JP3846681B2 - ブレーキ増圧マスタシリンダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操作手段の操作力による入力に応じて調圧された液圧によりマスタシリンダ圧が増圧されて出力される増圧マスタシリンダの技術分野に属し、特に、入力側の作動と出力側の作動とを分離して出力側の作動に影響されることなく、入力ストロークを種々設定できる増圧マスタシリンダの技術分野に属するものである。なお、以下の説明において、マスタシリンダをMCYとも表記する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のブレーキシステムにおいては、従来、液圧によりブレーキペダルのペダル踏力を所定の大きさに倍力させて大きなブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧倍力装置が採用されている。このブレーキ液圧倍力装置は、小さなブレーキペダル踏力で大きなブレーキ力を得ることができ、これにより、制動を確実にしかつ運転者の労力を軽減することができるものである。
【0003】
このような従来のブレーキ液圧倍力装置は、ブレーキペダルのペダル踏力に基づく入力で制御弁が作動して入力に応じた作動液圧を発生させ、この作動液圧を動力室に導入することで、入力を所定の倍力比で倍力して出力するようになっている。そして、このブレーキ液圧倍力装置の出力でブレーキマスタシリンダのピストンを作動させて、マスタシリンダがマスタシリンダ圧を発生し、このマスタシリンダ圧がホイールシリンダにブレーキ液圧として導入されることにより、ブレーキが作動するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のブレーキシステムにおいては、例えば、アンチロック制御(ABS)や急ブレーキ時等にブレーキ力をアシストするブレーキアシスト制御や回生ブレーキを併用する際の回生協調ブレーキ制御等のブレーキ作動中のブレーキ力制御、および車間制御用ブレーキ制御や障害物等の回避のための衝突回避ブレーキ制御やトラクションコントロール(TRC)のためのブレーキ制御等の自動ブレーキ制御等の種々のブレーキ制御が行われている。
このようなブレーキ制御はマスタシリンダより先のホイールシリンダまでのブレーキ回路で行われている場合が多いが、マスタシリンダより先のブレーキ回路でブレーキ制御が行われるとき、液圧倍力装置の入力ストロークが、例えばブレーキフィーリング等のため、このブレーキ制御に影響されないようにすることが求められる。
【0005】
しかしながら、従来のブレーキ液圧倍力装置とブレーキマスタシリンダとを組み合わせたブレーキシステムでは、マスタシリンダとホイールシリンダとの関係から、マスタシリンダピストンのストロークが決まり、このマスタシリンダピストンのストロークでブレーキ液圧倍力装置の入力軸のストローク、つまりブレーキペダルのペダルストロークが決まるようになっている。このため、入力側のストロークがマスタシリンダより先のブレーキ回路でのブレーキ制御に影響されてしまい、従来のブレーキ液圧倍力装置とブレーキマスタシリンダとの組み合わせでは、前述の要求に確実にかつ十分に応えることが困難であった。
【0006】
また、ブレーキフィーリング等のため、入力側であるブレーキペダルのストローク特性を変更する場合、ブレーキマスタシリンダおよびブレーキマスタシリンダより先のブレーキ回路も影響を受けるため、マスタシリンダのサイズ変更等のこれら出力側の変更が必要となる。しかも、出力側を変更すると、ブレーキの出力特性が影響されてしまうため、ブレーキシステム全体の見直し変更が必要となり、変更規模が大がかりになってしまう。
【0007】
更に、車両の種類やサイズ等によってマスタシリンダより先のブレーキ回路が種々変わっても、入力側はこのような異なるブレーキ回路にできるだけ影響されないようにすることが望まれる。
そこで、入力側と出力側とをただ単に分離させて、入力ストロークに関係なく、出力を発生させるようにすると、入力側がストロークしなくなってしまい、入力側のストロークを確保することができなくなる。
【0008】
このようなことから、従来では、マスタシリンダより先のブレーキ回路にストロークシミュレータを設けて、ブレーキ液圧倍力装置の入力ストロークがマスタシリンダより先でのブレーキ制御に影響されないようにするとともに、入力ストロークを確保することが提案されている。
【0009】
しかしながら、ストロークシミュレータを特別に設けたのでは、このストロークシミュレータに用いられているストロークシリンダや電磁開閉弁等の多くの部品を必要とするため、構成が複雑であるばかりでなく、コストが高いものとなってしまう。
また、ストロークシミュレータ等を設けた場合にも、液圧源の失陥時には、確実にブレーキ作動を行うことができるようにしなければならないという問題もある。
【0010】
更に、アンチロック制御システムにおいては、制動時車輪がロック傾向になった場合には、ブレーキ力を制御して車輪のロック傾向を解消できるようにすることが望まれる。更に、回生ブレーキと組み合わされた回生ブレーキ協調システムにおいては、ブレーキ液圧倍力装置の作動中に回生ブレーキ作動が作動した場合に、この回生ブレーキ作動によるブレーキ力の分だけ、ブレーキ液圧倍力装置の作動によるブレーキ力を下げる必要があり、このような場合にブレーキ液圧倍力装置の出力をその分低下できるようにすることが望まれる。また、ブレーキアシストシステムと組み合わされたブレーキシステムにおいては、ブレーキ液圧倍力装置の作動時に運転者が所定のペダル踏力で踏み込めないことにより所定のブレーキ力を得ることができず、ブレーキアシストが必要な場合に、ブレーキ液圧倍力装置の作動によるブレーキ力を上げる必要があり、このような場合にブレーキ液圧倍力装置の出力を上昇できるようにしたりすることが望まれる。
このようにブレーキ作動中にブレーキ制御が行われた場合に、ストロークシミュレータ等を設けても、ブレーキペダルがその影響を受けないようにすることが求められる。
【0011】
更に、車間制御ブレーキシステムでは、走行中、前車との車間距離が短くなるとブレーキを自動的に作動させてこの車間距離を一定の距離に保持することが望まれ、また、衝突回避ブレーキシステムでは、前方等に障害物等があり、この障害物等に衝突するおそれがある場合に、ブレーキを自動的に作動させてこの障害物等との衝突を回避することが望まれる。更に、トラクションコントロールシステムでは、車両発進時に駆動車輪がスリップ傾向になった場合に、この駆動車輪にブレーキを自動的に作動させてこのスリップ傾向を解消し、車両が確実に発進できるようにすることが望まれる。
【0012】
このように自動ブレーキが行われた場合に、ストロークシミュレータ等を設けても、ブレーキペダルがその影響を受けないようにすることが求められている。
しかも、このようなブレーキ作動中のブレーキ力制御や自動ブレーキ制御等を行うためのシステムを簡単な構成で形成することが求められている。
更に、車両等の状況に応じて、入力−ストローク特性、入力−ブレーキ圧特性あるいはストローク−ブレーキ圧特性等を簡単な構成で変更できるようにすることも求められている。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、出力側に影響されずに入力側のストローク特性を種々変更することが可能なブレーキ増圧マスタシリンダを提供することである。
本発明の他の目的は、簡単な構造で増圧したマスタシリンダ圧により大きなブレーキ力を得ることのでブレーキ増圧マスタシリンダを提供することである。
本発明の更に他の目的は、液圧源失陥時には確実に作動することができるコンパクトで安価なブレーキ増圧マスタシリンダを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作力によって加えられる入力でストロークする入力軸と、前記入力軸で作動制御されて液圧源の液圧を前記入力に応じて制御された液圧を発生させる制御弁と、この制御弁で制御された液圧が供給される加圧室と、この加圧室に供給された液圧で作動してマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダピストンとを少なくとも備え、前記制御弁が、弾性手段の弾性力により前記入力軸で作動される方向と逆方向に付勢されるとともにこの制御弁で制御された液圧により前記入力軸で作動される方向に付勢されるようになっており、前記入力軸が前記制御弁で制御された液圧による作用力と前記弾性手段の弾性力とがバランスするようにストロークするようになっており、前記加圧室に接続可能に設けられて前記制御弁で制御された液圧が供給可能である反力室を備えているとともに、この反力室に供給された液圧が前記入力軸に前記入力と対抗して作用するようになっており、前記制御弁が、前記マスタシリンダピストンに対して相対移動可能に設けられかつ前記制御された液圧を発生するバルブスプールを有し、このバルブスプールが前記制御弁で制御された液圧による作用力と前記弾性手段の弾性力とにより互いに対抗する方向に付勢されるようになっていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記制御弁が前記バルブスプールと前記入力軸とで構成され、前記バルブスプールが前記弾性力と前記作用力とがバランスするようにストロークするとともに、前記入力軸がこのバルブスプールのストロークに応じてストロークするようになっていることを特徴としている。
【0016】
更に、請求項3の発明は、前記制御弁が、前記バルブスプールと、前記ハウジングに移動不能に固定された円筒状部材に相対摺動可能に設けられた筒状部材とで構成され、前記バルブスプールを付勢する前記弾性力と前記作用力とがバランスするように前記入力軸がストロークするようになっていることを特徴としている。
【0017】
更に、請求項4の発明は、前記液圧源と前記加圧室との連通・遮断を制御する電磁開閉弁と、非作動時前記加圧室と前記反力室とを自由に連通するとともに、作動時前記加圧室と前記反力室とを前記加圧室と前記反力室との圧力差がリリーフ圧を超えたとき開くリリーフ弁を介して接続するように切換制御する電磁切換弁と、前記電磁開閉弁の開閉および前記電磁切換弁の切換をそれぞれ制御する制御装置とを備えていることを特徴としている。
更に、請求項5の発明は、前記液圧源と前記加圧室との連通・遮断を制御する第1の電磁開閉弁と、前記液圧源と前記反力室との連通・遮断を制御する第2の電磁開閉弁と、これらの第1および第2の電磁開閉弁を開閉制御する制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0018】
