JP3843965B2 - 内燃機関のバルブ特性制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のバルブ特性制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンなど車載内燃機関においては、出力向上や排気エミッションの改善等を目的として、吸気バルブや排気バルブといった機関バルブのバルブ特性、例えばバルブタイミング(開閉時期)やバルブリフト量を変更する可変動弁機構を備えたものが知られている。こうした内燃機関では、機関運転状態に基づき可変動弁機構が駆動制御され、機関バルブのバルブ特性が機関運転状態に応じた最適な特性となるよう調整される。これにより内燃機関の出力向上や排気エミッションの改善が図られる。
【0003】
例えば、内燃機関に対し高出力が要求されるときには、同機関の吸気充填効率が向上するよう機関バルブのバルブ特性が調整される。このように吸気充填効率の向上を意図したバルブ特性の調整を行うことで、燃焼室に可能な限り多くの混合気を充填した状態で燃焼を行うことができるようになり、内燃機関の出力向上が図られるようになる。
【0004】
また、内燃機関に対し、あまり高出力が要求されないときには、内部EGR量が燃焼に影響を及ぼさない範囲で最大となるように機関バルブのバルブ特性が調整される。即ち、内部EGR量はバルブオーバラップ量に応じて変化するため、上記範囲で最大の内部EGR量が得られるバルブオーバラップが実現するよう機関バルブのバルブ特性が調整される。このように内部EGR量を可能な限り多くすることで、燃焼温度が低下して窒素酸化物(NOx )の生成が抑制され、内燃機関のNOx に関する排気エミッションの改善が図られるようになる。
【0005】
ところで、機関バルブのバルブ特性を可変とする内燃機関としては、吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性との両方を個別に変更し、出力向上を図るための吸気充填効率の向上や排気エミッションの改善等を図るための内部EGR量の調整を一層的確に行えるようにしたものもある。例えば、特許文献1では、吸気バルブのバルブタイミングを変更する可変動弁機構、及び排気バルブのバルブタイミングを変更する可変動弁機構を設け、これら可変動弁機構を個別に制御して吸気バルブと排気バルブとの両方のバルブタイミングを変更可能としている。
【0006】
こうした内燃機関にあっては、吸気バルブの目標バルブタイミングと排気バルブの目標バルブタイミングとが機関運転状態に応じて個別に算出される。そして、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが、それぞれ個別に算出された目標バルブタイミングに達するよう、二つの可変動弁機構が駆動制御されることとなる。このように吸気バルブと排気バルブとの両方のバルブタイミングを調整することで、内燃機関の出力向上を図るための吸気充填効率の向上や排気エミッション改善を図るための内部EGR量の調整を一層的確なものとすることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−218035公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
吸気バルブと排気バルブとの両方のバルブタイミングを変更する内燃機関にあって、バルブオーバラップ量を機関運転状態に応じた最適な値に制御するときには、吸気バルブの目標バルブタイミング及び排気バルブの目標バルブタイミングが、バルブオーバラップ量を上記最適値とすることの可能な値に設定される。そして、吸気バルブのバルブタイミング、及び排気バルブのバルブタイミングが、それぞれの目標バルブタイミングに向けて変更される。こうした吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング変更により、最終的にはバルブオーバラップ量が上記最適値(以下、目標バルブオーバラップ量という)に収束し、バルブオーバラップ量の最適化が図られる。
【0009】
ただし、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングをそれぞれ目標バルブタイミングに変更する際には同変更に応答遅れが生じることから、それらバルブタイミングを目標バルブタイミングに変更する過程において、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量からずれることになる。例えば、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングがそれぞれ目標バルブタイミングに収束している状態から、機関運転状態の変化等に起因して目標バルブオーバラップ量が変化し、それを得るための両バルブの目標バルブタイミングが変化するという状況が考えられる。この場合、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングがそれぞれ目標バルブタイミングに向けて変更開始されてから収束するまでの間は、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量からずれた状態になる。
【0010】
また、機関運転状態に応じた吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング変更として、両バルブのバルブタイミングを共に進角側、或いは遅角側に変更しつつ、バルブオーバラップ量を目標バルブオーバラップ量に調整するという状況が生じることもある。こうした状況のもとでは、吸気バルブのバルブタイミングを変更する際の応答速度と、排気バルブのバルブタイミングを変更する際の応答速度との違いにより、バルブオーバラップ量の過多や過少が生じることとなる。なお、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング変更に応答速度の違いが生じるのは、吸気バルブ側と排気バルブ側とで同じ構成の可変動弁機構を用いたとしても、同機構の駆動に用いられるオイルの供給路の長さに差違が生じることは避けられず、この差異が上記応答速度の違いとなって現れることが原因である。
【0011】
吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを目標バルブタイミングに向けて共に進角側、或いは遅角側に変更するとき、それら両バルブのバルブタイミング変更に応答速度の違いが生じると、バルブタイミングの変更過程でバルブオーバラップ量が一旦目標バルブオーバラップ量から離れる側に変化する。ここで、以下の[I]〜[IV]に示される各状況毎に、上記バルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量から離れる側への変化について説明する。
【0012】
[I]吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを目標バルブタイミングに向けて共に進角側に変更し、且つバルブオーバラップ量を目標バルブオーバラップ量に向けて減少させる場合。
【0013】
この場合、吸気バルブのバルブタイミングがバルブオーバラップ量増加側(進角側)に移行させられるとともに、排気バルブのバルブタイミングがバルブオーバラップ量減少側(進角側)に移行させられ、これによりバルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量に近づけられる。ただし、吸気バルブのバルブタイミング進角側(バルブオーバラップ量増加側)への応答速度が、排気バルブのバルブタイミング進角側(バルブオーバラップ量減少側)への応答速度よりも大であると、バルブオーバラップ量が一旦大きくなって目標バルブオーバラップ量から離れる側に変化してしまう。その結果、上記バルブタイミングの変更過程において、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量から大きくずれた状態になる。
【0014】
[II]吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを目標バルブタイミングに向けて共に進角側に変更し、且つバルブオーバラップ量を目標バルブオーバラップ量に向けて増加させる場合。
【0015】
この場合、[I]と同様に吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが変更される。ただし、吸気バルブのバルブタイミング進角側(バルブオーバラップ量増加側)への応答速度が、排気バルブのバルブタイミング進角側(バルブオーバラップ量減少側)への応答速度よりも小であると、バルブオーバラップ量が一旦小さくなって目標バルブオーバラップ量から離れる側に変化してしまう。その結果、上記バルブタイミングの変更過程において、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量から大きくずれた状態になる。
【0016】
[III] 吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを目標バルブタイミングに向けて共に遅角側に変更し、且つバルブオーバラップ量を目標バルブオーバラップ量に向けて減少させる場合。
【0017】
この場合、吸気バルブのバルブタイミングがバルブオーバラップ量減少側(遅角側)に移行させられるとともに、排気バルブのバルブタイミングがバルブオーバラップ量増加側(遅角側)に移行させられ、これによりバルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量に近づけられる。ただし、吸気バルブのバルブタイミング遅角側(バルブオーバラップ量減少側)への応答速度が、排気バルブのバルブタイミング遅角側(オーバラップ量増加側)への応答速度よりも小であると、バルブオーバラップ量が一旦大きくなって目標バルブオーバラップ量から離れる側に変化してしまう。その結果、上記バルブタイミングの変更過程において、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量から大きくずれた状態になる。
【0018】
[IV]吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを目標バルブタイミングに向けて共に遅角側に変更し、且つバルブオーバラップ量を目標バルブオーバラップ量に向けて増加させる場合。
【0019】
この場合、[III] と同様に吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが変更される。ただし、吸気バルブのバルブタイミング遅角側(バルブオーバラップ量減少側)への応答速度が、排気バルブのバルブタイミング遅角側(オーバラップ量増加側)への応答速度よりも大であると、バルブオーバラップ量が一旦小さくなって目標バルブオーバラップ量から離れる側に変化してしまう。その結果、上記バルブタイミングの変更過程において、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量から大きくずれた状態になる。
【0020】
以上のように、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを目標バルブタイミングに向けて変更する過程で、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量からずれると、機関運転状態に関して次のような不具合が生じる。
【0021】
バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量よりも増加側にずれている場合、内部EGR量が過多になって燃焼温度が不適切に低下したり、吸気通路から排気通路への吸気の吹き抜けが多くなって燃焼が不安定になったりする。また、内部EGR量が過多になると、燃焼時の燃焼室内に存在するガスのうち燃焼に寄与しないガスが過度に多くなって酸素が少なくなるため、酸素不足の状態での燃焼が行われて内燃機関におけるHC排出量が増大する。
【0022】
一方、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量よりも減少側にずれている場合、内部EGR量が過少になる。このため、内部EGRによる燃焼温度の低下がNOx の生成を抑制するのに不十分なものとなり、内燃機関におけるNOx 排出量が増大してしまう。また、目標バルブオーバラップ量に対するバルブオーバラップ量の減少へのずれは、内燃機関の燃費悪化にも繋がる。
【0023】
なお、上記バルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量からのずれに伴う機関運転状態に関しての不具合は、吸気バルブ及び排気バルブのバルブリフト量といったバルブタイミング以外のバルブ特性を個別に変更してバルブオーバラップ量を調整する内燃機関においても、概ね共通するものとなっている。
【0024】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸気バルブと排気バルブとの両方のバルブ特性を変更可能な内燃機関において、バルブ特性変更時の機関運転状態を好適に保持することのできる内燃機関のバルブ特性制御装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
以下、まず請求項1〜4に係る上記目的を達成するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0026】
請求項1記載の発明では、吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記吸気バルブと前記排気バルブとの一方のバルブについて機関運転状態に応じた目標特性を算出するとともに、機関運転状態に応じた目標バルブオーバラップ量を算出し、この目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき他方のバルブについての目標特性を算出する第1の算出手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出する第2の算出手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについての目標特性の算出として、前記第1の算出手段による算出と前記第2の算出手段による算出とのうちのいずれかを機関運転状態に応じて選択する選択手段とを備え、前記選択手段は、機関負荷が所定値以上であるとき、前記目標特性の算出として前記第2の算出手段による算出を選択するものとした。
【0027】
請求項2記載の発明では、吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記吸気バルブと前記排気バルブとの一方のバルブについて機関運転状態に応じた目標特性を算出するとともに、機関運転状態に応じた目標バルブオーバラップ量を算出し、この目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき他方のバルブについての目標特性を算出する第1の算出手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出する第2の算出手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについての目標特性の算出として、前記第1の算出手段による算出と前記第2の算出手段による算出とのうちのいずれかを機関運転状態に応じて選択する選択手段とを備え、前記選択手段は、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブ特性がそれぞれ目標特性に収束するとともに、バルブオーバラップ量が前記目標バルブオーバラップ量に収束しているとき、前記目標特性の算出として前記第1の算出手段による算出を選択するものとした。
【0028】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記選択手段は、バルブオーバラップ量が現状値よりも小さくなる機関運転状態と大きくなる機関運転状態とのうち、一方の機関運転状態では前記目標特性の算出として前記第1の算出手段による算出を選択し、他方の機関運転状態では前記目標特性の算出として前記第2の算出手段による算出を選択するものであり、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブ特性がそれぞれ目標特性に収束するとともに、バルブオーバラップ量が前記目標バルブオーバラップ量に収束している条件のもとでは、前記一方の機関運転状態であるか前記他方の機関運転状態であるかに関係なく前記目標特性の算出として前記第1の算出手段による算出を選択することを要旨とした。
