JP3843118B2 - 生体情報監視システム - Google Patents
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Description
しかし、こうした検査方法によって入手できる一時的な生体情報だけでは、被検査者の状況を十分に把握できない場合がある。例えば、被検査者は異常の自覚症状があったとしても、医師や看護士が生体情報の検知を行なう際にはその異常が現れず、正確な診断が下されない場合がある。特に、不整脈や心拍異常などは、必ずしも常時現れるとは限らないのが通常であり、短時間の観察では、被検査者の心理状態や検査の時間帯などの影響もあって、正しく認識されない可能性がある。
そこで、身体の異常が疑われる被検査者に対し、就寝中を含む長時間に亘って継続的に生体情報の検知を行なう方法が提案されている。
例えば、最近では、被検査者の身体に装着された小型軽量の生体情報センサーによって生体情報を検知し、その検知したデータを無線でデータ分析手段に送って異常判定などを行なう方法がいくつか提案されている。この場合、生体情報センサーと通信手段とを内蔵する生体情報センサーモジュールを用い、この生体情報センサーモジュールを小型軽量化することによって被検査者の身体活動をほとんど拘束しないようにするなど、一定の進歩がみられるようになっている。
例えば、特開平10−155749号「人の健康状態の監視通報システム」では、人体に装着可能なライフセンサで、人の脈拍、動き、音、体温などをリアルタイムで測定することができ、センサから受信した情報に基づき介護者に通報するシステムと連動させている。なお、ライフセンサは腕時計型で内部に通信手段を内蔵することによって役割を果たすことも可能である。監視センターは通報を受けた際に、被検者を呼び返すための通信手段を有している。
また、特開2000−93398号「異常症状検出器及び異常通報システム」では、脈拍と呼吸に伴う皮膚の伸縮を検知する皮膚伸縮センサと、センサが異常を検知した場合に異常警報を出力する異常警報発生回路から成っており、皮膚伸縮センサとしてはストレーンゲージを用いている。異常を検知した場合には電話転送処理手段を活用するとしている。
また、特開平6−242206号「非常時救援システム」には、脈拍、血圧および体温を検知するセンサを内蔵あるいは接続し、内部に微弱電波の送信機を備える腕時計型の発信装置と、微弱電波を受ける受信部、およびその受信部の特定信号によって作動し、非常電波を送信する送信部を備える中継用の無線装置と、非常電波を受信することによって無線装置の位置を検知する無線局とを備えた人の異常状態検知システムが開示されている。
また、特開2001−353130号「身体情報取得用情報検出体」では、身体情報を検出するセンサと出力手段が、被計測者の耳介に係止可能なように全体が弓形に湾曲形成された収納ケースに配設されていることが特徴となっている。同様なセンサと出力手段が、ペンダント状に形成されたケースに配設されている場合もある。
さらに、特開2003−24287号「身体状態の監視装置」では、運動センサ(加速度、角速度の少なくとも一方を検出する)と脈波センサの出力に応答し、身体状態を演算して監視する手段を有する監視装置が提案されている。これらのセンサは人体の上肢あるいは下肢に装着され、上肢あるいは下肢の長手方向と幅方向とに垂直なZ軸の周りの角速度を検出するジャイロセンサを有する。脈拍演算手段は加速度センサの出力に応答し、加速度センサのパルス状出力が得られる状態で、脈波センサの出力に含まれるノイズを除去するノイズ除去手段を含むとしている。
上記従来技術は、いずれも、センサの種類や形状、検出方法、通信手段、非常通報システムなどにそれぞれ工夫があるものの、被検査者の身体の1箇所に生体情報センサ(例えば、体温計、脈拍センサあるいは血圧計など)を接触させて生体情報を検知し、検知結果が、予め決められた正常範囲(例えば、安静時、一般成人を基本としての基準として、体温なら36.0〜36.9℃、脈拍なら60〜80回/min、血圧なら収縮期血圧100〜120mmHg、拡張期血圧80mmHg以下程度が目安)の中に含まれているかどうかという観点で身体の異常判定を行っている。
しかし、従来の方法には、共通して一つの大きな問題点を包含している。すなわち、身体の異常の種類によっては、身体の1箇所の生体情報だけでは、必ずしも異常を認識することができず、身体の複数の箇所の生体情報を検知することによって、はじめて異常を認識できるような場合がある。
例えば、身体の異常が、右半身と左半身のいずれか一方のみで体温の異常として現れ、他方では、体温の異常として現れないような場合がある。そのような場合には、体温の異常が現れる半身で体温の測定を行なっても身体の異常として認識できない場合がある。実際、脳梗塞の前駆現象の際に、身体の異常が起きつつある本人自身に自覚症状が出る前に、麻痺しつつある半身の体温のみが低下するという現象が起きる一方で、麻痺しない半身の体温はほとんど通常範囲から変化しないということが起こりえる。そうした場合、身体の1箇所のみの生体情報の測定で得られた情報では、異常を十分認識できず、せっかく生体情報の検知を実施していても、危険な病気の早期発見に結びつかなかったり、発見が遅れてしまう可能性がある。
また、身体の異常が、右半身と左半身のいずれにおいても、生体情報(例えば体温)の異常としては現れないが、両半身の生体情報の差(例えば体温の差)として現れる場合もある。例えば、身体に異常が生じている時に、右の脇の下の体温と左の脇の下の体温のいずれも、個々には正常な温度範囲に含まれているものの、身体に発生した異常の影響のため右半身と左半身の体温に差が生じる現象として現れる場合がある。そのような場合には、身体の1箇所のみならず複数の生体情報を検知しなければ、早期に異常を認識することはできない。
言い換えると、従来は身体の1箇所のみで生体情報を検知するのが一般的であったために、ある種の身体の異常は、認識が不可能または困難であったり、認識に遅れが生じるため、結果的に、被検査者の危険を早期に発見して早期に治療することに結びつかない恐れがあった。例えば、脳卒中や心筋梗塞などは、従来の1箇所の体温測定などの生体情報の検知では、早期の発見を期待することが難しかった。
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、身体の右半身と左半身の複数箇所で生体情報を検知して、従来よりも精度よく早期に身体の異常の判定を行なうことができる生体情報監視システムを提供することを目的とする。
