JP3850253B2 - 塗膜密着性および耐食性に優れたアルミニウム下地処理材 - Google Patents

塗膜密着性および耐食性に優れたアルミニウム下地処理材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、飲料缶や食缶の缶蓋用アルミニウム塗装下地処理材および缶蓋用アルミニウム塗装材に関する。特に、クロメート皮膜、ジルコニウム皮膜等の化成下地処理を行わずに樹脂皮膜を塗装した缶蓋用アルミニウム塗装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム材は軽量で、適度な機械的特性を有し、かつ美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類等に広く使われている。例えば、食品のアルミニウム等容器は、アルミニウムの優れた成形加工性を利用して、樹脂塗装を行った後絞り加工する方法等により成形されている。
その場合、成形加工を受けてもアルミニウム表面と樹脂塗装との間の密着性を優れたものとするために、アルミニウム表面に密着性向上効果の大きい下地皮膜を予め施しておくことが一般的に行われている。
このため従来は、リン酸、クロム酸およびフッ酸を主成分とする化成処理液でアルミニウム材を処理する「クロメート処理」が施されてきた。例えば特開平3−177580号には下地皮膜としてクロム付着量を7〜25mg/m2としたリン酸クロメート皮膜層を設けた樹脂塗装材が提案されている。このようなクロメート処理は、製造工程管理が容易でコストが安く、しかも性能が安定するため、広く用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし近年、環境汚染、環境破壊、健康に対する安全性、エネルギー需給等への関心が急激に高まっている。
リン酸クロメート皮膜自体から有害な6価クロム等が溶出することは無く、リン酸クロメート皮膜自体が環境汚染や健康被害をまねくことは無いとされている。しかし、その製造工程では、無水クロム酸等の有害な6価クロムを含有する化成液を使っており、化成液廃液およびリンス工程で発生する6価クロムを含有する排水等を処理し、無害化しなければならない。このような処理には多大な人力およびエネルギー、高価な廃液処理設備等を必要とするため、製品のコストアップが避けられない。近年は規制が益々強化される方向にあり、廃液処理によるコストは従来以上に高まる傾向にある。
【0004】
このような課題を克服するために、クロム等の有害な金属イオンを含まない化成処理液を塗布またはスプレー等でアルミニウム材表面に付着させた、いわゆるノンクロメート皮膜と言われる下地処理アルミニウム材が提案されている。
特開平10−317162号にはリン酸またはその塩、ジルコニウム塩、フッ化物、亜リン酸またはその塩、硝酸またはその塩を含む表面処理浴で処理する方法、また特公平7−84665号にはリン酸イオン、アルミニウムキレート化剤および界面活性剤を含むアルカリ脱脂剤で洗浄処理後、ジルコニウムイオン、リン酸イオンおよびフッ素イオンを含む化成処理剤で処理し、ジルコニウムを含む下地処理皮膜を形成する方法、あるいはさらにバナジウムイオンを含む化成処理液で処理して、ジルコニウムおよびバナジウムを含む下地処理皮膜を形成する方法、特開平7−310189号にはリン酸イオン、ジルコニウム化合物、フッ化物および酸化剤を含む処理液で処理する方法等が開示されている。
これらの処理液は有害な6価クロムを含まないことから、環境汚染や健康被害といった問題が著しく軽減されている。しかし、これらの皮膜は成形加工後の塗膜密着性やレトルト処理といった苛酷な条件下での耐食性に問題を残しており、リン酸クロメート皮膜の性能レベルに達していない。
【0005】
このような性能上の問題を解決するために、特開平7−331276号にはリン酸イオン、ジルコニウム化合物またはチタン化合物、フッ化物および水溶性ポリアミドを含有する処理液で処理する方法、特開平11−115098にはリン酸イオン、縮合リン酸イオンおよびフェノール系水溶性重合体からなる表面被覆層を設ける方法等、いわゆる有機−無機複合タイプの化成処理剤が、特開平10−46101号にはフェノール、ナフトールまたはビスフェノール−ホルムアルデヒド樹脂からなる被覆層を設けるといった有機皮膜タイプの下地処理層を設ける方法が開示されている。
これらによれば加工後の密着性は高まり、酸性の液に対する耐食性も向上するなど性能上の向上が認められる場合がある。しかし、下地処理皮膜中に樹脂を含むため、下地処理皮膜上に塗布する樹脂の種類によっては相性が悪い場合が生じ、塗工時にハジキを生じたり、所定の性能が出ない等の不具合が起こることがある。その上、廃液処理の際に、一旦金属成分と有機物とを予め分離することが必要で、さらに分離した有機物をBOD処理等で別途処理しなければならないため、工程が増し、廃液処理コストが増加する。
