JP3656367B2 - 移動と旋回とを行う装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は移動と旋回とを行う装置に関し、ＸＹ平面上のＸ軸またはＹ軸に沿って移動させたり、ＸＹ平面と直角なＺ軸（鉛直軸）まわりに旋回させたりして、被試験体の設置作業等が容易に行えるようにしたものである。
【０００２】
【従来の技術】
自動車用のアッセンブリを試験するには、パワートレイン系試験が行われる。パワートレイン系試験には複数の試験があり、水平面であるＸＹ平面上のＸ軸またはＹ軸に沿って被試験体を移動させることと、ＸＹ平面と直角なＺ軸を中心として被試験体を旋回させることとの３種の動きをさせ、回転試験を行うための被試験体を試験装置に連結させる作業が必要になる。
【０００３】
このため、試験装置の汎用性を高めるために被試験体が異なる都度に数トンの試験装置と重量物である被試験体との組み替え移動を行って試験を行っている。試験装置と被試験体とを組み替えるには、試験装置を動かしてもよく、被試験体を動かしてもよい。被試験体を一方向へのみ移動させることにより、試験装置に順番に被試験体を組み替えて試験を行う場合は、車輪移動又はスライド移動による手段を用いる。
【０００４】
Ｘ，Ｙ軸の２方向に沿って被試験体を移動させて試験を行う場合は、図８に示す移動と旋回とを行う装置を用いて行う。即ち、Ｘ軸に沿って移動自在な第１ベッド１をシリンダ２により移動させ、第１ベッド１上でＹ軸に沿って移動自在な第２ベッド３を第１ベッド１に固着したシリンダ４により移動させ、第２ベッド３上に被試験体５を取り付けるようにする。
【０００５】
次に、Ｚ軸を中心として被試験体５を旋回させる場合は、旋回が可能な図９のエアーベアリング６を用いる。エアーベアリング６は、複数のエアパッド７と圧空設備８とを圧空ホース９とマニホールド１０とにより連通させて構成される。エアパッド７は、図１０に示すようにベース１１に複数の流路１２を形成し、上方へ向かう流路の端に図１０（ｃ）のボールバルブ１３を取り付けたものである。被試験体１４を旋回させる場合は、圧空設備８から送られる空気をボールバルブ１３から被試験体１４に吹き付けて浮上させ、人力により被試験体１４を旋回させる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図８に示す移動と旋回とを行う装置は移動方向ごとにベッドとシリンダとが必要になり、移動距離が大きいとこれらも長く大きくなる。
【０００７】
一方、図９のエアーベアリングは３０ミクロン以下の高精度の組立が求められることから、製造の際に多大の工数が必要になり、また多量のエアを消費するために高価な大容量の圧空設備が必要になる。更に、試験場の床は溝付定盤が用いられ、僅かな突起があってもロッキング現象を生じるので、エアーベアリングの移動に先立って溝付定盤のバリ除去補修が必要になる。
【０００８】
そこで本発明は、斯かる課題を解決した移動と旋回とを行う装置を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するための請求項１に係る移動と旋回とを行う装置の構成は、ベッドと、該ベッドの相互に離れた位置に少なくとも３つ設けられると共に前記ベッドを移動させるための移動用ユニットとにより構成し、該移動用ユニットは、前記ベッドに保持手段を介して揺動自在に支持された軸受部材と、該軸受部材に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、該回転軸に連動連結された駆動手段と、前記回転軸の下端に固着された円板と、前記ベッドに固定されると共に前記夫々の軸受部材に対して円周方向の相互にほぼ９０度をなす偏心位置を夫々下方へ押圧可能な一対の押圧手段とにより構成し、前記押圧手段の押圧により前記円板が前記円板の円周方向で床面に接触する部分と前記円板の回転する方向とを組み合わせ、前記ベッドを水平面であるＸＹ平面上でＸ軸またはＹ軸に沿って移動させたり、前記ＸＹ平面と直角なＺ軸の回りに旋回させたりできるようにしたことを特徴とし、
請求項２に係る移動と旋回とを行う装置の構成は、前記円板の下面に、軟質のライナを着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【００１１】
（ａ）実施例１
