JP3870819B2 - 排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガスを浄化する技術に関し、特に、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去する手段を有する排気ガス浄化装置及び排気ガス中の窒素酸化物を除去する手段を用いた排気ガス浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等に搭載される筒内噴射型の内燃機関、例えばディーゼル機関では、排気ガス中に含まれる煤等の排気微粒子を除去すると共に窒素酸化物(NOx)を除去することが要求されており、このような要求に対し、NOx吸蔵剤が担持されたパティキュレートフィルタを内燃機関の排気ガス通路に配置する方法が提案されている。
【0003】
このように用いられるNOx吸蔵剤は、排気ガスの空燃比がリーンの時にはNOxを吸蔵し、排気ガス中の空燃比が小さくなり、且つ排気ガス中にHCやCO等の還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化する作用(NOxの吸収放出及び還元作用またはNOxの吸着及び還元作用)を有する。この作用を利用して、排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス中のNOxをNOx吸蔵剤に吸蔵させ、一定期間使用してNOx吸蔵剤の吸蔵効率が低下した時または低下する前にNOx吸蔵剤に還元剤(燃料)を供給する等して、NOx吸蔵剤に吸蔵したNOxの還元浄化を行うようにしている。
【0004】
なお、本明細書において「吸蔵」という語は「吸収」及び「吸着」の両方の意味を含むものとして用いる。したがって、「NOx吸蔵剤」は、「NOx吸収剤」と「NOx吸着剤」の両方を含み、前者はNOxを硝酸塩等の形で蓄積し、後者はNO2等の形で吸着する。また、硫黄分等に関するNOx吸蔵剤からの「放出」という語についても、「吸収」に対応する「放出」の他、「吸着」に対応する「脱離」の意味も含むものとして用いる。
ところで、内燃機関の燃料には硫黄(S)成分が含まれている場合があり、この場合には排気ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれることとなる。排気ガス中にSOxが存在するとNOx吸蔵剤はNOxの吸蔵作用を行うのと全く同じメカニズムで排気ガス中のSOxの吸蔵を行う。
【0005】
ところが、NOx吸蔵剤に吸蔵されたSOxは比較的安定であり、一般にNOx吸蔵剤に蓄積されやすい傾向がある。NOx吸蔵剤のSOx蓄積量が増大すると、NOx吸蔵剤のNOx吸蔵容量が減少して排気ガス中のNOxの除去を十分に行うことができなくなるため、NOxの浄化効率が低下するいわゆる硫黄被毒(S被毒)の問題が生じる。特に、燃料として比較的硫黄成分を多く含む軽油を使用するディーゼルエンジンにおいてはこの硫黄被毒の問題が生じやすい。
【0006】
一方、NOx吸蔵剤に吸蔵されたSOxについても、NOxと同じメカニズムで放出または脱離等(以下、単に「放出」という)が可能であることが知られている。しかし、SOxは比較的安定した形でNOx吸蔵剤に吸蔵されるため、通常のNOxの還元浄化が行われる温度(例えば250℃程度以上)ではNOx吸蔵剤に吸蔵されたSOxを放出等させることは困難である。このため、硫黄被毒を解消するためには、NOx吸蔵剤を通常のNOxの還元浄化時より高い温度、すなわち硫黄分放出温度(例えば600℃以上)に昇温すると共に流通する排気ガスの空燃比を略ストイキまたはリッチ(以下、単にリッチという)にして硫黄分の放出を行わせる硫黄被毒再生制御を定期的に行う必要がある。
【0007】
このような硫黄被毒再生制御としては、NOx吸蔵剤の上流において排気ガス通路内へ還元剤(軽油)を添加し、NOx吸蔵剤を昇温すると共にNOx吸蔵剤において略ストイキまたはリッチ雰囲気を作り出す方法が公知である。しかしながら、この方法では排気ガス通路内に添加される還元剤(軽油)の反応性が比較的低いことから、一般にNOx吸蔵剤に大きな温度分布が生じることとなる。
【0008】
すなわち、還元剤は添加後徐々に反応するため、例えば排気ガス流量が比較的多い場合には、NOx吸蔵剤の上流側部分よりも下流側部分で温度が上昇する傾向がある。
そしてこのようにNOx吸蔵剤に温度分布が生じると、ある部分については硫黄分放出温度に達するが別の部分では硫黄分放出温度に達しないという状況が生じ、NOx吸蔵剤全体として十分な硫黄被毒再生が行えないという問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、硫黄被毒再生を行うに際してNOx吸蔵剤を昇温させる場合において、NOx吸蔵剤の各部分間の温度差を減少させ、NOx吸蔵剤全体が硫黄分放出温度以上となるようにし得る排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された排気ガス浄化装置または排気ガス浄化方法を提供する。
【0011】
1番目の発明は、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置した排気ガス浄化装置において、上記NOx吸蔵剤の上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段と、上記NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御する流量制御手段とを備えていて、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を予め定めた流量として還元剤の添加を行い、その後上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で予め定めた別の流量まで増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化装置を提供する。
【0012】
1番目の発明によれば、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるために還元剤の添加によってNOx吸蔵剤の温度を上昇させる場合において、単純な流量制御のみによって硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の上流側部分と下流側部分との間に生じる温度差を減少させることができ、最終的に対象NOx吸蔵剤全体を同時に硫黄分放出温度以上とすることができる。これにより、対象NOx吸蔵剤の全体に渡って十分な硫黄被毒再生が実施可能となる。また、対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を増加した際には、対象NOx吸蔵剤の上流側部分に多く存在している可能性のある残存還元剤が反応(燃焼)し且つ除去されるため、添加された還元剤を硫黄被毒再生制御中の対象NOx吸蔵剤の昇温に効率的に利用することができると共に、硫黄被毒再生制御完了後の残存還元剤に起因するNOx吸蔵剤の過加熱を抑制することができる。
【0013】
2番目の発明は、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置した排気ガス浄化装置において、上記NOx吸蔵剤の上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段と、上記NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御する開度調整可能なバルブとを備えていて、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記バルブの開度を予め定めた開度に調整することによって上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御して還元剤の添加を行い、その後上記バルブの開度を予め定めた別の開度に調整することにより上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化装置を提供する。
【0014】
2番目の発明によれば、簡単なバルブ開度の調整のみによって1番目の発明とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。
3番目の発明では1番目または2番目の発明において、NOx吸蔵剤が、排気ガス中の排気微粒子を除去する手段に担持されて上記排気ガス通路に配置されている。
これによって、NOxと同時に排気ガス中の排気微粒子をも除去することができる。
【0015】
4番目の発明は、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置して行う排気ガス浄化方法において、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を予め定めた流量として還元剤の添加を行い、その後上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で予め定めた別の流量まで増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化方法を提供する。
この発明によっても1番目の発明とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明はNOx吸蔵剤であるNOx吸収剤とNOx吸着剤のどちらを用いても実施可能であるが、以下ではNOx吸収剤を用いた場合について説明する。
【0017】
また、本明細書においては便宜上、「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の上流側部分」及び「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の下流側部分」等の表現を、排気ガス通路内に一ヶ所にまとめて配置されたNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)のうちの「上流側にあるNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」及び「下流側にあるNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」という意味で用いる。より具体的には、例えばNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)がパティキュレートフィルタのような担持体に担持されている場合には、「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の上流側部分」及び「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の下流側部分」等の表現はそれぞれ、NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)のうちの「担持体の上流側部分に担持されているNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」及び「担持体の下流側部分に担持されているNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」という意味で用いる。
【0018】
図1は本発明をディーゼルエンジンへ適用した場合を示している。図1において、2は機関(エンジン)本体、4は吸気通路、6は排気ガス通路をそれぞれ示す。排気ガス通路6には本発明の排気ガス浄化装置10が設けられるが、この部分に設置される排気ガス浄化装置10については後に三つの異なる構成の排気ガス浄化装置20、30、40を挙げて詳細に説明する。
【0019】
電子制御ユニット(ECU)8は、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の形式のディジタルコンピュータからなり、機関本体2と信号をやり取りして燃料噴射量制御等のエンジンの基本制御を行う他、以下で述べるように本発明の各実施形態においては、排気ガス浄化装置の各構成要素とも信号のやり取りを行い、排気ガス浄化装置のNOx吸収剤(以下、単に「吸収剤」と言う)を硫黄被毒再生するための制御(硫黄被毒再生制御)についての制御も行う。
【0020】
図2は、図1に示されている排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する、排気ガス浄化装置20の構成を模式的に示した説明図であり、排気ガス浄化装置20の内部の排気ガスの流れが示されている。
図2に示すように、排気ガス浄化装置20は、排気ガス中の排気微粒子を除去する手段であるパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」と言う)14を備えた基幹通路16と、フィルタ14の上流側において基幹通路16から分岐しフィルタ14の下流側で基幹通路16に合流するバイパス通路18とを備えている。フィルタ14には、後述するように吸収剤12が担持されている。
【0021】
基幹通路16とバイパス通路18とのフィルタ14の下流側の合流部分には、基幹通路16とバイパス通路18のそれぞれを流れる排気ガスの流量を調整するための調整部22が設けられている。調整部22は、調整弁24と、それを駆動する駆動部26とを備えている。調整弁24は駆動部26により、バイパス通路18を流れる排気ガスの流量がゼロとなる第1の位置(図2中、実線で表示)と基幹通路16を流れる排気ガスの流量がゼロとなる第2の位置(図2中、点線で表示)との間で駆動されて開度(位置)が調整され、基幹通路16とバイパス通路18のそれぞれを流れる排気ガスの流量を調整するが、通常時は第1の位置に位置されて、排気ガスの全量が基幹通路16を流れ、フィルタ14を通過するようにされる。
【0022】
また、基幹通路16のフィルタ14の上流側には、後述する吸収剤12の硫黄被毒再生の際等に使用する還元剤を基幹通路16内に添加するための還元剤添加部が設けられている。還元剤添加部は、還元剤噴射ノズル32と還元剤供給ポンプ(図示無し)とを備えている。還元剤供給ポンプから供給された還元剤は、還元剤噴射ノズル32によって基幹通路16内に、ECU8の制御によって制御段階(後述する昇温制御及びリッチ化制御)等に応じて適切なやり方で添加される。なお、排気ガス浄化装置20を含め本明細書で説明する排気ガス浄化装置30、40においては、貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるためディーゼルエンジン2の燃料である軽油を還元剤として使用している。
【0023】
調整部22と還元剤添加部とは、ECU8によって制御される。具体的には、ECU8は、調整部22の駆動部26に接続されており、駆動部26を制御することにより、調整弁24の開度(位置)調整動作を制御する。また、ECU8は、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32に接続されており、還元剤噴射ノズル32を制御することにより、還元剤噴射ノズル32の還元剤添加動作を制御する。
【0024】
更に、本排気ガス浄化装置20においては、吸収剤12が担持されたフィルタ14に吸収剤12の温度を測定する温度センサ34が設けられている。この温度センサ34はECU8に接続されていて、測定結果はECU8に与えられる。なお、本排気ガス浄化装置20においては特に、温度センサ34は、吸収剤12の下流側部分の温度を測定するように設けられている。
【0025】
また、本排気ガス浄化装置20においては、温度センサ34が、吸収剤12が担持されたフィルタ14に直接設けられたが、温度センサを吸収剤12が担持されたフィルタ14の下流に設置し、排気ガスの温度を測定することで吸収剤12の温度(例えば下流側部分の温度)を推定する等、その他の手段によって吸収剤12の温度を求めるようにしてもよい。
【0026】
図3にフィルタ14の拡大断面図を示す。図3を参照すると、フィルタ14は多孔質セラミックから成り、排気ガスは矢印で示されるように図中左から右に向かって流れる。フィルタ14内には、上流側に栓36が施された第1通路38と下流側に栓42が施された第2通路44とが交互に配置されハニカム状をなしている。排気ガスが図中左から右に向かって流れると、排気ガスは第2通路44から多孔質セラミックの隔壁を通過して第1通路38に流入し、下流側に流れる。この時、排気ガス中の排気微粒子(パティキュレート)は多孔質セラミックによって捕集されて排気ガス中から除去され、排気微粒子の大気への放出が防止される。
【0027】
第1通路38及び第2通路44の隔壁の表面及び内部の細孔内には吸収剤12が担持されている。吸収剤12は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。吸収剤12は流通排気ガス(以下「吸収剤流通排気ガス」と言う)の空燃比がリーンの時にはNOxを吸収し、吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸収したNOxを放出して還元浄化する作用(NOxの吸収放出及び還元浄化作用)を有する。
【0028】
図1に示した構成ではディーゼルエンジンが使用されているため、通常時の排気ガス空燃比はリーンであり吸収剤12は排気ガス中のNOxの吸収を行う。また、還元剤添加部からフィルタ14の上流側の排気ガス通路に還元剤が供給されて吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなると共に還元剤が存在する状態になると、吸収剤12は吸収したNOxを放出すると共に放出したNOxを還元浄化する。
【0029】
この吸収放出及び還元浄化作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もあるが、この吸収放出及び還元浄化作用は図4に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0030】
