JP3867893B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられ、さらにはトナージェット方式のプリンター等にも用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真式の複写機、プリンター、ファックスなどにおいては、印刷画像品質のさらなる向上、あるいはマシンのコストダウン、小型化、省電力化、省資源化などのために、トナーに対して次のようなニーズが高まっている。
(1)トナーの小粒径化による印刷画像の解像性や階調性の向上、トナー層の薄層化、廃トナー量の削減、ページ当たりのトナー消費量の低減
(2)定着温度の低温度化による消費電力の低減
(3)オイルレス定着化によるマシンの簡素化
(4)フルカラー画像における色相・透明性・光沢の向上
(5)トナーの定着時における有害性VOC(揮発性有機化合物)の低減
等である。
【0003】
古くから行われている粉砕法による粉体トナーにおいても、基本的には小粒径化は可能であるが、小粒径化に伴い、▲1▼トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の離型剤の比率が増大するために帯電制御が難しくなる、▲2▼トナー粒子が不定形のために粉体流動性が悪化する、▲3▼製造に要するエネルギーコストが高騰する、などの問題が生じ、粉砕法によるトナーでは上記のようなニーズを十分に満足することは、実際上困難である。
【0004】
このような背景から、従来から重合法や乳化分散法によるトナー(以下、ケミカルトナーという)の開発が活発に行われてきた。重合法によるトナーに関しては、各種の方法が知られているが、中でも、モノマー、重合開始剤、着色剤および電荷制御剤等を分散安定剤の存在下で水性媒体中に攪拌しながら加えて油滴を形成させ、その後、昇温して重合反応を行ってトナー粒子を得る懸濁重合法が広く知られている。あるいは、乳化重合、懸濁重合により微粒子を形成させ、その微粒子を凝集させ、さらに凝集した微粒子を融着させることによりトナー粒子を得る会合法も提案されている。しかしながらこのような重合法、あるいは重合法により製造された微粒子を用いる会合法では、トナー粒子の小粒径化には問題ないものの、結着樹脂の主成分がラジカル重合可能なビニル重合体に限られていることから、カラートナーなどに好適なポリエステル樹脂やエポキシ樹脂によるトナーを製造することはできない。また、重合法では、VOC(未反応モノマーなどからなる揮発性有機化合物)低減が難しいという問題もあり、その改善が望まれている。
【0005】
一方、乳化分散法によるトナーの製法は、特開平5−66600号公報や特開平8−211655号公報などに開示されているように、結着樹脂と着色剤等の混合物を水性媒体と混合して乳化させてトナー粒子を得るという方法であって、重合法と同様に、トナーの小粒径化や球形化に容易に対応できることに加え、重合法に比べ、▲1▼結着樹脂の種類の選択幅が広くなる、▲2▼残留モノマー低減が容易である、▲3▼着色剤等の濃度を低濃度から高濃度まで任意に変化させることができる、などの利点を有している。
【0006】
ところで、定着温度が比較的低く、また定着時に鋭敏に溶融して画像表面が平滑になりやすいトナー用結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂よりもポリエステル樹脂が好ましく、特にカラートナーについては、可撓性に優れるポリエステル樹脂の方が好ましい。ところが、前述したように重合法では、ポリエステル樹脂を結着樹脂の主成分とするトナー粒子を製造することはできない。そこで、近年では、乳化分散法によってポリエステル樹脂を結着樹脂とする小粒径トナーを製造することが注目されている。
【0007】
しかしながら、前記の乳化分散法によってトナーを製造する各公開公報においては、トナーの定着温度の低温度化や耐オフセット温度領域の広域化等が必ずしも十分に実現されておらず、また、乳化分散法によるトナーの製造方法では、混合溶剤を使用するため溶剤回収、再利用が困難、また、微粒子の発生が不可避であり、また乳化ロス(水溶性樹脂)も生じることからトナーの収率が低下し、生産性が劣るという問題があった。
【0008】
このような課題を解決する製造方法として、たとえば、特開平10−020552号公報、特開平11−007156号公報等(以下、A特許群という)においては、ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用して乳化分散した後、得られた微粒子を凝集させ、さらに加温して融着させることにより会合体を形成し、トナー粒子とする製造方法を提案している。そのような製法によれば超微粒子の発生が無く、したがって乳化ロスが無く、しかも粒度分布がシャープな分級フリーのトナーの製造が可能になると考えられるが、凝集した後に融着させるため、高温で長時間攪拌する必要があり、生産性に問題がある。また、粉砕法のごとき異形の粒子を得るためであればまだしも、球形あるいは略球形の粒子を得ようとすると高温でさらに長時間の処理を要し、やはり生産性に問題がある。
【0009】
また、特開平10−147649号公報、特開平10−319639号公報等(以下、B特許群という)においては結着樹脂を乳化分散した後、前記A特許群とは異なる製造方法により微粒子の凝集体を形成させ、トナー粒子を製造する方法を提案している。すなわち、前記A特許群で記載されている製造方法は、結着樹脂等を水性媒体中に乳化分散した後に、得られた粒子を凝集させる工程を行い、次いで凝集した粒子を加熱して融着させる工程を行うといった2段階の製造工程でトナー粒子を製造する方法であるのに対して、前記B特許群で提案されているトナーの製造方法は、乳化分散により微粒子を製造した後に、該微粒子を凝集させる工程と凝集した微粒子同志を融着させる工程を同時に行うことによりトナー粒子の製造を行う方法である。以下、本発明では、このような乳化分散により製造した微粒子の凝集と融着を1工程で行うトナーの製造方法を「合一」による製造方法と記載し、凝集工程と融着工程の二つの工程を順次行うトナーの製造方法を「会合」による製造方法と記載して両者を区別する。合一による製造方法によれば、簡便に、かつ短時間で球形のトナー粒子を得ることができる。しかしながら、前記B特許群による製法では、▲1▼分散安定剤や電解質を使用せず、高剪断力下での粒子間の衝突により合一を行っているため、合一が不均一となりやすく、凝集物の発生が避けられない。▲2▼高剪断力下で乳化分散を行い、引き続き同条件下で粒子の凝集を行うため、合一とともに解砕が競争的に生じ、そのため微粒子の発生が多くなり、生成するトナー粒子の分布を狭くすることに限界があった。
【0010】
また、これらのA特許群及びB特許群で具体的に示されているポリエステル樹脂においては、低温での定着性能は改善されているものの高温での耐オフセット性に劣り、特に、最近望まれているオイルレス方式のヒートロール定着適正に欠けるものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、乳化ロスが無く、高収率で、しかも粒度分布がシャープなポリエステル樹脂を結着樹脂としたケミカルトナーを製造する新規な製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、簡略でかつ短時間に球形あるいは略球形のケミカルトナーを製造する新規な製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ヒートロール定着方式に用いるトナーとして、オフセット防止液を使用しないで良好な定着/オフセット温度幅を有する、いわゆるオイルレス定着方式に適した新規なケミカルトナーの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、合一によるケミカルトナーの製造方法に着目し、鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決しうる静電荷像現像用トナーの製造方法を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、少なくともポリエステル樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を水性媒体中に乳化させることにより、該水性媒体中に該混合物の微粒子を形成させる第一工程
次いで、分散安定剤を添加し、更に電解質を順次添加することで該微粒子を合一させ該微粒子の凝集体を製造する第二工程
該凝集体中に含有される有機溶剤を脱溶剤した後、水性媒体から該微粒子の凝集体を分離、洗浄し、その後、乾燥させる第三工程
順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明の製造方法においては、ポリエステル樹脂等を含有する混合物を乳化させた分散液に分散安定剤を添加し、その後、電解質を添加することにより合一を安定して行うことができる。更に、乳化ロスが無く、しかも粒度分布がシャープな、ポリエステル樹脂を結着樹脂としたケミカルトナーを簡便かつ短時間で、しかも高収率で得ることができる。特に、先端が0.2〜10m/s、あるいは0.2〜10m/sの周速で回転する攪拌翼を有する製造装置を用いて、低剪断力下で攪拌することにより上記の効果は顕著となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の製造方法は以下の工程からなる。
第一工程:少なくともポリエステル樹脂と有機溶剤とを含む樹脂溶液を水性媒体中に乳化させ微粒子を形成させる工程、
第二工程:前記微粒子を合一させ該微粒子の凝集体を製造する工程、
第三工程:前記凝集体中に含有される有機溶剤を脱溶剤した後、水性媒体から前記微粒子の凝集体を分離・洗浄し、乾燥させ、トナーを製造する工程(本発明におけるトナーとは第三工程で製造される凝集体を乾燥したものを指す)、
の上記3工程からなる。
【0015】
第一工程では、有機溶剤中にポリエステル樹脂を投入して、樹脂を溶解分散することにより(必要に応じ加熱して)ポリエステル樹脂と有機溶剤とを含む混合物を調整する。この場合、トナー用原料として各種着色剤、離型剤または電荷制御剤、あるいはその他の添加物から選択される1種以上をポリエステル樹脂と共に用いることができる。本発明においては、着色剤をポリエステル樹脂と共に有機溶剤中に分散させることが好ましく、更に離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤も同様に溶解あるいは分散させるのが特に好ましい。