【0029】
請求項4載の発明では、吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記吸気バルブと前記排気バルブとの一方のバルブについて機関運転状態に応じた目標特性を算出するとともに、機関運転状態に応じた目標バルブオーバラップ量を算出し、この目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき他方のバルブについての目標特性を算出する第1の算出手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出する第2の算出手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについての目標特性の算出として、前記第1の算出手段による算出と前記第2の算出手段による算出とのうちのいずれかを機関運転状態に応じて選択する選択手段とを備え、前記選択手段は、前記吸気バルブのバルブ特性変更と前記排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側又は減少側で一致するとき、前記目標特性の算出として前記第2の算出手段による算出を選択するものとした。
【0030】
上記第1の算出手段による目標特性の算出が選択されている場合には、吸気バルブと排気バルブとの一方のバルブのバルブ特性が目標特性に向けて変更されるとき、その一方のバルブの実バルブ特性に対して目標バルブオーバラップ量が確保されるように他方のバルブの目標特性を算出することができる。従って、このように算出された目標特性に向けて他方のバルブのバルブ特性を制御することで、目標バルブオーバラップ量の変化に伴い吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性を変更する際、同変更を目標バルブオーバラップ量を確保しつつ行うことができるようになる。また、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性を変更する際の応答速度に違いが生じたとしても、目標バルブオーバラップ量の確保を優先して上記他方のバルブのバルブ特性が制御されることから、上記応答速度の違いに起因したバルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量から離れる側への変化が小さく抑えられる。
【0031】
また、第2の算出手段による目標特性の算出が選択されている場合には、吸気バルブと排気バルブとのそれぞれのバルブ特性が、機関運転状態に応じた最適な値として算出される目標特性(以下、絶対目標特性という)に向けて制御される。従って、目標バルブオーバラップの確保を優先するよりも、吸気バルブ及び排気バルブの各バルブ特性を機関運転状態に応じた最適な値(絶対目標特性)に向けて速やかに変更することを優先してバルブ特性の制御が行われる。
【0032】
バルブ特性による機関運転状態への影響として、バルブ特性に応じて変化するバルブオーバラップ量が影響を与える場合と、バルブ特性自体、例えばバルブ開閉時期が影響を与える場合とがある。そして、バルブオーバラップ量が機関運転状態に影響を与えるのか、或いはバルブ特性自体が機関運転状態に影響を与えるのかは、そのときの機関運転状態に応じて変わってくる。このことを考慮し、機関運転状態に応じて、目標特性の算出が第1の算出手段による算出と第2の算出手段による算出との間で選択される。即ち、目標バルブオーバラップ量の確保を優先した第1の算出手段による目標特性の算出を用いるか、或いはバルブ特性の目標特性への速やかな変更を優先した第2の算出手段による目標特性の算出を用いるかは、機関運転状態に応じて適切に選択されることとなる。
【0033】
具体的には、バルブオーバラップ量の機関運転状態への影響が大きくなるようなとき、目標特性の算出として第1の算出手段による算出を選択することが可能になる。この場合、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性が変更される際、その変更が目標バルブオーバラップ量を確保しつつ行われ、バルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量から離れる側への変化が抑制される。従って、請求項1〜4に記載の発明によれば、バルブ特性の変更時に、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量からずれて機関運転状態が悪化することは抑制され、機関運転状態を好適に保持することができるようになる。
【0034】
また、バルブ特性自体の機関運転状態への影響が大きくなるようなときには、目標特性の算出として第2の算出手段による算出を選択することが可能になる。バルブ特性自体の機関運転状態への影響が大きくなる具体的な状況としては、例えば機関負荷が高いという状況があげられる。機関高負荷時には、内燃機関の出力要求が大であって、バルブオーバラップ量(内部EGR量)の調整による排気エミッションの改善よりも、バルブ特性自体の調整による機関出力の向上が重視されることとなる。また、機関高負荷時には、吸入空気量が多くなって燃焼時に燃焼室内に存在する酸素の量が多くなるため、バルブオーバラップ量(内部EGR量)が多少変化したとしても、それによる燃焼状態の変化は小さく機関運転が影響を受けることもない。こうした機関高負荷時に、目標特性の算出として仮に第1の算出手段による算出が行われると、バルブ特性の目標特性(絶対目標特性)への速やかな変更よりも目標バルブオーバラップ量の確保が優先されることから、要求される機関出力が得られずに内燃機関の性能が低下する。
【0035】
以上のことを考慮し、請求項1記載の発明では、機関負荷が所定値以上であるときには、目標特性の算出として、バルブ特性の速やかな目標特性への変更を優先した第2の算出手段による算出が選択される。この場合、機関高負荷時に、目標バルブオーバラップの確保よりもバルブ特性の速やかな目標特性への変更が優先されるため、上述した機関高負荷時における内燃機関の性能低下を抑制することができる。
【0036】
ところで、目標バルブオーバラップ量の変化に合わせてバルブオーバラップ量を変更する際、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくなるか、或いは小さくなるかによって、バルブ特性制御として目標バルブオーバラップ量の確保を優先した制御とバルブ特性自体を優先した制御とを切り換えることが考えられる。この場合、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくなるときと小さくなるときとで、より好ましいバルブ特性制御を選択することができる。
【0037】
例えば、バルブオーバラップ量が現状値よりも小さくされる場合には第1の算出手段による目標特性の算出を行い、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくされる場合には第2の算出手段による目標特性の算出を行うことが考えられている。しかし、このように目標特性の算出の仕方を切り換える場合、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性が共に目標特性に収束し、且つバルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量に収束しているという状況のもとでは、バルブオーバラップ量が目標よりも微妙に小さい値をとるようになるという不具合が生じる。
【0038】
一方、上記とは逆に、バルブオーバラップ量が現状値よりも小さくされる場合には第2の算出手段による目標特性の算出を行い、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくされる場合には第1の算出手段による目標特性の算出を行うことも考えられる。しかし、このように目標特性の算出の仕方を切り換える場合、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性が共に目標特性に収束し、且つバルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量に収束しているという状況のもとでは、バルブオーバラップ量が目標よりも微妙に大きい値をとるようになるという不具合が生じる。
【0039】
ここで、仮に第2の算出手段での目標特性の算出のみに基づくバルブ特性制御により、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性が共に目標特性に収束し、且つバルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量に収束しているという状況について考えてみる。このときのバルブ特性については、目標特性に収束しているとはいっても、同目標特性と完全に一致しているわけではなく、微妙に変動して同目標特性に対して接近・離間を繰り返している状態となる。また、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性が上記のように変動すると、それに伴いバルブオーバラップ量も変動して目標バルブオーバラップ量に対して接近・離間を繰り返すことになる。
【0040】
このような状況のもとで、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくされる場合と小さくされる場合との一方の場合だけ第1の算出手段による目標特性の算出を行い、他方の場合には第2の算出手段による目標特性の算出を行うと、上述したような不具合が生じるのである。
【0041】
即ち、バルブオーバラップ量が現状値よりも小さくされる場合だけ、第1の算出手段による目標特性の算出が適用されると、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性変更が目標特性よりもバルブオーバラップ量減少側については生じやすくなり、目標特性よりもバルブオーバラップ量増加側については生じにくくなる。ここで、目標特性よりもバルブオーバラップ量減少側へのバルブ特性変更の際には、バルブ特性自体よりも目標バルブオーバラップ量の確保が優先されることから、当該バルブ特性の変更については許容される傾向にある。これに対し、目標特性よりもバルブオーバラップ量増加側へのバルブ特性変更の際には、第2の算出手段による目標特性の算出が適用されてバルブ特性の速やかな目標特性(絶対目標特性)への変更が優先されることから、当該バルブ特性の変更は禁止される傾向にある。これらのことから、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性については、目標特性に収束した状態にあっても、双方がバルブオーバラップ量減少側に寄せられ、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量よりも微妙に小さい値をとるようになる。従って、その分だけ内部EGR量が不足することや燃費改善に悪影響を及ぼすことは否めず、NOx に関する排気エミッションの改善や燃費改善が妨げられる。
【0042】
一方、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくされる場合だけ、第1の算出手段による目標特性の算出が適用されると、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性変更が目標特性よりもバルブオーバラップ量増加側については生じやすくなり、目標特性よりもバルブオーバラップ量減少側については生じにくくなる。ここで、目標特性からバルブオーバラップ量増加側へのバルブ特性変更の際には、バルブ特性自体よりも目標バルブオーバラップ量の確保が優先されることから、当該バルブ特性の変更については許容される傾向にある。これに対し、目標特性よりもバルブオーバラップ量減少側へのバルブ特性変更の際には、第2の算出手段による目標特性の算出が適用されてバルブ特性の速やかな目標特性(絶対目標特性)への変更が優先されることから、当該バルブ特性の変更は禁止される傾向にある。これらのことから、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性については、目標特性に収束した状態にあっても、双方がバルブオーバラップ量増加側に寄せられ、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量よりも微妙に大きい値をとるようになる。従って、その分だけ内部EGR量が過剰になることや燃焼が不安定になることは否めず、内燃機関におけるHC排出量の増加抑制や燃焼安定化の妨げになる。
【0043】
以上のことを考慮し、請求項2、3に記載の発明では、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性がそれぞれ目標特性に収束するとともに、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量に収束しているときには、目標特性の算出として第1の算出手段による算出が選択される。この選択について、より具体的に言えば、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくなるか、或いは小さくなるかに関係なく、目標特性の算出として第1の算出手段による算出が選択されるのである。
【0044】
この請求項2、3記載の発明によれば、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくなる場合と小さくなる場合とのいずれの場合も、目標バルブオーバラップ量の確保を優先した第1の算出手段による目標特性の算出が行われることから、上述したようにバルブオーバラップ量が目標に対し微妙に食い違うことは抑制される。このため、バルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量に対する微妙なずれに起因して、NOx に関する排気エミッションの改善や燃費改善が妨げられたり、HC排出量の増加抑制や燃焼の安定化が妨げられたりするのを抑制することができる。
【0045】
ところで、吸気バルブ及び排気バルブの目標特性へのバルブ特性変更については、それぞれがバルブオーバラップ量の増加側と減少側との両方に行うことが可能である。このため、吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とが共にバルブオーバラップ量増加側に変更されたり、バルブオーバラップ量減少側に変更されたりする場合がある。これらの場合において、仮に目標特性の算出として第1の算出手段による算出が選択されていると、バルブ特性の速やかな目標特性への変更よりも目標バルブオーバラップ量の確保が優先されることに起因して、次のような不具合が生じる。
【0046】
まず、吸気バルブ及び排気バルブの目標特性へのバルブ特性変更が共にバルブオーバラップ量増加側に行われる場合について考慮する。なお、こうした状況は、目標バルブオーバラップ量が増加するとき、即ち吸気バルブ及び排気バルブの目標特性が共にバルブオーバラップ量増加側に変化するときに生じる。この場合、第1の算出手段による目標特性の算出に基づき、最初に吸気バルブ及び排気バルブのうち、一方のバルブのバルブ特性が目標特性に向けてバルブオーバラップ量増加側に変化するようになる。ただし、この一方のバルブの目標特性へのバルブ特性変更は徐々にしか行われない。従って、一方のバルブの実バルブ特性に応じて目標バルブオーバラップ量を確保するように算出される他方のバルブについての目標特性は、バルブオーバラップ量増加側へと急激に変化することになる。そして、この目標特性に向けて他方のバルブのバルブ特性が変化しようとするのに対し、当該目標特性自体は一方のバルブの実バルブ特性がバルブオーバラップ量増加側に変化してゆくに従いバルブオーバラップ量減少側に変化してゆく。その結果、他方のバルブの実バルブ特性が目標特性を越えてバルブオーバラップ量増加側に変化してしまい、目標バルブオーバラップ量に対しバルブオーバラップ量がオーバーシュートする。このため、バルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量に対する収束が遅れ、内部EGR量の過多に伴い内燃機関のHC排出量の増加や、燃焼の不安定に繋がる。
【0047】
