JP3849809B2 - 新規なポリマーブレンド繊維およびその製造法 - Google Patents

新規なポリマーブレンド繊維およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,新規な相分離形態を有し,例えば風合い,染色性,軽量・保温性,吸水・吸湿性,耐熱性,撥水・撥油性等の特徴を付与した合成繊維として多方面へ利用できるポリマ−ブレンド繊維およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリマ−ブレンドによる混合紡糸は,合成繊維の改質手段として,例えば染色性の向上,吸湿性の調節,比重の調節,橋かけ効果,粘弾性的性質の改善,風合い感触の向上等を目的に広範囲への応用が試みられている。この際,非相溶系ポリマ−ブレンドを用いた溶融紡糸法による場合が主流である。
しかしながら,互いに相溶しない2種以上のポリマ−ブレンドを溶融紡糸するする場合,(1)ポリマ−の混合が困難であったり,あるいは紡糸原液が不安定となり,脱混合を起こす場合が多い,(2)曳糸性が不良なため紡糸速度が上げられず生産性に劣る,(3)得られた繊維の性質が変動し易い等の問題点があった。
【0003】
これらの欠点を改良するため,分散ポリマ−と相溶化剤を溶融状態であらかじめ混練りし,次いで繊維形成性ポリマ−を溶融状態で混合した後溶融紡糸する方法(特開平4−209824号公報)や,海島構造の島成分に繊維形成性の熱可塑性樹脂を用い,製糸性を改良しながらブレンドポリマ−の特徴を活かす方法(特開平6−2267号公報)が開示されている。
【0004】
しかしながら,本質的に相溶性のないポリマ−ブレンド系を用いる限り,ノズル通過時の剪断変形あるいは巻取り時の伸長変形を受ける際に分散相のサイズが変動,不均一化してしまい上記問題点を充分に改良することはできない。さらに,かかる相溶化剤は総じて高価であるため経済的に好ましいとは言えなかった。以上のように,非相溶ポリマ−ブレンド繊維は広範囲への応用が期待されるにもかかわらず,上記問題点が充分に解決されていないため,実用化の例が極めて少ないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,上記従来技術における問題点に着目してなされたものである。すなわち,本発明は安定な紡糸工程により,繊維の相分離構造を多様に,しかも再現性良く制御することを目的とするものである。また,分散相のサイズが小さく,かつサイズ分布の小さい形態を付与することにより,例えば,相分離繊維でありながら力学特性に優れるものや,分散相を例えば撥水・撥油等の機能を付与するための効果的な反応基点としたものや,さらには分散相のみを抽出することにより,軽量・保温性,ドライタッチ,深色鮮明性,あるいは吸水・吸湿性等の特徴を備えた繊維を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、すなわち,本発明は,2成分からなるポリマ−ブレンド繊維であり,繊維横断面内において,一成分が円換算直径で0.001〜0.4ミクロンのサイズに分散,相分離していることを特徴とする新規なポリマーブレンド繊維であり、更には、2成分からなるポリマーブレンド繊維であり、繊維の縦、横断面において、一成分が分散、相分離しており、相分離した分散相の,繊維横断面内における円換算直径(A)および繊維縦断面内における円換算直径(B)の比(P)が下記(1)式の通り,2.0以下であることを特徴とする新規なポリマーブレンド繊維であり、
P=B/A≦2.0 (1)
【0007】
相分離した分散相の,繊維横断面内における円換算直径(A)および繊維縦断面内における円換算直径(B)の比(P)が下記(1)式の通り,2.0以下である請求項1記載の新規なポリマーブレンド繊維であり、
P=B/A≦2.0 (1)
2成分からなるポリマーブレンド繊維であり、繊維の縦、横断面において、一成分が分散、相分離しており相分離した分散相が,繊維軸方向及び/又は断面方向に連通した形態を有する相分離構造である新規なポリマーブレンド繊維であり、相分離した分散相の繊維横断面における円換算直径が0.005〜0.1ミクロンである新規なポリマーブレンド繊維であり、相分離した分散相の繊維横断面における円換算直径が0.01〜0.1ミクロンである新規なポリマーブレンド繊維であり、
【0008】
相分離構造が,連続相および/または分散相からなり,繊維横断面より任意に選んだ20の分散相の平均面積(X)が0.15平方ミクロン以下で,かつそのばらつきを表す指標Yが2.0以下である新規なポリマーブレンド繊維であり、
Y=R/X (R=Xmax−Xmini)
(但し,Xは,任意に選んだ20個の分散相の平均面積。Xmaxは,任意に選んだ20個の分散相のうち,面積の最も大きいものから3つの平均値。Xminiは,任意に選んだ20個の分散相のうち,面積の最も小さいものから3つの平均値。)
【0009】
円換算直径で0.001〜5ミクロンの微小空洞が無数にあり,かつそれぞれが互いに連結した海綿状の構造を有する繊維,および(9)ポリマーブレンドが,下記(2)式で表される重合度の比率が50以下のポリマーブレンドである新規なポリマ−ブレンド繊維であり、
N=n1/n2 (2)
(但し,n1はポリマ−ブレンド成分の中で重合度の大きい方のポリマ−の重合度,n2はポリマ−ブレンド成分の中で重合度の小さい方のポリマ−の重合度。)2成分のうち少なくとも1成分が結晶性ポリマーである新規なポリマ−ブレンド繊維であり、ポリマ−ブレンドがポリスチレンとポリ−ε−カプロラクトン樹脂のブレンドである新規なポリマ−ブレンド繊維であり、
【0010】
ポリマーブレンドが下記条件満足するC,D二種のポリマーからなる新規なポリマーブレンド繊維であり、ここでCは、モノマーユニットa,bからなる重合度50以上の共重合体である。Dはホモポリマーであっても共重合体であっても良く,かつCを構成するモノマーユニットaのみからなる重合度50以上のホモポリマーとのブレンドにおいては完全相溶系であり,かつCを構成するモノマーユニットbのみからなる重合度50以上のホモポリマーとのブレンドにおいては非相溶系である。
【0011】