【0016】
有機溶剤中にポリエステル樹脂、及び、必要に応じて着色剤、離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤を、溶解あるいは分散させる手段としては、以下の方法を用いることが好ましい。
【0017】
▲1▼上記のポリエステル樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤を含む混合物を加圧ニーダー、加熱2本ロール、2軸押し出し混練機などを用いて、使用するポリエステル樹脂を軟化点以上、且つ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。この時、着色剤等はマスターバッチとして溶融混練してもよい。その後、得られた混練チップをデスパー等の攪拌機により有機溶剤中に溶解、ないし分散して調製する。
あるいは、
▲2▼ポリエステル樹脂と着色剤、離型剤、電荷制御剤等の各種添加剤を有機溶剤と混合し、これをボールミル等により湿式混練する。この場合、着色剤や離型剤等はあらかじめ別々に予備分散を行ってから混合しても良い。
【0018】
上記▲2▼のより具体的な手段としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等のメディアを用いた混合・分散機中に、予め有機溶媒にポリエステル樹脂を溶解した樹脂溶液、及び着色剤や離型剤を加え、攪拌・分散させることによりマスターバッチとし、更に希釈用のポリエステル樹脂、追加の有機溶剤を混合することにより有機溶媒中に着色剤や離型剤等が微分散した樹脂溶液を製造する方法がある。このとき、着色剤や離型剤等を未処理のまま直接ボールミル等の混合・分散機に投入するよりも、あらかじめ、低粘度のポリエステル樹脂と着色剤、あるいは離型剤等を加圧ニーダー、加熱2本ロールで混練・分散してマスターバッチとしたものを用いるのが好ましい。以上のような▲2▼の製法によれば、ポリエステル樹脂の高分子成分(ゲル成分)が切断されないため、溶融混練により分散する▲1▼の方法よりも好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂と必要に応じて添加する着色剤や離型剤等とを溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0020】
次に、ポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物を水性媒体中に乳化する方法としては、ポリエステル樹脂と必要に応じて添加される着色剤等と有機溶剤からなる上記の方法で調整された混合物を、塩基性中和剤の存在下に、水性媒体と混合して乳化するのが好ましい。この工程においては、ポリエステル樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、前記混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。
【0021】
転相乳化においては、有機溶剤と添加した水の合計量に対する水の比率が30〜70%となるように水を添加する。より好ましくは35〜65%であり、特に40〜60%であることが好ましい。使用する水性媒体は水であることが好ましく、さらに好ましくは、脱イオン水である。
【0022】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、酸性基含有ポリエステル樹脂であることが好ましく、該酸性基を中和することにより自己水分散性となるポリエステル樹脂(以下自己水分散性樹脂と表現する)であることが好ましい。本発明で使用する自己水分散性のポリエステル樹脂の酸価は1〜20であることが好ましい。自己水分散性を有する樹脂は、酸性基が塩基性中和剤により中和されることによりアニオン型となる。その結果、樹脂の親水性が増加して水性媒体中に分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散することができる。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基が挙げられるが、中でもカルボキシル基がトナーの帯電特性の面から好ましい。また、中和用の塩基性物質としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのごとき無機塩基が好ましい。ポリエステル樹脂を水性媒体中に分散するためには、懸濁安定剤や、界面活性剤等の分散安定剤を添加する方法があるが、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加して乳化させる方法では高剪断力が必要となる。その結果、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになるため好ましくない。したがって、本発明では自己水分散性樹脂を用い、該樹脂が有する酸性基を塩基性化合物により中和することが好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂の酸性基(カルボキシル基)を塩基で中和する方法としては、例えば、(1)酸性基を有するポリエステル樹脂、着色剤、ワックスおよび有機溶剤を含有する混合物を製造した後、塩基で中和する方法、あるいは(2)水性媒体中に予め塩基性中和剤を混合しておき、転相乳化する際に前記混合物に含まれるポリエステル樹脂の酸性基を中和する方法、が挙げられる。
【0024】
また、転相乳化の方法としては、(A)前記混合物を水性媒体中に加えて乳化する方法、あるいは(B)前記混合物中に水性媒体を添加する方法、が挙げられる。本発明においては、前記の(1)と(B)を組み合わせた方法を採ることにより、粒度分布がシャープとなり、好ましい。
【0025】
転相乳化においては、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)などの高シェア乳化分散機機や連続式乳化分散機等が使用できる。
【0026】
しかしながら、上記の高シェアがかかる分散機を用いるよりも、例えば、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用することが好ましい。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼がさらに好ましい。水性媒体中に前記混合物の微粒子を形成させるための乳化工程(転相乳化工程)における該攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/s未満の低シェアで攪拌しながら水を滴下する方法がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、転相乳化時の分散径が大きくなり好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり、転相が均一に起こらず、粗大粒子が発生する傾向となり好ましくない。また、転相乳化時の温度は、特に制限はないが、温度が高いほど粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。また、低温すぎるとポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、やはり粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。転相乳化時の温度範囲としては10〜40℃が好ましい。さらに好ましくは20〜30℃の範囲である。
【0027】
以上の如く、自己水分散性樹脂を用いて、低シェア下において転相乳化を行うことにより、微粉や粗大粒子の発生を抑えることができ、その結果、次の合一工程において均一な粒度分布の微粒子の凝集体を製造することが容易になる。また、更に、自己水分散性のないポリエステル樹脂を用いた場合や、高シェア下において転相乳化を行った場合には、粗大粒子の発生や樹脂の低分子量成分が微粉を発生させ、トナー粒子の粒度分布を広くし、さらには、低分子量成分を含む粒子が、その後の工程で行われる篩い分け等で除去されてしまい、トナーの低温定着性を悪化させてしまうといった不都合を引き起こすが、自己水分散性樹脂を用いたり、低シェア下において転相乳化を行うことによりそのような不都合が発生しない。
【0028】
第一工程で製造する微粒子の50%体積平均粒径は、1μmを越えて6μm以下、より好ましくは1μmを越えて4μmの範囲である。1μm以下であると着色剤や、離型剤を用いた場合、ポリエステル樹脂により十分カプセル化されないため、帯電特性、現像特性に悪影響を及ぼし好ましくない。また、粒径が大きいと、得られるトナーの粒径が限定されるため、目的とするトナーの粒径よりも小粒径にする必要があるが、6μmよりも大きいと粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、第一工程で製造する微粒子の粒度分布は、10μm以上の体積粒径の比率が2%以下、より好ましくは1%以下であり、5μm以上の体積粒径の比率が10%以下、より好ましくは6%以下である。
【0029】
第二工程では、第一工程で得られた微粒子を合一させることにより該微粒子の凝集体を生成させ、所望の粒径のトナー粒子を形成させる。第二工程では、溶剤量、温度、分散安定剤及び電解質の種類あるいは添加量、攪拌条件等を適宜制御することで、所望の凝集体を得ることができる。
【0030】
乳化重合により微粒子を製造し、その後、微粒子を凝集させた後、温度を上げて融着させることで会合体を製造する方法は良く知られている。本発明の製造方法は、上記のような凝集・融着の2段からなる工程を経て製造される会合体と異なり、凝集と同時に融着工程を含む1段の工程で凝集体を得る製造方法(合一による製造方法)であり、加温せずに、短時間で球形あるいは略球形の粒子を得ることができるという特徴を有している。
【0031】
