JP3845945B2 - 塗膜付き樹脂材の再生処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜付き樹脂材から塗膜を分解して再生樹脂として利用できるようにする再生処理方法に関し、さらに詳しくは再生樹脂中に黄変原因物質を含まないようにした再生処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、資源の有効利用及び地球環境保全の観点から、廃プラスチックを再生して再利用する必要性が高まり、PETボトルや発泡スチロール製品などのリサイクルが行われている。また自動車産業においても、各種プラスチック部品には素材の種類が明示され、再生を容易にするための配慮がなされている。
【0003】
ところが自動車のバンパなどの樹脂製品においては、表面に熱硬化性樹脂塗膜が形成されている場合が多い。したがって、このような塗膜付き樹脂材の細片を単に溶融混練するだけでは、再生樹脂中に塗膜片が混入し、再生樹脂の物性や再生品の外観品質が低下するなどの不具合が生じる場合が多くリサイクルが困難である。
【0004】
そこで、廃バンパなどの塗膜付き樹脂材から塗膜を分解して無害な物質に変化させる方法が提案されている。
例えば特開平5−200749号公報には、熱硬化性樹脂塗膜付きポリプロピレン複合材の再生処理方法として、塩化錫のようなルイス酸、アルカリ水酸化物、アルカリ土類水酸化物、アミン、アルコラート、リン酸金属塩、ジエタノールアミンなどの1種または2種以上からなる塗膜分解促進剤をポリプロピレン複合材に対して0.01〜1重量%添加し、200℃以上で塗膜を熱分解する再生方法が開示されている。
【0005】
この従来の塗膜付き樹脂材の再生処理方法では、先ず塗膜付き樹脂材を粉砕して細片とし、2軸押出機などに投入して塗膜分解促進剤とともに溶融混練する。これにより熱硬化性樹脂塗膜は熱分解により微細化され、溶融樹脂中に均一分散する。その後、分解溶融物をペレット化し、再生樹脂として回収する。したがって分解された塗膜は、きわめて微細な分解物として再生樹脂中に均一分散されているため、物性や再生品の外観への影響がほとんどなく無害化される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところでバンパを構成する樹脂基材中には、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの種々の添加剤が含まれている。また塗膜中にも微量ながら各種添加剤が含まれている。これらの添加剤としては、フェノール系、ベンゾエート系などのものが多く、再生処理時の熱により、あるいは塗膜分解促進剤との反応により二量化してキノン構造やキノイド構造となる場合がある。
【0007】
例えば酸化防止剤として広く用いられているBHT(Butylated hydroxy toluen)は、化1式のように二量化してスチルベンキノン又はキノイド構造を有する化合物となる。
【0008】
【化1】
【0009】
このようなキノン構造やキノイド構造の化合物は赤色や橙色に着色している場合が多く、このため再生樹脂を用いた製品に黄変が生じる恐れがあった。
また分解工程後に、真空吸引などにより塗膜分解促進剤とともにこのような黄変原因物質を脱揮することも考えられるが、黄変原因物質は比較的高分子量であるために、真空吸引程度では黄変原因物質を充分に脱揮することが困難であり、残留する黄変原因物質により黄変が生じる恐れがある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、生成した黄変原因物質を速やかに脱揮し、あるいは黄変原因物質を分解して黄変しにくい物質に変化させ、もって再生樹脂の黄変を防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1に記載の塗膜付き樹脂材の再生処理方法の特徴は、塗膜付き樹脂材を粉砕して樹脂基材と塗膜とからなる細片とする粉砕工程と、細片を溶融状態でアルカリ性の塗膜分解促進剤と接触させ塗膜を分解して分解溶融物とする分解工程と、分解溶融物から塗膜の分解生成物と塗膜分解促進剤とを除去する脱揮工程と、よりなる塗膜付き樹脂材の再生処理方法であって、
分解工程では、細片を溶融状態で塗膜分解促進剤と接触させた後に、塗膜分解促進剤及び黄変原因物質の脱揮を促進する脱揮助剤を塗膜付き樹脂材の100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で分解溶融物に添加することにある。
【0012】