更に、請求項6の発明は、前記液圧源が、必要時に作動してブレーキ液を吐出するポンプと、このポンプによって設定圧以上に蓄圧されるアキュムレータとからなり、前記第1の電磁開閉弁が前記ポンプと前記加圧室との連通・遮断を制御し、また前記第2の電磁開閉弁が前記ポンプと前記反力室との連通・遮断を制御するようになっており、更に前記アキュムレータと前記加圧室との連通・遮断が、前記制御装置で開閉制御されかつ非作動時に閉じる第3の電磁開閉弁で制御されるようになっていることを特徴としている。
更に、請求項7の発明は、前記液圧源と前記加圧室との連通・遮断を制御する電磁開閉弁と、前記電磁開閉弁を開閉制御する制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0019】
更に、請求項8の発明は、前記液圧源が設定圧以上に蓄圧されるアキュムレータを少なくとも備えており、また、前記アキュムレータと前記加圧室との連通・遮断を制御する第1の電磁開閉弁を備えているとともに、前記加圧室と前記反力室との連通・遮断を制御する第2の電磁開閉弁を備え、更にこれらの第1および第2の電磁開閉弁を開閉制御する制御装置を備えていることを特徴としている。
更に、請求項9の発明は、操作時に前記入力軸がストロークしても前記加圧室に液圧が発生しないときに、前記入力軸で前記マスタシリンダピストンを押圧することでマスタシリンダ圧を発生させるようになっていることを特徴としている。
【0020】
【作用】
このような構成をした本発明のブレーキ増圧MCYにおいては、MCY自体が増圧機能を有しているので、従来の負圧倍力装置や液圧倍力装置等の倍力装置を必要とせず、ブレーキ増圧MCYの全長を従来のMCYと倍力装置とを組み合わせたものに比べて倍力装置がない分短くなる。これにより、ブレーキシステムが簡素化されるとともに、ブレーキ増圧MCYの搭載性が向上する。
また、入力軸とマスタシリンダピストンとが作動時に分離して作動するとともに、制御弁がこの制御弁で制御された液圧による作用力と弾性手段の弾性力とがバランスするように入力軸がストロークし、この制御弁がストロークシミュレータとして機能するようになる。
【0021】
また、加圧室と反力室とが遮断可能となるので、加圧室に反力室と独立して液圧源の液圧を供給可能となる。これにより、回生ブレーキとの協調制御、自動ブレーキ制御、定速走行適合制御、あるいはブレーキアシスト制御が行うことが可能となる。
更に、制御弁がバルブスプールを有しており、このバルブスプールが制御弁で制御された液圧による作用力と弾性手段の弾性力とがバランスするように入力軸がストロークし、制御弁のストロークシミュレータとしての機能がこのバルブスプールによって発揮されるようになる。
【0022】
そして、制御弁で制御された液圧が作用する制御弁の受圧面積および弾性手段の弾性力を種々設定することにより、ブレーキ増圧MCYの出力側であるMCY圧に影響を及ぼさずに、入力側である入力軸のストローク特性を出力側に独立して種々任意に変えられるようになる。
しかも、入力軸のストローク特性がMCY圧に影響を及ぼされないので、操作フィーリングが良好になる。
更に、ストロークシミュレータがブレーキ増圧MCYに内蔵されて外付けされないため、ブレーキ増圧MCYがコンパクトに形成される。
【0023】
特に、請求項4の発明においては、制御装置が電磁切換弁を切換制御することで、電磁切換弁の切換作動時反力室の液圧が加圧室の液圧よりリリーフ弁のリリーフ圧の分だけ小さくなるので、ブレーキ増圧MCYはジャンピング特性を発揮するようになる。
更に、請求項5ないし7の発明においては、それらの発明のブレーキ増圧MCYがオープンセンタ型MCYに適用される。その場合、請求項5および6の発明においては、操作時の入力軸のストローク開始後の所定時間経過後に制御装置が第2の電磁開閉弁を開くことにより、ブレーキ増圧MCYはジャンピング特性を発揮するようになる。
【0024】
更に、請求項5の発明においては、制御装置が回生ブレーキの作動状況の情報等に基づいて第1および第2の電磁開閉弁を開閉制御することで、回生ブレーキに協調し、回生ブレーキのブレーキ力に応じて全体として最適なブレーキ力が得られる等のブレーキ力を制御するようにブレーキ増圧MCYが作動される。
更に、請求項6の発明においては、請求項5の発明の作用に加えて、制御装置が、自動ブレーキを作動するための情報、定速走行のためにブレーキを作動制御するための情報、あるいはブレーキアシストのためにブレーキを制御するための情報等に基づいて、それぞれ、第1ないし第3の電磁開閉弁を開閉制御することで、自動ブレーキ制御、定速走行適合制御、あるいはブレーキアシスト制御等のブレーキ力制御が行われるようにブレーキ増圧MCYが作動されるようになる。
【0025】
更に、請求項8の発明においては、この発明のブレーキ増圧MCYがクローズドセンタ型MCYに適用される。そして、操作時の入力軸のストローク開始後の所定時間経過後に制御装置が第2の電磁開閉弁を開くことにより、ブレーキ増圧MCYはジャンピング特性を発揮するようになる。また、制御装置が、回生ブレーキの作動状況の情報、自動ブレーキを作動するための情報、定速走行のためにブレーキを作動制御するための情報、あるいはブレーキアシストのためにブレーキを制御するための情報等に基づいて、それぞれ、第1の電磁開閉弁および第2の電磁開閉弁を開閉制御することで、回生ブレーキ協調制御、自動ブレーキ制御、定速走行適合制御、あるいはブレーキアシスト制御等のブレーキ力制御が行われるようにブレーキ増圧MCYが作動されるようになる。
更に、請求項9の発明においては、操作時に前記入力軸がストロークしても前記液圧源の失陥等により前記加圧室に液圧が発生しないときには、入力軸の入力でマスタシリンダピストンが直接作動されるようになるので、このように前記加圧室に液圧が発生しないときでも、ブレーキが確実に作動するようになる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る増圧マスタシリンダの実施の形態の第1例が適用されているブレーキ増圧マスタシリンダを示す図、図2は図1に示す増圧マスタシリンダの増圧制御部の部分拡大断面図である。なお、以下の説明において、「前」はいずれの図において図の左を指し、「後」は図の右を指す。
【0027】
図1および図2に示すように、この第1例におけるブレーキ増圧マスタシリンダ1はオープンセンタ型制御弁を有したオープンセンタ型MCYであり、図示しないブレーキペダルのペダル踏力等のブレーキ操作部材の操作力に応じて調圧した液圧を発生する増圧制御部2とこの増圧制御部2で調圧された液圧で増圧されたMCY圧を発生するマスタシリンダ圧発生部3とからなっている。
【0028】
ブレーキ増圧マスタシリンダ1はハウジング4を有し、このハウジング4は右端に開口する第1孔5と、この第1孔5の左端に連続して形成され、第1孔5の径より小さい径の第2孔6と、この第2孔6の左端に連続して形成され、第2孔6の径より小さい径の第3孔7と、この第3孔7の左端に連続して形成され、第3孔7の径より小さい径の第4孔8とからなる段付孔を有している。この段付孔内の第3孔7には第1円筒状部材9が液密に嵌合されているとともに、第2孔6には第2円筒状部材10が液密に嵌合されており、これらの第1および第2円筒状部材9,10は、第1孔5の右端を液密に閉塞するプラグ11によって軸方向に移動不能に固定されている。第2円筒状部材10は互いに同心状に設けられた外側円筒状部材12と内側円筒状部材13とを有している。
【0029】
そして、第1円筒状部材9および第2円筒状部材10の外側円筒状部材12と、第2円筒状部材10の内側円筒状部材13との間には、筒状のプライマリピストン14が収容されている。このプライマリピストン14の軸方向中央の大径部の外周は第1円筒状部材9の内周に液密にかつ摺動可能に内嵌されているとともに、プライマリピストン14の内周は第2円筒状部材10の内側円筒状部材13の外周に液密にかつ摺動可能に外嵌されている。
【0030】
また、第4孔8および第1円筒状部材9内には筒状のセカンダリピストン15が収容されているとともに、このセカンダリピストン15の軸方向中央の大径部の外周は第4孔8の内周に液密にかつ摺動可能に内嵌されている。セカンダリピストン15の後端部は第1円筒状部材9内に進入しているとともに、このセカンダリピストン15の後端部の内周には、プライマリピストン14の前端小径部が第1カップシール16により液密にかつ摺動可能に内嵌されている。
【0031】
更に、第4孔8内には第3円筒状部材17が液密に嵌合固定されており、この第3円筒状部材17は互いに同心状に設けられた外側円筒状部18と内側円筒状部19とを有している。このセカンダリピストン15の前端小径部の外周は第3円筒状部材17の外側円筒状部18の内周に第2カップシール20により液密にかつ摺動可能に内嵌されているとともに、セカンダリピストン15の内周は第3円筒状部材17の内側円筒状部19の外周に液密にかつ摺動可能に外嵌されている。
そして、プライマリピストン14およびセカンダリピストン15の各軸方向中央の大径部の外径が互いに等しく設定されているとともに、プライマリピストン14およびセカンダリピストン15の各前端小径部の外径が互いに等しく設定されている。
【0032】
プライマリピストン14の前端とセカンダリピストン15との間には第1大気圧室21が形成されており、この第1大気圧室21は、第3円筒状部材17の内側円筒状部19の軸方向孔22とハウジング4に穿設されかつ軸方向孔22に接続する通路孔23とを介してリザーバ24に常時連通している。また、セカンダリピストン15の前端と第3円筒状部材17との間には第2大気圧室25が形成されており、この第2大気圧室25は、第3円筒状部材17の外側円筒状部18の径方向孔26とハウジング4に穿設されかつ径方向孔26に接続する通路孔27とを介してリザーバ24に常時連通している。
【0033】
また、第1円筒状部材9の内側でプライマリピストン14とセカンダリピストン15の後端との間には第1MCY圧室28が形成されており、この第1MCY圧室28は、第1円筒状部材9の前端に形成された径方向の溝29およびハウジングに穿設された通路孔30を介して図示しない第1ブレーキ系統のホイールシリンダに常時接続されている。更に、セカンダリピストン15の後端部には第1MCY圧室28に常時連通する径方向孔31が穿設されている。そして、図示のように第1カップシール16が径方向孔31より後方に位置しているときは、径方向孔31が第1大気圧室21と連通するので、第1MCY圧室28は径方向孔31を介して第1大気圧室21つまりリザーバ24に接続され、また、第1カップシール16が径方向孔31より前方に位置すると、径方向孔31が第1大気圧室21から遮断されるので、第1MCY圧室28は第1大気圧室21つまりリザーバ24から遮断されるようになっている。
