JP3855856B2 - 車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カムシャフトの回転位相に応じて開閉する機関バルブの開閉時期(バルブタイミング)を可変制御する車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用内燃機関にあっては、出力の向上やエミッションの改善等を図るために同機関のバルブタイミングを適宜に変更するバルブタイミング制御装置が設けられたものがある。こうしたバルブタイミング制御装置では、例えば内燃機関のカムシャフトに連結されたベーンロータと、カムシャフトの回転方向においてそのベーンロータを挟むように設けられる進角側圧力室及び遅角側圧力室とを備えている。そして、それら各圧力室に選択的に作動油を供給し、これにより生じる各圧力室の圧力差によってベーンロータを移動させることで、同機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を進角側または遅角側に変更する。このようにカムシャフトの相対回転位相を変更することにより、同機関のバルブタイミングが変更されるようになる。
【0003】
また近年、こうした装置としては、内燃機関の始動開始時におけるカムシャフトの相対回転位相を、その遅角側の制御限界位相(最遅角位相)よりも所定量だけ進角した位相(以下、こうした機関始動用の位相のことを単に「始動位相」という)で機械的にロックするロック機構を備えたものも知られている。こうした装置では通常、ロック機構により、内燃機関の始動開始時におけるバルブタイミングが機関始動に適したバルブタイミング(始動タイミング)で固定される。このようにカムシャフトの相対回転位相がロック機構により上記始動位相に固定されているときには、各圧力室に作動油が満たされていなくても、バルブタイミングを始動タイミングに保持できる。そのため、機関始動時に上記ロック機構により固定させておけば、良好な機関始動性が確保されるようになる。
【0004】
なお、こうしたロック機構は通常、各圧力室から作動油が抜かれた状態となることで固定可能となり、上記各圧力室に作動油が満たされると固定が解除されるように構成されている。そのため、機関始動中に各圧力室内に作動油が満たされると、ロック機構の固定が解除され、バルブタイミングの変更が許容されるようになる。
【0005】
また、こうしたロック機構を備えるバルブタイミング制御装置では通常、予め機関停止時にカムシャフトの相対回転位相を上記始動位相に固定させておくようにしている。そのため、機関停止時には、カムシャフトの相対回転位相を上記始動位相に合わせるようにバルブタイミングを変更し、その後、各圧力室から作動油を抜いてロック機構の固定を行わせている。
【0006】
ただし、次の理由により、機関停止時にカムシャフトの相対回転位相を確実に上記始動位相に変位させることは困難なものとなっていた。
まず、ロック機構を固定可能な状態とするためには、各圧力室から作動油を抜く必要があるが、作動油を抜いてしまえば、カムシャフトの相対回転位相を上記始動位相に確実に保持させておくことができなくなってしまう。そのため、ロック機構をロック可能な状態としたときにカムシャフトの相対回転位相が上記始動位相からずれてしまい、ロック不能となるおそれがある。
【0007】
また、回転中のカムシャフトには、カムによるバルブの押し下げに伴う駆動反力がカムシャフトの反回転方向、すなわち遅角方向に作用している。そのため、機関停止の直前にカムシャフトの相対回転位相が上記始動位相よりも遅角側にあるような場合には、カムシャフトと連結されたベーンロータを、その駆動反力に抗して進角側に変位させる必要がある。ところが、機関停止時には通常、機関回転速度が低くなっており、クランクシャフトの回転に基づき駆動されるオイルポンプからの作動油の供給圧も低下した状態となっている。そのため、十分な作動油を進角側圧力室に供給することができず、バルブタイミングの進角速度が低下してしまい、場合によっては内燃機関が完全に停止するまでにカムシャフトの相対回転位相を上記始動位相まで進角できないこともある。
【0008】
そこで従来、機関停止時において、最遅角位相から所定量進角された上記始動位相でのロックをより容易且つ確実とするための技術として、例えば特開平2002−13402号広報に見られるようなバルブタイミング制御装置が提案されている。このバルブタイミング制御装置では、カムシャフトの相対回転位相が上記始動位相よりも遅角側にあるときに、上記ベーンロータを進角側方向に付勢するばねを設けるようにしている。
【0009】
このようなばねの設けられたバルブタイミング制御装置では、カムシャフトの相対回転位相が上記始動位相よりも遅角側にあるときには、ベーンロータが上記ばねの付勢力にて進角側に付勢されるようになる。そのため、機関停止の直前にカムシャフトの相対回転位相が始動位相よりも遅角側にあったとしても、ばねの付勢力の助勢が得られるため、作動油の供給圧の不足にも拘わらず、比較的速やかにベーンロータを進角側に変位させることができる。
【0010】
一方、カムシャフトの回転中にベーンロータは、上記のような遅角側への駆動反力の作用を受けている。そのため、カムシャフトの相対回転位相が上記始動位相よりも進角側にあったとしても、ベーンロータは遅角側へと自律的に変位されるようになる。
【0011】
また、上記ばねの設けられたバルブタイミング制御装置では、ロック機構をロック状態とすべく各圧力室から作動油を抜いたとしても、カムシャフトの相対回転位相が上記始動位相に向けて変位されるようにもなる。
【0012】
このように、上記ばねの設けられたバルブタイミング制御装置では、機関停止時にカムシャフトの相対回転位相を始動位相へと確実に変位させることができ、良好な機関始動性を確保することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなバルブタイミング制御装置においても、内燃機関に過大な負荷がかかってエンジンストールが発生したときのように、不意に機関が停止されてしまえば、カムシャフトの相対回転位相の上記始動位相への変位を完了させられぬまま、機関始動を迎えてしまうことがある。
【0014】
こうした場合であっても、機関始動が開始され、スタータモータによってクランクシャフトが強制回転されるようになると、上記ばねの付勢力や上記バルブの駆動反力の作用により、カムシャフトの相対回転位相が徐々に上記始動位相へと変位する。そのため、内燃機関を始動することはできるものの、始動に要する時間が長くなることは避けられない。
【0015】
また特に、冬場など、外気温度が極めて低いときに内燃機関が停止され、そのまま放置された場合などには、始動開始時にカムシャフトの相対回転位相が上記始動位相となっていなければ、内燃機関の始動性が著しく悪化するおそれがある。こうした場合、機関始動時の作動油は、極低温となっており、非常に粘度が高くなっている。そのため、スタータを作動させてクランクシャフトの強制回転駆動を開始しても、作動油の高い粘度のため、バルブタイミング可変機構のベーンロータの駆動抵抗が高くなり、カムシャフトの相対回転位相を変位できなくなるおそれがある。この場合には、上記始動タイミングが得られなくなり、機関始動性の著しい低下は避けられないものとなる。
【0016】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機関始動性をより好適に確保することのできる車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
先ず、請求項1に記載の発明は、車両用内燃機関のクランクシャフトに駆動連結されたカムシャフトについてその同クランクシャフトに対する相対回転位相を進角側圧力室及び遅角側圧力室に選択的に供給される流体の圧力に基づいて進角側と遅角側とのいずれかに変更する内燃機関のバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相が最遅角位相よりも所定量だけ進角した機関始動用の位相となるよう進角側への付勢を行う付勢手段と、を有する車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトを強制回転駆動する駆動手段を備え、機関停止時に該駆動手段により所定期間にわたって前記クランクシャフトを強制回転駆動させるとともに、該強制回転駆動に際し、前記内燃機関に対する燃料の噴射動作、及び同燃料に対する点火動作を共に停止させることをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、バルブタイミング可変機構の作動に用いられる流体の粘度が機関運転に伴って十分に低下している機関停止時に、カムシャフトをクランクシャフトともども強制回転駆動させることができる。これにより、機関始動用の位相(始動位相)へのカムシャフトの相対回転位相の変位が完了する前に同機関が停止した場合であっても、付勢手段の付勢力や機関バルブの駆動反力の作用によって、カムシャフトの相対回転位相を始動位相に近づくように移動させることができるようになる。従って、カムシャフトの相対回転位相が始動位相から大きくずれた位相となった状態で機関が始動を迎えるといった事態の発生を効果的に抑制することができるようになり、ひいては機関始動性をより好適に確保することができるようになる。
