JP3861078B2 - 溶剤成分含有排出ガス処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶剤成分を含む排出ガスの発生源を備える工場等における溶剤成分含有排出ガスを燃焼処理するための処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路素子やコンデンサ、インダクタ、抵抗等の電子部品製造工場を典型として、有機溶剤等の溶剤成分を含む排出ガスを排出する発生源を多数備える工場は多い。
【0003】
例えば、上記電子部品製造工場における積層セラミックコンデンサ等で用いられるセラミックシートを製造するための塗工機は、バインダーとセラミックが混合したものがセラミックシート成分となり、溶剤成分は溶剤成分含有排出ガスとして搬送経路(排気ダクト)へ排出される。
【0004】
上記搬送経路に排出された溶剤成分含有排出ガスを高濃度のまま大気に開放することは規制されており、高温度で燃焼させて酸化分解する等の処理をしてから大気開放することが要請される。尤も、燃焼させると新たにCO2が排出されるので、地球温暖化防止の視点からは非効率な燃焼処理は慎むべきである。
【0005】
この点、工場から排出される溶剤成分含有排出ガスについては、その燃焼処理を含めて、環境に対する負荷の軽減という大局的観点から将来的に厳しく規制されることが予想される。
【0006】
図2は、従来の電子部品製造工場における複数の塗工機から排出される溶剤成分含有排出ガスを集めて溶剤成分燃焼装置によって燃焼処理する処理システムを示す模式図である。
【0007】
図2の溶剤成分含有排出ガスの処理システムにおいて、それぞれ排気手段である排気ファンa、b、・・、fを介して排気ダクト(太線)からなる排出ガスの搬送経路1に常時排出ガスを排出するとともに前記排出ガス中に溶剤成分を断続的に放出する複数の排出ガス発生源である塗工機A、B、・・、Fから排出される溶剤成分含有排出ガスは、搬送経路1上の合流点である排気ダクト集約部2で合流した後、通常は、大気開放に通じる大気開放ダンパー3を閉じた状態で且つ溶剤成分燃焼装置10に通じる溶剤成分燃焼装置本管ダンパー4を開いた状態にしておき、当該溶剤成分燃焼装置10に送られて高温度で燃焼処理される。
【0008】
また、前記溶剤成分燃焼装置10が異常の時(不完全燃焼等の非常時)には、前記溶剤成分燃焼装置本管ダンパー4を閉じ、前記大気開放ダンパー3を開いて溶剤成分含有排出ガスを大気開放させることで対処している。
【0009】
前記溶剤成分燃焼装置10としては、例えば図3に示されるように、セラミック蓄熱体5a、5bをそれぞれ備える第1蓄熱室11と第2蓄熱室12及びそれらの上部の着火装置14を備える燃焼室13からなる構造の所謂2塔蓄熱燃焼式の燃焼装置(脱臭装置とも称される)が使用されている。
【0010】
この溶剤成分燃焼装置10の排出ガスの燃焼処理は、セラミック蓄熱体5a、5bを交互に昇温、降温させる熱再生原理を利用した処理であり、先ず、図3のように、第1切替バルブ15を閉じ、第2切替バルブ16を開いて、太矢印の経路のように前記搬送経路1から送られてきた溶剤含有排出ガスが高温になっているセラミック蓄熱体5bのある第2蓄熱室12を上昇通過して予熱され、燃焼室13で着火装置14によって着火・燃焼して溶剤成分が高温度(800〜950℃)で十分に酸化分解され、酸化分解された高温のクリーンガスは第1蓄熱室11を下降してセラミック蓄熱体5aに吸熱され、低温のクリーンガスとして排気ファン17を通して大気開放される。
【0011】
