算出部
13 車速推定値算出部
14 ヨーレイト推定値算出部
15 目標ヨーレイト補正量算出部
16 補正後目標ヨーモーメント算出部
17 ブレーキ液圧算出部
Claims (7)
- 車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントの大きさを決定するヨーモーメント決定手段と、
前記ヨーモーメント決定手段が決定したヨーモーメントを制動装置による制動を制御して発生させるヨーモーメント発生手段と、を備え、
前記ヨーモーメント決定手段は、前記ヨーモーメント発生手段による前記制動以外の制動を検出した場合、当該検出した旋回運動中の制動によるヨーイング運動量の発生を見込んで、前記車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントを小さくすることを特徴とする車線逸脱防止装置。 - 前記ヨーモーメント発生手段による制動以外の制動から車両の減速度を算出し、算出した減速度に基づいて車速を推定する車速推定手段と、前記車速推定手段が推定した車速に基づいてヨーイング運動量の変化量を推定するヨーイング運動変化量推定手段と、を備え、
前記ヨーモーメント決定手段は、車線に対する車両の偏位に基づいて算出した前記車線逸脱防止用のヨーモーメントの大きさを、前記ヨーイング運動変化量推定手段が推定したヨーイング運動量の変化量により補正することを特徴とする請求項1記載の車線逸脱防止装置。 - 前記ヨーモーメント決定手段は、前記車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントを前方注視点を基準に決定しており、前記車速推定手段は、前記前方注視点における車速の推定をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車線逸脱防止装置。
- 前記ヨーモーメント発生手段による制動以外の制動は、車間制御による制動、旋廻走行時の超過速度抑制のための制動又は運転者の操作による制動のうちのいずれかの制動であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
- 前記ヨーイング運動量はヨーレイトであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車線逸脱防止装置。
- 車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントの大きさを決定するヨーモーメント決定手段と、
前記ヨーモーメント決定手段が決定したヨーモーメントを制動装置による制動を制御して発生させるヨーモーメント発生手段と、を備え、
前記ヨーモーメント決定手段は、前記ヨーモーメント発生手段による前記制動により生じる減速度からヨーイング運動量変化率の発生を見込んで、前記車線逸脱防止用に車両に付与するヨーモーメントを小さくすることを特徴とする車線逸脱防止装置。 - 前記ヨーイング運動量変化率はヨーレイトの変化率であること特徴とする請求項6記載の車線逸脱防止装置。
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