JP3864921B2 - 低合金鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低合金鋼に関し、特に、酸性環境中で優れた耐孔食性を有し、そのために孔食を起点とする応力腐食割れの発生を抑えることができる低合金鋼とその製造方法に関する。より詳しくは、孔食や応力腐食割れに対して大きな抵抗性を有するために過酷な酸性環境での使用に耐え、油井やガス井用のケーシングやチュービング、掘削用のドリルパイプ、ドリルカラーやサッカーロッド、更には、石油プラント用配管等の素材として好適な低合金鋼とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエネルギー事情の逼迫に伴い、これまで敬遠されてきた硫化水素や炭酸ガス等の腐食性のガスを多く含む過酷な酸性環境下にある原油や天然ガスを活用せざるを得ない情勢となってきている。上記酸性環境における原油や天然ガスの掘削、輸送及び貯蔵には、耐孔食性や耐応力腐食割れ性(以下、応力腐食割れをSCCという)を有する鋼が要求される。なお、硫化水素を含む環境中でのSCCは、特に硫化物応力割れ(以下、SSCという)と称される。
【0003】
また、油井やガス井の深井戸化、輸送効率の向上や低コスト化のために、鋼に対して高い強度が要求されている。しかし、一般に高強度鋼ほどSSCは発生し易くなる。このため、高強度鋼には更なる耐SSC性向上が求められている。
【0004】
鋼管をはじめとする各種低合金鋼材に生じる孔食やSCC、SSCを防止するために、従来以下のような検討がなされてきた。
【0005】
孔食や孔食を起点とするSCCの発生防止のために、鋼を高清浄化することが行われてきた。しかし、不純物元素の極低減化やタンディッシュヒーター等の設備を用いた介在物除去の手法には限界があり、更に、製鋼コストのアップをもたらし望ましくない。
【0006】
また、SSCの発生防止のために、▲1▼鋼を高清浄度化する、▲2▼マルテンサイト相を多く含有する組織とする、▲3▼細粒組織とする、▲4▼高温焼戻し熱処理する、等の鋼材の組織を改善することが行われてきた。しかし、鋼中に粗大な非金属介在物が存在する場合にはその介在物を起点として孔食が発生し、この結果、前記孔食を起点とするSSCが誘発されることが少なくない。このため、粗大な非金属介在物を含む鋼の場合には、上記した鋼材の組織改善も必ずしも十分とはいえなかった。
【0007】
特開2001−131698号公報には、Ti系炭窒化物が孔食発生の起点となり、SSCを誘発することが指摘されている。Tiは多くの場合、細粒化や高強度化の目的で低合金鋼に添加されている。上記のTi系炭窒化物はそれ自体は酸環境において不溶性であるが、高い耐食性と高い導電性を有することからマトリックス(素地)と接触して水溶液中に浸漬されるとカソードサイトとして働き、周囲のマトリックスの腐食を促進する。上記公報では、孔食の発生し易さはTi系炭窒化物の大きさに依存することが指摘されており、孔食の発生を抑制する方法として窒素の低減及びタンディッシュヒーターによる介在物浮上除去が提案されている。しかし、この公報で提案された技術をもってしても孔食の発生を十分に防止できるとは言い難く、且つ溶製時のコストアップを免れない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、介在物を起点とする孔食の発生を防止し、それによって孔食を起点とするSSCを誘発することがない、耐孔食性に優れた低合金鋼及びその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の低合金鋼(1)及び(2)と、これらの製造方法(3)及び(4)にある。
【0010】
低合金鋼(1)
質量%で、C:0.2〜0.55%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、S:0.0005〜0.01%、O(酸素):0.0010〜0.01%、Al:0.005〜0.05%、Ca:0.0003〜0.007%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜1%、Nb:0.005〜0.1%を含み、残部はFe及び不純物から成り、不純物中のPが0.03%以下、Nが0.015%以下の化学組成であって、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲にTi及び/又はNbの炭窒化物の外殻を有する長径が7μm以下の複合介在物を0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼。
【0011】
なお、Sの好ましい含有量は、0.0010〜0.01%である。
【0012】
低合金鋼(2)
質量%で、C:0.2〜0.55%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、S:0.0005〜0.01%、O(酸素):0.0010〜0.01%、Al:0.005〜0.05%、Ca:0.0003〜0.007%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜1%、Nb:0.005〜0.1%を含み、更にV:0.03〜0.5%、B:0.0001〜0.005%、Zr:0.005〜0.10%から選択される1種以上を含有し、残部はFe及び不純物から成り、不純物中のPが0.03%以下、Nが0.015%以下の化学組成であって、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲に、Ti、Nb及びZrから選択した1種以上の元素の炭窒化物の外殻を有する長径が7μm以下の複合介在物を0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼。