次に、溶剤含有排出ガスの処理量が増えて、前記第2蓄熱室12におけるセラミック蓄熱体5bの温度が下がって通過する排出ガスの予熱が十分でなくなり、燃焼室13における着火・燃焼が不完全な状態に近づくと、図4に示されるように、前記第1切替バルブ15を開、第2切替バルブ16を閉に同時に切り替えて、太矢印のように装置内の排出ガスの流れを逆にし、排出ガスは前に吸熱を続けて高温になっているセラミック蓄熱体5aのある第1蓄熱室11を上昇通過して十分に予熱され、高温の燃焼室13に入って着火装置14によって着火・燃焼して溶剤成分は十分に酸化分解されてクリーンガスとなり、第2蓄熱室12のセラミック蓄熱体5bで吸熱されて低温のクリーンガスとなって排気ファン17を通して大気開放されるのである。
【0012】
このように、上記蓄熱燃焼式の溶剤成分燃焼装置10は、排出ガスに対して予熱、着火・燃焼、吸熱、排気という工程を経るが、処理されるべき排出ガスの溶剤濃度が低い場合には、自己燃焼による予熱機能が低下して十分な着火・燃焼が行われなくなる。そこで、そのような場合には、重油等の補助燃料を使って強制的に燃焼させて予熱することが行われている。
【0013】
なお、溶剤成分含有排出ガスの燃焼による処理方法に関する特許文献として、下記[特許文献1]がある。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−66253号
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の溶剤成分含有排出ガスの燃焼による処理システム或いは処理方法では、環境負荷軽減の観点からは満足な処理方法とは言えないものであった。
【0015】
即ち、図2の複数の塗工機A〜Fから排出される溶剤成分含有排出ガスに対する処理システムの処理方法を例にとれば、塗工機A〜Fはその全てが常に稼動している訳ではなく、一部の塗工機が停止している場合も多い。このような稼動していない塗工機でも、排気ファンa〜fは常に回っていて塗工機内部に在留する排出ガスを搬送経路に常時排出している。この際に停止している塗工機からの排出ガスに含まれる溶剤成分の濃度は停止後漸次低くなる。そして図2から判るように、それぞれの塗工機A〜Fから排出された排出ガスは搬送経路1を介して排気ダクト集約部2で一旦混合して集められてから溶剤成分燃焼装置10に送られているので、一部の塗工機(例えば図2の塗工機B、C、D)が停止して溶剤成分が殆どなくなった排出ガスと、稼動している塗工機A、E、Fから排出される濃度の濃い溶剤成分含有排出ガスとが、排気ダクト集約部2で混合されて全体として溶剤成分が薄くなった排出ガスが大量に溶剤成分燃焼装置10に送られることになる。而して、溶剤成分が薄められた大量の排出ガスの継続的な送り出しは、前記溶剤成分燃焼装置10における予熱が十分に行われにくく、着火・燃焼の維持のために補助燃料を多く使用せざるをえない状態となるのである。
【0016】
この状況は結果的に補助燃料の燃焼による新たなCO2の排出増加を伴うので、工場の環境負荷軽減推進の観点からは好ましい事態ではない。可及的に補助燃料の使用を低減し、効率的に溶剤成分の酸化分解を行ってクリーンガスにすることが肝要なのである。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、溶剤成分を含む排出ガスの発生源を備える工場等における溶剤成分含有排出ガスを効率的に燃焼処理して環境負荷を低減するための処理方法を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するため、
(1)それぞれ排気手段を介して排出ガスの搬送経路に常時排出ガスを排出するとともに前記排出ガス中に溶剤成分を断続的に放出する複数の排出ガス発生源から排出された排出ガスを、前記搬送経路上の合流点で合流した後、前記搬送経路から溶剤成分燃焼装置に送り、燃焼処理する排出ガス処理方法において、
前記複数の排出ガス発生源のうち、前記溶剤成分を放出していない排出ガス発生源から排出される排出ガスは、前記排出ガスの搬送経路上の前記合流点以前で搬送経路を切り替えて大気中へ放出するとともに、溶剤成分を放出している排出ガス発生源から排出される排出ガスは、前記搬送経路上の前記合流点以降に設けた吸気手段を介して前記溶剤成分燃焼装置に送り燃焼処理することを特徴とする溶剤成分含有排出ガス処理方法を提供する。