特開平4−231120号には100〜2000Åのリン酸または硫酸陽極酸化皮膜を設けた下地処理材が提案されている。しかし、この方法では電力を必要とするために設備のイニシャルコストおよびランニングコストが高いので、製品に求められている低コスト要求に応えられない。
【0006】
ところで、アルミニウム板表面には圧延油等の有機物が付着している。そのため、上記の各種下地処理を施す際には、前処理として、アルカリ性液体による脱脂・エッチング工程、さらには酸洗等も付加して表面の汚れを除去する操作を行う。この前処理が不十分または不適切であると、アルミニウム板表面に多量の有機物層が残留したまま下地処理を施すことになる。
このような下地では、ときに有機物層が下地最表面に濃縮するため、近年急速に普及してきた水性塗料を塗装する場合、塗工時のハジキおよび密着性不良をまねく危険性が高い。
こうした事実から、水性塗料を用いる際は表面の有機物を極力減らすのが良い、との認識は公知であった。しかし一方で、工業的なスケールにおいて有機物層を完全に除去することは、コスト面で不可能であるため、有機物残存量の実際的な妥協点を見出す必要があった。
【0007】
以上のような事情から、Cr等の有害重金属を含まず、塗料の塗膜密着性、耐食性および耐ハジキ性に優れ、なおかつ低コストで製造できる飲料缶または食缶用のアルミニウム蓋材が強く求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記課題を解決すべく、クロメート皮膜、ジルコニウム皮膜等の化成下地処理を行わず、アルミニウム酸化皮膜に直接塗装する方法の検討を続けた。その結果、アルミニウム酸化皮膜の厚みおよび構成成分を的確に制御し、かつその最表面を管理することによって、必ずしも重金属を含む化成皮膜を付与しなくとも、優れた材料を提供できることを突きとめた。
すなわち、表面に厚さ=1〜200nmで、かつ最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMgで5mass%以下かつHで10mass%以下である、AlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けることにより、優れた表面処理材が得られることを見出した。
請求項2の発明は、さらに最表面の炭素濃度を規定したものである。
請求項3の発明は、これらの上に樹脂皮膜を設けたものである。
請求項4、5は請求項1、2に関する製造方法である。
より具体的には、請求項1の発明は表面に厚さ=1〜200nmで、かつ最表面から酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMg:5mass%以下、H:10mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とする塗膜密着性および耐食性に優れた缶蓋用アルミニウム下地処理材である。
また請求項2の発明は、表面に厚さ=1〜200nmで、かつ最表面から酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMg:5mass%以下、H:10mass%以下、かつ最表面のC濃度が50mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とする水性塗料の塗膜密着性、耐食性および耐ハジキ性に優れた缶蓋用アルミニウム下地処理材である。
さらに請求項3の発明は、請求項1または2のアルミニウム下地処理材の表面に、エポキシ、ポリエステル、塩化ビニルの少なくとも1種を含む樹脂皮膜を設けたことを特徴とする塗膜密着性および耐食性に優れた缶蓋用アルミニウム塗装材である。
また請求項4の発明は、アルミニウム材に対し、エッチング量が50〜200mg/m2のアルカリ脱脂を行った後、pHが4.0以下かつAlイオン濃度、Mgイオン濃度がそれぞれ1mass%以下の酸で酸洗浄を行うことを特徴とする請求項1のアルミニウム下地処理材の製造方法である。
また請求項5の発明は、アルミニウム材に対し、エッチング量が50〜200mg/m2かつ脱脂浴の油分が3mass%以下のアルカリ脱脂を行った後、pHが4.0以下かつAlイオン濃度,Mgイオン濃度がそれぞれ1mass%以下,油分が3mass%以下の酸洗浴で酸洗浄を行うことを特徴とする請求項2のアルミニウム下地処理材の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