前記のB特許群においては、結着樹脂を高剪断下で乳化分散した後、引き続き合一によりトナー粒子を製造する方法が提案されている。この製造方法では、高剪断下で、粒子間の衝突による合一と、逆に合一した凝集体が高剪断力により解離・分散する速度とのバランスにより凝集体の粒子径がコントロールされている。また、分散安定剤と電解質の添加方法、タイミングについては開示されておらず、そのため、合一工程における微粒子の発生と粗大粒子の発生を十分抑制することが不可能で、粒度分布のシャープ化、収率の向上においても限界がある。
【0032】
本発明の第二工程では、第一工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し溶剤量を調整する。その後、分散安定剤を添加し、分散安定剤の存在下に電解質の水溶液を滴下することで合一を進め、所定粒径の凝集体を得る。
【0033】
第一工程までで得られる、自己水分散性樹脂から形成された微粒子は、カルボン酸塩による電気二重層の作用により水性媒体中で安定に分散している。本発明の第二工程では、微粒子が分散している水性媒体中に電気二重層を破壊、あるいは縮小させる電解質を添加することで、粒子を不安定化させる。本発明で用いることのできる電解質としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等も電解質として有効に用いることができる。合一させるために添加するこれらの電解質は、単独でも、あるいは2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニュウムのごとき1価のカチオンの硫酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。本発明の製法では、第一工程で得られた微粒子は溶剤により膨潤しており、かつ電解質の添加により粒子の電気二重層が収縮した不安定な状態となっているため、低シェアー(低剪断力)の攪拌による粒子同士の衝突でも容易に合一が進行する。
【0034】
ところで、電解質等の添加だけでは、系内の微粒子の分散安定性が不安定になっているため、合一が不均一となり、粗大粒子や凝集物が発生する。電解質や酸性物質により生成した微粒子の凝集体が、再合一を繰り返して、目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤やイオン性、あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加する必要がある。使用する分散安定剤は、後から添加する電解質の存在下においても分散安定性を保持できる特性が必要である。そのような特性を有する分散安定剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等、あるいは各種プルロニック系等のノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤等がある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があり、好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。以上に記載した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。本発明の製造方法では、分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となり、その結果、シャープな粒度分布が得られ、それに伴い、収率の向上が達成される。
【0035】
また、均一な合一を進める上では、合一時の攪拌条件が重要である。例えば、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、コーンケープ翼、ヘリカル翼、ダブルヘリカル翼、半月翼等から適宜選択して使用される。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼が好ましい。本発明の製造方法では、溶剤により膨潤した微粒子同士が攪拌による衝突により合一して凝集する。そのため、ホモミキサーのようなステーターとローターからなる高剪断装置や、タービン翼のような局所的に高剪断がかかり、全体を均一に攪拌する能力の弱い攪拌翼では合一が不均一となり、粗大粒子の発生につながりやすい。そのため、攪拌条件としては、周速が0.2〜10m/sであることが好ましく、0.2〜8m/s未満がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。周速が10m/sよりも早いと、不均一な合一が発生して粗大粒子が発生しやすくなるので好ましくない。また、0.2m/sよりも遅いと、攪拌シェアが不足するため、やはり不均一な合一が発生し粗大粒子が発生する傾向となるため好ましくない。
【0036】
本発明の製造方法においては、前記のB特許群に記載された発明とは異なり、微粒子同士の衝突のみにより合一が進行し、合一した凝集体が再び解離・分散することはない。そのため、超微粒子の発生が少なく、かつシャープな粒度分布となるため収率の向上が達成できる。
【0037】
本発明の第二工程においては、第一工程で転相乳化により得られた微粒子の分散液を必要に応じて水でさらに希釈することが好ましい。その後、分散安定剤、及び電解質を順次添加して合一を行う。あるいは、分散安定剤及び/又は電解質の水溶液を添加することで分散液中の溶剤量を調整し、所定粒径の粒子を得る手順を採ることが好ましい。電解質を添加した後の系中に含まれる溶剤量としては、5〜25重量%の範囲内であることが好ましい。また、5〜20重量%の範囲内がより好ましく、特に、5〜18重量%の範囲内が好ましい。溶剤量が5重量%よりも少ないと、合一に要する電解質量が多くなり好ましくない。また、溶剤量が25重量%よりも多いと不均一な合一による凝集物発生が多くなり、また、分散安定剤の添加量が多くなるため好ましくない。
【0038】
本発明においては溶剤量を調整することで合一後のトナー粒子の形状をコントロールすることができる。溶剤量が13〜25重量%の範囲では溶剤による微粒子の膨潤度が大きいため、合一により球形〜略球形の粒子を容易に得ることができる。一方、溶剤量を5〜13重量%の範囲にすると溶剤による微粒子の膨潤度が小さいため、異形〜略球形のトナー粒子が容易に得られる。
【0039】
使用する分散安定剤の量は、例えば微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜3.0重量%の範囲内が好ましい。0.5〜2.5重量%の範囲内がより好ましく、1.0〜2.5重量%の範囲内が特に好ましい。0.5重量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得られない。一方、3.0重量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるため好ましくない。
【0040】
また、使用する電解質の量は、微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜15重量%の範囲内であることが好ましい。1〜12重量%の範囲内であることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内であることが特に好ましい。電解質の量が0.5重量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないため好ましくない。また、電解質の量が15重量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるため好ましくない。
【0041】
また、合一時の温度は10〜50℃の範囲内が好ましい。より好ましくは20〜40℃の範囲内であり、20〜35℃であることが特に好ましい。温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるため好ましくない。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。本発明の製法では、たとえば、20〜40℃といった低温の条件で、合一による会合体の生成が可能である。したがって、会合法のように、微粒子を凝集させた後に融着させるために温度を80〜90℃に昇温する必要はない。
【0042】
本発明における第一工程、及び第二工程では本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の実施形態をとることが可能である。中でも、好ましい実施形態としては以下の(1)〜(4)がある。
(1)ポリエステル樹脂と着色剤、必要に応じて離型剤、電荷制御剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、第二工程(合一工程)を行う方法
(2)ポリエステル樹脂と着色剤、必要に応じて離型剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、電荷制御剤の分散液を混合して、第二工程(合一工程)を行う方法
(3)ポリエステル樹脂からなる微粒子を上記の第一工程により製造し、着色剤の分散液、及び、必要に応じて離型剤、電荷制御剤の各分散液の1種以上をそれぞれ別々に用意し、それらを混合した後に第二工程(合一工程)を行う方法
(4)ポリエステル樹脂と離型剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、着色剤の分散液、必要に応じて電荷制御剤の分散液を混合して、第二工程(合一工程)を行う方法
【0043】
ここで用いる着色剤分散液、電荷制御剤分散液、離型剤分散液等の各種分散液は、下記のようにして得ることができる。たとえば、それぞれの物質をポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等で代表されるノニオン系の界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩等で代表されるアニオン系の界面活性剤、あるいは4級アンモニュウム塩で代表されるカチオン系の界面活性剤等と水中に添加して、メディアによる機械的粉砕法により調製できる。あるいは、界面活性剤の代わりに、自己水分散性のポリエステル樹脂を用いて、塩基性中和剤の存在下に同様の分散手段で分散液を調製できる。また、ここで使用する着色剤、離型剤、電荷制御剤は、あらかじめポリエステル樹脂と溶融混練したものを用いてもよい。この場合、樹脂が吸着することで、各種材料が粒子表面に露出する程度が緩和され、帯電特性、現像特性において好ましい特性を与える。