すなわち、吸収剤流通排気ガスの空燃比がかなりリーンになると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が大幅に増大し、図4(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 -またはO2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、吸収剤流通排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 -またはO2-と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ吸収剤12内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、図4(A)に示されるように硝酸イオンNO3 -の形で吸収剤12内に拡散する。このようにしてNOxが吸収剤12内に吸収される。
【0031】
吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2が生成され、吸収剤12のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2が吸収剤12内に吸収されて硝酸イオンNO3 -が生成される。これに対して吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 -→NO2)に進み、斯くして吸収剤12内の硝酸イオンNO3 -がNO2の形で吸収剤から放出される。すなわち、吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収剤12からNOxが放出されることになる。吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いが低くなれば吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下し、したがって吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いを低くすれば吸収剤12からNOxが放出されることになる。
【0032】
一方、この時吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると、HC、COは白金Pt上の酸素O2 -またはO2-と反応して酸化せしめられる。また、吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するために吸収剤12からNO2が放出され、このNO2は図4(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元浄化せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2が存在しなくなると吸収剤12から次から次へとNO2が放出される。したがって吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくし、且つ還元剤が存在する状態にすると短時間のうちに吸収剤12からNOxが放出されて還元浄化されることになる。
【0033】
なお、ここでいう排気ガスの空燃比とは吸収剤12上流側の排気ガス通路6とエンジン燃焼室または吸気通路に供給された空気と燃料との比率をいうものとする。したがって排気ガス通路6に空気や還元剤が供給されていない時には排気ガスの空燃比はエンジンの運転空燃比(エンジン燃焼室内の燃焼空燃比)に等しくなる。また、本発明に使用する還元剤としては、排気ガス中で炭化水素や一酸化炭素等の還元成分を発生するものであれば良く、水素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタン等の液体または気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油等の液体燃料等が使用できるが、上述のように排気ガス浄化装置20を含め本明細書で説明する排気ガス浄化装置30、40においては、貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるためディーゼルエンジン2の燃料である軽油を還元剤として使用している。
【0034】
次に吸収剤12の硫黄被毒のメカニズムについて説明する。排気ガス中にSOx成分が含まれていると、吸収剤12は上述のNOxの吸収と同じメカニズムで排気ガス中のSOxを吸収する。すなわち、排気ガスの空燃比がリーンの時、排気ガス中のSOx(例えばSO2)は白金Pt上で酸化されてSO3 -、SO4 -となり、酸化バリウムBaOと結合してBaSO4を形成する。BaSO4は比較的安定であり、また、結晶が粗大化しやすいため一旦生成されると分解放出されにくい。このため、吸収剤12中のBaSO4の生成量が増大するとNOxの吸収に関与できるBaOの量が減少してしまいNOxの吸収能力が低下してしまう。
【0035】
この硫黄被毒を解消して吸収剤12を硫黄被毒再生するためには、吸収剤12中に生成されたBaSO4を高温で分解するとともに、これにより生成されるSO3 -、SO4 -等の硫酸イオンをスライトリーンを含む略ストイキまたはリッチ雰囲気(以下、単にリッチ雰囲気という)下で還元し、気体状のSO2に転換して吸収剤12から放出させる必要がある。したがって硫黄被毒再生を行うためには、吸収剤12を高温且つリッチ雰囲気の状態にすることが必要とされる。
【0036】
硫黄被毒再生を実施するために吸収剤12を高温且つリッチ雰囲気の状態にする方法としては、上述したように、吸収剤12の上流側において排気ガス通路内に還元剤を添加し、還元剤の反応によって吸収剤12を昇温すると共にリッチ雰囲気を作り出す方法がある。しかしながら、通常の方法で還元剤を添加した場合には、還元剤の反応性が比較的低いことから吸収剤12に大きな温度分布が生じることとなり、吸収剤のある部分については硫黄分が放出される温度、すなわち硫黄分放出温度TSに達するが別の部分では硫黄分放出温度TSに達しないという状況となって、吸収剤12全体として十分な硫黄被毒再生が行えないという問題が生じる。
【0037】
本発明は、上記問題を解決するために、硫黄被毒再生を行うに際して吸収剤12を昇温させる場合において、吸収剤12の各部分間の温度差を減少させ、その全体が硫黄分放出温度TS以上となるようにしようとするものである。
次に、この目的を達成するために排気ガス浄化装置20で実施し得る方法について図5を参照しつつ説明する。図5は吸収剤12の硫黄被毒再生制御の制御ルーチンを示すフローチャートであって、この制御ルーチンは後述する排気ガス浄化装置40(図10〜図13)の制御と共通であり、排気ガス浄化装置30(図8)の制御とも共通する部分を有しているので、これらにおける硫黄被毒再生制御の説明にも用いるものである。図5に示された硫黄被毒再生制御には後述するように昇温制御とリッチ化制御とが含まれる。本ルーチンはECU8により一定時間毎の割込みによって実施される。
【0038】
なお、本明細書では硫黄被毒再生制御についてのみ詳細に説明するが、以下で説明する硫黄被毒再生制御の前または後に、吸収剤12からNOxの放出を行うNOx放出制御が公知の方法で行われてもよい。このことは後述する他の構成の排気ガス浄化装置30、40の場合も同様である。NOx放出制御は例えば、吸収剤12がNOx放出温度以上である場合に、調整弁24を第2の位置に向かって駆動して吸収剤流通排気ガス流量を低減すると共に還元剤を還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32から基幹通路16内に添加して排気ガスの空燃比を小さくすることで行われる。
【0039】
図5を参照すると、まず、ステップ100で吸収剤12の硫黄被毒再生制御(以下、単に「再生制御」と言う)の実施条件が成立したか否かが判定される。再生制御実施条件は、例えば吸収剤12に吸収されたSOx量、すなわち吸収SOx量が一定量以上になること等であるが、この場合、吸収SOx量を直接求めることは困難であるのでエンジンから排出されるSOx量、すなわち車両走行距離に基づいて吸収SOx量を推定する。つまり、前回再生制御を実施した時点からの走行距離が予め定められた設定値よりも大きくなった時に再生制御実施条件が成立したと判定する。
【0040】
ステップ100において再生制御実施条件が成立していないと判定された場合には本制御ルーチンは終了し、再生制御実施条件が成立していると判定された場合にはステップ102に進む。ステップ102では吸収剤12の温度TFが測定され、予め定められた温度である硫黄分放出温度TSと比較される。ここでの温度TFは、温度センサ34により測定された吸収剤12の下流側部分の温度である。還元剤添加等を行っていない通常状態においては、吸収剤12の温度はほぼ均一であるので、吸収剤12全体がこの温度TFであるとすることができる。
【0041】
なお、ここでは吸収剤12の下流側部分の温度を吸収剤12の温度TFとし、その値を基準として制御を行う場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸収剤12の他の部分の温度、もしくは全体を代表する温度を測定または推定し、その温度を吸収剤12の温度TFとしてそれを基準に制御を行うようにしてもよい。
【0042】
また、本排気ガス浄化装置20の構成においては吸収剤12が担持されたフィルタ14に温度センサ34を設けて吸収剤12の温度TFを測定しているが、上述したように温度センサを吸収剤12が担持されたフィルタ14の下流に設置し、排気ガスの温度を測定することで吸収剤12の温度を推定する等、その他の手段によって制御の基準となる吸収剤12の温度TFを求めるようにしてもよい。
【0043】
ステップ102における比較の結果、温度TFが硫黄分放出温度TS以上であると判定された場合には、ステップ110へ進み、リッチ化制御に入る。一方、温度TFが硫黄分放出温度TS未満であると判定された場合には、ステップ104へ進み、昇温制御に入る。
【0044】
ステップ104においては、吸収剤12を昇温すべく、調整弁24が制御されてその開度が調整されると共に還元剤噴射ノズル32によって還元剤の添加が行われる。より詳細には、調整弁24が駆動部26により第2の位置から僅かに第1の位置側にずれた位置である予め定められた位置(以下「微開位置」と言う)に調整され、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が低下せしめられる。すなわち、一部の排気ガスのみが吸収剤12を流通し、それ以外の殆どの排気ガスは吸収剤12をバイパスするようにされる。また、還元剤が還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32によって吸収剤12の上流側において基幹通路16内に添加されるが、この場合の還元剤の添加は吸収剤流通排気ガスの平均空燃比がリーンの状態に保たれるように行われるのが好ましい。このようにすると添加された還元剤が反応(燃焼)するのに十分な酸素が存在することになるので、添加された還元剤を残存させずに確実に反応させ、吸収剤12の昇温のために効率的に利用することができる。
【0045】
このようなステップ104の制御が行われると、添加された還元剤の反応により吸収剤12の温度が上昇する。但し、この場合、調整弁24は上記微開位置に調整されていて吸収剤12を流通する排気ガスの流量は低く抑えられているので、吸収剤12のうち主に上流側部分が温度上昇することになる。これは、添加される還元剤の反応性は比較的低いものの、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が少ないために、添加されてから吸収剤12に到るまでに十分な反応時間があり、殆どの還元剤が吸収剤12のうちの上流側部分において、もしくはそこに到るまでに反応するためである。更に、本構成のように吸収剤12がフィルタ14に担持されている場合には、フィルタ14は熱容量が大きいので、還元剤の反応によって加熱された排気ガスの熱はその上流側部分で吸収されることになり、また上流側部分が加熱されてもそれによって下流側部分の温度が上昇するまでには時間を要することになるため、ステップ104における制御では吸収剤12(及びそれを担持しているフィルタ14)の上流側部分が主に昇温される。
【0046】
続くステップ106においては、予め定めた待ち時間P1が経過したか否かが判定される。この待ち時間P1はステップ104の制御の継続時間を設定するものであって、例えば温度センサ34で測定される吸収剤12の温度TFが予め定めた温度以上となった時に経過したものとしてもよい。または、ステップ104の制御を開始してからの上昇温度が予め定めた上昇温度以上となった時にこの待ち時間P1が経過したものとしてもよい。もしくはこれらの温度の条件または上昇温度の条件の何れかが満たされた時にこの待ち時間P1が経過したものとしてもよい。あるいは、吸収剤12の温度を均一化するために、すなわち吸収剤12の上流側部分と下流側部分との間の温度差を十分に減少させるために後述するステップ108の制御を開始するのに適切なタイミング(すなわちステップ104の制御の必要継続時間)を事前に実験等によって求め、そのタイミングを待ち時間P1として設定してもよい。この場合の待ち時間P1は、常に一定である必要はなく、エンジン運転状態等に応じて変更するようにしてもよい。
【0047】
ステップ106において待ち時間P1が経過していないと判定されるとステップ104に戻り、調整弁24が微開位置に維持されたまま還元剤の添加が継続される。一方、ステップ106において待ち時間P1が経過したと判定されると、ステップ108に進む。
ステップ108においては、再び調整弁24が制御されてその開度が調整されると共に、還元剤噴射ノズル32によって還元剤の添加が行われる。より詳細には、調整弁24は駆動部26により微開位置から第1の位置に調整され、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が増加せしめられる。すなわち、全ての排気ガスが吸収剤12を流通するようにされる。また、還元剤は、ステップ104の制御と同様に、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32によって吸収剤12の上流側において基幹通路16内に添加される。
【0048】
このようなステップ108の制御が行われると、吸収剤12の上流側部分と下流側部分との温度差が減少する。すなわち、ここでは調整弁24が第1の位置に調整されているため、吸収剤12を流通する排気ガスの流量は多くなる。上述したように添加される還元剤は反応性が比較的低いため、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が多い場合には、還元剤が吸収剤12の上流側部分に到るまでに十分な反応時間が無く、下流側部分に到ってから反応が起こることになる。そして、この反応によってステップ104の制御においてはあまり昇温されなかった吸収剤12の下流側部分の温度が上昇する。また、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が多いので、ステップ104の制御によって昇温された吸収剤12の上流側部分の熱が奪われて冷却されると共に、その奪った熱が下流側部分に伝えられ、下流側部分が昇温される。このように添加された還元剤及び吸収剤12を流通する排気ガス等の作用により、ステップ108の制御を実施することで吸収剤12の上流側部分と下流側部分との温度差を減少させることができる。
【0049】
なお、上述の説明ではステップ108において、還元剤を添加することとしたが、ステップ104における吸収剤12の上流側部分の昇温が十分であって、その上流側部分からの伝熱、すなわち上述したような流通する排気ガスを介した伝熱によって吸収剤12の下流側部分において所望の昇温(例えば、硫黄分放出温度TS以上にする等)が実現できるのであれば、ステップ108においては還元剤の添加を行わないようにしてもよい。
また、ステップ108においては、吸収剤12を流通する排気ガスの流量を多くすることによって、ステップ104の制御において吸収剤12(もしくはフィルタ14)の上流側部分に付着等して残留した還元剤が反応することも考えられ、これらにより発生する熱も下流側部分の昇温に利用することができる。
【0050】
ステップ108に続いてステップ109においては、予め定めた待ち時間P2が経過したか否かが判定される。この待ち時間P2はステップ108の制御の継続時間を設定するものであって、ステップ106における待ち時間P1とは異なるものであるが、同様な方法で設定することができる。すなわち、例えば温度センサ34で測定される吸収剤12の温度TFが予め定めた温度(例えば硫黄分放出温度TS)以上となった時、または、ステップ108の制御を開始してからの上昇温度が予め定めた上昇温度以上となった時、もしくはこれらの温度の条件または上昇温度の条件の何れかが満たされた時等にこの待ち時間P2が経過したものとすることができる。あるいは、吸収剤12の温度を均一化するために、すなわち吸収剤12の上流側部分と下流側部分との間の温度差を十分に減少させるために必要なステップ108の制御の継続時間を事前に実験等によって求め、その継続時間を待ち時間P2として設定してもよい。この場合の待ち時間P2は、常に一定である必要はなく、エンジン運転状態等に応じて変更するようにしてもよい。
【0051】
ステップ109において待ち時間P2が経過していないと判定されるとステップ108に戻り、調整弁24が第1の位置に維持されたまま還元剤の添加が継続される。一方、ステップ109において待ち時間P2が経過したと判定されると、ステップ102に戻って、吸収剤12の温度TFと硫黄分放出温度TSとが再度比較される。
【0052】
ステップ102において、再び温度TFが硫黄分放出温度TS未満であると判定された場合には、上述したステップ104からステップ109までの昇温制御が繰り返される。一方、温度TFが硫黄分放出温度TS以上であると判定された場合には、ステップ110へ進み、リッチ化制御に入る。