本発明による移動と旋回とを行う装置の構成を、図１〜図２に示す。図２に示すように被試験体を載せるためのベッド１６が設けられ、ベッド１６の四隅に移動用ユニット１７が設けられる。
【００１２】
移動用ユニット１７の構造を以下に説明する。図１に示すようにベッド１６に貫通孔が形成されるとともに貫通孔が支持板１８によって閉塞されることで収容室１９が形成されている。この収容室１９の内部にはリング状の軸受部材２０が揺動自在に設けられている。即ち、軸受部材２０における内周面の上部に球面凹部２１が形成される一方、支持板１８の下面には球面凸部２２を形成したリング状突起２３が形成され、球面凸部２２が球面凹部２１に嵌め込まれている。
【００１３】
このようにして揺動自在に設けられた軸受部材２０に軸受２４を介して回転軸２５が回転自在に支持されている。回転軸２５の下端にはディスク（円板）２６が一体に形成され、ディスク２６の下面はベッド１６の下面よりも数ミリだけ高い位置に設定されている。支持板１８の上には、モータ（駆動手段）３５と減速機３６とからなるギャードモータ２７が設けられ、ギャードモータ２７の出力軸３７が回転軸２５の上端に連動連結されている。ギャードモータ２７が出力軸３７の回転による反力で反対方向へ回転するのを防止するために、支持板１８に支柱２８が固着され、図１（ｂ）に示すようにギャードモータ２７の取付板３８を貫通する貫通孔３０に遊嵌された細いボルト２９が、支柱２８にねじ込まれている。
【００１４】
このようにギャードモータ２７と一体になって揺動自在な回転軸２５及びディスク２６が傾いてディスク２６の下面が床面に接触しないように中立保持するため、以下のような保持手段が構成されている。支持板１８における回転軸２５を中心とする円周上には略等間隔に４つの孔が形成され、上方から夫々の孔に遊嵌されたボルト３２が軸受部材２０にねじ込まれている。そして、夫々のボルト３２の頭部と支持板１８との間に夫々ばね３１が介在され、ディスク２６の下面とベッド１６の下面とが略平行に保持されている。
【００１５】
また、ばね３１の付勢力に抗して軸受部材２０の偏心位置を下方へ押圧することでディスク２６の外周部の一部を床面に接触させるための押圧手段が設けられる。押圧手段は相互に９０度をなす２位置に一対ずつ設けられ、その位置は図２に示すように４つの移動用ユニット１７によって異なる。即ち、図２（ａ）に示すようにベッド１６のＸ軸側及び図２（ｂ）に示すようにＹ軸側の２ケ所に夫々押圧手段が配置される。押圧手段としては油圧シリンダ３３が図示しないボルトを介して支持板１８に取り付けられ、油圧シリンダ３３のロッドの先端には軸受部材２０の上面に偏当たりしないように下端面に大きな球面を有するアダプタ３４が設けられている。
【００１６】
次に、斯かる移動と旋回とを行う装置の作用を説明する。図２（ａ）に示すようにベッド１６における４つの移動用ユニット１７の夫々について一対の油圧シリンダ３３のうちのＸ軸側のものを動作させてディスク２６のうちのＸ軸側のみが床面に接触するように設定する。図中、ディスク２６のうちの黒く塗りつぶした部分が床面に接触しており、図中の上下のディスク２６の回転方向を相互に反対にすると、図２（ａ）のようにベッド１６が右方へ移動したり、あるいは左方へ移動したりする。
【００１７】
次に、図２（ｂ）に示すように一対の油圧シリンダ３３のうちのＹ軸側のものを動作させてディスク２６のうちのＹ軸側のみが床面に接触するように設定する。図中の左右のディスク２６の回転方向を相互に反対にすると、図２（ｂ）のようにベッド１６が上方へ移動したり、あるいは下方へ移動したりする。
【００１８】
最後に、図２（ｃ）に示すように、ディスク２６の床面に接触する部分は図２（ｂ）のままにしておき、ディスク２６の回転方向を全て同一にすると、ベッド１６は紙面と直角なＺ軸を中心として旋回する。
【００１９】
つまり、本発明による移動と旋回とを行う装置を用いれば、移動と旋回とを行う装置の上に被試験体を載せて、Ｘ，Ｙ軸に沿う方向への移動とＺ軸まわりの旋回とを全て行うことができる。
【００２０】
（ｂ）実施例２
