JP3860803B2 - 人工呼吸器用のガス供給サーボ機構の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工呼吸器に用いられるガス供給サーボ機構の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
患者が自発呼吸を行う場合における吸気期間の人工呼吸器のガス供給サーボ機構(以下単にサーボ機構と称する)の制御方法として、プロポーショナルアシストベンチレーション法(比例支援換気法、Proportional Assist Ventilation、略称PAV法)がある。
【0003】
図24は、従来技術の人工呼吸器1と患者2とを含む全体の系5を示すブロック線図である。PAV法を実現する人工呼吸器1は、サーボ機構3と、サーボ機構3を制御する制御装置4とを含む。制御装置4は、支援ガスの流量を検出して、その検出した流量に基づいて、サーボ機構3の吐出圧力を決定する。
【0004】
制御装置4は、流量ゲインKfaを支援ガスの流量Fに乗算した第1演算値(Kfa・F)と、体積ゲインKvaを患者の肺内に供給される支援ガスの体積Vに乗算した第2演算値(Kva・F/s)とを求め、第1演算値および第2演算値を加算して目標圧力Pinを演算する。なお、流量ゲインKfaは、推定した気道抵抗^Rにアシスト率αを乗算した値であり、体積ゲインKvgは、推定した肺のエラスタンス^Eにアシスト率αを乗算した値である。なお^R=Rでかつ^E=Eである場合のアシスト率αをAとする。
【0005】
制御装置4は、演算した目標圧力Pinをサーボ機構3に与える。目標圧力Pinが与えられたサーボ機構3は、目標圧力Pinに基づいて、支援圧力Pventで支援ガスを吐出する。流量ゲインKfaおよび体積ゲインKvaが適切に設定されることによって、サーボ機構3は、患者の自発呼吸圧力Pmusを比例増幅した支援圧力Pventを与える(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
図25は、従来技術の全体の系5における自発呼吸時の換気量Vmusとアシスト呼吸時の換気量Vastとの関係を示すグラフである。上述したように^R=Rでかつ^E=Eである場合のアシスト率αをAとすると、支援圧力Pventは、自発呼吸圧力Pmusの時間変化に応じて、自発呼吸圧力Pmusの1/(1−A)倍の増幅率で増幅される。これによって人工呼吸器によるアシスト呼吸時の換気量Vastは、自発呼吸時の換気量Vmusの1/(1−A)倍に増幅される。
【0007】
また上述した従来技術では、患者の気道抵抗^Rおよび肺のエラスタンス^Eを精度よく決定したうえで、流量ゲインKfaおよび体積ゲインKfgを決定する必要がある。そこで他の従来の技術として患者の気道抵抗Rおよび肺のエラスタンスEを決定する方法が開示されている(たとえば特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】
特許公報2714288号明細書
【特許文献2】
特表平11−502755号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の全体の系5は、支援圧力Pventと自発呼吸圧力Pmusとを加算した圧力(Pvent+Pmus)で、支援ガスを患者に供給する。したがって正帰還機構を含んでいる。この正帰還機構によって、全体の系が不安定となるおそれがあり、ランナウェイと称されるオーバーアシストを生じる場合がある。
【0010】
たとえばランナウェイは、流量ゲインKfaおよび体積ゲインKvaが適切でない場合、サーボ機構3に遅れがある場合、患者の状態が変動した場合、その他の外乱が与えられた場合などに生じやすい。ランナウェイが生じると、支援ガスの流量は、発散して収束することなく増幅する。これによって患者の肺や気道を破壊するおそれがあり、従来技術では強制的にアシストを停止せざるを得ない場合がある。
【0011】
ランナウェイが生じやすい原因は、従来技術の全体の系5の安定余裕が小さく、過渡応答が不安定となりやすいからである。全体の系5の安定余裕が小さいと、全体の系が少し変動しただけでも、安定限界を超えてしまい、ランナウェイが生じる可能性がある。また全体の系5が不安定にならないように、流量ゲインKfaおよび体積ゲインKvaを設定する必要があり、ゲイン選択の自由度が低く、また適切なゲインを調整するのが困難となるという問題がある。
【0012】
したがって本発明の目的は、人工呼吸器と患者とを含む全体の形における安定余裕を大きくすることができる人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、患者の自発呼吸圧力Pmusに対応する目標圧力Pinに基づいて、酸素を含む支援ガスを、患者の自発呼吸圧力Pmusに対応した支援圧力Pventで、患者の気道に供給する圧力支援式人工呼吸器のガス供給サーボ機構を制御する制御装置であって、
患者の気道に供給された支援ガスの流量Fを検出する流量検出手段と、
患者の呼吸器官をモデル化した呼吸器官モデルを有し、支援圧力Pventで支援ガスを供給した場合に、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定する流量推定手段と、
前記検出された流量Fと前記推定された流量^Fとの流量偏差ΔFを演算する偏差演算手段と、
前記流量偏差ΔFに基づいて前記目標圧力Pinを演算し、その目標圧力Pinを前記サーボ機構に与える制御量演算手段とを含み、
前記流量推定手段は、前記制御量演算手段によって演算される目標圧力Pinに基づいて、患者の気道内の圧力^Pawを演算する気道圧力演算器をさらに有し、
前記呼吸器官モデルは、自発呼吸圧力Pmusが存在しない場合に、肺の弾性復元力によって生じる肺胞圧力^Palvを、気道圧力演算器で演算した気道内の圧力^Pawから減算する比較器と、
比較器によって減算される減算値を、予め設定される推定気道抵抗^Rで除算して、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定する推定流量演算器と、
支援ガス供給開始時刻から推定流量演算器で演算される支援ガスの流量^Fを順次積算して、支援ガス供給開始時刻から患者の気道に供給されるべき支援ガスの体積^Vを演算する支援ガス体積演算器と、
前記演算した支援ガスの体積^Vに、予め設定される肺の推定エラスタンス^Eを乗算して肺胞圧力^Palvを演算し、減算器に与える肺胞圧力演算器とを備えることを特徴とする人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置である。
【0020】
請求項1記載の本発明に従えば、流量検出手段で支援ガスの流量Fを検出するとともに、流量推定手段で流量推定手段によって支援ガスの流量^Fを推定する。検出した支援ガスの流量Fは、患者の自発呼吸圧力Pmusによって変化するが、推定した支援ガスの流量^Fは、患者の自発呼吸圧力Pmusの影響を受けない。したがって偏差演算手段で検出した支援ガスの流量Fと推定した支援ガスの流量^Fとの流量偏差ΔFを求めることによって、患者の自発呼吸圧力Pmusに関する情報を取得することができる。
【0021】
制御量演算手段では、この流量偏差ΔFに基づいて、サーボ機構を制御するための目標圧力Pinを演算する。したがって目標圧力Pinもまた、患者の自発呼吸圧力Pmusに対応した圧力となる。このように演算した目標圧力Pinをサーボ機構に与えることによって、逐次変化する自発呼吸圧力Pmusに対応した支援圧力Pventで、支援ガスを患者の気道に供給することができる。
【0022】
さらに制御量演算手段が、前記流量偏差ΔFに基づいて、目標圧力Pinを演算することによって、検出した支援ガスの流量Fのみに基づいて目標圧力Pinを演算する従来技術に比べて、患者と人工呼吸器とを含む全体の系を正帰還構成になりにくくすることができ、全体の系の安定限界に対する余裕を大きくすることができる。これによって外乱が生じる場合、サーボ機構に時間遅れがある場合、正確に患者の呼吸器官モデルを設定できない場合、患者の状態が変化する場合などであっても、ランナウェイを生じにくくすることができる。これによって患者の負担を低減することができる。
また気道圧力演算器によって演算される目標圧力Pinに基づいて、患者の気道内の圧力^Pawを演算し、その気道内の圧力^Pawから支援ガスの流量^Fを推定する。具体的には、各演算器および比較器によって、支援ガスの流量^Fは、気道内の圧力^Pawから肺胞圧力Palvを減算し、その減算値を推定気道抵抗^Rで除算して求める。また肺胞圧力Palvは、演算される支援ガスの流量^Fを積算して支援ガスの体積^Vを求め、支援ガスの体積^Vに、推定エラスタンス^Eを乗算して求める。これによって患者の呼吸器官のモデルを実現することができる。
