JP3851953B2 - 溶接疲労強度を向上させる溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は低変態温度溶接材料を使用する溶接方法に関するものである。更に詳しくは、低変態温度溶接材料を使用して金属板の表面と裏面のように溶接熱が影響し合う距離に複数個所溶接する溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
この出願の発明者らはこれまでにも溶接施工後に特別な後処理を実施しなくても、溶接継手の疲労強度が向上する溶接方法および溶接材料に関する特許を出願し、既に登録されている(文献1−3)。
【0003】
【文献】
文献1: 特許3010211号
文献2: 特許3350726号
文献3: 特許3350727号
【0004】
通常の溶接材料を使用して溶接する場合には溶接部に引張残留応力が誘起されるので金属板の表面と裏面のように溶接距離が短い個所を複数溶接する場合においても残留応力の干渉はほとんど問題にならないが低変態温度溶接材料を使用して溶接する場合には溶接終了後直ちに溶接部に圧縮残留応力が誘起されるため溶接疲労強度に大きな影響を与えることになる。
【0005】
たとえば、金属板の表面と裏面を低変態温度溶接材料を用いて溶接する場合には最初に溶接した表面の溶接部が次に溶接する裏面からの溶接熱の影響を受けて表面の溶接部の圧縮残留応力が低減してしまい溶接金属の溶接疲労強度が低下するという問題を生じる。
【0006】
そこで、この出願の発明は以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、発明者らが提案し、かつ実際的にも優れた効果が得られている低変態温度溶接材料の特徴を活かし、かつ溶接疲労強度が向上する溶接方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するためのものとして、第1には、溶接時に溶接熱の影響を受ける距離に低変態温度溶接材料を用いて金属板の表裏を複数箇所溶接するに際し、複数箇所を同時に溶接することを特徴とする溶接方法を提供し、第2には、複数箇所の溶接時間の差が1分以内である上記溶接方法を、また、第3には角回付加溶接である上記溶接方法を提供する。
【0008】
また、この出願の発明は、第4には、上記溶接方法で溶接されていることを特徴とする溶接体を提供する。
【0009】
を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は以上のとおりの特徴をもつものであるが、この出願の発明の溶接方法は発明者の提案した先行発明(特許第3010211号)で提案している低変態温度溶接材料を使用する溶接方法の改良に関するものである。
【0011】
なによりもまず、この出願の発明は溶接温度が互いに影響し合う距離に複数個所の溶接をするに際し、その複数個所の溶接を同時に行い複数箇所の溶接部の加熱と冷却の温度変化を同じくすることによって圧縮残留応力を効果的に導入するものである。そして、圧縮残留応力を効果的に導入することによって溶接疲労強度を向上させるものである。
【0012】
従来の溶接方法では金属板の表面と裏面を溶接する場合には、溶接熱による劣化を防ぐために表面の溶接が終了して溶接部近辺の温度をパス間温度(多パス溶接において、次のパスの溶接が開始される直前の決められた位置の温度であり、通常は50℃または150℃に施工管理されている)以下になるのを確認してから引続くパスを溶接することが一般に行われている。
【0013】
したがって、この出願の発明のように金属板の表面と裏面を溶接するに際し表面と裏面を同時に溶接することによって圧縮残留応力が効果的に導入されることは全く予想外のことであり従来の知識や経験からは全く予期できないことであった。
【0014】
この出願の発明を図1〜図3に示す典型的な溶接構造物を用いて説明するが、もちろん、この出願の発明が以下の例によって限定されることはない。
【0015】
図1はウエッブ(4)にフランジ(3)をT字状に設置して表面(1)の溶接と裏面(2)の溶接によって成形されたT字縦継手の斜視図である。
【0016】
また、この出願の発明は図1に示されるような直線状の溶接だけではなく図2のコルゲートビームのように溶接部が曲線部を有する場合にも効果的である。
【0017】
