JP3870603B2 - 揺変性カルボキシメチルセルロースアルカリ塩及びその製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、カルボキシメチル置換度が1.0以上であり、且つチキソトロピー性(揺変性)の大きいカルボキシメチルセルロースアルカリ塩(以下、CMCと略す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
CMCは木材パルプ、リンターパルプなどのセルロース原料に水酸化ナトリウムなどのアルカリ存在下でモノクロロ酢酸などのエーテル化剤を作用させて得られるセルロースエーテルであり、水溶性高分子電解質として増粘剤、分散剤、保護コロイド、接着剤、石油ボーリング用泥水調整剤、飼料用粘結剤、捺染糊などに幅広く使用されている。
【0003】
上記用途に於いてCMCは水溶液として使用され、その品質はカルボキシメチル基の置換度(以下、DSと略す)、粘度、チキソトロピー性によって大きく左右される。一般にCMCのDSが低くなる程、その水溶液のチキソトロピー性は大きくなり、逆にDSが高くなる程、その水溶液のチキソトロピー性は小さくなる関係がある。即ち、DSの低いCMCではセルロースの水酸基に対するカルボキシメチル基の数が少なく、置換基分布が不均一となるため、セルロースの未反応水酸基の水素結合による構造粘性が発現し、CMC水溶液のチキソトロピー性は大きくなる。一方、DSの高いCMCではセルロースの水酸基に対するカルボキシメチル基の数が多く置換基分布が均一となるため、その水溶液のチキソトロピー性は小さくなる。
【0004】
CMCの用途開発が進み様々なレオロジー特性を持ったCMCが要求されるに伴い、CMCのチキソトロピー性を改良する種々の方法が開発されている。CMCのチキソトロピー性を改良する方法については主に、DSの低いCMCのチキソトロピー性を小さくすることを目的として開発されたものが多く、例えば、カルボキシメチル基の置換基分布の均一なCMCを製造する方法(特公昭60−42241、特公昭60−35361、特公昭63−55523)や、チキソトロピー性の小さいCMCを配合する方法(特公昭60−51732、特公平04−80148)などが挙げられる。
【0005】
一方、DSの高いCMCのチキソトロピー性を大きくする方法としては、チキソトロピー性の大きいCMCを配合する方法(特開平05−214162)が開示されている。しかしながら、この様なCMCを配合する方法では、配合する割合に制限があるため、目的とするDSや粘度のCMCを調製するには限界があった。特にDSが1.0以上のCMCはチキソトロピー性が非常に小さいため、DSが低くチキソトロピー性の大きいCMCの配合率が高くなり、得られるCMC配合物のDSは1.0以下となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DSが高く且つチキソトロピー性のを大きいCMCを提供することを目的とする。更に詳しくは、DSが1.0以上であり、且つB型粘度計(25℃,スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製した水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下であることを特徴とするCMCを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の新規な揺変性CMCを完成するに至った。即ち、本発明はDSが1.0以上であり、且つB型粘度計(25℃,スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製した水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下である揺変性CMCである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に於いて、DSは1.0以上であることが必要である。DSが1.0より低い場合では、分散性、乳化性などのCMCの機能が不十分となる。
【0009】
更に、B型粘度計(25℃,スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製したCMC水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下であることが必要である。粘度比が0.6を越えるとCMC水溶液のチキソトロピー性が小さくなり、塗料用添加剤、ゲル化剤、保型剤などとして使用する場合に好ましくない。
【0010】
本発明の揺変性CMCの製造法としては、含水有機溶媒の存在下で、セルロース原料にアルカリを作用させた後にエーテル化剤を作用させてCMCを製造する過程に於いて、アルカリを作用させる温度よりも5℃以上冷却した後にエーテル化剤を作用させる方法が挙げられる。
【0011】
DSが1.0以上のCMCを製造する場合、マーセル化セルロースの調製には40〜49%の高濃度のアルカリが一般的に用いられる。溶解している高濃度のアルカリ溶液は撹拌混合によってセルロース原料内部へ浸透し、均一なマーセル化セルロースが調製される。この時、エーテル化剤を添加する前に温度を5℃以上冷却することにより、セルロース原料内部へ浸透している高濃度のアルカリの一部が不溶化し析出する為、セルロース原料は局所的に不均一にマーセル化した状態となる。その為、エーテル化剤によるエーテル化反応が不均一に進行し、カルボキシメチル基の置換基分布が局所的に不均一なCMCが得られる。斯かるCMCは、未反応水酸基の水素結合により構造粘性を発現し、チキソトロピー性の大きいものとなる。
【0012】