【0044】
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤やその他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤等の含有率(重量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0045】
本発明により製造されるトナー粒子は、着色剤やワックス等が結着樹脂に内包されているのが望ましく、このように内包された構造となることにより、良好な印刷画像が得られる。積極的に着色剤や離型剤の内包を行うためには、前記の(1)、あるいは(2)の方法が好ましい。トナー粒子表面に着色剤やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。また、電荷制御剤をトナー粒子表面に局在化させて、その機能を発現させるためには、(2)の方法が好ましい。
【0046】
第二工程で得られる微粒子の凝集体の形状は、合一の程度により不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。なお、この平均円形度は、微粒子の凝集体を乾燥して得られたトナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することなどによっても求められるが、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000を使用すると容易に得られるため、本発明ではこの装置で測定した値を平均円形度としている。
【0047】
トナー粒子の形状は、平均円形度が0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。
【0048】
第二工程で得られた微粒子の凝集体の分散液は、引き続き脱溶剤を行い、スラリー中から有機溶剤を除去する(第三工程)。次いで、湿式振動ふるいを通すことで樹脂片等のゴミ、粗大粒子を除去し、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で固液分離を行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0049】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
【0050】
本発明の製法で得られるトナーの粒度分布については、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.25以下であること好ましく、より好ましくは1.20以下である。1.25以下であると良好な画像を得られやすく好ましい。また、GSDは1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。なお、GSDは、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、(16%体積粒径/84%体積粒径)の平方根により求められる値である。GSDの値が小さいほど粒度分布がシャープになり、良好な画像が得られる。
【0051】
本発明の製法で得られるトナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μm程度が好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0052】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとが脱水縮合されることによって合成される。
【0053】
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などが挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
【0054】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのごとき脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのごとき脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のごとき芳香族ジオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることもでき、2種以上を併用して用いることもできる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
【0055】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整することができる。このような目的で用いるモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸などが挙げられる。また、モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
【0056】
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを常法に従って縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸とを、温度計、攪拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物を得ることができる。
【0057】
このようなポリエステル樹脂の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩;酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物;テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシド、などが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1重量%の範囲とするのが好ましい。
【0058】
なお、このような縮重合反応において、特に分岐、または架橋ポリエステル樹脂を製造するためには、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸またはその無水物、及び/又は、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを必須の合成原料として用いればよい。
【0059】
ヒートロール定着方式に用いるトナーとして、オフセット防止液を使用しないで良好な定着/オフセット温度幅を有するためには、上記ポリエステル樹脂が、定荷重押し出し形細管式レオメーター(以下、フローテスターという)による測定で以下の範囲となることが好ましい。すなわち、フローテスターによる流出開始温度Tfbが80℃〜120℃の範囲、T1/2 温度が120℃〜160℃の範囲、流出終了温度Tend が130℃〜210℃の範囲である。このようなフローテスター値を有するポリエステル樹脂を用いることにより、本発明の静電荷像現像用トナーは良好なオイルレス定着性を有するようになる。また、ガラス転移温度(Tg)が40〜75℃であることが好ましい。
【0060】
フローテスターによる流出開始温度Tfb、T1/2 温度、流出終了温度Tendは、本発明では島津製作所製フローテスター(CFT−500)を用いて求められている。このフローテスターは、図1(a)に示すようにノズル径Dが1.0mmΦでノズル長さ(深さ)Lが1.0mmのノズル1を有するシリンダー2に、樹脂3(重量1.5g)を充填し、ノズル1と反対の側から単位面積(cm2)当たり10kgの荷重をかけ、その状態で毎分6℃の昇温速度で加熱したときの、荷重面4のストロークS(荷重面4の沈み値)を測定することによって得られる。すなわち、昇温した温度とストロークSとの関係を図1(b)に示すようにして求め、ノズル1からの樹脂3の流出が始まって急激にストロークSが大きくなり、カーブが立ち上がったときの温度をTfbとし、また、ノズル1からの樹脂3の流出がほぼ終了してカーブがねたときの温度をTend とする。そして、TfbのときのストロークSfbとTend のときのストロークSend との中間値となるS1/2 のときの温度を、T1/2 温度としている。
【0061】
この装置を用いた昇温法による測定は、試験時間の経過と共に一定の割合で昇温しながら試験することで、試料が固体域から遷移域、ゴム状弾性域を経て流動域に至るまでの過程を連続的に測定することができる。この装置により、流動域における各温度のせん断速度、粘度が簡便に測定できる。
【0062】
流出開始温度Tfbは、ポリエステル樹脂のシャープメルト性、低温定着性の指標となるもので、あまり高温であると低温定着性が悪化し、コールドオフセットが発生しやすくなる。また、あまり低温であると保存安定性が低下し、ホットオフセットが発生しやすくなる。したがって、本発明の静電荷像現像用トナーの流出開始温度Tfbは90℃〜115℃であることがより好ましく、90〜110℃であることが特に好ましい。
【0063】
また、1/2法によるトナーの溶融温度T1/2及び流出終了温度Tend は、耐ホットオフセット性の指標となるもので、いずれもがあまり高温すぎると、溶液粘度が高くなるため粒子形成時の粒度分布が劣化する。また、いずれもが低温すぎるとオフセットが発生しやすくなり、実用性が低下する。そのため、1/2法による溶融温度T1/2は120℃〜160℃であることが必要であり、130〜160℃であることがより好ましく、流出終了温度Tendは130℃〜210℃が好ましく、130℃〜180℃がより好ましい。Tfb、T1/2、Tendを上記範囲内とすることで幅広い温度範囲で定着が可能となる。
【0064】