続いて、吸気バルブ及び排気バルブの目標特性へのバルブ特性変更が共にバルブオーバラップ量減少側に行われる場合について考慮する。なお、こうした状況は、目標バルブオーバラップ量が減少するとき、即ち吸気バルブ及び排気バルブの目標特性が共にバルブオーバラップ量減少側に変化するときに生じる。この場合、第1の算出手段による目標特性の算出に基づき、最初に吸気バルブ及び排気バルブのうち、一方のバルブのバルブ特性が目標特性に向けてバルブオーバラップ量減少側に変化するようになる。ただし、この一方のバルブの目標特性へのバルブ特性変更は徐々にしか行われない。従って、一方のバルブの実バルブ特性に応じて目標バルブオーバラップ量を確保するように算出される他方のバルブについての目標特性は、バルブオーバラップ量減少側へと急激に変化することになる。そして、この目標特性に向けて他方のバルブのバルブ特性が変化しようとするのに対し、当該目標特性自体は一方のバルブの実バルブ特性がバルブオーバラップ量減少側に変化してゆくに従いバルブオーバラップ量増加側に変化してゆく。その結果、他方のバルブの実バルブ特性が目標特性を越えてバルブオーバラップ量減少側に変化してしまい、目標バルブオーバラップ量に対しバルブオーバラップ量がアンダーシュートする。このため、バルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量に対する収束が遅れ、内部EGR量の過少に伴い内燃機関のNOx に関する排気エミッション改善の妨げや、燃費悪化に繋がる。
【0048】
以上のことを考慮し、請求項4記載の発明では、吸気バルブのバルブ特性変更と排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側又は減少側で一致するとき、目標特性の算出として第2の算出手段による算出が選択される。このため、吸気バルブ及び排気バルブの目標バルブ特性に向けたバルブ特性のバルブオーバラップ量増加側、或いは減少側への変更の際、目標特性(絶対目標特性)への速やかなバルブ特性への変更が優先されることとなる。その結果、バルブオーバラップ量が速やかに目標バルブオーバラップ量に収束し、上述したオーバーシュートやアンダーシュートが抑制されることから、それらに伴う不具合を抑制することができる。
【0049】
次に、請求項5、6に係る上記目的を達成するための手段及び作用効果について記載する。
請求項5記載の発明では、吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの一方のバルブについての目標特性を機関運転状態に応じて算出し、前記一方のバルブのバルブ特性を当該算出された目標特性に制御する主制御手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの他方のバルブについての目標特性を機関運転状態に応じて算出される目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき算出し、前記他方のバルブのバルブ特性を当該算出された目標特性に制御する従制御手段とを備え、前記吸気バルブのバルブ特性変更と前記排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側と減少側とに食い違うとき、それら両バルブのうちバルブオーバラップ量減少側へのバルブ特性変更がなされるバルブについては前記主制御手段によるバルブ特性制御を適用し、前記両バルブのうち他方のバルブについては前記従制御手段によるバルブ特性制御を適用するものとした。
【0050】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出し、それら両バルブのバルブ特性をそれぞれ当該算出された目標特性に制御する独立制御手段を更に備え、前記主制御手段及び前記従制御手段によるバルブ特性制御と、前記独立制御手段によるバルブ特性制御とが、機関運転状態に応じて選択して実行されることを要旨とした。
【0051】
吸気バルブと排気バルブとのうち、上記主制御手段によるバルブ特性制御が適用される一方のバルブについては、バルブ特性の目標特性への変更が速やかに行われるようになる。このとき、吸気バルブと排気バルブとのうち、上記従制御手段によるバルブ特性制御が適用される他方のバルブについては、主制御手段によるバルブ特性制御によって変化する一方のバルブの実バルブ特性に応じて、目標バルブオーバラップ量が確保されるようにバルブ特性制御を行うことが可能になる。従って、主制御手段及び従制御手段によるバルブ特性制御を吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性制御に適用することで、目標バルブオーバラップ量の変化に伴い吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性を変更する際、同変更を目標バルブオーバラップ量を確保しつつ行うことができる。また、吸気バルブ及び排気バルブのバルブ特性を変更する際の応答速度に違いが生じたとしても、上記他方のバルブについての従制御手段によるバルブ特性制御により、上記応答速度の違いに起因したバルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量から離れる側への変化を小さく抑えることができる。従って、請求項5、6に記載の発明によれば、バルブ特性の変更時に、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量からずれて機関運転状態が悪化することは抑制され、機関運転状態を好適に保持することができるようになる。
【0052】
ところで、バルブ特性による機関運転状態への影響として、バルブ特性に応じて変化するバルブオーバラップ量が影響を与える場合と、バルブ特性自体、例えばバルブ開閉時期が影響を与える場合とがある。そして、バルブオーバラップ量が機関運転状態に影響を与えるのか、或いはバルブ特性自体が機関運転状態に影響を与えるのかは、そのときの機関運転状態に応じて変わってくる。
【0053】
このことを考慮し、請求項6記載の発明では、目標バルブオーバラップ量の確保を優先した上記主制御手段及び従制御手段によるバルブ特性制御の他に、バルブ特性の機関運転状態に応じた最適な目標特性(以下、絶対目標特性という)への変更を優先した独立制御手段によるバルブ特性制御も実行可能とされる。そして、機関運転状態に応じて、上記主制御手段及び従制御手段によるバルブ特性制御と上記独立制御手段によるバルブ特性制御とが選択的に実行される。従って、請求項6記載の発明によれば、これら二つのバルブ特性制御のうち、機関運転状態に適したバルブ特性制御を選択して実行することができる。
【0054】
なお、上述した主制御手段及び従制御手段によるバルブ特性制御を行うに当たり、吸気バルブのバルブ特性変更と排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側と減少側との間で食い違うときには、以下のような現象が生じることが確認されている。
【0055】
従制御手段が適用される上記他方のバルブのバルブ特性変更は、主制御手段が適用される上記一方のバルブの実バルブ特性の変化に応じてなされるものであるため、上記他方のバルブのバルブ特性変更開始が上記一方のバルブのバルブ特性変更開始に対し遅れるようになる。
【0056】
従って、上記他方のバルブがバルブオーバラップ量減少側にバルブ特性の変更が行われるものであると、バルブ特性変更開始時に最初に上記一方のバルブだけがバルブオーバラップ量増加側に変更開始することから、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量よりも大きくなる。また、上記他方のバルブがバルブオーバラップ量増加側にバルブ特性の変更が行われるものであると、バルブ特性変更開始時に最初に上記一方のバルブだけがバルブオーバラップ量減少側に変更開始することから、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量よりも小さくなる。
【0057】
ここで、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなる場合と小さくなる場合との内燃機関への影響について考えてみる。
バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなる場合、上述したように内部EGR量の過多に伴い内燃機関のHC排出量が増加するだけでなく燃焼が不安定になり、最悪の場合には失火を招いてストールを誘発してしまうおそれがある。これに対し、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量を超えて小さくなる場合、上述したように内部EGR量の過少に伴い内燃機関のNOx 排出量の増加や、燃費の悪化には繋がるものの、内燃機関のストールを誘発するほどの悪影響は生じにくい。このため、機関運転の信頼性を高めるという観点では、バルブオーバラップ量については、目標バルブオーバラップ量を越えて小さくなろうとも、目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなることは極力抑制するのが好ましい。
【0058】
以上のことを考慮し、請求項5、6記載の発明では、上記状況でバルブオーバラップ量減少側へのバルブ特性変更がなされるバルブに対し主制御手段によるバルブ特性制御が適用されるとともに、バルブオーバラップ量増加側へのバルブ特性変更がなされるバルブに対し従制御手段によるバルブ特性制御が適用される。これにより、吸気バルブのバルブ特性変更と排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側と減少側とに食い違うとき、バルブ特性変更開始時にバルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなること、並びに、それに伴う機関運転への悪影響を抑制することができる。
【0059】
次に、請求項7に係る上記目的を達成するための手段及び作用効果について記載する。
請求項7記載の発明では、吸気バルブのバルブタイミングと排気バルブのバルブタイミングとを各々目標バルブタイミングに制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの一方のバルブについての目標バルブタイミングを機関運転状態に応じて算出し、前記一方のバルブのバルブタイミングを当該算出された目標バルブタイミングに制御する主制御手段と、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの他方のバルブについての目標バルブタイミングを機関運転状態に応じて算出される目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブタイミングとに基づき算出し、前記他方のバルブのバルブタイミングを当該算出された目標バルブタイミングに制御する従制御手段とを備え、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブタイミングが共に進角側に変更されるとき、前記排気バルブについては前記主制御手段によるバルブタイミング制御を適用するとともに、前記吸気バルブについては前記従制御手段によるバルブタイミング制御を適用し、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブタイミングが共に遅角側に変更されるとき、前記吸気バルブについては前記主制御手段によるバルブタイミング制御を適用するとともに、前記排気バルブについては前記従制御手段によるバルブタイミング制御を適用するものとした。
【0060】
吸気バルブと排気バルブとのうち、上記主制御手段によるバルブタイミング制御が適用される一方のバルブについては、バルブタイミングの目標タイミングへの変更が速やかに行われるようになる。このとき、吸気バルブと排気バルブとのうち、上記従制御手段によるバルブタイミング制御が適用される他方のバルブについては、上記一方のバルブの実バルブタイミングに応じて、目標バルブオーバラップ量が確保されるようにバルブタイミング制御を行うことが可能になる。従って、主制御手段及び従制御手段によるバルブタイミング制御を吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング制御に適用することで、目標バルブオーバラップ量の変化に伴い吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを変更する際、同変更を目標バルブオーバラップ量を確保しつつ行うことができる。また、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを変更する際の応答速度に違いが生じたとしても、上記他方のバルブについての従制御手段によるバルブタイミング制御により、上記応答速度の違いに起因したバルブオーバラップ量の目標バルブオーバラップ量から離れる側への変化を小さく抑えることができる。従って、バルブタイミングの変更時に、バルブオーバラップ量が目標バルブオーバラップ量からずれて機関運転状態が悪化することは抑制され、機関運転状態を好適に保持することができるようになる。
【0061】
上述した主制御手段及び従制御手段によるバルブタイミング制御を行うに当たり、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが共に進角側、或いは共に遅角側に変化するときには、以下のような現象が生じることが確認されている。なお、このように吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが共に進角側、或いは共に遅角側に変化するときには、吸気バルブのバルブタイミング変更と排気バルブのバルブタイミング変更とがバルブオーバラップ量の増加側と減少側との間で食い違うことになる。
【0062】
従制御手段が適用される上記他方のバルブのバルブタイミングは、主制御手段が適用される上記一方のバルブの実バルブタイミングの変化に応じてなされるものであるため、上記他方のバルブのバルブタイミング変更開始が上記一方のバルブのバルブタイミング変更開始に対し遅れるようになる。
【0063】
従って、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが共に進角側に変更される場合、吸気バルブに主制御手段によるバルブタイミング制御が適用され、且つ排気バルブに従制御手段によるバルブタイミング制御が適用されると、最初に吸気バルブのバルブタイミングだけが進角側に変更開始する。その後、排気バルブのバルブタイミングが遅れて進角側に変更開始する。吸気バルブにおけるバルブタイミングの進角はバルブオーバラップ量増加側へのバルブタイミング変更であり、排気バルブにおけるバルブタイミングの進角はバルブオーバラップ量減少側へのバルブタイミング変更である。このため、上記の場合には、バルブタイミング変更開始時に、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなる。これに対し、吸気バルブに従制御手段によるバルブタイミング制御が適用され、且つ排気バルブに主制御手段によるバルブタイミング制御が適用されると、最初に排気バルブのバルブタイミングだけが進角側に変更開始する。その後、吸気バルブのバルブタイミングが遅れて進角側に変更開始する。このため、バルブタイミング変更開始時に、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて小さくなる。
【0064】
また、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが共に遅角側に変更される場合、吸気バルブに主制御手段によるバルブタイミング制御が適用され、且つ排気バルブに従制御手段によるバルブタイミング制御が適用されると、最初に吸気バルブのバルブタイミングだけが遅角側に変更開始する。その後、排気バルブのバルブタイミングが遅れて遅角側に変更開始する。吸気バルブにおけるバルブタイミングの遅角はバルブオーバラップ量減少側へのバルブタイミング変更であり、排気バルブにおけるバルブタイミングの遅角はバルブオーバラップ量増加側へのバルブタイミング変更である。このため、上記の場合には、バルブタイミング変更開始時に、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて小さくなる。これに対し、吸気バルブに従制御手段によるバルブタイミング制御が適用され、且つ排気バルブに主制御手段によるバルブタイミング制御が適用されると、最初に排気バルブのバルブタイミングだけが遅角側に変更開始する。その後、吸気バルブのバルブタイミングが遅れて遅角側に変更開始する。このため、バルブタイミング変更開始時に、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなる。
【0065】