通常溶媒法によるCMCは、先ずアルカリを含む含水有機溶媒でセルロース原料を10℃〜50℃の温度で撹拌混合してマーセル化セルロースを調製し、続いて含水有機溶媒に溶解したエーテル化剤を10〜50℃の温度で少量ずつ添加して撹拌混合を行った後、60〜80℃の温度でエーテル化反応を行うことによって製造される。
【0013】
本発明に於いてマーセル化セルロースを調製する時の温度は、通常のCMCの製造で設定される10℃〜50℃で行えば良く、特に限定はされない。エーテル化剤は、マーセル化セルロースを調製する温度より5℃以上、好ましくは10℃以上冷却した後に添加される。冷却する温度が5℃より小さい場合ではマーセル化の不均一化が不十分となり、目的とするチキソトロピー性の大きいCMCは得られない。
【0014】
本発明に用いるセルロース原料とは、通常CMCの製造に使用されているリンターパルプ、木材パルプなどであれば何れも使用することができ、特に限定されない。
【0015】
含水有機溶媒とは、CMC製造に通常使用されているものであれば特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルケトンなどのケトン類などの親水性有機溶媒、或いはこれらにベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類を混合したものの少なくとも1種と水の混合物が挙げられる。有機溶媒と水との重量比は、80:20〜95:5の範囲が好ましい。
【0016】
アルカリとは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウムなどを使用し得るが、経済的な理由から水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリの添加方法としては、アルカリの全量をエーテル化剤添加の前に全量添加するか、或いは使用アルカリをエーテル化剤添加の前後に分割して添加しても良い。但し、マーセル化を行うときのアルカリの濃度{アルカリの重量/(含水有機溶媒中の水の重量+アルカリの重量)×100}は、マーセル化後の冷却によってアルカリが部分的に不溶化し析出するに十分な高濃度であることが必要であり、好ましくは40〜49%であることが望ましい。
【0017】
エーテル化剤とは、モノクロロ酢酸或いはその中和物、モノクロロ酢酸ナトリウムなどが使用可能である。エーテル化剤の添加量は、DSが1.0以上のCMCを得るに必要な量であれば良く、特に限定はされない。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の実施の形態を実施例により示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0019】
尚、本発明で使用するCMCの品質の評価方法は次の通りである。
(1)DS(置換度)
CMC(無水物)1.0gを精秤し、白金皿に入れて550〜600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムを0.1Nの硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴定量Amlを次式で計算しDS(mol/C6)を求める。
DS={162×A×f}/{10000−80×A×f}
(式中のfは0.1N硫酸の力価)
(2)B型粘度
CMC(無水物)10gを精秤し、1000mlビーカーに入れ、純水990mlを加え、トライアングル撹拌棒を用いて撹拌、溶解し25±0.2℃に液温を調整する。BM型粘度計(東京計器社製)を用いて、回転数30rpmで3分間回転させた後の粘度を読みとる。
(3)チキソトロピー性(PVI値)
CMCの粘度に応じて濃度を調製し、B型粘度測定法により測定した水溶液粘度が10000±500mPa・sのCMC水溶液を調製する。CMC水溶液を25±0.2℃に液温を調整し、回転数6rpm及び60rpmに於ける各粘度を測定し、下式の如く回転数6rpmの粘度に対する回転数60rpmの粘度の商を以てチキソトロピー性とする。この値が小さい程チキソトロピー性が大きい。
チキソトロピー性={粘度(60rpm)/粘度(6rpm)}
【0020】
実施例1
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1604gとメチルアルコール139gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム125.2gを水178gに溶解したものを投入した。温度を30℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、15℃に冷却し、次いでモノクロロ酢酸151.7gをIPA214gと水22gの混合液に溶解したものを加えた。15℃で30分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持した。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0021】
実施例2
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1515gとメチルアルコール132gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム119.7gを水153gに溶解したものを投入した。温度を40℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、20℃に冷却し、次いでモノクロロ酢酸262.5gをIPA373gと水35gの混合液に溶解したものを加えた。20℃で60分間撹拌混合した後、水酸化ナトリウム97.0gを固形状態で添加した。20℃で60分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持する。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0022】