また、上記構成によれば、クランクシャフトの強制回転駆動に際し、内燃機関に対する燃料の噴射動作、及び同燃料に対する点火動作を共に停止させる。その結果、クランクシャフトの強制回転駆動に際し、燃料の噴射動作や同燃料に対する点火動作といったカムシャフトの相対回転位相を移動させる上では必要のない動作を省略することができるようになる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの相対回転位相を前記機関始動用の位相でロックするロック手段を更に備えることをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、ロック手段によるカムシャフトの相対回転位相についての始動位相でのロックをより確実に行うことができるようになる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記クランクシャフトの強制回転駆動は、機関停止時における前記カムシャフトの相対回転位相が前記機関始動用の位相にないことを条件に実行されることをその要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、クランクシャフトの強制回転駆動が、機関停止時におけるカムシャフトの相対回転位相が始動位相にないときにのみ、換言すれば、その強制回転駆動が必要とされるときにのみ実行されるようになる。従って、クランクシャフトが不要なタイミングで強制回転駆動されることを極力抑えることができるようになる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記クランクシャフトの強制回転駆動は、機関停止時における前記カムシャフトの相対回転位相が前記機関始動用の位相よりも遅角側にあるときにのみ実行されることをその要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、カムシャフトの相対回転位相が始動位相よりも大きく遅角側にずれた位相となった状態で機関が始動を迎えるといった事態の発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記クランクシャフトの強制回転駆動は、前記内燃機関が意図せず停止されたときにのみ実行されることをその要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、内燃機関が意図せず停止されたとき、換言すれば、カムシャフトの相対回転位相が始動位相から大きくずれているおそれがあるときにのみ、クランクシャフトが強制回転駆動される。このため、クランクシャフトが不要なタイミングで強制回転駆動されることを好適に抑制することができるようになる。
【0026】
なお、内燃機関が意図せず停止されたことは、請求項6によるように、機関停止時に、クランクシャフトから車輪までの動力伝達系が伝達状態にあり、且つイグニッションスイッチがオン操作されていることをもって判定することができる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記クランクシャフトの強制回転駆動は、前記クランクシャフトから車輪までの動力伝達系が非伝達状態になったことを条件に実行されることをその要旨とする。
【0028】
上記構成によれば、動力伝達系が伝達状態にあるときにクランクシャフトが強制回転駆動されることが防止される。このため、クランクシャフトの強制回転駆動を適切に行うことができるようになる。
【0029】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記駆動手段は、電力供給に基づいて前記クランクシャフトを強制回転駆動させるものであって、前記内燃機関が停止された後の所定時間にわたって前記動力伝達系が非伝達状態にならないときには、前記駆動手段への通電を遮断することをその要旨とする。
【0030】
上記構成によれば、動力伝達系が非伝達状態にならないことにより、駆動手段への通電が内燃機関の停止後の長期間にわたって不要に維持されることを防止することができるようになり、電力の浪費を好適に抑制することが可能になる。
【0031】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、機関停止時における前記カムシャフトの相対回転位相とは、機関回転速度が所定回転速度以上であるときの当該相対回転位相の検出履歴のうちの最後に検出された位相であることをその要旨とする。
【0032】
通常、機関回転速度が極度に低下したときには、カムシャフトの相対回転位相の検出が困難なものとなる。この点、上記構成によれば、機関回転速度が十分に高いときにおいて良好に検出されたカムシャフトの相対回転位相であって、その検出履歴のうちの最後に検出された位相、すなわち最も機関停止時における位相に近い位相を機関停止時におけるカムシャフトの相対回転位相として用いることができるようになる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置の一実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0036】
ここでは先ず、図1を参照して、本実施の形態にかかるバルブタイミング制御装置が適用される内燃機関及びその周辺機器の概略構成について説明する。
同図1に示すように、内燃機関11のシリンダブロック11aには、各気筒毎にピストン12(図1には一つのみ図示)が往復移動可能に設けられている。このピストン12は、コネクティングロッド13を介して内燃機関11の出力軸であるクランクシャフト14に連結されている。そして、ピストン12の往復移動は、コネクティングロッド13によってクランクシャフト14の回転へと変換されるようになっている。
【0037】
上記シリンダブロック11aには、その上部を覆うようにシリンダヘッド15が取り付けられている。そして、上記気筒内にあって、シリンダヘッド15と上記ピストン12との間には燃焼室16が区画形成されている。この燃焼室16にはシリンダヘッド15に設けられた吸気ポート17及び排気ポート18が連通されている。そして、吸気ポート17には吸気通路25が、排気ポート18には排気通路26がそれぞれ連通されている。更に、吸気ポート17には吸気バルブ19が、また排気ポート18には排気バルブ20がそれぞれ設けられている。
【0038】
また、シリンダヘッド15には、上記吸気バルブ19を開閉駆動するための吸気カムシャフト21と、排気バルブ20を開閉駆動するための排気カムシャフト22とがそれぞれ回転可能に支持されている。これら吸気及び排気カムシャフト21,22には、クランクシャフト14の回転がギヤ及びチェーン等を介して伝達される。そして、吸気カムシャフト21が回転すると、吸気バルブ19が開閉駆動されて、吸気ポート17と燃焼室16とが連通・遮断される。また、排気カムシャフト22が回転すると、排気バルブ20が開閉駆動されて、排気ポート18と燃焼室16とが連通・遮断される。
【0039】
そして、この内燃機関11にあって、その吸気カムシャフト21には、同機関11の吸気バルブ19の開閉タイミング(バルブタイミング)を可変とするためのバルブタイミング可変機構24が設けられている。なお、このバルブタイミング可変機構24の具体的な構造については後に詳述する。
【0040】
一方、吸気通路25の下流端には、吸気ポート17内に燃料を噴射するための燃料噴射弁27が設けられている。この燃料噴射弁27は、内燃機関11の吸気行程において吸気通路25内の空気が燃焼室16へ吸入されるとき、吸気ポート17内に燃料を噴射して燃料及び空気からなる混合気を形成する。
【0041】
また、シリンダヘッド15には、燃焼室16内に充填された混合気に対して点火を行うための点火プラグ28が設けられている。なお、この点火プラグ28は、イグナイタ28aから出力される動作信号に基づいてその点火動作を行う。そして、燃焼室16内の混合気に対し点火が行われて混合気が燃焼すると、その燃焼エネルギーによってピストン12が往復移動してクランクシャフト14が回転し、内燃機関11が駆動される。燃焼室16内で燃焼した混合気は、内燃機関11の排気行程中にピストン12の上昇により排気として排気通路26へ送り出される。