共重合体(C)を構成するモノマーユニットの一方の成分がエチレンテレフタレ−トであることを特徴とする新規なポリマーブレンド繊維であり、Cがポリマ−ブレンドがエチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トの共重合体であり,かつDがポリエ−テルイミド樹脂であることを特徴とする新規なポリマ−ブレンド繊維であり、
【0012】
エチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トの共重合割合が,エチレンテレフタレ−ト単位が99〜50モルに対してエチレンナフタレ−ト単位が1〜50モルである新規なポリマ−ブレンド繊維であり、ポリエ−テルイミド樹脂が下記一般式化2で示される新規なポリマ−ブレンド繊維であり、
【化2】
Figure 0003849809
(式中,R1は炭素原子数6〜30の二価の芳香族有機基,R2は炭素原子数6〜30の二価の芳香族有機基,炭素原子数2〜20のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基または炭素原子数2〜8のアルキレン基で連鎖停止されたポリオルガノシロキサン基を表す)
【0013】
2成分からなる部分相溶系ポリマ−ブレンドを用いて相溶状態にして溶融紡糸し,紡出後の工程で物理的あるいは化学的手段により相分離構造を発現させることを特徴とする新規なポリマ−ブレンド繊維の製造法であり、ポリマ−ブレンドが,上限臨界共溶温度型の相図を有する新規なポリマ−ブレンド繊維の製造法であり、相分離構造を発現させる工程において,ガラス転移温度以上,バイノーダル温度以下で熱処理することを特徴とする新規なポリマーブレンド繊維の製造法であり、相分離構造を発現させる工程において,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で熱処理することを特徴とする新規なポリマーブレンド繊維の製造法であり、2成分のうち少なくとも1成分が結晶性ポリマ−である新規なポリマ−ブレンド繊維の製造法であり、紡出後の工程が,紡糸第一引き取りロール間である新規なポリマーブレンド繊維の製造法であり、紡出後の工程が,延伸工程である新規なポリマーブレンド繊維の製造法であり、紡出後の工程が,織物の精錬又は染色工程である新規なポリマーブレンド繊維の製造法であり、紡出後の工程で相分離構造を発現させた後,アルカリ減量処理する新規なポリマーブレンド繊維の製造法である。
【0014】
以下,本発明の詳細を記述する。本発明の要点は,特定の温度域で互いに相溶する部分相溶系のポリマ−ブレンドを相溶状態でノズルより押し出すことにより,従来から試みられている非相溶ポリマ−ブレンドの溶融紡糸時における紡糸不安定性および繊維特性の変動等の欠点を改善し,かつ部分相溶系ポリマ−ブレンドの特性を利用し,相溶状態から非相溶状態へ変化する環境を与える工程を経ることにより,多様,かつ従来にない形態を付与することである。
【0015】
本発明でいう相溶状態とは,分子レベルで均一に混合している状態のことであり,具体的には0.001ミクロン以上の相構造を形成していない状態のことを言う。また,非相溶状態とは,相溶状態ではない場合,すなわち0.001ミクロン以上の相構造を形成している状態のことを言う。相溶状態か否かを判断するには,例えばPolymer Alloys and Blends ,Leszek A Utracki,Hanser Publishers,Munich Vienna New York,P64.に述べられている通り,電子顕微鏡,示唆走査熱量計(DSC),その他種々の手法によることができる。また,本発明でいう部分相溶系ポリマ−とは,実用的に選択できる温度および/またはポリマーブレンドを構成する2種類のポリマーの混合比を変更することにより相溶状態および非相溶状態の両方の分散状態をとり得るポリマ−ブレンドの組み合わせのことを,完全相溶系ポリマ−とは,実用的に選択できる温度および/またはポリマーブレンドを構成する2種類のポリマーの混合比によらず相溶状態であるポリマ−ブレンドの組み合わせのことを,非相溶系ポリマーとは,実用的に選択できる温度および/またはポリマーブレンドを構成する2種類のポリマーの混合比によらず非相溶状態であるポリマ−ブレンドの組み合わせのことを言う。ここで,実用的に選択できる温度とは,ポリマーブレンドのガラス転移温度(ガラス転移温度を複数有する場合は,その中で最も低いガラス転移温度)以上,ポリマーブレンドの分解開始温度以下を示す。
すなわち,部分相溶系,完全相溶系,非相溶系であるポリマーブレンドの相溶状態を例えば図1〜5の通りに表すことができる。
図1〜5は、本発明でいう部分相溶系のポリマーブレンドの一相領域あるいは二相領域を表す図であり、図6〜9は、本発明でいう海島構図の繊維を横断面から観察した例を示す図であり、図10は、本発明でいう変調構造の円換算直径Dの求め方を示す図であり、図1〜5におけるφはA成分の重量分率を示し、斜線部は二相領域を示し、斜線部以外は一相領域を示し、いずれの図においても温度の下限はポリマーブレンドのガラス転移温度(ガラス転移温度が2以上存在する場合は、その中で最も低いガラス転移温度)、上限は、ポリマーブレンドが分解し始める温度とする。
【0016】
また,本発明でいう相分離構造とは,0.001ミクロン以上の不均一な相構造を形成している構造のことをいい,さらに本発明では図6〜9に示す通り,一方の成分が他方の成分と独立した島状のドメインを形成している構造を海島構造(A),両方の成分が互いに独立しておらず,3次元的に連結している構造を変調構造(B)と定義する。さらに,海島構造の島成分を抽出等により実質的に除去した構造を微多孔,変調構造の一方の成分を抽出等により実質的に除去した構造を海綿状の構造と定義する。
【0017】