図2は、図1に示す生体情報センサーモジュールの斜視図である。
図3は、図2の正面図である。
図4は、図2の底面図である。
図5は、図1に示す生体情報センサーモジュールにおける傾斜センサーの平面図である。
図6は、図5の正面断面図である。
図7は、図5に示す傾斜センサーを身体に装着した状態で、かつ被検査者が起きている状態を示す説明図である。
図8は、図5に示す傾斜センサーを身体に装着した状態で、かつ被検査者が寝ている状態を示す説明図である。
図9は、図1に示す生体情報センサーモジュールを含む生体情報監視システムの模式図である。
図10は、図9に示す生体情報監視システムの概要を示すフローチャートである。
図11は、図1に示す生体情報センサーモジュールを含む生体情報監視システムの他の例の模式図である。
図12は、図1に示す生体情報センサーモジュールを含む生体情報監視システムのさらに他の例の模式図である。
図13は、図1に示す生体情報センサーモジュールを含む生体情報監視システムのさらに他の例の模式図である。
図14は、図1に示す生体情報センサーモジュールを含む生体情報監視システムのさらに他の例の模式図である。
図15は、傾斜センサーの他の例の内部を示す平面図である。
図16は、図15の正面断面図である。
図17は、実施例における生体情報センサーモジュールの装着箇所を示す図である。
図18は、実施例における測定結果を示すグラフである。
図19は、実施例における測定結果を示すグラフである。
生体情報センサーが検知する生体情報としては、体温、脈拍、もしくは血圧などが挙げられる。
また、判定手段は、右半身と左半身の体温の差が0.5℃以上、脈拍の差が7回/min以上、血圧の差が10mmHg以上となったときに異常判定を行うことが好ましい。
また、生体情報センサーモジュールは、判定手段によって異常と判定された場合に警告を発する警告手段を備えることができる。
また、複数の生体情報センサーモジュールの少なくとも1つに、判定手段による判定結果を無線通信によって通知可能な、外部との通信手段を設けるとともに、その外部との通信手段から通知された判定結果を受信可能な、生体情報センサーモジュールの外部の電子機器を有していても良い。
さらに、複数の生体情報センサーモジュールの少なくとも1つには、判定手段による判定結果もしくは生体情報センサーによって測定された生体情報の少なくともいずれか一方を記憶するメモリを備えることができる。これにより、測定した生体情報が蓄積される。
また、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送るための電子機器を備えても良く、この場合の判定手段では、電子機器から送られたデータを参照して異常判定を行うことができる。
さらに、上述の外部との通信手段では、判定結果とともに、生体情報センサーモジュールが装着されている生体毎に区別された識別信号を無線通信によって通知することができ、この場合の外部の電子機器は、判定結果とともに識別信号を読み取ることによって、その判定結果を通知した生体を特定することができる。
なお、本明細書中でいう「無線通信」とは、無線で送信を行うことと受信を行うことを含む総称である。具体的には、例えば、無線送受信によって、エラー処理を行いながらデータのやり取りを行うことを含む。
以下、実施の形態に基づき本発明を詳細に説明する。
図1〜4に、本発明の生体情報監視システムの一実施形態における生体情報センサーモジュール1が示されている。この生体情報センサーモジュール1は、外装ケース2内に、電池3とメイン基板4とセンサー基板5等が挿入され、底部に配設された、通気性を有し非アレルギー性の両面テープ6によって人体に直接貼着可能なものである。その構成を詳細に説明すると、外装ケース2は、合成樹脂等からなり、中空で底部が開放された小型(例えば直径が37mmで厚さが7.2mm程度)の椀状であり、上部にリセットスイッチ7が設けられている。外装ケース2の内面には、3つの環境センサー、すなわち、外気温センサー8と気圧センサー9と湿度センサー10が取り付けられている。そして、中空の外装ケース2の内部に、通信用のチップアンテナ11と、傾斜センサー12と、電池3(例えばボタン型リチウム電池)と、電池ホルダー13と、メイン基板4と、電磁波遮蔽板14と、通気性保護カバー15が順番に挿入されている。そして、センサー基板5および通気性保護カバー15が、外装ケース2の蓋をするように固定されている。後者の通気性保護カバー15の外側面には、部分的に開口部6Aが設けられた両面テープ6が貼着されている。なお、この説明において、「内側」とは外装ケース2の内部側(図1上側)を指し、「外側」とは外装ケース2の開口した底部側(図1下側)を指す。
前記した生体情報センサーモジュール1の各部材についてそれぞれ説明する。本実施形態では、センサー基板5に、3つの生体情報センサー、すなわち、温度センサー16と、耐水性マイクロフォンである心拍計17と、血圧および脈拍センサー18(例えば特開平7−88090号公報に記載された発明を応用した構成の光学式センサーなど)が搭載されている。
これらの生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)のそれぞれの検知部は、センサー基板5の図示しない開口部を介して、外側面(図1の下面)に露出している。温度センサー16の内側面(図1の上面)は、メイン基板4の電子回路等から熱的に遮蔽するために、断熱材19によって封止されている。センサー基板5の外側面には通気性保護カバー15が貼着され、さらにその外側には前記した通り両面テープ6が貼着されているが、通気性保護カバー15の開口部15Aと両面テープ6の開口部6aを介して、各生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)のそれぞれの検知部は外側に露出している(図4参照)。
各生体情報センサーとしては、前記した例に限られず、従来公知のあらゆる構成のものが採用できるため、ここでは詳述しない。好ましくは、各生体情報センサーは、できるだけ低消費電力で、小型および軽量で、電池3により駆動されて高精度かつ長寿命で各生体情報の検知が行えるものである。