図6及び図7は、上述した昇温制御における吸収剤12の上流側部分と下流側部分の温度の経時変化を示した例であり、図6がステップ102からステップ109までの制御を一度だけ行って吸収剤12全体が硫黄分放出温度TSに達した場合を示し、図7がステップ102からステップ109までの制御を繰返し行って吸収剤12全体が硫黄分放出温度TSに達した場合を示している。
【0053】
ステップ110においては、吸収剤12をリッチ雰囲気に置くための制御(リッチ化制御)が行われる。このリッチ化制御については、吸収剤12がリッチ雰囲気に置かれる状態さえ作り出せれば、特にその方法に制限はなく、例えば以下のような弁制御による排気ガス流量制御と還元剤添加が行われる。
すなわち、リッチ化制御に入ると、まず調整弁24が駆動部26により第2の位置側へ作動されて吸収剤12を流通する排気ガスの流量が低減される。これは、吸収剤流通排気ガスの空燃比を略ストイキまたはリッチにするために添加される還元剤の量を低減し燃費悪化を低減すると共に、エミッションの悪化を低減するためである。次いで、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32によって吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなるように、すなわち少なくとも還元剤の添加が行われた時には吸収剤流通排気ガスの空燃比が略ストイキまたはリッチになるように還元剤の添加が行われる。これにより、吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなった時には、吸収剤12からSOx(硫黄分)の放出がなされる。
【0054】
このようなリッチ化制御が実施されると、ステップ112に進み再生制御の完了条件が成立したか否かが判定される。再生制御の完了条件は、種々の方法で設定可能であり、例えばリッチ化制御の実施継続時間を基準として判定するようにすることができる。すなわち、ステップ110のリッチ化制御を開始した時点からの経過時間が予め定められた設定値よりも大きくなった時に再生制御完了条件が成立したと判定する。その他、吸収剤12の下流側において放出される硫黄分を測定し、その値が設定値以下となった場合に再生制御完了条件が成立したと判定するようにしてもよい。
【0055】
ステップ112において、再生制御完了条件が成立していると判定された場合には本制御ルーチンは終了し、完了条件が成立していないと判定された場合には、ステップ102に進んで上述したような再生制御が継続される。この時、ステップ102において吸収剤12の温度TFが硫黄分放出温度TS未満であると判定された場合には、ステップ104からの制御が実施され、再度、吸収剤12の昇温が図られる。
【0056】
以上のように、この方法によれば、硫黄被毒再生を行うために吸収剤12を昇温させる際に、調整弁24の開度(位置)調整のみによって吸収剤12の各部分(上流側部分及び下流側部分)間の温度差を減少させ、最終的に吸収剤12全体を同時に硫黄分放出温度TS以上とすることができる。これにより、吸収剤12の全体に渡って十分な硫黄被毒再生が実施可能となる。
【0057】
また、この方法によれば、再生制御の実施中に吸収剤12を流通する排気ガスの流量が一時的に増加されるので、それまでの還元剤の添加等によって吸収剤12に残存していた還元剤を反応させて除去することが可能である。これにより、再生制御が完了して通常状態に戻る時に、吸収剤流通排気ガス流量が増加して残存還元剤が一気に反応し、それによって吸収剤12が過加熱されるのを抑制することができる。また、残存還元剤は吸収剤12の上流側部分に多く存在するので、再生制御の実施中に吸収剤12を流通する排気ガスの流量を一時的に増加させることによって残存還元剤が反応して発生した熱は、特に吸収剤12のうちの下流側部分の昇温に利用される。このため、この方法には、添加還元剤の効率的な利用を図り、吸収剤12全体の温度上昇を早める効果もある。
【0058】
次に別の構成の排気ガス浄化装置30について説明する。図8は、排気ガス浄化装置30の構成を模式的に示した説明図であり、内部の排気ガスの流れが示されている。
この排気ガス浄化装置30は、上述の排気ガス浄化装置20と同様に、図1に示された場合において排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する。図8に示すように、排気ガス浄化装置30は、機関本体2へ通じる上流側の基幹通路46と、分岐した後に合流する二つの分岐通路48、52と、下流側の基幹通路54とを備えている。
【0059】
第1及び第2の分岐通路48、52には、それぞれ、吸収剤12が担持されたフィルタ、すなわち第1及び第2のフィルタ56、58が配置されている。これらの吸収剤12が担持されたフィルタ56、58の構成は、上述の排気ガス浄化装置20において用いられたフィルタ14と同じである。なお、以下の説明においては、第1及び第2のフィルタ56、58の各々に担持されている吸収剤12を区別するために、それぞれ第1及び第2の吸収剤12a、12bと称することとする。
【0060】
各フィルタ56、58の下流側の二つの分岐通路48、52の合流部分には、両分岐通路48、52を流れる排気ガスの流量割合を制御するための調整部62が設けられている。調整部62は、調整弁64と、それを駆動する駆動部66とを備えている。調整弁64は駆動部66により、第1の分岐通路48を流れる排気ガスの流量が微量(例えば、1/9の排気ガス流量)となる第1の位置と第2の分岐通路52を流れる排気ガスの流量が同様に微量となる第2の位置との間で駆動され、各分岐通路48、52を流れる排気ガスの流量を調整するが、通常時は第1の位置と第2の位置との中間位置である図8に図示されたような第3の位置に位置され、第1の分岐通路48を流れる排気ガスの流量と第2の分岐通路52を流れる排気ガスの流量とがほぼ同じになるようにされている。
【0061】
また、各分岐通路48、52の各フィルタ56、58の上流側には、後述する吸収剤の再生制御の際等に使用する還元剤を各分岐通路48、52内に添加するための還元剤添加部が設けられている。還元剤添加部は、二つの還元剤噴射ノズル68、72と一つの還元剤供給ポンプ(図示無し)とを備えている。還元剤供給ポンプから供給された還元剤は、第1の還元剤噴射ノズル68によって第1の分岐通路48内に、また、第2の還元剤噴射ノズル72によって第2の分岐通路52内に、それぞれECU8の制御によって制御段階等に応じて適切なやり方で添加される。なお、還元剤としては上述したように、ディーゼルエンジン2の燃料である軽油を使用している。
【0062】
調整部62と還元剤添加部とは、ECU8によって制御される。具体的には、ECU8は、調整部62の駆動部66に接続されており、駆動部66を制御することにより、調整弁64の開度(位置)調整動作を制御する。また、ECU8は、還元剤添加部の各還元剤噴射ノズル68、72に接続されており、各還元剤噴射ノズル68、72を制御することにより、各還元剤噴射ノズル68、72の還元剤添加動作を制御する。
【0063】
更に、本排気ガス浄化装置30においては、各吸収剤12a、12bが担持された第1及び第2のフィルタ56、58に各フィルタ56、58上の吸収剤12a、12bの温度を測定する第1及び第2の温度センサ74、76が設けられている。これらの温度センサ74、76はECU8に接続されていて、測定結果はECU8に与えられる。
【0064】
また、本排気ガス浄化装置30においても上述した排気ガス浄化装置20の場合と同様に、温度センサ74、76は、各吸収剤12a、12bの下流側部分の温度を測定するように設けられている。なお、本排気ガス浄化装置30においても温度センサ74、76が、吸収剤12a、12bが担持された各フィルタ56、58に直接設けられたが、排気ガス浄化装置20の場合と同様に、温度センサを吸収剤12a、12bが担持された各フィルタ56、58の下流に設置し、排気ガスの温度を測定することで各吸収剤12a、12bの温度を推定する等、その他の手段によって吸収剤12a、12bの温度を求めるようにしてもよい。
【0065】
次に本排気ガス浄化装置30で実施される再生制御について説明する。本排気ガス浄化装置30における吸収剤12a、12bの再生制御の実質的部分の制御ルーチンは、図5に示された排気ガス浄化装置20の場合とほぼ同様である。しかしながら、本排気ガス浄化装置30においては再生制御を必要とする吸収剤が2ヶ所にあるので、両方の吸収剤12a、12bの再生制御を実施するために図5に示された再生制御の制御ルーチンを二回行う必要がある。図9は、本排気ガス浄化装置30の再生制御の全体を示す制御ルーチンである。本ルーチンはECU8により一定時間毎の割込みによって実施される。
【0066】
図9は、第1及び第2の吸収剤12a、12bの再生制御実施条件を同一とし、その再生制御実施条件が成立した時には第1の吸収剤12aと第2の吸収剤12bとについて連続して再生制御を実施する場合を示している。ステップ200は、図5のステップ100と同様であって、まずここで再生制御実施条件が成立したか否かが判定される。
【0067】
続くステップ202及びステップ204において第1または第2の吸収剤12a、12bに対して実施される再生制御の実質的部分については、図5を参照して説明した排気ガス浄化装置20の再生制御のステップ102からステップ112と基本的に同様であり、構成要素の対応関係(還元剤噴射ノズル32と68または72、温度センサ34と74または76等)及び各ステップでの調整弁64の動作等についても図2及び図8、並びに上述の説明から明らかであるので詳細な説明は省略する(概略的に言えば、硫黄被毒再生を行わない側の分岐通路48または52が排気ガス浄化装置20におけるバイパス通路18に対応する)。
【0068】
なお、本排気ガス浄化装置30においては、一方の吸収剤(対象吸収剤)に対して再生制御を実施する際に、その対象吸収剤への流通排気ガス流量を調整すると、対象吸収剤をバイパスした排気ガスは再生制御を実施していない他方の吸収剤を通過することになる。これにより、本排気ガス浄化装置30では再生制御実施中においても排気ガスが吸収剤を通過せずに大気へ放出されることが防止されるという利点がある。
【0069】
以上のように本排気ガス浄化装置30の構成によっても、その吸収剤12a、12bの再生制御において、図5を参照して説明した方法と同様な方法を実施することができ、その結果、吸収剤12a、12bの各部分間の温度差の減少等、排気ガス浄化装置20に関連して説明した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。更に本構成では、上述したように再生制御実施中において排気ガスが吸収剤を全く通過せずに大気へ放出されることが防止される。
【0070】
次に更に別の構成の排気ガス浄化装置40について説明する。図10は、排気ガス浄化装置40の外観を模式的に示した説明図であり、図10(a)及び(b)がそれぞれ上面図及び側面図を示している。また、図11(a)及び(b)には、それぞれ、上方及び側方から見た場合の断面図が示され、排気ガス浄化装置40の内部の排気ガスの流れが示されている。
【0071】
この排気ガス浄化装置40は、上述の他の排気ガス浄化装置20、30と同様に、図1に示された場合において排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する。図10に示すように排気ガス浄化装置40は、基幹通路78と、基幹通路78に接続された環状通路82とを備えている。基幹通路78と環状通路82との接続部分には、経路変更部84が設けられている。経路変更部84は、排気ガスの経路を変更すると共に後述する吸収剤12を流通する排気ガスの流量を調整することができる経路切替調整弁86と、経路切替調整弁86を駆動するための駆動部88とを備えている。経路変更部84は、4つの通路が接続された二組の対向面を有している。一方の組の対向面には、基幹通路78を構成する二つの部分基幹通路78a、78bが接続されており、他方の組の対向面には、環状通路82を構成する二つの部分環状通路82a、82bが接続されている。
【0072】
環状通路82には上述した他の排気ガス浄化装置20、30において用いられたのと同様な吸収剤12が担持されたフィルタ14が配置されている。第1の部分環状通路82aは、フィルタ14(吸収剤12)の第1の面S1側に通じており、第2の部分環状通路82bは、第2の面S2側に通じている。また、下流側の部分基幹通路78bには別の吸収剤92が配置されている。下流側の部分基幹通路78bは、環状通路82のフィルタ14を内蔵している部分を囲むように形成されている。
【0073】
更に、排気ガス浄化装置40は、後述する吸収剤12の再生制御の際等に使用する還元剤を環状通路82内に添加するための還元剤添加部を備えており、本構成では第1の部分環状通路82aに取り付けられている。還元剤添加部は、還元剤噴射ノズル94と還元剤供給ポンプ(図示無し)とを備えており、還元剤供給ポンプから供給された還元剤は、還元剤噴射ノズル94によって第1の部分環状通路82a内に、ECUの制御によって制御段階等に応じて適切なやり方で添加される。なお、還元剤としては、上述した他の排気ガス浄化装置20、30と同様に、ディーゼルエンジン2の燃料である軽油を使用している。
【0074】
経路変更部84と還元剤添加部とはECU8によって制御される。具体的には、ECU8は、経路変更部84の駆動部88に接続されており、駆動部88を制御することにより、経路切替調整弁86の開度(位置)調整動作を制御する。また、ECU8は、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル94に接続されており、還元剤噴射ノズル94を制御することにより、還元剤噴射ノズル94の還元剤添加動作を制御する。
【0075】
更に、本排気ガス浄化装置40においては、吸収剤12が担持されたフィルタ14に吸収剤12の温度を測定する温度センサ96が設けられている。この温度センサ96はECU8に接続されていて、測定結果はECU8に与えられる。また、本排気ガス浄化装置40においても上述した排気ガス浄化装置20、30と同様に、温度センサ96は、吸収剤12の下流側部分の温度を測定するように設けられている。
【0076】
なお、本排気ガス浄化装置40においても、温度センサ96が、吸収剤12が担持されたフィルタ14に直接設けられたが、上述の他の排気ガス浄化装置20、30の場合と同様に、温度センサを後述する再生制御の際に吸収剤12が担持されたフィルタ14の下流側になる部分、すなわち第2の部分環状通路82bに設置し、排気ガスの温度を測定することで吸収剤12の温度を推定する等、その他の手段によって吸収剤12の温度を求めるようにしてもよい。
排気ガス浄化装置40に流入した排気ガスは、以下で説明するように必ず基幹通路78を通り、選択的に環状通路82を通る。
【0077】
図11(a)、(b)は、経路切替調整弁86が第1の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している。この場合、排気ガス浄化装置40に流入した排気ガスは、上流側の部分基幹通路78aを通って経路変更部84に流入し、第1の部分環状通路82aと第2の部分環状通路82bとをこの順序で通って、経路変更部84に戻る。この時、排気ガスは、吸収剤12を担持したフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流れる。経路変更部84に戻った排気ガスは、下流側の部分基幹通路78bに流入し、別の吸収剤92を通過した後に排気ガス浄化装置40から排出される。なお、吸収剤92を通過した排気ガスは、図11(a)、(b)に示すように、部分基幹通路78bの環状通路82のフィルタ14を内蔵している部分を囲むように形成されている部分を通る。
【0078】
図12は、経路切替調整弁86が第2の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)と同様の図である。この場合、排気ガスは、図11(a)の場合とほぼ同様に流れるが、環状通路82を流れる方向が反転している。すなわち、経路変更部84に流入した排気ガスは、第2の部分環状通路82bと第1の部分環状通路82aとをこの順序で通って、経路変更部84に戻る。この時、排気ガスは吸収剤12を担持したフィルタ14を第2の面S2から第1の面S1に向かって流れる。このように、吸収剤12を流通する排気ガスの流れを反転することができるので、通常使用時において排気ガスの流通方向によるNOx吸蔵量等の偏りを解消でき、吸収剤全体を効率良く使用することができる。
【0079】
図13は、経路切替調整弁86が上記第1の位置と第2の位置との中間である第3の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)及び図12と同様の図である。なお、経路切替調整弁86を第1の位置と第2の位置とで切替える際には、経路切替調整弁86は一時的に第3の位置となる。経路切替調整弁86が第3の位置に位置している場合、経路変更部84に流入した排気ガスは、殆どがそのまま下流側の部分基幹通路78bに流入し、吸収剤92を通過した後に、排気ガス浄化装置40から排出される。
【0080】
上記のように、経路切替調整弁86が第1または第2の位置にある場合には、排気ガスは吸収剤12を担持したフィルタ14を通過し、更に吸収剤92を通過する。一方、経路切替調整弁86が第3の位置にある場合には、殆どの排気ガスは、吸収剤12を担持したフィルタ14を通過せずに吸収剤92のみを通過して排気ガス浄化装置40から排出される。したがって、通常の運転中は、排気ガスが吸収剤12を担持したフィルタ14と吸収剤92とを通過して浄化されるように、経路切替調整弁86は第1または第2の位置にある。そして必要に応じてその位置が駆動部88により第1の位置と第2の位置の間で調整される。
【0081】
次に本排気ガス浄化装置40で実施される再生制御について説明するが、本排気ガス浄化装置40における吸収剤12の再生制御は基本的に排気ガス浄化装置20の場合と同様であり、その制御ルーチンは図5のフローチャートで示され、また構成要素(噴射ノズル32と94、温度センサ34と96等)の対応関係等も図面及び上述の説明から明らかであるので詳細な説明については省略する。但し、本排気ガス浄化装置40における再生制御で実施される経路切替調整弁86の開度(位置)調整は、排気ガス浄化装置20の調整弁24の場合とはかなり異なる部分もあるので、以下で説明する。