バルブオーバラップ量について、機関運転の信頼性を高めるという観点では、目標バルブオーバラップ量を越えて小さくなろうとも、目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなることは極力抑制するのが好ましいことは、上述したとおりである。このため、請求項7記載の発明では、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが共に進角側に変更されるときには、バルブオーバラップ量増加側へのバルブタイミング変更となる吸気バルブについて従制御手段によるバルブタイミング制御が適用される。また、吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングが共に進角側に変更されるとき、バルブオーバラップ量増加側へのバルブタイミング変更となる排気バルブについては従制御手段によるバルブタイミング制御が適用される。これにより、吸気バルブのバルブタイミング変更と排気バルブのバルブタイミング変更とがバルブオーバラップ量の増加側と減少側とに食い違うとき、バルブタイミング変更開始時にバルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなることは抑制される。従って、バルブオーバラップ量が一時的に目標バルブオーバラップ量を越えて大きくなることに伴う機関運転への悪影響を抑制することができる。
【0066】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車用エンジンに適用した一実施形態を図1〜図18に従って説明する。
【0067】
図1に示されるエンジン1においては、吸気通路2を流れる空気、及び燃料噴射弁4から噴射される燃料からなる混合気が燃焼室3に充填され、この混合気に対して点火プラグ5による点火が行われる。そして、この点火により燃焼室3内の混合気が燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによりピストン6が往復移動する。このピストン6の往復移動は、コネクティングロッド8によってエンジン1の出力軸であるクランクシャフト9の回転へと変換される。一方、燃焼後の混合気は、排気として燃焼室3から排気通路7に送り出される。
【0068】
エンジン1において、吸気通路2と燃焼室3との間は吸気バルブ20の開閉動作によって連通・遮断され、排気通路7と燃焼室3との間は排気バルブ21の開閉動作によって連通・遮断される。そして、吸気バルブ20及び排気バルブ21は、クランクシャフト9の回転が伝達される吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の回転に伴い、それらカムシャフト22,23の吸気カム及び排気カムに押されて開閉動作する。
【0069】
吸気カムシャフト22には、クランクシャフト9の回転に対する吸気カムシャフト22の相対回転位相を変更することで、吸気バルブ20のバルブ特性としてバルブタイミング(開閉タイミング)を変更する吸気側バルブタイミング可変機構25が設けられている。そして、この吸気側バルブタイミング可変機構25を油圧駆動し、吸気バルブ20の開弁期間を進角側又は遅角側に移行させることにより、吸気バルブ20の開弁時期及び閉弁時期が変化するようになる。
【0070】
また、排気カムシャフト23には、クランクシャフト9の回転に対する排気カムシャフト23の相対回転位相を変更することで、排気バルブ21のバルブ特性としてバルブタイミング(開閉タイミング)を変更する排気側バルブタイミング可変機構31が設けられている。そして、この排気側バルブタイミング可変機構31を油圧駆動し、排気バルブ21の開弁期間を進角側又は遅角側に移行させることにより、排気バルブ21の開弁時期及び閉弁時期が変化するようになる。
【0071】
次に、エンジン1のバルブ特性制御装置の電気的構成について説明する。
エンジン1において、吸気側バルブタイミング可変機構25、排気側バルブタイミング可変機構31の油圧駆動は、エンジン1を運転制御すべく自動車に搭載された電子制御装置35を通じて制御される。また、電子制御装置35には、以下に示される各種センサからの検出信号が入力される。
【0072】
・クランクシャフト9の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ10。
・吸気カムシャフト22の回転位置を検出するための吸気側カムポジションセンサ24。
【0073】
・排気カムシャフト23の回転位置を検出するための排気側カムポジションセンサ32。
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル13の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ14。
【0074】
・吸気通路2に設けられて同通路2の空気流通面積を変更すべく開閉動作するスロットルバルブ11の開度を検出するスロットルポジションセンサ15。
・吸気通路2におけるスロットルバルブ11よりも下流側の圧力(吸気圧)を検出するバキュームセンサ12。
【0075】
上記電子制御装置35は、吸気側バルブタイミング可変機構25の駆動制御を通じて吸気バルブ20のバルブタイミング制御を行う。こうした吸気バルブ20のバルブタイミング制御では、同バルブ20の実バルブタイミングが目標バルブタイミングに近づくよう吸気側バルブタイミング可変機構25が駆動される。ここで、吸気バルブ20の実バルブタイミングとしては吸気カムシャフト22の実変位角が用いられ、吸気バルブ20の目標バルブタイミングとしては吸気カムシャフト22の目標変位角が用いられる。
【0076】
また、上記電子制御装置35は、排気側バルブタイミング可変機構31の駆動制御を通じて排気バルブ21のバルブタイミング制御を行う。こうした排気バルブ21のバルブタイミング制御では、同バルブ21の実バルブタイミングが目標バルブタイミングに近づくよう排気側バルブタイミング可変機構31が駆動される。ここで、排気バルブ21の実バルブタイミングとしては排気カムシャフト23の実変位角が用いられ、排気バルブ21の目標バルブタイミングとしては排気カムシャフト23の目標変位角が用いられる。
【0077】
なお、上記バルブタイミング制御で用いられる変位角とは、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を表す値であって、その変化角度はクランク角度(°CA)に換算されている。
【0078】
吸気カムシャフト22の実変位角は、クランクポジションセンサ10及び吸気側カムポジションセンサ24からの検出信号に基づき求められる。この実変位角は、吸気バルブ20のバルブタイミングが最大限遅角されているときに基準値である「0°CA」とされるものであり、吸気バルブ20のバルブタイミングがその最遅角タイミングからどれだけ進角されているかを表す値である。また、排気バルブ21の実変位角は、クランクポジションセンサ10及び排気側カムポジションセンサ32からの検出信号に基づき求められる。この実変位角は、排気バルブ21のバルブタイミングが最大限進角されているときに基準値である「0°CA」とされるものであり、排気バルブ21のバルブタイミングがその最進角タイミングからどれだけ遅角されているかを表す値である。
【0079】
ここで、吸気バルブ20及び排気バルブ21における変位角とバルブオーバラップ量との関係について、クランク角の変化に対する吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミングの推移を示す図2のタイミングチャートを併せ参照して説明する。
【0080】
バルブオーバラップ量とは、排気バルブ21が閉弁してから吸気バルブ20が開弁するまでのクランク角の変化量に対応する値であって、仮に排気バルブ21が閉弁してからクランク角が「θ」だけ変化してから吸気バルブ20が開弁するような場合には「−θ」という値をとる。このバルブオーバラップ量は、例えば図2に破線で示されるように吸気カムシャフト22の実変位角及び排気カムシャフト23の実変位角が共に0°CAとなっている状態のとき、初期値OV0 (本実施形態では、例えば「−24°CA」)となる。従って、実際のバルブオーバラップ量OVRは、吸気カムシャフト22の実変位角INR、排気カムシャフト23の実変位角EXR、及び初期値OV0 を用いて、以下の式(1)で表すことができる。
【0081】
OVR=INR+EXR+OV0 …(1)
OVR:実際のバルブオーバラップ量
INR:吸気カムシャフトの実変位角
EXR:排気カムシャフトの実変位角
OV0 :バルブオーバラップ量の初期値
次に、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング制御の概要について述べる。
【0082】
この実施形態では、吸気バルブ20及び排気バルブ21についてのバルブタイミング制御として、独立制御、第1主従制御、及び第2主従制御の三種類のバルブタイミング制御がエンジン運転状態に応じて使い分けられる。なお、上記独立制御は、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング(実変位角INR,EXR)自体をエンジン運転状態に応じた最適な値に速やかに変更することを重視したバルブタイミング制御である。また、上記第1及び第2主従制御は、バルブオーバラップ量OVRをエンジン運転状態に応じた最適な値に保持することを重視した吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング制御である。
【0083】
以下、独立制御、第1主従制御、及び第2主従制御について、各制御毎に詳しく説明する。
[独立制御]
このバルブタイミング制御では、吸気カムシャフト22の目標変位角INP、及び排気カムシャフト23の目標変位角EXPが用いられる。
【0084】
吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき予め定められたマップを参照して算出されるものであって、そのときのエンジン運転状態に応じた最適な吸気カムシャフト22の変位角を表す値(以下、絶対目標変位角という)である。ここで、エンジン回転速度はクランクポジションセンサ10からの検出信号に基づき求められ、エンジン負荷は上記エンジン回転速度とエンジン1の吸入空気量に関係するパラメータとに基づき求められる。なお、こうしたパラメータとしては、エンジン1の吸気圧、スロットル開度、及びアクセル踏込量等を用いることができる。
【0085】
一方、排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき予め定められたマップを参照して算出される目標バルブオーバラップ量OVPと、上述した吸気カムシャフト22の目標変位角INPとに基づき、以下の式(2)を用いて算出される。
【0086】
EXP=OVP−(INP+OV0 ) …(2)
EXP:排気カムシャフトの目標変位角
OVP:目標バルブオーバラップ量
INP:吸気カムシャフトの目標変位角
OV0 :バルブオーバラップ量の初期値
この式(2)は、上述した変位角とバルブオーバラップ量の関係式(1)において、バルブオーバラップ量OVRを目標バルブオーバラップ量OVPとし、排気カムシャフト23の実変位角EXRを目標変位角EXPとして、同式(1)を変更することで得られるものである。なお、目標バルブオーバラップ量OVPは、そのときのエンジン運転状態に応じた最適なバルブオーバラップ量の理論上の値である。このため、式(2)から算出される排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、そのときのエンジン運転状態に応じた最適な排気カムシャフト23の変位角を表す値(以下、絶対目標変位角という)となる。
【0087】
以上のように、独立制御では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXPが各々エンジン運転状態に応じた最適な値として算出される。こうした独立制御における目標変位角INP,EXPの算出ロジックは、第2の算出手段に対応するものであって、以下では独立制御用算出ロジックと称する。独立制御では、独立制御用算出ロジックによって算出された目標変位角INP,EXPに対し実変位角INR,EXRが近づくよう、吸気側バルブタイミング可変機構25及び排気側バルブタイミング可変機構31が駆動制御される。
【0088】
こうした独立制御において、仮に実変位角INR,EXRが目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)に対し常に一致しながら変化しているのであれば、目標バルブオーバラップ量OVPを確保しつつ、実変位角INR,EXRを速やかに目標変位角INP,EXPに変更できていることになる。ただし、実変位角INR,EXRの変化は目標変位角INP,EXPの変化に対し遅れることから、実変位角INR,EXRを速やかに目標変位角INP,EXPに変更することはできるものの、上記遅れが生じている期間については目標バルブオーバラップ量OVPの確保が困難になる。従って、独立制御については、目標バルブオーバラップ量OVPの確保よりも、実変位角INR,EXRの速やかな目標変位角INP,EXPへの変更を優先したバルブタイミング制御ということになる。
【0089】
なお、この独立制御においては、吸気バルブ20のバルブタイミング制御と排気バルブ21のバルブタイミング制御とが、独立制御手段によるバルブ特性制御に対応している。
【0090】
[第1主従制御]
このバルブタイミング制御でも、吸気カムシャフト22の目標変位角INP、及び排気カムシャフト23の目標変位角EXPが用いられる。吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、独立制御と同じくエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づきマップを参照して算出される。一方、排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、目標バルブオーバラップ量OVPと吸気カムシャフト22の実変位角INRとに基づき、以下の式(3)を用いて算出される。
【0091】
EXP=OVP−(INR+OV0 ) …(3)
EXP:排気カムシャフトの目標変位角
OVP:目標バルブオーバラップ量
INR:吸気カムシャフトの実変位角
OV0 :バルブオーバラップ量の初期値
この式(3)は、上記式(2)において、吸気カムシャフト22の目標変位角INPを実変位角INRに変えたものである。このため、式(3)から算出される排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、そのときのエンジン運転状態に応じた最適なバルブオーバラップ量、即ち目標バルブオーバラップ量OVPを確保することの可能な排気カムシャフト23の変位角を表す値となる。このため、式(3)から算出された目標変位角EXPは、そのときのエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)になるとは限らない。
【0092】
以上のように、第1主従制御では、吸気カムシャフト22の目標変位角INPがエンジン運転状態に応じた最適な値として算出され、その目標変位角INPに向けて変更される実変位角INRに対し、目標バルブオーバラップ量OVPを確保できるように排気カムシャフト23の目標変位角EXPが算出される。こうした第1主従制御における目標変位角INP,EXPの算出ロジックは、第1の算出手段に対応するものであって、以下では第1主従制御用算出ロジックと称する。そして、第1主従制御用算出ロジックによって算出された目標変位角INP,EXPに対し実変位角INR,EXRが近づくよう、吸気側バルブタイミング可変機構25及び排気側バルブタイミング可変機構31が駆動制御される。
【0093】
なお、第1主従制御においては、吸気バルブ20のバルブタイミング制御が主制御手段によるバルブ特性制御に対応し、排気バルブ21のバルブタイミング制御が従制御手段によるバルブ特性制御に対応している。従って、第1主従制御では、吸気バルブ20に主制御手段によるバルブ特性制御が適用され、排気バルブ21に主制御手段によるバルブ特性制御が適用されていることになる。
【0094】
こうした第1主従制御においては、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング、即ち吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角を変更する際、同変更を目標バルブオーバラップ量OVPを確保しつつ行うことができるようになる。また、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角を変更する際の応答速度に違いが生じたとしても、同応答速度の違いに起因したバルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPから離れる側への変化が小さく抑えられる。従って、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング制御として第1主従制御を実行すれば、バルブタイミング変更時に、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPからずれてエンジン運転状態が悪化することは抑制され、同エンジン運転状態を好適に保持することができる。