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例２を図３に示す。この実施例は、ギャードモータ２７が反力によって回転するのを防止するために、実施例１のボルト２９に代えて接線方向へ一対のリンク４０を設けたものである。夫々のリンク４０の両端にはリンクボールジョイント４１が設けられている。図３（ｃ）に示すように取付板３８には下端に球面凸部を有するボール軸４３がナット４４を介して取り付けられる一方、リンク４０の一端には球面凹部を有する筒状体４２がねじ込まれ、球面凸部が球面凹部に嵌め込まれている。リンク４０の他端にも筒状体４２がねじ込まれ、ボール軸４３の全長をより長くしたボール軸４５の下端が支持板１８に結合され、ボール軸４５と筒状体４２とが前記と同様に係合している。
【００２１】
斯かる移動と旋回とを行う装置では、ボルト２９を用いた実施例１に比べ、ギャードモータ２７とディスク２６との傾斜がより円滑に行われる。
【００２２】
なお、リンク４０に代えてフレキシブルワイヤ又はチェーンを用いるようにしてもよい。
【００２３】
（ｃ）実施例３
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例３を図４に示す。ここで、図４は、図５〜７についても同様であるが、回転軸及びギャードモータ等は図示省略されている。
【００２４】
この実施例は、実施例１における油圧シリンダ３３のロッドの先端に取り付けた球面状のアダプタに代えて、皿バネ５４を取り付けたものである。そして、皿バネ５４を収容するための凹部５５が軸受部材２０の上面に形成されている。
【００２５】
斯かる移動と旋回とを行う装置では、床面に凹凸があっても、凹凸による衝撃を皿バネ５４が吸収するので、移動と旋回とを行う装置が円滑に移動あるいは旋回する。
【００２６】
（ｄ）実施例４
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例４を図５に示す。
【００２７】
この実施例は、実施例１におけるディスク２６の下面にライナ５６を取り付けたものである。ライナ５６は、中央部分の孔に嵌め込んだ押え５８を皿ネジ５７によりディスク２６に結合することで取り付けられている。ライナ５６の材料としては、床面又は定盤面の材料の降伏点よりも低くて軟らかい材料として銅合金，アルミ合金，軟質ゴムなどが用いられる。
【００２８】
斯かる移動と旋回とを行う装置を用いると、走行面にキズが付きにくく、走行面に凹凸があっても柔軟に接触することになる。
【００２９】
（ｅ）実施例５
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例５を図６に示す。
【００３０】
この実施例は、実施例１における機能のうちの、球面凸部２２と球面凹部２１とによる揺動自在と、ばね３１とボルト３２とによる中立保持との２つの機能を、単一の皿バネ４７によって行うようにしたものである。図のように皿バネ４７の内周面近傍が溝４８内に嵌め込まれている。一方、外周面近傍が軸受部材２０と軸受２４との間に挾持されている。溝４８内への嵌め込みは、リング状突起２３の下端に形成された小径部の下に、図示しない皿ネジを介して押えリング４９を取り付けることによってなされている。
【００３１】
斯かる移動と旋回とを行う装置では、油圧シリンダ３３が作用しない状態では皿バネ４７の存在によってディスク２６がベッド１６の下面と略平行に中立保持される。油圧シリンダ３３が作用すると皿バネ４７が変形してディスク２６が傾き、外力が除かれると再びディスク２６は中立保持される。
【００３２】
（ｆ）実施例６
最後に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例６を図７に示す。この実施例は、実施例５の皿バネに代えて円板プレート５０を設けたものである。
【００３３】
図のように、中心部がくり抜かれた円板プレート５０の内周面近傍がボルト５１を介してリング状突起２３の下面に結合される一方、外周面近傍がボルト５２を介して軸受部材２０に結合されている。
【００３４】
斯かる移動と旋回とを行う装置の作用は実施例５の場合と略同じなので、説明を省略する。
【００３５】
なお、実施例１〜６はベッドに移動用ユニットを４つ設けたが、ベッドを支持するためには最低限３つ設ければよく、必要に応じて３つにしたり、あるいは５つ以上にすることもできる。