【0034】
一方、ハウジング4の第4孔8内側でセカンダリピストン15と第3円筒状部材17の後端との間には第2MCY圧室32が形成されており、この第2MCY圧室32は、ハウジング4に穿設された通路孔33を介して図示しない第2ブレーキ系統のホイールシリンダに常時接続されている。更に、第3円筒状部材17の後端部には第2MCY圧室32に常時連通する径方向孔34が穿設されている。
そして、図示のように第2カップシール20が径方向孔34より後方に位置しているときは、径方向孔34が第2大気圧室25と連通するので、第2MCY圧室32は径方向孔34を介して第2大気圧室25つまりリザーバ24に接続され、また、第2カップシール20が径方向孔34より前方に位置すると、径方向孔34が第2大気圧室25から遮断されるので、第2MCY圧室32は第2大気圧室25つまりリザーバ24から遮断されるようになっている。
【0035】
第2円筒状部材10の外側円筒状部材12の内側でプライマリピストン14の後端と第2円筒状部材10との間には加圧室35が形成されており、この加圧室35は第1円筒状部材9に穿設された径方向孔36を介して、ハウジング4の第2孔6の内周と第1円筒状部材9の外周との間に形成された環状の通路37に常時連通している。更に、第2円筒状部材10の後端とプラグ11の前端との間には反力室38が形成されており、この反力室38はプラグ11に穿設された径方向孔39を介して、ハウジング4に穿設された孔からなる通路40に常時連通している。
【0036】
第1大気圧室21内でプライマリピストン14とセカンダリピストン15との間には、第1リターンスプリング41が縮設されており、この第1リターンスプリング41のばね力でプライマリピストン14は常時後方に付勢されている。そして、非作動時には、プライマリピストン14は図示のようにその後端が第2円筒状部材10に当接されて後退限となっており、このとき第1カップシール16は径方向孔31より後方に位置し、第1MCY圧室28は第1大気圧室21を経てリザーバ24に連通している。また、第2MCY圧室32内でセカンダリピストン15と第3円筒状部材17との間には、第2リターンスプリング42が縮設されており、この第2リターンスプリング42のばね力でセカンダリピストン15は常時後方に付勢されている。そして、非作動時には、セカンダリピストン15は図示のようにその後端が第1円筒状部材9の前端に当接されて後退限となっており、このとき第2カップシール20は径方向孔34より後方に位置し、第2MCY圧室32は第2大気圧室25を経てリザーバ24に連通している。
【0037】
小径部43と大径部44とからなる段付スプール(本発明のバルブスプールに相当)45が第2円筒状部材10の内側円筒状部材13と同心状に設けられており、小径部43は第2円筒状部材10を液密にかつ摺動可能に貫通しているとともに、大径部44は内側円筒状部材13内に摺動可能に嵌合されている。大径部44の後端面は反力室38に面しているとともに、大径部44の前端面は、小径部43の外周面と第2円筒状部材10の内側円筒状部材13の内周面との間に形成されかつ後述するスプリング(本発明の弾性手段に相当)51が収容されるスプリング室46に面している。また、大径部44には反力室38とスプリング室46とを常時連通するように軸方向に貫通する軸方向孔47が穿設されているとともに、大径部44の内周面に環状溝48が形成されている。これらの軸方向孔47と環状溝48とは径方向孔49を介して常時連通されている。後述するように、大径部44には入力軸53の前端部が摺動可能に嵌合されるが、この入力軸53の前端部が嵌合される段付スプール45の軸方向孔の内径は、小径部43の外径より小さく設定され、大径部44の反力室38側の受圧面積は大径部44のスプリング室46側の受圧面積より大きく設定されている。これにより、反力室38およびスプリング室46にそれぞれ液圧が発生したとき、この液圧は大径部44の反力室38側の受圧面積と大径部44のスプリング室46側の受圧面積との差により段付スプール45を前方へ付勢するようになっている。
【0038】
また、段付スプール45の前端はプライマリピストン14の前端部の径方向突出部50に当接可能となっている。更に、内側円筒状部材13と大径部44との間にはスプリング51が縮設されており、このスプリング51のばね力で、段付スプール45は常時後方つまり後述する入力軸53の方向に付勢されている。そして、非作動時には、段付スプール45は図示のようにその後端が第2円筒状部材10に設けられたスナップリング52に当接されて後退限となっている。
【0039】
段付スプール45の後端部には、入力軸53の前端部が摺動可能に嵌合されている。この入力軸53は、プラグ11内を摺動する後端部の断面積が段付スプール45内を摺動する前端部の断面積より大きくなる段付軸として形成されている。また、入力軸53はその後端部が図示しないブレーキペダルに連結されており、ブレーキペダルの踏み込みで前進ストロークするようになっている。この入力軸53は図示しないブレーキペダルのリターンスプリングで常時後方に付勢されている。このリターンスプリングとは別に、図示しないが段付スプール45と入力軸53との間にスプリングを縮設し、このスプリングのばね力で入力軸53を常時後方に付勢することもできる。更に、入力軸53にはフランジ部53aが形成されており、図示のようにこのフランジ部53aがプラグ11に当接することで、入力軸53は後退限となっている。
【0040】
入力軸53の前端53bと環状溝48とで、入力軸53の入力つまりブレーキペダルのペダル踏力に応じた液圧を加圧室35および反力室38に発生させる制御弁54が構成されている。この制御弁54の下流側は、段付スプール45に穿設された軸方向孔55およびプライマリピストン14の前端部に穿設された軸方向孔56を介して第1大気圧室21に常時接続されている。加圧室35に常時連通する環状の通路37は通路57を介して、常開の第1電磁開閉弁58(本発明の電磁切換弁または本発明の第1の電磁切換弁に相当)に接続されており、更に、この第1電磁開閉弁58は通路59を介してポンプ60の吐出側に接続されている。その場合、ポンプ60はリザーバ24からブレーキ液を吸い込んで吐出するようになっている。
【0041】
また、反力室38に常時連通する通路40は通路61を介して常開の電磁切換弁62に接続されている。この電磁切換弁62は、ブレーキ液の流れを制限しない通常の連通位置とポンプ吐出圧がリリーフ圧以下ではポンプ60から反力室38へのブレーキ液の流れを阻止し、ポンプ吐出圧がリリーフ圧を超えると開いてポンプ吐出圧を反力室38に供給するリリーフ弁62aが設けられたブレーキ液流動制限位置の2位置が設定されている。この電磁切換弁62は通路63を介して通路57に常時接続されている。したがって、加圧室35は電磁切換弁62の非作動時は反力室38に自由に連通され、電磁切換弁62の作動時は加圧室35と反力室38との圧力差がリリーフ圧を超えたとき開くリリーフ弁62aを介して反力室38に接続されるようになっている。
【0042】
更に、ポンプ60の吐出側の通路59は通路64を介して常閉の第2電磁開閉弁65に接続されており、この第2電磁開閉弁65は通路66を介してポンプ吐出圧上昇補助用の液圧を蓄えるアキュムレータ67に接続されている。このアキュムレータ67はポンプ吐出圧の上昇を補助する程度のものであるので、その蓄圧容量は比較的小さく設定されている。
【0043】
第1および第2電磁開閉弁58,65の開閉制御およびポンプ60の駆動制御は、それぞれ、図示しないブレーキペダルの踏込を検知するペダル踏込検知センサおよびアキュムレータ67の蓄圧をアキュムレータ圧検出センサからの各検出信号に基づいて、図示しない制御装置(CPU)により行われるようになっている。つまり、第1および第2電磁開閉弁58,65の開閉制御およびポンプ60の駆動制御は必要時にCPUによって行われる。また、電磁切換弁62はペダル踏込検知センサの検出信号に基づいて、CPUによりブレーキペダル踏込時ブレーキ液流動制限位置に切り換えられるように切換制御されるようになっている。そして、この第1例ではポンプ60およびアキュムレータ67により液圧源が構成されているが、その場合ポンプ60が本発明の液圧源を構成している。
【0044】
次に、このように構成された第1例の増圧マスタシリンダ1の作動について説明する。
アキュムレータ67の蓄圧が設定圧より低下すると、アキュムレータ圧検出センサからの検出信号に基づいて、CPUが第1電磁開閉弁58を閉じ、かつ第2電磁開閉弁65を開き、更にポンプ60を駆動することで、ポンプ60吐出圧がアキュムレータ67に蓄わえられる。アキュムレータ67の蓄圧が設定圧以上となると、CPUが第1電磁開閉弁58を再び開き、かつ第2電磁開閉弁65を再び閉じ、更にポンプ60の駆動を停止し、アキュムレータ67の蓄圧を停止する。したがって、アキュムレータ67には設定圧以上の液圧が常時蓄わえられている。なお、CPUが定期的に第1および第2電磁開閉弁58,65とポンプ60とを前述のように作動制御することで、アキュムレータ67に定期的に蓄圧するようにすることもできるし、また、この定期的蓄圧と設定圧以下による蓄圧を組み合わせてアキュムレータ67に設定圧以上の液圧を常時蓄わえるようにすることもできる。
【0045】
ブレーキペダルが踏み込まれない増圧マスタシリンダ1の非作動時には、プライマリピストン14、セカンダリピストン15、段付スプール45および入力軸53は、いずれも図示の後退限となっている。また、図示のように第1電磁開閉弁58が開かれ、電磁切換弁62が連通位置に設定され、更に第2電磁開閉弁65が閉じられている。
【0046】
この図示の非作動時では、制御弁54の開弁量は最大となっており、このときには、反力室38およびスプリング室46が軸方向孔47、径方向孔49、環状溝48、入力軸53の前端53bと環状溝48との間の隙間、軸方向孔55および軸方向孔56を介して第1大気圧室21に接続されている。すなわち、反力室38およびスプリング室46がリザーバ24に制御弁54の最大開弁量で接続されている。また、加圧室35が電磁切換弁62を介して反力室38に接続され、更に第1MCY圧室28はセカンダリピストン15の径方向孔31を介して第1大気圧室21に接続されているとともに、第2MCY圧室32は第3円筒状部材17の径方向孔34を介して第2大気圧室25に接続されている。したがって、非作動時では、第1MCY圧室28、第2MCY圧室32、加圧室35、反力室38およびスプリング室46はいずれも大気圧となっている。
【0047】