センサー基板5の内側に重ねられているメイン基板4には、計測演算部(判定手段)や制御部(CPU)やメモリ(記憶手段)等を含むメイン集積回路20と、無線通信用集積回路21と、警告手段であるバイブレーター22が実装されている。このメイン基板4の外側面には、電磁波の身体への影響を遮断するための、やや凹状に形成された金属製の電磁波遮蔽板14と、通気性保護カバー15が固着されている。メモリは、後述する様々な異常判定を行うための基準データと、生体毎に区別された識別信号を格納するとともに、カレンダー機能およびタイマー機能を有している。
メイン基板4の内側に重ねられている。電池ホルダー13は、保護カバーとしても機能するものであり、その外側面には、図示しないがアンプ等のアナログ回路が実装されている。電池ホルダー13には、電池3の電極に接触する1対の電極13a、13bが設けられている。電池ホルダー13の内側には、ボタン型の電池3が着脱自在に保持される。
電池ホルダー13および電池3の内側に設けられている傾斜センサー12は、この生体情報センサーモジュール1が装着されている被検査者の姿勢を検知するものである。この傾斜センサー12の構成について図3を参照して説明する。傾斜センサー筐体23に設けられた軸23aに、略円錐状の独楽状回転板24が回転および揺動自在に支持されている。独楽状回転板24の一部には、重心を偏心させるおもり25が固定されており、独楽状回転板24の裏面は、白黒等のグラデーションをなすように着色されている。そして、独楽状回転板24の裏面の一部に対向するように、LED(発光ダイオード)等の発光手段26と1対のフォトダイオード等の受光手段27a、27bが、傾斜センサー筐体23に固定されている。
この構成によると、この生体情報センサーモジュール1が装着されている被検査者の姿勢によって重力がかかる方向におもりが移動し、それに伴って独楽状回転板24がある角度だけ回転する。一方、発光手段26および受光手段27a、27bは傾斜センサー筐体23に移動不能に固定されており、すなわち被検査者の身体に対して相対的に移動不能に固定されている。従って、独楽状回転板24は発光手段26および受光手段27a、27bに対して相対的に回転する。発光手段26から発光して、独楽状回転板24の裏面に反射された反射光を受光手段27a、27bにて受光し、その光量を検出する。独楽状回転板24の裏面には黒色グラデーションの着色がなされているので、どの位置で反射されるかによって光量が異なる。従って、予め、独楽状回転板24のおもり25の位置とグラデーションとの相対関係をデータとして記憶しておき、そのデータを参照して、両受光手段27a、27bの検出した光量から独楽状回転板24の姿勢(回転角度)を知ることができる。
この生体情報センサーモジュール1は、身体、例えば脇の下などに装着され、被検査者が起きている場合(図7参照)と寝ている場合(図8参照)で、鉛直方向に対する生体情報センサーモジュール1の相対的な位置および姿勢が変わる。それに伴って、おもり25の位置、すなわちおもり25が取り付けられた独楽状回転板24の回転角度が変わり、さらに、独楽状回転板24の裏面の黒色グラデーション内の、発光手段26および受光手段27a、27bと対向する位置が変わる。従って、受光手段27a、27bによって検出された光量に基づいて、鉛直方向に対する独楽状回転板24の位置を知ることができ、ひいては、その生体情報センサーモジュール1が装着されている被検査者の姿勢、すなわち、起きているか寝ているかが判る。さらに、この傾斜センサー12を用いて、寝返りを打ったことを検出することもできる。なお、この傾斜センサー12による被検査者の姿勢の検知はさほど精密な検知を要求されないので、前記した構成で十分である。
外装ケース2の表面に配置されているリセットスイッチ7は、外部から操作可能な押しボタン式スイッチであり、主に、被検査者がバイブレーターの振動等の警報を停止することができる。なお、リセットスイッチ7は誤って操作されて作動することがないように、外装ケース2の内側に引っ込んだ位置に設けられている。また、リセットスイッチ7は、数秒間押圧されてはじめて作動するように電気的に設定されていてもよい。
外装ケース2内に収容されている様々な部材、具体的には、各生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)と、メイン集積回路20と、無線通信用回路21と、バイブレーター22と、傾斜センサー12と、チップアンテナ11と、各環境センサー(外気温センサー8、気圧センサー9、湿度センサー10)と、リセットスイッチ7は、フレキシブルジョイント基板28等を介して適宜に電気的に接続され、電池3の両極に接続されている電池ホルダー13の電極13a、13bとも接続されている。そして、これらの部材は、電池3から電力を得るとともに、主にメイン集積回路20のCPUによって動作が制御され、メイン集積回路20のメモリとの間でデータの書き込みや読み出しを行うことができる。電気的な回路構成などは、従来から公知である様々な構成を利用することができ、特に限定されるものではないため、ここでは詳細に説明しない。また、環境センサーの種類や構成、生体情報センサーの種類や構成は、前記した例に限定されるものではなく適宜に変更可能であり、必要に応じて様々に組み合わせた構成にすることができる。
次に、上記の生体情報センサーモジュール1によって構成する生体情報監視システムについて、図9、10を参照して説明する。
この実施形態では、前記した構成の2つの生体情報センサーモジュール1(ここでは便宜上、一方の生体情報センサーモジュールを1A、他方の生体情報センサーモジュールを1Bと示す)を用い、それを、被検査者の右半身と左半身の同様な位置(例えば脇の下)にそれぞれ、各生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)の各検知部が接触するように、両面テープ6によって貼り付ける(ステップS1)。そして、電池3から電力を供給し、メイン集積回路20のCPUが制御して、温度センサー16が体温を測定し、心拍計17が心拍を測定し、血圧および脈拍センサー18が血圧と脈拍を測定する(ステップS2)。こうして4つの生体情報(体温、心拍、血圧、および脈拍)の測定を行うとともに、傾斜センサー12によって被検査者の姿勢(立っているか寝ているか)を検知し、外気温センサー8が外気温を測定し、気圧センサー9が気圧を測定し、湿度センサー10が湿度を測定する(ステップS3)。