【0082】
まず、本排気ガス浄化装置40で図5に示された制御ルーチンを実施した場合においてステップ104で行われる経路切替調整弁86の開度(位置)調整についてであるが、ここでは、経路切替調整弁86は、図13に示された第3の位置から僅かに第1の位置側にずれた位置である予め定められた位置(「第4の位置」とする)に調整され、一部の排気ガスのみがフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流通し、それ以外の殆どの排気ガスはフィルタ14をバイパスするようにされる。したがって、仮に再生制御実施条件が成立した時に経路切替弁86が第2の位置にあった場合には、ここでの調整により吸収剤12を担持したフィルタ14を通過する排気ガスの方向は反転されることになる。また、この時、経路切替調整弁86が、第3の位置から第2の位置側ではなく、第1の位置側にずれた位置(上記の第4の位置)に調整されるのは、還元剤の添加位置、すなわち還元剤噴射ノズル94がフィルタ14を流通する排気ガスの流れ方向に関してフィルタ14の上流側に位置するようにするためである。
【0083】
次に、本排気ガス浄化装置40で図5に示された制御ルーチンを実施した場合においてステップ108で行われる経路切替調整弁86の開度(位置)調整について説明する。ここでは、経路切替調整弁86は上述の第4の位置から図11に示された第1の位置に調整され、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が増加せしめられる。すなわち、ステップ108においては、この経路切替調整弁86の調整によって、殆ど全ての排気ガスがフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流通するようにされる。
【0084】
なお、本排気ガス浄化装置40で図5に示された制御ルーチンを実施した場合であって、排気ガス浄化装置20に関連して説明した例と同様な方法でステップ110のリッチ化制御が行われる場合には、このステップ110においても経路切替調整弁86が調整される。この場合、経路切替調整弁86は、第1の位置から第3の位置側へ作動され、フィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流通する排気ガスの流量が低減される。これは、上述したように、吸収剤流通排気ガスの空燃比を略ストイキまたはリッチにするために添加される還元剤の量を低減し燃費悪化を低減すると共に、エミッションの悪化を低減するためである。そしてこの時、経路切替調整弁86は第3の位置まで移動されることは無く、吸収剤12(フィルタ14)を流通する排気ガスの方向(第1の面S1から第2の面S2)は維持される。
【0085】
以上の説明から明らかなように、本排気ガス浄化装置40の構成によっても、その吸収剤12の再生制御において、排気ガス浄化装置20に関連して図5を参照して説明した方法とほぼ同様な方法を実施することができる。そしてその結果、吸収剤12の各部分間の温度差の減少等、排気ガス浄化装置20に関連して説明した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。更に本排気ガス浄化装置40は吸収剤92を具備しているので、再生制御実施中において排気ガスが吸収剤を全く通過せずに大気へ放出されることが防止される。また、本構成によれば、吸収剤12を流通する排気ガスの流れを反転することができるので、通常使用時において排気ガスの流れ方向によるNOx吸蔵量等の偏りを解消でき、吸収剤12全体を効率良く使用することができる。
【0086】
なお、上述の説明では各構成の排気ガス浄化装置20、30、40で実施される再生制御のステップ108での弁24、64、86の制御(すなわち、開度(位置)調整)において、硫黄被毒再生を実施する対象吸収剤12、12a、12bにほぼ全ての排気ガスが流入するように弁24、64、86の開度または位置(以下、単に「弁開度」と言う)を調整することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、対象吸収剤12、12a、12bの各部分間の温度差の減少を図るのに適切な弁開度であれば、対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量がステップ104の時よりも多くなる別の弁開度に調整するようにしてもよい。
【0087】
また、上述の説明では、吸収剤12、12a、12bの温度を測定するために温度センサ34、74、76、96が吸収剤12、12a、12bを担持したフィルタ14、56、58に直接設けられている排気ガス浄化装置20、30、40の構成を示して説明を行い、その他の構成の例として温度センサを吸収剤の下流に設置することについて述べたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではなく、例えば温度センサを設けずに吸収剤12、12a、12bの温度を推定し、上述したような再生制御を実施するようにしてもよい。この場合、昇温開始前の吸収剤12、12a、12bの温度については、例えばエンジンの運転状態に基づいて求めることができる。すなわち、吸収剤12、12a、12bの温度をエンジン負荷Q/N(吸入空気量Q/エンジン回転数N)及びエンジン回転数Nの関数として予め求めてマップにしておき、このマップに基づいてエンジン負荷Q/Nとエンジン回転数Nとから温度を求めることが可能である。この場合には、上記マップを予めECU8のROMに記憶させておく。また、その後の温度については、上記のエンジン運転状態に加えて、再生制御の過程における還元剤添加量や弁開度(吸収剤流通排気ガス流量)等に基づいて推定することができる。
【0088】
あるいは、再生制御の実施条件が成立した時の各エンジン運転状態に応じて、吸収剤12、12a、12bの各部分間の温度差の減少を図り且つその温度を硫黄分放出温度TS以上とすることができる適切な制御パラメータ(すなわち、ステップ104及びステップ108等における弁開度及び還元剤添加量、並びに待ち時間P1及びP2等)を予め求めてプログラムしておき、再生制御の実施条件が成立した時にはその時のエンジン運転状態に応じたプログラムを選択し、それに沿って制御を行うようにしてもよい。
【0089】
更に、上述の説明では、再生制御を昇温制御とリッチ化制御とに分け、リッチ化制御時にのみ硫黄分が放出されるかのように説明したが、当然のことながら、実際には、昇温制御中においても吸収剤12、12a、12bのうちの硫黄分放出温度TS以上となった部分(例えば上流側部分)がその時の還元剤の添加等によってリッチ雰囲気となれば、その部分から硫黄分の放出が行われる。
【0090】
また、上述の説明ではステップ104及びステップ108等において、弁の開度または位置(すなわち、弁開度)を基準として弁24、64、86を制御して硫黄被毒再生が行われたが、対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガスの流量を基準とした制御を行って同様に硫黄被毒再生を行うようにしてもよい。すなわち、この場合には、ステップ104及びステップ108等においては対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が予め定めた流量となるように制御される。
【0091】
より詳細には、例えば上述した各排気ガス浄化装置20、30、40のように弁24、64、86によって対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が制御される場合には、ステップ104においては対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が予め定めた第1の流量となるように、ステップ108においては対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が予め定めた第2の流量へと増加するように、それぞれ弁開度が調整される。
【0092】
このように、流通排気ガス流量を基準とした弁の制御においては、先の説明の弁開度を基準とした弁の制御のように最初に弁の目標開度または目標位置(以下、単に「目標開度」と言う)が設定され、単純に弁開度がその目標開度になるように調整されるのではなく、まず目標流量が設定され、対象吸収剤を流通する排気ガス流量がその目標流量となるように弁開度が調整される。つまり、対象吸収剤を流通する排気ガス流量がその目標流量となるための目標開度が設定され、その目標開度になるように弁開度が調整される。
【0093】
このような弁開度の調整は、例えば以下のようにして実施することができる。すなわち、エンジンから排出される全排気ガス流量は、エンジン負荷Q/Nが高くなればなるほど多くなり、エンジン回転数Nが高くなればなるほど多くなる。そこで、全排気ガス流量をエンジン負荷Q/N及びエンジン回転数Nの関数として予め実験により求めておけば、これに基づいて所定のエンジン運転状態での全排気ガス流量は求めることができる。更に各排気ガス流量の場合において弁開度が各開度の時に対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量は実験または計算により求めることができる。
【0094】
したがって、これらエンジン負荷Q/N及びエンジン回転数Nの関数としての全排気ガス流量と、全排気ガス流量及び弁開度の関数としての対象吸収剤流通排気ガス流量とが求められるので、これらの関係をECU8のROMに記憶させておくことによって、各運転状態に応じて、吸収剤流通排気ガス流量を所望の流量(目標流量)とする目標開度を決定することができ、駆動部26、66、88を制御することによってその目標開度へ弁開度を調整することができる。
【0095】
あるいは、他の方法としては、吸収剤12、12a、12b(フィルタ14)の流入端に流速センサを取り付けることによって排気ガス流速をモニターし、その測定値から流量を推定してフィードバック制御により所望の吸収剤流通排気ガス流量となるように弁開度を調整するようにしてもよい。
【0096】
なお、排気ガス浄化装置40の構成においては、吸収剤12を流通する排気ガスの方向を反転することができることから、ここでの吸収剤流通排気ガス流量は、流れの方向を含めた概念となる。例えばフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流れる排気ガスの流量を正の流量とし、その逆を負の流量とする。
【0097】
また、上述の各排気ガス浄化装置20、30、40を用いた説明においては、吸収剤12、12a、12bの上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段として、還元剤添加ノズル32、74、76、94を用いて吸収剤担持フィルタ14、56、58の上流側で排気ガス通路に還元剤を供給する手段を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上述の各排気ガス浄化装置20、30、40において、還元剤添加ノズル32、74、76、94からの還元剤の添加の代わりに、ポスト噴射(すなわち、主噴射に続いて膨張行程にて噴射される副噴射)による還元剤の添加が行われるようにしてもよい。
この場合、ポスト噴射でのみ還元剤の添加を行う場合には、還元剤添加ノズル32、74、76、94を設ける必要がなくなるという利点がある。
【0098】
なお、ポスト噴射による還元剤の添加が行われる場合には、燃料噴射弁によりシリンダ内に還元剤の添加が行われるため、排気ガス浄化装置内に複数の排気ガスの経路が存在する場合に排気ガス経路毎に個別に還元剤の添加を行うことができない点に留意する必要がある。例えば、図8に示された排気ガス浄化装置30においてポスト噴射による還元剤の添加が行われる場合には、各吸収剤12a、12bに対する個別的な還元剤の添加を行うことはできず、また、排気ガス浄化装置20や排気ガス浄化装置40においてポスト噴射による還元剤の添加が行われる場合には、還元剤の添加された排気ガスが吸収剤12の存在しない排気ガス経路にも流れる場合があるので還元剤の無駄が生じると共に大気中に放出される還元剤が増加する可能性がある。
【0099】
また、上述の各排気ガス浄化装置20、30、40を用いた説明においては、昇温制御からリッチ化制御に移行する条件を吸収剤の温度TFが硫黄分放出温度TS以上となることとしているが、この条件を吸収剤の温度TFが硫黄分放出温度TSとは異なる所定の温度以上となることとしてもよい。例えば、リッチ化制御への移行後の温度低下を考慮して、上記条件となる温度(すなわち昇温制御における目標温度)を硫黄分放出温度TSよりも高く設定してもよい。
【0100】
更に、上述の各排気ガス浄化装置20、30、40の構成においては、吸収剤12、12a、12bをフィルタ14、56、58内の排気ガス通路壁面に担持させているが、吸収剤とフィルタとは別個に独立させてもよい。
また、上述の説明は本発明をディーゼルエンジンに適用した場合についてのものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の内燃機関についても適用可能である。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤全体を同時に硫黄分放出温度以上とすることができるので、対象NOx吸蔵剤の全体に渡って十分な硫黄被毒再生が実施可能となる。また、添加された還元剤を硫黄被毒再生制御中の対象NOx吸蔵剤の昇温に効率的に利用することができると共に、硫黄被毒再生制御完了後の残存還元剤に起因するNOx吸蔵剤の過加熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の排気ガス浄化装置をディーゼルエンジンに適用した場合を示す図である。
【図2】図2は、本発明の排気ガス浄化装置を示した説明図である。
【図3】図3は、NOx吸収剤が担持されたパティキュレートフィルタの拡大断面図である。
【図4】図4は、NOxの吸収放出及び還元浄化作用を説明するための図である。
【図5】図5は、図2に示した排気ガス浄化装置及び図10から図13に示した排気ガス浄化装置におけるNOx吸収剤の硫黄被毒再生制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図6は、図5に示した制御ルーチンにしたがってNOx吸収剤を昇温した場合におけるNOx吸収剤の上流側部分と下流側部分の温度の経時変化を示した例であり、図5のステップ102からステップ109までの制御を一度だけ行ってNOx吸収剤全体が硫黄分放出温度に達した場合を示している。
【図7】図7は、図5に示した制御ルーチンにしたがってNOx吸収剤を昇温した場合におけるNOx吸収剤の上流側部分と下流側部分の温度の経時変化を示した例であり、図5のステップ102からステップ109までの制御を繰返し行ってNOx吸収剤全体が硫黄分放出温度に達した場合を示している。
【図8】図8は、本発明の別の排気ガス浄化装置を示した説明図である。
【図9】図9は、図8に示した排気ガス浄化装置におけるNOx吸収剤の硫黄被毒再生制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の更に別の排気ガス浄化装置の外観を模式的に示した説明図であり、図10(a)及び図10(b)がそれぞれ上面図及び側面図を示している。
【図11】図11は、図10に示した排気ガス浄化装置の断面を示した説明図であって、図11(a)及び図11(b)がそれぞれ上方及び側方から見た場合の断面図を示しており、経路切替調整弁が第1の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している。
【図12】図12は、経路切替調整弁が第2の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)と同様の図である。
【図13】図13は、経路切替調整弁が第3の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)と同様の図である。
【符号の説明】
2…機関(エンジン)本体
6…排気ガス通路
8…電子制御ユニット(ECU)
10、20、30、40…排気ガス浄化装置
12、12a、12b…NOx吸収剤
14、56、58…パティキュレートフィルタ
24、64…調整弁
32、68、72、94…還元剤噴射ノズル
34、74、76、96…温度センサ
86…経路切替調整弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガスを浄化する技術に関し、特に、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去する手段を有する排気ガス浄化装置及び排気ガス中の窒素酸化物を除去する手段を用いた排気ガス浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等に搭載される筒内噴射型の内燃機関、例えばディーゼル機関では、排気ガス中に含まれる煤等の排気微粒子を除去すると共に窒素酸化物(NOx)を除去することが要求されており、このような要求に対し、NOx吸蔵剤が担持されたパティキュレートフィルタを内燃機関の排気ガス通路に配置する方法が提案されている。
【0003】
このように用いられるNOx吸蔵剤は、排気ガスの空燃比がリーンの時にはNOxを吸蔵し、排気ガス中の空燃比が小さくなり、且つ排気ガス中にHCやCO等の還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化する作用(NOxの吸収放出及び還元作用またはNOxの吸着及び還元作用)を有する。この作用を利用して、排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス中のNOxをNOx吸蔵剤に吸蔵させ、一定期間使用してNOx吸蔵剤の吸蔵効率が低下した時または低下する前にNOx吸蔵剤に還元剤(燃料)を供給する等して、NOx吸蔵剤に吸蔵したNOxの還元浄化を行うようにしている。