ブレーキペダルが踏み込まれると、このブレーキペダルの踏込がペダル踏込検知センサで検知され、CPUがポンプ60を駆動すると同時に、電磁切換弁62をブレーキ液流動制限位置に切り換え、更に、第2電磁開閉弁65を開く。すると、ポンプ60がリザーバ24からのブレーキ液を吐出するが、電磁切換弁62がブレーキ液流動制限位置になっているため、加圧室35は反力室38と実質的に遮断され、ポンプ60吐出側は加圧室35まで密閉空間となっている。このため、この密閉空間内にポンプ60吐出圧が発生し、このポンプ60吐出圧により加圧室35に液圧が発生する。また、第2電磁開閉弁65が開かれることで、アキュムレータ67の蓄圧が加圧室35に供給される。これにより、ポンプ60駆動開始直後のポンプ吐出圧の上昇遅れによる加圧室35の液圧上昇遅れが抑制され、加圧室35の液圧は比較的迅速に上昇するようになる。
【0048】
この加圧室35の液圧でプライマリピストン14が前進し、プライマリピストン14の前端部に組み付けられている第1カップシール16が径方向孔31を通過してこの径方向孔31より前方へ移動する。すると、第1MCY圧室28が第1大気圧室21から遮断され、更にプライマリピストン14が前進することで第1MCY圧室28内にMCY圧が発生する。
【0049】
更に、この第1MCY圧室28のMCY圧でセカンダリピストン15が前進し、セカンダリピストン15の前端部に組み付けられている第2カップシール20が径方向孔34を通過してこの径方向孔34より前方へ移動する。すると、第2MCY圧室32が第2大気圧室25から遮断され、更にセカンダリピストン15が前進することで第2MCY圧室32内にMCY圧が発生する。このとき、電磁切換弁62がブレーキ液流動制限位置になっているので、加圧室35の液圧がリリーフ弁62aのリリーフ圧以下のとき、反力室38にはポンプ吐出圧は供給されなく液圧は発生していない。したがって、ブレーキペダル踏み込んでから(つまり、入力軸53がストローク開始してから)加圧室35の液圧がリリーフ圧を超えない間は、入力軸53は反力室38の液圧による反力が生じないので、各MCY圧は入力軸53の入力に関係なく上昇し、増圧マスタシリンダ1はいわゆるジャンピング特性を発揮するようになる。
【0050】
ブレーキペダル踏み込んでから所定時間が経過すると、第2電磁開閉弁65が再び閉じられ、アキュムレータ67は加圧室35から遮断される。ポンプ吐出圧がリリーフ圧を超えると、ポンプ60から吐出されたブレーキ液が電磁切換弁62を介して反力室38に流動する。更にこのブレーキは、反力室38から軸方向孔47、径方向孔49、環状溝48、環状溝48と入力軸53の前端53bとの間の隙間、軸方向孔55、軸方向孔56、第1大気圧室21、軸方向孔22および通路孔23を介してリザーバ24に還流するようになる。このとき、ブレーキペダルの踏込で入力軸53が前進しているので、環状溝48と入力軸53の前端53bとの間の隙間が小さくなっている、つまり制御弁54の開弁量が小さくなっていて、この隙間を流れるブレーキ液が絞られるため、液圧が発生し反力室38およびスプリング室46に同圧の液圧がそれぞれ発生する。この反力室38の液圧は、この液圧により入力軸53に加えられる反力が入力軸53の入力とバランスするように制御される。すなわち、反力室38の液圧は入力軸53の入力に応じて制御されるようになる。
【0051】
一方、反力室38およびスプリング室46に液圧が発生すると、この液圧による作用力で、前述のように大径部44の反力室38側の受圧面積と大径部44のスプリング室46側の受圧面積との差に基づき段付スプール45がスプリング51のばね力に抗して前方へ押圧される。そして、この液圧による段付スプール45への作用力とスプリング51のばね力とがバランスするように、段付スプール45が前方へストロークし、これにともない入力軸53も前方へストロークする。すなわち、入力軸53はプライマリピストン14の前方へのストロークに関係なく、前方へストロークするようになり、増圧MCYはその入力側と出力側とが分離され、しかもストロークシミュレータの機能が発揮される。このストロークシミュレータの機能により、増圧MCYの入力側と出力側とが分離されても、入力軸53は確実にストロークするようになる。
【0052】
このとき、加圧室35の液圧は反力室38の液圧より電磁切換弁62のリリーフ圧だけ大きくなっており、反力室38の液圧が入力軸53の入力つまりブレーキペダルのペダル踏力に応じた圧力に制御されることで、この反力室38に電磁切換弁62を介して接続されている加圧室35の液圧もブレーキペダルのペダル踏力に応じた圧力に制御される。したがって、この加圧室35の液圧で作動されるプライマリピストン14により第1MCY圧室28に発生するMCY圧はペダル踏力に応じて増圧された圧力に制御されるとともに、第1MCY圧室28のMCY圧で作動されるセカンダリピストン15により第2MCY圧室32に発生するMCY圧もペダル踏力に応じて増圧された圧力に制御される。
【0053】
そして、これらの第1および第2MCY圧室28,32の各MCY圧がそれぞれ通路孔30,33を介して2ブレーキ系統のそれぞれのホイールシリンダに供給され、ホイールシリンダが作動してブレーキが作動する。その場合、プライマリピストン14およびセカンダリピストン15の各軸方向中央の大径部の外径が互いに等しく、かつプライマリピストン14およびセカンダリピストン15の各前端小径部の外径が互いに等しく設定されているので、第1および第2MCY圧室28,32の各MCY圧は互いに等しく、したがって2ブレーキ系統の各ブレーキ力も等しくなる。
【0054】
ブレーキペダルの踏込を解放すると、ポンプ60の駆動が停止し電磁切換弁62が連通位置になるとともに入力軸53が後退するので、ポンプ60からブレーキ液が吐出されなくなるとともに、環状溝54と入力軸53の前端53bとの間の隙間つまり制御弁54の開弁量が大きくなる。すると、反力室38の液圧が軸方向孔47、径方向孔49、環状溝48、環状溝48と入力軸53の前端53bとの間の隙間、軸方向孔55、軸方向孔56、第1大気圧室21、軸方向孔22および通路孔23を介してリザーバ24に排出され、反力室38の液圧が低下する。この反力室38の液圧低下により加圧室35の液圧も低下するので、プライマリピストン14が第1リターンスプリング41のばね力と第1MCY圧室28のMCY圧により後退する。すると、第1MCY圧室28のMCY圧が低下するので、セカンダリピストン15が第2リターンスプリング42のばね力と第2MCY圧室32のMCY圧により後退し、第2MCY圧室32のMCY圧が低下する。
【0055】
プライマリピストン14の後退で第1カップシール16が径方向孔31より後方へ移動すると第1MCY圧室28が第1大気圧室21に連通し、またセカンダリピストン15の後退で第2カップシール20が径方向孔34より後方へ移動すると第2MCY圧室32が第2大気圧室25に連通するので、第1および第2MCY圧室28,32の各MCY圧がともにリザーバ24に排出される。プライマリピストン14、セカンダリピストン15、段付スプール45および入力軸53がともに図示の後退限位置となると、第1および第2MCY圧室28,32、加圧室35および反力室38がいずれも大気圧となって、増圧マスタシリンダ1が非作動となり、ブレーキが解除する。
【0056】
ポンプ60等の液圧源あるいは第1、第2電磁開閉弁58,65が失陥してブレーキペダル踏込時に、つまりブレーキ操作時に入力軸53がストロークしても加圧室35に液圧が発生しないときは、ブレーキペダルを大きく踏み込むと、入力軸53が大きく前進して段付スプール45に当接し、これを押圧する。更にブレーキペダルを踏み込むことで、段付スプール45が前進して、その前端がプライマリピストン14の前端部の径方向突出部50に当接し、これを押圧するので、プライマリピストン14が前進ストロークする。これにより、前述と同様に第1MCY圧室28にMCY圧が発生するとともに、このMCY圧でセカンダリピストン15が前進ストロークして、前述と同様に第2MCY圧室32にMCY圧が発生する。これらのMCY圧が、前述と同様に2ブレーキ系統のホイールシリンダに供給され、ブレーキが作動する。こうして、液圧源が失陥して液圧が発生しなくても、ブレーキを確実に作動させることができるようになる。
【0057】
なお、ポンプ60が故障しても、第1および第2電磁切換弁58,65およびアキュムレータ67が正常であり、しかもアキュムレータ67に所定圧が蓄圧されている場合は、ブレーキペダルの踏込時に第2電磁切換弁65が開いて、アキュムレータ67の蓄圧が加圧室35に供給されるので、この加圧室35の液圧でプライマリピストン14が作動する。したがって、アキュムレータ67の蓄圧分だけ増圧が可能となり、ポンプ60が故障しても、ブレーキの作動が保障されるようになる。
【0058】
このように、この第1例のブレーキ増圧MCY1によれば、MCY自体に増圧機能を有しているので、従来の負圧倍力装置や液圧倍力装置等の倍力装置を必要とせず、ブレーキ増圧MCY1の全長を従来のMCYと倍力装置とを組み合わせたものに比べて倍力装置がない分短くできる。これにより、ブレーキシステムを簡素化できるとともに、ブレーキ増圧MCY1の搭載性が向上する。
【0059】
また、入力軸53とプライマリピストン14とを作動時に分離して作動させるとともに、制御弁54の一部を構成する段付スプール45を制御弁54で調圧された液圧による作用力とスプリング51のばね力とがバランスするようにストロークさせて、段付スプール45をストロークシミュレータとして機能させているので、この段付スプール45の各受圧面積およびスプリング51のばね力を種々設定することにより、ブレーキ増圧MCY1の出力側であるMCY圧に影響を及ぼさずに、入力側である入力軸53のストローク特性を出力側に独立して種々任意に変えることができるようになる。
しかも、入力軸53のストローク特性がMCY圧に影響を及ぼされないので、操作フィーリングが良好になる。
【0060】
更に、ストロークシミュレータをブレーキ増圧MCY1に内蔵させて外付けしていないため、ブレーキ増圧MCY1をコンパクトに形成することができる。
更に、液圧源等の失陥時は、入力軸53の入力つまりブレーキペダルのペダル踏力でプライマリピストン14を作動させることができるようにしているので、液圧源の失陥時でも、ブレーキを確実に作動させることができるようになる。
【0061】
なお、本発明は前述の第1例に限定されることなく、例えば作動開始時のポンプ吐出圧の上昇遅れが問題とならないような場合等には、第1および第2電磁開閉弁58,65およびアキュムレータ67を省略することができる。特に、この第1例のブレーキ増圧MCY1の制御弁54はオープンセンタ型の制御弁であることから、この第1例のブレーキ増圧MCY1は基本的にはアキュムレータ67を必要としなく、この第1例のアキュムレータ67はあくまでもポンプ吐出圧の上昇遅れを防止するためのものである。また、ジャンピング特性を必要としない場合には、電磁切換弁62を省略することができる。