【００３６】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、請求項１に係る移動と旋回とを行う装置によれば移動用ユニットにおける円板の傾き方向と回転方向とを変えることによりＸ，Ｙ軸に沿う方向への移動とＺ軸まわりの旋回との３つの動きを行うことができるので、床面を走行面とすることができ、特別な構成のスライド面を必要としない。また、部品数が少なくてコストがかからず、かつ信頼性が高い。更に、平面度の劣化した定盤であっても問題なく走行できる。
【００３７】
請求項２に係る移動と旋回とを行う装置によれば、円板の下面にライナを取り付けたので、床面や定盤上面にキズを付けるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例１に係り、（ａ）は構成図、（ｂ）は（ａ）のＡ部の詳細図。
【図２】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例１における作用説明図。
【図３】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例２に係り、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は（ｂ）におけるＢ部の詳細図。
【図４】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例３における断面図。
【図５】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例４における断面図。
【図６】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例５における断面図。
【図７】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例６における断面図。
【図８】 従来の移動と旋回とを行う装置に係り、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図。
【図９】 従来の移動と旋回とを行う装置であってエアーベアリングの作用説明図。
【図１０】 従来の移動と旋回とを行う装置におけるエアパッドに係り、（ａ）は正面図、（ｂ）は右側面図、（ｃ）はボールバルブの断面図。
【符号の説明】
１６…ベッド
１７…移動用ユニット
２０…軸受部材
２４…軸受
２５…回転軸
２６…ディスク
２７…ギャードモータ
２９，３２…ボルト
３１…バネ
３３…油圧シリンダ
４０…リンク
４７…皿バネ
５０…円板プレート
５６…ライナ
【発明の属する技術分野】
本発明は移動と旋回とを行う装置に関し、ＸＹ平面上のＸ軸またはＹ軸に沿って移動させたり、ＸＹ平面と直角なＺ軸（鉛直軸）まわりに旋回させたりして、被試験体の設置作業等が容易に行えるようにしたものである。
【０００２】
【従来の技術】
自動車用のアッセンブリを試験するには、パワートレイン系試験が行われる。パワートレイン系試験には複数の試験があり、水平面であるＸＹ平面上のＸ軸またはＹ軸に沿って被試験体を移動させることと、ＸＹ平面と直角なＺ軸を中心として被試験体を旋回させることとの３種の動きをさせ、回転試験を行うための被試験体を試験装置に連結させる作業が必要になる。
【０００３】
このため、試験装置の汎用性を高めるために被試験体が異なる都度に数トンの試験装置と重量物である被試験体との組み替え移動を行って試験を行っている。試験装置と被試験体とを組み替えるには、試験装置を動かしてもよく、被試験体を動かしてもよい。被試験体を一方向へのみ移動させることにより、試験装置に順番に被試験体を組み替えて試験を行う場合は、車輪移動又はスライド移動による手段を用いる。
【０００４】
Ｘ，Ｙ軸の２方向に沿って被試験体を移動させて試験を行う場合は、図８に示す移動と旋回とを行う装置を用いて行う。即ち、Ｘ軸に沿って移動自在な第１ベッド１をシリンダ２により移動させ、第１ベッド１上でＹ軸に沿って移動自在な第２ベッド３を第１ベッド１に固着したシリンダ４により移動させ、第２ベッド３上に被試験体５を取り付けるようにする。
【０００５】
次に、Ｚ軸を中心として被試験体５を旋回させる場合は、旋回が可能な図９のエアーベアリング６を用いる。エアーベアリング６は、複数のエアパッド７と圧空設備８とを圧空ホース９とマニホールド１０とにより連通させて構成される。エアパッド７は、図１０に示すようにベース１１に複数の流路１２を形成し、上方へ向かう流路の端に図１０（ｃ）のボールバルブ１３を取り付けたものである。被試験体１４を旋回させる場合は、圧空設備８から送られる空気をボールバルブ１３から被試験体１４に吹き付けて浮上させ、人力により被試験体１４を旋回させる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図８に示す移動と旋回とを行う装置は移動方向ごとにベッドとシリンダとが必要になり、移動距離が大きいとこれらも長く大きくなる。