たとえば|^R・s+^E|<|R・s+E|と設定されるかぎり、患者とサーボ機構と制御装置とを含む全体の系を、必ず負帰還機構に構成することができる。これによって安定限界に対する余裕を大きくすることができる。なお上式において^Rは推定気道抵抗、^Eは推定エラスタンス、Rは実際の患者の気道抵抗、Eは、実際の患者の肺のエラスタンス、sはラプラス演算子を表わす。
【0023】
また請求項2記載の本発明は、前記流量推定手段は、前記サーボ機構をモデル化したサーボ機構モデルを有し、前記サーボ機構に目標圧力Pinが与えられてから、サーボ機構が支援圧力Pventで支援ガスを供給するまでの時間特性に基づいて、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定することを特徴とする。
【0024】
請求項2記載の本発明に従えば、サーボ機構の時間特性に応じて支援ガスの流量^Fを演算する。たとえば流量推定工程では、むだ時間要素を考慮したサーボ機構の伝達関数に基づいて支援ガスの流量^Fを演算する。これによってより精度よく支援ガスの流量^Fを算出することができる。また患者が支援ガスを吸引する吸気期間と、サーボ機構が支援ガスを患者の気道に供給する供給期間とがずれることを防止することができる。いわゆる非同期状態を防ぐことができる。これによって患者の呼吸動作における負担をさらに低減することができる。
【0025】
また請求項3記載の本発明は、前記流量推定手段は、流量検出手段をモデル化した検出手段モデルを有し、患者の気道に供給された支援ガスの流量Fを検出してから、検出手段が検出結果を出力するまでの時間特性に基づいて、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定することを特徴とする。
【0026】
請求項3記載の本発明に従えば、検出手段の時間特性に応じて支援ガスの流量^Fを演算する。たとえば流量推定工程では、むだ時間要素を考慮した検出手段の伝達関数に基づいて支援ガスの流量^Fを演算する。これによってより精度よく支援ガスの流量^Fを算出することができる。また検出手段の検出遅れに起因して生じる非同期状態を防ぐことができる。これによって患者の呼吸動作における負担をさらに低減することができる。
【0027】
また請求項4記載の本発明は、前記制御量演算手段は、予め設定される流量ゲインKFGを前記流量偏差ΔFに乗算した第1演算値と、予め設定される体積ゲインKVGを前記流量偏差ΔFの積分値に乗算した第2演算値とを求め、
第1演算値および第2演算値を加算して目標圧力Pinを演算することを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の本発明に従えば、流量偏差ΔFは、自発呼吸圧力Pmusによって生じる流量変化量である。流量偏差ΔFを前述するように演算することによって、自発呼吸圧力Pmusに対応した目標圧力Pinを演算することができる。この場合、流量ゲインKFGおよび体積ゲインKVGを適切に設定することによって、自発呼吸圧力Pmusに比例増幅した圧力で支援ガスを患者の気道に供給することができる。
【0029】
たとえば、患者の呼吸器官モデルを精度よく求めることができた場合、流量ゲインKFGを患者の気道抵抗RよりもB倍大きく、かつ体積ゲインKVGを肺のエラスタンスEよりもB倍大きく設定することによって、自発呼吸圧力Pmusの(1+B)倍の圧力で支援ガスを患者の気道に供給することができる。
【0030】
さらに請求項1の本発明に示すように、全体の系の安定性を向上することができるので、ゲインの選択の自由度を大きくすることができ、適切なゲインを選択することができる。たとえば流量ゲインKFGは、PI制御における比例ゲインに相当する。したがって流量ゲインKFGを調整することで、自発呼吸圧力Pmusに対する速応性を向上することができる。また体積ゲインKVGは、PI制御における積分ゲインに相当する。したがって体積ゲインKFGを調整することで、目標圧力Pinの定常ゲインを調整することができる。
【0035】
また請求項5記載の本発明は、前記推定気道抵抗^Rは、支援ガスの流量にかかわらず一定に設定される第1抵抗係数と、前記推定流量演算器で演算される支援ガスの流量^Fに基づく第2抵抗係数とを加算した値であり、
前記推定エラスタンス^Eは、前記支援ガス体積演算器で演算される支援ガス体積^Vに基づく値であることを特徴とする。
【0036】
請求項5記載の本発明に従えば、推定気道抵抗^Rとして、第1抵抗係数と第2抵抗係数とを加算した値に設定される。また推定エラスタンス^Eとして、支援ガス体積^Vに基づいて設定される。これによって流量推定手段が有する呼吸器官モデルで、実際の患者の呼吸器管をより精度よく実現することができる。これによって自発呼吸圧力Pmusに精度よく対応した目標圧力Pinを演算することができる。
【0037】
推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンスは、患者の呼吸器官に関する各係数を表わす変数に設定される。たとえば推定気道抵抗^Rは、乱流抵抗を考慮したRoehlの一般式に基づいて決定される。また推定エラスタンス^Eは、その逆数であるコンプライアンスの飽和特性およびヒステリシス特性に基づいて決定される。
【0038】
また請求項6記載の本発明は、前記推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eの少なくとも一方を、患者の気道に供給された支援ガスの流量Fおよび外部から入力される入力値のいずれかに基づいて、変更する変更手段をさらに含むことを特徴とする。
【0039】
請求項6記載の本発明に従えば、前記推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eは、制御中に変更可能に設定されることで、利便性を向上することができる。たとえば患者の状態、サーボ機構の種類などに応じて、推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eを変更することで、患者の呼吸器系のモデルを実際の気道抵抗および肺のエラスタンスの変化に追従させることができる。
【0045】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の人工呼吸器17と患者18を示すブロック図である。人工呼吸器17は、人工呼吸器のガス供給サーボ機構(以下単にサーボ機構と称する)20と、サーボ機構20を制御する制御装置21とを含む。サーボ機構20は、酸素を含む支援ガス16を患者の気道15に供給する。支援ガス16はたとえば適切に加圧した大気中の空気である。またサーボ機構20は、たとえばポンプなどのガス供給手段を制御し、ガス供給手段が吐出する支援ガスの圧力を制御可能である。
【0046】
患者18が自発呼吸を行う場合において、吸気期間のサーボ機構20の制御方法として、プロポーショナルアシストベンチレーション法(比例支援換気法、
Proportional Assist Ventilation、略称PAV法)がある。本発明の制御装置21は、PAV法の本来の目的に従ってサーボ機構20を制御する。サーボ機構20は、自発呼吸圧力Pmusに比例する支援圧力Pventで、支援ガス16を患者の気道15に供給する。自発呼吸圧力Pmusは、横隔膜などの呼吸筋の動作によって生じる肺の外部から作用する圧力である。また本実施の形態において支援圧力Pventは、サーボ機構20の吐出圧力とほぼ等しいとする。
【0047】
PAV法に従って制御されるサーボ機構20は、患者18が支援ガス16を強く吸引すればするほど、より高い圧力で支援ガス16を患者に供給する。また患者18の吸引力が弱くなるにつれて、供給する支援ガス16の圧力を低くし、患者が支援ガスの吸引を終えるとともに支援ガス16の供給を停止する。
【0048】
このようにサーボ機構20を制御することによって、患者18の呼吸努力に応じた圧力で支援ガス16を供給することができ、呼吸動作における患者18の負担を低減することができる。
【0049】
制御装置21は、患者の自発呼吸圧力Pmusに対応する目標圧力Pinを演算し、目標圧力Pinをサーボ機構20に与える。目標圧力Pinが与えられたサーボ機構20は、患者の自発呼吸圧力Pmusに対応した支援圧力Pventで、支援ガス16を患者の気道15に供給する。
【0050】
なお、本発明の実施の形態において、「(s)」が付される記号は、ラプラス領域における伝達関数であることを示し、「(jω)」が付される記号は、周波数伝達関数であることを示す。また「^」が付される値は、実際の値ではなく推測値または演算値であることを示し、「s」は、ラプラス演算子を示す。