また上記課題を解決する請求項2に記載の塗膜付き樹脂材の再生処理方法の特徴は、塗膜付き樹脂材を粉砕して樹脂基材と塗膜とからなる細片とする粉砕工程と、細片を溶融状態でアルカリ性の塗膜分解促進剤と接触させ塗膜を分解して分解溶融物とする分解工程と、分解溶融物から塗膜の分解生成物と塗膜分解促進剤とを除去する脱揮工程と、よりなる塗膜付き樹脂材の再生処理方法であって、分解溶融物及び脱揮工程後の再生樹脂の少なくとも一方に紫外線を照射することにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
請求項1及び請求項2に記載の発明において、粉砕工程はそれぞれ従来と同様に行うことができる。また細片の大きさは特に制限されないが、処理時間を短縮するためにはできるだけ細かくすることが望ましい。
請求項1及び請求項2に記載の発明において、アルカリ性の塗膜分解促進剤としては、アルカリ水酸化物、アルカリ土類水酸化物などを用いることもできるが、1級アミン又は2級アミンを用いることが望ましい。1級アミン又は2級アミンを用いることにより、アミノリシス反応により塗膜の分解が一層促進される。
【0014】
このような1級アミンや2級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert- ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどの1級アミンやジメチルアミン、ジエチルアミンなどの2級アミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミンなどのアルコール性アミンなどの沸点が250℃以下のアミンが挙げられ、これらの1種類あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも沸点150℃以下の1級アミンが効果が大きく、沸点116℃のエチレンジアミンは、脱揮もしやすく塗膜分解効果が大であり特に好ましい物質である。
【0015】
また、前記アミンとともにアルコ−ルや水を添加すれば、塗膜分解促進剤の浸透力が高まったり、混練装置内の圧力が増大したりして、塗膜を一層効率良く分解することができる。アルコ−ルとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、iso-プロパノール、ブタノール、iso-ブチルアルコ−ル、sec-ブチルアルコ−ル、tert- ブチルアルコ−ル、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点250℃以下のアルコ−ルの1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、エチルセロソルブは沸点も150℃以下で、塗膜分解に対する効果も大きく、より好ましい。
【0016】
1級アミンや2級アミンを含む塗膜分解促進剤を使用する場合は、塗膜分解促進剤の添加量の総量が塗膜付き樹脂材100重量部に対して1.5〜50重量部であり、かつ、そのうちの1級アミンまたは2級アミンが塗膜付き樹脂材100重量部に対して1.5〜50重量部を占めることが望ましい。
塗膜分解促進剤の添加量の総量や1級アミンまたは2級アミンの使用量が上記の範囲より過少であると、塗膜分解促進剤の樹脂中への分散や塗膜分解速度が低下し、一方、過大であると、塗膜分解促進剤の脱揮に手間取り、結局いずれの場合もリサイクルのコストメリットが低下する。
【0017】
なお、3級アミン又は4級アンモニウム塩を塗膜分解促進剤として用いることもできる。しかしこの場合は、アルコ−ルや水を併用することが必要である。この場合の3級アミンまたは4級アンモニウム塩は求核性触媒であって、分解反応の反応剤であるアルコ−ルや水の水酸基の水素を引き抜き、塗膜との反応性の高いアルコキシドを生成することによって、アルコリシス反応や加水分解による塗膜の分解を促進する。
【0018】
このような3級アミンまたは4級アンモニウム塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N,N’,N’- テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’- テトラメチルプロピルジアミン、N,N,N’,N’- テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N”- ペンタメチルジエチレントリアミン、N- メチルモルホリン、N- エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、N,N- ジメチルベンジルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N’,N’- テトラメチルジエチレントリアミンなどの3級アミンや、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩等で、沸点あるいは自己分解温度が250℃以下のものを1種類あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