【0004】
なお、本明細書において「吸蔵」という語は「吸収」及び「吸着」の両方の意味を含むものとして用いる。したがって、「NOx吸蔵剤」は、「NOx吸収剤」と「NOx吸着剤」の両方を含み、前者はNOxを硝酸塩等の形で蓄積し、後者はNO2等の形で吸着する。また、硫黄分等に関するNOx吸蔵剤からの「放出」という語についても、「吸収」に対応する「放出」の他、「吸着」に対応する「脱離」の意味も含むものとして用いる。
ところで、内燃機関の燃料には硫黄(S)成分が含まれている場合があり、この場合には排気ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれることとなる。排気ガス中にSOxが存在するとNOx吸蔵剤はNOxの吸蔵作用を行うのと全く同じメカニズムで排気ガス中のSOxの吸蔵を行う。
【0005】
ところが、NOx吸蔵剤に吸蔵されたSOxは比較的安定であり、一般にNOx吸蔵剤に蓄積されやすい傾向がある。NOx吸蔵剤のSOx蓄積量が増大すると、NOx吸蔵剤のNOx吸蔵容量が減少して排気ガス中のNOxの除去を十分に行うことができなくなるため、NOxの浄化効率が低下するいわゆる硫黄被毒(S被毒)の問題が生じる。特に、燃料として比較的硫黄成分を多く含む軽油を使用するディーゼルエンジンにおいてはこの硫黄被毒の問題が生じやすい。
【0006】
一方、NOx吸蔵剤に吸蔵されたSOxについても、NOxと同じメカニズムで放出または脱離等(以下、単に「放出」という)が可能であることが知られている。しかし、SOxは比較的安定した形でNOx吸蔵剤に吸蔵されるため、通常のNOxの還元浄化が行われる温度(例えば250℃程度以上)ではNOx吸蔵剤に吸蔵されたSOxを放出等させることは困難である。このため、硫黄被毒を解消するためには、NOx吸蔵剤を通常のNOxの還元浄化時より高い温度、すなわち硫黄分放出温度(例えば600℃以上)に昇温すると共に流通する排気ガスの空燃比を略ストイキまたはリッチ(以下、単にリッチという)にして硫黄分の放出を行わせる硫黄被毒再生制御を定期的に行う必要がある。
【0007】
このような硫黄被毒再生制御としては、NOx吸蔵剤の上流において排気ガス通路内へ還元剤(軽油)を添加し、NOx吸蔵剤を昇温すると共にNOx吸蔵剤において略ストイキまたはリッチ雰囲気を作り出す方法が公知である。しかしながら、この方法では排気ガス通路内に添加される還元剤(軽油)の反応性が比較的低いことから、一般にNOx吸蔵剤に大きな温度分布が生じることとなる。
【0008】
すなわち、還元剤は添加後徐々に反応するため、例えば排気ガス流量が比較的多い場合には、NOx吸蔵剤の上流側部分よりも下流側部分で温度が上昇する傾向がある。
そしてこのようにNOx吸蔵剤に温度分布が生じると、ある部分については硫黄分放出温度に達するが別の部分では硫黄分放出温度に達しないという状況が生じ、NOx吸蔵剤全体として十分な硫黄被毒再生が行えないという問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、硫黄被毒再生を行うに際してNOx吸蔵剤を昇温させる場合において、NOx吸蔵剤の各部分間の温度差を減少させ、NOx吸蔵剤全体が硫黄分放出温度以上となるようにし得る排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された排気ガス浄化装置または排気ガス浄化方法を提供する。
【0011】
1番目の発明は、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置した排気ガス浄化装置において、上記NOx吸蔵剤の上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段と、上記NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御する流量制御手段とを備えていて、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を予め定めた流量として還元剤の添加を行い、その後上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で予め定めた別の流量まで増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化装置を提供する。
【0012】
1番目の発明によれば、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるために還元剤の添加によってNOx吸蔵剤の温度を上昇させる場合において、単純な流量制御のみによって硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の上流側部分と下流側部分との間に生じる温度差を減少させることができ、最終的に対象NOx吸蔵剤全体を同時に硫黄分放出温度以上とすることができる。これにより、対象NOx吸蔵剤の全体に渡って十分な硫黄被毒再生が実施可能となる。また、対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を増加した際には、対象NOx吸蔵剤の上流側部分に多く存在している可能性のある残存還元剤が反応(燃焼)し且つ除去されるため、添加された還元剤を硫黄被毒再生制御中の対象NOx吸蔵剤の昇温に効率的に利用することができると共に、硫黄被毒再生制御完了後の残存還元剤に起因するNOx吸蔵剤の過加熱を抑制することができる。
【0013】
2番目の発明は、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置した排気ガス浄化装置において、上記NOx吸蔵剤の上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段と、上記NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御する開度調整可能なバルブとを備えていて、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記バルブの開度を予め定めた開度に調整することによって上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御して還元剤の添加を行い、その後上記バルブの開度を予め定めた別の開度に調整することにより上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化装置を提供する。
【0014】
2番目の発明によれば、簡単なバルブ開度の調整のみによって1番目の発明とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。
3番目の発明では1番目または2番目の発明において、NOx吸蔵剤が、排気ガス中の排気微粒子を除去する手段に担持されて上記排気ガス通路に配置されている。
これによって、NOxと同時に排気ガス中の排気微粒子をも除去することができる。
【0015】
4番目の発明は、流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置して行う排気ガス浄化方法において、NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を予め定めた流量として還元剤の添加を行い、その後上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で予め定めた別の流量まで増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化方法を提供する。
この発明によっても1番目の発明とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明はNOx吸蔵剤であるNOx吸収剤とNOx吸着剤のどちらを用いても実施可能であるが、以下ではNOx吸収剤を用いた場合について説明する。
【0017】
また、本明細書においては便宜上、「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の上流側部分」及び「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の下流側部分」等の表現を、排気ガス通路内に一ヶ所にまとめて配置されたNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)のうちの「上流側にあるNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」及び「下流側にあるNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」という意味で用いる。より具体的には、例えばNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)がパティキュレートフィルタのような担持体に担持されている場合には、「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の上流側部分」及び「NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)の下流側部分」等の表現はそれぞれ、NOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)のうちの「担持体の上流側部分に担持されているNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」及び「担持体の下流側部分に担持されているNOx吸収剤(またはNOx吸蔵剤)」という意味で用いる。
【0018】
図1は本発明をディーゼルエンジンへ適用した場合を示している。図1において、2は機関(エンジン)本体、4は吸気通路、6は排気ガス通路をそれぞれ示す。排気ガス通路6には本発明の排気ガス浄化装置10が設けられるが、この部分に設置される排気ガス浄化装置10については後に三つの異なる構成の排気ガス浄化装置20、30、40を挙げて詳細に説明する。
【0019】
電子制御ユニット(ECU)8は、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の形式のディジタルコンピュータからなり、機関本体2と信号をやり取りして燃料噴射量制御等のエンジンの基本制御を行う他、以下で述べるように本発明の各実施形態においては、排気ガス浄化装置の各構成要素とも信号のやり取りを行い、排気ガス浄化装置のNOx吸収剤(以下、単に「吸収剤」と言う)を硫黄被毒再生するための制御(硫黄被毒再生制御)についての制御も行う。
【0020】
図2は、図1に示されている排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する、排気ガス浄化装置20の構成を模式的に示した説明図であり、排気ガス浄化装置20の内部の排気ガスの流れが示されている。
図2に示すように、排気ガス浄化装置20は、排気ガス中の排気微粒子を除去する手段であるパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」と言う)14を備えた基幹通路16と、フィルタ14の上流側において基幹通路16から分岐しフィルタ14の下流側で基幹通路16に合流するバイパス通路18とを備えている。フィルタ14には、後述するように吸収剤12が担持されている。
【0021】
基幹通路16とバイパス通路18とのフィルタ14の下流側の合流部分には、基幹通路16とバイパス通路18のそれぞれを流れる排気ガスの流量を調整するための調整部22が設けられている。調整部22は、調整弁24と、それを駆動する駆動部26とを備えている。調整弁24は駆動部26により、バイパス通路18を流れる排気ガスの流量がゼロとなる第1の位置(図2中、実線で表示)と基幹通路16を流れる排気ガスの流量がゼロとなる第2の位置(図2中、点線で表示)との間で駆動されて開度(位置)が調整され、基幹通路16とバイパス通路18のそれぞれを流れる排気ガスの流量を調整するが、通常時は第1の位置に位置されて、排気ガスの全量が基幹通路16を流れ、フィルタ14を通過するようにされる。
【0022】
また、基幹通路16のフィルタ14の上流側には、後述する吸収剤12の硫黄被毒再生の際等に使用する還元剤を基幹通路16内に添加するための還元剤添加部が設けられている。還元剤添加部は、還元剤噴射ノズル32と還元剤供給ポンプ(図示無し)とを備えている。還元剤供給ポンプから供給された還元剤は、還元剤噴射ノズル32によって基幹通路16内に、ECU8の制御によって制御段階(後述する昇温制御及びリッチ化制御)等に応じて適切なやり方で添加される。なお、排気ガス浄化装置20を含め本明細書で説明する排気ガス浄化装置30、40においては、貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるためディーゼルエンジン2の燃料である軽油を還元剤として使用している。
【0023】
調整部22と還元剤添加部とは、ECU8によって制御される。具体的には、ECU8は、調整部22の駆動部26に接続されており、駆動部26を制御することにより、調整弁24の開度(位置)調整動作を制御する。また、ECU8は、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32に接続されており、還元剤噴射ノズル32を制御することにより、還元剤噴射ノズル32の還元剤添加動作を制御する。
【0024】
更に、本排気ガス浄化装置20においては、吸収剤12が担持されたフィルタ14に吸収剤12の温度を測定する温度センサ34が設けられている。この温度センサ34はECU8に接続されていて、測定結果はECU8に与えられる。なお、本排気ガス浄化装置20においては特に、温度センサ34は、吸収剤12の下流側部分の温度を測定するように設けられている。
【0025】
また、本排気ガス浄化装置20においては、温度センサ34が、吸収剤12が担持されたフィルタ14に直接設けられたが、温度センサを吸収剤12が担持されたフィルタ14の下流に設置し、排気ガスの温度を測定することで吸収剤12の温度(例えば下流側部分の温度)を推定する等、その他の手段によって吸収剤12の温度を求めるようにしてもよい。
【0026】
図3にフィルタ14の拡大断面図を示す。図3を参照すると、フィルタ14は多孔質セラミックから成り、排気ガスは矢印で示されるように図中左から右に向かって流れる。フィルタ14内には、上流側に栓36が施された第1通路38と下流側に栓42が施された第2通路44とが交互に配置されハニカム状をなしている。排気ガスが図中左から右に向かって流れると、排気ガスは第2通路44から多孔質セラミックの隔壁を通過して第1通路38に流入し、下流側に流れる。この時、排気ガス中の排気微粒子(パティキュレート)は多孔質セラミックによって捕集されて排気ガス中から除去され、排気微粒子の大気への放出が防止される。
【0027】
第1通路38及び第2通路44の隔壁の表面及び内部の細孔内には吸収剤12が担持されている。吸収剤12は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。吸収剤12は流通排気ガス(以下「吸収剤流通排気ガス」と言う)の空燃比がリーンの時にはNOxを吸収し、吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸収したNOxを放出して還元浄化する作用(NOxの吸収放出及び還元浄化作用)を有する。
【0028】
図1に示した構成ではディーゼルエンジンが使用されているため、通常時の排気ガス空燃比はリーンであり吸収剤12は排気ガス中のNOxの吸収を行う。また、還元剤添加部からフィルタ14の上流側の排気ガス通路に還元剤が供給されて吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなると共に還元剤が存在する状態になると、吸収剤12は吸収したNOxを放出すると共に放出したNOxを還元浄化する。
【0029】
この吸収放出及び還元浄化作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もあるが、この吸収放出及び還元浄化作用は図4に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0030】
すなわち、吸収剤流通排気ガスの空燃比がかなりリーンになると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が大幅に増大し、図4(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 -またはO2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、吸収剤流通排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 -またはO2-と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ吸収剤12内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、図4(A)に示されるように硝酸イオンNO3 -の形で吸収剤12内に拡散する。このようにしてNOxが吸収剤12内に吸収される。
【0031】
吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2が生成され、吸収剤12のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2が吸収剤12内に吸収されて硝酸イオンNO3 -が生成される。これに対して吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 -→NO2)に進み、斯くして吸収剤12内の硝酸イオンNO3 -がNO2の形で吸収剤から放出される。すなわち、吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収剤12からNOxが放出されることになる。吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いが低くなれば吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下し、したがって吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いを低くすれば吸収剤12からNOxが放出されることになる。
【0032】
一方、この時吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると、HC、COは白金Pt上の酸素O2 -またはO2-と反応して酸化せしめられる。また、吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するために吸収剤12からNO2が放出され、このNO2は図4(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元浄化せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2が存在しなくなると吸収剤12から次から次へとNO2が放出される。したがって吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくし、且つ還元剤が存在する状態にすると短時間のうちに吸収剤12からNOxが放出されて還元浄化されることになる。
【0033】
なお、ここでいう排気ガスの空燃比とは吸収剤12上流側の排気ガス通路6とエンジン燃焼室または吸気通路に供給された空気と燃料との比率をいうものとする。したがって排気ガス通路6に空気や還元剤が供給されていない時には排気ガスの空燃比はエンジンの運転空燃比(エンジン燃焼室内の燃焼空燃比)に等しくなる。また、本発明に使用する還元剤としては、排気ガス中で炭化水素や一酸化炭素等の還元成分を発生するものであれば良く、水素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタン等の液体または気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油等の液体燃料等が使用できるが、上述のように排気ガス浄化装置20を含め本明細書で説明する排気ガス浄化装置30、40においては、貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるためディーゼルエンジン2の燃料である軽油を還元剤として使用している。
【0034】
次に吸収剤12の硫黄被毒のメカニズムについて説明する。排気ガス中にSOx成分が含まれていると、吸収剤12は上述のNOxの吸収と同じメカニズムで排気ガス中のSOxを吸収する。すなわち、排気ガスの空燃比がリーンの時、排気ガス中のSOx(例えばSO2)は白金Pt上で酸化されてSO3 -、SO4 -となり、酸化バリウムBaOと結合してBaSO4を形成する。BaSO4は比較的安定であり、また、結晶が粗大化しやすいため一旦生成されると分解放出されにくい。このため、吸収剤12中のBaSO4の生成量が増大するとNOxの吸収に関与できるBaOの量が減少してしまいNOxの吸収能力が低下してしまう。
【0035】
この硫黄被毒を解消して吸収剤12を硫黄被毒再生するためには、吸収剤12中に生成されたBaSO4を高温で分解するとともに、これにより生成されるSO3 -、SO4 -等の硫酸イオンをスライトリーンを含む略ストイキまたはリッチ雰囲気(以下、単にリッチ雰囲気という)下で還元し、気体状のSO2に転換して吸収剤12から放出させる必要がある。したがって硫黄被毒再生を行うためには、吸収剤12を高温且つリッチ雰囲気の状態にすることが必要とされる。
【0036】
硫黄被毒再生を実施するために吸収剤12を高温且つリッチ雰囲気の状態にする方法としては、上述したように、吸収剤12の上流側において排気ガス通路内に還元剤を添加し、還元剤の反応によって吸収剤12を昇温すると共にリッチ雰囲気を作り出す方法がある。しかしながら、通常の方法で還元剤を添加した場合には、還元剤の反応性が比較的低いことから吸収剤12に大きな温度分布が生じることとなり、吸収剤のある部分については硫黄分が放出される温度、すなわち硫黄分放出温度TSに達するが別の部分では硫黄分放出温度TSに達しないという状況となって、吸収剤12全体として十分な硫黄被毒再生が行えないという問題が生じる。
【0037】
本発明は、上記問題を解決するために、硫黄被毒再生を行うに際して吸収剤12を昇温させる場合において、吸収剤12の各部分間の温度差を減少させ、その全体が硫黄分放出温度TS以上となるようにしようとするものである。
次に、この目的を達成するために排気ガス浄化装置20で実施し得る方法について図5を参照しつつ説明する。図5は吸収剤12の硫黄被毒再生制御の制御ルーチンを示すフローチャートであって、この制御ルーチンは後述する排気ガス浄化装置40(図10〜図13)の制御と共通であり、排気ガス浄化装置30(図8)の制御とも共通する部分を有しているので、これらにおける硫黄被毒再生制御の説明にも用いるものである。図5に示された硫黄被毒再生制御には後述するように昇温制御とリッチ化制御とが含まれる。本ルーチンはECU8により一定時間毎の割込みによって実施される。
【0038】
なお、本明細書では硫黄被毒再生制御についてのみ詳細に説明するが、以下で説明する硫黄被毒再生制御の前または後に、吸収剤12からNOxの放出を行うNOx放出制御が公知の方法で行われてもよい。このことは後述する他の構成の排気ガス浄化装置30、40の場合も同様である。NOx放出制御は例えば、吸収剤12がNOx放出温度以上である場合に、調整弁24を第2の位置に向かって駆動して吸収剤流通排気ガス流量を低減すると共に還元剤を還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32から基幹通路16内に添加して排気ガスの空燃比を小さくすることで行われる。
【0039】
図5を参照すると、まず、ステップ100で吸収剤12の硫黄被毒再生制御(以下、単に「再生制御」と言う)の実施条件が成立したか否かが判定される。再生制御実施条件は、例えば吸収剤12に吸収されたSOx量、すなわち吸収SOx量が一定量以上になること等であるが、この場合、吸収SOx量を直接求めることは困難であるのでエンジンから排出されるSOx量、すなわち車両走行距離に基づいて吸収SOx量を推定する。つまり、前回再生制御を実施した時点からの走行距離が予め定められた設定値よりも大きくなった時に再生制御実施条件が成立したと判定する。
【0040】
ステップ100において再生制御実施条件が成立していないと判定された場合には本制御ルーチンは終了し、再生制御実施条件が成立していると判定された場合にはステップ102に進む。ステップ102では吸収剤12の温度TFが測定され、予め定められた温度である硫黄分放出温度TSと比較される。ここでの温度TFは、温度センサ34により測定された吸収剤12の下流側部分の温度である。還元剤添加等を行っていない通常状態においては、吸収剤12の温度はほぼ均一であるので、吸収剤12全体がこの温度TFであるとすることができる。
【0041】
なお、ここでは吸収剤12の下流側部分の温度を吸収剤12の温度TFとし、その値を基準として制御を行う場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸収剤12の他の部分の温度、もしくは全体を代表する温度を測定または推定し、その温度を吸収剤12の温度TFとしてそれを基準に制御を行うようにしてもよい。
【0042】
また、本排気ガス浄化装置20の構成においては吸収剤12が担持されたフィルタ14に温度センサ34を設けて吸収剤12の温度TFを測定しているが、上述したように温度センサを吸収剤12が担持されたフィルタ14の下流に設置し、排気ガスの温度を測定することで吸収剤12の温度を推定する等、その他の手段によって制御の基準となる吸収剤12の温度TFを求めるようにしてもよい。
【0043】
ステップ102における比較の結果、温度TFが硫黄分放出温度TS以上であると判定された場合には、ステップ110へ進み、リッチ化制御に入る。一方、温度TFが硫黄分放出温度TS未満であると判定された場合には、ステップ104へ進み、昇温制御に入る。
【0044】
ステップ104においては、吸収剤12を昇温すべく、調整弁24が制御されてその開度が調整されると共に還元剤噴射ノズル32によって還元剤の添加が行われる。より詳細には、調整弁24が駆動部26により第2の位置から僅かに第1の位置側にずれた位置である予め定められた位置(以下「微開位置」と言う)に調整され、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が低下せしめられる。すなわち、一部の排気ガスのみが吸収剤12を流通し、それ以外の殆どの排気ガスは吸収剤12をバイパスするようにされる。また、還元剤が還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32によって吸収剤12の上流側において基幹通路16内に添加されるが、この場合の還元剤の添加は吸収剤流通排気ガスの平均空燃比がリーンの状態に保たれるように行われるのが好ましい。このようにすると添加された還元剤が反応(燃焼)するのに十分な酸素が存在することになるので、添加された還元剤を残存させずに確実に反応させ、吸収剤12の昇温のために効率的に利用することができる。
【0045】
このようなステップ104の制御が行われると、添加された還元剤の反応により吸収剤12の温度が上昇する。但し、この場合、調整弁24は上記微開位置に調整されていて吸収剤12を流通する排気ガスの流量は低く抑えられているので、吸収剤12のうち主に上流側部分が温度上昇することになる。これは、添加される還元剤の反応性は比較的低いものの、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が少ないために、添加されてから吸収剤12に到るまでに十分な反応時間があり、殆どの還元剤が吸収剤12のうちの上流側部分において、もしくはそこに到るまでに反応するためである。更に、本構成のように吸収剤12がフィルタ14に担持されている場合には、フィルタ14は熱容量が大きいので、還元剤の反応によって加熱された排気ガスの熱はその上流側部分で吸収されることになり、また上流側部分が加熱されてもそれによって下流側部分の温度が上昇するまでには時間を要することになるため、ステップ104における制御では吸収剤12(及びそれを担持しているフィルタ14)の上流側部分が主に昇温される。
【0046】
続くステップ106においては、予め定めた待ち時間P1が経過したか否かが判定される。この待ち時間P1はステップ104の制御の継続時間を設定するものであって、例えば温度センサ34で測定される吸収剤12の温度TFが予め定めた温度以上となった時に経過したものとしてもよい。または、ステップ104の制御を開始してからの上昇温度が予め定めた上昇温度以上となった時にこの待ち時間P1が経過したものとしてもよい。もしくはこれらの温度の条件または上昇温度の条件の何れかが満たされた時にこの待ち時間P1が経過したものとしてもよい。あるいは、吸収剤12の温度を均一化するために、すなわち吸収剤12の上流側部分と下流側部分との間の温度差を十分に減少させるために後述するステップ108の制御を開始するのに適切なタイミング(すなわちステップ104の制御の必要継続時間)を事前に実験等によって求め、そのタイミングを待ち時間P1として設定してもよい。この場合の待ち時間P1は、常に一定である必要はなく、エンジン運転状態等に応じて変更するようにしてもよい。
【0047】
ステップ106において待ち時間P1が経過していないと判定されるとステップ104に戻り、調整弁24が微開位置に維持されたまま還元剤の添加が継続される。一方、ステップ106において待ち時間P1が経過したと判定されると、ステップ108に進む。
ステップ108においては、再び調整弁24が制御されてその開度が調整されると共に、還元剤噴射ノズル32によって還元剤の添加が行われる。より詳細には、調整弁24は駆動部26により微開位置から第1の位置に調整され、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が増加せしめられる。すなわち、全ての排気ガスが吸収剤12を流通するようにされる。また、還元剤は、ステップ104の制御と同様に、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32によって吸収剤12の上流側において基幹通路16内に添加される。
【0048】
このようなステップ108の制御が行われると、吸収剤12の上流側部分と下流側部分との温度差が減少する。すなわち、ここでは調整弁24が第1の位置に調整されているため、吸収剤12を流通する排気ガスの流量は多くなる。上述したように添加される還元剤は反応性が比較的低いため、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が多い場合には、還元剤が吸収剤12の上流側部分に到るまでに十分な反応時間が無く、下流側部分に到ってから反応が起こることになる。そして、この反応によってステップ104の制御においてはあまり昇温されなかった吸収剤12の下流側部分の温度が上昇する。また、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が多いので、ステップ104の制御によって昇温された吸収剤12の上流側部分の熱が奪われて冷却されると共に、その奪った熱が下流側部分に伝えられ、下流側部分が昇温される。このように添加された還元剤及び吸収剤12を流通する排気ガス等の作用により、ステップ108の制御を実施することで吸収剤12の上流側部分と下流側部分との温度差を減少させることができる。
【0049】
なお、上述の説明ではステップ108において、還元剤を添加することとしたが、ステップ104における吸収剤12の上流側部分の昇温が十分であって、その上流側部分からの伝熱、すなわち上述したような流通する排気ガスを介した伝熱によって吸収剤12の下流側部分において所望の昇温(例えば、硫黄分放出温度TS以上にする等)が実現できるのであれば、ステップ108においては還元剤の添加を行わないようにしてもよい。
また、ステップ108においては、吸収剤12を流通する排気ガスの流量を多くすることによって、ステップ104の制御において吸収剤12(もしくはフィルタ14)の上流側部分に付着等して残留した還元剤が反応することも考えられ、これらにより発生する熱も下流側部分の昇温に利用することができる。
【0050】
ステップ108に続いてステップ109においては、予め定めた待ち時間P2が経過したか否かが判定される。この待ち時間P2はステップ108の制御の継続時間を設定するものであって、ステップ106における待ち時間P1とは異なるものであるが、同様な方法で設定することができる。すなわち、例えば温度センサ34で測定される吸収剤12の温度TFが予め定めた温度(例えば硫黄分放出温度TS)以上となった時、または、ステップ108の制御を開始してからの上昇温度が予め定めた上昇温度以上となった時、もしくはこれらの温度の条件または上昇温度の条件の何れかが満たされた時等にこの待ち時間P2が経過したものとすることができる。あるいは、吸収剤12の温度を均一化するために、すなわち吸収剤12の上流側部分と下流側部分との間の温度差を十分に減少させるために必要なステップ108の制御の継続時間を事前に実験等によって求め、その継続時間を待ち時間P2として設定してもよい。この場合の待ち時間P2は、常に一定である必要はなく、エンジン運転状態等に応じて変更するようにしてもよい。
【0051】
ステップ109において待ち時間P2が経過していないと判定されるとステップ108に戻り、調整弁24が第1の位置に維持されたまま還元剤の添加が継続される。一方、ステップ109において待ち時間P2が経過したと判定されると、ステップ102に戻って、吸収剤12の温度TFと硫黄分放出温度TSとが再度比較される。
【0052】
ステップ102において、再び温度TFが硫黄分放出温度TS未満であると判定された場合には、上述したステップ104からステップ109までの昇温制御が繰り返される。一方、温度TFが硫黄分放出温度TS以上であると判定された場合には、ステップ110へ進み、リッチ化制御に入る。
図6及び図7は、上述した昇温制御における吸収剤12の上流側部分と下流側部分の温度の経時変化を示した例であり、図6がステップ102からステップ109までの制御を一度だけ行って吸収剤12全体が硫黄分放出温度TSに達した場合を示し、図7がステップ102からステップ109までの制御を繰返し行って吸収剤12全体が硫黄分放出温度TSに達した場合を示している。
【0053】
ステップ110においては、吸収剤12をリッチ雰囲気に置くための制御(リッチ化制御)が行われる。このリッチ化制御については、吸収剤12がリッチ雰囲気に置かれる状態さえ作り出せれば、特にその方法に制限はなく、例えば以下のような弁制御による排気ガス流量制御と還元剤添加が行われる。
すなわち、リッチ化制御に入ると、まず調整弁24が駆動部26により第2の位置側へ作動されて吸収剤12を流通する排気ガスの流量が低減される。これは、吸収剤流通排気ガスの空燃比を略ストイキまたはリッチにするために添加される還元剤の量を低減し燃費悪化を低減すると共に、エミッションの悪化を低減するためである。次いで、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル32によって吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなるように、すなわち少なくとも還元剤の添加が行われた時には吸収剤流通排気ガスの空燃比が略ストイキまたはリッチになるように還元剤の添加が行われる。これにより、吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなった時には、吸収剤12からSOx(硫黄分)の放出がなされる。