【0013】
なお、Sの好ましい含有量は、0.0010〜0.01%である。
【0014】
製造方法(3)
上記の低合金鋼(1)にかかる組成を有する鋼を鋳造する際に、1500℃から1000℃までの冷却速度を500℃/分以下とすることを特徴とする、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲にTi及び/又はNbの炭窒化物の外殻を有する長径7μm以下の複合介在物を断面積0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼の製造方法。
【0015】
製造方法(4)
上記の低合金鋼(2)にかかる組成を有する鋼を鋳造する際に、1500℃から1000℃までの冷却速度を500℃/分以下とすることを特徴とする、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲に、Ti、Nb及びZrから選択した1種以上の元素の炭窒化物の外殻を有する長径7μm以下の複合介在物を断面積0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼の製造方法。
【0016】
本明細書において、上記の低合金鋼(1)及び(2)に係る発明をそれぞれ発明(1)及び発明(2)といい、そして、上記の製造方法(3)及び(4)に係る発明をそれぞれ発明(3)及び発明(4)という。なお、発明(1)から発明(4)までを総称して、本発明ということがある。
【0017】
ここで、介在物は、一つの被検試験片の断面から任意に複数の視野を選択し、各視野において観察された介在物の個数と観察された介在物毎の長径(介在物と母材の界面上の異なる2点間を直線で結んだときに得られる線分のうち最大寸法のもの)が測定される。そして、各視野毎に、測定された介在物のうち最大の長径を有する介在物1個を特定し、その特定された介在物の長径を視野数で平均することによって、一つの被検試験片の断面における介在物の「最大長径」を得る。
【0018】
本発明者らは、前記した課題を達成するために、微細な複合介在物の析出による微細分散化の技術について種々検討した。その一つとして、Al−Ca系酸硫化物の核を予め生成させてから、その周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物を析出させることを着想し、数多くの実験を行った。その結果、下記(a)〜(c)の知見を得た。
【0019】
(a)Al−Ca系の酸硫化物はTi、Nb及びZrの吸収核として作用する。したがって、Al−Ca系の酸硫化物を予め生成させると、その周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物が析出して、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲にTi及び/又はNbの炭窒化物の外殻を有する微細な複合介在物(以下、「Al−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物」という。)が数多く析出する。そして、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が析出するときには、Al酸化物等を核とする粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の析出を抑制することができるし、たとえAl酸化物等を核とするTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物が析出しても、それは7μm以下の微細な炭窒化物となる。
【0020】
(b)このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が微細に分散しても、それ自体は耐食性に影響することはない。
【0021】
(c)このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物は、上記の低合金鋼(1)又は(2)にかかる組成を有する鋼を鋳造する際に、1500℃から1000℃までの冷却速度を500℃/分以下とすることによって得られる。このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物の大きさは、長径が最大7μm以下とする必要がある。
【0022】
発明(1)〜(4)は、上記(a)〜(c)の知見に基づいて完成されたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
【0024】
(A)鋼材の化学組成
C:0.2〜0.55%
Cは、焼入れ性を高め、強度を向上させるのに有効な元素であり、0.2%以上含有させる必要がある。しかし、Cの含有量が0.55%を超えると焼割れ感受性が高くなり、更に、靭性も低下する。したがってCの含有量を0.2〜0.55%とした。
【0025】
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸に必要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.05%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が0.5%を超えると靭性や耐SSC性の低下を招く。このため、Siの含有量を0.05〜0.5%とした。好ましい含有量の範囲は0.05〜0.35%である。