【0042】
更に、内燃機関11には、クランクシャフト14を強制回転駆動する駆動手段としてのスタータモータ32が設けられている。
一方、本実施の形態の装置は、内燃機関11及びその周辺機器に対する給電(オン)とその遮断(オフ)とを切り替えるイグニション(IG)スイッチ29及びメインリレー30を備えている。具体的には、内燃機関11及びその周辺機器は、これらIGスイッチ29及びメインリレー30を介してバッテリ31に接続されている。これにより、内燃機関11及びその周辺機器には、IGスイッチ29及びメインリレー30のうち少なくとも一方が「オン」操作されているときにのみ、バッテリ31からの給電がなされるようになっている。
【0043】
また、本実施の形態の装置には、車両や内燃機関11の運転状態を検出するために、以下の各種センサ等が設けられている。すなわち、車輪(図示略)の近傍には、車両の走行速度を検出するための車速センサ33が設けられている。また、内燃機関11には車両の変速態様を切り替える自動変速機(図示略)が連結されており、この自動変速機にはそのシフト位置(変速位置)を検出するためのシフト位置センサ34が設けられている。このシフト位置センサ34は主に、自動変速機のシフト位置がN(ニュートラル)レンジにあるか、あるいはD(ドライブ)レンジにあるかを検出する。すなわち、上記自動変速機が動力を伝達していないこと、あるいは動力を伝達していることを検出する。
【0044】
更に、内燃機関11のクランクシャフト14に設けられたパルサの近傍には、電磁ピックアップからなるクランク角センサ35が設けられている。また、吸気カムシャフト21に設けられたパルサの近傍には、これも電磁ピックアップからなるカム角センサ36が設けられている。そして、本実施の形態では、これら両センサ35,36から出力されるパルス信号により、機関回転速度や、クランク角、カム角、クランクシャフト14に対する吸気カムシャフト21の相対回転位相が算出される。
【0045】
更に、本実施の形態の装置は、例えばマイクロコンピュータ等からなる電子制御装置37を備えている。この電子制御装置37は、上記各種センサの検出信号を取り込むとともに、それら検出信号に基づき判断される車両や内燃機関11の運転状態に応じて、上記バルブタイミング可変機構24や、燃料噴射弁27、点火プラグ28(イグナイタ28a)、スタータモータ32、メインリレー30等を制御する。
【0046】
次に、上記バルブタイミング可変機構24の具体的な構成について、図2を参照して説明する。
なお、図2は、本実施の形態にかかるバルブタイミング可変機構24及びその周辺機器についてその概略構成を示している。
【0047】
同図2に示すように、バルブタイミング可変機構24が取り付けられる吸気カムシャフト21は、そのジャーナル21aがシリンダヘッド15の軸受部15aにより回転可能に支持されている。バルブタイミング可変機構24は、クランクシャフト14の回転がチェーン等を介して伝達されるギヤ24aと、吸気カムシャフト21の先端面にボルト42によって固定されたロータ41とを備えている。上記ギヤ24aは、その中心部を貫通する吸気カムシャフト21に対して相対回転可能となっている。
【0048】
また、ギヤ24aの先端面(図2の左側面)にはロータ41を囲うように設けられたリングカバー44が当接し、同リングカバー44の先端開口部は閉塞板45によって塞がれている。そして、ギヤ24a、リングカバー44、及び閉塞板45は、ボルト46によって一体回転可能に固定されている。従って、吸気カムシャフト21とロータ41とは同シャフト21の軸線Lを中心に一体回転可能となっており、これらに対し上記ギヤ24a、リングカバー44、及び閉塞板45は軸線Lを中心に相対回転可能となっている。
【0049】
バルブタイミング可変機構24には、上記軸受部15aや吸気カムシャフト21等に図示のごとく形成された進角側油路47及び遅角側油路48から選択的に流体(作動油)が供給される。このように作動油が供給されてバルブタイミング可変機構24が作動すると、クランクシャフト14に対する吸気カムシャフト21の相対回転位相が進角側または遅角側に変更され、吸気バルブ19のバルブタイミングが変更されるようになる。
【0050】
上記進角側油路47及び遅角側油路48は、オイルコントロールバルブ(OCV)49に接続されている。また、OCV49には供給通路50及び排出通路51が接続されている。そして、供給通路50はクランクシャフト14の回転に伴って駆動されるオイルポンプ52を介して内燃機関11の下部に設けられたオイルパン11cに繋がっており、排出通路51は直接オイルパン11cに繋がっている。
【0051】
OCV49は、四つの弁部64を有してコイルばね62及び電磁ソレノイド65により、それぞれ逆の方向に付勢されるスプール63を備えている。そして、電磁ソレノイド65の消磁状態においては、スプール63がコイルばね62の付勢力により一端側(図2中右側)に配置される。このとき、進角側油路47と供給通路50とが連通されるとともに、遅角側油路48と排出通路51とが連通される。そしてこの場合には、オイルパン11c内の作動油がオイルポンプ52により進角側油路47へ送り出されるとともに、遅角側油路48内にあった作動油がオイルパン11c内へ戻される。
【0052】
一方、電磁ソレノイド65が励磁されたときには、スプール63がコイルばね62の付勢力に抗し他端側(図2中左側)に配置される。このとき、進角側油路47と排出通路51とが連通されるとともに、遅角側油路48と供給通路50とが連通される。そしてこの場合には、オイルパン11c内の作動油がオイルポンプ52により遅角側油路48に送り出されるとともに、進角側油路47内にあった作動油がオイルパン11c内へ戻される。
【0053】
なお、こうしたOCV49(電磁ソレノイド65)の制御についても、前記電子制御装置37により実行される。
次に、バルブタイミング可変機構24におけるロータ41及びリングカバー44の詳細構造について図3を参照して説明する。
【0054】
なお、図3は、本実施の形態にかかるバルブタイミング可変機構24についてその吸気カムシャフト21の軸線Lに直行する方向に沿った断面構造を示している。
【0055】
同図3に示すように、リングカバー44の内周面44aには、吸気カムシャフト21(図2)の軸線Lへ向かって突出する四つの張出部66が、リングカバー44の周方向について所定間隔毎に形成されている。この各張出部66間には、それぞれ溝部67がリングカバー44の周方向について所定間隔毎に形成されている。また、ロータ41は、その外周面から各溝部67に挿入されるように外側方へ突出する四つのベーン68a〜68dを備えている。これらベーン68a〜68dが挿入された各溝部67内は、同ベーン68a〜68dにより進角側圧力室69及び遅角側圧力室70に区画されている。これら進角側圧力室69及び遅角側圧力室70は、ベーン68a〜68dをロータ41の周方向両側から挟むように位置している。そして、進角側圧力室69にはロータ41内を通過するように形成された上記進角側油路47が連通し、遅角側油路48にはギヤ24a内を通過するように形成された上記遅角側油路48が連通している。
【0056】
こうしたバルブタイミング可変機構24にあって、上記OCV49の電磁ソレノイド65が消磁されると、進角側油路47から進角側圧力室69へ作動油が供給されるとともに、遅角側圧力室70から遅角側油路48を介して作動油が排出される。その結果、各ベーン68a〜68dが矢印A方向へ相対移動することによりロータ41が同矢印A方向に相対回動し、これにより、ギヤ24a(クランクシャフト14)に対する吸気カムシャフト21の相対回転位相が変更される。ちなみに、上記バルブタイミング可変機構24にあっては、クランクシャフト14の回転がチェーン等を介してギヤ24aに伝達されると、これらギヤ24a及び吸気カムシャフト21は共に矢印A方向に回転する。従って、上記矢印A方向についての各ベーン68a〜68dの相対移動が行われると、吸気カムシャフト21がクランクシャフト14に対して進角し、その結果、吸気バルブ19のバルブタイミングも進角するようになる。
【0057】
一方、OCV49の電磁ソレノイド65が励磁されると、遅角側油路48から遅角側圧力室70へ作動油が供給されるとともに、進角側圧力室69から進角側油路47を介して作動油が排出される。その結果、各ベーン68a〜68dが矢印Aと逆方向へ相対移動することによりロータ41が同矢印Aと逆方向に相対回動し、これにより、ギヤ24a(クランクシャフト14)に対する吸気カムシャフト21の相対回転位相が上記と逆方向に変更される。すなわちこの場合には、吸気カムシャフト21がクランクシャフト14に対して遅角し、その結果、吸気バルブ19のバルブタイミングも遅角するようになる。
