JP3858458B2 - アゾ基含有ポリアミド及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はラジカル重合活性を有するアゾ基含有ポリアミド及びその製造法に関する。詳しくは、実用的な性質を有するポリアミド単位を構成単位とするアゾ基含有ポリアミドとその溶液重縮合反応による製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アゾ基含有ポリアミドはビニル系ポリマーとポリアミドとの共重合体を製造する際のラジカル重合開始剤や崩壊性ポリマーの一種として知られている。アゾ基含有ポリアミド及びその製造法に関しては、特開昭49−17895号公報、J.Polym.Sci.Polym Chem Ed,Vol.22,1611(1984)や高分子論文集,Vol.33,131(1976)、大阪市工業研究所報告,第84回(1989)などに報告されている。
【0003】
例えば、特開昭49−17895号公報では、一般式(1)
【化3】
(式中、Xはハロゲン原子を、R1及びR2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を示し、aは0又は1〜6の整数を示す。)
であらわされるアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物及び脂肪族、脂環族又は芳香族ジカルボン酸ハライドの存在下又は不存在下に、炭素数1〜10個の脂肪族、脂環族又は芳香族ジアミン(以降、「ジアミンモノマー」と記載する。)と重縮合させるアゾ基含有ポリアミドとその製造法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来法のアゾ基含有ポリアミドはアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物とジアミンモノマーとの重縮合で得られるものであり、通常、アゾ基とアミド基との繰返し単位からなるポリアミドであり、分子鎖中に多数のアゾ基を含むため、分解し易く、又、機械的性質は低く、実用的なポリマー材料としての価値は低いものであった。又、ジカルボン酸ハライドの存在下にアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物とジアミンモノマーとを重縮合した場合、アゾ基間に数平均分子量が数千程度の実用的性質を有するポリアミドが生成することがある。しかし、生成するポリアミドの数平均分子量は分布があり、アゾ基の間にアミド結合一つだけの構造も多数存在するため、前述のものに比べ、それほど大きく実用的性質は改善されない。又、反応生成物として、ジカルボン酸ハライドとジアミンモノマーとの反応生成物などのアゾ基を含有しないポリアミドが生成しやすく、アゾ基含有ポリアミドの収率が低くなるなどの課題があった。
【0005】
又、従来法のポリアミド単位は、酸ハライド基(酸ハロゲン基)を有する化合物とジアミンモノマーという限られたモノマーから得られるポリアミドであり、得られるポリアミドの分子構造に制約があった。例えば、アミノカルボン酸やラクラムから合成されるポリアミドを構成単位とするアゾ基含有ポリアミドは製造できなかった。
【0006】
製造法については、界面重縮合法や溶液重縮合法が適用可能と記載されている。しかし、具体的に開示されている方法は、工業化への適用が難しいとされている界面重縮合法であり、工業化への適用や反応条件の制御が容易な溶液重縮合法に関しては、具体例の記載はなく、技術的示唆もされていない。これは、従来、この重縮合反応に適切な溶剤が見出されていないことと関係すると思われる。
【0007】
本発明は、数平均分子量が500以上であり、かつ、各種モノマーから合成されるポリアミドを構成成分とするアゾ基含有ポリアミド及びその溶液重縮合法による製造法の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、アゾ基の間に数平均分子量500以上のポリアミドが存在するとポリアミドとしての特性を発揮するようになること及び少なくとも一つのアミノ基を有し、かつ、数平均分子量500以上のポリアミドとアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物とを溶液重縮合させることのできる溶剤を見出し本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の第一の発明は、少なくとも一つのアミノ基を有し、かつ、数平均分子量500〜40,000であり、(1)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸に基づく繰り返し単位と、(2)ラクタムに基づく繰り返し単位とを有する脂肪族ポリアミド共重合体と、一般式(1)
【化4】