上述の如く,本発明で提供し得る繊維内の微細構造は,従来から試みられている非相溶系のポリマ−ブレンド繊維の構造とは大きく異なる。例えば,従来からの非相溶系のブレンド紡糸では,混合比の少ない成分がドメインを形成し,いわゆる海島構造を形成する。このドメインのサイズは,紡糸前の段階において微小・均一であっても,ノズル通過時のせん断変形あるいは巻き取り時の伸長変形により肥大化・不均一化するため,繊維横断面における円換算直径Dが0.4ミクロンより大きく,しかも,ばらつきの指標Yが2.0より大きかった(ここでいう,円換算直径Dおよびばらつきの指標Yは,後述の方法により求めたものである。Yは,分散相の面積が完全に均一である場合,1となる)。このように,Dが0.4ミクロンを越えるものは,単一成分からなる合成繊維と比較し,強度等の力学特性において劣ったり,分散相となる第2成分の特徴を付与するには,相当量の混合比が必要であり,コストが大幅に増大する。さらには,分散相のピッチが大きいため,例えば吸水・吸湿性,撥水・溌油性,深色鮮明性,軽量・保温性等の特徴を効果的に付与できない,等の問題点があった。また,ばらつきの指標Yが2.0を越えるものは,繊維物性の変動が大きいため,強度が劣る,あるいは染色斑が生じる,といった問題点があった。これに対し,当技術によれば,円換算直径が0.001≦D≦0.4ミクロン,ばらつきの指標がY≦2.0である微小かつ均一な分散サイズの形態を付与することができる。このようにD≦0.4ミクロン,かつY≦2.0であるものは,相分離繊維でありながら,力学特性に優れる,分散相を,例えば,撥水・溌油性等の相反する機能を付与するための効果的な反応基点とすることができる,分散相のみを抽出することにより,軽量・保温性,ドライタッチ,深色鮮明性,あるいは吸水・吸湿性等の特徴を付与することができる,等の点で従来の非相溶ブレンド繊維では到底到達し得なかった性能あるいは特徴を有する。
【0018】
また,従来からの非相溶ブレンド繊維では,繊維中のポリマー分散状態が,用いるポリマーブレンドの種類および混合比によりほぼ決定されるため,付与することのできる特徴が限定されたものであった。これに対し,本発明によれば単一複合素材を用いて,相分離条件を変更することにより,分散相のサイズ・形態において多種多様の繊維を提供することができる。例えば,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で短時間処理したもの,あるいは長時間処理したもの,さらには,ガラス転移温度以上,スピノーダル温度以下で熱処理した場合では,得られる形態およびサイズが大きく異なり,かつ従来にない新規な構造を得ることができる(本発明でいう,スピノーダル温度,バイノーダル温度とは,公知の通り,以下のことを意味する。すなわち、スピノーダル温度とは、「スピノーダル分解機構」により相分離する温度と「核生成および成長機構」により相分離する温度の境界のことである。また、バイノーダル温度とは、系が相溶する温度と相分離する温度の境界のことである。これらの詳細な説明は、例えば,Polymer Alloys and Blends ,Leszek A Utracki,Hanser Publishers,Munich Vienna New York,P32. 等に示されている。)中でも,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で短時間処理した場合に生じる,分散相が繊維軸方向および/または断面方向に連通した変調構造は,非相溶ポリマ−により形成される海島構造では到底達し得ない効果が期待できる。例えば,上記形態では,2成分とも連続相となり,かつ界面の厚みが大きいため,耐熱性ポリマーを一方の成分に用いることにより,ブレンド繊維の耐熱性を飛躍的に向上することができる。さらに,一方の成分のみを抽出することにより海綿状の繊維を得ることもできる。このようにして得られた海綿状繊維は,無数の微小空洞が互いに連通しているため,従来素材では到底到達し得なかった吸水・吸湿性等の性能を付与することができる。
【0019】
さらに,従来からの非相溶ブレンド繊維では,紡糸あるいは延伸時のドラフトにより,分散相の形態が繊維軸に沿って極度に伸長するため,繊維横断面および縦断面の円換算直径の比率が2を越えるものしか造り得なかった。このような,形態により,深色鮮明性やタッチの面での特徴を付与しても大きな効果は期待できない。これに対し,本発明では,相分離構造を発現する工程が,紡出以降であるため,繊維横断面および縦断面の円換算直径の比率がほぼ1である分散相の形態を付与することも可能である。このような形態は,分散相を抽出することにより表面に微多孔を有する繊維とすることができ,これまでにないタッチあるいは,深色鮮明性等の特徴を付与することができる。
【0020】
また,従来からの非相溶ブレンド繊維は,繊維横断面より観察される分散相のサイズが平均面積Xが0.15平方ミクロンより大きく,かつそのばらつきを表す指標Yが2.0を越えるため,品質が変動したり,未延伸糸の段階で前記の如き分散状態であるものは,延伸時にボイド等の欠陥を生じる,等の問題点があった。これに対し本発明では,分散相のサイズが微細かつ均一であるため,品質変動が少なく,かつ未延伸糸の状態で相分離構造を付与しても容易に延伸することができる。特に,相分離構造が,連続相および/または分散相からなり,繊維横断面より任意に選んだ20個の分散相の平均面積Xが0.15平方ミクロン以下で,かつそのばらつきを表す指標Yが2.0以下である場合,品質の安定性および延伸性の面で非相溶ポリマーブレンド繊維のそれより著しく優れたものとなる。また,延伸糸において分散相サイズのばらつきが少ないものは,従来からの非相溶ブレンド繊維に対し,特に強度等の力学的特性の面で有利である。
さらに,繊維形成後も織物の精錬又は染色工程時の熱処理等により相分離構造の形態およびサイズを任意に制御できる,あるいは易アルカリ減量成分のエッチングによる微多孔化や海綿状化,等も可能であるため広範囲な要求物性に応じることができる。
【0021】
本発明で述べるポリマ−ブレンドとは,以下の関係にあるポリマ−重合度の比率Nが50以下であり,かつ部分相溶系であるものが望ましい。
N=n1/n2(但し,n1はポリマ−ブレンド成分の中で重合度の大きい方のポリマ−の重合度,n2はポリマ−ブレンド成分の中で重合度の小さい方のポリマ−の重合度。)
上述の重合度は,ポリマ−ブレンドを構成する各成分をポリマ−ブレンド中,少なくとも一方の成分が可溶である溶剤を用いた抽出操作等で単離し,得られた各成分の分子量を測定することにより算出することができる。