【0062】
図3は、本発明の実施の形態の第2例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図である。なお、以下の各例の説明においてはその例より前に記載されている例の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
図3に示すように、この第2例のブレーキ増圧MCY1は、前述の第1例の電磁切換弁62および通路63が設けられていなく、代わりに、常開の第3電磁開閉弁68(本発明の第2の電磁開閉弁に相当)が設けられている。この第3電磁開閉弁68は通路61を介して通路40に常時接続されているとともに、通路69を介して通路59に接続されている。また、常閉の第4電磁開閉弁70(本発明の第3の電磁開閉弁に相当)が設けられており、この第4電磁開閉弁70は通路71を介して通路57に常時接続されているとともに、通路72を介して通路66に常時接続されている。そして、この第2例ではポンプ60およびアキュムレータ67により、本発明の液圧源が構成されている。
また、アキュムレータ67は第1例のアキュムレータに比べて蓄圧容量ははるかに大きく設定され、この第2例のアキュムレータ67には少なくとも自動ブレーキが作動可能な程度の液圧が常時蓄わえられている。
【0063】
そして、回生ブレーキ協調システムを採用している場合は、CPUには、回生ブレーキの作動状況の情報が入力されるようになっており、CPUはこの情報に基づいて第1および第3電磁開閉弁58,68を制御することで、回生ブレーキに協調し、回生ブレーキのブレーキ力に応じて全体として最適なブレーキ力が得られるようにブレーキ増圧MCY1を作動させるようになっている。
【0064】
また、自動ブレーキシステムを採用している場合は、CPUには、自動ブレーキを作動させるための情報が入力されるようになっており、CPUはこの情報に基づいて、自動ブレーキ作動条件が成立したと判断すると、第1および第3電磁開閉弁58,68を閉じ、第4電磁開閉弁70を開き、加圧室35にアキュムレータ67の蓄圧を供給してプライマリピストン14を自動的に作動させ、自動ブレーキが作動するようになっている。
【0065】
更に、定速走行を行うために定速走行適合ブレーキシステムを採用している場合は、CPUには、定速走行を行うためにブレーキを作動させるための情報が入力されるようになっており、CPUはこの情報に基づいて、車両が定速走行を行うように第1、第3および第4電磁開閉弁58,68,70の開閉を適宜制御して、ブレーキ作動を制御するようになっている。
【0066】
更に、例えば初心者等の自動車の運転が未熟なドライバ等によりブレーキペダルが踏み込まれても、必要なだけブレーキペダルが踏み込むことができなく、必要なブレーキ力が得られないとき等に、ブレーキ力を大きくするようにアシストするブレーキアシストシステムを採用している場合は、CPUには、ブレーキアシストを行うためにブレーキを作動させるための情報が入力されるようになっており、CPUはこの情報に基づいて、ブレーキアシストが行われるように第3電磁開閉弁68を閉じ、かつ第2または第4電磁開閉弁65,70を開き、加圧室35にアキュムレータ67の蓄圧を供給してプライマリピストン14の作動をアシストすることで、必要なブレーキ力が得られるようになっている。
第2例のブレーキ増圧MCY1の他の構成は第1例と同じである。
【0067】
この第2例のブレーキ増圧MCY1においては、CPUにより第3電磁開閉弁68がブレーキペダルの踏込から所定時間切り換えられて閉じ、これによりジャンピング特性を発揮するようになる。
また、第1ないし第4電磁開閉弁58,65,68,70を適宜開閉制御することで、回生ブレーキとの協調制御、自動ブレーキ制御、定速走行適合制御、あるいはブレーキアシスト制御を行うことができるようになる。
第2例のブレーキ増圧MCY1の他の作動および他の作用効果は第1例と同じである。
【0068】
図4は、本発明の実施の形態の第3例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図、図5は図4に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の、図2と同様の部分拡大断面図である。
図4および図5に示すように、この第3例のブレーキ増圧MCY1は、前述の第1または第2例のブレーキ増圧MCY1に対して増圧制御部2の構成が異なるとともに、電磁切換弁62が設けられていない。
【0069】
この第3例の増圧制御部2は、第2円筒状部材10の外側円筒状部材12と他の部分とが分割されて構成されているとともに、この外側円筒状部材12は第1円筒状部材9と一体に形成されている。すなわち、第1円筒状部材9は、ハウジング4の第1孔5に液密に嵌合されている大径部9a(外側円筒状部材12に対応する)とハウジング4の第2孔6に液密に嵌合されている小径部9bとからなる段付円筒状部材として形成されているとともに、大径部9aがハウジング4に螺合されることでハウジング4に軸方向に移動不能に固定されている。
【0070】
また、第1例の第2円筒状部材10の外側円筒状部材12を除く他の部分で構成されるハウジング側の筒状部材73は、第1円筒状部材9内に収容されている。この筒状部材73は大径部73aと小径部73b(第1例の第10円筒状部材の内側円筒状部材13に対応する)とからなる段付筒状部材として形成されている。筒状部材73の大径部73aは、第1円筒状部材9の大径部9a内に液密にかつ摺動可能に設けられている。この筒状部材73は、ブレーキ増圧MCY1の非作動時に第1リターンスプリング41のばね力でプライマリピストン14を介して右方へ付勢されるようになっている。そして、筒状部材73は、第1円筒状部材9の外側円筒状部材12に取り付けられた止めリング74によって右動が規制されている筒状のストッパ部材75のフランジ部75aに当接することで、その後退限が規定されている。筒状部材73の小径部73b内の軸方向孔は大径孔76と小径孔77との段付孔に形成されている。
【0071】
入力軸53は前端側の大径部53cと後端側の小径部53dとからなる段付軸に形成されており、その場合、大径部53cは筒状に形成されている。そして、入力軸53の大径部53cは筒状部材73の小径部73bの大径孔76内に液密にかつ摺動可能に嵌合されている。
段付スプール45は、その小径部43が筒状部材73の小径部73bの小径孔77内に摺動可能に嵌合されているとともに、その大径部44が入力軸53の筒状の大径部53cに液密にかつ摺動可能に嵌合されている。段付スプール45の外周面と筒状部材73の小径部73bの大径孔76の内周面との間に、反力室38が形成されている。この反力室38に入力軸53の大径部53cの先端が面しているとともに、反力室38内に段付スプール45の小径部43と大径部44との間の段部78が位置するようにされている。
【0072】
また、入力軸53には、延長軸53eが大径部53cの中心に位置して設けられており、この延長軸53eは段付スプール45を遊嵌状態で貫通して軸方向前方に延びている。延長軸53eの前端部には環状ディスク状のストッパ部材79が軸方向に摺動可能に設けられており、このストッパ部材79は段付スプール45の前端に当接可能であるとともに、延長軸53eの前端部に取り付けられた止めリング80で左方への移動が規制されている。
【0073】
入力軸53の大径部53c内にスプリング室46が形成されており、このスプリング室46内には、入力軸53と段付スプール45の後端との間に縮設されたスプリング51が収容されている。また、筒状部材73の前端部とストッパ部材79との間にはスプリング81が縮設され、このスプリング81のばね力でストッパ部材79が後方へ付勢されている。そして、スプリング51のばね力がスプリング81のばね力より大きく設定されていて、図示のように非作動時は段付スプール45の前端がストッパ部材79に当接し、かつストッパ部材79が止めリング80に当接することで、段付スプール45のそれ以上の前方への移動が阻止されている。
【0074】
反力室38は、筒状部材73の小径部73bに穿設された径方向孔82、および小径部73bの外周面とプライマリピストン14の内周面との間に形成された環状の通路83を介して加圧室35に常時連通している。なお、図示の非作動時プライマリピストン14の後端が筒状部材73に当接している状態でも加圧室35と反力室38とが確実に連通するようにするため、プライマリピストン14の後端部に、加圧室35と通路83とを常時連通する径方向孔84が穿設されている。
【0075】
更に、筒状部材73の小径部73bには、通路83に常時連通する径方向孔85が穿設されており、この径方向孔85と段付スプール45との環状溝48とで制御弁54が構成されている。そして、図示の非作動時は前述の第1例と同様に径方向孔85と環状溝48との間の隙間が最大に設定されていて、制御弁54の開弁量が最大となっている。また、段付スプール45が前進ストロークすることで、径方向孔85と環状溝48との間の隙間が小さくなる、つまり制御弁54の開弁量が小さくなってこの隙間を流動するブレーキ液が絞られるようになっている。
【0076】
筒状部材73の小径部73bの内周には段部73cが形成されており、入力軸53が大きく前進ストロークしたとき、その大径部53cの前端がこの段部73cに当接することで、入力軸53と筒状部材73とが一体に前進するようになっている。また、筒状部材73の小径部73bの前端部外周には段部73dが形成されているとともに、プライマリピストン14の前端部内周には段部14aが形成されている。そして、筒状部材73が前進してその段部73dがプライマリピストン14の段部14aに当接することで、筒状部材73とプライマリピストン14とが一体に前進するようになっている。
更に、筒状部材73の小径部73bの前端部には、延長軸53eおよびと、得リング80が貫通可能な軸方向孔73eが穿設されている。
第3例のブレーキ増圧MCY1の他の構成は第1または第2例と同じである。
【0077】
次に、このように構成された第3例の増圧マスタシリンダ1の作動について説明する。
この第3例では、スプリング室46は隙間86を介して第1大気圧室21に常時連通している。
また、増圧マスタシリンダ1の非作動時には、プライマリピストン14、セカンダリピストン15、段付スプール45および入力軸53は、いずれも図示の後退限となっている。また、図示のように第1電磁開閉弁58が開かれ、第2電磁開閉弁65が閉じられている。
【0078】