【0051】
制御装置21は、流量検出手段50と、流量推定手段51と、偏差演算手段52と、制御量演算手段53とを含む。流量検出手段50は、実際に患者の気道15に供給された支援ガス16の流量Fを検出する。以下、流量検出手段50によって検出される流量を検出流量Fと称する場合がある。検出流量Fは、自発呼吸圧力Pmusが加わった状態での呼吸器系の流量となる。
【0052】
流量検出手段50は、吸気管路25を流れる支援ガス16の流量を測定する。吸気管路25は、サーボ機構20の圧力源から患者の気道に支援ガス16を導く管路である。たとえば流量検出手段50は、差圧式流量計によって実現される。流量検出手段50は、支援ガスの流量Fを検出すると、その検出流量Fを偏差演算手段52に与える。
【0053】
流量推定手段51は、患者の呼吸器管を模擬してモデル化した呼吸器官モデルであるオブザーバ54を有する。オブザーバ54は、制御量演算手段53によって演算される目標圧力Pinに対応する情報に基づいて、自発呼吸圧力Pmusが存在しない場合に、患者に供給されるであろう支援ガスの流量^Fを演算する。
【0054】
以下、流量推定手段51によって推定される流量を推定流量^Fと称する場合がある。推定流量^Fは、支援圧力Pventに相当する、気道圧力の演算値^Pawでの呼吸器系の流量となる。流量推定手段51は、支援ガスの流量^Fを推定すると、その推定流量^Fを偏差演算手段52に与える。
【0055】
偏差演算手段52は、検出流量Fから推定流量^Fを減算した値となる流量偏差ΔFを演算し、演算結果を制御量演算手段53に与える。制御量演算手段53は、前記流量偏差ΔFに、予め設定されるゲインを付与して、支援圧力Pventに関連する目標圧力Pinを演算する。
【0056】
制御量演算手段53は、演算した目標圧力Pinを、流量推定手段51および、サーボ機構20にそれぞれ与える。サーボ機構20は、制御量演算手段53から与えられる目標圧力Pinに基づいた吐出圧力、すなわち支援圧力Pventで、支援ガス16を患者の気道15に供給する。また流量推定手段51は、制御量演算手段53から与えられる目標圧力Pinに基づいて、推定流量^Fを順次演算する。
【0057】
図2は、本発明の実施の一形態の全体の系14を具体的に示すブロック線図である。流量推定手段51は、オブザーバ54のほかに、遅れ補償部55をさらに有する。遅れ補償部55は、たとえばサーボ機構20の遅れ要素、空気回路の遅れ要素など、全体の系14を構成する各構成部の一次遅れ要素およびむだ時間要素などの遅れ要素を補償する。本実施の形態では、遅れ補償部55は、気道圧力演算器55となる。
【0058】
気道圧力演算器55は、目標圧力Pinに基づいて、患者の気道圧力^Pawを演算する。以下、気道圧力演算器55によって演算される患者の気道圧力を演算気道圧力^Pawと称し、実際の患者の気道圧力を単に気道圧力Pawと称する場合がある。気道圧力演算器55は、演算した気道圧力^Pawをオブザーバ54に与える。
【0059】
オブザーバ54は、患者の呼吸器官モデルに基づいて、演算気道圧力^Pawで支援ガスを患者の気道に供給した場合における、支援ガスの推定流量^Fを推定する。オブザーバ54は、比較器56と、推定流量演算器57と、支援ガス体積演算器58と、肺胞圧力演算器59とを有する。
【0060】
比較器56は、気道圧力演算器55から演算気道圧力^Pawが与えられるとともに肺胞圧力演算部59から演算肺胞圧力^Palvが与えられる。比較器56は、演算気道圧力^Pawから演算肺胞圧力^Palvを減算し、その値を推定流量演算器57に与える。演算肺胞圧力^Palvについては、後述する。
【0061】
推定流量演算器57は、比較器56によって減算される減算値を、予め設定される推定気道抵抗^Rで除算して、その除算値を推定流量^Fとして演算する。
【0062】
推定気道抵抗^Rは、患者の気道抵抗を推定した値であり、たとえば医療関係者によって予め設定される。また推定気道抵抗^Rは、測定機器によって検出される検出値によって予め設定されていてもよい。また後述するように、本発明の全体の系14では、推測気道抵抗^Rは、実際の患者の気道抵抗Rに対して正確に一致させなくてもよい。
【0063】
支援ガス体積演算器58は、支援ガス供給開始時刻から推定流量演算器57で演算される推定流量^Fを順次積算し、その積算値を支援ガスの体積^Vとして演算する。支援ガス体積演算器58は、いわゆる積分器となる。以下、支援ガス体積演算器58によって演算される支援ガスの体積を演算体積^Vと称し、実際の支援ガスの体積Vと区別する場合がある。
【0064】
肺胞圧力演算器59は、前記演算体積^Vに、予め設定される肺の推定エラスタンス^Eを乗算し、その乗算値を前記演算肺胞圧力^Palvとして演算する。肺胞圧力演算器59は、演算した演算肺胞圧力^Palvを比較器56に与える。演算肺胞圧力^Palvは、肺胞内の圧力を推定した値であり、実際の肺胞圧力Palvと区別して称する場合がある。
【0065】
肺の推定エラスタンス^Eは、患者の肺のエラスタンスを推定した値であり、たとえば医療関係者によって予め設定される。また推定する肺のエラスタンス^Eは、換気力学検査装置などの測定機器によって検出される検出値によって予め設定されていてもよい。また後述するように、本発明の全体の系14では、肺のエラスタンス^Eは、実際の患者の肺のエラスタンスEに対して正確に一致させなくてもよい。
【0066】
支援ガスが気道を流れる場合、支援ガスの流量Fにほぼ比例する圧力損失が生じて、気道圧力よりも肺内の圧力は低くなる。気道抵抗Rは、この支援ガスの流量Fと圧力損失との関係を表わす。支援ガスの流量Fに気道抵抗Rを乗算した値(F・R)は、気道の抵抗に起因する損失圧力となる。たとえば一般的な気道抵抗Rは、5〜30(cmH20)/(リットル/秒)、である。ただし気道抵抗Rは、患者の状態によって大きく変動する。
【0067】
また支援ガスが肺内に供給される場合、肺内に供給された支援ガスの体積Vの増加にほぼ比例して肺胞内圧力Palvが増加する。肺のエラスタンスEは、この支援ガスの体積Vと肺胞内圧力Palvとの関係を表わす。支援ガスの体積Vに肺のエラスタンスを乗算した値(V・E)は、肺胞内圧力Palvとなる。この肺胞内圧力Palvは、支援ガスの流入に反抗する圧力となる。たとえば一般的な肺のエラスタンスEは、1/20〜1/50(ミリリットル)/(cmH2O)である。ただし肺のエラスタンスEは、患者の状態によって大きく変動する。
【0068】
このような呼吸器管の特性に基づいて、オブザーバ54が有する呼吸器官モデルが設定される。オブザーバ54が有する呼吸器官モデルは、以下の関係に設定される。
【0069】
【数1】
【0070】
すなわちオブザーバ54が有する呼吸器官モデルは、自発呼吸圧力Pmusがゼロとした場合の患者の呼吸器官のモデルである。このモデルでは、演算気道圧力^Pawから演算肺胞圧力^Palvを減算した値は、推定流量^Fに推定気道抵抗^Rを乗算した値と等しい。また推定流量^Fを支援ガス供給開始時刻から積分した値が演算体積^Vと等しい。また演算肺胞圧力^Palvは、肺の推定エラスタンス^Eに演算体積^Vを乗算した値と等しい。
【0071】
したがって演算気道圧力^Pawを入力値とし、推定流量^Fを出力値とした場合には、オブザーバ54の伝達関数は、次式によって表わされる。
【0072】
【数2】
【0073】
ここで、^Rは、推定気道抵抗を示し、^Eは、肺の推定エラスタンスを示す。また他の式についても、上式に示す記号について同様の意味を表わす。このようなオブザーバ54が有する呼吸器官モデルは、実施の一例であって、患者の呼吸器官をモデル化した他のモデルであってもよい。
【0074】
制御量演算手段53は、偏差演算手段52によって演算される流量偏差ΔFに予め設定される係数である流量ゲインKFGを乗算した第1演算値(KFG・ΔF)と、支援ガス供給開始時刻から流量偏差ΔFを積分演算した値に予め設定される係数である体積ゲインKVGを乗算した第2演算値(KVG・ΔF/s)とを求め、第1演算値および第2演算値を加算して支援圧力Pventに関連する目標圧力Pinを演算する。流量偏差ΔFを入力値とし、目標圧力Pinを出力値とした場合には、制御量演算手段53の伝達関数は、次式によって表わされる。
【0075】
【数3】
【0076】
ここで、KFGは、流量ゲインを示し、KVGは、体積ゲインを示す。また他の式についても、上式に示す記号について同様の意味を表わす。たとえば流量ゲインKFGは、推定した気道抵抗^Rに予め定める流量増幅ゲインβFGを乗算した値に設定され、体積ゲインKVGは、推定した肺のエラスタンス^Eに予め定める体積増幅ゲインを乗算した値に設定される。なお、前記流量増幅ゲインβFGと、体積増幅ゲインβVGとを同じ値に設定した場合には、それらを単に増幅ゲインβと称する。さらに^R=Rでかつ^E=Eである場合の増幅ゲインβをBとする。