Nが50を越えると,低重合度成分が実質上高重合度成分の溶剤として作用し,相分離速度が極度に速くなるため,相分離構造を任意に,しかも再現性良く制御することが困難となる。また,低分子量成分が繊維に残留し難く,長期残存性に劣るという欠点もある。従って,この比率Nは,好ましくは20以下,さらに好ましくは10以下であることが望ましい。
【0022】
また,ポリマ−ブレンドの組み合わせは,部分相溶系であれば特に限定しないが,(1)紡糸時の溶融押し出し後における気体あるいは液体による冷却過程のみで相分離構造を発現し得る,また(2)繊維形状を保持したまま,加熱処理により相分離構造を発現し得る上限臨界共溶温度型の相図を有するポリマ−の組み合わせが好ましい。このような,ポリマーブレンドの例としては,下記条件を満足するC,D二種のポリマーからなる組み合わせが挙げられるが,もちろんこれに限定されるものではない。
Cは,モノマーユニットa,bからなる重合度50以上の共重合体である。
Dは,ホモポリマーであっても共重合体であっても良いが,Dを構成するモノマーユニットaのみからなる重合度50以上でのホモポリマーとのブレンドにおいては完全相溶系であり,かつCを構成するモノマーユニットbのみからなる重合度50以上のホモポリマーとのブレンドにおいては非相溶系である。
【0023】
ここでいう,完全相溶系,および非相溶系とは前述の通りである。前記組み合わせ(C/D)の中でも,繊維素材として,コストおよび力学特性のバランスから,ランダム共重合体(C)を構成する一方の成分がエチレンテレフタレ−トであるものが好ましい。また,繊維形成性の点からは,少なくとも1成分以上結晶性ポリマ−を含むことが好ましい。本発明でいう結晶性ポリマーとは,示差走査熱量計(DSC)にて,融点の観察されるポリマーであれば特に限定するものではない。具体的には,例えばポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレートやそれらの共重合体等の芳香族ポリエステル系,およびポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステル系,あるいはナイロン6,ナイロン66等の脂肪族ポリアミド系,あるいはポリエチレン,ポリプロピレン,ポリビニルアルコール,ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン・ビニル系,ポリオキシメチレン等のポリーエーテル系等が挙げられる。
【0024】
実際に,上限臨界共溶温度型の相図を有し,かつ繊維形成性に優れる結晶性ポリマ−を含むポリマ−ブレンドの組み合わせとしては,ポリエチレンテレフタレ−ト−ポリエチレンナフタレ−ト共重合体/ポリエ−テルイミド系やポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体/塩素化ポリエチレン,ポリスチレン/ポリ−ε−カプロラクトン系等が挙げられる。特に,ポリエチレンテレフタレ−ト−ポリエチレンナフタレ−ト共重合体/ポリエ−テルイミド系では,ポリエチレンテレフタレ−ト−ポリエチレンナフタレ−ト共重合体の共重合比がブレンド系の相溶性と強く関連しており,エチレンテレフタレート単位が99モルを越える場合は,非相溶系となり,紡糸不安定性や力学特性の不良等,従来からの非相溶ブレンド紡糸の欠点を改善することができない。また,エチレンテレフタレート単位が50モルを下回る場合は,完全相溶系となるため,繊維に相分離形態を付与することができない。従って,エチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トの共重合割合が,エチレンテレフタレ−ト単位が99〜50モルに対してエチレンナフタレ−ト単位が1〜50モルであることが望ましい。さらに,力学特性や相分離構造付与の容易さから,エチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トの共重合割合が,エチレンテレフタレ−ト単位が95〜70モルに対してエチレンナフタレ−ト単位が5〜30モルであることが,より好ましい。
【0025】
また,用いるポリマ−中には,必要に応じて,カ−ボンブラック,酸化チタン,酸化アルミニウム,酸化ケイ素,酸化カルシウム,マイカ,金属微細粉,有機顔料,無機顔料,抗酸化剤,蛍光増白剤,難燃剤,帯電防止剤,溌水剤,吸湿剤,吸水剤,粘度調整剤,紫外線吸収剤など,通常用いられる添加剤を配合しても良い。
【0026】
本発明の提供する新規なポリマーブレンド繊維の製造法は,特定の温度域で互いに相溶する部分相溶系のポリマ−ブレンドを相溶状態でノズルより押し出すことにより,従来から試みられている非相溶ポリマ−ブレンドの溶融紡糸時における紡糸不安定性および繊維特性の変動等の欠点を改善し,かつポリマ−ブレンドの相図を利用した相分離工程により多様な相分離構造を付与することが技術的要点である。用いるポリマーブレンドの組み合わせは,部分相溶系であれば特に限定するものであはないが,▲1▼紡糸時の冷却過程における温度ジャンプのみで相分離構造を発現し得る,また▲2▼繊維形状を保持したまま,加熱処理により相分離構造を発現し得る上限臨界共溶温度型の相図を有するポリマ−の組み合わせが好ましい。このように,相図を有するポリマ−の組み合わせの場合,相分離条件を変更することにより,分散相のサイズ・形態において多種多様の繊維を提供することができる。例えば,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で短時間処理した場合,分散相が繊維軸方向および/または断面方向に連通した形態が得られ,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で長時間処理したものは,海島状態の分散相が形成され,さらには,ガラス転移温度以上,スピノーダル温度以下で熱処理した場合は,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で得られる形態とは異なる海島状態の分散相が形成される。さらに,前記により相分離構造を形成した繊維は,一方の成分を溶剤で抽出することにより,微多孔あるいは海綿状の繊維とすることもできる。
【0027】
相分離構造を発現させる工程は,ノズルを通過した後であれば特に限定するものではない。具体的には,ノズル通過後の巻取り時における冷却過程,巻取り後の延伸・熱処理過程,織物の精錬又染色工程,未延伸糸,延伸糸への熱処理あるいは水分付与による相分離等が挙げられる。