(式中、Xはハロゲン原子を、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を示し、aは0又は1〜6の整数を示す。)であらわされるアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物との重縮合により得られるアゾ基含有ポリアミドである。
【0010】
本発明の第二の発明は、少なくとも一つのアミノ基を有し、かつ、数平均分子量500〜40,000であり、(1)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸に基づく繰り返し単位と、(2)ラクタムに基づく繰り返し単位とを有する脂肪族ポリアミド共重合体と、一般式(1)
【化5】
(式中、Xはハロゲン原子を、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を示し、aは0又は1〜6の整数を示す。)であらわされるアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物とを、水及び/又はアルコールの存在下又は不存在下に、フェノール系溶剤中で重縮合反応させるアゾ基含有ポリアミドの製造法である。
【0011】
酸ハロゲン基やアミノ基と不活性又は反応性が非常に低く、かつ、アゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物と数平均分子量500〜40,000のポリアミドを同時に溶解するフェノール系溶剤などを見出したことは本発明の特徴の一つである。この溶剤を見出したことにより、本発明のアゾ基含有ポリアミドの提供が可能となった。
又、アミノカルボン酸やラクラムから合成されるポリアミドを構成成分とするアゾ基含有ポリアミドが得られることも本発明の特徴の一つである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、詳細に本発明を説明する。
本発明において、少なくとも一つのアミノ基を有し、かつ、数平均分子量が500〜40,000である脂肪族ポリアミド共重合体(以降、このポリアミドを「原料ポリアミド」と記載する。)は、(1)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸に基づく繰り返し単位と、(2)ラクタムに基づく繰り返し単位から誘導される。
【0013】
使用されるジアミンとしては、通常、炭素数2〜24のジアミンがあり、具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミンなどが挙げられる。
【0014】
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
ラクタムの具体例としては、ピロリドン、メチルピロリドン、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカラクタムなどを挙げることが出来る。
これらの、ジアミンとジカルボン酸から誘導される単位と、ラクタムから誘導される単位とを、2種類以上適宜組合せて使用する。
ポリアミド単位が共重合体から誘導される場合、その構造は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及び交互共重合体のいずれであっても良い。
【0016】
原料ポリアミドは、上記のジアミンとジカルボン酸、及びラクタムから選ばれたものを用い、溶融重合、溶液重合、固相重合、界面重合など公知のポリアミドの合成法により製造される。
例えば、等量のジアミンとジカルボン酸、及びラクタムを必要ならば少量の水とともに加熱して重縮合もしくは開環重合させる方法などにより製造される。
【0017】
この原料ポリアミドはアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物との反応性の点から、分子末端にアミノ基を一つ又は、二つ持つものが好ましい。
又、原料ポリアミドの数平均分子量は500〜40,000、好ましくは1,000〜30,000、さらに好ましくは6,000〜25,000である。数平均分子量が40,000より大きくなると、アゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物との反応性が低下したり、反応時の溶液粘度が高くなり、均一に反応させることが困難となるので好ましくない。一方、500より小さくなると、実用的な性質の低下が大きくなる。
【0018】
尚、原料ポリアミドのアミノ基の数や数平均分子量の調節が必要な場合、原料ポリアミドを合成する際、モノアミン又はジアミンを添加することにより可能となる。添加できるモノアミンとしては、ラウリルアミン、ステアリルアミンなどの炭素数1〜18の直鎖及び分岐状脂肪族モノアミン、ベンジルアミンやβ−フェニルエチルアミンなどの芳香族モノアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミンなどがある。ジアミンとしては、前述の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンなどがある。これらのモノアミン、ジアミンの添加量は、目的とする数平均分子量により、適宜決められる。