【0054】
このようなリッチ化制御が実施されると、ステップ112に進み再生制御の完了条件が成立したか否かが判定される。再生制御の完了条件は、種々の方法で設定可能であり、例えばリッチ化制御の実施継続時間を基準として判定するようにすることができる。すなわち、ステップ110のリッチ化制御を開始した時点からの経過時間が予め定められた設定値よりも大きくなった時に再生制御完了条件が成立したと判定する。その他、吸収剤12の下流側において放出される硫黄分を測定し、その値が設定値以下となった場合に再生制御完了条件が成立したと判定するようにしてもよい。
【0055】
ステップ112において、再生制御完了条件が成立していると判定された場合には本制御ルーチンは終了し、完了条件が成立していないと判定された場合には、ステップ102に進んで上述したような再生制御が継続される。この時、ステップ102において吸収剤12の温度TFが硫黄分放出温度TS未満であると判定された場合には、ステップ104からの制御が実施され、再度、吸収剤12の昇温が図られる。
【0056】
以上のように、この方法によれば、硫黄被毒再生を行うために吸収剤12を昇温させる際に、調整弁24の開度(位置)調整のみによって吸収剤12の各部分(上流側部分及び下流側部分)間の温度差を減少させ、最終的に吸収剤12全体を同時に硫黄分放出温度TS以上とすることができる。これにより、吸収剤12の全体に渡って十分な硫黄被毒再生が実施可能となる。
【0057】
また、この方法によれば、再生制御の実施中に吸収剤12を流通する排気ガスの流量が一時的に増加されるので、それまでの還元剤の添加等によって吸収剤12に残存していた還元剤を反応させて除去することが可能である。これにより、再生制御が完了して通常状態に戻る時に、吸収剤流通排気ガス流量が増加して残存還元剤が一気に反応し、それによって吸収剤12が過加熱されるのを抑制することができる。また、残存還元剤は吸収剤12の上流側部分に多く存在するので、再生制御の実施中に吸収剤12を流通する排気ガスの流量を一時的に増加させることによって残存還元剤が反応して発生した熱は、特に吸収剤12のうちの下流側部分の昇温に利用される。このため、この方法には、添加還元剤の効率的な利用を図り、吸収剤12全体の温度上昇を早める効果もある。
【0058】
次に別の構成の排気ガス浄化装置30について説明する。図8は、排気ガス浄化装置30の構成を模式的に示した説明図であり、内部の排気ガスの流れが示されている。
この排気ガス浄化装置30は、上述の排気ガス浄化装置20と同様に、図1に示された場合において排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する。図8に示すように、排気ガス浄化装置30は、機関本体2へ通じる上流側の基幹通路46と、分岐した後に合流する二つの分岐通路48、52と、下流側の基幹通路54とを備えている。
【0059】
第1及び第2の分岐通路48、52には、それぞれ、吸収剤12が担持されたフィルタ、すなわち第1及び第2のフィルタ56、58が配置されている。これらの吸収剤12が担持されたフィルタ56、58の構成は、上述の排気ガス浄化装置20において用いられたフィルタ14と同じである。なお、以下の説明においては、第1及び第2のフィルタ56、58の各々に担持されている吸収剤12を区別するために、それぞれ第1及び第2の吸収剤12a、12bと称することとする。
【0060】
各フィルタ56、58の下流側の二つの分岐通路48、52の合流部分には、両分岐通路48、52を流れる排気ガスの流量割合を制御するための調整部62が設けられている。調整部62は、調整弁64と、それを駆動する駆動部66とを備えている。調整弁64は駆動部66により、第1の分岐通路48を流れる排気ガスの流量が微量(例えば、1/9の排気ガス流量)となる第1の位置と第2の分岐通路52を流れる排気ガスの流量が同様に微量となる第2の位置との間で駆動され、各分岐通路48、52を流れる排気ガスの流量を調整するが、通常時は第1の位置と第2の位置との中間位置である図8に図示されたような第3の位置に位置され、第1の分岐通路48を流れる排気ガスの流量と第2の分岐通路52を流れる排気ガスの流量とがほぼ同じになるようにされている。
【0061】
また、各分岐通路48、52の各フィルタ56、58の上流側には、後述する吸収剤の再生制御の際等に使用する還元剤を各分岐通路48、52内に添加するための還元剤添加部が設けられている。還元剤添加部は、二つの還元剤噴射ノズル68、72と一つの還元剤供給ポンプ(図示無し)とを備えている。還元剤供給ポンプから供給された還元剤は、第1の還元剤噴射ノズル68によって第1の分岐通路48内に、また、第2の還元剤噴射ノズル72によって第2の分岐通路52内に、それぞれECU8の制御によって制御段階等に応じて適切なやり方で添加される。なお、還元剤としては上述したように、ディーゼルエンジン2の燃料である軽油を使用している。
【0062】
調整部62と還元剤添加部とは、ECU8によって制御される。具体的には、ECU8は、調整部62の駆動部66に接続されており、駆動部66を制御することにより、調整弁64の開度(位置)調整動作を制御する。また、ECU8は、還元剤添加部の各還元剤噴射ノズル68、72に接続されており、各還元剤噴射ノズル68、72を制御することにより、各還元剤噴射ノズル68、72の還元剤添加動作を制御する。
【0063】
更に、本排気ガス浄化装置30においては、各吸収剤12a、12bが担持された第1及び第2のフィルタ56、58に各フィルタ56、58上の吸収剤12a、12bの温度を測定する第1及び第2の温度センサ74、76が設けられている。これらの温度センサ74、76はECU8に接続されていて、測定結果はECU8に与えられる。
【0064】
また、本排気ガス浄化装置30においても上述した排気ガス浄化装置20の場合と同様に、温度センサ74、76は、各吸収剤12a、12bの下流側部分の温度を測定するように設けられている。なお、本排気ガス浄化装置30においても温度センサ74、76が、吸収剤12a、12bが担持された各フィルタ56、58に直接設けられたが、排気ガス浄化装置20の場合と同様に、温度センサを吸収剤12a、12bが担持された各フィルタ56、58の下流に設置し、排気ガスの温度を測定することで各吸収剤12a、12bの温度を推定する等、その他の手段によって吸収剤12a、12bの温度を求めるようにしてもよい。
【0065】
次に本排気ガス浄化装置30で実施される再生制御について説明する。本排気ガス浄化装置30における吸収剤12a、12bの再生制御の実質的部分の制御ルーチンは、図5に示された排気ガス浄化装置20の場合とほぼ同様である。しかしながら、本排気ガス浄化装置30においては再生制御を必要とする吸収剤が2ヶ所にあるので、両方の吸収剤12a、12bの再生制御を実施するために図5に示された再生制御の制御ルーチンを二回行う必要がある。図9は、本排気ガス浄化装置30の再生制御の全体を示す制御ルーチンである。本ルーチンはECU8により一定時間毎の割込みによって実施される。
【0066】
図9は、第1及び第2の吸収剤12a、12bの再生制御実施条件を同一とし、その再生制御実施条件が成立した時には第1の吸収剤12aと第2の吸収剤12bとについて連続して再生制御を実施する場合を示している。ステップ200は、図5のステップ100と同様であって、まずここで再生制御実施条件が成立したか否かが判定される。
【0067】
続くステップ202及びステップ204において第1または第2の吸収剤12a、12bに対して実施される再生制御の実質的部分については、図5を参照して説明した排気ガス浄化装置20の再生制御のステップ102からステップ112と基本的に同様であり、構成要素の対応関係(還元剤噴射ノズル32と68または72、温度センサ34と74または76等)及び各ステップでの調整弁64の動作等についても図2及び図8、並びに上述の説明から明らかであるので詳細な説明は省略する(概略的に言えば、硫黄被毒再生を行わない側の分岐通路48または52が排気ガス浄化装置20におけるバイパス通路18に対応する)。
【0068】
なお、本排気ガス浄化装置30においては、一方の吸収剤(対象吸収剤)に対して再生制御を実施する際に、その対象吸収剤への流通排気ガス流量を調整すると、対象吸収剤をバイパスした排気ガスは再生制御を実施していない他方の吸収剤を通過することになる。これにより、本排気ガス浄化装置30では再生制御実施中においても排気ガスが吸収剤を通過せずに大気へ放出されることが防止されるという利点がある。
【0069】
以上のように本排気ガス浄化装置30の構成によっても、その吸収剤12a、12bの再生制御において、図5を参照して説明した方法と同様な方法を実施することができ、その結果、吸収剤12a、12bの各部分間の温度差の減少等、排気ガス浄化装置20に関連して説明した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。更に本構成では、上述したように再生制御実施中において排気ガスが吸収剤を全く通過せずに大気へ放出されることが防止される。
【0070】
次に更に別の構成の排気ガス浄化装置40について説明する。図10は、排気ガス浄化装置40の外観を模式的に示した説明図であり、図10(a)及び(b)がそれぞれ上面図及び側面図を示している。また、図11(a)及び(b)には、それぞれ、上方及び側方から見た場合の断面図が示され、排気ガス浄化装置40の内部の排気ガスの流れが示されている。
【0071】
この排気ガス浄化装置40は、上述の他の排気ガス浄化装置20、30と同様に、図1に示された場合において排気ガス浄化装置10の部分に設置されて排気ガス通路6の一部を構成する。図10に示すように排気ガス浄化装置40は、基幹通路78と、基幹通路78に接続された環状通路82とを備えている。基幹通路78と環状通路82との接続部分には、経路変更部84が設けられている。経路変更部84は、排気ガスの経路を変更すると共に後述する吸収剤12を流通する排気ガスの流量を調整することができる経路切替調整弁86と、経路切替調整弁86を駆動するための駆動部88とを備えている。経路変更部84は、4つの通路が接続された二組の対向面を有している。一方の組の対向面には、基幹通路78を構成する二つの部分基幹通路78a、78bが接続されており、他方の組の対向面には、環状通路82を構成する二つの部分環状通路82a、82bが接続されている。
【0072】
環状通路82には上述した他の排気ガス浄化装置20、30において用いられたのと同様な吸収剤12が担持されたフィルタ14が配置されている。第1の部分環状通路82aは、フィルタ14(吸収剤12)の第1の面S1側に通じており、第2の部分環状通路82bは、第2の面S2側に通じている。また、下流側の部分基幹通路78bには別の吸収剤92が配置されている。下流側の部分基幹通路78bは、環状通路82のフィルタ14を内蔵している部分を囲むように形成されている。
【0073】
更に、排気ガス浄化装置40は、後述する吸収剤12の再生制御の際等に使用する還元剤を環状通路82内に添加するための還元剤添加部を備えており、本構成では第1の部分環状通路82aに取り付けられている。還元剤添加部は、還元剤噴射ノズル94と還元剤供給ポンプ(図示無し)とを備えており、還元剤供給ポンプから供給された還元剤は、還元剤噴射ノズル94によって第1の部分環状通路82a内に、ECUの制御によって制御段階等に応じて適切なやり方で添加される。なお、還元剤としては、上述した他の排気ガス浄化装置20、30と同様に、ディーゼルエンジン2の燃料である軽油を使用している。
【0074】
経路変更部84と還元剤添加部とはECU8によって制御される。具体的には、ECU8は、経路変更部84の駆動部88に接続されており、駆動部88を制御することにより、経路切替調整弁86の開度(位置)調整動作を制御する。また、ECU8は、還元剤添加部の還元剤噴射ノズル94に接続されており、還元剤噴射ノズル94を制御することにより、還元剤噴射ノズル94の還元剤添加動作を制御する。
【0075】
更に、本排気ガス浄化装置40においては、吸収剤12が担持されたフィルタ14に吸収剤12の温度を測定する温度センサ96が設けられている。この温度センサ96はECU8に接続されていて、測定結果はECU8に与えられる。また、本排気ガス浄化装置40においても上述した排気ガス浄化装置20、30と同様に、温度センサ96は、吸収剤12の下流側部分の温度を測定するように設けられている。
【0076】
なお、本排気ガス浄化装置40においても、温度センサ96が、吸収剤12が担持されたフィルタ14に直接設けられたが、上述の他の排気ガス浄化装置20、30の場合と同様に、温度センサを後述する再生制御の際に吸収剤12が担持されたフィルタ14の下流側になる部分、すなわち第2の部分環状通路82bに設置し、排気ガスの温度を測定することで吸収剤12の温度を推定する等、その他の手段によって吸収剤12の温度を求めるようにしてもよい。
排気ガス浄化装置40に流入した排気ガスは、以下で説明するように必ず基幹通路78を通り、選択的に環状通路82を通る。
【0077】
図11(a)、(b)は、経路切替調整弁86が第1の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している。この場合、排気ガス浄化装置40に流入した排気ガスは、上流側の部分基幹通路78aを通って経路変更部84に流入し、第1の部分環状通路82aと第2の部分環状通路82bとをこの順序で通って、経路変更部84に戻る。この時、排気ガスは、吸収剤12を担持したフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流れる。経路変更部84に戻った排気ガスは、下流側の部分基幹通路78bに流入し、別の吸収剤92を通過した後に排気ガス浄化装置40から排出される。なお、吸収剤92を通過した排気ガスは、図11(a)、(b)に示すように、部分基幹通路78bの環状通路82のフィルタ14を内蔵している部分を囲むように形成されている部分を通る。
【0078】
図12は、経路切替調整弁86が第2の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)と同様の図である。この場合、排気ガスは、図11(a)の場合とほぼ同様に流れるが、環状通路82を流れる方向が反転している。すなわち、経路変更部84に流入した排気ガスは、第2の部分環状通路82bと第1の部分環状通路82aとをこの順序で通って、経路変更部84に戻る。この時、排気ガスは吸収剤12を担持したフィルタ14を第2の面S2から第1の面S1に向かって流れる。このように、吸収剤12を流通する排気ガスの流れを反転することができるので、通常使用時において排気ガスの流通方向によるNOx吸蔵量等の偏りを解消でき、吸収剤全体を効率良く使用することができる。
【0079】
図13は、経路切替調整弁86が上記第1の位置と第2の位置との中間である第3の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)及び図12と同様の図である。なお、経路切替調整弁86を第1の位置と第2の位置とで切替える際には、経路切替調整弁86は一時的に第3の位置となる。経路切替調整弁86が第3の位置に位置している場合、経路変更部84に流入した排気ガスは、殆どがそのまま下流側の部分基幹通路78bに流入し、吸収剤92を通過した後に、排気ガス浄化装置40から排出される。
【0080】
上記のように、経路切替調整弁86が第1または第2の位置にある場合には、排気ガスは吸収剤12を担持したフィルタ14を通過し、更に吸収剤92を通過する。一方、経路切替調整弁86が第3の位置にある場合には、殆どの排気ガスは、吸収剤12を担持したフィルタ14を通過せずに吸収剤92のみを通過して排気ガス浄化装置40から排出される。したがって、通常の運転中は、排気ガスが吸収剤12を担持したフィルタ14と吸収剤92とを通過して浄化されるように、経路切替調整弁86は第1または第2の位置にある。そして必要に応じてその位置が駆動部88により第1の位置と第2の位置の間で調整される。
【0081】
次に本排気ガス浄化装置40で実施される再生制御について説明するが、本排気ガス浄化装置40における吸収剤12の再生制御は基本的に排気ガス浄化装置20の場合と同様であり、その制御ルーチンは図5のフローチャートで示され、また構成要素(噴射ノズル32と94、温度センサ34と96等)の対応関係等も図面及び上述の説明から明らかであるので詳細な説明については省略する。但し、本排気ガス浄化装置40における再生制御で実施される経路切替調整弁86の開度(位置)調整は、排気ガス浄化装置20の調整弁24の場合とはかなり異なる部分もあるので、以下で説明する。
【0082】
まず、本排気ガス浄化装置40で図5に示された制御ルーチンを実施した場合においてステップ104で行われる経路切替調整弁86の開度(位置)調整についてであるが、ここでは、経路切替調整弁86は、図13に示された第3の位置から僅かに第1の位置側にずれた位置である予め定められた位置(「第4の位置」とする)に調整され、一部の排気ガスのみがフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流通し、それ以外の殆どの排気ガスはフィルタ14をバイパスするようにされる。したがって、仮に再生制御実施条件が成立した時に経路切替弁86が第2の位置にあった場合には、ここでの調整により吸収剤12を担持したフィルタ14を通過する排気ガスの方向は反転されることになる。また、この時、経路切替調整弁86が、第3の位置から第2の位置側ではなく、第1の位置側にずれた位置(上記の第4の位置)に調整されるのは、還元剤の添加位置、すなわち還元剤噴射ノズル94がフィルタ14を流通する排気ガスの流れ方向に関してフィルタ14の上流側に位置するようにするためである。
【0083】