【０００７】
一方、図９のエアーベアリングは３０ミクロン以下の高精度の組立が求められることから、製造の際に多大の工数が必要になり、また多量のエアを消費するために高価な大容量の圧空設備が必要になる。更に、試験場の床は溝付定盤が用いられ、僅かな突起があってもロッキング現象を生じるので、エアーベアリングの移動に先立って溝付定盤のバリ除去補修が必要になる。
【０００８】
そこで本発明は、斯かる課題を解決した移動と旋回とを行う装置を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するための請求項１に係る移動と旋回とを行う装置の構成は、ベッドと、該ベッドの相互に離れた位置に少なくとも３つ設けられると共に前記ベッドを移動させるための移動用ユニットとにより構成し、該移動用ユニットは、前記ベッドに保持手段を介して揺動自在に支持された軸受部材と、該軸受部材に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、該回転軸に連動連結された駆動手段と、前記回転軸の下端に固着された円板と、前記ベッドに固定されると共に前記夫々の軸受部材に対して円周方向の相互にほぼ９０度をなす偏心位置を夫々下方へ押圧可能な一対の押圧手段とにより構成し、前記押圧手段の押圧により前記円板が前記円板の円周方向で床面に接触する部分と前記円板の回転する方向とを組み合わせ、前記ベッドを水平面であるＸＹ平面上でＸ軸またはＹ軸に沿って移動させたり、前記ＸＹ平面と直角なＺ軸の回りに旋回させたりできるようにしたことを特徴とし、
請求項２に係る移動と旋回とを行う装置の構成は、前記円板の下面に、軟質のライナを着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【００１１】
（ａ）実施例１
本発明による移動と旋回とを行う装置の構成を、図１〜図２に示す。図２に示すように被試験体を載せるためのベッド１６が設けられ、ベッド１６の四隅に移動用ユニット１７が設けられる。
【００１２】
移動用ユニット１７の構造を以下に説明する。図１に示すようにベッド１６に貫通孔が形成されるとともに貫通孔が支持板１８によって閉塞されることで収容室１９が形成されている。この収容室１９の内部にはリング状の軸受部材２０が揺動自在に設けられている。即ち、軸受部材２０における内周面の上部に球面凹部２１が形成される一方、支持板１８の下面には球面凸部２２を形成したリング状突起２３が形成され、球面凸部２２が球面凹部２１に嵌め込まれている。
【００１３】
このようにして揺動自在に設けられた軸受部材２０に軸受２４を介して回転軸２５が回転自在に支持されている。回転軸２５の下端にはディスク（円板）２６が一体に形成され、ディスク２６の下面はベッド１６の下面よりも数ミリだけ高い位置に設定されている。支持板１８の上には、モータ（駆動手段）３５と減速機３６とからなるギャードモータ２７が設けられ、ギャードモータ２７の出力軸３７が回転軸２５の上端に連動連結されている。ギャードモータ２７が出力軸３７の回転による反力で反対方向へ回転するのを防止するために、支持板１８に支柱２８が固着され、図１（ｂ）に示すようにギャードモータ２７の取付板３８を貫通する貫通孔３０に遊嵌された細いボルト２９が、支柱２８にねじ込まれている。
【００１４】
このようにギャードモータ２７と一体になって揺動自在な回転軸２５及びディスク２６が傾いてディスク２６の下面が床面に接触しないように中立保持するため、以下のような保持手段が構成されている。支持板１８における回転軸２５を中心とする円周上には略等間隔に４つの孔が形成され、上方から夫々の孔に遊嵌されたボルト３２が軸受部材２０にねじ込まれている。そして、夫々のボルト３２の頭部と支持板１８との間に夫々ばね３１が介在され、ディスク２６の下面とベッド１６の下面とが略平行に保持されている。
【００１５】