缶用塗装材の母材には、機械的強度、加工性を満足させるために2〜5mass%程度のMgを添加したアルミニウム合金(JIS−5021、5052、5082、5182等)が使われており、これらの材料は、加熱−圧延時にアルミニウム材マトリクス中のMgが表面に偏析濃化することが知られている。そして従来、その酸化皮膜構造は、最表面にMg酸化物層があり、その下にアルミニウム酸化物層があるという2層構造モデルで示されていた。そして、C(炭素)の分布状態に関する考察はほとんどなされてこなかった。
発明者らはGDS(グロー放電発光スペクトル)、オージェといった解析機器を用い、酸化皮膜の深さ方向の元素分布、いわゆるデプスプロファイルを詳細に調査した。その結果、各元素は酸化皮膜全体に均一に存在するのではなく、また明確な二層を形成しているのでもなく、各元素ごとの濃度分布が異なることを確認した。
なお、測定対象とした元素は、H,C,O,Mg,Al,Mn,Si,Fe,Zn,CrおよびZrであり、以後、各元素のmass%は、この11元素を母集団として議論するが、これらはアルミニウム材表面のほとんど全てを網羅していると考えられるため、議論の一般性を何ら損なうものではない。また、その深さ方向の測定精度は1nmの精度が十分に保証されるものである。
【0010】
Mgは酸化皮膜全体に均一に存在するわけではなく、また従来の2層構造モデルで示されるような明確な層を形成しておらず、最表面よりやや深い部位が最も濃化した濃度勾配を有して分布している。
この時、最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向でのMgの最大濃度が5mass%以下となるよう調製した酸化皮膜は、缶用塗料の塗膜とアルミニウム材の塗膜密着性、特に、板厚減少を伴う強加工後の塗膜密着性が十分高いのに対し、最大濃度が5mass%を超えていると、加工後の塗膜密着性が著しく低下することを見出した。
その理由として、Mg化合物は純粋なアルミ酸化膜との親和性に乏しく、Mg化合物/アルミ酸化膜の界面から塗膜剥離しやすいためと考えられる。また、Mg化合物は水への溶解度が高いので、多量に存在すると耐食性をも低下させる。そしてそれらの悪影響は、深さ方向でのMgの最大濃度が5mass%を超えた時に顕著に現れる。
【0011】
また、主に水酸化物に由来するH(水素)も、Mgと同様に深さ方向に傾斜構造を有していた。そして、最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度が10mass%以下となるよう調製した時、塗料の塗膜とアルミニウム材の加工後の塗膜密着性が十分高いのに対し、最大濃度が10mass%を超えていると、加工後の塗膜密着性が低下することを見出した。
その理由として、Hを含む化合物(水酸化Al,水酸化Mg,他)はもろいので、缶蓋のような強加工を行うと、Hを含む化合物を起点にして酸化皮膜が破壊されるためと考えられる。そしてその悪影響は、Hの最大濃度が10mass%を超えた時に顕著に現れる。
なお、上記のMgとHの効果はどちらも大きいので、その最大濃度は同時に規定されるべきであり、どちらか片方を規定しただけでは十分な塗膜密着性を発揮することはできない。
【0012】
これらに加え、有機物に由来するCの検討を行った。発明者らの発見によれば、上記の酸化皮膜におけるCは、例外なく皮膜最表面において最大値を示したのであるが、このC濃度が50mass%以下であれば、水性塗料に対し良好な耐ハジキ性および塗膜密着性が発揮される。一方、皮膜最表面のC濃度が50mass%を超えると、表面有機物が水性塗料をはじいてしまったり、仮に塗布できたとしても塗膜密着性を急激に低下させてしまう。
これは、MgおよびHを規定した酸化皮膜の好影響と、表面残存有機物の悪影響が相殺し合う領域が、C濃度に換算して50mass%であるためと考えられる。
【0013】
以上のように、MgおよびH濃度をそれぞれ規定した酸化皮膜をアルミニウム材表面に形成することにより、CrやZrといった重金属を含む下地処理皮膜を付与しなくとも、優れた塗膜密着性および耐食性が得られる。
また、水性塗料等の耐ハジキ性が要求される場合は、さらにC濃度を規制することにより良好な性能が得られる。
【0014】
なお、この酸化皮膜全体の厚みは1〜200nmが良い。1nm未満では酸化皮膜が少量のため、むき出しのアルミニウム表面が出現するなどで、塗膜密着性および耐食性が十分に発揮されない。一方、200nmを超えると、酸化皮膜が多量のためもろくなり、コイル巻取りなどの材料変形や蓋加工などの強い加工に耐えられず、酸化皮膜自身の微小なひび割れ(マイクロクラック)を引き起こし、やはり塗膜密着性が低下する。