【0026】
Mn:0.1〜1%
Mnは、鋼の焼入れ性を高める作用を有する元素であり、この効果を得るためには0.1%以上の含有量が必要である。しかし、Mnの含有量が1%を超えると粒界に偏析して靭性や耐SSC性の低下を招く。したがって、Mnの含有量を0.1〜1%とした。好ましい含有量の範囲は0.1〜0.5%である。
【0027】
S:0.0005〜0.01%
Sは、Ca、Al、O(酸素)とともに微細なAl−Ca系酸硫化物を形成し、これを核としてその周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物を析出させることで、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を析出する。そして、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が結果として、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の生成を抑制する作用を有する。この効果を得るためには0.0005%以上の含有量が必要である。しかし、Sの含有量が0.01%を超えると耐孔食性や耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.0005〜0.01%とした。Sの好ましい含有量は、0.0010〜0.01%である。
【0028】
O(酸素):0.0010〜0.01%
Oは、Ca、Al、Sとともに微細なAl−Ca系酸硫化物を形成し、これを核としてその周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物を析出させることで、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を析出する。そして、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が結果として、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の生成を抑制する作用を有する。この効果を得るためには0.0010%以上の含有量が必要である。しかし、Oの含有量が0.01%を超えると耐孔食性や耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、Oの含有量を0.0010〜0.01%とした。
【0029】
Al:0.005〜0.05%
Alは鋼の脱酸に必要な元素であり、含有量が0.005%未満ではその効果が得難い。一方、0.05%を超えて含有させてもその効果は飽和し、かつ粗大なAl系酸化物が多く生成し靭性の低下を招く。また、Alは、Ca、O、Sとともに微細なAl−Ca系酸硫化物を形成し、これを核としてその周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物を析出させることで、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を析出する。そして、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が結果として、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の生成を抑制する作用を有する。このため、Alの含有量を0.005〜0.05%とした。なお、本明細書でいうAlとはいわゆる「sol.Al(酸可溶Al)」のことを指す。
【0030】
Ca:0.0003〜0.007%
Caは本発明において重要な元素である。Caは、Al、O、Sとともに微細なAl−Ca系酸硫化物を形成し、これを核としてその周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物を析出させることで、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を析出する。そして、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が結果として、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の生成を抑制する作用を有する。そして、耐孔食性や耐SCC性、耐SSC性を向上させる。しかし、Caの含有量が0.0003%未満では添加効果に乏しい。一方、Caを0.007%を超えて含有させるとAl−Ca系酸硫化物自身が粗大化して孔食の起点となる。このため、Caの含有量を0.0003〜0.007%とした。
【0031】
Ti:0.005〜0.05%
Tiは、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲に、鋼中の炭素と窒素を吸収し、炭窒化物の外殻を形成し、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物として析出する。これにより結晶粒微細化や析出強化による高強度化に効果的である。更に、Bを含有させた鋼では、B窒化物の生成を抑制してBによる焼入れ性向上を助長する作用を有する。これらの効果を得るにはTiを0.005%以上含有させる必要がある。一方、Tiの含有量が0.05%を超えると、たとえ上記の範囲のCaを含有させた場合であっても粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物が生成して孔食の起点となる。したがって、Tiの含有量を0.005〜0.05%とした。なお、好ましい含有量の範囲は0.005〜0.03%である。