【0095】
ただし、第1主従制御では、常に目標バルブオーバラップ量OVPが確保されるように排気カムシャフト23の変位角が変更されるため、その分だけ排気カムシャフト23の変位角がエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)に達するのは遅れる。従って、第1主従制御は、実変位角INR,EXRをエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)に速やかに変更することよりも、目標バルブオーバラップ量OVPの確保を優先したバルブタイミング制御ということになる。
【0096】
[第2主従制御]
このバルブタイミング制御でも、吸気カムシャフト22の目標変位角INP、及び排気カムシャフト23の目標変位角EXPが用いられる。ただし、第1主従制御とは異なり、排気カムシャフト23の目標変位角EXPが、独立制御と同じく式(2)を用いてエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)として算出される。一方、吸気カムシャフト22の目標変位角EXPは、目標バルブオーバラップ量OVPと排気カムシャフト23の実変位角EXRとに基づき、以下の式(4)を用いて算出される。
【0097】
INP=OVP−(EXR+OV0 ) …(4)
INP:吸気カムシャフトの目標変位角
OVP:目標バルブオーバラップ量
EXR:排気カムシャフトの実変位角
OV0 :バルブオーバラップ量の初期値
この式(4)は、上述した変位角とバルブオーバラップ量の関係式(1)において、バルブオーバラップ量OVRを目標バルブオーバラップ量OVPとし、吸気カムシャフト22の実変位角INRを目標変位角INPとして、同式(1)を変更することで得られるものである。式(4)から算出される吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、上記目標変位角EXP(絶対目標変位角)に向けて変更される排気カムシャフト23の実変位角EXRに対し、目標バルブオーバラップ量OVPを確保できるような値とされる。このため、式(4)から算出された目標変位角INPは、そのときのエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)になるとは限らない。
【0098】
以上のような第2主従制御における目標変位角INP,EXPの算出ロジックは、第1の算出手段に対応するものであって、以下では第2主従制御用算出ロジックと称する。そして、第2主従制御用算出ロジックによって算出された目標変位角INP,EXPに対し実変位角INR,EXRが近づくよう、吸気側バルブタイミング可変機構25及び排気側バルブタイミング可変機構31が駆動制御される。
【0099】
なお、第2主従制御においては、排気バルブ21のバルブタイミング制御が主制御手段によるバルブ特性制御に対応し、吸気バルブ20のバルブタイミング制御が従制御手段によるバルブ特性制御に対応している。従って、第2主従制御では、排気バルブ21に主制御手段によるバルブ特性制御が適用され、吸気バルブ20に主制御手段によるバルブ特性制御が適用されていることになる。
【0100】
こうした第2主従制御においても、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング、即ち吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角を変更する際、同変更を目標バルブオーバラップ量OVPを確保しつつ行うことができるようになる。また、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角を変更する際の応答速度に違いが生じたとしても、同応答速度の違いに起因したバルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPから離れる側への変化が小さく抑えられる。従って、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング制御として第2主従制御を実行すれば、バルブタイミング変更時に、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPからずれてエンジン運転状態が悪化することは抑制され、同エンジン運転状態を好適に保持することができる。
【0101】
ただし、第2主従制御では、常に目標バルブオーバラップ量OVPが確保されるように吸気カムシャフト22の変位角が変更されるため、その分だけ吸気カムシャフト22の変位角がエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)に達するのは遅れる。従って、第2主従制御も、実変位角INR,EXRをエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)に速やかに変更することよりも、目標バルブオーバラップ量OVPの確保を優先したバルブタイミング制御ということになる。
【0102】
次に、上述した独立制御、第1主従制御、及び第2主従制御をエンジン運転状態に応じてどのように使い分けるかについて、図6〜図8を併せ参照して説明する。なお、これらの図は、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング制御を行うためのバルブタイミング制御ルーチンを示すフローチャートである。このバルブタイミング制御ルーチンは、電子制御装置35を通じて、例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0103】
吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミング、即ち吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRによるエンジン運転状態への影響として、バルブオーバラップ量OVRが影響を与える場合と、実変位角INR,EXR自体が影響を与える場合とがある。そして、バルブオーバラップ量OVRがエンジン運転状態に影響を与えるのか、或いは実変位角INR,EXR自体がエンジン運転状態に影響を与えるのかは、そのときのエンジン運転状態に応じて変わってくる。このことを考慮し、目標バルブオーバラップ量OVPの確保を優先した第1又は第2主従制御を行うのか、或いは実変位角INR,EXRをエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対変位角度)に速やかに変更することを優先した独立制御を行うのかが、エンジン運転状態に応じて適切に選択される。
【0104】
即ち、実変位角INR,EXR自体のエンジン運転状態への影響が大きくなるようなエンジン運転状態にあるときには独立制御が選択される。この独立制御では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXPが、独立制御用算出ロジックによって算出される。また、バルブオーバラップ量OVRのエンジン運転状態への影響が大きくなるようなエンジン運転状態にあるときには、第1主従制御や第2主従制御が選択される。そして、第1の主従制御では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXPが、第1主従制御用算出ロジックによって算出される。また、第2の主従制御では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXPが、第2主従制御用算出ロジックによって算出される。
【0105】
以下、独立制御、第1主従制御、及び第2主従制御のエンジン運転状態に応じた使い分けの具体例について説明する。
実変位角INR,EXR自体のエンジン運転状態への影響が大きくなるような状況としては、例えばエンジン負荷が高いという状況があげられる。エンジン高負荷時には、エンジン1の出力要求が大であって、バルブオーバラップ量OVRの調整による排気エミッションの改善よりも、実変位角INR,EXR自体の調整によるエンジン出力の向上が重視されることとなる。また、エンジン高負荷時には、吸入空気量が多くなって燃焼時に燃焼室3内に存在する酸素の量が多くなるため、バルブオーバラップ量OVR(内部EGR量)が多少変化したとしても、それによる燃焼状態への変化は小さくエンジン運転が影響を受けることもない。こうしたエンジン高負荷時に、仮に第1又は第2主従制御が行われると、実変位角INR,EXRの目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)への速やかな変更よりも、目標バルブオーバラップ量OVPの確保が優先されることから、要求されるエンジン出力が得られずにエンジン1の性能が低下する。
【0106】
以上のことを考慮し、バルブタイミング制御ルーチンでは、エンジン負荷が所定値a以上であってエンジン高負荷である旨判断されると(図6のS101:YES)、独立制御が実行され(S102)、実変位角INR,EXRの目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)への速やかな変更が図られる。従って、エンジン高負荷時に、上述したようにエンジン1の性能が低下するのを抑制することができる。一方、ステップS102でエンジン負荷が所定値a以上でない旨判断されると、ステップS103以降の処理に進む。
【0107】
ところで、目標バルブオーバラップ量OVPの変化に合わせてバルブオーバラップ量OVRを変更する際、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくなるか、或いは小さくなるかによって、第1及び第2主従制御のうちのいずれかと独立制御との間でバルブタイミング制御を切り換えることも考えられる。このような切り換えを行うことにより、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくなるときと小さくなるときとで、より好ましい方のバルブタイミング制御を選択することができる。
【0108】
例えば、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも小さくされる場合には第1主従制御及び第2主従制御のうちのいずれかを行い、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくされる場合には独立制御を行うことが考えられる。なお、第1主従制御及び第2主従制御のうちのいずれかが行われるときには、第1又は第2主従制御用算出ロジックによる目標変位角INP,EXPの算出が行われる。また、独立制御が行われるときには、独立制御用算出ロジックによる目標変位角INP,EXPの算出が行われる。しかし、このようにバルブタイミング制御を切り換える場合、実変位角INR,EXRが目標変位角INP,EXRに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束しているという状況のもとでは、バルブオーバラップ量OVRが目標よりも微妙に小さい値をとるようになる。
【0109】
一方、上記とは逆にバルブオーバラップ量OVRが現状値よりも小さくされる場合には独立制御を行い、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくされる場合には第1主従制御及び第2主従制御のうちのいずれかを行うことも考えられる。しかし、このようにバルブタイミング制御を切り換える場合、実変位角INR,EXRが目標変位角INP,EXRに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束しているという状況のもとでは、バルブオーバラップ量OVRが目標よりも微妙に大きい値をとるようになる。
【0110】
ここで、独立制御のみにより、実変位角INR,EXRが目標変位角INP,EXPに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束しているという状況について考えてみる。このときの実変位角INR,EXRは、図3(a)、(b)に示されるように、目標変位角INP,EXPに収束しているとはいっても、同目標変位角INP,EXPと完全に一致しているわけではなく、微妙に変動して同目標変位角INP,EXPに対し接近・離間を繰り返している状態となる。また、実変位角INR,EXRが上記のように変動すると、それに伴いバルブオーバラップ量OVRも、図3(c)に示されるように変動して目標バルブオーバラップ量OVPに対して接近・離間を繰り返すことになる。
【0111】
このような状況のもとで、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくされる場合と小さくされる場合との一方の場合だけ主従制御を実行すると、上述したようにバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに対し微妙に大小するという不具合が生じるのである。
【0112】
即ち、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも小さくされる場合だけ、主従制御を実行すると、実変位角INR,EXRの変化が目標変位角INP,EXRよりもバルブオーバラップ量減少側には生じやすくなり、目標変位角INP,EXRよりもバルブオバラップ量増加側には生じにくくなる。ここで、目標変位角INP,EXRよりもバルブオーバラップ量減少側に実変位角INR,EXRが変更される際には、実変位角INR,EXRの絶対目標変位角への速やかな変更よりも、目標バルブオーバラップ量OVPの確保が優先される。このため、目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量減少側への実変位角INR,EXRの個々についての変更は許容される傾向にある。これに対し、目標変位角INP,EXRよりもバルブオーバラップ量増加側に実変位角INR,EXRが変更される際には、それら実変位角INR,EXRの速やかな目標変位角INP,EXPへの変更が優先される。このため、目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量増加側への実変位角INR,EXRの個々の個々についての変更は禁止される傾向にある。
【0113】
これらのことから、実変位角INR,EXRについては、図4(a)、(b)に示されるように目標変位角INP,EXPに収束した状態にあっても双方がバルブオーバラップ量減少側に寄せられる。その結果、バルブオーバラップ量OVRは、図4(c)に示されるように目標バルブオーバラップ量OVPよりも微妙に小さい値をとるようになる。従って、その分だけ内部EGR量が不足することや燃費改善に悪影響を及ぼすことは否めず、NOx に関する排気エミッションの改善や燃費改善が妨げられる。
【0114】
一方、バルブオーバラップ量が現状値よりも大きくされる場合だけ、主従制御を実行すると、実変位角INR,EXRの変化が目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量増加側には生じやすくなり、目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量減少側には生じにくくなる。ここで、バルブオーバラップ量増加側に実変位角INR,EXRが変更される際には、実変位角INR,EXRの絶対目標変位角への速やかな変更よりも、目標バルブオーバラップ量OVPの確保が優先される。このため、目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量増加側への実変位角INR,EXRの個々についての変更は許容される傾向にある。これに対し、目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量減少側に実変位角INR,EXRが変更される際には、それら実変位角INR,EXRの速やかな目標変位角INP,EXPへの変更が優先される。このため、目標変位角INP,EXPよりもバルブオーバラップ量減少側への実変位角INR,EXRの個々についての変更は禁止される傾向にある。
【0115】
これらのことから、実変位角INR,EXRについては、図5(a)、(b)に示されるように目標変位角INP,EXPに収束した状態にあっても双方がバルブオーバラップ量増加側に寄せられる。その結果、バルブオーバラップ量OVRは、図5(c)に示されるように目標バルブオーバラップ量OVPよりも微妙に大きい値をとるようになる。従って、その分だけ内部EGR量が過剰になることや燃焼が不安定になることは否めず、エンジン1におけるHC排出量の増加抑制や燃焼安定化の妨げになる。