また、前述したポリエステル樹脂としては、架橋ポリエステル樹脂を含有し、該結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が0.1〜20重量%の範囲、さらに好ましくは、0.2〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.2〜6重量%の範囲であり、このように結着樹脂をテトラヒドロフラン不溶分が0.1〜20重量%のポリエステル樹脂とすることにより、良好な耐ホットオフセット性を確保することができ、好ましい。0.1重量%よりも少ないと、耐ホットオフセット改善効果が不足するため好ましくない。20重量%よりも多いと溶液粘度が高くなりすぎ、定着開始温度が高くなり、定着性のバランスがくずれるため、好ましくない。また、シャープメルト性が損なわれるため、カラー画像における透明性、色再現性、光沢が劣るため好ましくない。
【0065】
ここで、上記の、結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分については、樹脂1gを精秤し、テトラヒドロフラン40ml中に加えて完全に溶解し、桐山濾紙(No.3)を置いたロート(直径40mm)の上にラヂオライト(昭和化学社製 #700)2gを均一に敷いて濾過し、ケーキをアルミシャーレ上にあけて、その後140℃で1時間乾燥し、乾燥重量を測定する。そして、最初の樹脂サンプル量で乾燥重量中の残存樹脂量を割った値を百分率で算出し、この値を上記不溶分とする。
【0066】
また、結着樹脂としては、高粘性の架橋ポリエステル樹脂と低粘性の分岐型、あるいは直鎖型ポリエステル樹脂を含有しているのがより好ましい。すなわち、本発明のポリエステル樹脂においては、結着樹脂を1種類のポリエステル樹脂によって構成してもよいが、一般的に高分子量で高粘性となる架橋型のポリエステル樹脂(架橋ポリエステル樹脂)と、低分子量で低粘性となる分岐型、あるいは直鎖型ポリエステル樹脂とをブレンドして用いることが、樹脂の製造上も、また良好な定着開始温度及び耐ホットオフセット性を得るためにも実際的であり好ましい。ブレンドして用いる場合には、ブレンドした樹脂のフローテスター値が上記数値範囲に入ればよい。本発明では、架橋ポリエステル樹脂はテトラヒドロフランに不溶な成分を有する樹脂を示し、分岐型、あるいは直鎖型ポリエステル樹脂は、上記ゲル分の測定でゲル分がなく、テトラヒドロフランに溶解する樹脂を示す。
【0067】
本発明では、結着樹脂として溶融粘度の異なる複数のポリエステル樹脂を用いることができるが、たとえば、低粘性の分岐型あるいは直鎖型ポリエステル樹脂と高粘性の架橋ポリエステル樹脂との混合物を用いる場合、以下に示すような条件の分岐型あるいは直鎖状ポリエステル樹脂(A)と架橋型あるいは分岐型のポリエステル樹脂(B)との混合物とするのがより好ましい。この時、ブレンドした樹脂のフローテスター値は上記数値範囲内に入る様、樹脂(A)、樹脂(B)の溶融粘度及び配合量を適宜調節する。
【0068】
すなわち、ポリエステル樹脂(A)としてフローテスターによるT1/2 温度が80℃以上、120℃未満であり、ガラス転移温度Tgが40℃〜70℃の分岐型あるいは直鎖状ポリエステル樹脂、またポリエステル樹脂(B)として、フローテスターによるT1/2 温度が120℃以上、210℃以下であり、ガラス転移温度Tgが50〜75℃の架橋型あるいは分岐型のポリエステル樹脂、さらに、これらポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との重量比率が、
(A)/(B)=20/80〜80/20であり、
また、T1/2 温度をそれぞれT1/2 (A)、T1/2 (B)としたとき、
20℃<T1/2 (B)−T1/2 (A)<100℃
の関係にあるものが好ましく用いられる。
【0069】
フローテスターによる各温度特性を考えると、樹脂(A)の1/2法による溶融温度T1/2(A)はシャープメルト性、低温定着性を付与するための指標となるもので、T1/2(A)が80〜115℃の範囲であることがより好ましく、90〜110℃の範囲であることが特に好ましい。
【0070】
これらの性能により規定される樹脂(A)は軟化温度が低く、ヒートロールによる定着プロセスにおいて、ヒートロールの低温化、或いはプロセス速度の高速化により、与えられる熱エネルギーが減少した場合でも、十分に溶融し、耐コールドオフセット及び低温定着性に優れた性能を発揮する。
【0071】
樹脂(B)の1/2法による溶融温度T1/2(B)及び流出終了温度Tend(B)がともに低すぎる場合には、ホットオフセットが発生しやすくなり、また、高すぎる場合には粒子形成時の粒度分布が悪化して生産性が低下するため、T1/2(B)は125℃〜210℃であることがより好ましく、130℃〜200℃であることが特に好ましい。
【0072】
これらの性能により規定される樹脂(B)は、ゴム弾性傾向が強く、かつ高い溶融粘度を持つため、定着プロセスにおける加熱溶融時でも溶融したトナー層の内部凝集力が維持され、ホットオフセットが発生しにくく、かつ定着後もその強靱さから優れた耐摩擦性を発揮する。
【0073】
樹脂(A)と樹脂(B)をバランス良く配合することで、広い温度領域における耐オフセット性能と低温定着性能を十分に満足するトナーが提供できる。
【0074】
樹脂(A)と樹脂(B)の重量比率(A)/(B)が小さすぎる場合には定着性に影響を及ぼし、また、大きすぎる場合には耐オフセット性に影響を及ぼすため、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることが更に好ましい。
【0075】
また、樹脂(A)と樹脂(B)との1/2法による溶融温度をそれぞれT1/2(A)、T1/2(B)としたときに、低温定着性と耐オフセット性の両立の観点から、また、樹脂間の粘度の差からくる問題を生じることなく均一に混合しやすくためには、T1/2(B)−T1/2(A)の範囲は20℃を越え、90℃以下であることがより好ましく、20を越え80℃以下であることが特に好ましい。
【0076】
本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、本発明においては島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用いて、セカンドラン法で毎分10℃の昇温速度で測定し、得られる値である。
【0077】
ポリエステル樹脂(A)のTgが40℃未満、あるいはポリエステル樹脂(B)のTgが50℃未満であると、得られるトナーが貯蔵中または現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすくなり好ましくない。一方、ポリエステル樹脂(A)のTgが70℃を越えると、あるいはポリエステル樹脂(B)のTgが75℃を越えると、トナーの定着温度が高くなり好ましくない。このように、結着樹脂となるポリエステル樹脂として、上記の関係にあるポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を用いることにより、得られるトナーはより良好な定着性を有するようになり、好ましい。
【0078】
さらに、ポリエステル樹脂からなる結着樹脂としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、▲1▼重量平均分子量が3万以上、好ましくは37,000以上、▲2▼重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が12以上、好ましくは15以上、▲3▼分子量60万以上の成分の面積比率が全体の0.3%以上、好ましくは0.5%以上、▲4▼分子量1万以下の成分の面積比率が20〜80%、好ましくは30〜70%、の条件を満たすことが良好な定着性を得るうえで好ましい。複数の樹脂をブレンドする場合には、最終的な樹脂混合物のGPC測定結果が上記数値範囲内に入ればよい。
【0079】
本発明の製造方法に用いられるポリエステル樹脂において、分子量60万以上の高分子量成分は耐ホットオフセット性を確保する機能を有している。一方、分子量が1万以下の低分子量成分は樹脂の溶融粘度を下げ、シャープメルト性を発現させ定着開始温度を低下するために効果的であり、分子量1万以下の樹脂成分を含有することが好ましい。オイルレス定着方式における低温定着、耐ホットオフセット性、透明性等の良好な熱特性を得るには、結着樹脂がこのようにブロードな分子量分布を有することが好ましい。
【0080】
ここで、結着樹脂のTHF可溶分の分子量は、THF可溶物を0.2μmのフィルターで濾過した後、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム「TSKgel SuperHM−M」(15cm)を3本使用し、THF溶媒(流速0.6ml/min、温度40℃)で測定し、単分散ポリスチレン標準試料で作成した分子量校正曲線を使用することにより分子量を算出したものである。
【0081】
また、ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するのに必要なKOHのmg数)は、▲1▼上記のような分子量分布を得やすいこと、▲2▼乳化分散による微粒子の造粒性を確保しやすいこと、▲3▼得られるトナーの環境安定性(温度・湿度が変化したときの帯電性の安定性)を良好なものに保ちやすいこと、などから、1〜20mgKOH/gの範囲が好ましい。なお、ポリエステル樹脂の酸価は、前述したように多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加える以外にも、原料の多塩基酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは、多塩基酸成分として無水トリメリット酸を使用することにより、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものを形成することができる。
【0082】