【0058】
更に、電磁ソレノイド65への印加電圧を制御してその励磁力を調整すれば、スプール63を上記消磁状態での位置と上記励磁状態での位置との間の任意の位置に配置させ、その配置される位置に応じて、各圧力室69,70の作動油の給排量を調整可能となっている。またそうした作動油の給排量の調整により、両圧力室69,70内の作動油をそれぞれ適切な圧力とすることで、吸気カムシャフト21の相対回転位相を固定できるようにもなっている。
【0059】
従って、電磁ソレノイド65への印加電圧をデューティ制御し、進角側圧力室69及び遅角側圧力室70に対する作動油の供給を制御することにより、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更したり所定のタイミングに固定したりすることが可能になる。
【0060】
ところが、内燃機関11の始動開始時には、進角側圧力室69及び遅角側圧力室70から作動油が抜けた状態になっているため、それら圧力室69,70に作動油を供給し始めてから実際にバルブタイミングを制御したり固定したりすることが可能になるのにはある程度の時間を要する。そのため、本実施の形態の装置では、内燃機関11の始動開始から一定の時間が経過するまでは、後述する押出機構53やロック機構76によって、吸気バルブ19のバルブタイミングを内燃機関11の始動に適したタイミング(始動タイミング)に保持するようにしている。なお、以下の説明では、吸気バルブ19のバルブタイミングが始動タイミングに保持されているときのカムシャフト21の相対回転位相を「始動位相」という。
【0061】
以下、これら押出機構53やロック機構76の具体的な構造について説明する。
ここでは先ず、上記押出機構53の具体的な構造について説明する。
【0062】
この押出機構53は、上記吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相となるように付勢する付勢手段として機能する。
図3に示すように、ロータ41の各ベーン68a〜68dのうちの二つのベーン68b,68dには、上記軸線Lについて線対称となるように、それぞれ押出機構53が設けられている。これら押出機構53は、吸気カムシャフト21の相対回転位相が最遅角位相よりも所定量だけ進角した位相(上記始動位相)となるように、各ベーン68b,68dを進角側に付勢するためのものである。これら押出機構53は、周方向に伸縮するコイルばね54により付勢されて進角側圧力室69内に突出する押しピン55を備えている。そして、押しピン55の先端が進角側圧力室69の内側面に当接した状態にあっては、コイルばね54によってロータ41が進角側(図3中矢印A側)に付勢されるようになる。
【0063】
上記コイルばね54の付勢力は、次の各トルクTk,Tr,Tfが下式(1)で示す関係を満たすように設定される。
Tk<Tf<(Tk+Tr) …(1)
ここで各トルクTk,Tr,Tfは、吸気バルブ19のバルブタイミングが最遅角寄りの状態であってコイルばね54が縮められている状態において、それぞれ下記のようなトルクとなっている。
・ トルクTk:吸気カムシャフト21を回転させて吸気バルブ19を開閉駆動するときの反力として同シャフト21に働く回転トルクの平均値である平均回転トルク。このトルクTkは、吸気カムシャフト21に対してその反回転方向、すなわちその相対回転位相を遅角側に変位させる方向に作用する。
・ トルクTr:吸気バルブ19のバルブタイミングを遅角側に変化させるべく遅角側圧力室70に作動油を供給する際に、同作動油の圧力に基づき吸気カムシャフト21に働く油圧トルク。このトルクTrも、吸気カムシャフト21の反回転方向に作用する。
・ トルクTf:コイルばね54の付勢力に基づき吸気カムシャフト21に働く付勢トルク。このトルクTfは、吸気カムシャフト21の回転方向、すなわちその相対回転位相を進角側に変位させる方向に作用する。
【0064】
ここで吸気バルブ19のバルブタイミングの変化に対する各トルクTk,Tr,Tfの推移の様相を図4に例示する。同図4では、上記付勢トルクTfが実線L1で、平均回転トルクTkが破線L2で、更に平均回転トルクTkに油圧トルクTrを加算したもの(「Tk+Tr」)が破線L3でそれぞれ示されている。
【0065】
このようなコイルばね54の設定により、コイルばね54の付勢力の作用するバルブタイミング領域では、遅角側圧力室70に作動油を供給して油圧トルクTrを発生させれば、遅角側に作用する油圧トルクTr及び平均回転トルクTkとの和が、進角側に作用する付勢トルクTfを上回るようになっている。また、上記バルブタイミング領域では、遅角側圧力室70から作動油を排出して油圧トルクTrを「0」とすれば、そのとき遅角側に作用する平均回転トルクTkを、進角側に作用する付勢トルクTfが上回るようになっている。そのため、コイルばね54の付勢力の作用するバルブタイミング領域においても、吸気カムシャフト21の相対回転位相を進角側、遅角側の双方に確実に変位させることができる。
【0066】
そして本実施の形態では、吸気カムシャフト21の相対回転位相を最遅角位相から進角側へと変位させていったとき、コイルばね54の付勢力がちょうど「0」となるときの吸気バルブ19のバルブタイミングが内燃機関の始動に適した上記始動タイミングとなっている。したがって本実施の形態の吸気バルブ19では、そのバルブタイミングの制御範囲の遅角側の限界が上記始動タイミングよりも更に遅角側に設定され、変更可能な吸気バルブ19のバルブタイミングの範囲がより遅角側の領域まで拡張されている。
【0067】
ちなみに、本実施の形態では、上記のようなバルブタイミングの制御範囲の遅角側の限界近傍では、圧縮行程中まで吸気バルブ19の閉じタイミングを遅らせられるようになっている。そのため、そうしたバルブタイミング領域では、アトキンソンサイクルで内燃機関を運転させることが可能となっている。
【0068】
次に、上記ロック機構76の具体的な構造について図5を参照して説明する。なお、図5は、先の図3に示したロック機構76のD−D線に沿った断面構造を示している。
【0069】
このロック機構76は、バルブタイミングが始動タイミングとなる状態で、吸気カムシャフト21の相対回転位相をロックするロック手段として機能する。
図5に示されるように、ロック機構76は、ベーン68cに設けられてコイルばね80によりギヤ24aに向かって付勢されるロックピン78と、ギヤ24aに設けられてロックピン78の先端が挿入される穴79とを備えている。
【0070】
上記ロックピン78及びコイルばね80は、ベーン68cに形成された収容孔81内に配設されている。ロックピン78の外周面にはフランジ78aが形成され、このフランジ78aにより収容孔81内においてロックピン78の先端寄りの位置に油室82が区画形成されている。この油室82は、通路83を介して遅角側圧力室70に連通しており、同遅角側圧力室70から作動油が供給されるようになっている。
【0071】
一方、ロックピン78の先端が挿入される穴79において、その底部には油室84が形成されている。油室84は、通路85を介して進角側圧力室69に連通しており、この進角側圧力室69から作動油が供給されるようになっている。
【0072】
そして、このロック機構76は、進角側圧力室69及び遅角側圧力室70に供給される作動油の圧力、すなわちこれら圧力室69,70内の油圧に応じて、吸気カムシャフト21の相対回転位相の固定及び同固定の解除を行う。
【0073】
すなわち、内燃機関11の始動中において、遅角側圧力室70に作動油が供給されるようになると、これに伴ってロック機構76の油室82内における油圧が上昇する。そして、この油圧に基づきロックピン78に働く力がコイルばね80の付勢力よりも大きくなると、ロックピン78が穴79から抜き出される。その結果、ロック機構76による吸気カムシャフト21の相対回転位相の固定が解除され、吸気バルブ19のバルブタイミング制御を実行可能な状態となる。
【0074】
一方、内燃機関11の運転中においては、上記進角側圧力室69内、及び遅角側圧力室70内の少なくとも一方の油圧が高められている。このため、これら油室82,84内における少なくとも一方の油圧により、ロックピン78がコイルばね80の付勢力に抗して穴79から抜き出された状態に維持される。すなわち、内燃機関11の運転中においては、ロック機構76による吸気カムシャフト21の相対回転位相(吸気バルブ19のバルブタイミング)の進角側及び遅角側についての固定が解除された状態に維持される。
【0075】