また、ばね３１の付勢力に抗して軸受部材２０の偏心位置を下方へ押圧することでディスク２６の外周部の一部を床面に接触させるための押圧手段が設けられる。押圧手段は相互に９０度をなす２位置に一対ずつ設けられ、その位置は図２に示すように４つの移動用ユニット１７によって異なる。即ち、図２（ａ）に示すようにベッド１６のＸ軸側及び図２（ｂ）に示すようにＹ軸側の２ケ所に夫々押圧手段が配置される。押圧手段としては油圧シリンダ３３が図示しないボルトを介して支持板１８に取り付けられ、油圧シリンダ３３のロッドの先端には軸受部材２０の上面に偏当たりしないように下端面に大きな球面を有するアダプタ３４が設けられている。
【００１６】
次に、斯かる移動と旋回とを行う装置の作用を説明する。図２（ａ）に示すようにベッド１６における４つの移動用ユニット１７の夫々について一対の油圧シリンダ３３のうちのＸ軸側のものを動作させてディスク２６のうちのＸ軸側のみが床面に接触するように設定する。図中、ディスク２６のうちの黒く塗りつぶした部分が床面に接触しており、図中の上下のディスク２６の回転方向を相互に反対にすると、図２（ａ）のようにベッド１６が右方へ移動したり、あるいは左方へ移動したりする。
【００１７】
次に、図２（ｂ）に示すように一対の油圧シリンダ３３のうちのＹ軸側のものを動作させてディスク２６のうちのＹ軸側のみが床面に接触するように設定する。図中の左右のディスク２６の回転方向を相互に反対にすると、図２（ｂ）のようにベッド１６が上方へ移動したり、あるいは下方へ移動したりする。
【００１８】
最後に、図２（ｃ）に示すように、ディスク２６の床面に接触する部分は図２（ｂ）のままにしておき、ディスク２６の回転方向を全て同一にすると、ベッド１６は紙面と直角なＺ軸を中心として旋回する。
【００１９】
つまり、本発明による移動と旋回とを行う装置を用いれば、移動と旋回とを行う装置の上に被試験体を載せて、Ｘ，Ｙ軸に沿う方向への移動とＺ軸まわりの旋回とを全て行うことができる。
【００２０】
（ｂ）実施例２
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例２を図３に示す。この実施例は、ギャードモータ２７が反力によって回転するのを防止するために、実施例１のボルト２９に代えて接線方向へ一対のリンク４０を設けたものである。夫々のリンク４０の両端にはリンクボールジョイント４１が設けられている。図３（ｃ）に示すように取付板３８には下端に球面凸部を有するボール軸４３がナット４４を介して取り付けられる一方、リンク４０の一端には球面凹部を有する筒状体４２がねじ込まれ、球面凸部が球面凹部に嵌め込まれている。リンク４０の他端にも筒状体４２がねじ込まれ、ボール軸４３の全長をより長くしたボール軸４５の下端が支持板１８に結合され、ボール軸４５と筒状体４２とが前記と同様に係合している。
【００２１】
斯かる移動と旋回とを行う装置では、ボルト２９を用いた実施例１に比べ、ギャードモータ２７とディスク２６との傾斜がより円滑に行われる。
【００２２】
なお、リンク４０に代えてフレキシブルワイヤ又はチェーンを用いるようにしてもよい。
【００２３】
（ｃ）実施例３
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例３を図４に示す。ここで、図４は、図５〜７についても同様であるが、回転軸及びギャードモータ等は図示省略されている。
【００２４】
この実施例は、実施例１における油圧シリンダ３３のロッドの先端に取り付けた球面状のアダプタに代えて、皿バネ５４を取り付けたものである。そして、皿バネ５４を収容するための凹部５５が軸受部材２０の上面に形成されている。
【００２５】
斯かる移動と旋回とを行う装置では、床面に凹凸があっても、凹凸による衝撃を皿バネ５４が吸収するので、移動と旋回とを行う装置が円滑に移動あるいは旋回する。
【００２６】
（ｄ）実施例４
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例４を図５に示す。
【００２７】
この実施例は、実施例１におけるディスク２６の下面にライナ５６を取り付けたものである。ライナ５６は、中央部分の孔に嵌め込んだ押え５８を皿ネジ５７によりディスク２６に結合することで取り付けられている。ライナ５６の材料としては、床面又は定盤面の材料の降伏点よりも低くて軟らかい材料として銅合金，アルミ合金，軟質ゴムなどが用いられる。
【００２８】