比較例1
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1604gとメチルアルコール139gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム125.2gを水178gに溶解したものを投入した。温度を30℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、モノクロロ酢酸151.7gをIPA214gと水22gの混合液に溶解したものを加えた。30℃で30分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持した。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0023】
比較例2
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1515gとメチルアルコール132gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム119.7gを水153gに溶解したものを投入した。温度を40℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、モノクロロ酢酸262.5gをIPA373gと水35gの混合液に溶解したものを加えた。40℃で60分間撹拌混合した後、水酸化ナトリウム97.0gを固形状態で添加した。40℃で60分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持する。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0024】
以上の実施例1〜2及び比較例1〜2の製造条件から得られたCMCの品質を表1に示した。実施例1〜2は本発明に従って得られたCMCである。比較例1〜2は、従来通りマーセル化温度とエーテル化剤添加温度を一定として製造したCMCである。
【0025】
実施例はCMCのDSが1.0以上でありDSの高いものであるが、同等のDSを示す比較例と比較し、PVI値が大幅に低くチキソトロピー性が大きい。
【0026】
【表1】
表1
【0027】
【発明の効果】
本発明では、マーセル化セルロースを5℃以上冷却した後に、エーテル化剤を添加することで、DSが1.0以上であり且つチキソトロピー性が大きいものとなるので、増粘剤、分散剤、保護コロイド、接着剤、石油ボーリング用泥水調整剤、飼料用粘結剤、捺染糊などとして幅広い分野で使用することができる。
【発明の属する分野】
本発明は、カルボキシメチル置換度が1.0以上であり、且つチキソトロピー性(揺変性)の大きいカルボキシメチルセルロースアルカリ塩(以下、CMCと略す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
CMCは木材パルプ、リンターパルプなどのセルロース原料に水酸化ナトリウムなどのアルカリ存在下でモノクロロ酢酸などのエーテル化剤を作用させて得られるセルロースエーテルであり、水溶性高分子電解質として増粘剤、分散剤、保護コロイド、接着剤、石油ボーリング用泥水調整剤、飼料用粘結剤、捺染糊などに幅広く使用されている。
【0003】
上記用途に於いてCMCは水溶液として使用され、その品質はカルボキシメチル基の置換度(以下、DSと略す)、粘度、チキソトロピー性によって大きく左右される。一般にCMCのDSが低くなる程、その水溶液のチキソトロピー性は大きくなり、逆にDSが高くなる程、その水溶液のチキソトロピー性は小さくなる関係がある。即ち、DSの低いCMCではセルロースの水酸基に対するカルボキシメチル基の数が少なく、置換基分布が不均一となるため、セルロースの未反応水酸基の水素結合による構造粘性が発現し、CMC水溶液のチキソトロピー性は大きくなる。一方、DSの高いCMCではセルロースの水酸基に対するカルボキシメチル基の数が多く置換基分布が均一となるため、その水溶液のチキソトロピー性は小さくなる。
【0004】
CMCの用途開発が進み様々なレオロジー特性を持ったCMCが要求されるに伴い、CMCのチキソトロピー性を改良する種々の方法が開発されている。CMCのチキソトロピー性を改良する方法については主に、DSの低いCMCのチキソトロピー性を小さくすることを目的として開発されたものが多く、例えば、カルボキシメチル基の置換基分布の均一なCMCを製造する方法(特公昭60−42241、特公昭60−35361、特公昭63−55523)や、チキソトロピー性の小さいCMCを配合する方法(特公昭60−51732、特公平04−80148)などが挙げられる。
【0005】
一方、DSの高いCMCのチキソトロピー性を大きくする方法としては、チキソトロピー性の大きいCMCを配合する方法(特開平05−214162)が開示されている。しかしながら、この様なCMCを配合する方法では、配合する割合に制限があるため、目的とするDSや粘度のCMCを調製するには限界があった。特にDSが1.0以上のCMCはチキソトロピー性が非常に小さいため、DSが低くチキソトロピー性の大きいCMCの配合率が高くなり、得られるCMC配合物のDSは1.0以下となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DSが高く且つチキソトロピー性のを大きいCMCを提供することを目的とする。更に詳しくは、DSが1.0以上であり、且つB型粘度計(25℃,スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製した水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下であることを特徴とするCMCを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の新規な揺変性CMCを完成するに至った。