JP3849292B2 - 移動と旋回とを行う装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は移動と旋回とを行う装置に関し、鉛直軸まわりに旋回させて被試験体の設置作業が容易に行えるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のアッセンブリを試験するには、パワートレイン系試験が行われる。パワートレイン系試験には複数の試験があり、水平面であるXY平面上のX軸またはY軸に沿って被試験体を移動させることと、XY平面と直角なZ軸を中心として被試験体を旋回させることとの3種の動きをさせ、回転試験を行うための被試験体を試験装置に連結させる作業が必要になる。
【0003】
このため、試験装置の汎用性を高めるために被試験体が異なる都度に数トンの重さの試験装置と重量物である被試験体との組み替え移動を行って試験を行っている。試験装置と被試験体とを組み替えるには、試験装置を動かしてもよく、被試験体を動かしても良い。被試験体を一方向へのみ移動させることにより、試験装置に順番に被試験体を組み替えて試験を行う場合は、車輪移動又はスライド移動による手段を用いる。
【0004】
X軸またはY軸に沿って被試験体を移動させて試験を行う場合は、図6に示す移動と旋回とを行う装置を用いて行う。即ち、X軸に沿って移動自在な第1ベッド1をシリンダ2により移動させ、第1ベッド1上でY軸に沿って移動自在な第2ベッド3を第1ベッド1に固着したシリンダ4により移動させ、第2ベッド3上に被試験体5を取り付けるようにする。
【0005】
次に、Z軸を中心として被試験体を旋回させる場合は、旋回が可能な図7のエアーベアリング6を用いる。エアーベアリング6は、複数のエアパッド7と圧空設備8とを圧空ホース9とマニホールド10とにより連通させて構成される。エアパッド7は、図8に示すようにベース11に複数の流路12を形成し、上方へ向かう流路の端に図8(c)のボールバルブ13を取り付けたものである。被試験体14を旋回させる場合は、圧空設備8から送られる空気をボールバルブ13から被試験体14に吹き付けて浮上させ、人力により被試験体14を旋回させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図6に示す移動と旋回とを行う装置は移動方向ごとにベッドとシリンダとが必要になり、移動距離が大きいとこれらも長く大きくなる。
【0007】
一方、図7のエアーベアリングは30ミクロン以下の高精度の組立が求められることから、製造の際に多大の工数が必要になり、また多量のエアを消費するために高価な大容量の圧空設備が必要になる。更に、試験場の床は溝付定盤が用いられ、僅かな突起があってもロッキング現象を生じるので、エアーベアリングの移動に先立って溝付定盤のバリ除去補修が必要になる。
【0008】
そこで本発明は、斯る課題を解決した移動と旋回とを行う装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
斯る目的を達成するための請求項1に係る移動と旋回とを行う装置の構成は、ベッドと、該ベッドに水平面内で三角形を描く頂点の位置に設けられ該ベッドを動かすための移動用ユニットとにより構成し、前記移動用ユニットは、前記ベッドに保持手段を介して揺動自在に支持された軸受部材と、該軸受部材に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、該回転軸に連動連結された駆動手段と、前記回転軸の下端に固着された円板と、前記ベッドに固定されると共に前記夫々の軸受部材に対して円周方向に相互に90度をなす偏心位置を夫々下方へ押圧可能な一対の押圧手段とにより構成し、相互に90度をなす偏心位置に配置された前記一対の押圧手段の一方または双方を作動させ、前記ベッドの旋回中心と前記夫々の円板の中心を通る放射線上であって、前記夫々の円板の外周のうちの前記ベッドの外周に近い部分を床面に押圧させた状態で、前記夫々の円板を同一方向へ回転させることにより前記ベッドを他の方向へ旋回させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施の形態を説明する。
【0011】
(a)実施の形態1
本発明による移動と旋回とを行う装置の構成を図2に示す。図のように被試験体を載せるためのベッド16が設けられ、ベッド16上であって正三角形に近い二等辺三角形の頂点の位置に移動用ユニット17が夫々設けられている。
【0012】
移動用ユニット17の構造を以下に説明する。図1に示すようにベッド16に貫通孔が形成されるとともに貫通孔が支持板18によって閉塞されることで収容室19が形成されている。この収容室19の内部にはリング状の軸受部材20が揺動自在に設けられている。即ち、軸受部材20における内周面の上部に球面凹部21が形成される一方、支持板18の下面には球面凸部22を形成したリング状突起23が形成され、球面凸部22が球面凹部21に嵌め込まれている。