【0116】
上述した不具合への対策として、図6〜図8のバルブタイミング制御ルーチンではステップS103〜S105(図6)の処理が行われる。即ち、ステップS103では実変位角INR,EXRが目標変位角INP,EXPに収束しているか否かが判断され、ステップS104ではバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束しているか否かが判断される。そして、ステップS103,S104で共に肯定判定であれば、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくなるか、或いは小さくなるかに関係なく、第1主従制御と第2主従制御とのいずれか一方の主従制御が実行される(S105)。
【0117】
この結果、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくなる場合と小さくなる場合とのいずれの場合も主従制御が行われることから、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに対し微妙に食い違うことは抑制される。このため、バルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPに対する微妙なずれに起因して、NOx に関する排気エミッションの改善や燃費改善が妨げられたり、HC排出量の増加抑制や燃焼の安定化が妨げられたりするのを抑制することができる。一方、ステップS103とステップS104のいずれかで否定判定がなされると、ステップS106(図7)以降の処理に進む。
【0118】
ところで、吸気バルブ20においては、バルブタイミング進角がバルブオーバラップ量増加側へのバルブタイミング変更であって、バルブタイミング遅角がバルブオーバラップ減少側へのバルブタイミング変更となる。また、排気バルブ21においては、バルブタイミング進角がバルブオーバラップ量減少側へのバルブタイミング変更であって、バルブタイミング遅角がバルブオーバラップ量増加側へのバルブタイミング変更である。
【0119】
従って、吸気バルブ20のバルブタイミング進角と排気バルブ21のバルブタイミング遅角とが同時に行われる場合、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRは共にバルブオーバラップ量増加側に変更されることになる。また、吸気バルブ20のバルブタイミング遅角と排気バルブ21のバルブタイミング進角とが同時に行われる場合、上記実変位角INR,EXRは共にバルブオーバラップ量減少側に変更されることになる。これらの場合において、仮に第1主従制御及び第2主従制御のいずれかが行われていると、実変位角INR,EXRの速やかな目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)への変更よりも、目標バルブオーバラップ量OVPの確保が優先されることに起因して、次のような不具合が生じる。
【0120】
まず、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRが、共にバルブオーバラップ量増加側に変化する場合について考慮する。こうした状況は、目標バルブオーバラップ量OVPが増加するとき、即ち吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXPが共にバルブオーバラップ量増加側に変化するときに生じる。
【0121】
この場合、第1主従制御が行われていると、最初に吸気カムシャフト22の実変位角INRが、図9(a)に破線で示されるように目標変位角INPに向けてバルブオーバラップ量増加側に変化するようになる。ただし、この実変位角INRの目標変位角INPに向けての変更は徐々にしか行われない。従って、吸気カムシャフト22の実変位角INRに応じて目標バルブオーバラップ量OVPを確保するように算出される排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、図9(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側へと急激に変化することになる。そして、この目標変位角EXPに向けて、排気カムシャフト23の実変位角EXRが図9(b)に破線で示されるように変化しようとする。これに対し、当該目標変位角EXPについては、吸気カムシャフト22の実変位角INRが図9(a)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変化してゆくに従い、図9(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変化してゆく。その結果、排気カムシャフト23の実変位角EXR(図9(b)の破線)が、目標変位角EXP(図9(b)の実線)を越えてバルブオーバラップ量増加側に変化してしまい、図9(c)に実線で示される目標バルブオーバラップ量OVPに対し、破線で示されるバルブオーバラップ量OVRがオーバーシュートする。
【0122】
また、この場合に第2主従制御が行われていると、最初に排気カムシャフト23の実変位角EXRが、図10(b)に破線で示されるように目標変位角EXPに向けてバルブオーバラップ量増加側に変化するようになる。ただし、この実変位角EXRの目標変位角EXPに向けての変更は徐々にしか行われない。従って、排気カムシャフト23の実変位角EXRに応じて目標バルブオーバラップ量OVPを確保するように算出される吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、図10(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側へと急激に変化することになる。そして、この目標変位角INPに向けて、吸気カムシャフト22の実変位角INRが図10(a)に破線で示されるように変化しようとする。これに対し、当該目標変位角INPについては、排気カムシャフト23の実変位角EXRが図10(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変化してゆくに従い、図10(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変化してゆく。その結果、吸気カムシャフト22の実変位角INR(図10(a)の破線)が目標変位角INP(実線)を越えてバルブオーバラップ量増加側に変化してしまい、図10(c)に実線で示される目標バルブオーバラップ量OVPに対し、破線で示されるバルブオーバラップ量OVRがオーバーシュートする。
【0123】
以上のように、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRが、共にバルブオーバラップ量増加側に変化する場合、第1又は第2主従制御が行われていると、目標バルブオーバラップ量OVPに対しバルブオーバラップ量OVRがオーバーシュートする。このため、バルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPに対する収束が遅れ、内部EGR量の過多に伴い内燃機関のHC排出量の増加や、燃焼の不安定に繋がる。
【0124】
続いて、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRが、共にバルブオーバラップ量減少側に変化する場合について考慮する。こうした状況は、目標バルブオーバラップ量OVPが減少するとき、即ち吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXPが共にバルブオーバラップ量減少側に変化するときに生じる。
【0125】
この場合、第1主従制御が行われていると、最初に吸気カムシャフト22の実変位角INRが、図11(a)に破線で示されるように目標変位角INPに向けてバルブオーバラップ量減少側に変化するようになる。ただし、この実変位角INRの目標変位角INPに向けての変更は徐々にしか行われない。従って、吸気カムシャフト22の実変位角INRに応じて目標バルブオーバラップ量OVPを確保するように算出される排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、図11(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側へと急激に変化することになる。そして、この目標変位角EXPに向けて、排気カムシャフト23の実変位角EXRが図11(b)に破線で示されるように変化しようとする。これに対し、当該目標変位角EXPについては、吸気カムシャフト22の実変位角INRが図11(a)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変化してゆくに従い、図11(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変化してゆく。その結果、排気カムシャフト23の実変位角EXR(図11(b)の破線)が目標変位角EXP(実線)を越えてバルブオーバラップ量減少側に変化してしまい、図11(c)に実線で示される目標バルブオーバラップ量OVPに対し、破線で示されるバルブオーバラップ量OVRがアンダーシュートする。
【0126】
また、この場合に第2主従制御が行われていると、最初に排気カムシャフト23の実変位角EXRが、図12(b)に破線で示されるように目標変位角EXPに向けてバルブオーバラップ量減少側に変化するようになる。ただし、この実変位角EXRの目標変位角EXPに向けての変更は徐々にしか行われない。従って、排気カムシャフト23の実変位角EXRに応じて目標バルブオーバラップ量OVPを確保するように算出される吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、図12(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側へと急激に変化することになる。そして、この目標変位角INPに向けて、吸気カムシャフト22の実変位角INRが図12(a)に破線で示されるように変化しようとする。これに対し、当該目標変位角INPについては、排気カムシャフト23の実変位角EXRが図12(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変化してゆくに従い、図12(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変化してゆく。その結果、吸気カムシャフト22の実変位角INR(図12(a)の破線)が目標変位角INP(実線)を越えてバルブオーバラップ量減少側に変化してしまい、図12(c)に実線で示される目標バルブオーバラップ量OVPに対し、破線で示されるバルブオーバラップ量OVRがアンダーシュートする。
【0127】
以上のように、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRが、共にバルブオーバラップ量減少側に変化する場合、第1又は第2主従制御が行われていると、目標バルブオーバラップ量OVPに対しバルブオーバラップ量OVRがアンダーシュートする。このため、バルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPに対する収束が遅れ、内部EGR量の過少に伴い内燃機関のNOx に関する排気エミッション改善の妨げや、燃費悪化に繋がる。
【0128】
上述した不具合の対策として、図6〜図8のバルブタイミング制御ルーチンではステップS106〜S108(図7)の処理が行われる。
即ち、ステップS106では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRを、共にバルブオーバラップ量増加側に変化させるよう指示されているか否かが判断される。こうした判断は、例えば、
・吸気カムシャフト22の目標変位角INP(絶対目標変位角)から実変位角INRを減算した値が正の値であること、即ち吸気バルブ20のバルブタイミング進角が指示されていること。
【0129】
・排気カムシャフト23の目標変位角EXP(絶対目標変位角)から実変位角EXRを減算した値が正の値であること、即ち排気バルブ21のバルブタイミング遅角が指示されていること。
といった二つの条件が両方とも成立しているか否かによって行われる。そして、これら二つの条件が両方とも成立している場合には、ステップS106で肯定判定がなされ、ステップS108に進む。
【0130】
また、ステップS107では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRを、共にバルブオーバラップ量減少側に変化させるよう指示されているか否かが判断される。こうした判断は、例えば、
・吸気カムシャフト22の目標変位角INP(絶対目標変位角)から実変位角INRを減算した値が負の値であること、即ち吸気バルブ20のバルブタイミング遅角が指示されていること。
【0131】
・排気カムシャフト23の目標変位角EXP(絶対目標変位角)から実変位角EXRを減算した値が負の値であること、即ち排気バルブ21のバルブタイミング進角が指示されていること。
といった二つの条件が両方とも成立しているか否かによって行われる。そして、これら二つの条件が両方とも成立している場合には、ステップS107で肯定判定がなされ、ステップS108に進む。一方、ステップS106,S107で共に否定判定がなされると、ステップS109(図8)以降の処理に進む。
【0132】
ステップS108に進んだときには、実変位角INR,EXRの速やかな目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)への変更を優先した独立制御が実行されることになる。独立制御が実行されたときには、実変位角INR,EXRが共にバルブオーバラップ量増加側に変更される場合であれ、共にバルブオーバラップ量減少側に変更される場合であれ、上述したオーバーシュートやアンダーシュートが生じることはない。
【0133】
即ち、実変位角INR,EXRが共にバルブオーバラップ量増加側に変更される場合、独立制御では、目標変位角INP,EXPが図13(a)、(b)に実線で示されるようにエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)に向けてバルブオーバラップ量増加側に変更される。そして、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRは、それぞれ個別に目標変位角INP,EXPに向けて、図13(a)、(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更される。このように実変位角INR,EXRが個別に目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)に近づくよう変更されるため、目標バルブオーバラップ量OVPに対しバルブオーバラップ量OVRがオーバーシュートすることは抑制され、それに伴う不具合を抑制することができる。
【0134】
また、実変位角INR,EXRが共にバルブオーバラップ量減少側に変更される場合、独立制御では、目標変位角INP,EXPが図14(a)、(b)に実線で示されるようにエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)に向けてバルブオーバラップ量減少側に変更される。そして、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の実変位角INR,EXRは、それぞれ個別に目標変位角INP,EXPに向けて、図14(a)、(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更される。このように実変位角INR,EXRが個別に目標変位角INP,EXP(絶対目標変角)に近づくよう変更されるため、目標バルブオーバラップ量OVPに対しバルブオーバラップ量OVRがアンダーシュートすることは抑制され、それに伴う不具合を抑制することができる。
【0135】
ところで、吸気バルブ20と排気バルブ21については、双方のバルブタイミング変更が共に進角側或いは共に遅角側になされ、バルブオーバラップ量増加側と減少側とに食い違う場合がある。
【0136】
即ち、[1]双方のバルブタイミングが共に進角側に変更される場合には、吸気バルブ20のバルブタイミングがバルブオーバラップ量増加側(進角側)に変更され、排気バルブ21のバルブタイミングがバルブオーバラップ量減少側(進角側)に変更される。この場合、吸気カムシャフト22の目標変位角INPがバルブオーバラップ量増加側に変更され、排気カムシャフト23の目標変位角EXPがバルブオーバラップ量減少側に変更されることとなる。