温度センサー16と心拍計17と血圧および脈拍センサー18によって測定された4つの生体情報(体温、心拍、血圧、および脈拍)と、環境情報(外気温、気圧、および湿度)と、被検査者の姿勢と、時刻または生体情報を監視し始めてからの経過時間とを、メイン集積回路20のメモリに記憶する(ステップS4)。そして、計測演算部において、各生体情報が正常な数値範囲に含まれているかどうかを判定する(ステップS5)。なお、体温等の生体情報を正常とみなす範囲は、被検査者が起きている場合(非安静時)と寝ている場合(安静時)とではそれぞれ別個に設定するのが望ましいので、傾斜センサー12の検知した姿勢に応じた補正が行われる。
そして同時に、測定された生体情報を、無線通信集積回路21とチップアンテナ11を用いて、2つの生体情報センサーモジュール1A、1Bの間で無線通信する(ステップS6)。一方の生体情報センサーモジュール(例えば1A)では、それ自体の内蔵する生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)によって直接測定された生体情報と、チップアンテナ11および無線通信集積回路21によって受信された、他方の生体情報センサーモジュール(例えば1B)から送信された生体情報とを比較する。そして、メイン集積回路20の計測演算部が、両方の生体情報センサーモジュール1A、1Bでそれぞれ測定された生体情報の差を求めて、その差が正常な数値範囲に含まれているかどうかを判定する(ステップS7)。
このように本実施形態では、ステップS5において、生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)が測定した生体情報自体が正常な範囲にあるかどうかを判定して身体の異常の有無を調べるのに加えて、ステップS7において、1対の生体情報センサーモジュール1A、1Bがそれぞれ装着されている身体の右半身と左半身でそれぞれ測定された生体情報の差が正常な範囲にあるかどうかを判定して身体の異常の有無を調べることも行っている。その利点については後述する。
ステップS5とステップS7の両方で正常と判定された場合には、そこで一連の検査工程は終了する。しかし、ステップS5とステップS7のいずれか一方、または両方で異常と判定された場合には、メイン集積回路20のCPUに駆動されてバイブレーター22が振動し、被検査者自身に警告を与える(ステップS8)。それと同時に、異常を知らせる信号を、無線通信集積回路21からチップアンテナ11を介して外部に向けて、無線通信によって通知する(ステップS9)。このとき、異常を知らせる信号とともに、この生体情報センサーモジュール1A、1Bが装着されている被検査者を特定するための識別信号(ID信号)を、無線通信によって通知する。被検査者の外部に設置されている電子機器であるホストコンピュータ29が、ステップS9において送られた、異常を知らせる信号とID信号を受信して、この生体情報センサーモジュール1A、1Bが装着されている被検査者の身体の異常が認識される(ステップS10)。こうして一連の検査工程は終了する。ただし、本実施形態では、長時間にわたって継続的に生体情報の監視を行うため、前記した一連の工程が間断なく連続的に繰り返される。
本実施形態のステップS8において、バイブレーター22の振動を感じて被検査者自身が自らの身体の異常を認識して、速やかに対処することができるとともに、ステップS10において、ホストコンピュータ29を管理する医者や看護士等もその被検査者の身体の異常を認識して速やかに対応することができる。
本実施形態によると、身体の右半身と左半身とで体温や脈拍等の生体情報をそれぞれ検知するため、身体の異常により身体の一部にのみ生体情報の変化が生じている場合にもその異常を認識できる可能性が高い。さらに、身体の右半身と左半身でそれぞれ生体情報を測定し、その生体情報の差が生じている場合に異常を認識するため、従来のような単なる生体情報の検知のみでは困難であった身体の異常の早期発見や予防が可能になる。
この利点について説明すると、例えば、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす初期段階では自覚症状が現れず、その後ある程度の時間が経過してから症状が現れて半身麻痺や死に至ることがある。自覚症状が現れない初期の段階においても、後に麻痺が生じる半身では、体温や脈拍や血圧等の生体情報の変化が生じているのであるが、従来のように身体の1個所のみで生体情報の検知を行っても、障害を認識できない可能性が高い。その理由は、麻痺しない方の半身のみで生体情報の検知を行っても、正常な数値の生体情報が得られるだけであることと、麻痺する方の半身のみで生体情報の検知を行っても、生体情報の数値がやや高いまたはやや低いと認識されるだけであって、正常な範囲内に含まれている場合があるからである。これに対し、本実施形態では、生体情報、例えば体温そのものは正常な範囲内であっても、右半身と左半身の体温の差を検出することによって障害を認識できる。例えば、右半身の体温が35度8分で左半身の体温が36度8分であったとすると、この体温自体はほぼ正常とみなして良い数値であるが、両半身の体温の差が1℃もあり、これは明らかに、身体の異常の発生を示していると考えられる。両半身の体温の差が例えば0.5℃以上あると、身体に異常が発生している可能性が高いと考えられる。このようなケースでは、従来のように身体の1個所のみで体温の測定を行っても異常の発見は不可能であるが、本実施形態では、他に特別な精密検査を行わなくてもこの異常が発見できる。以上の説明は体温の測定を例に挙げているが、もちろん、脈拍や血圧など、他の生体情報の検知に関しても同様のことが言える。その場合、異常であると判定する基準は、右半身と左半身の脈拍の差が7回/min以上、血圧の差が10mmHg以上とすることが好ましい。
表1に、安静時一般成人を基本とした場合の、体温、脈拍、および血圧の絶対値基準と、左右差によって異常の有無を判定する際の基準をまとめて示す。
例えば、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす虚血性疾患の初期段階においては、当人に自覚症状が現れにくく、かなり病状が進行して、危険な状況に陥る直前に異常を訴えたり、あるいは、危険な状況に陥った後に、救急搬送される事例が多い。
このように一般的に自覚症状が現れにくい初期の段階においては、1箇所のみの生体情報検査では、体温、脈拍あるいは血圧等の生体情報の絶対値がかなり異常な値を示さない限り、異常とは判定されず、そうした生体情報が異常値を示す状況では、すでに何らかの自覚症状が発生している可能性も高く、早期にしかも自覚症状がはっきりと現れる前に警告を発するという目的に照らして考えると、十分な効果が得られないことになりかねない。