【0077】
上述した流量推定手段51、偏差演算手段52、制御量演算手段53は理解を容易にするために、個別に説明したが、等価変換されて整理されてもよい。また流量推定手段51、偏差演算手段52および制御量演算手段53は、数値演算可能なコンピュータが、予め定める動作プログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0078】
本発明の実施の一形態では、サーボ機構20の伝達関数は、むだ時間要素を含んでいる。図2には、サーボ機構20の伝達関数のうち、むだ時間要素を除いた伝達関数Gc(s)と、むだ時間要素の伝達関数e−τ・sとを個別に図示する。すなわち目標圧力Pinを入力値とし、吐出圧力Pventを出力値とした場合には、サーボ機構20の伝達関数は、次式によって表わされる。
Gc(s)・e−τ・s …(6)
【0079】
ここでGc(s)は、むだ時間要素を除いたサーボ機構20の伝達関数を示す。またeは、自然対数を示し、τは、目標圧力Pinが与えられてからサーボ機構20が支援圧力Pventの調整を開始するまでに要するむだ時間を示す。また他の式についても、上式に示す記号について同様の意味を表わす。
【0080】
また実際の患者の呼吸器管においては、支援圧力Pventの他に自発呼吸圧力Pmusが与えられることが、オブザーバ54の呼吸器官モデルと異なる。なお、本発明の実施の形態においては、吸気管路での圧力損失が小さいとして、サーボ機構20の吐出圧力となる支援圧力Pventと、実際の患者の気道圧力Pawとが等しいとする。
【0081】
図3は、本発明の全体の系14における自発呼吸時の換気量Vmusとアシスト呼吸時の換気量Vastとの関係を示すグラフである。支援圧力Pventは、自発呼吸圧力Pmusの時間変化に応じて、自発呼吸圧力Pmusの(1+B)倍の増幅率で増幅される。換気量は、支援ガスが肺に流れた体積と等しい。ここで、Bは、上述したように^R=Rでかつ^E=E出ある場合の増幅ゲインβを示す。本実施の形態の人工呼吸器17によるアシスト呼吸時の換気量Vastは、自発呼吸時の換気量Vmusの(1+B)倍に増幅される。
【0082】
患者の状態が呼気期間から吸気期間に切換ると、患者は横隔膜などの呼吸筋を動作させる。これによって自発呼吸時の換気量Vmusおよび自発呼吸圧力Pmusは、時間経過とともに徐々に増大し、あるピーク値P1に達すると徐々に減少する。そして患者の状態が吸気期間から呼気期間に切換る。
【0083】
通常、吸気期間において自発呼吸時の患者の換気量Vmusおよび自発呼吸圧力Pmusは、時間に対する波形として、まず穏やかな漸増カーブを描き、次に極大値から急速な減少カーブを描く。ただし患者の状態によって、患者の換気量Vmusおよび自発呼吸圧力Pmusは、大幅に変動しそのピーク値P1および吸気期間W1が変動する。
【0084】
制御装置21に制御されるサーボ機構20は、患者の自発呼吸圧力Pmusに予め定める増幅ゲインβに基づいて比例増幅した気道圧力Pawとなるように、支援圧力Pventで支援ガスを吐出する。たとえば、自発呼吸圧力Pmusのピーク値P1が小さく、吸気期間W1が短い場合には、気道圧力Pawのピーク値P2が小さく、支援ガスが供給される期間W2が短くなるように、支援圧力Pventが制御される。同様に、自発呼吸圧力Pmusのピーク値P1が大きく、吸気期間W1が長い場合には、気道圧力Pawのピーク値P2が大きく、支援ガスが供給される期間W2が長くなるように、支援圧力Pventが制御される。
【0085】
以上のように本実施の形態の制御装置21によれば、流量偏差ΔFに基づいて、支援圧力Pventを決定する。検出流量Fは、患者の自発呼吸圧力Pmusによって変化するが、推定流量^Fは、患者の自発呼吸圧力Pmusの影響を受けない。したがって流量偏差ΔFは、自発呼吸圧力Pmusの変化を抽出した値となる。すなわち検出が通常困難な自発呼吸圧力Pmusを推測することができ、自発呼吸圧力Pmusを外乱とみなした場合の外乱オブザーバとして構成することができる。
【0086】
このように、自発呼吸圧力Pmusに関係する流量偏差ΔFに応じて目標圧力Pinを演算することによって、自発呼吸圧力Pmusにほぼリアルタイムで追従する支援圧力Pventで、支援ガスを患者に供給することができる。
【0087】
図4は、図2の本発明の全体の系14を等価変換して整理して示すブロック線図である。本発明の全体の系14は、自発呼吸圧力Pmusを入力値とし、自発呼吸圧力Pmusと支援圧力Pventとの加算値を出力値とすると、その伝達関数は、次式によって表わされる。
【0088】
【数4】
【0089】
ここで、各記号については、上述する記号にそれぞれ対応する。
Gc(s)=1、^R=R、^E=E、KFG=^R・B、KVG=^E・Bとすると、本発明の全体の系14では、自発呼吸圧力Pmusと支援圧力Pventとを加算した圧力(Pmus+Pvent)が、自発呼吸圧力Pmusの(1+B)倍に増幅される。すなわち正確に気道抵抗RおよびエラスタンスEを正確に推定可能な場合には、Bが0より大きい限り、必ず増幅することができる。
【0090】
図5は、図24に示す従来技術の全体の系5を等価変換して示すブロック線図である。従来技術の全体の系5は、自発呼吸圧力Pmusを入力値とし、自発呼吸圧力Pmusと支援圧力Pventとの加算値を出力値とすると、その伝達関数は、次式によって表わされる。
【0091】
【数5】
【0092】
ここで各記号は、上述する記号にそれぞれ対応する。
Gc(s)=1、^R=R、^E=E、Kfa=^R・A、Kva=^E・A、とすると、従来技術の全体の系5では、自発呼吸圧力Pmusと支援圧力Pventとを加算した圧力(Pmus+Pvent)が、自発呼吸圧力Pmusの1/(1−A)倍に増幅される。この場合、A<0またはA>1となると、自発呼吸圧力Pmusを増幅することができない。
【0093】
上述したように本発明の全体の系14では、Bが0よりも大きい限り増幅することができるが、従来技術の全体の系5では、Aが0<A<1となる必要がある。したがって本発明の全体の系14は、ゲイン選択の自由度を高くすることができる。
【0094】
なお、推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eが、実際の気道抵抗Rおよび実際のエラスタンスEに対して、全く同一の値にすることは不可能であり、一般的には、これらの値にずれがある場合(^R≠R、^E≠E)が通常である。さらに人工呼吸器17を実現するサーボ機構には、何らかの遅れが存在するのが通常である場合(Gc(s)≠1)であり、このような一般的な場合については後述する。
【0095】
従来技術および本発明の全体の系5,14において、患者の状態の変化、各パラメータの設定誤差、外乱などの要因によっては、その過渡応答が不安定となる場合がある。この場合、過度の圧力の支援ガスが患者に供給されてランナウェイを生じる場合がある。
【0096】
しかしながら本発明の全体の系14では、後述するように、従来技術の全体の系5に比べて、安定となる余裕度が高い。したがって患者の状態変化が生じても、各パラメータの設定誤差があっても、ゲインを大きく設定しても、外乱などが作用しても、ランナウェイを生じにくくすることができる。
【0097】
図6は、モデルの安定度を説明するためのグラフである。全体の系において、安定度余裕、すなわち不安定状態になりにくさについて判定するために、ナイキスト線図が用いられる。
【0098】
たとえば全体の系における安定余裕の判定方法の一つとして、一巡伝達関数のベクトル軌跡47と安定限界点Lとが最も近接する距離∇Mに基づいて安定余裕を判定方法がある。この距離∇Mは、モジュラスマージン∇Mと称される。モジュラスマージン∇Mは、一巡伝達関数がGOL(jω)で表わされる場合、次式によって表わされる。なお、モジュラスマージン∇Mが大きければ大きいほど、全体の系は不安定になりにくいと判定される。
∇M=|1+GOL(jω)|min …(9)
【0099】
従来技術の全体の系5におけるモジュラスマージン∇Myは、(1)式から、次式によって表わされる。
【0100】
【数6】
【0101】
また本発明の実施の一形態の全体の系14におけるモジュラスマージン∇Mkは、(8)式から、次式によって表わされる。
【0102】
【数7】
【0103】
ただし、(10)式および(11)式は、比較を容易にするために、Kfa=^R・α、Kva=^E・α、KFG=^R・β、KVG=^E・βとする。
【0104】
また呼吸器系の推定誤差が本発明の場合と従来の場合とで同一であり、かつ^R/R=^E/E=aとして仮定すると、モジュラスマージン∇Mは、次式で表わせる。