【0032】
Cr:0.1〜1.5%
Crは焼入れ性を上げるとともに焼戻し軟化抵抗を高めて高温焼戻しを可能にし、耐SSC性を向上させる。この効果はCrの含有量が0.1%以上の場合に得られる。しかし、Crを1.5%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Crの含有量を0.1〜1.5%とした。
【0033】
Mo:0.1〜1%
Moは焼入れ性を向上させるとともに、焼戻し軟化抵抗を高めて高温焼戻しを可能にし、耐SSC性を向上させる。しかし、その含有量が0.1%未満では十分な効果が得られない。一方、Moの含有量が1%を超えると、焼戻し時に針状のMo炭化物が析出して靭性や耐SSC性の低下を招く。したがって、Moの含有量を0.1〜1%とした。
【0034】
Nb:0.005〜0.1%
NbはAl−Ca系酸硫化物の核の周囲に、鋼中の炭素と窒素を吸収して炭窒化物の外殻を形成し、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物として析出する。この複合介在物は、結晶粒の微細化や析出硬化に対して有効に寄与する。しかし、その含有量が0.005%未満では添加効果に乏しい。一方、0.1%を超えて含有させても上記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Nbの含有量を0.005〜0.1%とした。
【0035】
不純物元素としてのP及びNについては、その含有量を下記のとおり規定する。
【0036】
P:0.03%以下
Pは不純物として鋼中に不可避的に存在し、活性溶解して耐孔食性を低めたり、粒界に偏析して靭性や耐SSC性を低下させる。特にその含有量が0.03%を超えると、耐孔食性、靭性や耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.03%以下とした。なお、Pの含有量はできるだけ低くすることが望ましい。
【0037】
N:0.015%以下
Nは不純物として鋼中に不可避的に存在する元素である。その含有量が0.015%を超えると、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物ではなく、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物が生成して孔食の起点となる。したがって、Nの含有量を0.015%以下とした。なお、Nの含有量はできるだけ低くすることが望ましい。
【0038】
上記の化学組成を満たすことによって、(1)の発明に係る低合金鋼の化学組成が得られる。一方、上記の成分元素に加え、必要に応じて以下に述べるVからZrまでの元素のうちから選ばれる1種以上を含むことで、(2)の発明に係る低合金鋼の化学組成が得られる。VからZrまでの元素は、いずれも鋼の強度向上に寄与する。
【0039】
V:0.03〜0.5%
Vは添加しなくてもよい。添加すれば、焼戻し時に微細な炭化物として析出して焼戻し軟化抵抗を高めるので高温焼戻しが可能となり、耐SSC性が改善する。この効果を確実に得るには、Vは0.03%以上の含有量とすることが望ましい。一方、0.5%を超えて含有させても上記の効果は飽和するのでコストが嵩むばかりである。したがって、添加する場合のVの含有量は0.03〜0.5%とするのがよい。
【0040】
B:0.0001〜0.005%
Bは添加しなくてもよい。添加すれば、微量で鋼の焼入れ性を向上させる作用を有する。この効果を確実に得るには、Bは0.0001%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Bの含有量が0.005%を超えると粒界に粗大な炭硼化物が析出して、靭性及び耐SSC性の低下を招く。したがって、添加する場合のBの含有量は0.0001〜0.005%とするのがよい。なお、この場合の含有量を0.0001〜0.003%とすれば一層好ましい。
【0041】
Zr:0.005〜0.10%
Zrは添加しなくてもよい。しかしながら、添加すれば、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲に、鋼中の炭素と窒素を吸収し、炭窒化物の外殻を形成し、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物として析出する。そして、結晶粒微細化や析出強化による高強度化、更にはBによる焼入れ性向上効果を助長する作用を有する。これらの効果を確実に得るには、Zrの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。一方、Zrの含有量が0.10%を超えると、たとえ上記の範囲のCaを含有させた場合であっても粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物が生成して孔食の起点となる。したがって、添加する場合のZrの含有量は0.005〜0.10%とするのがよい。
【0042】
(B)鋼中のAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物
本発明に係る低合金鋼中のAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物は、Al−Ca系酸硫化物を核としてその外殻にTi,Nb及び/又はZrの炭窒化物を析出する。そして、そのAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物は、長径が7μm以下であって、鋼断面0.1mm2 あたり10個以上含まれる必要がある。