【0028】
【実施例】
以下,具体的に実施例を説明するが,本発明はこれらに制限されるものではない。
【0029】
実施例1
(a)成分としてエチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トとの共重合体をエチレンテレフタレ−ト:エチレンナフタレ−ト=9:1となるよう常法により合成した共重合ポリエステル(固有粘度0.6:フエノ−ル/テトラクロロエタン=6/4(v/v),30℃)を用い,(b)成分として下記一般式化3で示されるポリエ−テルイミド樹脂,ウルテム−1000(ゼネラルエレクトリック社製)を用いた。(a)成分は結晶性,(b)成分は非晶性ポリマ−である。
【化3】
Figure 0003849809
前記,(a),(b)成分のポリマーブレンドの相溶性を後述の方法により調べ,上限臨界共溶温度型の相図を有することを確認した。紡糸用のペレットは,ポリエ−テルイミドの組成比が30wt%となるよう(a)成分と(b)成分とを30mmφ2軸押出機を使用してシリンダ−温度320℃で混練り押し出した後,120℃で8時間真空乾燥したものを用いた。上記ペレットを孔数6の紡糸口金を用い,吐出量3.6g/分,紡糸温度315℃,紡速500m/分で紡糸した。さらに,上記の紡糸条件において巻き取り速度のみを変更したところ,糸切れすることなく,30分間以上巻き取れる最高紡速は,4000m/分であった。また,紡速500m/分で得られた未延伸糸を,ホットロ−ラ−およびホットプレ−トを備した延伸機にて,ホットロ−ラ−温度90℃,ホットプレ−ト温度140℃,倍率3.0倍の条件で延伸した。得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察したところ,ボイド等の欠陥もなく良好に延伸されていることが分かった。上記により得られた延伸糸の形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=0.002ミクロン,Y=1.3,P=1.3であった。これは,従来の非相溶系のブレンド繊維と比較し,非常に微細かつ均一なサイズであり,さらに,殆ど繊維軸方向に扁平していない新規な形態を持つものであった。
【0030】
実施例2
実施例1において,延伸時のホットプレートの温度を170℃とする以外は,全く同様の実験を行った。得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察したところ,ボイド等の欠陥もなく良好に延伸されていることが分かった。上記により得られた延伸糸の形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=0.3ミクロン,Y=1.4,P=1.3であった。これは,実施例1と比較すると円換算直径Dが大きくなったものの,従来の非相溶系のブレンド繊維と比較し,非常に微細かつ均一なサイズであり,さらに,殆ど繊維軸方向に扁平していない新規な形態を持つものであった。
【0031】
実施例3
実施例1と同一の紡糸用ペレットを用い,孔数6の紡糸口金を用い,吐出量3.6g/分,紡糸温度315℃,紡速500m/分で巻取った未延伸糸をホットステ−ジ上,180℃で20秒間加熱処理した。得られたサンプルの形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりDを求めた。分散相の形態は,従来の非相溶系のブレンド繊維に見られるものとも,また実施例1,2とも全く異なる形態のいわいる変調構造であり,かつD=0.01ミクロンであった。
【0032】
実施例4
実施例3において,未延伸糸を180℃で60秒間加熱処理する以外は,全く同様の実験を行った。得られたサンプルの形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=0.08ミクロン,Y=1.3,P=1.0であった。これは,従来の非相溶系のブレンド繊維と比較し,非常に微細かつ均一なサイズであり,さらに,実施例1,2と比較しても,繊維軸方向への扁平の極めて少ない新規な形態を持つものであった。
【0033】
実施例5
実施例3において,未延伸糸を180℃で300秒間加熱処理する以外は,全く同様の実験を行った。得られたサンプルの形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=0.4ミクロン,Y=1.6,P=1.0であった。分散相のサイズDは実施例1〜4と比較して大きいが,従来の非相溶系のブレンド繊維に対しては小さく,かつ均一なサイズであり,さらに,実施例1,2と比較しても,繊維軸方向への扁平の極めて少ない新規な形態を持つものであった。
【0034】
実施例6
実施例において,ホットプレート温度120℃で延伸したサンプルを製織後,90℃,60g/lのNaOH水溶液で2時間処理した。得られたサンプルの繊維表面を走査型顕微鏡にて観察したところ海綿状の独特な形態であった。また,後述の方法により求めたDは0.01ミクロンであった。さらに,その手触りは従来から知られているポリエステル繊維のアルカリ減量加工により得られるものとは全く異なる独特なドライ感を有するものであった。
【0035】
実施例7
(a)成分としてエチレンテレフタレートとエチレンナフタレートとの共重合体をエチレンテレフタレート:エチレンナフタレート=95:5となるよう常法により合成した共重合ポリエステル(固有粘度0.6:フェノール/テトラクロエタン=6/4(v/v),30℃)を用い、(b)成分として下記一般式化4で示されるポリエーテルイミド樹脂、ウルテム−1000(ゼネラルエレクトリック社製)を用いた。(a)成分は結晶性、(b)成分は非晶性ポリマーである。
【化4】
Figure 0003849809