更に非作動時では、制御弁54の開弁量は最大となっており、このときには、加圧室35が径方向孔84、環状の通路83(径方向孔84を介さず直接通路83に連通する経路もある)、径方向孔85、径方向孔85と環状溝48との間の隙間、環状溝48、径方向孔49、段付スプール45の内周面と延長軸53eの外周面との間の隙間86、小径孔77および軸方向孔73eを介して第1大気圧室21に接続されている。すなわち、非作動時、加圧室35はリザーバ24に制御弁54の最大開弁量で接続されている。同様に、反力室38が加圧室35に常時連通していることから、非作動時、反力室38もリザーバ24に制御弁54の最大開弁量で接続されている。
【0079】
第1MCY圧室28はセカンダリピストン15の径方向孔31を介して第1大気圧室21に接続されているとともに、第2MCY圧室32は第3円筒状部材17の径方向孔34を介して第2大気圧室25に接続されている。したがって、非作動時では、第1MCY圧室28、第2MCY圧室32、加圧室35、反力室38およびスプリング室46はいずれも大気圧となっている。
【0080】
ブレーキペダルが踏み込まれると、入力軸53が前進して段付スプール45が前進し、径方向孔85と環状溝48との間の隙間つまり制御弁54の開弁量が小さくなる。また、第1例の場合と同様にブレーキペダルが踏込でCPUがポンプ60を駆動するとともに第2電磁開閉弁65を所定時間開くので、ポンプ吐出液が加圧室35に供給されるとともに、アキュムレータ67の蓄圧が加圧室35に供給される。すると、制御弁54の開弁量が小さく、そこを流動するブレーキ液が絞られるので、加圧室35に液圧が発生する。このとき、アキュムレータ67の蓄圧で、ポンプ60駆動開始直後のポンプ吐出圧の上昇遅れによる加圧室35の液圧上昇遅れが抑制され、加圧室35の液圧は比較的迅速に上昇するようになる。
【0081】
この加圧室35の液圧で、第1例の場合と同様にプライマリピストン14が前進して第1MCY圧室28内にMCY圧が発生するとともに、このMCY圧でセカンダリピストン15が前進して第2MCY圧室32内にMCY圧が発生する。これらのMCY圧が2ブレーキ系統の各ホイールシリンダに供給されてブレーキが作動する。
【0082】
このとき、反力室38の液圧は、この液圧が段付スプール45の段部78に作用することで段付スプール45に後方に向かって入力軸53の入力と対抗するように加えられる作用力および反力室38の液圧により入力軸53の大径部53cの前端に入力軸53の入力と対抗するように加えられる作用力の合力が入力軸53の入力とバランスするように制御される。この制御された液圧によりスプリング51が撓むことで入力軸53が前進ストロークする。このように入力軸53が前方へストロークすることで、ストロークシミュレータの機能が発揮される。なお、このとき段付スプール45は、制御弁54の絞り量を変化させるに必要な量だけストロークするが、反力室38の液圧が段部78に後方に向かって作用することで実質的にはほとんどストロークしない。
【0083】
また、反力室38の液圧は入力軸53の入力に応じて制御されることで、加圧室35の液圧が入力軸53の入力に応じて増圧され、MCY圧はブレーキペダルのペダル踏力を増圧した大きな液圧となる。
液圧源等の失陥により、ブレーキペダル踏込時に加圧室35に液圧が発生しないときは、第1例と同様に入力軸53が大きく前進して、入力軸53の大径部53cの前端が筒状部材73の小径部73bの段部73cに当接する。このとき、延長軸53eおよび止めリング80が軸方向孔73eを貫通する。更に入力軸53が前進すると、筒状部材73が入力軸53とともに一体に前進し、筒状部材73の段部73dがプライマリピストン14の段部14aに当接する。そして、更に入力軸53が前進することで、プライマリピストン14も一体に前進するので、第1例と同様に第1MCY圧室28にMCY圧が発生し、更にこのMCY圧でセカンダリピストン15が前進して第2MCY圧室32にMCY圧が発生する。これらのMCY圧が各ホイールシリンダに供給され、ブレーキが作動する。こうして、液圧源等の失陥により加圧室35に液圧が発生しない時にも、ブレーキペダルの踏み込みでブレーキが確実に作動するようになる。
第3例のブレーキ増圧MCY1の他の作動および他の作用効果は第1または第2例と同じである。
【0084】
図6は、本発明の実施の形態の第4例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図、図7は図6に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の、図2と同様の部分拡大断面図である。
図6に示すように、この第4例のブレーキ増圧MCY1では、前述の第1または第2例のブレーキ増圧MCY1のマスタシリンダ圧発生部3において、第3円筒状部材17の内側円筒状部19、軸方向孔22、およびハウジング4の通路孔23が設けられていない。したがって、セカンダリピストン15内に設けられている第1大気圧室21は、これらの軸方向孔22および通路孔23を介してブレーキ増圧MCY12の前方からリザーバ24には接続されていない。すなわち、大気圧室21からの排出通路はMCY12の前方へは延設されていない。
【0085】
そこで、この第4例のブレーキ増圧MCY1では、この大気圧室21からの排出通路は次のようにして形成されている。すなわち、第1円筒状部材9が第1例のそれより軸方向に長く形成されているとともに、ハウジング4の第2孔6がその前半の小径部6aと後半の大径部6bとからなる段付孔に形成されている。そして、第2孔6の後半の大径部6bの内周面と第1円筒状部材9の外周面との間に、加圧室35と通路57とに連通する環状の通路37が形成されているとともに、第2孔6の前半の小径部6aの内周面と第1円筒状部材9の外周面との間に、ハウジング4に穿設された径方向孔87を介してリザーバ24に常時連通する環状の通路88が形成されている。その場合、2つの環状通路37,88は互いに液密に遮断されている。
環状の通路88は、プライマリピストン14に穿設された貫通孔89を介して、筒状部材73の小径部73bの外周面とプライマリピストン14の内周面との間に形成された環状の通路83に常時接続されており、この環状の通路83はプライマリピストン14の内孔90およびプライマリピストン14の軸方向孔56を介して第1大気圧室21に常時接続されている。
【0086】
更に、この第4例のブレーキ増圧MCY1では、入力軸53の前端部に環状溝91と、この環状溝91に連通する径方向孔92と、この径方向孔92に連通しかつ段付スプール45の軸方向孔55に連通する軸方向孔93とが形成されている。段付スプール45の環状溝48と入力軸53の環状溝91とで、制御弁54が構成されており、非作動時、環状溝48と環状溝91との間に隙間が最大となっている、つまり制御弁54の開弁量が最大となっている。そして、入力軸53が前進すると、環状溝48と環状溝91との間に隙間つまり制御弁54の開弁量が小さくなるようにされている。
更に、段付スプール45と入力軸53との間には、スプリング94が縮設されており、このスプリング94のばね力で入力軸53が常時後方に付勢されている。
第4例のブレーキ増圧MCY1の他の構成は第1または第2例と同じである。
【0087】
この第4例のブレーキ増圧MCY1によれば、第1例に対して、第3円筒状部材17の内側円筒状部19が設けられなく、この内側円筒状部19とセカンダリピストン15との摺動がなくなるので、セカンダリピストン15の摺動部の数が低減する。この摺動部の数が低減する分、各部材の摺動部の同心性に要求される精度が緩和されるので、ブレーキ増圧MCY1の加工性および組立性が向上する。
第4例のブレーキ増圧MCY1の他の作動および他の作用効果は第1または第2例と同じである。
なお、第4例のブレーキ増圧MCY1に、第1例の電磁切換弁62に代えて、図3に示す第2例の第3および第4電磁開閉弁68,70を用いることもできる。
【0088】
図8は、本発明の実施の形態の第5例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図、図9は図8に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の、図2と同様の部分拡大断面図である。
図8および図9に示すように、第5例のブレーキ増圧MCY1は、図6に示す第4例に対して、反力室38および通路61に連通する通路40はハウジング4に設けられていなく、代わりに第1円筒状部材9の後端部外周面とハウジング4の内周面との間に環状通路として形成されている。この通路40は、同じく第1円筒状部材9の後端部外周面とハウジング4の内周面との間に形成されている環状の通路37と液密にされている。
また、リザーバ24に連通する環状の通路88は第1円筒状部材9の後端部外周面とハウジング4の内周面との間に設けられていなく、代わりに第1円筒状部材9の内周面とプライマリピストン14の外周面との間に形成されている。更に、プライマリピストン14には軸方向孔56が設けられていない。
【0089】
一方、この第5例のMCY圧発生部3では、ハウジング4の内部にスリーブ95が配設されている。このスリーブ95の後端部にプライマリピストン14の前端部が配設されており、このプライマリピストン14の前端部は、第1円筒状部材9とスリーブ95との間に設けられた第1カップシール16に液密にかつ摺動可能に設けられている。
【0090】
また、セカンダリピストン15は、スリーブ95の軸方向孔およびハウジング4の軸方向孔内に配設されている。このセカンダリピストン15はスリーブ95の軸方向孔の内周面に設けられたカップシール96およびハウジング4とスリーブ95との間に位置してハウジング4に設けられた第2カップシール20により液密にかつ摺動可能に設けられている。
プライマリピストン14とセカンダリピストン15との間には第1MCY圧室28が形成されているとともに、ハウジング4とセカンダリピストン15との間には、第2MCY圧室32が形成されている。
【0091】
また、プライマリピストン14には径方向孔31が穿設されている。したがって、前述の各例では第1カップシール16が移動しかつ径方向孔31が移動不能にされているのに対し、この第5例では径方向孔31が移動しかつ第1カップシール16が移動不能にされている。そして、この径方向孔31は、プライマリピストン14の図示の非作動位置では第1カップシール16より若干後方に位置しており、このときは、第1MCY圧室28が、径方向孔31、第1カップシール16の後面の隙間、第1円筒状部材9に穿設された軸方向孔97、通路88、第1円筒状部材9に穿設された径方向孔98、および径方向孔87を介してリザーバ24に接続されるようになっている。したがって、この状態では第1MCY圧室28にはMCY圧は発生しない。また、プライマリピストン14の前進で径方向孔31が第1カップシール16より前方に位置したときは、第1MCY圧室28からリザーバ24へ向かう液の流れが遮断されるので、第1MCY圧室28にMCY圧が発生するようになっている。