これに対し、本実施形態では、生体情報、例えば、体温そのものは正常な範囲内であっても、右半身と左半身の体温の差を検出することによって異常事態を速やかに、本人が自覚症状を訴える前に認識することが可能である。
従来の生体情報センサによるモニタリングが、被検査者に危険な状況が差し迫った段階やあるいは危険な状況に陥った後に警告を発するのに対し、本実施形態では、被検査者が自覚症状を訴える以前の重大な危険が差し迫る前に、予め危険な兆候を察知して、本人や医療関係者、家族、および介護者などに警告を発することによって、被検査者の危険な状況を未然に防ぐことが可能となるものである。
そして、本実施形態では、被検査者は、ホストコンピュータ29とは無線で通信する小型の生体情報センサーモジュール1のみを身体に装着すればよいため、身体の自由を束縛されることがなく日常生活を送りながら、生体情報の監視を行うことができる。電池3によって各部材を駆動可能な限り、数日間以上に亘って常時生体情報の監視を行うことができる。特に、身体の異常が生体情報の変動として現れやすい深夜の時間帯でも監視が続けられて、異常が生じたら直ちに認識できる。さらに、本実施形態では、異常を認識したら、バイブレーター22が振動して被検査者本人に警告することができる。例えば、被検査者が就寝中に睡眠時無呼吸症候群に陥った場合でも、ごく初期の段階で異常を検知してバイブレーター22が振動することによって被検査者に注意を促すと同時に外部にも無線で知らせることができる。本実施形態の生体情報監視を行っておらず、脳卒中や心筋梗塞が起こったことに気づかずに眠り続けているとしたら手遅れになるおそれがあるが、本実施形態の生体情報監視を行っていれば、そのような危険が回避できる。またはごく初期の段階でくい止めることができる可能性が非常に高い。なお、警告手段は、前記したバイブレーター22に限定されず、ブザーなどの発音手段などであってもよい。
また、異常を認識した場合には、バイブレーター22が振動して被検査者に警告するのと同時に、無線通信によってホストコンピュータ29に異常を知らせる信号を送る。従って、ホストコンピュータ29を管理する医師や看護士等も異常の発生を直ちに知って速やかに対応することができる。なお、異常を知らせる信号とともにID信号を送ることによって、仮に複数の被検査者の生体情報を同時に監視している場合であっても、混乱することなく的確に、障害が認識された被検査者を特定することができる。すなわち、従来は、同時に多数の被検査者の生体情報を常時監視することは、管理する医師や看護士の労力が多大であるとともに、監視システムが非常に大規模になるなどして、実用上の限界があったが、本実施形態では、管理する医師や看護士の労力を大幅に緩和し、監視システムは、各被検査者の身体に直接装着される小型の生体情報センサーモジュール1と、一般的なパーソナルコンピュータであってもよいホストコンピュータ29だけで構成でき、しかもホストコンピュータ29は複数の被検査者に対して1台で対応できるので、非常に小規模である。従って、実用的な観点から見て、従来よりも非常に多数の被検査者の生体情報を同時に常時監視することが、低コストで容易に可能になる。
本実施形態では、生体情報センサー(温度センサー16、心拍計17、血圧および脈拍センサー18)が検知した生体情報などを、生体情報センサーモジュール1のメイン集積回路20のメモリに記憶させているので、このメモリに記憶されているデータを読み取ることによって、異常の有無とは関わりなく、被検査者の通常の生活における生体情報の特徴や傾向などを把握することもできる。メモリに、生体情報と対応させて時刻や環境データも記憶させておくと、分析しやすく使いやすいデータが蓄積できる。
メモリに記憶されたデータは、被検査者やその家族や介護者等と、医師や看護士等の間で共有されるので、被検査者の身体の状況について全員が共通の認識の上に立つことができる。これは、身体の障害が生じたときに、それぞれが納得のいく治療等を行うために非常に有効である。また、担当の医師が変わっても、このデータを読み取ることによって、的確な判断が可能になる。特に、本実施形態では長期間に亘って連続的に生体情報の監視を行えるため、信頼性の高いデータが得られる。これは、将来的に異常の判定に用いることができるとともに、仮に異常が発生した場合の対処法の参考とすることもできる。なお、このメモリに記憶されるデータを、無線通信によってホストコンピュータ29に送り、ホストコンピュータ29にて解析することもできる。例えば、ホストコンピュータ29の操作によって、ID信号を用いて被検査者を特定しつつ生体情報センサーモジュール1からリアルタイムで生体情報をホストコンピュータ29に取り込んで、管理者が監視することもできる。このようにリアルタイムで生体情報をホストコンピュータ29に取り込むことと、異常を認識した場合にホストコンピュータ29に異常を知らせる信号を送ることとを並行して行えるように構成することもできる。ただし、メモリには、生体情報の全てではなく、異常判定の結果だけを記憶させるようにして、構成をより簡単にすることも可能である。
本実施形態のステップS5では、生体情報センサーモジュール1が検知した生体情報に基づく異常判定を行い、ステップS7では、2つの生体情報センサーモジュール1がそれぞれ検知した生体情報の差に基づく異常判定を行っているが、これらの異常判定の基準となる閾値は、メイン集積回路16のメモリに予め記憶していてもよい。そして、その閾値を、傾斜センサー12によって検知された被検査者の姿勢(起きているか寝ているか)や、環境センサー(外気温センサー8、気圧センサー9、湿度センサー10)によって検知された外気温や気圧や湿度等によって補正するようにしてもよい。あるいは、医師や看護士等が、各被検査者の固有の特徴を反映して個別に閾値を設定して、それをホストコンピュータ29から無線通信によって、生体情報センサーモジュール1のメイン集積回路20のメモリに入力してもよい。その他にも、被検査者の個人情報、すなわち病歴や投薬情報をホストコンピュータ29から無線通信によって、生体情報センサーモジュール1のメイン集積回路20のメモリに入力してもよい。また、前記したID信号もホストコンピュータ29から無線通信によって、生体情報センサーモジュール1のメイン集積回路20のメモリに入力する構成にしてもよい。さらに、ホストコンピュータ29からの無線通信によって、生体情報センサーモジュール1のメイン集積回路20のメモリ内の様々なデータを、読み出したり、修正したり、消去したりできる構成にすることもできる。