即ち、本発明はDSが1.0以上であり、且つB型粘度計(25℃,スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製した水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下である揺変性CMCである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に於いて、DSは1.0以上であることが必要である。DSが1.0より低い場合では、分散性、乳化性などのCMCの機能が不十分となる。
【0009】
更に、B型粘度計(25℃,スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製したCMC水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下であることが必要である。粘度比が0.6を越えるとCMC水溶液のチキソトロピー性が小さくなり、塗料用添加剤、ゲル化剤、保型剤などとして使用する場合に好ましくない。
【0010】
本発明の揺変性CMCの製造法としては、含水有機溶媒の存在下で、セルロース原料にアルカリを作用させた後にエーテル化剤を作用させてCMCを製造する過程に於いて、アルカリを作用させる温度よりも5℃以上冷却した後にエーテル化剤を作用させる方法が挙げられる。
【0011】
DSが1.0以上のCMCを製造する場合、マーセル化セルロースの調製には40〜49%の高濃度のアルカリが一般的に用いられる。溶解している高濃度のアルカリ溶液は撹拌混合によってセルロース原料内部へ浸透し、均一なマーセル化セルロースが調製される。この時、エーテル化剤を添加する前に温度を5℃以上冷却することにより、セルロース原料内部へ浸透している高濃度のアルカリの一部が不溶化し析出する為、セルロース原料は局所的に不均一にマーセル化した状態となる。その為、エーテル化剤によるエーテル化反応が不均一に進行し、カルボキシメチル基の置換基分布が局所的に不均一なCMCが得られる。斯かるCMCは、未反応水酸基の水素結合により構造粘性を発現し、チキソトロピー性の大きいものとなる。
【0012】
通常溶媒法によるCMCは、先ずアルカリを含む含水有機溶媒でセルロース原料を10℃〜50℃の温度で撹拌混合してマーセル化セルロースを調製し、続いて含水有機溶媒に溶解したエーテル化剤を10〜50℃の温度で少量ずつ添加して撹拌混合を行った後、60〜80℃の温度でエーテル化反応を行うことによって製造される。
【0013】
本発明に於いてマーセル化セルロースを調製する時の温度は、通常のCMCの製造で設定される10℃〜50℃で行えば良く、特に限定はされない。エーテル化剤は、マーセル化セルロースを調製する温度より5℃以上、好ましくは10℃以上冷却した後に添加される。冷却する温度が5℃より小さい場合ではマーセル化の不均一化が不十分となり、目的とするチキソトロピー性の大きいCMCは得られない。
【0014】
本発明に用いるセルロース原料とは、通常CMCの製造に使用されているリンターパルプ、木材パルプなどであれば何れも使用することができ、特に限定されない。
【0015】
含水有機溶媒とは、CMC製造に通常使用されているものであれば特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルケトンなどのケトン類などの親水性有機溶媒、或いはこれらにベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類を混合したものの少なくとも1種と水の混合物が挙げられる。有機溶媒と水との重量比は、80:20〜95:5の範囲が好ましい。
【0016】
アルカリとは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウムなどを使用し得るが、経済的な理由から水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリの添加方法としては、アルカリの全量をエーテル化剤添加の前に全量添加するか、或いは使用アルカリをエーテル化剤添加の前後に分割して添加しても良い。但し、マーセル化を行うときのアルカリの濃度{アルカリの重量/(含水有機溶媒中の水の重量+アルカリの重量)×100}は、マーセル化後の冷却によってアルカリが部分的に不溶化し析出するに十分な高濃度であることが必要であり、好ましくは40〜49%であることが望ましい。
【0017】
エーテル化剤とは、モノクロロ酢酸或いはその中和物、モノクロロ酢酸ナトリウムなどが使用可能である。エーテル化剤の添加量は、DSが1.0以上のCMCを得るに必要な量であれば良く、特に限定はされない。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の実施の形態を実施例により示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0019】
尚、本発明で使用するCMCの品質の評価方法は次の通りである。
(1)DS(置換度)
CMC(無水物)1.0gを精秤し、白金皿に入れて550〜600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムを0.1Nの硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴定量Amlを次式で計算しDS(mol/C6)を求める。
DS={162×A×f}/{10000−80×A×f}
(式中のfは0.1N硫酸の力価)