【0013】
このようにして揺動自在に設けられた軸受部材20に軸受24を介して回転軸25が回転自在に支持されている。回転軸25の下端には円板としてのディスク26が一体に形成され、ディスク26の下面はベッド16の下面よりも数ミリだけ高い位置に設定されている。
【0014】
このように揺動自在な回転軸25及びディスク26が傾いてディスク26の下面が床面に接触しないように中立保持するため、以下のような保持手段が構成されている。支持板18における回転軸25を中心とする円周上には略等間隔に4つの孔が形成され、上方から夫々の孔に遊嵌されたボルト32が軸受部材20にねじ込まれている。そして、夫々のボルト32の頭部と支持板18との間に夫々ばね31を介在させることによってディスク26の下面とベッド16の下面とが略平行に保持されている。
【0015】
ばね31の付勢力に抗して軸受部材20の偏心位置を下方へ押圧することでディスク26の外周部の一部を床面に接触させるための押圧手段が設けられる。押圧手段は相互に90度をなす2位置に一対ずつ設けられ、その位置は図2に示すように3つの移動用ユニット17によって異なる。押圧手段としては油圧シリンダ33が図示しないボルトを介して支持板18に取り付けられ、油圧シリンダ33のロッドの先端には、軸受部材20の上面に偏当たりしないように大きな球面を有するアダプタ34が設けられている。
【0016】
そして、3つの移動用ユニット17のうちの図2における最上部のものにのみ、図1(a)に示す駆動手段が設けられている。図のように支持板18の上方には、駆動手段としてモータ35と減速機36とからなるギャードモータ27が設けられ、ギャードモータ27の出力軸37が回転軸25の上端に連動連結されている。ギャードモータ27自体が出力軸37の回転による反力で反対方向へ回転するのを防止するために、支持板18に支柱28が固着され、図1(b)に示すようにギャードモータ27の取付板38を貫通する貫通孔30に遊嵌された細いボルト29が支柱28にねじ込まれている。
【0017】
次に、斯る移動と旋回とを行う装置の作用を説明する。図4(a)に示すようにベッド16に設けた3つの移動用ユニット17の夫々について、上部の移動用ユニット17における一対の油圧シリンダ33のうちの上部のもの、下部の移動用ユニット17についてはいずれも下部のもののみを動作させ、床面に接触する部分を黒く塗りつぶして示すように、ディスク26のうちの上側のみ、下側のみが床面に接触するように設定する。そして、ギャードモータ27を有する上部のディスク26の回転方向を実線矢印の方向にすると、移動と旋回とを行う装置は右方へ移動し、破線矢印の方向にすると左方へ移動する。
【0018】
次に、図4(b)に示すように上部及び左部の移動用ユニット17については一対の油圧シリンダ33のうちの左部のもの、右部の移動用ユニット17については右部のもののみを動作させ、ディスク26のうちの床面に接触する部分を黒く塗りつぶして示すように、左側のみ,右側のみが床面と接触するように設定する。そして、ギャードモータ27を有する上部のディスク26の回転方向を実線矢印の方向にすると移動と旋回とを行う装置は上方へ移動し、破線矢印の方向にすると下方へ移動する。
【0019】
最後に、図4(c)に示すように上部の移動用ユニット17については一対の油圧シリンダ33のうちの上部のもの、下部の両側の移動用ユニット17については両方を同時に動作させ、ディスク26のうちの床面に接触する部分を黒く塗りつぶして示すように、旋回中心(イ)とディスク26の中心とを通る放射線上でディスク26と床面とが接触するように設定する。そして、ギャードモータ27を有する上部のディスク26の回転方向を実線方向にすると移動と旋回とを行う装置は旋回中心(イ)を中心として時計方向へ旋回し、破線の方向にすると反時計方向へ旋回する。
【0020】
一方、図3に示すように、4つの移動用ユニット17を設けるとともに、左側のディスク26については左側が床面に接触し、右側のディスク26については右側が床面に接触するように設定し、いずれのディスク26も反時計方向へ回転させるとベッド16は時計方向へ回動する。この場合はディスク26による駆動方向は上下方向であって旋回方向は旋回中心を中心とする円の接線方向であるために、駆動方向と旋回方向とにずれがある。このためディスク26と床面との間にすべり摩擦力が生じて旋回抗力が大きい。
【0021】
図3は4つの移動用ユニット17の全てにギャードモータを設けたものであるが、耐角配置された一対の移動用ユニット17にのみギャードモータを設けたものでは床面の状態によって旋回したりしなかったりして動きが非常に不安定であった。従って、4つの移動 用ユニット17の全てにギャードモータを取り付けなければならず、コスト高になるだけでなく、ディスクの寿命が短い。本発明では、これらの点が全て解決されている。