【0105】
【数8】
【0106】
ここでaは、推定値と実際の値とのずれを示し、αおよびβは、自発呼吸圧力Pmusに対して、支援圧力Pventを増幅する増幅率に関係する値である。
【0107】
サーボ機構20の伝達関数Gc(jω)は、一般的に一次遅れ要素とむだ時間要素とを含む。すなわちサーボ機構20の伝達関数Gc(jω)を次式に示す。
【0108】
【数9】
【0109】
ここでTcは、サーボ機構20の時定数である。またeは、自然対数を示し、τは、サーボ機構20のむだ時間を示す。このような伝達関数をサーボ機構20が有する場合における、全体の系のナイキスト線図を以下に示す。
【0110】
図7は、a<1である場合の本発明の全体の系14のナイキスト線図を示す。また図8は、a<1である場合の従来技術の全体の系5のナイキスト線図を示す。
【0111】
(12)式から、従来技術の全体の系5の場合、α・aは、0<α・a<1となる必要がある。この場合には、一巡伝達関数のベクトル軌跡は、正帰還構成(ポジティブフィードバック)のサーボ機構20の伝達関数−Gc(jω)の要素を有する。これによって図8に示すように、角周波数ωがゼロの状態から角周波数ωが増加するにつれて、実軸の負の領域から原点Oに向かうように描かれる。したがって従来の全体の系5のベクトル軌跡は、角周波数ωがゼロのときに安定限界点Lに最も近接する。これによって全体の系5が安定であったとしてもモジュラスマージン∇Myは小さく、アシスト率αを大きくすると不安定になりやすい。
【0112】
(13)式から、本発明の全体の系14の場合、a<1であるならば、一巡伝達関数のベクトル軌跡は、負帰還構成(ネガティブフィードバック)のサーボ機構20の伝達関数Gc(jω)の要素を有する。したがって図7に示すように、角周波数ωがゼロの状態から角周波数ωが増加するにつれて、実軸の正の領域から原点Oに向かうように描かれる。したがって本発明の全体の系14は、角周波数ωが0よりも進んだときに安定限界点Lに最も近接する。これによって従来の全体の系5に比べて、本発明の全体の系14のモジュラスマージン∇Mkは大きくなる。したがって増幅ゲインβを大きくしたとしても不安定になりにくい。また具体的に述べれば、|^R・s+^E|<|R・s+E|と設定できる限り、必ず負帰還機構に構成することができる。
【0113】
たとえば図7に示すβ=9の本発明の全体の系14のベクトル軌跡48と、図8に示すα=0.9の従来技術の全体の系5のベクトル軌跡49とは、同じ増幅率に設定した場合を示す。図7および図8からも明らかのように、本発明の全体の系14のほうが、従来技術の全体の系5に比べてモジュラスマージン∇Mが大きく、安定余裕が大きいことが分かる。
【0114】
図9は、a>1である場合の本発明の全体の系14のナイキスト線図を示す。また図10は、a>1である場合の従来技術の全体の系5のナイキスト線図を示す。本発明の全体の系14は、a>1となる場合には、正帰還構成の伝達関数Gc(jω)の要素を有する。このような場合であっても、(12)式および(13)式から、本発明の全体の系14のモジュラスマージン∇Mkは、従来技術の全体の系のモジュラスマージン∇Myよりも大きい。
【0115】
たとえば図9に示すβ=5の本発明の全体の系14のベクトル軌跡148と、図10に示すα=0.8333の従来技術の系5のベクトル軌跡149とは、同じ増幅率に設定した場合を示す。図9および図10からも明らかのように、a>1であっても、本発明の全体の系14のほうが従来技術の全体の系5に比べてモジュラスマージン∇Mが大きく、安定余裕が大きいことが分かる。
【0116】
以上のように、本発明の実施の形態の全体の系14では、安定余裕を向上することができ、不安定となりにくくすることができる。すなわち各パラメータの設定誤差、患者の状態変化、外乱などによって、制御装置21が模擬した全体の系14に対して、実際の全体の系が異なる場合であっても、正帰還構成になりにくく、ランナウェイを防止することができる。これによって患者の負担をさらに低減したサーボ機構の制御方法を実現することができる。
【0117】
さらに推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eが、実際の気道抵抗RおよびエラスタンスEに対して少々ずれた場合であっても、上述したように全体の系の安定余裕が大きいので、全体の系14が不安定となることが防がれ、増幅ゲインβを調整することで、支援圧力Pventを増幅することができる。特に上述したようにa<1すなわち、^R<R、^E<Eとなることによって、必ず負帰還のフィードバック構成となり、安定余裕をより大きく設定することができる。したがって医師などが患者の状態を確認して、^R<R、^E<Eとなる推定気道抵抗^Rと推定エラスタンス^Eを設定することによって、正確な気道抵抗RおよびエラスタンスEを求めなくても、ランナウェイが生じる可能性が小さくなり、サーボ機構を制御することができる。
【0118】
たとえば現実に起こりうる例として、患者の気道に痰が詰まった場合、一般的に想定する気道抵抗Rに比べ、実際の気道抵抗Rは大きくなる。このような場合は、本発明の全体の系は、^Rに対してRが大きくなるので、より安定側に推移することになる。
【0119】
また、本発明の実施の形態では、流量偏差ΔFに応じて目標圧力Pinを演算することによって、ほぼリアルタイムの自発呼吸圧力Pmusに基づいて、支援圧力Pventが決定される。したがって、患者の自発呼吸圧力Pmusが逐次その波形のパターン、ピーク値および発生期間が変化したとしても、そのときの自発呼吸圧力Pmusに基づいた支援圧力Pventを与えることができる。
【0120】
これによって自発呼吸圧力Pmusに比例増幅した支援圧力Pventの支援ガスを患者の気道に供給するという圧力支援式人工呼吸器の本来の目的をより確実に実現することができる。またサーボ機構から患者を離脱させていく経過処置を好適に実現することができる。
【0121】
図11は、気道圧力演算器55を示すブロック線図である。たとえば気道圧力演算器55は、サーボ機構20を模擬してモデル化したサーボ機構モデルを有する。この場合、気道圧力演算器55は、目標圧力Pinが与えられると、サーボ機構20が吐出するであろう吐出圧力、すなわち支援圧力Pventを演算する。具体的には、気道圧力演算器55に設定される伝達関数Gp(s)が、サーボ機構20の過渡特性を模擬した伝達関数Gc(s)・e−τ・sに設定される。
【0122】
このように気道圧力演算器55の伝達関数Gp(s)が設定されることによって、サーボ機構20の過渡特性に起因して時間経過とともに変化する演算気道圧力^Pawを演算することができる。
【0123】
気道圧力演算器55は、演算した演算気道圧力^Pawを、オブザーバ54に与える。また気道圧力演算器55は、吸気管路の管路抵抗、制御装置のサンプリング時間、圧力の伝播遅れなどを考慮することによって、気道圧力^Pawをさらに正確に推定することができる。
【0124】
図12は、制御量演算手段53を示すブロック線図である。制御量演算手段53は、体積演算器64と、流量演算器65と、体積ゲイン乗算器66と、流量ゲイン乗算器67と、第1加算器68と、第2加算器69とを含む。
【0125】
体積演算器64は、支援ガス供給開始時刻から流量偏差ΔFを順次積算した値に推定エラスタンス^Eを乗算した体積演算値(^E・ΔF/s)を演算する。体積ゲイン乗算器66は、前記体積演算値に予め定める体積増幅ゲインβVGを乗算し、その値を第1加算器68に与える。
【0126】
また流量演算器65は、偏差演算手段52によって演算される流量偏差ΔFに、推定気道抵抗^Rを乗算した流量演算値(ΔF・^R)を演算する。流量ゲイン乗算器67は、前記流量演算値に予め定める流量ゲインβFGを乗算し、その値を第1加算器68に与える。第1加算器68は、流量ゲイン乗算器67から与えられる演算値と、体積ゲイン乗算器66から与えられる演算値とを加算し、目標圧力Pinとして、サーボ機構20に与える。これによって体積増幅ゲインβVGおよび流量増幅ゲインβFGをそれぞれ個別に設定することができ、利便性を向上することができる。
【0127】
また図12に示すように、流量演算器64および体積演算器65は、演算結果を第2加算器69にそれぞれ与える。第2加算器69は、流量演算器64の演算結果と体積演算器65の演算結果を加算し、自発呼吸圧力^Pmusとして演算することができる。なお、体積増幅ゲインβVGおよび流量増幅ゲインβFGが等しい値βとなる場合、演算した自発呼吸圧力^Pmusに対して(1+β)倍に増幅した目標圧力Pinを演算することができる。
【0128】