斯かる移動と旋回とを行う装置を用いると、走行面にキズが付きにくく、走行面に凹凸があっても柔軟に接触することになる。
【００２９】
（ｅ）実施例５
次に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例５を図６に示す。
【００３０】
この実施例は、実施例１における機能のうちの、球面凸部２２と球面凹部２１とによる揺動自在と、ばね３１とボルト３２とによる中立保持との２つの機能を、単一の皿バネ４７によって行うようにしたものである。図のように皿バネ４７の内周面近傍が溝４８内に嵌め込まれている。一方、外周面近傍が軸受部材２０と軸受２４との間に挾持されている。溝４８内への嵌め込みは、リング状突起２３の下端に形成された小径部の下に、図示しない皿ネジを介して押えリング４９を取り付けることによってなされている。
【００３１】
斯かる移動と旋回とを行う装置では、油圧シリンダ３３が作用しない状態では皿バネ４７の存在によってディスク２６がベッド１６の下面と略平行に中立保持される。油圧シリンダ３３が作用すると皿バネ４７が変形してディスク２６が傾き、外力が除かれると再びディスク２６は中立保持される。
【００３２】
（ｆ）実施例６
最後に、本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例６を図７に示す。この実施例は、実施例５の皿バネに代えて円板プレート５０を設けたものである。
【００３３】
図のように、中心部がくり抜かれた円板プレート５０の内周面近傍がボルト５１を介してリング状突起２３の下面に結合される一方、外周面近傍がボルト５２を介して軸受部材２０に結合されている。
【００３４】
斯かる移動と旋回とを行う装置の作用は実施例５の場合と略同じなので、説明を省略する。
【００３５】
なお、実施例１〜６はベッドに移動用ユニットを４つ設けたが、ベッドを支持するためには最低限３つ設ければよく、必要に応じて３つにしたり、あるいは５つ以上にすることもできる。
【００３６】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、請求項１に係る移動と旋回とを行う装置によれば移動用ユニットにおける円板の傾き方向と回転方向とを変えることによりＸ，Ｙ軸に沿う方向への移動とＺ軸まわりの旋回との３つの動きを行うことができるので、床面を走行面とすることができ、特別な構成のスライド面を必要としない。また、部品数が少なくてコストがかからず、かつ信頼性が高い。更に、平面度の劣化した定盤であっても問題なく走行できる。
【００３７】
請求項２に係る移動と旋回とを行う装置によれば、円板の下面にライナを取り付けたので、床面や定盤上面にキズを付けるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例１に係り、（ａ）は構成図、（ｂ）は（ａ）のＡ部の詳細図。
【図２】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例１における作用説明図。
【図３】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例２に係り、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は（ｂ）におけるＢ部の詳細図。
【図４】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例３における断面図。
【図５】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例４における断面図。
【図６】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例５における断面図。
【図７】 本発明による移動と旋回とを行う装置の実施例６における断面図。
【図８】 従来の移動と旋回とを行う装置に係り、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図。
【図９】 従来の移動と旋回とを行う装置であってエアーベアリングの作用説明図。
【図１０】 従来の移動と旋回とを行う装置におけるエアパッドに係り、（ａ）は正面図、（ｂ）は右側面図、（ｃ）はボールバルブの断面図。
【符号の説明】
１６…ベッド