【0019】
(2)また、上記溶剤成分を排出する排出ガス発生源の数が減少した際に、上記搬送経路上の合流点以降に設けた吸気手段の吸気量を削減することを特徴とする上記(1)に記載の溶剤成分含有排出ガス処理方法を提供する。
【0020】
(3)さらに、上記溶剤成分の燃焼は、蓄熱燃焼式の燃焼装置で行うことを特徴とする上記(1)に記載の溶剤成分含有排出ガス処理方法を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る溶剤成分含有排出ガス処理方法の実施の形態について複数の塗工機を備える電子部品製造工場を例に図面に基づいて説明する。なお、従来の技術である図2の処理システムと同等名称部材については同符号で示す。
【0022】
図1は溶剤成分含有排出ガス発生源である塗工機を複数備える電子部品製造工場における本発明に係る溶剤成分含有排出ガス処理方法を実現する排出ガス処理システムの模式図である。
【0023】
先ず、本発明の溶剤成分含有排出ガス処理方法においては、前提として、それぞれ排気手段を介して排出ガス搬送経路1に常時排出ガスを排出するとともに前記排出ガス中に溶剤成分を断続的に放出する複数の排出ガス発生源である塗工機A〜Fから排出された排出ガスを、前記搬送経路1上の合流点8で合流した後、前記搬送経路1から溶剤成分燃焼装置10に送り、燃焼処理する排出ガス処理方法であって、特に、前記複数の排出ガス発生源の塗工機A〜Fうち、前記溶剤成分を放出していない排出ガス発生源の塗工機B、C、Dから排出される排出ガスは、前記排出ガスの搬送経路1上の前記合流点8以前に各塗工機A〜Fについて設けられている溶剤成分燃焼装置本管ダンパー4b、4c、4dを閉じて大気開放ダンパー3b、3c、3dを開くことで搬送経路1を切り替えて大気中へ放出するとともに、溶剤成分を放出している排出ガス発生源A、E、Fから排出される排出ガスは、前記搬送経路上の前記合流点8以降に設けた吸気手段のブースターファン9を介して前記溶剤成分燃焼装置10に送り、燃焼処理する構成となっている。
【0024】
なお、上記溶剤成分燃焼装置本管ダンパー4b、4c、4dと大気開放ダンパー3b、3c、3dの開閉の切り替えのタイミングは、当該塗工機の稼動停止直後に切り替えてもよいが、停止直後は溶剤成分の在留濃度が未だ高い状態にあると考えられるので、排出ガスの溶剤成分の濃度を検出する手段によって所定濃度より下がった(溶剤成分を放出していない状態と見なせる)時点で切り替えるか、或いは塗工機停止後一定時間経過後(溶剤成分を放出していない状態になったと見なせる時間経過後)に切り替えるといった切り替えタイミングで行うことが好ましい。
【0025】
上記処理システム(図1)と従来の処理システム(図2)とを比較すると明らかなように、従来の処理方法では、塗工機が稼動しているか停止しているかに関わらず排出ガス発生源である全塗工機A〜Fからの排出ガスを常時搬送経路1に排出して全て排気ダクト集約部2で一旦混合して集められてから溶剤成分燃焼装置10に送られている構成であるのに対し、本発明の処理方法では、各塗工機A〜Fの搬送経路1上の前記合流点8以前で搬送経路1を切り替えることができる溶剤成分燃焼装置本管ダンパー4a〜4f及び大気開放ダンパー3a〜3fを備えて、排出ガス発生源である塗工機が稼動中か停止中かによって大気中へ放出するか合流点8で他の塗工機からの排出ガスと混合させて溶剤成分燃焼装置10に送るかを適宜選択するようにして、排出ガスの溶剤成分の濃度が濃い状態を維持しつつ溶剤成分燃焼装置10へ送っている点に特徴を有する。
【0026】