【0137】
また、[2]双方のバルブタイミングが共に遅角側に変更される場合には、吸気バルブ20のバルブタイミングがバルブオーバラップ量減少側(遅角側)に変更され、排気バルブ21のバルブタイミングがバルブオーバラップ量増加側(遅角側)に変更される。この場合、吸気カムシャフト22の目標変位角INPがバルブオーバラップ量減少側に変更され、排気カムシャフト23の目標変位角EXPがバルブオーバラップ量増加側に変更されることとなる。
【0138】
このような状況のもとで、仮に第1又は第2主従制御が行われていると、以下のような現象が生じることが確認されている。ここで、上記[1]及び[2]の状況で、それぞれ第1主従制御が行われている場合に生じる現象と、第2主従制御が行われている場合に生じる現象とについて個別に説明する。
【0139】
[1]の状況であって第1主従制御がおこなされている場合。
この場合、バルブタイミング変更開始時に最初に吸気カムシャフト22の目標変位角INPが図15(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更開始される。この目標変位角INPに向けて吸気カムシャフト22の実変位角INRが、図15(a)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更開始される。そして、当該実変位角INRに対し目標バルブオーバラップ量OVPが確保されるように算出される排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、図15(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に推移する。この目標変位角EXPに向けて実変位角EXRが、図15(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更される。
【0140】
バルブオーバラップ量減少側への排気カムシャフト23の実変位角EXRの変更は、バルブオーバラップ量増加側への吸気カムシャフト22の実変位角INRの変化に応じてなされるものである。このため、排気カムシャフト23の実変位角INRの変更開始は吸気カムシャフト22の実変位角EXRの変更開始に対して所定時間Δt1だけ遅れ、この遅れの分だけバルブオーバラップ量OVRが一時的に目標バルブオーバラップ量OVPよりも大きくなる。
【0141】
[1]の状況であって第2主従制御が行われている場合。
この場合、バルブタイミング変更開始時に最初に排気カムシャフト23の目標変位角EXPが図16(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更開始される。この目標変位角EXPに向けて排気カムシャフト23の実変位角EXRが、図16(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更開始される。そして、当該実変位角EXRに対し目標バルブオーバラップ量OVPが確保されるように算出される吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、図16(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に推移する。この目標変位角INPに向けて実変位角INRが、図16(a)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更される。
【0142】
バルブオーバラップ量増加側への吸気カムシャフト22の実変位角INRの変更は、バルブオーバラップ量減少側への排気カムシャフト23の実変位角EXRの変化に応じてなされるものである。このため、吸気カムシャフト22の実変位角INRの変更開始は排気カムシャフト23の実変位角EXRの変更開始に対して所定時間Δt2だけ遅れ、この遅れの分だけバルブオーバラップ量OVRが一時的に目標バルブオーバラップ量OVPよりも小さくなる。
【0143】
[2]の状況であって第1主従制御が行われている場合。
この場合、バルブタイミング変更開始時に最初に吸気カムシャフト22の目標変位角INPが図17(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更開始される。この目標変位角INPに向けて吸気カムシャフト22の実変位角INRが、図17(a)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更開始される。そして、当該実変位角INRに対し目標バルブオーバラップ量OVPが確保されるように算出される排気カムシャフト23の目標変位角EXPは、図17(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に推移する。この目標変位角EXPに向けて実変位角EXRが、図17(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更される。
【0144】
バルブオーバラップ量増加側への排気カムシャフト23の実変位角EXRの変更は、バルブオーバラップ量減少側への吸気カムシャフト22の実変位角INRの変化に応じてなされるものである。このため、排気カムシャフト23の実変位角INRの変更開始は吸気カムシャフト22の実変位角EXRの変更開始に対して所定時間Δt3だけ遅れ、この遅れの分だけバルブオーバラップ量OVRが一時的に目標バルブオーバラップ量OVPよりも小さくなる。
【0145】
[2]の状況であって第2主従制御が行われている場合。
この場合、バルブタイミング変更開始時に最初に排気カムシャフト23の目標変位角EXPが図17(b)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更開始される。この目標変位角EXPに向けて排気カムシャフト23の実変位角EXRが、図17(b)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量増加側に変更開始される。そして、当該実変位角EXRに対し目標バルブオーバラップ量OVPが確保されるように算出される吸気カムシャフト22の目標変位角INPは、図17(a)に実線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に推移する。この目標変位角INPに向けて実変位角INRが、図17(a)に破線で示されるようにバルブオーバラップ量減少側に変更される。
【0146】
バルブオーバラップ量減少側への吸気カムシャフト22の実変位角INRの変更は、バルブオーバラップ量増加側への排気カムシャフト23の実変位角EXRの変化に応じてなされるものである。このため、吸気カムシャフト22の実変位角INRの変更開始は排気カムシャフト23の実変位角EXRの変更開始に対して所定時間Δt4だけ遅れ、この遅れの分だけバルブオーバラップ量OVRが一時的に目標バルブオーバラップ量OVPよりも大きくなる。
【0147】
ここで、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPを越えて大きくなる場合と小さくなる場合とのエンジン1への影響について考えてみる。
【0148】
バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPを越えて大きくなる場合、内部EGR量の過多に伴いエンジン1のHC排出量が増加するだけでなく燃焼が不安定になり、最悪の場合には失火を招いてストールを誘発してしまうおそれがある。これに対し、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPを越えて小さくなる場合、内部EGR量の過少に伴いエンジン1のNOx 排出量の増加や燃費の悪化には繋がるものの、エンジン1のストールを誘発するほどの悪影響は生じにくい。このため、エンジン運転の信頼性能を高めるという観点では、バルブオーバラップ量OVRについては、目標バルブオーバラップ量OVPを越えて小さくなろうとも、目標バルブオーバラップ量OVPを越えて大きくなることは極力抑制することが好ましい。
【0149】
以上のことを考慮し、図6〜図8のバルブタイミング制御ルーチンではステップS109〜S114(図8)の処理が行われる。
ステップS109,S110では、上記[1]の状況であるか否かが判断される。
【0150】
即ち、まず吸気カムシャフト22の実変位角INRをバルブオーバラップ量増加側に変化させるよう指示されているか否かが判断される(S109)。ここでは、例えば吸気カムシャフト22の目標変位角INP(絶対目標変位角)から実変位角INRを減算した値が正の値であるか否か、言い換えれば吸気バルブ20のバルブタイミング進角が指示されているか否かに基づき上記判断が行われる。続いて、排気カムシャフト23の実変位角EXRをバルブオーバラップ量減少側に変化させるよう指示されているか否かが判断される(S110)。ここでは、例えば排気カムシャフト23の実変位角EXR(絶対目標変位角)から実変位角EXRを減算した値が負の値であるか否か、言い換えれば排気バルブ21のバルブタイミング進角が指示されているか否かに基づき上記判断が行われる。
【0151】
そして、ステップS109,S110で共に肯定判定であれば、上記[1]の状況である旨判断され、第2主従制御が行われることとなる(S111)。この場合、上記[1]の状況のもとで第2主従制御が行われることから、当該[1]の状況にあってバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPよりも大きくなること、並びに、それに伴うエンジン運転への悪影響を抑制することができる。一方、ステップS109,S110のいずれかで否定判定がなされると、ステップS112以降の処理に進む。
【0152】
ステップS112,S113では、上記[2]の状況であるか否かが判断される。
即ち、まず吸気カムシャフト22の実変位角INRをバルブオーバラップ量減少側に変化させるよう指示されているか否かが判断される(S112)。ここでは、例えば吸気カムシャフト22の目標変位角INP(絶対目標変位角)から実変位角INRを減算した値が負の値であるか否か、言い換えれば吸気バルブ20のバルブタイミング遅角が指示されているか否かに基づき上記判断が行われる。続いて、排気カムシャフト23の実変位角EXRをバルブオーバラップ量増加側に変化させるよう指示されているか否かが判断される(S113)。ここでは、例えば排気カムシャフト23の実変位角EXR(絶対目標変位角)から実変位角EXRを減算した値が正の値であるか否か、言い換えれば排気バルブ21のバルブタイミング遅角が指示されているか否かに基づき上記判断が行われる。
【0153】
そして、ステップS112,S113で共に肯定判定であれば、上記[2]の状況である旨判断され、第1主従制御が行われることとなる(S114)。この場合、上記[2]の状況のもとで第1主従制御が行われることから、当該[2]の状況にあってバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPよりも大きくなること、並びに、それに伴うエンジン運転への悪影響を抑制することができる。
【0154】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)第1主従制御や第2主従制御では、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角の変更を、目標バルブオーバラップ量OVPを確保しつつ行うことができる。また、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角を変更する際の応答速度に違いが生じたとしても、同応答速度の違いに起因したバルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPから離れる側への変化が小さく抑えられる。従って、これら主従制御を行うことにより、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の変位角の変更時に、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPからずれてエンジン運転状態が悪化することは抑制され、同エンジン運転状態を好適に保持することができる。
【0155】
(2)実変位角INR,EXRによるエンジン運転状態への影響として、バルブオーバラップ量OVRが影響を与える場合と、実変位角INR,EXR自体が影響を与える場合とがある。そして、バルブオーバラップ量OVRがエンジン運転状態に影響を与えるのか、或いは実変位角INR,EXR自体がエンジン運転状態に影響を与えるのかは、そのときのエンジン運転状態に応じて変わってくる。例えば、エンジン高負荷時において、仮に目標バルブオーバラップ量OVPの確保を優先した第1又は第2主従制御が行われると、要求されるエンジン出力が得られずにエンジン1の性能が低下する。しかし、エンジン負荷が所定値a以上であるときには、実変位角INR,EXRの目標変位角INP,EXP(絶対目標変位角)への速やかな変更を優先した独立制御が行われるため、上述したようにエンジン1の性能が低下するのを抑制することができる。
【0156】
(3)バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくなるときと小さくなるときとで、行われるバルブタイミング制御が独立制御と主従制御との間で異なっていると、エンジン運転状態によっては不具合が生じることとなる。こうした不具合が生じる状況としては、実変位角INR,EXRが目標変位角INP,EXPに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束している状況があげられる。この場合、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに対し微妙に小さい値や大きい値をとるようになり、それがエンジン運転に悪影響を及ぼすこととなる。しかし、この状況のもとにあっては、バルブオーバラップ量OVRが現状値よりも大きくなるか、或いは小さくなるかに関係なく、第1主従制御と第2主従制御とのいずれか一方の主従制御が実行される。従って、上記バルブオーバラップ量OVRの目標バルブオーバラップ量OVPに対し微妙なずれが生じるのを抑制し、同ずれがエンジン運転状態に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0157】
(4)吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXP(実変位角INR,EXR)が共にバルブオーバラップ量増加側、或いは共にバルブオーバラップ量減少側に変更されるとき、第1又は第2主従制御が行われていると不具合が生じる。即ち、バルブオーバラップ量増加側への変更については、目標バルブオーバラップ量OVPに対するバルブオーバラップ量OVRのオーバーシュートが生じる。また、バルブオーバラップ量減少側への変更については、目標バルブオーバラップ量OVPに対するバルブオーバラップ量OVRのアンダーシュートが生じる。しかし、上記のような状況のもとでは、独立制御が行われ、オーバーシュートやアンダーシュートの発生が抑制されるため、それに伴う不具合を抑制することができる。
【0158】
(5)吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の目標変位角INP,EXP(実変位角INR,EXR)の変更が、バルブオーバラップ量増加側とバルブオーバラップ量減少側とに食い違うとき、第1主従制御及び第2主従制御の実行の仕方によってはエンジン運転への悪影響が大きなものとなる。
【0159】
例えば、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミングが共に進角側に変更されるときには、吸気カムシャフト22の変位角がバルブオーバラップ量増加側に変更され、排気カムシャフト23の変位角がバルブオーバラップ量減少側に変更されることとなる。このとき、仮に第1主従制御が実行されていると、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPよりも大きくなり、エンジン運転への悪影響が大きくなる。しかし、このときには第2主従制御が実行され、上記のようなエンジン運転への悪影響は抑制されるため、エンジンストールなど最悪の状況が生じる可能性を極力回避し、エンジン運転の信頼性を高めることができる。
【0160】