本発明の製造方法では、離型剤を用いることができる。その場合に離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類の群の中から選ばれた離型剤が用いられる。中でも、カルナバワックス、ライスワックス等の天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス類が好適に用いられる。合成エステルワックスとしては、例えば、WEP-5(日本油脂社製)が好適に用いられる。離型剤の含有量は、1重量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40重量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるため、1〜40重量%の範囲内が好ましい。
【0083】
本発明の製造方法では、電荷制御剤を用いることができる。正帯電性電荷制御剤としては、特に限定はなく、トナー用として公知慣用のニグロシン染料、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物等が使用できる。また、アミノ基、イミノ基、N−ヘテロ環などの塩基性基含有化合物、例えば3級アミノ基含有スチレンアクリル樹脂なども正帯電性電荷制御剤としての効果があり、本発明の正帯電性電荷制御剤として、単独で、あるいは前記正帯電性電荷制御剤と併用して用いることができる。また、用途によっては、これら正帯電性電荷制御剤にアゾ染料金属錯体やサリチル酸誘導体金属錯塩などの負電荷制御剤を少量併用することも可能である。また、負帯電性電荷制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフエノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基および/またはスルホニル基を含有する樹脂、等が挙げられる。
【0084】
電荷制御剤の含有量は0.01〜10重量%であることが好ましい。特に0.1〜6重量%であることが好ましい。
【0085】
本発明の製造方法に使用される着色剤については、特に制限はなく、公知慣用のものが用いられるが、特に顔料が好適に用いられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。また、下記の有彩色顔料を黒色となるように配合したものを使用することもできる。
【0086】
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ハンザイエロー5G、ハンザイエローG、ハンザイエローGR、ハンザイエローA、ハンザイエローRN、ハンザイエローR、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、パーマネントイエローNCG、バルカンファーストイエロー5G、バルカンファーストイエローR、キノリンイエローレーキ、アンスラゲンイエロー6GL、パーマネントイエローFGL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリミジンイエロー、その他イソインドリノンイエロー、クロモフタルイエロー、ノボパームイエローH2G、縮合アゾイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー等が挙げられる。
【0087】
赤色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、パーマネントレッドBL、パーマネントレッドF5RK、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、パーマネントカーミンFBB、ベリノンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、アンスアンスロンオレンジ、ピランスロンオレンジ、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド等が挙げられる。
【0088】
青色顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ファナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーRS、インダスレンブルーBC、インジコ等が挙げられる。
【0089】
これら着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部当たり1〜50重量部の範囲が好ましく、2〜15重量部の範囲が特に好ましい。
【0090】
乾燥させたトナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加するのが好ましい。疎水性シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性等の物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカ等が好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α―メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイル等で処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
【0091】
上記のトナー粒子にキャリアを混合することによって、静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤は、本発明の製造方法により製造されたトナーと、磁性キャリア、好ましくは表面に樹脂被覆した磁性キャリアとからなる。
【0092】
静電荷像現像剤に用いられるキャリアのコア剤(磁性キャリア)は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライト等が使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜200μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜110μmが好ましい。
【0093】
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。
【0094】
これらの中でも、特にシリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。また、トナー粒子とキャリアからなる現像剤の帯電特性は、シリコン等のコート剤のコート量の調整、電荷制御剤の添加、カーボンに代表される導電物質の添加等により調整できる。つまり本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであり、場合により、コート在中に電荷制御剤、カーボン等を添加して帯電特性を調整することが好ましい。
【0095】
キャリア芯材表面への樹脂の被覆方法は特に手段を選ぶものではないが、被覆樹脂の溶液中に浸漬する浸漬法、被覆樹脂溶液をキャリア芯材表面へ噴霧するスプレー法、あるいはキャリアを流動エアーにより浮遊させた状態で噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被覆樹脂溶液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法などが挙げられる。
【0096】
被覆樹脂溶液中に使用される溶剤は被覆樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が使用できる。キャリア表面への被覆層の厚さは、通常0.1〜3.0μmである。
【0097】
樹脂被覆キャリアは、必要に応じて加熱処理されることが好ましい。特に架橋成分を含む樹脂で被覆した場合、熱架橋反応により皮膜が強化されて、より耐久性に優れたキャリアとなり好ましい。
【0098】
また、加熱処理をすると、その温度条件によりトナーと混合した時の帯電量をコントロール出来る。一般に、加熱温度が高い程、帯電量は高くなる傾向にある。通常、加熱処理は、100℃〜300℃の温度で10分〜5時間行われる。
【0099】
そして、加熱処理後は、キャリア同士が固着している場合があるので、ストレスをかけてキャリア粒子をほぐすこともある。
【0100】
シリコーンオイルで処理された疎水性シリカと、樹脂被覆磁性キャリアとの重量割合は特に制限されるものではないが、通常キャリア100重量部当たり、トナー粒子1〜5重量部である。1重量部よりも少ないと、摩擦帯電は有利になるため、帯電量は高くなり、異帯電粒子数も減少するが、転写量が少なくなり、好ましくない。また、5重量%よりも多くなると摩擦帯電が不十分となり、帯電の立ち上がりの低下、異帯電粒子の増加等の傾向が見られるようになるため好ましくない。
【0101】
また、本発明の製造方法により製造されたトナーは、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは二成分現像方式の印刷装置、磁性一成分現像方式の印刷装置等に使用できる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置等を用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量等を調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンター等にも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルム等の転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
【0102】
ここで使用されるヒートロールは、オフセット防止液を使用しないことが好ましい。また、ヒートロールの離型層がテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含むことが好ましい。オフセット防止液を使用すると、メンテナンスの問題に加えて、印刷紙やOHPシートにシリコーンオイル等が移行するために、印刷後の書き込みに支障を生じたり、オイルのベトつきなどという問題が発生するため、オフセット防止液を使用しないことが好ましい。また、ヒートロールの離型層がテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含むことにより、定着ロールの疲労劣化が防止され、定着装置自体の寿命を長くすることができる。また、離型性が高いため、オフセット防止液を使用しなくともオフセットを起こさず、良好な定着が可能となる。