【0092】
また、セカンダリピストン15には径方向孔34が穿設されている。したがって、前述の各例では第2カップシール20が移動しかつ径方向孔34が移動不能にされているのに対し、この第5例では径方向孔34が移動しかつ第2カップシール20が移動不能にされている。そして、この径方向孔34は、セカンダリピストン15の図示の非作動位置では第2カップシール20より若干後方に位置しており、このときは、第2MCY圧室32が、径方向孔34、セカンダリピストン15の外周面とスリーブ95の内周面との間の隙間、スリーブ95に穿設された径方向孔99、ハウジング4の径方向孔27を介してリザーバ24に接続されるようになっている。したがって、この状態では第2MCY圧室32にはMCY圧は発生しない。また、セカンダリピストン15の前進で径方向孔34が第2カップシール20より前方に位置したときは、第2MCY圧室32からリザーバ24へ向かう液の流れが遮断されるので、第2MCY圧室32にMCY圧が発生するようになっている。
この第5例のブレーキ増圧MCY1の他の構成は、図6に示す第4例と同じである。
【0093】
このように、前述の第1ないし第4例のブレーキ増圧MCY1では、MCY圧発生部3における第1および第2MCY圧室28,32がいずれもプライマリピストン14およびセカンダリピストン15の外周側に配置されかつ第1および第2大気圧室21,25がいずれもプライマリピストン14およびセカンダリピストン15の中心に配置されているが、この第5例のブレーキ増圧MCY1では、第1および第2MCY圧室28,32がいずれもプライマリピストン14およびセカンダリピストン15の中心に配置されかつ第1および第2大気圧室21,25は実質的に設けられていないので、その分コンパクトに形成される。
この第5例のブレーキ増圧MCY1の他の作動および他の作用効果は、第4例と同じである。
【0094】
図10は、本発明の実施の形態の第6例のブレーキ増圧MCYを示す、図9と同様の断面図である。
前述の第1ないし第5例のブレーキ増圧MCY1は、いずれも、非作動時に加圧室35がポンプ60の吐出側およびリザーバ24に連通する、いわゆるオープンセンタ型のブレーキ増圧MCY1であるが、この第6例のブレーキ増圧MCY1は、非作動時に加圧室35がリザーバ24に連通しポンプ60の吐出側から遮断される、いわゆるクローズドセンタ型のブレーキ増圧MCY1である。
【0095】
これを具体的に説明すると、この第6例のブレーキ増圧MCY1は、まず、前述の第5例のブレーキ増圧MCY1に対して、図8に示す曲線で囲まれている増圧制御部2に対応する部分の一部と、図示しないがポンプ60、アキュムレータ67、電磁開閉弁58,65,68,70および通路57,59,61,64,66,69,71,72を含む液圧供給回路部分の一部とが異なり、マスタシリンダ圧発生部3に対応する部分とリザーバ24とが同じである。
【0096】
図10に示すように、第6例のブレーキ増圧MCY1では、通路57と通路59との間に配設されている第5例の第1電磁開閉弁58に代えて、これらの通路57と通路59との間に常閉の第5電磁開閉弁100(本発明の第1の電磁開閉弁に相当)が設けられているとともに、通路64と通路66との間に配設されている第5例の第2電磁開閉弁65が設けられていない。また、第3電磁開閉弁68に接続されている通路69は通路59には接続されていなく、通路57に接続されている。
【0097】
また、反力室38とスプリング室46とを常時連通する第5例の軸方向孔47、環状溝48および径方向孔49がいずれも設けられていなく、代わりに反力室38とスプリング室46とを常時連通する通路として、入力軸53の前端部に穿設された反力室38に常時連通する径方向孔101、この径方向孔101に連通する軸方向孔102、この軸方向孔102に連通する径方向孔103、この径方向孔103に連通する環状溝104、段付スプール45に設けられてスプリング室46と環状溝104とを常時連通する径方向孔105がそれぞれ設けられている。
【0098】
更に、入力軸53の前端部に設けられた第5例の、制御弁54を構成する環状溝91、径方向孔92、軸方向孔93がいずれも設けられていなく、代わりに制御弁54の一部として、スプリング室46と段付スプール45の軸方向孔55を連通可能にする径方向孔106が段付スプール45に設けられている。この段付スプール45と入力軸53の前端53bとで前述の各例と同様の常開の制御弁54が構成されている。
【0099】
更に、入力軸53の前端部の外周面には環状溝107と環状溝108とが設けられているとともに、段付スプール45の内周面には環状溝107に常時連通する環状溝109と反力室38および環状溝108に常時連通する環状溝110とが設けられており、更に、段付スプール45にはその内周面と外周面とを常時連通する径方向孔111が設けられている。そして、図示に非作動時は、環状溝107が径方向孔111から遮断されているとともに、環状溝108が環状溝109から遮断されており、また、入力軸53が前進した作動時は、環状溝107が径方向孔111に連通し、かつ環状溝108が環状溝109に連通することで反力室38と径方向孔111とが連通するようになっている。
【0100】
更に、第2円筒状部材10には、第2円筒状部材10の外周面およびハウジング4の第2孔6の内周面の間の空間112と径方向孔111とを常時連通する径方向孔113が設けられているとともに、第1円筒状部材9の外周面およびハウジング4の第2孔6の内周面の間に環状の通路114が設けられている。この通路114は通路115を介して通路59に常時接続されている。すなわち、段付スプール45の径方向孔111はポンプ60の吐出側およびアキュムレータ67に常時接続されている。この第6例のアキュムレータ67は前述の第1ないし第5例のアキュムレータ67に比べて蓄圧容量が大きく設定されていて、常時ブレーキが作動するに十分な設定圧に蓄圧されている。また、ポンプ吐出側で通路64には、通路59との接続位置よりポンプ吐出側にポンプ60から通路59およびアキュムレータ67に向かうブレーキ液の流れのみを許容するチェックバルブ116が設けられている。
【0101】
したがって、段付スプール45の径方向孔111には、アキュムレータ67の蓄圧が常時導入されている。そして、作動時反力室38と径方向孔111とが連通することで、アキュムレータ67の蓄圧が反力室38および前述の各例と同様にして加圧室35導入されるようになっている。このようにして、環状溝107、環状溝108、環状溝109、環状溝110および径方向孔111により、アキュムレータ67の蓄圧を反力室38に供給する供給弁117が構成されている。この第6例では、ポンプ60およびアキュムレータ67により液圧源が構成されているが、その場合アキュムレータ67は本発明の液圧源を構成している。
この第6例のブレーキ増圧MCY1の他の構成は、図8に示す第5例と同じである。
【0102】
次に、このように構成された第6例のブレーキ増圧MCY1の作動について説明する。
アキュムレータ67の蓄圧が前述の設定圧より低下すると、ポンプ60が駆動されてアキュムレータ67にポンプ吐出圧が供給されることで、通常時、アキュムレータ67には設定圧の液圧が蓄えられている。
図示のブレーキ非作動時は、環状溝107が径方向孔111から遮断されかつ環状溝108が環状溝109から遮断されているので、供給弁117が閉じているとともに、第5電磁開閉弁100が閉じかつ第3電磁開閉弁68が開いている。
したがって、段付スプール45の径方向孔111にアキュムレータ67の蓄圧が導入され、また、加圧室35および反力室38にはアキュムレータ67の蓄圧が導入されなく、しかも両室35,38はリザーバ24に連通して大気圧となっている。
【0103】
ブレーキ作動時、入力軸53が前進すると、前述のようにして供給弁117が開いて径方向孔111と反力室38とが連通するとともに、入力軸53の前端53bが径方向孔106を絞るので制御弁54が絞られる。これにより、径方向孔111に導入されているアキュムレータ67の蓄圧のブレーキ液は供給弁117を介して反力室38に供給され、更に径方向孔39、通路40、通路61、第3電磁開閉弁68、通路69、通路57、通路37および通路36を介して加圧室35に供給される。同時に、反力室38に供給されたブレーキ液は径方向孔101、軸方向孔102、径方向孔103、環状溝104、径方向孔105およびスプリング室46に流入し、更に制御弁54を通って流動する。このとき、ブレーキ液が制御弁54で絞られるため、スプリング室46の液圧が入力軸53の入力に応じた液圧に制御され、反力室38および加圧室35の液圧も同じ液圧に制御される。この加圧室35に供給された液圧で、前述の第5例と同様にプライマリピストン14が作動して、マスタシリンダ圧発生部3がマスタシリンダ圧を発生し、ブレーキが作動する。
【0104】
ところで、反力室38の液圧は、前述の第5例と同様にこの液圧により入力軸53に加えられる反力が入力軸53の入力とバランスするように制御される。すなわち、反力室38の液圧は入力軸53の入力に応じて制御されるようになる。一方、反力室38およびスプリング室46に液圧が発生すると、この液圧による作用力で、前述の第5例と同様に大径部44の反力室38側の受圧面積と大径部44のスプリング室46側の受圧面積との差に基づき段付スプール45がすプリング51のばね力に抗して前方へ押圧される。そして、この液圧による段付スプール45への作用力とスプリング51のばね力とがバランスするように、段付スプール45が前方へストロークし、これにともない入力軸53も前方へストロークする。すなわち、入力軸53はプライマリピストン14の前方へのストロークに関係なく、前方へストロークするようになり、増圧MCYはその入力側と出力側とが分離され、しかもストロークシミュレータの機能が発揮される。このストロークシミュレータの機能により、増圧MCYの入力側と出力側とが分離されても、入力軸53は確実にストロークするようになる。
【0105】
ブレーキ解除時は、供給弁117が閉じるとともに制御弁54が開いてスプリング室46がリザーバ24に連通するので、スプリング室46に常時連通する反力室38および加圧室35の液圧がリザーバ24に排出されて両室35,38はともに大気圧となり、ブレーキが解除され、ブレーキ増圧MCY1は図示の非作動状態となる。
【0106】