【0043】
なお、Al−Ca系酸硫化物は、AlとCa以外の元素の酸硫化物を全体の50%未満含んでもよい。また、Ti、Nb及び/又はZrの炭窒化物は、Ti、Nb、Zr以外の元素の炭窒化物を全体の50%未満含んでもよい。
【0044】
Al酸化物は、凝集粗大化し易く微細分散効果がないため、Ti、Nb及び/又はZrの炭窒化物の生成核になり得るものの、Ti、Nb及び/又はZrの炭窒化物を微細分散させる作用はない。しかし、Al−Ca系酸硫化物は凝集粗大化しにくく微細分散するため、それを核とし、その周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の外殻を形成することで、微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を分散析出させることができる。
【0045】
また、CaはAlよりも酸硫化物生成能が強いため、Al−Ca系酸硫化物は、Al酸化物よりも優先的に生成する。すなわち、Al−Ca系酸硫化物を核としてその周囲にTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の外殻からなる微細なAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が生成した場合には、Al酸化物を核として形成される粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物の生成を抑制する。したがって、耐孔食性が向上する。
【0046】
しかし、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物そのものが粗大であると、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物と同様に孔食の発生起点となる。特に、その長径が7μmを超えると耐孔食性の低下が著しい。したがって、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物の最大長径は7μm以下としなければならない。
【0047】
一方、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物の長径が7μm以下であっても、その数が0.1mm2 あたり10個未満の場合には、Al−Ca系酸硫化物の核が鋼中のTi,Nb及び/又はZrを十分に吸収できない。そして、吸収されなかったTi,Nb及び/又はZrは、Al酸化物等を核として粗大なTi,Nb及び/又はZrの炭窒化物を生成するので、耐孔食性が低下する。したがって、本発明においては、このAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を0.1mm2 あたり10個以上含ませることとした。
【0048】
ここで、介在物は、一つの被検試験片の断面から任意に5つの視野を選択し、各視野において観察された介在物の0.1mm 2 あたりの個数と、観察された介在物毎の長径(介在物と母材の界面上の異なる2点間を直線で結んだときに得られる線分のうち最大寸法のもの)が測定される。そして、各視野毎に、測定された介在物のうち最大の長径を有する介在物1個を特定し、その特定された介在物の長径を5視野数で平均することによって、一つの被検試験片の断面における介在物の「最大長径」を得る。
【0049】
次に、発明(1)及び(2)に係る低合金鋼におけるAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物が前記の条件を満たすようにするには、Al−Ca系の複合酸硫化物によるTi、Nb及びZr吸収の時間を十分に確保する必要がある。このためには、鋳造時の1500〜1000℃における冷却速度を500℃/分以下とすればよい。
【0050】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する12種の低合金鋼を溶製した。
【0051】
【表1】
Figure 0003864921
【0052】
【表2】
Figure 0003864921
【0053】
各鋼種それぞれ150トンの溶鋼を連続鋳造して直径220mmの丸ビレットとした。その際、鋳造時のモールド内の1500℃の溶鋼の温度が凝固して1000℃になるまでの冷却過程のモールド内の水量や鋳片冷却用の水量を制御して1500〜1000℃間の冷却速度を表2に示すように種々変化させた。
【0054】
次いで、鋼H及び鋼Iの各丸ビレットは、1250℃に加熱した後、通常の方法で熱間鍛造と熱間圧延を施し、厚さ15mmの板材とした。
【0055】
鋼A、鋼C及び鋼J〜Mの各丸ビレットは、1250℃に加熱した後、通常の方法で熱間圧延して、直径40mmの丸棒とした。
【0056】
鋼B、鋼D〜G及び鋼Nの各丸ビレットは、1250℃に加熱した後、通常の方法で熱間圧延して、厚さ10mmの継目無鋼管とした。
【0057】
このようにして得た板材、丸棒及び鋼管から厚さ10mm、幅10mm、長さ10mmの寸法の試験片を切出し、熱間圧延方向に垂直に切断した断面が被検面となるように樹脂埋めして鏡面研磨した後、倍率200倍で走査電子顕微鏡観察して介在物を調査した。すなわち、倍率を200倍として走査電子顕微鏡で5視野観察し、それぞれの視野で0.1mm2 あたりに認められた長径が7μm以下のAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物を計数し、その値を5視野で平均した。また、5視野それぞれで観察されたAl−Ca系酸硫化物の炭窒化複合介在物、及びその他の炭窒化物の長径の最大値を5視野で平均し、「最大長径」として測定した。なお、介在物の組成はEDX(エネルギー分散型X線マイクロアナライザー)で分析した。