また制御装置21は、表示手段63を有していてもよい。表示手段63は、自発呼吸圧力推定器61の第2加算器69が演算した自発呼吸圧力^Pmusを取得し、取得した自発呼吸圧力^Pmusを表示することができる。これによって医師などは、無侵襲で患者の呼吸の強さである自発呼吸圧力Pmusを確認することができる。
【0129】
図13は、本発明の実施の一形態の全体の系14のシミュレーション結果である。図13には、制御装置21が、図11および図12に示す構成を有する場合のシミュレーション結果である。また、推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eが、実際の気道抵抗Rおよび実際のエラスタンスEに対してずれがある場合(^R≠R、^E≠E)で、かつサーボ機構20の伝達関数が、一次遅れ要素とむだ時間要素とを含む場合(Gc(s)・e−τ・s≠1)について示す。
【0130】
【表1】
【0131】
表1には、図13の全体の系の各パラメータの設定値を示す。シミュレーションでは、模擬的に自発呼吸圧力Pmusを設定し、その設定される自発呼吸圧力Pmusが与えられる場合における、支援ガスの検出流量F、支援ガスの検出体積V、推定自発呼吸圧力^Pmus、支援圧力Pventの時間応答を求めている。
【0132】
図14は、従来技術の全体の系5のシミュレーション結果である。図14は、図13と対応するように各パラメータが設定される。すなわち流量ゲインKfaが^R・αに設定され、体積ゲインKvaが^E・αに設定され、増幅率が10倍に設定される。また他のパラメータについては、図13と同様である。
【0133】
図14に示すように、従来技術の全体の系5では、速応性が悪い結果として、患者の吸気期間が終了する吸気終了時刻T1で、支援ガスの流量Fがゼロとならず、図14(2)にF1で示す流量の支援ガスが患者の気道に供給されてしまう。すなわち、患者の状態が、吸気状態から呼気状態に切換った後も、支援ガスを患者に供給することになり、いわゆる非同期状態となる。非同期状態となると、患者の負担が大きくなる。
【0134】
また図14(1)および図14(4)に示すように、全体の系5の速応性の不足によって、支援圧力Pventが自発呼吸圧力Pmusに対して比例した波形とならず、これによっても患者の負担が大きくなる。
【0135】
これに対して、本発明の全体の系14は、サーボ機構20の過渡特性に応じて支援圧力Pventが設定されるので、図13(2)に示すように、吸気終了時刻T1で、支援ガスの検出流量Fがゼロとなる。すなわち本発明の全体の系14では、非同期状態が生じる可能性を小さくする設定、または調整が可能であり、患者の自発呼吸圧力Pmusに応じた吸気期間でのみ、支援ガスを供給することができる。
【0136】
また図13(1)および図13(5)に示すように、自発呼吸圧力Pmusに比例した支援圧力Pventを与えることができる。本発明の全体の系14では、増幅ゲインβを増大させても、非同期状態となることがない。また推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eが、実際の推定気道抵抗RおよびエラスタンスEに対して誤差がある場合であっても、非同期状態となることがない。このように非同期状態となることを防止することによって、患者の負担をさらに低減して、人工呼吸を行うことができる。
【0137】
このように非同期状態を解消し、自発呼吸圧力Pmusに比例した支援圧力Pventを与えることができるのは、制御装置21が、サーボ機構20および空気回路による圧力伝達の遅れを予測したモデルを内方し、そのモデルに基づいて、流量推定値^Fを推定しているからである。
【0138】
図15は、表1に示すパラメータのうち、増幅ゲインβを19に変更した場合のシミュレーション結果である。図15に示すように、増幅ゲインβを極端に大きくした場合、本実施の形態の全体の系14では、図15(2)に示すように、支援ガスの流量Fが振動的となる場合がある。このように支援圧力Pventが振動的となることは、あまり好ましくない。
【0139】
図16は、図15に示す状態から流量ゲイン乗算器67によって流量増幅ゲインβFGを流量演算値を50%に減少させた場合のシミュレーション結果である。支援ガスの流量Fが振動的な場合には、流量増幅ゲインβFGを減少させて、その値を第1加算器68に与えることによって、図16に示すように支援ガスの流量が振動的になることを防止することができる。これによって支援ガスの流量が振動的になることなく、増幅率を増幅させることができる。
【0140】
また、流量増幅ゲインβKGは、PI制御における比例ゲインに相当する。したがって流量増幅ゲインβKGを調整することで、自発呼吸圧力Pmusに対する速応性を向上することができる。また体積増幅ゲインβVGは、PI制御における積分ゲインに相当する。したがって体積増幅ゲインβVGを調整することで、目標圧力Pinの定常ゲインを調整することができる。
【0141】
このように体積増幅ゲインβVGおよび流量増幅ゲインβFGを調整することによって、定常ゲインと合わせて、速応性および減衰性などの制御特性を向上して目標圧力Pinを設定することができる。なお、本発明の全体の系14は、上述したように、安定性が向上されているので、パラメータ選択の自由度が大きく、増幅ゲインβを増幅したり、体積増幅ゲインβVGおよび流量増幅ゲインβFGを変更しても、ランナウェイが生じにくく、好適に調整することができる。
【0142】
図17は、人工呼吸器17の一例を示すブロック図である。制御装置21は、コンピュータを含む制御装置本体33と、流量検出手段50と、入力手段39と、表示手段40と、サーボアンプ48とを含む。また制御装置21は、気道圧力検出手段61をさらに含んでいてもよい。
【0143】
流量検出手段50は、サーボ機構20の吸気管路25を流れる気体の流量を電気信号に変換し、その電気信号を制御装置本体33に与える。入力手段39は、医師および看護士などのサーボ機構20を管理する管理者からの推定気道抵抗R^および推定エラスタンス^E、増幅ゲインβ、サーボ機構20の時定数Tcおよびむだ時間τなどが入力される。入力手段39は、入力された情報を示す信号を制御装置本体33に与える。
【0144】
表示手段40は、患者の気道圧力を報知する報知手段である。表示手段40は、制御装置本体33から受ける表示指令信号に基づいて、患者の自発呼吸圧力Pmusの時間的変化を示す波形を表示画面に表示する。
【0145】
サーボアンプ48は、制御装置本体33が演算した目標圧力Pinを示す信号をポンプ用アクチュエータ31に与える。ポンプ用アクチュエータ31は、目標圧力Pinを示す信号に基づいてポンプを制御し、サーボ機構20の吐出圧力がフィードバック制御される。
【0146】
制御装置本体33は、インターフェース101と、演算部102と、一時記憶部103と、記憶部104とを含む。インターフェース101は、接続される流量検出手段50からの信号が入力されて、その信号を演算部102に与える。記憶部104は、制御装置本体33が実行すべきプログラムが記憶され、演算部102が記憶部104に記憶されるプログラムを読み出して実行することによって、前記流量推定手段51、偏差演算手段52、制御量演算手段53を実現することができる。これによって制御装置本体33は、前述するサーボ機構20の制御を行うことができる。また記憶部104は、コンパクトディスクなどのコンピュータ読取可能な記録媒体であってもよい。
【0147】
サーボ機構20は、制御装置21によって、吐出する支援ガスの圧力が制御可能なものであり、患者の気道15に支援ガスを導く吸気管路25が形成されていれば、特に限定されない。たとえば図17に示すようにベローズ型ポンプを有する人工呼吸器であってもよい。また配管を介して支援ガスを供給する人工呼吸器であってもよい。
【0148】
サーボ機構20の過渡特性は、患者の状態に比べて大きく変動することがなく、予めその特性を求めることができる。たとえばサーボ機構20の伝達関数が予め求められて、その伝達関数の要素が前記気道圧力演算器55に設定される。同様に流量検出手段の検出遅れなども予め求められて、制御装置21に与えられる。
【0149】
図18は、本発明のさらに他の実施の形態の全体の系13を示すブロック線図である。図18に示す全体の系13は、図2に示す全体の系14に対して、流量推定手段51の構成の一部が異なる以外は、同一の構成を有する。したがって同様の構成については、説明を省略し、図2の全体の系14に対応する符号を付する。
【0150】