前記、(a),(b)成分のポリマーブレンドの相溶性を後述の方法により調べ、上限臨界共溶温度型の相図を有することを確認した。紡糸用のペレットは、ポリエーテルイミドの組成比が10wt%となるよう(a)成分と(b)成分とを30mmφ2軸押出機を使用してシリンダー温度320℃で混練り押し出した後、120℃で8時間真空乾燥したものを用いた。上記ペレットを孔数6の紡糸口金を用い、吐出量3.6g/分、紡糸温度315℃、紡速500m/分で紡糸した。さらに、上記の紡糸条件において巻き取れる最高紡速は、4000m/分であった。また、紡速500m/分で得られた未延伸糸を、ホットローラーおよびホットプレートを備した延伸機にて、ホットローラー温度90℃、ホットプレート温度140℃、倍率4.2倍の条件で延伸した。得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察したところ、ボイド等の欠陥もなく良好に延伸されていることが分かった。上記により得られた延伸糸の形態を電子顕微鏡にて観察し、後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は、海島構造であり、かつD=0.001ミクロン,Y−1.3,P−1.3であった。これは、従来の非相溶糸のブレンド繊維と比較し、非常に繊細かつ均一なサイズであり、さらに、殆ど繊維軸方向に扁平していない新規な形態を持つものであった。
【0036】
比較例1
(a)成分としてポリスチレン(重量平均分子量3500)を用い,(b)成分としてポリブタジエン(重量平均分子量2500)を用いた。(a),(b)両成分とも非晶性ポリマ−である。前記,(a),(b)成分のポリマーブレンドの相溶性を後述の方法により調べ,上限臨界共溶温度型の相図を有することを確認した。紡糸用のペレットは,ポリブタジエンの組成比が20wt%となるよう(a)成分と(b)成分とを30mmφ2軸押出機を使用してシリンダ−温度220℃で混練り押し出した後,70℃で12時間真空乾燥したものを用いた。種々の温度,吐出速度,巻き取り速度にて上記ペレットの紡糸を試みたが曳糸性に劣り,安定に繊維を得ることはできなかった。
【0037】
比較例2
(a)成分としてナイロン6を用い,(b)成分としてポリプロピレンを用いた。(a)(b)両成分とも結晶性ポリマ−である。前記,(a),(b)成分のポリマーブレンドの相溶性を後述の方法により調べたところ,非相溶系であることが分かった。紡糸用のペレットは,ポリプロピレンの組成比が10wt%となるよう(a)成分と(b)成分とを30mmφ2軸押出機を使用してシリンダ−温度280℃で混練り押し出した後,120℃で8時間真空乾燥したものを用いた。上記ペレットを孔数6の紡糸口金を用い,吐出量3.6g/分,紡糸温度280℃で紡糸したが,500m/分の低速巻き取り時においてもノズル背圧変動,流動不安定等が生じ糸切れが多発した。上記により,少量のみ得られた500m/分巻きの未延伸糸を,ホットロ−ラ−およびホットプレ−トを備した延伸機にて,ホットロ−ラ−温度40℃,ホットプレ−ト温度120℃,倍率2.5倍の条件で延伸した。得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察したところ,ボイドが多数生じており,良好に延伸されていないことが分かった。上記により得られた延伸糸の形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=1.2ミクロン,Y=2.6,P=9.4であった。
【0038】
比較例3
比較例2と同一の紡糸用ペレットを用い,孔数6の紡糸口金を用い,吐出量3.6g/分,紡糸温度280℃,紡速500m/分で巻き取った未延伸糸をホットステ−ジ上,100℃で20秒間加熱処理した。得られたサンプルの形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=1.6ミクロン,Y=2.7,P=5.8であった。
【0039】
比較例4
比較例3において,未延伸糸を100℃で300秒間加熱処理する以外は,全く同様の実験を行った。得られたサンプルの形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=1.6ミクロン,Y=2.7,P=5.2であった。
(比較例5)(a)成分としてエチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トとの共重合体をエチレンテレフタレ−ト:エチレンナフタレ−ト=97:3となるよう常法により合成した共重合ポリエステル(固有粘度0.6:フエノ−ル/テトラクロロエタン=6/4(v/v),30℃)を用いた。前記,(a),(b)成分のポリマーブレンドの相溶性を後述の方法により調べたところ,非相溶系であった。紡糸用のペレットは,ポリエ−テルイミドの組成比が30wt%となるよう(a)成分と(b)成分とを30mmφ2軸押出機を使用してシリンダ−温度320℃で混練り押し出した後,120℃で8時間真空乾燥したものを用いた。上記ペレットを孔数6の紡糸口金を用い,吐出量3.6g/分,紡糸温度315℃,紡速500m/分で紡糸したが,ノズル背圧変動,流動不安定等が生じ糸切れが多発した。上記により,少量のみ得られた500m/分巻きの未延伸糸を,ホットロ−ラ−およびホットプレ−トを備した延伸機にて,ホットロ−ラ−温度90℃,ホットプレ−ト温度140℃,倍率3.0倍の条件で延伸した。得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察したところ,多数のボイドが生じており,良好に延伸されていないことが分かった。上記により得られた延伸糸の形態を電子顕微鏡にて観察し,後述の方法によりD,Y,Pを求めた。分散相の形態は,海島構造であり,かつD=1.5ミクロン,Y=2.8,P=7.6であった。(比較例6)(a)成分としてエチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トとの共重合体をエチレンテレフタレ−ト:エチレンナフタレ−ト=60:40となるよう常法により合成した共重合ポリエステル(固有粘度0.6:フエノ−ル/テトラクロロエタン=6/4(v/v),30℃)を用いた。前記,(a),(b)成分のポリマーブレンドの相溶性を後述の方法により調べたところ,完全相溶系であった。紡糸用のペレットは,ポリエ−テルイミドの組成比が30wt%となるよう(a)成分と(b)成分とを30mmφ2軸押出機を使用してシリンダ−温度320℃で混練り押し出した後,120℃で8時間真空乾燥したものを用いた。上記ペレットを孔数6の紡糸口金を用い,吐出量3.6g/分,紡糸温度315℃,紡速500m/分で紡糸した。さらに,上記の紡糸条件において巻き取り速度のみを変更したところ,糸切れすることなく,30分間以上巻き取れる最高紡速は,4000m/分であった。また,紡速500m/分で得られた未延伸糸を,ホットロ−ラ−およびホットプレ−トを備した延伸機にて,ホットロ−ラ−温度90℃,ホットプレ−ト温度140℃,倍率3.0倍の条件で延伸した。得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察したところ,ボイド等の欠陥もなく良好に延伸されていることが分かった。上記により得られた延伸糸の形態を電子顕微鏡にて観察したが,分子レベルで均一な構造であった。