他方、内燃機関11が停止する過程において、クランクシャフト14の回転速度が徐々に低下すると、オイルポンプ52によりバルブタイミング可変機構24に送り出される作動油の量が徐々に低下し、ロータ41の各ベーン68a〜68dに働く油圧も徐々に低下する。この油圧が低下した状態にあっては、吸気カムシャフト21に働く上記回転トルク、若しくは上記付勢トルクTfによって、吸気バルブ19のバルブタイミングが始動タイミングとなるよう、吸気カムシャフト21の相対回転位相が進角側または遅角側に変位する。
【0076】
そして、遅角側圧力室70内の油圧が十分に低くなると、吸気カムシャフト21の相対回転位相は、前記コイルばね54の付勢力によって、始動タイミングに対応する位相で維持されるようになる。更に、この状態で、上記両油室82,84の油圧に基づきロックピン78に働く力がコイルばね80の付勢力よりも小さくなると、その付勢力によって、同ロックピン78が穴79に挿入されて、同ピン78と穴79とが係合する。すなわち、吸気バルブ19のバルブタイミングが始動タイミングで固定されるようになる。そして、ロックピン78が穴79に挿入されてから内燃機関11が停止した場合、次回の内燃機関11の始動開始時には吸気バルブ19のバルブタイミングが始動タイミングに確実に保持される。
【0077】
なお、本実施の形態にかかるバルブタイミング制御装置では、上記ロック機構76による吸気カムシャフト21の相対回転位相の固定を確実に行うべく、内燃機関11のアイドル運転中におけるバルブタイミングの制御目標位置を、始動タイミングに対応する位置に設定するようにしている。これにより、通常の手順を踏んで内燃機関11が停止されたときには、押出機構53やロック機構76を通じて、吸気バルブ19のバルブタイミングを始動タイミングで確実に固定した上で、内燃機関11が停止されるようにしている。なお、上記通常の手順とは、車両が停止した後に、内燃機関11がアイドル運転状態となった状態で、IGスイッチ29が「オフ」操作されるといった手順である。
【0078】
しかしながら、こうした本実施の形態の装置にあっても、過大な負荷がかかる等により、意図せず内燃機関11が停止されてしまうと、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動タイミングに対応する位相(始動位相)となる以前に同機関11が停止することがある。
【0079】
そして、こうした場合にあって特に、吸気カムシャフト21の相対回転位相が上記始動位相よりも遅角側の位置にあるときに内燃機関11が停止されてしまう場合には、その後における同機関11の始動に際し、その圧縮行程における適切な圧縮効果が得られなくなる。
【0080】
また、前述したように、こうした場合において特に、冬場など、外気温度が極めて低いときに内燃機関11が停止され、そのまま放置されると、その後においてバルブタイミング可変機構24の動作に用いられる作動油の粘度が高くなることで、機関始動性の低下が避けられなくなる。
【0081】
ここで、これも前述したように、上記作動油の温度が高く、その粘度が十分に低い内燃機関11の停止直後にクランクシャフト14を強制回転駆動すると、吸気カムシャフト21の相対回転位相は上記押出機構53の一部を構成するコイルばね54の付勢力によって進角側に徐々に変位するようになる。これは、詳しくは以下の理由による。
【0082】
バルブタイミング可変機構24では、そのギヤ24aがクランクシャフト14に駆動連結される一方、同ギヤ24aに対して相対回転可能に設けられたロータ41が吸気カムシャフト21に固定されている。このため、内燃機関11が停止されているときには、ギヤ24aはクランクシャフト14によって、またロータ41は吸気カムシャフト21によってそれぞれその回転位相の変位が規制される。また、上記コイルばね54は、内燃機関11の停止時においてそれらクランクシャフト14や吸気カムシャフト21を回転させるに至るほどの付勢力を有してはいない。従って、コイルばね54の付勢力が作用しているとは云え、クランクシャフト14が回転されていない限りは、吸気カムシャフト21の相対回転位相が自律的に変位されることはない。
【0083】
一方、内燃機関11の始動に際してスタータモータ32の作動が開始されると、クランクシャフト14が強制回転駆動され、これに伴って、吸気カムシャフト21も強制回転駆動される。また、スタータモータ32によりクランクシャフト14が強制回転駆動されるとはいえ、吸気カムシャフト21の相対回転位相を変位させるほどの高い作動油の圧力は未だ発生されてはいない。このため、このとき吸気カムシャフト21に働く前記各トルクTk,Tfは、下式(2)を満たす。
Tk<Tf…(2)
従って、このときコイルばね54の付勢力による付勢トルクTfにより、吸気カムシャフト21の相対回転位相が徐々に進角側に変位するようになる。
【0084】
そこで、本実施の形態の装置では、こうした実情をふまえ、内燃機関11が停止したときおける吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも遅角側の位相であるときに、上記スタータモータ32を所定時間α(例えば、6秒間)にわたって作動させるようにしている。なお、こうしたスタータモータ32の作動が実行される期間にあっては、前記メインリレー30の「オン」状態が維持される。また、上記所定時間αとしては、このように内燃機関11の停止時にスタータモータ32を作動させることで、吸気カムシャフト21の相対回転位相を良好な機関始動性が得られる位相まで進角させることができる時間が、実験などにより求められた上で設定される。
【0085】
これにより、内燃機関11の運転によって上記作動油の粘度が十分に低下している機関停止直後に、クランクシャフト14が強制回転駆動され、吸気カムシャフト21の相対回転位相が上記コイルばね54による付勢トルクTfによって進角側に変位されるようになる。従って、たとえ上記のような通常の停止手順を踏まずに内燃機関11が停止されてしまったときであれ、ロック機構76による固定を完了させることができる。あるいは、固定完了までには至らずとも、吸気バルブ19のバルブタイミングを始動タイミングに近づける側へと吸気カムシャフト21の相対回転位相を変位させることはできる。これにより、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相から大きく遅角側にずれた位相となったままの状態で内燃機関11が始動を迎えるといった事態の発生が、効果的に抑制されるようになる。
【0086】
また、本実施の形態の装置では、こうしたスタータモータ32の作動を、以下の条件(a)及び条件(b)が共に満たされるときにのみ実行するようにしている。
【0087】
条件(a):内燃機関11が意図せず停止されたこと。具体的には、以下の各条件が全て満たされていること。
・前記自動変速機のシフト位置がDレンジであること。
・IGスイッチ29が「オン」となっていること。
・内燃機関11が停止していること(クランク角センサ35からパルス信号が所定時間にわたり出力されていないこと)。
【0088】
条件(b):上記条件(a)が満たされた後、前記自動変速機のシフト位置がNレンジに操作されたこと。
上記条件(a)が成立するのは、内燃機関11が通常の手順を踏まずに停止されたときである。こうした条件(a)の成立を上記強制回転駆動の実行の必要条件とすることで、吸気バルブ19が機関始動に不適切なバルブタイミングとなったまま内燃機関11が停止されたおそれがあるときにのみ、スタータモータ32が作動されるようになる。
【0089】
また、上記条件(b)を上記処理実行の必要条件とすることで、クランクシャフト14から車輪までの動力伝達系が非伝達状態になったことを条件に、クランクシャフト14が強制回転駆動されるようになる。
【0090】
更に、本実施の形態の装置では、上記条件(a)が成立していても、内燃機関11の停止からの経過時間が所定時間β(例えば、5分)に達するまでに上記条件(b)が成立しなければ、上記メインリレー30を「オフ」操作するようにしている。これにより、上記自動変速機のシフト位置がNレンジに操作されない(上記条件(b)が満たされない)ことによって、メインリレー30の「オン」状態が機関停止後の長期にわたって不要に維持されることが防止される。
【0091】
加えて、本実施の形態の装置では、上記スタータモータ32の作動に際し、上記燃料噴射弁27による噴射動作や、上記点火プラグによる点火動作を共に強制停止させるようにしている。
【0092】
なお、本実施の形態において、上記「内燃機関11の停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相」は、具体的には、機関回転速度が所定回転速度以上であるときに算出された同相対回転位相のうちの最後に算出された位相を用いるようにしている。これは以下の理由による。
【0093】