【0022】
(b)実施の形態2
次に、実施の形態2を図5に示す。この実施の形態はベッド16が上下方向に長い場合を示したものであり、上部の移動用ユニット17にのみギャードモータ27が取り付けられている。このようにベッド16が細長い場合であっても移動用ユニット17に設ける油圧シリンダ33は円周方向に沿って90°をなす位置に一対設ければよい。なお、より高精度の移動を必要とするのであれば、油圧シリンダの数を増やせばよい。
【0023】
斯る移動と旋回とを行う装置の作用については、図4(c)では下部の2つの移動用ユニット17について夫々の移動用ユニット17に設けた一対の油圧シリンダ33の押圧力が略等しくなるのに対し、図5(c)では下部の夫々の移動用ユニット17に設けた一対の油圧シリンダ33のうちの下部のものの押圧力が左,右のものの押圧力よりもやや大きくなる点が異なる。その他は実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0024】
【0025】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、請求項1に係る移動と旋回とを行う装置によれば、相互に90度をなす偏心位置に配置された一対の押圧手段の一方または双方を作動させ、ベッドの旋回中心と夫々の円板の中心を通る放射線上であって、夫々の円板の外周のうちのベッドの外周に近い部分を床面に押圧させた状態で、夫々の円板を同一方向へ回転させることによりベッドを他の方向へ旋回させるので、円板の回転による駆動方向がベッドの旋回する旋回円の接線方向と一致することになり、円板と床面との間のすべり摩擦力が少ない。従って、旋回抗力が生じず、旋回動作が安定して寿命が長い。これに対し、円板による駆動方向が上下方向あるいは左右方向であって旋回中心を中心とする円の接線方向である場合は、ベッドは旋回するが円板による駆動方向は上下方向あるいは左右方向等の一方向なので円板と床面との間のすべり摩擦力が大きく、旋回抗力が大きいので寿命が短くなってしまう。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施の形態1に係り、(a)は移動用ユニットの要部断面図、(b)は(a)のA部拡大図。
【図2】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施の形態1における平面図。
【図3】 移動用ユニットを4つ設けた場合の移動と旋回とを行う装置の作用を示す説明図。
【図4】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施の形態1の作用説明図。
【図5】本発明による移動と旋回とを行う装置の実施の形態2の構成及び作用説明図。
【図6】 従来の移動と旋回とを行う装置に係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図7】 従来の移動と旋回とを行う装置であってエアーベアリングの作用説明図。
【図8】 従来の移動と旋回とを行う装置におけるエアパッドに係り、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)はボールバルブの断面図。
【符号の説明】
16…ベッド
17…移動用ユニット
20…軸受部材
24…軸受
25…回転軸
26…ディスク(円板)
27…ギャードモータ(駆動手段)
29,32…ボルト(保持手段)
31…バネ(保持手段)
33…油圧シリンダ(押圧手段)
Claims (1)
- ベッドと、該ベッドに水平面内で三角形を描く頂点の位置に設けられ該ベッドを動かすための移動用ユニットとにより構成し、
前記移動用ユニットは、前記ベッドに保持手段を介して揺動自在に支持された軸受部材と、該軸受部材に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、該回転軸に連動連結された駆動手段と、前記回転軸の下端に固着された円板と、前記ベッドに固定されると共に前記夫々の軸受部材に対して円周方向に相互に90度をなす偏心位置を夫々下方へ押圧可能な一対の押圧手段とにより構成し、
相互に90度をなす偏心位置に配置された前記一対の押圧手段の一方または双方を作動させ、前記ベッドの旋回中心と前記夫々の円板の中心を通る放射線上であって、前記夫々の円板の外周のうちの前記ベッドの外周に近い部分を床面に押圧させた状態で、前記夫々の円板を同一方向へ回転させることにより前記ベッドを他の方向へ旋回させるようにしたことを特徴とする移動と旋回とを行う装置。
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