次に、本排気ガス浄化装置40で図5に示された制御ルーチンを実施した場合においてステップ108で行われる経路切替調整弁86の開度(位置)調整について説明する。ここでは、経路切替調整弁86は上述の第4の位置から図11に示された第1の位置に調整され、吸収剤12を流通する排気ガスの流量が増加せしめられる。すなわち、ステップ108においては、この経路切替調整弁86の調整によって、殆ど全ての排気ガスがフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流通するようにされる。
【0084】
なお、本排気ガス浄化装置40で図5に示された制御ルーチンを実施した場合であって、排気ガス浄化装置20に関連して説明した例と同様な方法でステップ110のリッチ化制御が行われる場合には、このステップ110においても経路切替調整弁86が調整される。この場合、経路切替調整弁86は、第1の位置から第3の位置側へ作動され、フィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流通する排気ガスの流量が低減される。これは、上述したように、吸収剤流通排気ガスの空燃比を略ストイキまたはリッチにするために添加される還元剤の量を低減し燃費悪化を低減すると共に、エミッションの悪化を低減するためである。そしてこの時、経路切替調整弁86は第3の位置まで移動されることは無く、吸収剤12(フィルタ14)を流通する排気ガスの方向(第1の面S1から第2の面S2)は維持される。
【0085】
以上の説明から明らかなように、本排気ガス浄化装置40の構成によっても、その吸収剤12の再生制御において、排気ガス浄化装置20に関連して図5を参照して説明した方法とほぼ同様な方法を実施することができる。そしてその結果、吸収剤12の各部分間の温度差の減少等、排気ガス浄化装置20に関連して説明した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。更に本排気ガス浄化装置40は吸収剤92を具備しているので、再生制御実施中において排気ガスが吸収剤を全く通過せずに大気へ放出されることが防止される。また、本構成によれば、吸収剤12を流通する排気ガスの流れを反転することができるので、通常使用時において排気ガスの流れ方向によるNOx吸蔵量等の偏りを解消でき、吸収剤12全体を効率良く使用することができる。
【0086】
なお、上述の説明では各構成の排気ガス浄化装置20、30、40で実施される再生制御のステップ108での弁24、64、86の制御(すなわち、開度(位置)調整)において、硫黄被毒再生を実施する対象吸収剤12、12a、12bにほぼ全ての排気ガスが流入するように弁24、64、86の開度または位置(以下、単に「弁開度」と言う)を調整することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、対象吸収剤12、12a、12bの各部分間の温度差の減少を図るのに適切な弁開度であれば、対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量がステップ104の時よりも多くなる別の弁開度に調整するようにしてもよい。
【0087】
また、上述の説明では、吸収剤12、12a、12bの温度を測定するために温度センサ34、74、76、96が吸収剤12、12a、12bを担持したフィルタ14、56、58に直接設けられている排気ガス浄化装置20、30、40の構成を示して説明を行い、その他の構成の例として温度センサを吸収剤の下流に設置することについて述べたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではなく、例えば温度センサを設けずに吸収剤12、12a、12bの温度を推定し、上述したような再生制御を実施するようにしてもよい。この場合、昇温開始前の吸収剤12、12a、12bの温度については、例えばエンジンの運転状態に基づいて求めることができる。すなわち、吸収剤12、12a、12bの温度をエンジン負荷Q/N(吸入空気量Q/エンジン回転数N)及びエンジン回転数Nの関数として予め求めてマップにしておき、このマップに基づいてエンジン負荷Q/Nとエンジン回転数Nとから温度を求めることが可能である。この場合には、上記マップを予めECU8のROMに記憶させておく。また、その後の温度については、上記のエンジン運転状態に加えて、再生制御の過程における還元剤添加量や弁開度(吸収剤流通排気ガス流量)等に基づいて推定することができる。
【0088】
あるいは、再生制御の実施条件が成立した時の各エンジン運転状態に応じて、吸収剤12、12a、12bの各部分間の温度差の減少を図り且つその温度を硫黄分放出温度TS以上とすることができる適切な制御パラメータ(すなわち、ステップ104及びステップ108等における弁開度及び還元剤添加量、並びに待ち時間P1及びP2等)を予め求めてプログラムしておき、再生制御の実施条件が成立した時にはその時のエンジン運転状態に応じたプログラムを選択し、それに沿って制御を行うようにしてもよい。
【0089】
更に、上述の説明では、再生制御を昇温制御とリッチ化制御とに分け、リッチ化制御時にのみ硫黄分が放出されるかのように説明したが、当然のことながら、実際には、昇温制御中においても吸収剤12、12a、12bのうちの硫黄分放出温度TS以上となった部分(例えば上流側部分)がその時の還元剤の添加等によってリッチ雰囲気となれば、その部分から硫黄分の放出が行われる。
【0090】
また、上述の説明ではステップ104及びステップ108等において、弁の開度または位置(すなわち、弁開度)を基準として弁24、64、86を制御して硫黄被毒再生が行われたが、対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガスの流量を基準とした制御を行って同様に硫黄被毒再生を行うようにしてもよい。すなわち、この場合には、ステップ104及びステップ108等においては対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が予め定めた流量となるように制御される。
【0091】
より詳細には、例えば上述した各排気ガス浄化装置20、30、40のように弁24、64、86によって対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が制御される場合には、ステップ104においては対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が予め定めた第1の流量となるように、ステップ108においては対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量が予め定めた第2の流量へと増加するように、それぞれ弁開度が調整される。
【0092】
このように、流通排気ガス流量を基準とした弁の制御においては、先の説明の弁開度を基準とした弁の制御のように最初に弁の目標開度または目標位置(以下、単に「目標開度」と言う)が設定され、単純に弁開度がその目標開度になるように調整されるのではなく、まず目標流量が設定され、対象吸収剤を流通する排気ガス流量がその目標流量となるように弁開度が調整される。つまり、対象吸収剤を流通する排気ガス流量がその目標流量となるための目標開度が設定され、その目標開度になるように弁開度が調整される。
【0093】
このような弁開度の調整は、例えば以下のようにして実施することができる。すなわち、エンジンから排出される全排気ガス流量は、エンジン負荷Q/Nが高くなればなるほど多くなり、エンジン回転数Nが高くなればなるほど多くなる。そこで、全排気ガス流量をエンジン負荷Q/N及びエンジン回転数Nの関数として予め実験により求めておけば、これに基づいて所定のエンジン運転状態での全排気ガス流量は求めることができる。更に各排気ガス流量の場合において弁開度が各開度の時に対象吸収剤12、12a、12bを流通する排気ガス流量は実験または計算により求めることができる。
【0094】
したがって、これらエンジン負荷Q/N及びエンジン回転数Nの関数としての全排気ガス流量と、全排気ガス流量及び弁開度の関数としての対象吸収剤流通排気ガス流量とが求められるので、これらの関係をECU8のROMに記憶させておくことによって、各運転状態に応じて、吸収剤流通排気ガス流量を所望の流量(目標流量)とする目標開度を決定することができ、駆動部26、66、88を制御することによってその目標開度へ弁開度を調整することができる。
【0095】
あるいは、他の方法としては、吸収剤12、12a、12b(フィルタ14)の流入端に流速センサを取り付けることによって排気ガス流速をモニターし、その測定値から流量を推定してフィードバック制御により所望の吸収剤流通排気ガス流量となるように弁開度を調整するようにしてもよい。
【0096】
なお、排気ガス浄化装置40の構成においては、吸収剤12を流通する排気ガスの方向を反転することができることから、ここでの吸収剤流通排気ガス流量は、流れの方向を含めた概念となる。例えばフィルタ14を第1の面S1から第2の面S2に向かって流れる排気ガスの流量を正の流量とし、その逆を負の流量とする。
【0097】
また、上述の各排気ガス浄化装置20、30、40を用いた説明においては、吸収剤12、12a、12bの上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段として、還元剤添加ノズル32、74、76、94を用いて吸収剤担持フィルタ14、56、58の上流側で排気ガス通路に還元剤を供給する手段を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上述の各排気ガス浄化装置20、30、40において、還元剤添加ノズル32、74、76、94からの還元剤の添加の代わりに、ポスト噴射(すなわち、主噴射に続いて膨張行程にて噴射される副噴射)による還元剤の添加が行われるようにしてもよい。
この場合、ポスト噴射でのみ還元剤の添加を行う場合には、還元剤添加ノズル32、74、76、94を設ける必要がなくなるという利点がある。
【0098】
なお、ポスト噴射による還元剤の添加が行われる場合には、燃料噴射弁によりシリンダ内に還元剤の添加が行われるため、排気ガス浄化装置内に複数の排気ガスの経路が存在する場合に排気ガス経路毎に個別に還元剤の添加を行うことができない点に留意する必要がある。例えば、図8に示された排気ガス浄化装置30においてポスト噴射による還元剤の添加が行われる場合には、各吸収剤12a、12bに対する個別的な還元剤の添加を行うことはできず、また、排気ガス浄化装置20や排気ガス浄化装置40においてポスト噴射による還元剤の添加が行われる場合には、還元剤の添加された排気ガスが吸収剤12の存在しない排気ガス経路にも流れる場合があるので還元剤の無駄が生じると共に大気中に放出される還元剤が増加する可能性がある。
【0099】
また、上述の各排気ガス浄化装置20、30、40を用いた説明においては、昇温制御からリッチ化制御に移行する条件を吸収剤の温度TFが硫黄分放出温度TS以上となることとしているが、この条件を吸収剤の温度TFが硫黄分放出温度TSとは異なる所定の温度以上となることとしてもよい。例えば、リッチ化制御への移行後の温度低下を考慮して、上記条件となる温度(すなわち昇温制御における目標温度)を硫黄分放出温度TSよりも高く設定してもよい。
【0100】
更に、上述の各排気ガス浄化装置20、30、40の構成においては、吸収剤12、12a、12bをフィルタ14、56、58内の排気ガス通路壁面に担持させているが、吸収剤とフィルタとは別個に独立させてもよい。
また、上述の説明は本発明をディーゼルエンジンに適用した場合についてのものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の内燃機関についても適用可能である。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤全体を同時に硫黄分放出温度以上とすることができるので、対象NOx吸蔵剤の全体に渡って十分な硫黄被毒再生が実施可能となる。また、添加された還元剤を硫黄被毒再生制御中の対象NOx吸蔵剤の昇温に効率的に利用することができると共に、硫黄被毒再生制御完了後の残存還元剤に起因するNOx吸蔵剤の過加熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の排気ガス浄化装置をディーゼルエンジンに適用した場合を示す図である。
【図2】図2は、本発明の排気ガス浄化装置を示した説明図である。
【図3】図3は、NOx吸収剤が担持されたパティキュレートフィルタの拡大断面図である。
【図4】図4は、NOxの吸収放出及び還元浄化作用を説明するための図である。
【図5】図5は、図2に示した排気ガス浄化装置及び図10から図13に示した排気ガス浄化装置におけるNOx吸収剤の硫黄被毒再生制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図6は、図5に示した制御ルーチンにしたがってNOx吸収剤を昇温した場合におけるNOx吸収剤の上流側部分と下流側部分の温度の経時変化を示した例であり、図5のステップ102からステップ109までの制御を一度だけ行ってNOx吸収剤全体が硫黄分放出温度に達した場合を示している。
【図7】図7は、図5に示した制御ルーチンにしたがってNOx吸収剤を昇温した場合におけるNOx吸収剤の上流側部分と下流側部分の温度の経時変化を示した例であり、図5のステップ102からステップ109までの制御を繰返し行ってNOx吸収剤全体が硫黄分放出温度に達した場合を示している。
【図8】図8は、本発明の別の排気ガス浄化装置を示した説明図である。
【図9】図9は、図8に示した排気ガス浄化装置におけるNOx吸収剤の硫黄被毒再生制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の更に別の排気ガス浄化装置の外観を模式的に示した説明図であり、図10(a)及び図10(b)がそれぞれ上面図及び側面図を示している。
【図11】図11は、図10に示した排気ガス浄化装置の断面を示した説明図であって、図11(a)及び図11(b)がそれぞれ上方及び側方から見た場合の断面図を示しており、経路切替調整弁が第1の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している。
【図12】図12は、経路切替調整弁が第2の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)と同様の図である。
【図13】図13は、経路切替調整弁が第3の位置に位置された場合の排気ガスの流れを示している図11(a)と同様の図である。
【符号の説明】
2…機関(エンジン)本体
6…排気ガス通路
8…電子制御ユニット(ECU)
10、20、30、40…排気ガス浄化装置
12、12a、12b…NOx吸収剤
14、56、58…パティキュレートフィルタ
24、64…調整弁
32、68、72、94…還元剤噴射ノズル
34、74、76、96…温度センサ
86…経路切替調整弁
Claims (4)
- 流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置した排気ガス浄化装置において、
上記NOx吸蔵剤の上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段と、
上記NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御する流量制御手段とを備えていて、
NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を予め定めた流量として還元剤の添加を行い、その後上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で予め定めた別の流量まで増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化装置。 - 流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置した排気ガス浄化装置において、
上記NOx吸蔵剤の上流側において還元剤を添加する還元剤添加手段と、
上記NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御する開度調整可能なバルブとを備えていて、
NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記バルブの開度を予め定めた開度に調整することによって上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を制御して還元剤の添加を行い、その後上記バルブの開度を予め定めた別の開度に調整することにより上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化装置。 - NOx吸蔵剤が、排気ガス中の排気微粒子を除去する手段に担持されて上記排気ガス通路に配置されている、請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
- 流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にNOxを吸蔵し流通する排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化するNOx吸蔵剤を内燃機関から排出される排気ガスが通る排気ガス通路に配置して行う排気ガス浄化方法において、
NOx吸蔵剤から硫黄分を放出させるべき時には、硫黄分を放出させる対象NOx吸蔵剤の全体を硫黄分放出温度以上とするために、上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量を予め定めた流量として還元剤の添加を行い、その後上記対象NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの流量をその流通方向を反転することなく一方向に流した状態で予め定めた別の流量まで増加することによって上記対象NOx吸蔵剤の上流側部分の温度と下流側部分の温度との温度差を減少させる、排気ガス浄化方法。
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