さらに、この生体情報センサーモジュール1を、タイマー機能と連動して、投薬時間、診療時間、就寝時間、起床時間等を知らせるアラームとして用いることができる。その場合、これらのアラームとして、バイブレーター22を警告の場合とは異なるパターンで振動させてもよいが、バイブレーターとは別に、図示しないブザーやメロディ発音手段を設けてもよい。
傾斜センサー12による姿勢検知結果を、無線通信集積回路21およびチップアンテナ11からホストコンピュータ29に無線通信する構成にしてもよい。その場合、ホストコンピュータ29の管理者が、身体の異常の有無に関わらず、被検査者が起きているか寝ているか、また、寝返りを打ったかどうか、寝返りを打ったとすればその回数を知ることができる。例えば、独居老人が起きたかどうかを確認することによってその健在を簡単に知ることができる。また、寝返りの回数が身体的な特徴を表すと考えられることもあるため、その資料とすることができる。
生体情報センサーモジュール1の通信手段、すなわち、無線通信集積回路21およびチップアンテナ11は、ブルートゥース(Bluetooth)方式を採用したものであると簡便であるが、これに限定されるものではない。通信距離等を考慮した上で、特定小電力無線や微弱電波等を用いるあらゆる通信方式を採用することができる。
また、本実施形態では、無線通信集積回路21およびチップアンテナ11が、生体情報センサーモジュール1間の無線通信を行う通信手段と、生体情報センサーモジュール1とホストコンピュータ29との間の無線通信を行う、外部との通信手段とを兼ねる構成であるが、これに限定されるわけではなく、生体情報センサーモジュール1間の無線通信を行う通信手段と、生体情報センサーモジュール1とホストコンピュータ29との間の無線通信を行う、外部との通信手段とを、それぞれ異なる部材によって行う構成とすることもできる。その場合、それぞれの部材毎に、Bluetooth方式などの通信方式を適宜選択して使い分けてもよい。これは、特に、生体情報センサーモジュール1間の通信はごく近距離の通信であるのに対して、生体情報センサーモジュール1とホストコンピュータ29との間で長距離の無線通信を行う必要がある場合などに有効である。
図11に、本実施形態の生体情報監視システムを大規模な病院に展開した例を示している。すなわち、ある病室R1において、1人の被検査者に対して生体情報センサーモジュール1とホストコンピュータ29Aとからなる前記したような生体情報監視システムが構築され、他の病室R2において、複数の被検査者に対してそれぞれ装着された生体情報センサーモジュール1と1台のホストコンピュータ29Bとからなる生体情報監視システムが構築されている。そして、各ホストコンピュータ29A、29Bが、有線または無線のLANにて接続され、さらに、ナースステーションや医師の研究室等に設置されている上位のホストコンピュータ30にも接続された構成である。この場合、各病室R1、R2のホストコンピュータ29A、29Bにて、それぞれ各検査者の生体情報や異常判定結果を認識することができるととともに、上位のホストコンピュータ30によって、全ての被検査者に関する生体情報や異常判定結果を、各病室R1、R2に行くことなくナースステーションや研究室等に居ながらにして認識することができる。さらに、例えばノート型コンピュータ31をこのLANに接続することによって、その他の様々な場所でも同様に、全ての被検査者に関する生体情報や異常判定結果を認識することができる。さらに、このLANを、外部に開放されたネットワークに接続しておくと、電話線等を介してこのネットワークに接続しさえすれば、いかなる場所からでもいかなる端末からでも同様の認識が行える。ただし、このように大規模なシステムを構築する場合には、ID信号とパスワード等によって認証を行った上で換作可能にすることが好ましい。なお、病室の数やLANの構成の仕方等については全く限定されない。
図12に示すようにホストコンピュータ29の代わりに、または図9に示すようにホストコンピュータ29と並列に、携帯電子端末(PDA)33を用いることもできる。その場合、PDA33は、被検査者本人、家族や介護者、医師や看護士のうちの誰でも、携帯して容易に取り扱うことができる。そして、前記した説明ではホストコンピュータ29の機能として述べた様々な機能の全てまたは一部を、簡便なPDA33によって被検査者や家族等が、様々な場所で容易に行うことができる。ただし、この場合、ID信号とパスワード等によって認証を行った上で操作可能にすることが好ましい。
このようなPDA33の一例として、図14に示すように、被検査者の所有する携帯電話機34を用いてもよい。その場合、生体情報センサーモジュール1が異常を認識したときに、メイン集積回路20のCPUが携帯電話機34を作動させて自動的に所定の電話番号(例えば、医師や看護士や家族などの有する携帯電話機35の電話番号)に発信させ、何らかの所定の音声信号を出力させるようにすることもできる。そうすると、その電話を受けた医師や看護士や家族などが、遠方にいても、音声信号を聞いて異常の発生を直ちに知ることができる。これによると、身体の異常によって被検査者本人が倒れた場合などでも、自動的に連絡が行える。また、逆に、医師や看護士や家族などが携帯電話機34に電話をかけて何らかの信号を送ると、携帯電話機34から生体情報センサーモジュール1のメイン集積回路20のメモリに記憶されている様々なデータ(例えば検知した生体情報など)を読み出して、携帯電話機34を介して入手できるように構成することもできる。このとき、被検査者が所有している携帯電話機34がGPS内蔵型であると、被検査者の位置も同時に確認することができる。さらに、被検査者の移動経路をメモリに記憶させるなどして、トレーサビリティシステムとして用いることもできる。
もちろん、図11に示すような大規模なネットワークシステムと、図12、13に示すようなPDA33と、図14に示すような携帯電話機34等を、それぞれ任意に組み合わせて生体情報監視システムを構築することができる。