さらには、この出願の発明は図3に示されるようなウエッブ(4)とフランジ(3)をIの字のように溶接したI型ビームに溶接された付加物(5)の角回溶接部分(1)を溶接または付加溶接するような場合にも好適に利用される。
【0018】
このような構造の金属板の表面と裏面を溶接する場合には従来方法では溶接熱による劣化を防ぐために表面(1)の溶接が終了して溶接部近辺の温度がパス間温度(通常は50℃または150℃)以下になるのを確認してから裏面(2)を溶接することが一般に行われている。
【0019】
しかしながら、低変態温度溶接材料を使用して溶接する場合には溶接部に圧縮残留応力が導入されるため、金属板の表面を溶接して温度が降下してから裏面を溶接すると、溶接金属の表側と裏側の冷却時期が異なり溶接金属の表面と裏面が同時に膨張することはなく溶接金属の表面と裏面の同時に膨張する場合に比較して圧縮残留応力が極めて小さくなってしまう。
【0020】
そこで、この出願の発明は低変態温度溶接材料を使用して溶接するに際し、溶接金属の表面の溶接と裏面の溶接を同時に行うことによって溶接金属の圧縮残留応力を効果的に導入して疲労強度を向上するものである。
【0021】
この出願の発明の効果を調べるために図1〜図3に示される構造のものを従来溶接材料と低変態温度溶接材料を使用してそれらを従来の方法とこの出願の発明の溶接方法で溶接し、その溶接疲労強度を比較したものが表1である。
【0022】
【表1】
表1において、継手番号(A−3)、(B−2)、(C−3)は従来方法の態様を示したものであり、従来溶接材料を使用してT字縦継手、コルゲートビーム、付加物の角回溶接の表面(1)を溶接した後、溶接部の温度が50℃まで降下してから裏面(2)を溶接したものである。また、継手番号(A−2)、(C−2)も従来方法の溶接法であり、低変態温度溶接材料を使用してT字縦継手、付加物の角回溶接の表面(1)を溶接した後、溶接部の温度が50℃まで降下してから裏面(2)を溶接したものである。
【0023】
そして、継手番号(A−1)、(B−1)、(C−1)はこの出願の発明の態様を示したものであり、低変態温度溶接材料を使用してT字縦継手、コルゲートビーム、付加物の角回溶接の溶接において、溶接金属の表面(1)と裏面(2)を同時に溶接したものである。
【0024】
なお、表1の低変態温度溶接材料として、表2の組成のものを用いた。
【0025】
【表2】
表1の疲労寿命の回数から明らかなように、低変態温度溶接材料を使用して溶接金属の表面(1)と裏面(2)を同時に溶接するこの出願の発明〔継手番号(A−1)、(B−1)、(C−1)〕は、従来溶接材料を用いて従来溶接方法で溶接する方法〔継手番号(A−3)、(B−2)、(C−3)〕や低変態溶接材料を用いて従来溶接方法で溶接する方法〔継手番号(A−2)、(C−2)〕に比べて明らかに疲労寿命回数が多いことから溶接疲労強度が優れていることが分かる。
【0026】
表1における継手番号(A−1)と(A−2)における疲労寿命の回数の差は残留応力の大きさの違いで生じたものであり、試験番号(A−2)と(A−3)における疲労寿命の回数の差は圧縮残留応力の正負記号の違いによって生じているものと考えられる。
【0027】
なお、この試験ではウエブを屈曲させた、いわゆるコルゲートビームを使用したが、ストレートのウエブ、すなわち通常のI型溶接梁への適用しても同様の効果を生じるものと考えられる。
【0028】
【発明の効果】
複数個所の溶接を同時に行うという簡便な方法で圧縮残留応力を効果的に導入して溶接疲労強度の高強度化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】T字継手の溶接態様を示したものである。
【図2】コルゲートビームの溶接態様を示したものである。
【図3】I型ビームに付加物の角回溶接の態様を示したものである。
【符号の説明】
1 溶接の角回表面部
2 溶接の角回裏面部
3 フランジ
4 ウエッブ
5 付加物
Claims (4)
- 溶接時に溶接熱の影響を受ける距離に低変態温度溶接材料を用いて金属板の表裏を複数箇所溶接するに際し、複数箇所を同時に溶接することを特徴とする溶接方法。
- 複数箇所の溶接時間の差が1分以内であることを特徴とする
請求項1の溶接方法。 - 角回付加溶接であることを特徴とする請求項1の溶接方法。
- 請求項1ないし3のいずれかの溶接方法で溶接されていることを特徴とする溶接体。
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