3級アミンや4級アンモニウム塩と併用するアルコ−ルは、1級アミンまたは2級アミンと併用するアルコ−ルとして前記したものと同じである。
3級アミンあるいは4級アンモニウム塩をアルコ−ルや水と併用する場合は、3級アミンあるいは4級アンモニウム塩が塗膜付き樹脂材100重量部に対して1.5〜10重量部を占めることが望ましい。
【0020】
3級アミンあるいは4級アンモニウム塩の使用量が上記の範囲より過少であると触媒としての効果が不十分になり、上記の範囲より過大であっても余り意味がない。
本発明の再生処理方法が適用できる塗膜付き樹脂材の塗膜としては、アルキッドメラミン系、アクリルメラミン系、ウレタン系などの熱硬化性樹脂塗膜が挙げられる。なお、塗膜とともに補修用に用いられるパテ材としてのエステル、ウレタンおよびエポキシ系などの熱硬化性樹脂も効率よく分解することができる。
【0021】
また本発明の再生処理方法が適用できる塗膜付き樹脂材の樹脂基材としては、例えばポリプロピレン、エラストマー変性ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。なお、塗膜あるいは樹脂基材に通常配合されている充填材、顔料、ガラス繊維、その他の添加物は、特に問題にはならない。
【0022】
請求項1及び請求項2の発明における分解工程では、塗膜付き樹脂材の細片と塗膜分解促進剤とが接触される。この分解工程は加熱して行い、樹脂基材の溶融による熱運動の促進により塗膜の分解が促進される。
溶融した塗膜付き樹脂材中に塗膜分解促進剤を効率的に分散させるためには、樹脂基材の溶融温度以上で、かつ塗膜分解促進剤の沸点以上の高温に加熱し、さらに押出し機などの混練装置を用いて混練しながら行うのが好ましい。混練装置により塗膜には剪断応力が作用するため、塗膜は機械的に破砕され塗膜分解促進剤の作用が促進される。
【0023】
溶融した塗膜付き樹脂材と塗膜分解促進剤の接触時間は、塗膜の種類、塗膜分解促進剤の種類および量、加熱温度により大きく影響される。一軸あるいは二軸の押し出し装置を混練装置として使用する場合は、通常1.5〜5分程度で、塗膜が100μm以下の大きさに分解できるように、塗膜分解促進剤の種類及び温度を選択する。なお混練装置内では、塗膜分解促進剤に高圧を作用させ、塗膜分解促進剤が液状を維持できるようにするのが効率的である。
【0024】
脱揮工程は、塗膜の分解生成物および残存する塗膜分解促進剤を分解溶融物から取り除く工程である。この脱揮工程は、分解溶融物を塗膜の分解生成物および塗膜分解促進剤の沸点以上に加熱し、塗膜の分解生成物および残存する塗膜分解促進剤を蒸発させて分離する。この際に真空装置で減圧とし、蒸発による離脱を促進することも好ましい。なお、蒸発した塗膜の分解生成物および塗膜分解促進剤を集めて冷却して凝集することにより回収でき、再び塗膜分解促進剤として使用することもできる。
【0025】
脱揮工程後の分解溶融物は、例えば押出し機のノズルより取り出される。例えば棒状に押出し、その後ペレット状に切断して、再生樹脂とすることができる。また、直接シート等の所定断面をもつ二次製品に押出すことも出来る。
なお、塗膜付き樹脂材の細片に顔料その他のフィラー、添加剤などを配合し、用途に合わせた色、物性をもつ再生樹脂とすることもできる。例えば顔料を配合することにより再生樹脂を調色することができ、処理後の色付け工程がなくなり処理コストが低減できる。
【0026】
請求項1の発明の最大の特徴は、塗膜分解促進剤の脱揮を促進する脱揮助剤を分解溶融物に添加することにある。脱揮助剤により、塗膜分解促進剤、塗膜分解物及び黄変原因物質の分圧が低下するため、脱揮工程において脱揮が促進され、分解溶融物から黄変原因物質を容易に除去することができる。この意味において、脱揮助剤はできるだけ沸点が低いものを用いることが好ましく、特に塗膜分解促進剤の沸点より低い沸点をもつものを用いることが望ましい。例えば沸点が100℃の水、沸点が150℃以下のアルコール、あるいは酢酸エチル、蟻酸エチル、蟻酸メチルなどのエステル類なども用いることができる。
【0027】