【0015】
これらの発明の範囲を図示すると、図1のとおりである。
【0016】
ところで、請求項1を満たす酸化皮膜を得るには、一例として、エッチング量が50〜200mg/m2のアルカリ脱脂を行った後、pHが4.0以下かつAl,Mgイオン濃度がそれぞれ1mass%以下の酸(コスト面から希硫酸が使いやすい)にて酸洗浄を行う方法を挙げることができる。
アルカリ脱脂によるエッチング量が50mg/m2では均質な酸化皮膜が形成されず、200mg/m2を超えるとアルミニウム板厚の精度に悪影響を及ぼす。また、酸洗がMgの低減に寄与することは、主に自動車用アルミニウム材の分野において公知であるが、pHが4.0を超えるとその効果が半減する。さらに本発明の特徴である酸化皮膜中のMgおよびH濃度の規定にあたって、酸洗浴中のAlイオン濃度が1mass%を超えると表面に水酸化Al等が残存するのでHが、Mgイオン濃度が1mass%を超えると表面にMg化合物が析出するのでMgが、それぞれ酸化皮膜中に濃縮するので好ましくない。
【0017】
加えて、請求項2を満足させるためには、さらにアルカリ脱脂浴および酸洗浴の油分を3mass%以下に制御すればよい。これは、いずれの浴の油分も表面に残存しやすく、酸化皮膜最表面のCに影響を及ぼすためであり、油分が3mass%を超えると、Cが急激に増加するため好ましくない。
【0018】
もちろん、これ以外の方法で得られた酸化皮膜でも、請求項1または2さえ満たしていれば、本発明の好ましい効果を享受できるのは当然である。
この酸化皮膜の上に、エポキシ、ポリエステル、塩ビの少なくとも1種を含む樹脂皮膜を上塗りすると、その優れた塗膜密着性により高い耐食性を有し、さらに塗装ハジキによる品質不良を低減させた飲料缶または食缶用のアルミニウム蓋材を低コストで得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下、実験例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
表1に示した各合金を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、表1に示す成分からなる50℃の1%硫酸酸洗浴に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄し、表1に示す乾燥条件で乾燥させ、直ちに塗料を塗布・焼付した。酸洗浴は操業状態を再現するため、1%硫酸にAl−Mg系アルミニウム板を多数回浸漬して浴中の各イオン濃度を調整し、また圧延油を添加して油分の調整した。
なお、従来例は現在広く用いられているリン酸クロメート処理の例で、アルカリ脱脂した後に常法によりリン酸クロメート処理(Cr付着量=20mg/m2)したものである。
また塗料は、エポキシ樹脂を主成分とする水性塗料を塗布量=7g/m2、乾燥温度250℃で塗布・焼付[水性]、または塩化ビニル樹脂を主成分とする溶剤塗料を塗布量=7g/m2、乾燥温度260℃で塗布・焼付[塩ビ]した。
また、塗装前の表面をGDSで測定した結果を表2に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003850253
【0021】
【表2】
Figure 0003850253
【0022】
これらのサンプルに対し、以下のような評価試験を実施した。
[塗料ハジキ] 塗料焼付後、塗料ハジキに由来する塗装ヌケの個数を計数した。
[塗装まま密着性試験] 試験片に対し、JIS−K5400に準拠した1mm角碁盤目試験を行った。
[レトルト密着性試験] 加圧滅菌装置により、試験片を水道水中にて125℃×30分保持した後、JIS−K5400に準拠した1mm角碁盤目試験を行った。
[30%圧延密着性試験] 圧延機により、30%の板厚減少となるまで圧延加工した後、JIS−K5400に準拠した1mm角碁盤目試験を行った。
[モデルジュース耐食性試験] 試験片に×型の切り込み(各辺の長さ40mm)を入れ、1.0mass%クエン酸一水和物+0.5mass%塩化ナトリウムの水溶液に70℃×72時間浸漬し、腐食の発生度合いを評価した。(◎:腐食なし,○:切り込みの一部に1mm以下の腐食,△:切り込みの一部に1〜2mmの腐食,△×:切り込み全面に1〜2mmの腐食,×:切り込み全面に2mm以上の腐食)
【0023】
【表3】
Figure 0003850253
【0024】