自動ブレーキ作動時は、第3電磁開閉弁68が閉じかつ第5電磁開閉弁100が開くことで、アキュムレータ67の蓄圧が加圧室35に導入される。以下、前述と同様にしてプライマリピストン14が作動し、マスタシリンダ圧が発生してブレーキが自動的に作動する。
この第6例のブレーキ増圧MCY1の他の作動および他の作用効果は、第5例と同じである。なお、第6例のブレーキ増圧MCY1においても、制御弁54をバルブスプール45とハウジング側の部材とで構成することもできる。
【0107】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のブレーキ増圧マスタシリンダによれば、マスタシリンダ自体に増圧機能を有するようにしているので、従来の負圧倍力装置や液圧倍力装置等の倍力装置を必要とせず、ブレーキ増圧マスタシリンダの全長を短くでき、これにより、ブレーキ倍力システムを簡素化できるとともに、ブレーキ増圧マスタシリンダの搭載性を向上できる。
【0108】
また、本発明によれば、ブレーキ増圧マスタシリンダにストロークシミュレータの機能を持たせることが可能となる。そして、制御弁で制御された液圧が作用する制御弁の受圧面積および弾性手段の弾性力を種々設定することにより、ブレーキ増圧マスタシリンダの出力側であるマスタシリンダ圧に影響を及ぼさずに、入力側である入力軸のストローク特性を出力側に独立して種々任意に変えることができるようになる。
しかも、入力軸のストローク特性をマスタシリンダ圧に影響されないようにしているので、操作フィーリングを良好にできる。
更に、ストロークシミュレータがブレーキ増圧MCYに内蔵されて外付けされないため、ブレーキ増圧MCYがコンパクトに形成される。
【0109】
更に、加圧室と反力室とを遮断可能としているので、加圧室に反力室と独立して液圧源の液圧を供給できるようになる。これにより、回生ブレーキとの協調制御、自動ブレーキ制御、定速走行適合制御、あるいはブレーキアシスト制御を簡単に行うことができる。
更に、制御弁がバルブスプールを有しており、このバルブスプールが制御弁で制御された液圧による作用力と弾性手段の弾性力とがバランスするように入力軸がストロークするようにしているので、制御弁のストロークシミュレータとしての機能がこのバルブスプールによって発揮できるようになる。
特に、請求項4の発明によれば、作動時反力室の液圧が加圧室の液圧よりリリーフ弁のリリーフ圧の分だけ小さくなるようにしてので、ブレーキ増圧マスタシリンダにジャンピング特性を発揮させることができるようになる。また、請求項5、6および8の発明によれば、第2の電磁開閉弁の開閉を制御することで、ブレーキ増圧マスタシリンダにジャンピング特性を発揮させることができるようになる。
【0110】
更に、請求項9の発明によれば、操作時に入力軸がストロークしても液圧源の失陥等により加圧室に液圧が発生しないときには、入力軸の入力でマスタシリンダピストンを直接作動するようにしているので、このように操作時に加圧室に液圧が発生しないときでも、ブレーキが確実に作動できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る増圧マスタシリンダの実施の形態の第1例が適用されているブレーキ増圧マスタシリンダを示す図である。
【図2】 図1に示す増圧マスタシリンダの増圧制御部の部分拡大断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態の第2例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態の第3例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図である。
【図5】 図4に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の、図2と同様の部分拡大断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態の第4例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図である。
【図7】 図6に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の、図2と同様の部分拡大断面図である。
【図8】 本発明の実施の形態の第5例のブレーキ増圧MCYを示す、図1と同様の断面図である。
【図9】 図8に示すブレーキ増圧MCYの増圧制御部の、図2と同様の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の第6例のブレーキ増圧MCYを示す、図9と同様の断面図である。
【符号の説明】
1…ブレーキ増圧マスタシリンダ、2…増圧制御部、3…マスタシリンダ圧発生部、4…ハウジング、9…第1円筒状部材、10…第2円筒状部材大径部、14…プライマリピストン、15…セカンダリピストン、16…第1カップシール、20…第2カップシール、21…第1大気圧室、24…リザーバ、25…第2大気圧室、28…第1MCY圧室、32…第2MCY圧室、35…加圧室、38…反力室、43…小径部、44…大径部、45…段付スプール、46…スプリング室、48…環状溝、50…径方向突出部、51…スプリング、53…入力軸、53a…入力軸53の前端、54…制御弁、58…第1電磁開閉弁、60…ポンプ、62…電磁切換弁、65…第2電磁開閉弁、67…アキュムレータ、68…第3電磁開閉弁、70…第4電磁開閉弁、73…筒状部材、73a…大径部、73b…小径部、78…段部、81…スプリング、83…環状の通路、94…スプリング、95…スリーブ、100…第5電磁開閉弁、117…供給弁

Claims (9)

  1. ブレーキペダル等のブレーキ操作部材の操作力によって加えられる入力でストロークする入力軸と、前記入力軸で作動制御されて液圧源の液圧を前記入力に応じて制御された液圧を発生させる制御弁と、この制御弁で制御された液圧が供給される加圧室と、この加圧室に供給された液圧で作動してマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダピストンとを少なくとも備え、
    前記制御弁が、弾性手段の弾性力により前記入力軸で作動される方向と逆方向に付勢されるとともにこの制御弁で制御された液圧により前記入力軸で作動される方向に付勢されるようになっており、
    前記入力軸が前記制御弁で制御された液圧による作用力と前記弾性手段の弾性力とがバランスするようにストロークするようになっており、
    前記加圧室に接続可能に設けられて前記制御弁で制御された液圧が供給可能である反力室を備えているとともに、この反力室に供給された液圧が前記入力軸に前記入力と対抗して作用するようになっており、
    前記制御弁は、前記マスタシリンダピストンに対して相対移動可能に設けられかつ前記制御された液圧を発生するバルブスプールを有し、このバルブスプールは前記制御弁で制御された液圧による作用力と前記弾性手段の弾性力とにより互いに対抗する方向に付勢されるようになっていることを特徴とするブレーキ増圧マスタシリンダ。
  2. 前記制御弁は前記バルブスプールと前記入力軸とで構成され、前記バルブスプールは前記弾性力と前記作用力とがバランスするようにストロークするとともに、前記入力軸はこのバルブスプールのストロークに応じてストロークするようになっていることを特徴とする請求項記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  3. 前記制御弁は前記バルブスプールと前記ハウジングに移動不能に固定された円筒状部材に相対摺動可能に設けられた筒状部材とで構成され、前記バルブスプールを付勢する前記弾性力と前記作用力とがバランスするように前記入力軸がストロークするようになっていることを特徴とする請求項記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  4. 前記液圧源と前記加圧室との連通・遮断を制御する電磁開閉弁と、非作動時前記加圧室と前記反力室とを連通またはリリーフ弁を介して接続するように切換制御する電磁切換弁と、前記電磁開閉弁の開閉および前記電磁切換弁の切換をそれぞれ制御する制御装置とを備えていることを特徴とする請求項2または3記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  5. 前記液圧源と前記加圧室との連通・遮断を制御する第1の電磁開閉弁と、前記液圧源と前記反力室との連通・遮断を制御する第2の電磁開閉弁と、これらの第1および第2の電磁開閉弁を開閉制御する制御装置とを備えていることを特徴とする請求項2または3記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  6. 前記液圧源は、必要時に作動してブレーキ液を吐出するポンプと、このポンプによって設定圧以上に蓄圧されるアキュムレータとからなり、
    前記第1の電磁開閉弁は前記ポンプと前記加圧室との連通・遮断を制御し、また前記第2の電磁開閉弁は前記ポンプと前記反力室との連通・遮断を制御するようになっており、
    更に前記アキュムレータと前記加圧室との連通・遮断が、前記制御装置で開閉制御される第3の電磁開閉弁で制御されるようになっていることを特徴とする請求項記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  7. 前記液圧源と前記加圧室との連通・遮断を制御する電磁開閉弁と、前記電磁開閉弁を開閉制御する制御装置とを備えていることを特徴とする請求項2または3記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  8. 前記液圧源は設定圧以上に蓄圧されるアキュムレータを少なくとも備えており、また、前記アキュムレータと前記加圧室との連通・遮断を制御する第1の電磁開閉弁を備えているとともに、前記加圧室と前記反力室との連通・遮断を制御する第2の電磁開閉弁を備え、更にこれらの第1および第2の電磁開閉弁を開閉制御する制御装置を備えていることを特徴とする請求項2または3記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
  9. 操作時に前記入力軸がストロークしても前記加圧室に液圧が発生しないときに、前記入力軸で前記マスタシリンダピストンを押圧することでマスタシリンダ圧を発生させるようになっていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1記載のブレーキ増圧マスタシリンダ。
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