【0103】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は重量部、水は脱イオン水の意である。
【0104】
(ポリエステル樹脂合成例)
多価カルボン酸として無水トリメリット酸(TMA)、2価カルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、芳香族ジオールとしてポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−PO)、ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−EO)、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール(EG)を、表1に示す各モル組成比で用い、重合触媒としてテトラブチルチタネートを全モノマー量に対し0.3重量%でセパラブルフレスコに仕込み、該フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて220℃で15時間反応させた後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応は、ASTM・E28-517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が所定の温度となったところで真空を停止して反応を終了した。合成した樹脂の組成および物性値(特性値)を表1に示す。
【0105】
【表1】
Figure 0003867893
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
TMA;無水トリメリット酸
TPA;テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
BPA−PO;ポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BPA−EO;ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
EG;エチレングリコール
BA:安息香酸
TMP;トリメチロールプロパン
FT値;フローテスター値
【0106】
表1において「T1/2温度」は、前述したように島津製作所製フローテスタ(CFT−500)を用いて、ノズル径1.0mmΦ×1.0mm、単位面積(cm2 )当たりの荷重10kg、毎分6℃の昇温速度で測定した値である。また、ガラス転移温度である「Tg」(℃)は 、島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した値である。
【0107】
(離型剤分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)50部とポリエステル樹脂(表1中R1)50部とを加圧ニーダーで混練後、該混練物とメチルエチルケトン185部とをボールミルに仕込み、6時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20重量%に調整し、離型剤の微分散液(W1)を得た。同様の方法でポリエステル樹脂R2を用いて離型剤の分散液(W2)を得た。
【0108】
(着色剤マスターチップの調製、及び着色剤分散液の調製例)
表2の配合にてカーボンブラックとカラー顔料を樹脂と50/50の重量比率で混練し着色剤マスターチップP1〜P5を作製した。カーボンブラックと樹脂は加圧ニーダーを用いて混練した。また、カラー顔料と樹脂は二本ロールで混練した。得られた混練物P2〜P4は固形分含有量が40重量%となるようにメチルエチルケトンとともにボールミル中に仕込み、36時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20重量%に調整し、P2〜P4の着色剤分散液とした。
【0109】
【表2】
Figure 0003867893
表2に示した着色剤は以下の通りである。
カーボン:「ELFTEX−8」(キャボット社製)
シアン顔料:ファーストゲンブルー TGR(大日本インキ化学工業社製)
イエロー顔料:シムラーファーストイエロー 8GR(大日本インキ化学工業社製)
マゼンタ顔料:ファーストゲンスーパーマゼンタ R(大日本インキ化学工業社製)
【0110】
(湿式混練ミルベースの調製)
上記離型剤分散液、着色剤分散液、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンをデスパーで混合し、固形分含有量を55%に調整してミルベース(MB1〜MB5)を作製した。作製したミルベースの配合を表3に示す。
【0111】
【表3】
Figure 0003867893
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
【0112】
表3で使用したブレンド樹脂の特性を表4に示した。樹脂のブレンドは200メッシュを通過した樹脂粒子を上記重量比でブレンドして各物性値を測定した。
【0113】
【表4】
Figure 0003867893
【0114】
(実施例1)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を545.5部、1規定アンモニア水23.8部を加えて、スリーワンモーターにより350rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調製した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は1.19m/sであった。次に、脱イオン水333部を加えて溶剤量を調整した。
【0115】
次いで、ノニオン型乳化剤であるエパン450(第一工業製薬社製)の4.1部を水に希釈して添加した後、温度を30℃に、また回転数を250rpmに調整し、3%の硫酸アンモニュウムの水溶液410部を滴下して、分散液中の溶剤量を15.5重量%とした。その後、同条件で5分間攪拌を続け合一操作を終了した。この時の攪拌翼の周速は0.85m/sであった。得られたスラリーは、遠心分離機で固液分離、洗浄を行い、その後、真空乾燥機で乾燥を行い、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0116】
(実施例2)
実施例1における5分間の合一操作を70分間とする以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0117】
(実施例3)
ノニオン型乳化剤を水に希釈して添加した後の攪拌装置を「T.K.ロボミクス」(特殊機化工業製ホモミクサー)に変更し、回転数を8000rpmに調整して、合一操作を20分間とする以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。この時の攪拌翼の周速は12.56m/sであった。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0118】
(実施例4)
実施例2におけるMB1をMB2とする以外は、実施例2と同様にしてトナー粒子を製造した。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0119】
(実施例5)
実施例2におけるMB1をMB3とする以外は、実施例2と同様にしてトナー粒子を製造した。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0120】
(実施例6)
実施例2におけるMB1をMB4とする以外は、実施例2と同様にしてトナー粒子を製造した。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0121】
(実施例7)
実施例2におけるMB1をMB5とする以外は、実施例2と同様にしてトナー粒子を製造した。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0122】
(実施例8)
実施例2におけるMB1をMB6とする以外は、実施例2と同様にしてトナー粒子を製造した。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0123】
(比較例1)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を545.5部、1規定アンモニア水23.8部を加えて、スリーワンモーターにより350rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調製した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は1.19m/sであった。次に、脱イオン水500部を加えて溶剤量を調整した。
【0124】
次いで、乳化剤(分散安定剤)を添加せずに、温度を30℃に、また回転数を250rpmに調整し、3%の硫酸アンモニュウム水溶液410部を滴下して溶剤量を15.5重量%としたところ、滴下途中で微粒子全体が凝集し、粒子を取り出すことはできなかった。
【0125】
(比較例2)
実施例3において用いたノニオン型乳化剤及び硫酸アンモニュウムの水溶液を用いない以外は、実施例3と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0126】
(比較例3)
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を545.5部、1規定アンモニア水23.8部を加えて、スリーワンモーターにより350rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調整した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。この時の攪拌翼の周速は1.19m/sであった。次に、脱イオン水200部を加えた後、固形分含有量が40%となるまで、減圧下に有機溶剤を除去した。この時の溶剤量は1%以下となっていた。次いで、この分散液を希釈して固形分含有量を15%に調整した。