吸気カムシャフト21のクランクシャフト14に対する相対回転位相は、前記クランク角センサ35により検出されるクランク角と、カム角センサ36を通じて検出されるカム角との位相差により算出される。そして、これらクランク角センサ35やカム角センサ36にあっては通常、機関回転速度が極度に低下すると、クランク角やカム角についての精度の良い検出が困難になる。
【0094】
このため、上記所定回転速度により規定される回転速度域をクランク角及びカム角の良好な検出が可能な機関回転速度N1(例えば、400回転/分)以上の回転速度域とすることで、良好に算出された位相のみが上記「内燃機関11の停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相」として用いられる。また特に、こうして良好に算出された相対回転位相のうちの最後に検出された相対回転位相、すなわち内燃機関11が停止するタイミングに最も近いタイミングで算出された相対回転位相が、上記「内燃機関11の停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相」として用いられるようになる。
【0095】
以下、このように内燃機関11の停止時にスタータモータ32を作動させる処理の処理手順について、図6に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、上記電子制御装置37により、所定の周期をもって繰り返し実行される。
【0096】
この処理では先ず、以下の各条件が共に満たされるか否かが判断される(ステップS100)。
・意図せず内燃機関11が停止された(上記条件(a)が満たされた)。
・吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも遅角側の位相である。
【0097】
そして、これら条件のうちいずれか一方でも満たされないと判断される場合には(ステップS100:NO)、上述したスタータモータ32の作動を実行する必要がないとして、本処理は一旦終了される。ちなみに、内燃機関11が意図せず停止された場合にあっても、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも進角側の位相である場合には、あえて上記のような機関停止時のスタータモータ32の作動を実施する必要はない。そのため、その場合には、メインリレー30は、別途の処理を通じて適宜のタイミングで「オフ」操作される。
【0098】
一方、それら条件が共に満たされると判断される場合には(ステップS100:YES)、スタータモータ32を作動させる必要があるとして、実行フラグが「オン」操作される(ステップS101)。この実行フラグは、内燃機関11が始動される毎に「オフ」操作されるフラグであり、その操作状態が次の処理(ステップS102)において参照される。
【0099】
その後、スタータモータ32の作動を開始する条件が成立しているか否かが判断される(ステップS102)。具体的には、前記条件(b)及び以下の条件(c)〜条件(e)が全て満たされるか否かが判断される。
【0100】
条件(c):スタータモータ32の作動継続時間が所定時間α未満であること。
条件(d):実行フラグが「オン」操作されていること。
【0101】
条件(e):車両が停止されていること。
ここでは、上記条件(b)、条件(d)及び条件(e)のいずれか一つでも満たされていなければ、上記のような機関停止時のスタータモータ32の作動を実行する環境が十分に整っていないと判断する。また、条件(c)が不成立であれば、機関停止時のスタータモータ32の作動が既に十分になされたと判断する。そして、電子制御装置37は、それらのいずれかの判断がなされたときには(ステップS102:NO)、スタータモータ32を作動させることなく(ステップS103の処理を実行せず)、ステップS104の処理に移行する。
【0102】
よって、本実施の形態では、意図しない内燃機関11の停止後、上記条件(b)、条件(d)及び条件(e)に示されるような実行条件が整うまでは、スタータモータ32の作動が開始されないこととなる。
【0103】
そして、意図しない内燃機関11の停止後、それら条件(b)〜(e)の全てが満たされるようになると(ステップS102:YES)、スタータモータ32の作動が開始される(ステップS103)。なお、このとき併せて、前記燃料噴射弁27による燃料噴射動作、及び点火プラグ28による点火動作が共に強制停止される。
【0104】
一方、電子制御装置37は、こうしてスタータモータ32の作動の有無を適宜選択した後、その選択の如何にかかわらず、メインリレー30の「オン」状態を継続させる条件が成立しているか否かの判断を実施する(ステップS104)。具体的には、以下の各条件が共に満たされるか否かが判断される。
・スタータモータ32の作動継続時間が所定時間α未満であること。
・内燃機関11が停止された後の経過時間が所定時間β未満であること。
【0105】
そして、これら条件が共に満たされると判断される場合には(ステップS104:YES)、上記メインリレー30の「オン」状態が継続された後(ステップS105)、本処理が一旦終了される。
【0106】
そしてその後、本処理が繰り返し実行され、上記各条件のうちいずれか一方でも満たされないと判断されるようになると(ステップS104:NO)、メインリレー30の「オフ」操作が許可される(ステップS106)。すなわち内燃機関11やその周辺機器への通電についての遮断が許可される。その後、本処理は一旦終了される。
【0107】
以下、こうしたスタータモータ32の作動処理がどのように行われるのかを、図7に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
なお、図7は、内燃機関11の停止時に、吸気カムシャフト21の相対回転位相が上記始動位相よりも遅角側の位相となる場合における上記作動処理の処理態様の一例を示している。
【0108】
また、図7は、こうした作動処理の一例において、以下に記載する各項目についてそれぞれ示している。すなわち、同図において、(a)はIGスイッチ29の操作状態についての推移を、(b)は燃料噴射弁27による噴射動作の実行状況についての推移を、(c)は点火プラグ28による点火動作の実行状況についての推移をそれぞれ示している。また、(d)はメインリレーの操作状況についての推移を、(e)は実行フラグの操作状態についての推移を、(f)は自動変速機のシフト位置の操作状態についての推移をそれぞれ示している。更に、(g)はスタータモータ32の作動状況についての推移を、(h)は車両の走行速度についての推移を、(i)は機関回転速度についての推移を、(j)は吸気カムシャフト21の相対回転位相についての推移をそれぞれ示している。
【0109】
同図の例にあって、時刻t1では、以下の各条件が満たされている。
・同図(a)に示されるIGスイッチ29が「オン」操作されている。
・同図(f)に示される自動変速機のシフト位置がDレンジに操作されている。
・同図(j)に示される吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも遅角側の位相である。
【0110】
また、この時刻t1においては、同図(e)に示されるように実行フラグは「オフ」に設定されており、同図(d)に示されるようにメインリレー30は「オン」となっている。
【0111】
さて、そうした時刻t1において、内燃機関11に過大な負荷がかかり、その運転が停止されたものとする。その後も内燃機関11は惰性により回転され続けるも、同図(i)に示されるように、機関回転速度は急速に低下していく。このときの吸気カムシャフト21の相対回転位相は、同吸気カムシャフト21の回転に伴う反力により、徐々に上記始動位相に近づくように変位されていく(同図(j))。
【0112】
その後の時刻t3において、車両及び内燃機関11が停止されると、吸気カムシャフト21の回転も停止されるため、その相対回転位相の変位は停止されることとなる。
【0113】
更にこのとき、機関停止時の吸気カムシャフト21の相対回転位相が、上記始動位相よりも遅角側に位置していれば、上記ステップS100に示される条件が成立することとなる。ちなみに、本実施の形態では上述したように、上記相対回転位相の適正な検出が継続不能となる速度N1未満に機関回転速度が低下する直前の検出値を、吸気カムシャフト21の機関停止時の相対回転位相としている。そのため、機関回転速度が速度N1まで低下する時刻t2の直前における上記相対回転位相の検出値にて、そうした条件成立の有無の判定が行われることとなる。
【0114】
なお、この例では、同図(j)に示すように、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相に達する前に、上記時刻t2を迎えている。したがって、意図せぬ内燃機関11の停止が確認された時刻t3において、上記ステップS100の条件が成立し、上記実行フラグが「オン」操作されることとなる(同図(e))。