(2)B型粘度
CMC(無水物)10gを精秤し、1000mlビーカーに入れ、純水990mlを加え、トライアングル撹拌棒を用いて撹拌、溶解し25±0.2℃に液温を調整する。BM型粘度計(東京計器社製)を用いて、回転数30rpmで3分間回転させた後の粘度を読みとる。
(3)チキソトロピー性(PVI値)
CMCの粘度に応じて濃度を調製し、B型粘度測定法により測定した水溶液粘度が10000±500mPa・sのCMC水溶液を調製する。CMC水溶液を25±0.2℃に液温を調整し、回転数6rpm及び60rpmに於ける各粘度を測定し、下式の如く回転数6rpmの粘度に対する回転数60rpmの粘度の商を以てチキソトロピー性とする。この値が小さい程チキソトロピー性が大きい。
チキソトロピー性={粘度(60rpm)/粘度(6rpm)}
【0020】
実施例1
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1604gとメチルアルコール139gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム125.2gを水178gに溶解したものを投入した。温度を30℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、15℃に冷却し、次いでモノクロロ酢酸151.7gをIPA214gと水22gの混合液に溶解したものを加えた。15℃で30分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持した。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0021】
実施例2
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1515gとメチルアルコール132gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム119.7gを水153gに溶解したものを投入した。温度を40℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、20℃に冷却し、次いでモノクロロ酢酸262.5gをIPA373gと水35gの混合液に溶解したものを加えた。20℃で60分間撹拌混合した後、水酸化ナトリウム97.0gを固形状態で添加した。20℃で60分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持する。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0022】
比較例1
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1604gとメチルアルコール139gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム125.2gを水178gに溶解したものを投入した。温度を30℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、モノクロロ酢酸151.7gをIPA214gと水22gの混合液に溶解したものを加えた。30℃で30分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持した。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0023】
比較例2
容量5Lの2軸ニーダーにIPA1515gとメチルアルコール132gを投入した。次いで、水酸化ナトリウム119.7gを水153gに溶解したものを投入した。温度を40℃に保ちながら水分7%のリンターパルプ215gを仕込んだ。60分間撹拌混合した後、モノクロロ酢酸262.5gをIPA373gと水35gの混合液に溶解したものを加えた。40℃で60分間撹拌混合した後、水酸化ナトリウム97.0gを固形状態で添加した。40℃で60分間撹拌混合した後、70℃に昇温してこの温度を60分間保持する。その後冷却して、反応物を72%のメタノールで2回精製し、脱液した後、送風乾燥機で乾燥しCMCを製造した。
【0024】
以上の実施例1〜2及び比較例1〜2の製造条件から得られたCMCの品質を表1に示した。実施例1〜2は本発明に従って得られたCMCである。比較例1〜2は、従来通りマーセル化温度とエーテル化剤添加温度を一定として製造したCMCである。
【0025】
実施例はCMCのDSが1.0以上でありDSの高いものであるが、同等のDSを示す比較例と比較し、PVI値が大幅に低くチキソトロピー性が大きい。
【0026】
【表1】
表1
【0027】
【発明の効果】
本発明では、マーセル化セルロースを5℃以上冷却した後に、エーテル化剤を添加することで、DSが1.0以上であり且つチキソトロピー性が大きいものとなるので、増粘剤、分散剤、保護コロイド、接着剤、石油ボーリング用泥水調整剤、飼料用粘結剤、捺染糊などとして幅広い分野で使用することができる。
Claims (1)
- 含水有機溶媒の存在下で、セルロースにアルカリを作用させた後にエーテル化剤を作用させてカルボキシメチルセルロースアルカリ塩を製造する過程に於いて、アルカリを作用させる温度よりも5℃以上冷却した後にエーテル化剤を作用させることを特徴とするカルボキシメチル基の置換度が1.0以上であり、且つB型粘度計(25℃、スピンドル回転数30rpm)で測定した粘度が10,000mPa・sになるように調製した水溶液のスピンドル回転数60rpmと6rpmの粘度比が0.6以下である揺変性カルボキシメチルセルロースアルカリ塩の製造法。
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