この脱揮助剤の添加量は、塗膜付き樹脂材100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲が好ましい。この範囲より少ないと添加した効果が得られず、この範囲より多く添加すると分解溶融物が冷却されてしまい、安定的に連続運転することが困難となる。
脱揮助剤は酸性とすることも好ましい。酸性の脱揮助剤を添加することにより、上記した脱揮促進作用に加えて黄変原因物質が分解して低分子物質になりやすく、分圧のさらなる低下により脱揮を一層促進することができる。また分解した黄変原因物質は無色物質となるため、再生樹脂中に残留しても黄変が防止される。さらにアルカリ性の塗膜分解促進剤を中和する作用もあり、再生材中に残留した酸化防止剤が塗膜分解促進剤により再び黄変物質に変化するのを防止する効果も得られる。
【0028】
酸性の脱揮助剤としては、水やアルコールなどの脱揮助剤に酸を添加したものが例示される。この酸としては塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などが例示される。なお、酸度が強すぎると樹脂基材が劣化する恐れがあるので、脱揮助剤は中性から弱酸性の範囲とすることが望ましい。
請求項2の発明の最大の特徴は、分解溶融物及び脱揮工程後の再生樹脂の少なくとも一方に紫外線を照射することにある。紫外線の照射により、キノン構造やキノイド構造が有する共有構造が破壊されるため、再生樹脂の黄変が防止される。
【0029】
照射される紫外線の光強度は、25〜2000μW/cm2 の範囲が望ましい。光強度が25μW/cm2 より低いと効果が得られなかったり処理時間が長大となり、2000μW/cm2 より大きくなっても効果が飽和するとともに樹脂基材の分解が生じる場合もある。このような紫外線を発生する光源としては、200〜5000Wの紫外線ランプ、70〜5000Wのキセノンランプ、50〜5000Wのキセノンフラッシュランプ、100W以下の低圧水銀ランプ、150〜400Wのメタルハライドランプなどが例示される。
【0030】
紫外線照射を行う時期は、分解工程及び脱揮工程の途中あるいは直後における混練物の溶融状態に行うのが望ましいが、脱揮工程後の固形状態、あるいはペレット化した後などに行ってもよい。
なお、請求項1の発明と請求項2の発明は、それぞれ行ってもよいし両方を行うこともできる。両方を行えば、両方の作用がそれぞれ奏されるため、再生樹脂の黄変を一層確実に防止することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
本実施例の再生処理方法で使用する装置の概略説明図を図1に示す。
この装置は押出し機1と、冷却槽2と、切断機3と、乾燥機4とから構成されている。押出し機1は、スクリュウがL/D=54の2軸混練押出し機であり、40メッシュのスクリーンメッシュの第1シ−ルリング10と、300メッシュのスクリーンメッシュの第2シ−ルリング11により溶融域12、化学分解域13、混練域14の三つの領域に分けられている。
【0032】
溶融域12の前端にはホッパー15が設けられている。また化学分解域13の上流側には塗膜分解促進剤を注入する第1注入口16が設けられ、化学分解域13の下流側には脱揮助剤を注入する第2注入口17が設けられている。さらに混練域14には、揮発性物質を除去するための脱揮口18が設けられている。脱揮口18には、二つの冷却器5を介して真空ポンプ50が連結されている。
【0033】
この押出し機1では、シリンダ内圧力が10〜100(kg/cm2 )とされ、混練物の温度が240〜270℃となるように調整されて、ポリプロピレンの熱劣化を伴わずに塗膜を化学分解することができるようになっている。また処理量は80〜120(kg/h)とした。
(参考例1)
上記押出し機を用い、以下のようにして本参考例の再生処理方法を行った。
【0034】
<粉砕工程>
先ず、塗膜付き樹脂材として使用済みの補修ウレタン系塗膜付きポリプロピレン製自動車バンパを用意し、図示しない粉砕機を用いて一辺が5〜10mm程度の細片に粉砕した。このバンパの樹脂基材中には、酸化防止剤としてのBHTが約0.1重量%含まれている。
【0035】
<分解工程>
次にホッパー15より上記細片を定量供給し、スクリュウを駆動した。細片は溶融域12における加温と、剪断摩擦による加熱とで樹脂基材が溶融し、溶融混練されつつ搬送され、第1シ−ルリング10を通過して次の化学分解域13に送り出される。
【0036】
化学分解域13に移行した溶融混練物に対し、ポンプ60を駆動して塗膜分解促進剤であるエチレンジアミンを第1注入口16から注入した。エチレンジアミンの注入量は、細片100重量部に対して5〜7重量部である。化学分解域13内では、細片の溶融物とエチレンジアミンとが混練され、スクリュウの剪断力とエチレンジアミンにより塗膜が機械的、化学的に高速分解され低分子化される。