【0058】
図1に、長径が7μm以下のAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物の典型例を示す。内核の黒色部がAl−Ca系の酸硫化物であり、外殻(黒色部の周囲の白い部分)がTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物である。
【0059】
図2は、上記Al−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物のEDXによる分析箇所を説明する図である。同図に示す合計8箇所についてEDXによる分析を行った。
【0060】
介在物の調査結果を1500〜1000℃間の冷却速度と併せて表2に示す。
【0061】
次いで、前記の板材、丸棒及び鋼管から厚さ3mm、幅10mm、長さ40mmの腐食試験片を採取し、600番エメリー紙で研磨後、脱気した25℃の0.5%酢酸+5%食塩水中に100時間浸漬して、孔食の発生有無を調査した。表2に、この調査結果を併せて示した。
【0062】
表2から、本発明で規定する条件を満たす試験番号1〜7及び14の場合、孔食は生じておらず、良好な耐孔食性を有することが明らかである。これに対して、本発明で規定する条件から外れる試験番号8〜13の場合には、粗大なTi、Nb及び/又はZrの炭窒化物が生成しており、これらが孔食の起点となって耐孔食性が劣っていた。
【0063】
【発明の効果】
本発明の低合金鋼は、介在物を起点とする孔食の発生がなく、したがって、孔食を起点とするSSCを誘発することもないので油井やガス井用のケーシングやチュービング、掘削用のドリルパイプ、ドリルカラーやサッカーロッド、更には、石油プラント用配管等の素材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】長径が7μm以下のAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物の典型例を示す図である。
【図2】長径が7μm以下のAl−Ca系酸硫化物核の炭窒化複合介在物のEDXによる分析箇所を説明する図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.2〜0.55%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、S:0.0005〜0.01%、O(酸素):0.0010〜0.01%、Al:0.005〜0.05%、Ca:0.0003〜0.007%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜1%、Nb:0.005〜0.1%を含み、残部はFe及び不純物から成り、不純物中のPが0.03%以下、Nが0.015%以下の化学組成であって、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲にTi及び/又はNbの炭窒化物の外殻を有する長径が7μm以下の複合介在物を0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼。
  2. 質量%で、C:0.2〜0.55%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、S:0.0005〜0.01%、O(酸素):0.0010〜0.01%、Al:0.005〜0.05%、Ca:0.0003〜0.007%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜1%、Nb:0.005〜0.1%を含み、更にV:0.03〜0.5%、B:0.0001〜0.005%、Zr:0.005〜0.10%から選択される1種以上を含有し、残部はFe及び不純物から成り、不純物中のPが0.03%以下、Nが0.015%以下の化学組成であって、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲に、Ti、Nb及びZrから選択した1種以上の元素の炭窒化物の外殻を有する長径が7μm以下の複合介在物を0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼。
  3. Sが0.0010〜0.01質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の低合金鋼。
  4. 請求項1又は3に記載の化学組成を有する鋼を鋳造する際に、1500℃から1000℃までの冷却速度を500℃/分以下とすることを特徴とする、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲にTi及び/又はNbの炭窒化物の外殻を有する長径7μm以下の複合介在物を断面積0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼の製造方法。
  5. 請求項2又は3に記載の化学組成を有する鋼を鋳造する際に、1500℃から1000℃までの冷却速度を500℃/分以下とすることを特徴とする、Al−Ca系酸硫化物の核の周囲に、Ti、Nb及びZrから選択した1種以上の元素の炭窒化物の外殻を有する長径7μm以下の複合介在物を断面積0.1mm2 あたり10個以上含む低合金鋼の製造方法。
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