【0019】
本発明の一般式(1)
【化6】
(式中、Xはハロゲン原子を、R1及びR2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を示し、aは0又は1〜6の整数を示す。)
であらわされるアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物は、アゾ基含有ジカルボン酸とホスゲン、塩化チオニル、三酸化りん、五酸化りんなどから選ばれた塩素系化合物、又は、これら塩素系化合物に対応する臭素系化合物、又は、沃素系化合物との反応により合成される。
なお、一般式(1)中のR1及びR2は水素原子、又は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐のアルキル基、又は、ニトリル基である。
【0020】
アゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物の合成に使用するアゾ基含有ジカルボン酸の具体例としては、4,4'−アゾビス−シアノバレリアン酸、6,6'−アゾビス−6−シアノヘプタン酸、2,2'−アゾビス−2−メチルプロピオン酸、5,5'−アゾビス−5−メチルカプロン酸、7,7'−アゾビスカプリル酸、4,4'−アゾビス−4−メチルカプロン酸、4,4'−アゾビス−4−プロピルヘプタン酸、3,3'−アゾビスプロピオン酸などが挙げられる。
【0021】
本発明のアゾ基含有ポリアミドは、原料ポリアミドとアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物との縮合反応により製造される。このアゾ基含有ポリアミドを生産性良く製造する方法は、アゾ基の熱安定性や原料ポリアミドの反応性などを考慮すると溶液重縮合法が好適な方法である。本発明の反応に使用される溶媒は、原料ポリアミド及びアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物を同時に溶解すること、酸ハロゲン基やポリアミドのアミノ基と不活性であることなどの条件を有するものである。従来、このような条件を有する溶媒は知られていなかったため、種々検討した結果、フェノール系溶媒及びこれらと炭化水素系溶媒との混合溶媒を見出した。
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾールなどがあり、炭化水素系溶剤の具体例は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどの脂肪族系の炭化水素やベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族系の炭化水素が挙げられる。フェノール系溶剤と炭化水素系溶剤を混合して使用する場合、その混合比率はフェノール系溶剤100重量部に対して炭化水素系溶剤5〜50重量部である。
【0022】
本発明のアゾ基含有ポリアミドは、原料ポリアミドのアミノ基と一般式(1)であらわされるアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物の酸ハロゲン基とをモル当量比で1対0.5〜1対10、好ましくは、1対0.7〜1対8となる割合で上記溶媒中に仕込み、60℃以下、好ましくは0〜50℃の温度範囲で0.1時間以上反応させることにより合成される。
【0023】
酸ハロゲン基の配合割合がアミノ基1モル当量に対して0.5モル当量より少ない場合も、10モル当量より多い場合も、好適な反応比率の範囲を外れるようになるため、目的とするアゾ基含有ポリアミドの生成量が少なくなるので好ましくない。反応温度が60℃より高いとアゾ基が分解し易くなり、目的のアゾ基含有ポリアミドを得ることが難しくなる。一方、反応温度が0℃より低いと、アミノ基と酸ハロゲン基との反応が遅くなり、反応終了までの時間が非常に長くなるので好ましくない。
【0024】
アゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物の酸ハロゲン基のモル当量がポリアミドのアミノ基のモル当量より多い状態で反応させた場合、未反応の酸ハロゲン基が反応系中に残存する。反応系に未反応の酸ハロゲン基が残存すると、種々の副反応が起こり易くなるため、好ましくない。そのため、残存する酸ハロゲン基の反応性を消失させる目的で、水及び/又はアルコールが添加される。この水やアルコールの添加量は、残存する酸ハロゲン基のモル当量以上であり、好ましくは残存する酸ハロゲン基の1.5倍モル当量以上である。水やアルコールの添加時期は、ポリアミドとアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物との反応前、反応途中又は、反応終了後のいずれの時期であっても良い。