【0037】
この化学分解域13では、溶融混練物はエチレンジアミンの沸点(115℃)以上の温度となるが、高圧となっているためエチレンジアミンは液状となり易く、溶融混練物中に均一に分散されて塗膜を効率よく分解し分解溶融物となる。
分解された塗膜の塗膜分解物、エチレンジアミン、酸化防止剤などは、それぞれ比較的低分子であるため気化しやすく、押出し機内の分解溶融物は液体・固体・気体が入り混じった状態となっている。
【0038】
次に化学分解域13の下流域では、ポンプ61が駆動され、第2注入口17から水を注入する。水の注入量は、細片100重量部に対して0.04重量部となるようにした。分解溶融物の温度は水の沸点(100℃)より高いため、水が添加された分解溶融物ではさらに気体種が増えることとなり気体成分の分圧が低下する。
【0039】
<脱揮工程>
次いで分解溶融物が第2シ−ルリング11を通過すると、真空ポンプ50の駆動により押出し機1内の圧力が低下し、比較的低分子量物質が気化する。それに加えて水も添加されているため、水を加えない場合に比べて気体成分の種類が増加し、分圧が低下する。したがって系は全圧と分圧の圧力勾配を解消する方向に向かい、つまり気体成分が混練物から出る方向に向かうため、分解溶融物中に含まれる気体成分は脱揮口18から効率よく排気される。排気成分は、直列に配置された二つの冷却器5により分別捕捉される。なお、脱揮口18の位置における分解溶融物の温度は200℃である。
【0040】
<ペレット化工程>
混練域14では、脱揮された再生樹脂がさらに混練される。そしてノズルを経てストランド状に押出され、冷却槽2で冷却された後、切断機3で切断されてペレット化され、乾燥機4で乾燥されて再生樹脂ペレットとされた。
<試験>
得られた再生樹脂ペレットを用いて所定形状の試験片を成形し、従来のバンパ塗装工程に準じて塗装を行った。塗色は、黄変性を評価しやすくするため白色とした。そして塗膜の耐熱性、付着性及び屋外耐候性を試験し、結果を5段階評価で表1に示す。なお、表1には新品のバンパの試験結果も併記してある。
【0041】
耐熱性は、塗膜が形成された試験片を80℃で240時間加熱し、加熱前後の測色値よりΔb値を算出して、2≦Δbの範囲をランク1、1.5≦Δb<2の範囲をランク2、1≦Δb<1.5の範囲をランク3、0.7≦Δb<1の範囲をランク4、0.7>Δbの範囲をランク5とした。もちろんランク数が大きいほど変色度が小さく耐熱性に優れていることを示す。
【0042】
また付着性はJIS−K5400に準じた碁盤目付着試験で評価し、屋外耐候性は屋外にて730日間暴露し暴露前後の色差を測定して評価した。
(実施例1)
第2注入口17から添加する水の量を、細片100重量部に対して2.5重量部としたこと以外は参考例1と同様にして再生処理を行った。そして得られた再生樹脂ペレットについて参考例1と同様に試験を行い、結果を表1に示す。
【0043】
(実施例2)
第2注入口17から添加する水の量を、細片100重量部に対して8.5重量部としたこと以外は参考例1と同様にして再生処理を行った。そして得られた再生樹脂ペレットについて参考例1と同様に試験を行い、結果を表1に示す。
(実施例3)
水に代えて、第2注入口17から濃度0.1Nの塩酸水溶液を細片100重量部に対して2.5重量部注入したこと以外は参考例1と同様にして再生処理を行った。そして得られた再生樹脂ペレットについて参考例1と同様に試験を行い、結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
第2注入口17から水を添加しなかったこと以外は参考例1と同様にして再生処理を行った。そして得られた再生樹脂ペレットについて参考例1と同様に試験を行い、結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
表1より、比較例1では耐熱性が低く実用には不適であるが、参考例1では耐熱性の評価は3で実用レベルにあり、実施例のように水の添加量が多くなるにつれて耐熱性が向上していることがわかる。すなわち水の添加により耐黄変性が向上し、黄変原因物質が非黄変性物質に変化したか、分解溶融物から黄変原因物質が効率よく除去されたかのいずれかにより、再生樹脂ペレット中の黄変原因物質量が低減されていることが明らかである。
【0046】
また実施例1,2と実施例3との比較により、塩酸を添加することによって再生樹脂ペレット中の黄変原因物質量がさらに低減されていることも明らかである。
(実施例4)