ところで、上記方法による溶剤成分の燃焼処理は、[従来の技術]で説明された蓄熱燃焼式の溶剤成分燃焼装置10を適用することで、効率的な燃焼処理が実現するが、特に、停止した塗工機が増えて上記溶剤成分を排出する排出ガス発生源である稼動している塗工機の数が減少した際に、上記搬送経路1上の合流点8以降に設けた吸気手段であるブースターファン9の吸気量を削減するようにすれば、排出ガスの溶剤成分の濃度を殆ど下げることなく、溶剤成分燃焼装置10における絶対処理量が減少して、装置内部での滞留時間を長くして無駄なく効率的に第1蓄熱室11または第2蓄熱室12における蓄熱体5a、5bによる予熱或いは吸熱が十分に行われるので、補助燃料の使用を抑えることができる。
【0027】
上記溶剤成分燃焼装置10に供給される排気ガス中の溶剤成分濃度を一定以上に維持することで、溶剤成分燃焼装置10の燃焼室13での着火・燃焼を高温度で継続することを可能とし、燃焼維持目的の補助燃料の消費を削減してコストを低減することができるのである。
【0028】
【発明の効果】
本発明に係る溶剤成分含有排出ガス処理方法は、上記のように構成されているため、
(1)複数の排出ガス発生源から各々排出された排出ガスを溶剤成分を放出しているかいないかに応じて搬送経路を燃焼処理または大気開放に個々に切り替えるので、効率的な溶剤成分燃焼装置による燃焼処理ができる。
【0029】
(2)溶剤成分燃焼装置での補助燃料の使用を抑えることができ、CO2の排出が低減して総合的な工場の環境負荷を低減することができる。
【0030】
(3)蓄熱燃焼式の溶剤成分燃焼装置を適用することで、効率的な燃焼処理が実現する。
【0031】
(4)排出ガス発生源の減少に応じて、合流点以降に設けた吸気手段であるブースターファンの吸気量を削減することで、補助燃料の使用をさらに抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶剤成分含有排出ガス発生源である塗工機を複数備える電子部品製造工場における本発明に係る溶剤成分含有排出ガス処理方法を実現する排出ガス処理システムの模式図である。
【図2】従来の電子部品製造工場における複数の塗工機から排出される溶剤成分含有排出ガスを集めて溶剤成分燃焼装置によって燃焼処理する処理システムを示す模式図である。
【図3】2塔蓄熱燃焼式の燃焼装置の内部構造及び処理の仕組み(1サイクル)を説明する図である。
【図4】同2塔蓄熱燃焼式の燃焼装置の処理の仕組み(逆サイクル)を説明する図である。
【符号の説明】
1 搬送経路
2 排気ダクト集約部
3、3a〜3f 大気開放ダンパー
4、4a〜4f 溶剤成分燃焼装置本管ダンパー
5a、5b セラミック蓄熱体
8 合流点
9 ブースターファン
10 溶剤成分燃焼装置
11 第1蓄熱室
12 第2蓄熱室
13 燃焼室
14 着火装置
15 第1切替バルブ
16 第2切替バルブ
17 溶剤成分燃焼装置の排気ファン
a、b、・・、f 排気ファン
A、B、・・、F 塗工機
Claims (3)
- それぞれ排気手段を介して排出ガスの搬送経路に常時排出ガスを排出するとともに前記排出ガス中に溶剤成分を断続的に放出する複数の排出ガス発生源から排出された排出ガスを、前記搬送経路上の合流点で合流した後、前記搬送経路から溶剤成分燃焼装置に送り、燃焼処理する排出ガス処理方法において、
前記複数の排出ガス発生源のうち、前記溶剤成分を放出していない排出ガス発生源から排出される排出ガスは、前記排出ガスの搬送経路上の前記合流点以前で搬送経路を切り替えて大気中へ放出するとともに、溶剤成分を放出している排出ガス発生源から排出される排出ガスは、前記搬送経路上の前記合流点以降に設けた吸気手段を介して前記溶剤成分燃焼装置に送り燃焼処理することを特徴とする溶剤成分含有排出ガス処理方法。 - 上記溶剤成分を排出する排出ガス発生源の数が減少した際に、上記搬送経路上の合流点以降に設けた吸気手段の吸気量を削減することを特徴とする請求項1に記載の溶剤成分含有排出ガス処理方法。
- 上記溶剤成分の燃焼は、蓄熱燃焼式の燃焼装置で行うことを特徴とする請求項1に記載の溶剤成分含有排出ガス処理方法。
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