流量推定手段51は、検出遅れ演算器60をさらに有する。検出遅れ演算器60は、流量検出手段50を模擬してモデル化した検出手段モデルを有する。この場合、検出遅れ演算器60は、オブザーバ54から推定流量^Fが与えられると、流量検出手段50の検出遅れに基づいた推定流量^Fを演算し、この演算結果を偏差演算手段52に与える。偏差演算手段52は、検出遅れ演算器60が演算した推定流量^Fから、流量検出手段50によって検出された検出流量を減算して、流量偏差ΔFを演算する。これによって流量推定手段51は、患者の気道に供給された支援ガスの流量Fを検出してから、検出手段50が検出結果を出力するまでの時間変化に基づいて、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fをさらに精度よく演算することができる。したがって非同期状態をさらに確実に防止することができる。
【0151】
図19は、本発明に関連する実施の形態の全体の系12を示すブロック線図である。図19に示す全体の系12は、図2に示す全体の系14に対して、流量推定手段51の構成の一部が異なる以外は、同一の構成を有する。したがって同様の構成については、説明を省略し、図2の全体の系14に対応する符号を付する。
【0152】
流量推定手段51に換えて、圧力検出手段61を備えてもよい。圧力検出手段61は、患者の気道内の圧力である気道圧力Pawを検出する。そして圧力検出手段61は、検出した気道圧力Pawをオブザーバ54に与える。このようにしても、上述した効果を達成することができる。また気道圧力Pawを検出することで、サーボ機構20の遅れの影響を考慮することなく、気道圧力Pawを取得することができ、自発呼吸圧力Pmusに正確に対応した支援圧力Pventで支援ガスを患者の気道に与えることができる。
【0153】
図20は、本発明のさらに他の実施の形態の全体の系11を示すブロック線図である。図20に示す全体の系11は、図2に示す全体の系14の気道圧力演算器55に設定される伝達関数Gp(s)が、次式で表わされた場合について、等価変換したモデルである。
【0154】
【数10】
【0155】
ここで、γは、0<γ<1に設定される係数であり、他の記号については、上述する記号にそれぞれ対応する。この伝達関数は、実際の気道抵抗R、実際の肺エラスタンスEが既知である場合を示しており、実際の気道抵抗R、実際の肺エラスタンスEが不明の場合には、(15)式は、次式によって代用される。
【0156】
【数11】
【0157】
このように気道圧力演算器55の伝達関数を設定して、図20に示す全体の系11に設定することによって、サーボ機構20のむだ時間要素による遅れを、γ・Gc(s)・e−τ・sの要素によって補償することができ、好適にサーボ機構のむだ時間の遅れを補償することができる。
【0158】
このように気道圧力演算器55は、目標圧力Pinに基づいて気道圧力Pawを推定できればよい。したがって気道圧力演算器55の伝達関数Gp(s)が、サーボ機構20の特性を模擬した伝達関数Gc(s)以外に設定されていてもよい。
【0159】
図21は、本発明のさらに他の実施の形態の全体の系10を示すブロック線図である。図21に示す全体の系10は、図2に示す全体の系14に対して、流量推定手段51に設定される推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eの設定が異なる以外は、同一の構成を有する。したがって同様の構成については、説明を省略し、図2の全体の系14に対応する符号を付する。
【0160】
図22は、気道抵抗Rを説明するためのグラフである。気道内を流れる支援ガスの流れが層流となる場合には、気道圧力Pawに比例して、その流速が直線的に変化する。しかし実際には、気道は、分岐を繰り返し太さも均一でないので、支援ガスの流れは乱流となる。したがって乱流抵抗を考慮して推定気道抵抗^Rを設定する。
【0161】
具体的には、流量推定手段51に設定される前記推定気道抵抗^Rは、支援ガスの流量にかかわらず一定に設定される第1抵抗係数^RTと、前記推定流量演算器で演算される支援ガスの流量^Fに基づく第2抵抗係数^KTとを加算した値である。第1抵抗係数^RTおよび第2抵抗係数^KTは、患者の気道抵抗に応じた係数に設定される。また肺のみならず胸郭などを含めた呼吸器官全体の抵抗を、推定気道抵抗^Rとして設定してもよい。他の近似式で表わされる推定気道抵抗^Rによって気道抵抗Rを近似してもよい。
【0162】
図23は、肺のコンプライアンスを説明するためのグラフである。流量推定手段51に設定される推定エラスタンス^Eは、前記支援ガス体積演算器で演算される支援ガス体積^Vに基づく値であり、肺のコンプライアンスCの逆数となる。コンプライアンスCは、患者の吸気期間中においては、支援ガスの体積Vの増加とともに非線形的に増加し、飽和特性とヒステリシス特性とを有する。
【0163】
肺胞圧力演算器59が、予めコンプライアンスCと支援ガスの体積との関係を示す情報を予め取得することによって、コンプライアンスが非線形である場合を考慮したであっても、正確に肺胞圧力Palvを演算することができる。
【0164】
このようにより非線形となる呼吸器管のモデルをオブザーバが有することによって、より精度よく推定流量^Fを推定することができる。これによって自発呼吸圧力Pmusを精度よく推定することができるとともに、推定した自発呼吸圧力Pmusに応じて、支援圧力Pventを決定することができる。
【0165】
上述した本発明の実施の形態は、本発明の一例示であって、発明の範囲内において、構成を変更することができる。たとえば上述したブロック線図は、本発明の例示に過ぎず、同様の効果を得ることができるならば、等価変換されてもよい。また検出流量Fが与えられたコンピュータが目標圧力Pinを演算する場合、各手段がソフトウエアによって実現されてもよい。
【0166】
また推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eは、医師が適切に設定してもよいが、予め計測器器によって測定した気道抵抗RおよびエラスタンスEを用いてもよい。また特許文献2に開示される推定方法によって求められる気道抵抗^Rおよびエラスタンス^Eを用いてもよい。
【0170】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の本発明によれば、制御量演算手段が自発呼吸圧力Pmusを表わす値である流量偏差ΔFに基づいて、目標圧力Pinを決定する。したがって自発呼吸圧力Pmusに比例増幅した支援圧力Pventの支援ガスを患者の気道に供給するという圧力支援式人工呼吸器の本来の目的を確実に実現することができる。
【0171】
さらに検出した支援ガスの流量Fにゲインを直接付与して圧力情報値を作成する従来技術に比べて、全体の系の安定限界に対する余裕を大きくすることができる。これによってランナウェイが生じにくい系を構成することができる。したがって外乱が生じたり、時間遅れがあったり、患者の呼吸器官の状態が変化したりして、実際の全体の系が変動した場合であっても、正帰還構成になりにくく、ランナウェイを防止することができる。ランナウェイを防止することによって、患者の負担をさらに低減したサーボ機構の制御方法を実現することができる。
また気道圧力演算器によって患者の気道内の圧力^Pawを演算することによって、精度よく支援ガスの流量^Fを求めることができる。たとえば気道圧力演算器は、検出流量の検出遅れ、制御装置の演算遅れなどを考慮して気道内の圧力^Pawを演算することによって、人工呼吸における非同期状態を防ぐことができる。呼吸器官モデルは、比較器と、推定流量演算器と、支援ガス体積演算器とを有し、推測される患者の気道抵抗^Rおよびエラスタンス^Eが設定される。これによって患者の呼吸器官モデルを模擬してモデル化することができる。
【0172】
また請求項2記載の本発明によれば、サーボ機構の時間特性に応じて支援ガスの流量^Fを演算することで、より精度よく支援ガスの流量^Fを演算することができる。また患者が支援ガスを吸引する呼気期間と、サーボ機構が支援ガスを患者の気道に供給する供給期間とがずれることを防止することができる。いわゆる非同期状態を防ぐことができる。これによって患者の呼吸動作における負担をさらに低減することができる。
【0173】
また請求項3記載の本発明によれば、検出手段の時間特性に応じて支援ガスの流量^Fを演算する。たとえば流量推定工程では、むだ時間要素を考慮した検出手段の伝達関数に基づいて支援ガスの流量^Fを演算する。これによってより精度よく支援ガスの流量^Fを算出することができる。また検出手段の検出遅れに起因して生じる非同期状態を防ぐことができる。したがって患者の呼吸動作における負担をさらに低減することができる。
【0174】
また請求項4記載の本発明によれば、流量偏差ΔFを前述するように流量ゲインKFGおよび体積ゲインKVG を付与することによって、患者の自発呼吸圧力Pmusの大きさに比例する支援圧力Pventを与えることができる。これによって自発呼吸圧力の時間変化に応じた支援圧力Pventで支援ガスを患者に供給することができ、患者の負担を低減することができる。