実施例および比較例の結果を表1にまとめた。
【0040】
【表1】
Figure 0003849809
【0041】
測定方法
実施例,比較例に示す測定方法および評価方法は以下に示す方法によった。
(形態観察)
ミクロトームにより切断した繊維横断面および縦断面の電子顕微鏡写真により観察した。電子顕微鏡写真を撮影する際は,ポリマーブレンドの組み合わせに応じ,次に示す手順に従い評価した。▲1▼易溶出成分/難溶出成分の組み合わせの場合:繊維横断面切断後,易溶出成分の抽出溶剤にて減量率20%で抽出し,走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。▲2▼一方の成分のみ二重結合を有する場合:繊維横断面切断後,四酸化オスミウム(0sO4) にて染色後,透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察する。▲3▼一方の成分のみ芳香族系化合物である場合:四酸化ルテニウム(RuO4) にて染色後,透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察する。▲4▼一方の成分がアミド結合を有する場合:リンタングステン酸にて染色後,透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察する。但し,これらの操作は,ポリマーの組み合わせに応じ任意に選択することができ,特に限定するものではない。
(分散相の平均面積X,円換算直径D,ばらつきを表す指標Y)
相分離構造が海島構造である場合,上述の方法により,撮影した繊維横断面の電子顕微鏡写真により,任意に選んだ20個の島相の平均面積をXとした。但し,変調構造の場合は,明確な形状がないためXは求めなかった。また,海島構造を形成しているものは,上記Xを円形に換算した場合の直径を円換算直径Dとした。但し,変調構造の場合は,図10に示す通り,上述の方法により,撮影した繊維横断面の電子顕微鏡写真上に直線を引き,混合比の少ない成分を20回通過した距離(図中d)の平均をDとした。
さらに,下式により求めたYをばらつきの指標とした。
Y=R/X (R=Xmax−Xmini)
(但し,Xは,上述の通り,任意に選んだ20個の分散相の平均面積。Xmaxは,任意に選んだ20個の分散相のうち,面積の最も大きいものから3つの平均値。Xminiは,任意に選んだ20個の分散相のうち,面積の最も小さいものから3つの平均値。)但し,変調構造の場合,Xが求まらないためYも求めなかった。
(相溶性の評価)
(a),(b)両成分を溶媒キャスト法にて製膜し,所定の温度で5時間熱処理した。その後,光学顕微鏡下で相分離しているか否かを観察した。
(最高紡速の評価)
ポリマーの可紡性を見るため,異なる数種の巻取り速度で紡糸した。
(延伸性の評価)
得られた延伸糸を光学顕微鏡にて観察し,10000平方ミクロン当たりのボイドの数が5個以下の場合,延伸性良好(○),5個を越える場合,延伸性不良(×)と評価した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によるポリマ−ブレンド繊維は,従来から試みられている非相溶ポリマ−ブレンドを用いた場合に生じる紡糸不安定性を著しく改善しながら,多様な相分離構造を任意に,再現性良く付与したものである。従って,(1)品質変動が少ない,(2)ボイド等の欠陥のない延伸糸を提供できる,(3)相図を利用した多様な相分離形態により広範囲な要求物性へ対応できる,等の効果を有する。特に,分散相のサイズが小さく,かつサイズ分布の小さい形態を付与することにより,例えば,相分離繊維でありながら力学特性に優れるものや,分散相を例えば撥水・溌油等の機能を付与するための反応基点としたものや,さらには分散相のみを抽出することにより,軽量・保温性,ドライタッチ,濃色鮮明性,あるいは吸水・吸湿性等の特徴を備えた繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明でいう部分相溶系のポリマーブレンドの一相領域あるいは二相領域を表す図の一例である。
【図2】本発明でいう部分相溶系のポリマーブレンドの一相領域あるいは二相領域を表す図の一例である。
【図3】本発明でいう部分相溶系のポリマーブレンドの一相領域あるいは二相領域を表す図の一例である。
【図4】本発明でいう部分相溶系のポリマーブレンドの一相領域あるいは二相領域を表す図の一例である。
【図5】本発明でいう部分相溶系のポリマーブレンドの一相領域あるいは二相領域を表す図の一例である。
【図6】本発明でいう海島構造の繊維を横断面から観察した図の一例である。
【図7】本発明でいう海島構造の繊維を横断面から観察した図の一例である。
【図8】本発明でいう海島構造の繊維を横断面から観察した図の一例である。
【図9】本発明でいう海島構造の繊維を横断面から観察した図の一例である。
【図10】本発明でいう変調構造のDの求め方を示す図である。

Claims (21)

  1. 2成分からなるポリマーブレンド繊維であり,繊維横断面内において,一成分が円換算直径で0.001〜0.4ミクロンのサイズに分散,相分離しており、且つ繊維の縦、横断面において、一成分が分散、相分離しており、相分離した分散相の,繊維横断面内における円換算直径(A)および繊維縦断面内における円換算直径(B)の比(P)が下記(1)式の通り,2.0以下であり、
    P=B/A≦2.0 (1)