【0025】
添加するアルコールは炭素数1〜24のアルコールであり、具体例には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどが挙げられる。
【0026】
本発明において、原料ポリアミドとアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物との反応促進のため、トリエチルアミン、ピリジン、キノリン、イソキノリンなどの第3級アミンなどを触媒として添加することができる。
【0027】
本発明の溶液重縮合法で得たアゾ基含有ポリアミドの反応溶液は、ビニル系モノマーの開始剤として使用する場合、そのまま利用することができる。また、アゾ基含有ポリアミドを単体として得る場合は、反応溶液を多量の貧溶媒に注ぎ込むか、あるいは逆に、貧溶媒を反応溶液に添加することにより、合成したアゾ基含有ポリアミドを析出させ、濾別した後、乾燥して得ることができる。
【0028】
本発明で得られるアゾ基含有ポリアミドはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メタクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレンなどのビニル系モノマーの重合開始剤として使用できる。
また、アゾ基含有ポリアミド溶液からキャスト法などによりフィルムを製造することもできる。
【0029】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例に記載した特性評価は次の方法で行った。
【0030】
1)ポリアミドの溶液粘度の測定
0.5g/100mlの濃度でm−クレゾールを溶媒として、25℃でウベローデ粘度計を用いて測定し、次式により溶液粘度ηsp/c(単位;ml/g)を求めた。
ηsp/c={(t−t0)/t0}/c
ここで、t;溶液の流出時間(秒)、t0;溶媒のみの流出時間(秒)、c;溶液濃度(g/ml)
【0031】
2)アミノ基濃度の測定
フェノール/メタノール(4/1;体積比)混合溶媒40mlに試料を溶解し、チモールブルーを指示薬として数滴加えた後、1/20N塩酸を用いて室温で滴定した。アミノ基濃度[NH2](単位;モル/g)は次式で計算した。
[NH2]=(L1−L2)×f×10-4/(2×S)
ここで、L1;試料溶液の滴定量(ml)、L2;溶媒のみの滴定量(ml)、f;1/20N塩酸のファクター、S;試料量(g)
【0032】
3)ポリアミドの数平均分子量(以降、「Mn」で示す。)
Mn(単位;g/mol)は、上記2)の方法で測定したアミノ基濃度[NH2]を用いて、次式より計算した。
Mn=1/[NH2]
【0033】
4)アゾ基含有ポリアミドおよびポリアミド−ビニル系ポリマー共重合体の1H−NMRの測定
日本電子(株)のJEOL EX−270を用いて、重硫酸を溶媒として測定した。
測定周波数;300MHz、測定温度;室温、試料濃度;5重量%、標準物質;トリメチルシラン
【0034】
5)アゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物の1H−NMRの測定
日本電子(株)のJEOL EX−270を用いて、重クロロホルムを溶媒として測定した。
測定周波数;300MHz、測定温度;室温、試料濃度;5重量%、標準物質;トリメチルシラン
【0035】
6)アゾ基含有ポリアミドのUV測定
大塚電子(株)の瞬間マルチ測光システムMCPD−1000を用いて、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶剤として測定した。試料濃度は0.05モル/lである。
【0038】
合成例1:分子末端に一つのアミノ基を有するポリアミド(PA−1)の合成
ε−カプロラクタム13重量部、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モルの塩2.2重量部とステアリルアミン0.3重量部をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、240℃、圧力2気圧で、4時間重合した。温度を250℃に昇温後、その温度に保持したまま圧力を大気圧まで降圧した後、窒素気流下、さらに、4時間重合した。その後、重合物を取出し、粉砕、メタノールでソックスレー抽出してから、乾燥し、ナイロン6/6T(以降「PA−1」と記す。)を得た。PA−1の溶液粘度は0.89であり、アミノ基濃度から計算した数平均分子量Mnは10,000であった。
【0039】
合成例2:分子末端に二つのアミノ基を有するポリアミド(PA−2)の合成