【0175】
また各流量ゲインKFGおよび体積ゲインKVGを調整することによって、自発呼吸圧力Pmusに対する速応性を向上するとともに、支援圧力Pventが振動的になることを防ぐことができる。
【0177】
また請求項5記載の本発明によれば、推定気道抵抗^Rとして第1抵抗係数と第2抵抗係数とを加算した値に設定される。また推定エラスタンス^Eとして前記支援ガス体積演算器で演算される支援ガス体積^Vに基づいて設定される。これによって患者の呼吸器系のモデルを精度よく模擬してモデル化することができ、患者の状態に精度よく対応した支援圧力Pventで支援ガスを供給することができる。これによって患者の負担をさらに低減することができる。
【0178】
また請求項6記載の本発明によれば、前記推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eは、制御中に変更可能に設定されることで、利便性を向上することができる。たとえば患者の状態、サーボ機構の種類などに応じて、推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eを変更することで、患者の呼吸器系のモデルを実際の気道抵抗および肺のエラスタンスの変化に追従させることができる。
【0179】
またたとえば支援ガスの流量変化が振動的となる場合には、推定気道抵抗Rに相当するゲインを減少させることで、支援ガスの流量変化が振動的となることを防止することができる。これによってさらに患者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の人工呼吸器17と患者18を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の一形態の全体の系14を具体的に示すブロック線図である。
【図3】本発明の全体の系14における自発呼吸時の換気量Vmusとアシスト呼吸時の換気量Vastとの関係を示すグラフである。
【図4】図2の本発明の全体の系14を等価変換して整理して示すブロック線図である。
【図5】図24に示す従来技術の全体の系5を等価変換して示すブロック線図である。
【図6】モデルの安定度を説明するためのグラフである。
【図7】a<1である場合の本発明の全体の系14のナイキスト線図を示す。
【図8】a<1である場合の従来技術の全体の系5のナイキスト線図を示す。
【図9】a>1である場合の本発明の全体の系14のナイキスト線図を示す。
【図10】a>1である場合の従来技術の全体の系5のナイキスト線図を示す。
【図11】気道圧力演算器55を示すブロック線図である。
【図12】制御量演算手段53を示すブロック線図である。
【図13】本発明の実施の一形態の全体の系14のシミュレーション結果である。
【図14】従来技術の全体の系4のシミュレーション結果である。
【図15】表1に示すパラメータのうち、増幅ゲインβを19に変更した場合のシミュレーション結果である。
【図16】図15に示す状態から流量ゲイン乗算器67によって流量増幅ゲインβFGを流量演算値を50%に減少させた場合のシミュレーション結果である。
【図17】人工呼吸器17の一例を示すブロック図である。
【図18】本発明のさらに他の実施の形態の全体の系13を示すブロック線図である。
【図19】 本発明に関連する実施の形態の全体の系12を示すブロック線図である。
【図20】本発明のさらに他の実施の形態の全体の系11を示すブロック線図である。
【図21】本発明のさらに他の実施の形態の全体の系10を示すブロック線図である。
【図22】気道抵抗Rを説明するためのグラフである。
【図23】肺のコンプライアンスを説明するためのグラフである。
【図24】従来技術の人工呼吸器1と患者2とを含む全体の系5を示すブロック線図である。
【図25】従来技術の全体の系5における自発呼吸時の換気量Vmusとアシスト呼吸時の換気量Vastとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
14 全体の系
17 人工呼吸器
20 ガス供給サーボ機構
21 制御装置
50 流量検出手段
51 流量推定手段
52 偏差演算手段
53 制御量演算手段
54 オブザーバ
Pmus 自発呼吸圧力
Pin 目標圧力
Pvent 支援圧力
F 実際の支援ガスの流量
^F 推定される支援ガスの流量
ΔF 流量偏差
Claims (6)
- 患者の自発呼吸圧力Pmusに対応する目標圧力Pinに基づいて、酸素を含む支援ガスを、患者の自発呼吸圧力Pmusに対応した支援圧力Pventで、患者の気道に供給する圧力支援式人工呼吸器のガス供給サーボ機構を制御する制御装置であって、
患者の気道に供給された支援ガスの流量Fを検出する流量検出手段と、
患者の呼吸器官をモデル化した呼吸器官モデルを有し、支援圧力Pventで支援ガスを供給した場合に、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定する流量推定手段と、
前記検出された流量Fと前記推定された流量^Fとの流量偏差ΔFを演算する偏差演算手段と、
前記流量偏差ΔFに基づいて前記目標圧力Pinを演算し、その目標圧力Pinを前記サーボ機構に与える制御量演算手段とを含み、
前記流量推定手段は、前記制御量演算工程で演算される目標圧力Pinに基づいて、患者の気道内の圧力^Pawを演算する気道圧力演算器をさらに有し、
前記呼吸器官モデルは、自発呼吸圧力Pmusが存在しない場合に、肺の弾性復元力によって生じる肺胞圧力^Palvを、気道圧力演算器で演算した気道内の圧力^Pawから減算する比較器と、
比較器によって減算される減算値を、予め設定される推定気道抵抗^Rで除算して、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定する推定流量演算器と、
支援ガス供給開始時刻から推定流量演算器で演算される支援ガスの流量^Fを順次積算して、支援ガス供給開始時刻から患者の気道に供給されるべき支援ガスの体積^Vを演算する支援ガス体積演算器と、
前記演算した支援ガスの体積^Vに、予め設定される肺の推定エラスタンス^Eを乗算して肺胞圧力^Palvを演算し、減算器に与える肺胞圧力演算器とを備えることを特徴とする人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置。 - 前記流量推定手段は、前記サーボ機構をモデル化したサーボ機構モデルを有し、前記サーボ機構に目標圧力Pinが与えられてから、サーボ機構が支援圧力Pventで支援ガスを供給するまでの時間特性に基づいて、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定することを特徴とする請求項1記載の人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置。
- 前記流量推定手段は、流量検出手段をモデル化した検出手段モデルを有し、患者の気道に供給された支援ガスの流量Fを検出してから、検出手段が検出結果を出力するまでの時間特性に基づいて、患者の気道に供給されるべき支援ガスの流量^Fを推定することを特徴とする請求項1または2記載の人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置。
- 前記制御量演算手段は、予め設定される流量ゲインK FG を前記流量偏差ΔFに乗算した第1演算値と、予め設定される体積ゲインK VG を前記流量偏差ΔFの積分値に乗算した第2演算値とを求め、
第1演算値および第2演算値を加算して目標圧力Pinを演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置。 - 前記推定気道抵抗^Rは、支援ガスの流量にかかわらず一定に設定される第1抵抗係数と、前記推定流量演算器で演算される支援ガスの流量^Fに基づく第2抵抗係数とを加算した値であり、
前記推定エラスタンス^Eは、前記支援ガス体積演算器で演算される支援ガス体積^Vに基づく値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置。 - 前記推定気道抵抗^Rおよび推定エラスタンス^Eの少なくとも一方を、患者の気道に供給された支援ガスの流量Fおよび外部から入力される入力値のいずれかに基づいて、変更する変更手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の人工呼吸器のガス供給サーボ機構の制御装置。
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