【0115】
その後の時刻t4において、同図(f)に示されるように、自動変速機のシフト位置がNレンジに操作されると、上記ステップS102の作動条件が成立し、同図(g)に示されるようにスタータモータ32の作動が開始され、内燃機関11がモータ駆動されるようになる。そして、これにより、吸気カムシャフト21が回転されて、その回転に伴う反力も発生されるようになる。そのため、上記のごとく、始動位相に至る前に停止した吸気カムシャフト21の相対回転位相の進角側への変位が再び開始されるようになる(同図(j))。
【0116】
ちなみに、本実施の形態では、上記のごとく、このときのスタータモータ32の作動については、それに連動して内燃機関11の燃料噴射や点火が実行されないようになっている(ステップS103)。したがって、このときの内燃機関11の燃料噴射動作や点火動作は、同図(b),(c)に示されるように、強制的に停止状態に保持され、スタータモータ32が作動するとはいえ、内燃機関11の再始動が図られることはない。
【0117】
なお、この例では、こうした機関停止後のスタータモータ32の作動により、時刻t5において、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相まで変位され、バルブタイミング可変機構24のロック機構76による上記相対回転位相のロックが行われている。
【0118】
その後の時刻t6において、そうしたスタータモータ32の作動の継続時間が上記所定時間αを超えると、同図(d)に示すようにメインリレー30が「オフ」操作され、内燃機関11やその周辺機器への通電が遮断される。そして、これに伴い、スタータモータ32の作動も停止される。
【0119】
ちなみに、本実施の形態では、たとえ同図(a)に一点鎖線で示されるように、運転者によってその時刻t6以前にIGスイッチ29が「オフ」操作されたとしても、メインリレー30の「オン」状態は維持されるようになっている。
【0120】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)本実施の形態では、内燃機関11が停止したときおける吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも遅角側の位相であるときに、スタータモータ32を所定時間αにわたって駆動するようにした。これにより、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相から大きく遅角側にずれた位相となったままの状態で内燃機関11が始動を迎えるといった事態の発生が、効果的に抑制されるようになり、ひいては良好な機関始動性の好適な維持が図られるようになる。
【0121】
(2)また、本実施の形態では、こうしたスタータモータ32の作動を、内燃機関11が意図せず停止されたときにのみ実行するようにした。これにより、吸気バルブ19が機関始動に不適切なバルブタイミングとなったまま内燃機関11が停止されたおそれがあるときにのみ、スタータモータ32が作動されるようになる。このため、クランクシャフト14が不要なタイミングで強制回転駆動されることを好適に抑制することができるようになる。
【0122】
(3)また、本実施の形態では、こうしたスタータモータ32の作動を、自動変速機のシフト位置がNレンジに操作されたことを条件に実行するようにした。これにより、クランクシャフト14から車輪までの動力伝達系が非伝達状態になったことを条件に、スタータモータ32の作動が実行されることとなる。その結果、クランクシャフト14を適切に駆動することができるようになる。
【0123】
(4)また、本実施の形態では、内燃機関11の停止後の経過時間が所定時間βに達したときには、メインリレー30を「オフ」操作するようにした。これにより、上記自動変速機のシフト位置がNレンジに操作されないことによって、メインリレー30の「オン」状態が機関停止後の長期にわたって不要に維持されることを防止することができるようになる。従って、電力の浪費を好適に抑制することができるようになる。
【0124】
(5)また、本実施の形態では、「内燃機関11の停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相」として、機関回転速度が所定回転速度N1以上であるときに算出された同相対回転位相のうちの最後に算出された位相を用いるようにした。これにより、「内燃機関11の停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相」として、良好に検出された吸気カムシャフト21の相対回転位相のうちの最後に検出された位相、すなわち最も機関停止時における位相に近い位相を用いることができるようになる。
【0125】
(6)また、本実施の形態では、上記スタータモータ32の作動に際し、燃料噴射弁27による噴射動作、及び点火プラグ28による点火動作を共に強制停止するようにした。これにより、それら吸気カムシャフト21の相対回転位相を移動させる上では必要のない動作を省略することができるようになる。
【0126】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態において、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相となるように付勢することが可能であれば、押出機構53の構成は任意に変更可能である。
【0127】
・また、上記実施の形態において、ロック機構76の構成を任意に変更することもできる。要は、バルブタイミングが始動タイミングとなる状態で、吸気カムシャフト21の相対回転位相を固定することができればよい。
【0128】
・上記実施の形態では、吸気カムシャフト21の相対回転位相を始動位相で固定するロック機構76を備えたバルブタイミング制御装置に本発明を適用するようにしたが、本発明は、ロック機構76を備えていないバルブタイミング制御装置にも適用可能である。
【0129】
・上記実施の形態では、「内燃機関11の停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相」として、機関回転速度が所定回転速度N1以上であるときに算出された同相対回転位相のうちの最後に算出された位相を用いるようにしたが、これに限られない。例えば、機関回転速度が低下したときであっても吸気カムシャフト21の相対回転位相についての精度の良い算出が可能であれば、内燃機関11が停止したときに算出された吸気カムシャフト21の相対回転速度そのものを用いるようにしてもよい。要は、内燃機関11が停止したときにおける吸気カムシャフト21の相対回転位相を精度良く推定、若しくは検出することができればよい。
【0130】
・上記実施の形態では、本発明を自動変速機が搭載された内燃機関11に適用するようにしたが、本発明は手動変速機が搭載された内燃機関11にも適用可能である。ちなみに、上記実施の形態では、自動変速機を搭載する車両への適用例を説明しており、自動変速機のシフト位置がNレンジに設定されていることを、上記機関停止後のスタータモータ32の作動の実行条件の一つとして設定している。上記のように本発明を手動変速機を搭載する車両に適用する場合には、以下のようにすれば、同様の実行条件の設定が可能となる。例えば、手動変速機のシフト位置がN位置になっていることを検出するセンサを設けておけば、そのセンサの検出結果に基づいて同様の実行条件の成立の有無を判定することができる。また、その手動変速機と内燃機関11との間に介設されたクラッチが接続されているか否かを検出するセンサを設けても、そのセンサの検出結果に基づいて同様の実行条件の成立の有無を判定することができる。要は、クランクシャフト14から車輪までの動力伝達系が非伝達状態になっているか否かを検出するセンサ等を備え、その非伝達状態が検出されているときにのみ、上記機関停止後のスタータモータ32の作動を実行するようにすれば、上記(3)に記載の効果を奏することができる。
【0131】
・更に、そうしたクランクシャフト14から車輪までの動力伝達系が非伝達状態になっていることの確認を、上記機関停止後のスタータモータ32の作動の実行条件から省いてもよい。要は、機関停止後のスタータモータ32の作動時に、クランクシャフト14から車輪までの動力伝達系が非伝達状態にされることが予め分かっているのであれば、あえてそうした確認を行わなくてもよい。
【0132】
・上記実施の形態では、内燃機関11が意図せず停止されたことを前記条件(a)が満たされることにより判断するようにしたが、これに限られない。要は、内燃機関11が意図せず停止されたことを好適に判断することができるのであれば、その判断に用いる条件は適宜変更可能である。