また、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミングが共に遅角側に変更されるときには、吸気カムシャフト22の変位角がバルブオーバラップ量減少側に変更され、排気カムシャフト23の変位角がバルブオーバラップ量増加側に変更されることとなる。このとき、仮に第2主従制御が実行されていると、バルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPよりも大きくなり、エンジン運転への悪影響が大きくなる。しかし、このときには第1主従制御が実行され、上記のようなエンジン運転への悪影響は抑制されるため、上記と同じくエンジンストールなど最悪の状況が生じる可能性を極力回避し、エンジン運転の信頼性を高めることができる。
【0161】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・エンジン負荷が所定値a以上であるか否かを判断する際の所定値aとしては任意の値を選択することができるが、エンジン高負荷を表す値を採用することが好ましい。
【0162】
・排気カムシャフト23の目標変位角EXPをエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)として求める際、エンジン回転速度とエンジン負荷とに基づきマップを参照して求める。そして、吸気カムシャフト22の目標変位角INPをエンジン運転状態に応じた最適な値(絶対目標変位角)として求める際には以下の式(5)を用いて求めるようにすることもできる。
【0163】
INP=OVP−(EXP+OV0 ) …(5)
INP:吸気カムシャフトの目標変位角
EXP:排気カムシャフトの目標変位角
OVP:目標バルブオーバラップ量
OV0 :バルブオーバラップ量の初期値
この式(5)は、上述した変位角とバルブオーバラップ量の関係式(1)において、バルブオーバラップ量OVRを目標バルブオーバラップ量OVPとし、排気カムシャフト23の実変位角EXRを目標変位角EXPとして、同式(1)を変更することで得られるものである。
【0164】
以上のように、排気カムシャフト23の目標変位角EXPをマップから求め、吸気カムシャフト22の目標変位角INPを計算式から求めるという手法については、目標変位角INP,EXPを絶対目標変位角として求める独立制御だけでなく、第1主従制御や第2主従制御について適用することもできる。
【0165】
・吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブタイミングを表す値として変位角を用いたが、これに変えて各バルブ20、21のバルブタイミングを表す他のパラメータを用いてもよい。
【0166】
・吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブ特性としてバルブタイミングが可変とされるエンジン1に本発明を適用したが、吸気バルブ20及び排気バルブ21のバルブ特性としてバルブリフト量の推移傾向が可変とされるバルブリフト量可変機構を吸気側及び排気側に備えたエンジンに本発明を適用してもよい。この場合、吸気側及び排気側のバルブリフト量可変機構を駆動制御して、バルブオーバラップ量を調節することになる。
【0167】
・火花点火式のエンジン1に本発明を適用したが、ディーゼルエンジンなど吸気バルブと排気バルブとの両方にバルブ特性を変更する可変動弁機構を設けることの可能な他の形式のエンジンに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のバルブ特性制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。
【図2】吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの各変位角とバルブオーバラップ量との関係を示す図。
【図3】(a)〜(c)は、吸気カムシャフトの実変位角INR、及び排気カムシャフトの実変位角EXRがそれぞれ目標変位角INP,EXPに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束した状態を示す図。
【図4】(a)〜(c)は、吸気カムシャフトの実変位角INR、及び排気カムシャフトの実変位角EXRがそれぞれ目標変位角INP,EXPに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束した状態を示す図。
【図5】(a)〜(c)は、吸気カムシャフトの実変位角INR、及び排気カムシャフトの実変位角EXRがそれぞれ目標変位角INP,EXPに収束し、且つバルブオーバラップ量OVRが目標バルブオーバラップ量OVPに収束した状態を示す図。
【図6】吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング制御手順を示すフローチャート。
【図7】吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング制御手順を示すフローチャート。
【図8】吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミング制御手順を示すフローチャート。
【図9】(a)〜(c)は、バルブオーバラップ量増加時に第1主従制御が実行された場合、目標変位角INP及び実変位角INR、目標変位角EXP及び実変位角EXR、並びに、バルブオーバラップ量OVR及び目標バルブオーバラップ量OVPがどのように推移するかを示すタイムチャート。
【図10】(a)〜(c)は、バルブオーバラップ量増加時に第2主従制御が実行された場合、目標変位角INP及び実変位角INR、目標変位角EXP及び実変位角EXR、並びに、バルブオーバラップ量OVR及び目標バルブオーバラップ量OVPがどのように推移するかを示すタイムチャート。
【図11】(a)〜(c)は、バルブオーバラップ量減少時に第1主従制御が実行された場合、目標変位角INP及び実変位角INR、目標変位角EXP及び実変位角EXR、並びに、バルブオーバラップ量OVR及び目標バルブオーバラップ量OVPがどのように推移するかを示すタイムチャート。
【図12】(a)〜(c)は、バルブオーバラップ量減少時に第2主従制御が実行された場合、目標変位角INP及び実変位角INR、目標変位角EXP及び実変位角EXR、並びに、バルブオーバラップ量OVR及び目標バルブオーバラップ量OVPがどのように推移するかを示すタイムチャート。
【図13】(a)及び(b)は、バルブオーバラップ量増加時に独立制御が実行された場合、目標変位角INP及び実変位角INR、目標変位角EXP及び実変位角EXR、並びに、バルブオーバラップ量OVR及び目標バルブオーバラップ量OVPがどのように推移するかを示すタイムチャート。
【図14】(a)及び(b)は、バルブオーバラップ量減少時に独立制御が実行された場合、目標変位角INP及び実変位角INR、目標変位角EXP及び実変位角EXR、並びに、バルブオーバラップ量OVR及び目標バルブオーバラップ量OVPがどのように推移するかを示すタイムチャート。
【図15】(a)及び(b)は、上記[1]の状況であって第1主従制御が実行されている場合の目標変位角INP及び実変位角INR、並びに、目標変位角EXP及び実変位角EXRの推移を示すタイムチャート。
【図16】(a)及び(b)は、上記[1]の状況であって第2主従制御が実行されている場合の目標変位角INP及び実変位角INR、並びに、目標変位角EXP及び実変位角EXRの推移を示すタイムチャート。
【図17】(a)及び(b)は、上記[2]の状況であって第1主従制御が実行されている場合の目標変位角INP及び実変位角INR、並びに、目標変位角EXP及び実変位角EXRの推移を示すタイムチャート。
【図18】(a)及び(b)は、上記[2]の状況であって第2主従制御が実行されている場合の目標変位角INP及び実変位角INR、並びに、目標変位角EXP及び実変位角EXRの推移を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…吸気通路、3…燃焼室、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…排気通路、8…コネクティングロッド、9…クランクシャフト、10…クランクポジションセンサ、11…スロットルバルブ、12…バキュームセンサ、13…アクセルペダル、14…アクセルポジションセンサ、15…スロットルポジションセンサ、20…吸気バルブ、21…排気バルブ、22…吸気カムシャフト、23…排気カムシャフト、24…吸気側カムポジションセンサ、25…吸気側バルブタイミング可変機構、31…排気側バルブタイミング可変機構、32…排気側カムポジションセンサ、35…電子制御装置(選択手段)。
Claims (7)
- 吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、
前記吸気バルブと前記排気バルブとの一方のバルブについて機関運転状態に応じた目標特性を算出するとともに、機関運転状態に応じた目標バルブオーバラップ量を算出し、この目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき他方のバルブについての目標特性を算出する第1の算出手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出する第2の算出手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについての目標特性の算出として、前記第1の算出手段による算出と前記第2の算出手段による算出とのうちのいずれかを機関運転状態に応じて選択する選択手段と、
を備え、
前記選択手段は、機関負荷が所定値以上であるとき、前記目標特性の算出として前記第2の算出手段による算出を選択する
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、
前記吸気バルブと前記排気バルブとの一方のバルブについて機関運転状態に応じた目標特性を算出するとともに、機関運転状態に応じた目標バルブオーバラップ量を算出し、この目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき他方のバルブについての目標特性を算出する第1の算出手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出する第2の算出手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについての目標特性の算出として、前記第1の算出手段による算出と前記第2の算出手段による算出とのうちのいずれかを機関運転状態に応じて選択する選択手段と、
を備え、
前記選択手段は、前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブ特性がそれぞれ目標特性に収束するとともに、バルブオーバラップ量が前記目標バルブオーバラップ量に収束しているとき、前記目標特性の算出として前記第1の算出手段による算出を選択する
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記選択手段は、
バルブオーバラップ量が現状値よりも小さくなる機関運転状態と大きくなる機関運転状態とのうち、一方の機関運転状態では前記目標特性の算出として前記第1の算出手段による算出を選択し、他方の機関運転状態では前記目標特性の算出として前記第2の算出手段による算出を選択するものであり、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブ特性がそれぞれ目標特性に収束するとともに、バルブオーバラップ量が前記目標バルブオーバラップ量に収束している条件のもとでは、前記一方の機関運転状態であるか前記他方の機関運転状態であるかに関係なく前記目標特性の算出として前記第1の算出手段による算出を選択する
請求項2記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、
前記吸気バルブと前記排気バルブとの一方のバルブについて機関運転状態に応じた目標特性を算出するとともに、機関運転状態に応じた目標バルブオーバラップ量を算出し、この目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき他方のバルブについての目標特性を算出する第1の算出手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出する第2の算出手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについての目標特性の算出として、前記第1の算出手段による算出と前記第2の算出手段による算出とのうちのいずれかを機関運転状態に応じて選択する選択手段と、
を備え、
前記選択手段は、前記吸気バルブのバルブ特性変更と前記排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側又は減少側で一致するとき、前記目標特性の算出として前記第2の算出手段による算出を選択する
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 吸気バルブのバルブ特性と排気バルブのバルブ特性とを各々目標特性に制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの一方のバルブについての目標特性を機関運転状態に応じて算出し、前記一方のバルブのバルブ特性を当該算出された目標特性に制御する主制御手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの他方のバルブについての目標特性を機関運転状態に応じて算出される目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブ特性とに基づき算出し、前記他方のバルブのバルブ特性を当該算出された目標特性に制御する従制御手段と、
を備え、
前記吸気バルブのバルブ特性変更と前記排気バルブのバルブ特性変更とがバルブオーバラップ量の増加側と減少側とに食い違うとき、それら両バルブのうちバルブオーバラップ量減少側へのバルブ特性変更がなされるバルブについては前記主制御手段によるバルブ特性制御を適用し、前記両バルブのうち他方のバルブについては前記従制御手段によるバルブ特性制御を適用する
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 請求項5記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブについて各々機関運転状態に応じた目標特性を算出し、それら両バルブのバルブ特性をそれぞれ当該算出された目標特性に制御する独立制御手段を更に備え、
前記主制御手段及び前記従制御手段によるバルブ特性制御と、前記独立制御手段によるバルブ特性制御とが、機関運転状態に応じて選択して実行される
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 吸気バルブのバルブタイミングと排気バルブのバルブタイミングとを各々目標バルブタイミングに制御する内燃機関のバルブ特性制御装置において、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの一方のバルブについての目標バルブタイミングを機関運転状態に応じて算出し、前記一方のバルブのバルブタイミングを当該算出された目標バルブタイミングに制御する主制御手段と、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうちの他方のバルブについての目標バルブタイミングを機関運転状態に応じて算出される目標バルブオーバラップ量と前記一方のバルブの実バルブタイミングとに基づき算出し、前記他方のバルブのバルブタイミングを当該算出された目標バルブタイミングに制御する従制御手段と、
を備え、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブタイミングが共に進角側に変更されるとき、前記排気バルブについては前記主制御手段によるバルブタイミング制御を適用するとともに、前記吸気バルブについては前記従制御手段によるバルブタイミング制御を適用し、
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブタイミングが共に遅角側に変更されるとき、前記吸気バルブについては前記主制御手段によるバルブタイミング制御を適用するとともに、前記排気バルブについては前記従制御手段によるバルブタイミング制御を適用する
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
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