表3から明らかなように、本発明条件を満足する発明例1は塗料のハジキがなく耐ハジキ性に優れ、また塗装後だけでなくレトルト処理を施しても圧延加工を施しても塗膜の剥離が皆無であり優れた塗膜密着性を示すとともに耐食性でも従来のクロメート処理材と同等以上の良好な性能を示しており、各評価試験とも優秀な結果となっている。
また、発明例2は発明例1の合金を代えたもの、発明例3は洗浄後の乾燥温度を低くして、常温の強風にて3秒間行ったもの、発明例4は洗浄後の乾燥温度を高くして、350℃の熱風で1分間乾燥させたものであるが、これらの板表面は表2にしめすように本発明条件を満たすもので、いずれも優秀な評価結果となっている。
これに対して、比較例1はアルカリ脱脂後に酸洗を行わずに、常温の純水にて5秒間洗浄したもの、比較例2はAl%,Mg%が本願発明の範囲を超えた酸洗浴を用いたもの、比較例3は洗浄後の乾燥を350℃の熱風で60分間の高温長時間条件で乾燥させたものであるが、これらは請求項1を満たさず、いずれも塗装したままでは剥離は無いものの、レトルト処理を行ったり、加工を施した場合には剥離が生じており、塗膜密着性および耐食性が劣る結果となっている。
また、発明例5は酸洗浴に圧延油1mass%を追加して油分の多い浴を用いたもの、発明例6は酸洗浴に圧延油5mass%を追加して、油分のさらに高い浴を用いたもの、比較例4は乾燥までは発明例6と同じ条件だが、塩ビ系塗料の代わりに水性塗料を用いたものである。発明例5は請求項2の条件を満たし、水性塗料でも良好な結果となっているが、発明例6および比較例4は同じ酸化皮膜であるが、塩ビ系塗料では良好な結果となるが請求項2の条件を満たさないため水性塗料に対してはやや劣る結果となっている。従って水性塗料を用いる場合には請求項2の条件を満たすようにすると良い。
なお、従来例は現在広く用いられているリン酸クロメート処理の例で、アルカリ脱脂した後に常法によりリン酸クロメート処理(Cr付着量=20mg/m2)し、その上にエポキシ樹脂を主成分とする水性塗料を塗布・焼付したものである。
発明例1〜6は30%圧延密着性試験において従来例を上回り、本発明の効果の高さが証明された。また、発明例1〜6は当然Crを使用しておらず、環境破壊や健康被害の観点からも優位性は明確である。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば従来行われてきたクロメート処理を行う必要がなく、現行の化成クロメートと同等以上の塗膜密着性、耐食性および耐ハジキ性を持ち、Cr等の有害重金属を含まない飲料缶・食缶用のアルミニウム蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の元素の分布を示す模式図である。
【符号の説明】
Mg マグネシウム濃度
H 水素濃度
C 炭素濃度

Claims (5)

  1. 表面に厚さ=1〜200nmで、かつ最表面から酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMg:5mass%以下、H:10mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とする塗膜密着性および耐食性に優れた缶蓋用アルミニウム下地処理材。
  2. 表面に厚さ=1〜200nmで、かつ最表面から酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMg:5mass%以下、H:10mass%以下、かつ最表面のC濃度が50mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とする水性塗料の塗膜密着性、耐食性および耐ハジキ性に優れた缶蓋用アルミニウム下地処理材。
  3. 請求項1または2のアルミニウム下地処理材の表面に、エポキシ、ポリエステル、塩化ビニルの少なくとも1種を含む樹脂皮膜を設けたことを特徴とする塗膜密着性および耐食性に優れた缶蓋用アルミニウム塗装材。
  4. アルミニウム材に対し、エッチング量が50〜200mg/m2のアルカリ脱脂を行った後、pHが4.0以下かつAlイオン濃度、Mgイオン濃度がそれぞれ1mass%以下の酸で酸洗浄を行うことを特徴とする請求項1のアルミニウム下地処理材の製造方法。
  5. アルミニウム材に対し、エッチング量が50〜200mg/m2かつ脱脂浴の油分が3mass%以下のアルカリ脱脂を行った後、pHが4.0以下かつAlイオン濃度,Mgイオン濃度がそれぞれ1mass%以下,油分が3mass%以下の酸洗浴で酸洗浄を行うことを特徴とする請求項2のアルミニウム下地処理材の製造方法。
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