【0133】
・上記実施の形態では、内燃機関11が意図せず停止されたことを一条件として、スタータモータ32を作動させるようにしたが、これに限られない。機関停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも大きく遅角側にずれていることを好適に判断することが可能であれば、上記条件を適宜変更若しくは省略してもよい。
【0134】
・上記実施の形態では、機関停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも遅角側の位相にあるときに、スタータモータ32を作動させるようにしたが、これに限られない。これに代えて、あるいはこれに併せて、機関停止時における吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相よりも進角側の位相であるときに、スタータモータ32を作動させるようにしてもよい。こうした構成によれば、吸気カムシャフト21の回転に伴って同シャフト21に働く前記トルクTkによって、上記相対回転位相を遅角側に変位させることができるようになる。これにより、吸気カムシャフト21の相対回転位相が始動位相から大きく進角側にずれた位相となったままの状態で内燃機関11が始動を迎えるといった事態の発生が、効果的に抑制されるようになる。従って、こうした構成によっても、良好な機関始動性の好適な維持が図られるようになる。
【0135】
・上記実施の形態では、スタータモータ32を作動させる条件が満たされると、同スタータモータ32の作動を、直ちに開始させるとともにその後の所定時間αにわたり継続するようにしたが、これに限られない。例えば、スタータモータ32の作動を開始するタイミングを、上記条件が満たされてから所定の時間をおいたタイミングに設定する等してもよい。要は、作動油の温度が過度に低下する前の所定期間にわたりスタータモータ32を作動させればよい。
【0136】
・上記実施の形態では、クランクシャフト14を強制回転駆動させるための構成として、スタータモータ32を用いるようにしたが、これに限られない。こうした構成としては他に、例えば別途設けた専用のモータや、ハイブリッド車両の走行用モータなどを用いることもできる。要は、クランクシャフト14をカムシャフト21ともども強制回転駆動させることができればよい。
【0137】
・上記実施の形態では、クランクシャフト14に対する吸気カムシャフト21の相対回転位相を可変制御する装置に本発明を適用するようにしたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、クランクシャフト14に対する排気カムシャフト22の相対回転位相を可変制御する装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態が適用される内燃機関及びその周辺機器についてその概略構成を示すブロック図。
【図2】本実施の形態にかかるバルブタイミング可変機構及びその周辺機器についてその概略構成を示すブロック図。
【図3】同バルブタイミング可変機構についてその内部構造を示す断面図。
【図4】吸気カムシャフトに働く各トルクとバルブタイミングとの関係を示すグラフ。
【図5】本実施の形態にかかるロック機構についてその図3のD−D線に沿った断面構造を示す断面図。
【図6】スタータモータの作動処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図7】同作動処理についてその処理態様の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
11…内燃機関、11a…シリンダブロック、11c…オイルパン、12…ピストン、13…コネクティングロッド、14…クランクシャフト、15…シリンダヘッド、15a…軸受部、16…燃焼室、17…吸気ポート、18…排気ポート、19…吸気バルブ、20…排気バルブ、21…吸気カムシャフト、21a…ジャーナル、22…排気カムシャフト、24…バルブタイミング可変機構、24a…ギヤ、25…吸気通路、26…排気通路、27…燃料噴射弁、28…点火プラグ、28a…イグナイタ、29…イグニッションスイッチ、30…メインリレー、31…バッテリ、32…スタータモータ、33…車速センサ、34…シフト位置センサ、35…クランク角センサ、36…カム角センサ、37…電子制御装置、38…点火プラグ、41…回転部材、42…ボルト、44…リングカバー、44a…内周面、45…閉塞板、46…ボルト、47…進角側油路、48…遅角側油路、49…オイルコントロールバルブ、50…供給通路、51…排出通路、52…オイルポンプ、53…押出機構、54…コイルばね、55…押しピン、62…コイルばね、63…スプール、64…弁部、65…電磁ソレノイド、66…張出部、67…溝部、68a,68b,68c,68d…ベーン、69…進角側圧力室、70…遅角側圧力室、76…ロック機構、78…ロックピン、78a…フランジ、79…穴、80…コイルばね、81…収容孔、82…油室、83…通路、84…油室、85…通路。
Claims (9)
- 車両用内燃機関のクランクシャフトに駆動連結されたカムシャフトについてその同クランクシャフトに対する相対回転位相を進角側圧力室及び遅角側圧力室に選択的に供給される流体の圧力に基づいて進角側と遅角側とのいずれかに変更する内燃機関のバルブタイミング可変機構と、前記カムシャフトの相対回転位相が最遅角位相よりも所定量だけ進角した機関始動用の位相となるよう進角側への付勢を行う付勢手段と、を有する車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カムシャフトを強制回転駆動する駆動手段を備え、機関停止時に該駆動手段により所定期間にわたって前記クランクシャフトを強制回転駆動させるとともに、該強制回転駆動に際し、前記内燃機関に対する燃料の噴射動作、及び同燃料に対する点火動作を共に停止させる
ことを特徴とする車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カムシャフトの相対回転位相を前記機関始動用の位相でロックするロック手段を更に備える
ことを特徴とする車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記クランクシャフトの強制回転駆動は、機関停止時における前記カムシャフトの相対回転位相が前記機関始動用の位相にないことを条件に実行される請求項1または2に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記クランクシャフトの強制回転駆動は、機関停止時における前記カムシャフトの相対回転位相が前記機関始動用の位相よりも遅角側にあるときにのみ実行される
請求項1または2に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記クランクシャフトの強制回転駆動は、前記内燃機関が意図せず停止されたときにのみ実行される
請求項1〜4のいずれかに記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記内燃機関が意図せず停止されたことは、機関停止時に、前記クランクシャフトから車輪までの動力伝達系が伝達状態にあり、且つイグニッションスイッチがオンであることをもって判定される
請求項5に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記クランクシャフトの強制回転駆動は、前記クランクシャフトから車輪までの動力伝達系が非伝達状態になったことを条件に実行される
請求項1〜6のいずれかに記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記駆動手段は、電力供給に基づいて前記クランクシャフトを強制回転駆動させるものであって、前記内燃機関が停止された後の所定時間にわたって前記動力伝達系が非伝達状態にならないときには、前記駆動手段への通電を遮断する
請求項7に記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 機関停止時における前記カムシャフトの相対回転位相とは、機関回転速度が所定回転速度以上であるときの当該相対回転位相の検出履歴のうちの最後に検出された位相である
請求項1〜8のいずれかに記載の車両用内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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