１７…移動用ユニット
２０…軸受部材
２４…軸受
２５…回転軸
２６…ディスク
２７…ギャードモータ
２９，３２…ボルト
３１…バネ
３３…油圧シリンダ
４０…リンク
４７…皿バネ
５０…円板プレート
５６…ライナ
Claims (2)
- ベッドと、該ベッドの相互に離れた位置に少なくとも３つ設けられると共に前記ベッドを移動させるための移動用ユニットとにより構成し、
該移動用ユニットは、前記ベッドに保持手段を介して揺動自在に支持された軸受部材と、該軸受部材に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、該回転軸に連動連結された駆動手段と、前記回転軸の下端に固着された円板と、前記ベッドに固定されると共に前記夫々の軸受部材に対して円周方向の相互にほぼ９０度をなす偏心位置を夫々下方へ押圧可能な一対の押圧手段とにより構成し、
前記押圧手段の押圧により前記円板が前記円板の円周方向で床面に接触する部分と前記円板の回転する方向とを組み合わせ、前記ベッドを水平面であるＸＹ平面上でＸ軸またはＹ軸に沿って移動させたり、前記ＸＹ平面と直角なＺ軸の回りに旋回させたりできるようにしたことを特徴とする移動と旋回とを行う装置。 - 前記円板の下面に、軟質のライナを着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項１に記載の移動と旋回とを行う装置。
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|---|---|---|---|
| JP18933197A JP3656367B2 (ja) | 1997-07-15 | 1997-07-15 | 移動と旋回とを行う装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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| JP18933197A JP3656367B2 (ja) | 1997-07-15 | 1997-07-15 | 移動と旋回とを行う装置 |
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| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH1137905A JPH1137905A (ja) | 1999-02-12 |
| JP3656367B2 true JP3656367B2 (ja) | 2005-06-08 |
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| JP18933197A Expired - Fee Related JP3656367B2 (ja) | 1997-07-15 | 1997-07-15 | 移動と旋回とを行う装置 |
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Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN108072348A (zh) * | 2016-11-18 | 2018-05-25 | 中国科学院沈阳自动化研究所 | 一种基于自定心的齿轮内径测量机构及其测量方法 |
-
1997
- 1997-07-15 JP JP18933197A patent/JP3656367B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN108072348A (zh) * | 2016-11-18 | 2018-05-25 | 中国科学院沈阳自动化研究所 | 一种基于自定心的齿轮内径测量机构及其测量方法 |
| CN108072348B (zh) * | 2016-11-18 | 2019-11-22 | 中国科学院沈阳自动化研究所 | 一种基于自定心的齿轮内径测量机构及其测量方法 |
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH1137905A (ja) | 1999-02-12 |
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