また、傾斜センサーの構成についても特に限定されない。例えば、図5に示す傾斜センサー12に代えて、図15、16に示す構成の傾斜センサー36を用いることもできる。この傾斜センサー36は、凹状部37の内面に、円をなす共通導電部38と、電気的に互いに独立した複数の独立導電部39とが設けられている。共通導電部38と各独立導電部39はいずれもくし歯状に形成されており、互い違いに配置されて、互いに接触せず導通しないように構成されている。そしてこの凹状部37上に、球状の導電体(例えば水銀滴など)40が移動自在に置かれている。従って、この傾斜センサー36が傾くと、それに伴って、球状の導電体40が凹状部37上を移動して停止する。球状の導電体40が停止した個所で共通導電部38と独立導電部39とが導電体40を介して導通し、図示しない制御部にて、どの独立導電部39が共通導電部38と導通したのかを検知することによって、導電体40の位置が判り、それに伴って、傾斜センサー36の傾斜方向が判る。なお、球状の導電体40が、異なる独立導電部39の間に位置したときには、2つの独立導電部39が共通導電部38と同時に導通していることが検知されて、導電体40の位置および傾斜センサー36の傾斜方向が判る。本発明において図3に示す傾斜センサー12に代えて用いられる場合には、傾斜センサー36の検知精度はさほど高くなくてもよいが、より高精度を要求される場合には、各独立導電部39をさらに細かく分割することによって、より精密な傾斜検知が可能になる。
以上説明した本発明の生体情報監視システムの実際の用途を以下に例示する。
[第1の用途]
本発明の第1の用途としては、前記したように体温、心拍、脈拍、血圧などの生体情報を検知することによって、身体の異常を調べることができる。これは、実際に異常の疑いがある人に対して診断することもでき、また、健康な人の生体情報を長期間継続的に検知しておいて、万一異常が発生したときに直ちに認識して早期発見および早期治療ができるように、予防医療として行うこともできる。後者に関しては、特に一人暮らしの老人や障害者など、異常が発生したときに被検査者本人が一人で対処することが困難である可能性がある場合に、前記した各実施形態で説明した通りホストコンピュータ29やPDA33や携帯電話機34への通信によって医師や看護士や家族や介護者に即座に連絡されると、非常に有効である。
また、本発明による生体情報監視は非常に簡単で低コスト化可能であるため、医師や看護士等でなくても、被検査者自身やその家族や介護者が容易に実施することができる。
特に、本発明では、身体の右半身および左半身で体温などの測定を行うため、脳卒中や心筋梗塞や肝疾患を調べる上で効果的である。また、身体の右半身および左半身で脈拍の測定を行うと、脳や心臓や内臓の疾患を調べたるのに効果的である。これは、右半身と左半身の脈拍が異なると、これらの疾患の可能性が極めて高いと考えられるからである。
[第2の用途]
本発明の第2の用途としては、前記したように体温、心拍、脈拍、血圧などの生体情報を検知することによって、その環境が身体に適しているかどうかを調べることができる。すなわち、例えば低温環境下など、好ましくない環境下に長期間いる場合に、身体に障害が出る前にその環境から脱するための目安とすることができる。例えば、登山中に、右半身と左半身における体温等の生体情報の差が正常な範囲から外れると、身体の限界を超えたとみなして登山を中止して下山するとか、高齢者が気温差の大きい室内と室外の間の移動を繰り返しているうちに、右半身と左半身における体温、脈拍、血圧等の生体情報の差が正常な範囲から外れると、脳卒中のおそれがあるとみなして移動を中止して安静にするといった利用法が考えられる。
また、過激な運動(トレーニング)を行っている最中に、右半身と左半身における脈拍等の生体情報の差が正常な範囲から外れると、身体の限界を超えたとみなして運動を中止して休むというような利用法も考えられる。さらに、様々な仕事の前またはその仕事の途中に自分の体調を把握して、仕事が遂行可能な状態であるかどうかを判断することができる。これは、長距離運転手やパイロットやスポーツ選手等に関して特に有効であると思われる。
このような用途では、医師や看護士等とはあまり縁のない健康な被検査者に対して行われる場合が比較的多いと考えられるので、被検査者本人やその家族等が気軽に実施できることが非常に効果的である。この用途においても、やはり、本発明を利用して長期間に亘る継続的な生体情報の検知が簡単に行えることが非常に効果的である。
[第3の用途]
前記した第1、2の用途とも関連するが、本発明によって、被検査者の身体の傾向を知ることができる。
例えば、何らかの障害の後のリハビリテーションにおいて、回復具合を知るために本発明を利用することができる。例えば、半身麻痺からの回復途中にある人は、両半身の体温の差が小さくなると、順調な回復途上にあることが判る。また、半身麻痺ではなくても、何らかの怪我や病気によって、身体における生体情報のバランスが狂った人は、本発明のシステムを利用して、生体情報のバランスが改善しつつあるかどうかを確認することができる。回復が思わしくない場合には、治療法を変えてもよく、様々な治療法のうちから被検査者に適した方法を調べるためにも本発明は利用できる。
まず、図17に示すように、被検査者(46歳・男性)の乳頭部の上側に、図1に示した2つの生体情報センサーモジュール1A、1Bを貼着した。生体情報センサーモジュール1A、1Bは、温度センサーを内蔵しており、また通信手段を有していて外部のコンピュータに無線により測定データを送信できるようになっている。
そして、午後7時から翌朝の7時までの間、被検査者の体温を測定し、外部のコンピュータにより監視した。その結果を図18、19に示す。なお、被検査者は午前3時20分に就寝した。
実験の結果、図18、19に示すように、左右の体温の差が0.5を超えた時間帯があり、その際に異常を知らせる警告信号が無線により送信され、コンピュータ上で確認することができた。これにより、本発明に係るシステムが生体情報の監視に有効であることが示された。
Claims (20)
- 身体の右半身と左半身とにそれぞれ装着される複数の生体情報センサーモジュールを備え、前記生体情報センサーモジュールは、生体情報を検知する生体情報センサーと、前記生体情報の無線通信が可能な通信手段とを内蔵し、前記複数の生体情報センサーモジュールのうちの少なくとも1つに、その生体情報センサーモジュール自体の前記生体情報センサーによって検知された生体情報と、前記通信手段によって受信された他の生体情報センサーモジュールからの生体情報とを比較して異常判定を行う判定手段が設けられている生体情報監視システム。