    且つ、ポリマーブレンドが下記条件を満足するC,D二種のポリマーからなることを特徴とする新規なポリマーブレンド繊維。
    ここでCは、モノマーユニットa,bからなる重合度50以上の共重合体である。
    Dは,ホモポリマーであっても共重合体であっても良いがCを構成するモノマーユニットaのみからなる重合度50以上のホモポリマーとのブレンドにおいては完全相溶系であり,かつCを構成するモノマーユニットbのみからなる重合度50以上のホモポリマーとのブレンドにおいては非相溶系である。
  2. 2成分からなるポリマーブレンド繊維であり、繊維の縦、横断面において、一成分が分散、相分離しており、相分離した分散相が,繊維軸方向及び/又は断面方向に連通した形態を有する相分離構造である請求項1に記載の新規なポリマーブレンド繊維。
  3. 相分離した分散相の繊維横断面における円換算直径が0.005〜0.1ミクロンである請求項1〜2のいずれかに記載の新規なポリマーブレンド繊維。
  4. 相分離した分散相の繊維横断面における円換算直径が0.01〜0.1ミクロンである請求項1〜3のいずれかに記載の新規なポリマーブレンド繊維。
  5. ポリマーブレンドが,下記(2)式で表される重合度の比率Nが50以下のポリマーブレンドである請求項1〜4に記載の新規なポリマ−ブレンド繊維。
    N=n1/n2 (2)
    (但し,n1はポリマ−ブレンド成分の中で重合度の大きい方のポリマ−の重合度,n2はポリマ−ブレンド成分の中で重合度の小さい方のポリマ−の重合度。)
  6. 2成分のうち少なくとも1成分が結晶性ポリマーである請求項1〜5に記載の新規なポリマ−ブレンド繊維。
  7. ポリマ−ブレンドがポリスチレンとポリ−ε−カプロラクトン樹脂のブレンドである請求項1〜6のいずれかに記載の新規なポリマ−ブレンド繊維。
  8. 共重合体()を構成するモノマーユニットの一方の成分がエチレンテレフタレ−トであることを特徴とする請求項1〜7に記載の新規なポリマーブレンド繊維。
  9. Cがエチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トの共重合体であり,かつDがポリエ−テルイミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の新規なポリマ−ブレンド繊維。
  10. エチレンテレフタレ−トとエチレンナフタレ−トの共重合割合が,エチレンテレフタレ−ト単位が99〜50モルに対してエチレンナフタレ−ト単位が1〜50モルである請求項9に記載の新規なポリマ−ブレンド繊維。
  11. ポリエ−テルイミド樹脂が下記一般式化1で示される請求項9,10のいずれかに記載の新規なポリマ−ブレンド繊維。
    Figure 0003849809
    (式中,R1は炭素原子数6〜30の二価の芳香族有機基,R2は炭素原子数6〜30の二価の芳香族有機基,炭素原子数2〜20のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基または炭素原子数2〜8のアルキレン基で連鎖停止されたポリオルガノシロキサン基を表す)
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維をアルカリ減量処理することを特徴とする、円換算直径で0.001〜5ミクロンの微小空洞が無数にあり、かつそれぞれが互いに連結した海綿状の構造を有する繊維。
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維を、2成分からなる部分相溶系ポリマ−ブレンドを用いて相溶状態にして溶融紡糸し,紡出後の工程で物理的または化学的手段により相分離構造を発現させることを特徴とする新規なポリマ−ブレンド繊維の製造法。
  14. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維において、ポリマ−ブレンドが,上限臨界共溶温度型の相図を有する請求項13に記載の新規なポリマ−ブレンド繊維の製造法。
  15. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維の、相分離構造を発現させる工程において,ガラス転移温度以上,バイノーダル温度以下で熱処理することを特徴とする請求項14に記載の新規なポリマーブレンド繊維の製造法。
  16. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維の、相分離構造を発現させる工程において,スピノーダル温度以上,バイノーダル温度以下で熱処理することを特徴とする請求項14に記載の新規なポリマーブレンド繊維の製造法。
  17. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維において、2成分のうち少なくとも1成分が結晶性ポリマ−である請求項13〜16のいずれかに記載の新規なポリマ−ブレンド繊維の製造法。
  18. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維において、紡出後の工程が,紡糸第一引き取りロール間である請求項13〜17のいずれかに記載の新規なポリマーブレンド繊維の製造法。
  19. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維において、紡出後の工程が,延伸工程である請求項13〜17のいずれかに記載の新規なポリマーブレンド繊維の製造法。
  20. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維において、紡出後の工程が,織物の精錬又は染色工程である請求項13〜17のいずれかに記載の新規なポリマーブレンド繊維の製造法。
  21. 請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンド繊維において、紡出後の工程で相分離構造を発現させた後,アルカリ減量処理することを特徴とする請求項13〜20のいずれかに記載の新規なポリマーブレンド繊維の製造法。
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