図2に本実施例で用いた装置の概略構成図を示す。この装置は、切断機3と乾燥機4の間に振動ふるい7を設けていること、及び乾燥機4の構成が異なること以外は参考例1で用いた装置と同様の構成である。
【0047】
振動ふるい7は、図3及び図4に示すように、基台70と、基台70にバネ71を介して保持された振動容器72とよりなり、振動容器72の蓋73の内面に紫外線ランプ8が列設されている。この振動ふるい7では、再生樹脂ペレットは投入口74から振動容器72内に投入され、基台70に設けられたモータ75の駆動により振動する振動容器72内で振動しながら出口76へ運ばれ、出口76から乾燥機4へ圧送される。そして再生樹脂ペレットは、振動容器72内を移動する間中、紫外線ランプ8から紫外線を照射されるように構成されている。
【0048】
また乾燥機4は、図5に示すように外筒40及び内筒41と、熱風供給パイプ42及び攪拌機43から構成され、外筒40と内筒41の間に紫外線ランプ8が高さ方向に列設されている。内筒41は紫外線透過性の高い樹脂又はガラスから形成されている。また熱風供給パイプ42からは内筒41内に120〜150℃の熱風が供給される。この乾燥機4では、再生樹脂ペレットは攪拌機43により攪拌されながら熱風により乾燥され、その間中紫外線ランプ8から紫外線が照射される。
【0049】
上記装置を用い、第2注入口17からの水の供給を停止したこと以外は参考例1と同様にして混練を行い、冷却槽2及び切断機3を通してペレット化した後、上記振動ふるい7及び乾燥機4を用いて乾燥するとともに紫外線を照射した。紫外線照射時間は延べ5時間であり、照射された紫外線強度は400μW/cm2 である。
【0050】
得られた再生樹脂ペレットを用い、参考例1と同様に試験した結果を表2に示す。
(実施例5)
第2注入口17から、細片100重量部に対して2.5重量部の量の水を供給したこと以外は実施例4と同様にして再生処理を行った。そして得られた再生樹脂ペレットを用い、参考例1と同様に試験した結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
実施例4と比較例1との比較より、紫外線照射により耐熱性が格段に向上していることがわかり、紫外線照射により再生樹脂中の黄変原因物質量が低減されることが明らかである。また実施例4より実施例5の方が耐熱性に優れていることから、水の添加と紫外線の照射とを併用することが望ましいこともわかる。
【0052】
【発明の効果】
すなわち本発明の再生処理方法によれば、再生された再生樹脂には黄変原因物質の残留がきわめて少なくなる。したがって再生樹脂を用いて形成された再生品の変色が防止され、再生樹脂の用途が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例で用いた装置の模式図である。
【図2】本発明の第4〜5の実施例で用いた装置の模式図である。
【図3】本発明の第4〜5の実施例で用いた装置の振動ふるいの正面図である。
【図4】本発明の第4〜5の実施例で用いた振動ふるいの蓋の背面図である。
【図5】本発明の第4〜5の実施例で用いた装置の乾燥機の断面図である。
【符号の説明】
1:押出し機 2:冷却槽 3:切断機
4:乾燥機 7:振動ふるい 13:化学分解域
16:第1注入口 17:第2注入口 18:脱揮口
Claims (2)
- 塗膜付き樹脂材を粉砕して樹脂基材と塗膜とからなる細片とする粉砕工程と、該細片を溶融状態でアルカリ性の塗膜分解促進剤と接触させ該塗膜を分解して分解溶融物とする分解工程と、該分解溶融物から該塗膜の分解生成物と該塗膜分解促進剤とを除去する脱揮工程と、よりなる塗膜付き樹脂材の再生処理方法であって、
前記分解工程では、前記細片を溶融状態で前記塗膜分解促進剤と接触させた後に、前記塗膜分解促進剤及び黄変原因物質の脱揮を促進する脱揮助剤を前記塗膜付き樹脂材の100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で前記分解溶融物に添加することを特徴とする塗膜付き樹脂材の再生処理方法。 - 塗膜付き樹脂材を粉砕して樹脂基材と塗膜とからなる細片とする粉砕工程と、該細片を溶融状態でアルカリ性の塗膜分解促進剤と接触させ該塗膜を分解して分解溶融物とする分解工程と、該分解溶融物から該塗膜の分解生成物と該塗膜分解促進剤とを除去する脱揮工程と、よりなる塗膜付き樹脂材の再生処理方法であって
前記分解溶融物及び前記脱揮工程後の再生樹脂の少なくとも一方に紫外線を照射することを特徴とする塗膜付き樹脂材の再生処理方法。
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