【0127】
同様の攪拌装置及びフラスコに上記分散液1000部を仕込み、温度を30℃に、回転数を250rpmに調整した後、ノニオン型乳化剤であるNL−250(第一工業製薬社製)0.75部を水に希釈して添加し、その後10%の硫酸アンモニュウム水溶液を150部添加した。
【0128】
この時点で、凝集した微粒子をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、球形あるいは略球形の微粒子同志がその表面で接触して凝集している様子が観察された。微粒子同志が融着して一体化している様子は見られなかった。また、サンプリングした凝集粒子を水で洗浄すると個々の微粒子がバラバラになり凝集体がほぐれる様子が観察された。したがって、この時点における微粒子の凝集体は微粒子の会合体であって、本発明の製造方法における合一による凝集体ではないことが判る。
【0129】
その後、温度を10℃/minで昇温し、80で2時間攪拌をした後、NL−250(第一工業製薬社製)1.5部を水に希釈して添加しさらに温度を90℃に上げて7時間攪拌を続け、凝集・融着操作を終了した。この時の攪拌翼の周速は0.85m/sであった。得られたスラリーは、遠心分離機で固液分離、洗浄を行い、その後、真空乾燥機で乾燥を行い、トナー粒子を得た。このように本比較例のトナー粒子は高温での長時間処理を行うことにより製造したトナー粒子である。得られたトナー粒子の特性を表5、6に示す。
【0130】
【表5】
Figure 0003867893
【0131】
【表6】
Figure 0003867893
【0132】
表6の粒径・粒度分布は、コールターベックマン社のコールターマルチサイザーIIの100ミクロンアパーチャーチューブを用いて測定した。Dv50は50%体積平均径であり、Dv50/Dn50は体積、及び個数の50%平均径の比である。また、GSDは、84%体積平均径を16%体積平均径で割った値の平方根である。円形度分布は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP―1000を用いて測定した。また、収率は、得られたトナー粒子の分散液を脱溶剤した後、530メッシュのふるいに通し、下記式で求めた値で、90−100%のものを○、80−90%のものを△、60%以下を×とした。
【0133】
収率(%)={(仕込んだミルベースの固形分量)−(ふるい上残さの固形分量)}×100 / (仕込んだミルベースの固形分量)
【0134】
【表7】
Figure 0003867893
【0135】
ヘンシェルミキサーを用いて、各実施例及び各比較例のトナー粒子100部に疎水性シリカ(クラリアント(株)社製H−2018)0.5部と酸化チタン(テイカ(株)社製JMT−150AO)0.5部とを外添し、静電荷像現像用トナー(以下、粉体トナーと記す)を得た。得られた粉体トナーの熱特性、画像特性について、下記の評価方法により評価し、測定結果を表7に示した。
【0136】
定着温度幅については、以下に示す定着性試験によって定着温度を求めその上限値と下限値との範囲によって示した。
【0137】
(定着性試験)
各実施例および各比較例で製造されたトナー粒子を用いた各粉体トナーを用い、市販の非磁性二成分現像方式による複写機で未定着のテストパターンを現像した。この印刷紙を90mm/秒のスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロール(上部ヒートロール表面をテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で被覆したものを用いた)に通して定着を行い、定着後の画像にセロテープを貼り、剥離後のID(画像濃度)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生が見られないときのヒートロールの表面温度を「定着温度」とした。表7に示した結果より、本発明の実施例のものは、オイル塗布を行わないオイルレス定着条件下で、定着開始温度、耐ホットオフセット温度ともに良好であることが確認された。
【0138】
(画出し試験)
また、各粉体トナーについて、市販の非磁性二成分現像方式による複写機及び非磁性一成分プリンターを用いて画出しを行った。得られた画像のかぶり、階調性、解像性について評価を行い、良好なものを○、やや劣るものを△、劣るものを×として示した。
【0139】
(OHP鮮明度(カラー透明性)の評価方法)
OHPシート上に実施例4〜実施例6のトナー粒子を用いたカラートナーによる未定着画像を形成し、別に用意した定着試験器により未定着画像の定着を行った。ヒートロール温度160℃、90mm/秒のスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型:テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で被覆)に通して定着を行った。上記手順で作成したOHPシート上に、クロで印刷されたOHPシートを置き、オーバーヘッドプロジェクターにてスクリーンに投影し、文字の鮮明度を目視で評価した。評価結果は、鮮明に文字が見えるものを「○」、文字がぼやけるものを「△」、文字が判別できないものを「×」として表した。
【0140】
(耐熱保存性評価)
また、各粉体トナーについて、50℃×3日間の耐熱ブロッキング性試験を行ったところ、全てのトナーにおいて凝集は見られなかった。
【0141】
各実施例では、短時間で球形の粒子を生産性良く製造できることがわかる。また、いずれの粒子も分布が非常にシャープであることがわかる。また、表7の結果を見ると、いずれもオイルレスの条件下で良好な定着性を示すことがわかる。実施例3は他の実施例に比べると微粒子、及び粗大粒子の発生が多く見られ、分布も若干広くなっている。これはステーターとローターの組み合わせによる高速分散機であるホモミクサー(特殊機化工業製)を用い、高剪断で合一を行ったためで、粒子の解砕による微粒子の発生、及び攪拌の不均一化による粗大粒子の発生が影響したものである。比較例1は乳化剤を用いないため、合一を制御できず、目的とするトナー粒子を得ることができなかった。また、比較例2は乳化剤、電解質を用いずに、高剪断力で合一を行ったものだが、微粒子の発生、粗大粒子の発生が多く、実施例のように、シャープな粒度分布の粒子を得ることはできないことがわかる。また、比較例3は凝集と融着工程の2段からなる粒子の製造方法であるが、融着し、球形化するには高温と多大な時間がかかり、生産性が本発明の実施例に比べ格段に劣ることがわかる。
【0142】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の製造方法によれば、分散安定剤の存在下に、電解質を添加し、合一によりトナー粒子を得るため、乳化ロスがなく、高収率で、しかも粒度分布がシャープなポリエステル樹脂を結着樹脂とするトナー粒子を得ることができる。また、合一によりトナー粒子を得るため、球形あるいは略球形の粒子を加温することなく、短時間で製造可能な、生産性に優れた製造方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フローテスタ値の求め方を説明するための図であり、(a)は測定装置の概要を示す側断面図、(b)は測定値から各フローテスタ値を求める方法を説明するためのグラフである。

Claims (9)

  1. 少なくともポリエステル樹脂と有機溶剤とを含有する混合物を水性媒体中に乳化させることにより、該水性媒体中に該混合物の微粒子を形成させる第一工程
    次いで、分散安定剤を添加し、更に電解質を順次添加することで該微粒子を合一させ該微粒子の凝集体を製造する第二工程
    該凝集体中に含有される有機溶剤を脱溶剤した後、水性媒体から該微粒子の凝集体を分離、洗浄し、その後、乾燥させる第三工程
    順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 前記第二工程を10〜50℃で行う請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 前記電解質を添加した後の系中の溶剤量が5〜25重量%である請求項1又は2のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 先端が0.2〜10m/sの周速で回転する撹拌翼を有する製造装置により前記第一工程を行う請求項1、2又は3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 先端が0.2〜10m/sの周速で回転する撹拌翼を有する製造装置により前記第二工程を行う請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  6. 前記電解質が1価のカチオンを含有する硫酸塩化合物である請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  7. 前記ポリエステル樹脂の定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2温度が120〜160℃の範囲であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が12以上である請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  8. 前記ポリエステル樹脂が定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2温度が異なる複数のポリエステル樹脂を含有する請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  9. 前記混合物が離型剤を含有する請求項1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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