ε−カプロラクタム12.8重量部、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モルの塩2.1重量部とヘキサメチレンジアミン0.15重量部をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、240℃、圧力2気圧で、4時間重合した。温度を250℃に昇温後、その温度に保持したまま圧力を大気圧まで降圧した後、窒素気流下、さらに、4時間重合した。その後、重合物を取出し、粉砕、メタノールでソックスレー抽出してから、乾燥し、ナイロン6/6T(以降「PA−2」と記す。)を得た。PA−2の溶液粘度は0.83であり、アミノ基濃度から計算した数平均分子量Mnは9,400であった。
【0042】
実施例1
PA−1を10重量部とトリエチルアミン1.5重量部とをメタノール25重量部とフェノール75重量部からなる混合溶媒200重量部に溶解した。氷冷しながら、4,4'−アゾビス−シアノバレリアン酸ジクロリド(ACPC)0.86重量部を溶解したテトラヒドロフラン(THF)15重量部を滴下した。滴下後、20℃で2時間撹拌しながら、反応させた。反応溶液を多量のメタノール中に注ぎ入れ、反応物を析出させた後、濾別、減圧乾燥した。得られた反応物の溶液粘度は0.91であった。また、滴定でアミノ基は測定されなかった。反応物のUVスペクトル測定からアゾ基が、1H−NMR測定からナイロン6/6Tに基くシグナルが観察され、この反応物はアゾ基含有ポリアミドであることがわかった。
このアゾ基含有ポリアミド2.5重量部を、フェノール−メタノール混合溶媒(フェノール:メタノール=4:1、体積比)200重量部に室温で溶解し、その溶液にメタクリル酸メチル10重量部を加えた。次いで、窒素雰囲気下、60℃、攪拌下に、24時間、重合させた。その後、反応溶液をメタノール中に注ぎ入れ、重合物を析出させ、濾過、減圧乾燥した。得られた重合物は1H−NMRの測定により、ナイロン6/6Tのシグナルとポリ(メタクリル酸メチル)のシグナルが観察され、ポリアミドとポリ(メタクリル酸メチル)との共重合体であった。このことからも、得られたアゾ基含有ポリアミドはナイロン6/6Tのポリアミド構造を有し、かつ、メタクリル酸メチルの重合開始剤としての機能を持つことが確認できた。
【0043】
実施例2
PA−2を10重量部と4,4'−アゾビス−シアノバレリアン酸ジクロリド(ACPC)0.31重量部を用い、メタノールの代りにベンゼン25重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法で実施して、アゾ基含有ポリアミドを得た。得られたアゾ基含有ポリアミドの溶液粘度は1.92であった。また、滴定でアミノ基は測定されなかった。反応物のUVスペクトル測定からアゾ基が、1H−NMR測定からナイロン6/6Tに基くシグナルが観察され、この反応物はアゾ基含有ポリアミドであることがわかった。
このアゾ基含有ポリアミド2.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル酸メチルを重合させ、重合物を得た。この重合物は1H−NMRの測定により、ナイロン6/6Tのシグナルとポリ(メタクリル酸メチル)のシグナルが観察され、ポリアミドとポリ(メタクリル酸メチル)との共重合体であることがわかった。このことから、得られたアゾ基含有ポリアミドはナイロン6/6Tのポリアミド構造を有し、かつ、メタクリル酸メチルの重合開始剤としての機能を持つことが確認できた。
【0044】
【発明の効果】
本発明目的のアゾ基含有ポリアミドは、少なくとも一つのアミノ基を有し、かつ、数平均分子量が500〜40,000であり、(1)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸、に基づく繰り返し単位と、(2)ラクタムに基づく繰り返し単位とを有する脂肪族ポリアミド共重合体と一般式(1)
【化7】
(式中、Xはハロゲン原子を、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を示し、aは0又は1〜6の整数を示す。)であらわされるアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物とを、フェノール系溶剤中で溶液重縮合反応させることにより得られる。
Claims (4)
- ポリアミドのアミノ基とアゾ基含有ジカルボン酸ハロゲン化物の酸ハロゲン基とをモル当量比で1対0.5〜1対10となる割合で反応させることを特徴とする請求項2に記載のアゾ基含有ポリアミドの製造法。
- フェノール系溶剤がフェノール、クレゾール及びこれらと炭化水素系溶剤との混合物から選ばれた1種類以上の溶剤からなることを特徴とする請求項2に記載のアゾ基含有ポリアミドの製造法。
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