- 請求の範囲1記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーが検知する生体情報が、体温、脈拍、もしくは血圧の少なくとも1つであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲2記載の生体情報監視システムにおいて、判定手段は、右半身と左半身の体温の差が0.5℃以上となったときに異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲2記載の生体情報監視システムにおいて、判定手段は、右半身と左半身の脈拍の差が7回/min以上となったときに異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲2記載の生体情報監視システムにおいて、判定手段は、右半身と左半身の血圧の差が10mmHg以上となったときに異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲1〜5のいずれか記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールが、判定手段によって異常と判定された場合に警告を発する警告手段を有することを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲1〜5のいずれか記載の生体情報監視システムにおいて、複数の生体情報センサーモジュールの少なくとも1つに、判定手段による判定結果を無線通信によって通知可能な、外部との通信手段が設けられ、前記外部との通信手段から通知された前記判定結果を受信可能な、前記生体情報センサーモジュールの外部の電子機器を有することを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲1〜5のいずれか記載の生体情報監視システムにおいて、複数の生体情報センサーモジュールの少なくとも1つに、判定手段による判定結果もしくは生体情報センサーによって測定された生体情報の少なくともいずれか一方を記憶するメモリを備えたことを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲6記載の生体情報監視システムにおいて、複数の生体情報センサーモジュールの少なくとも1つに、判定手段による判定結果もしくは生体情報センサーによって測定された生体情報の少なくともいずれか一方を記憶するメモリを備えたことを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲7記載の生体情報監視システムにおいて、複数の生体情報センサーモジュールの少なくとも1つに、判定手段による判定結果もしくは生体情報センサーによって測定された生体情報の少なくともいずれか一方を記憶するメモリを備えたことを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲1〜5のいずれか記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送る電子機器を備え、判定手段は、前記電子機器から送られた前記データを参照して異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲6記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送る電子機器を備え、判定手段は、前記電子機器から送られた前記データを参照して異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲7記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送る電子機器を備え、判定手段は、前記電子機器から送られた前記データを参照して異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲8記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送る電子機器を備え、判定手段は、前記電子機器から送られた前記データを参照して異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲9記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送る電子機器を備え、判定手段は、前記電子機器から送られた前記データを参照して異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲10記載の生体情報監視システムにおいて、生体情報センサーモジュールに対し無線通信によってデータを送る電子機器を備え、判定手段は、前記電子機器から送られた前記データを参照して異常判定を行うものであることを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲7記載の生体情報監視システムにおいて、外部との通信手段は、判定結果とともに、生体情報センサーモジュールが装着されている生体毎に区別された識別信号を無線通信によって通知し、外部の電子機器は、前記判定結果とともに前記識別信号を読み取ることによって、前記判定結果を通知した生体を特定することを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲10記載の生体情報監視システムにおいて、外部との通信手段は、判定結果とともに、生体情報センサーモジュールが装着されている生体毎に区別された識別信号を無線通信によって通知し、外部の電子機器は、前記判定結果とともに前記識別信号を読み取ることによって、前記判定結果を通知した生体を特定することを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲13記載の生体情報監視システムにおいて、外部との通信手段は、判定結果とともに、生体情報センサーモジュールが装着されている生体毎に区別された識別信号を無線通信によって通知し、外部の電子機器は、前記判定結果とともに前記識別信号を読み取ることによって、前記判定結果を通知した生体を特定することを特徴とする生体情報監視システム。
- 請求の範囲16記載の生体情報監視システムにおいて、外部との通信手段は、判定結果とともに、生体情報センサーモジュールが装着されている生体毎に区別された識別信号を無線通信によって通知し、外部の電子機器は、前記判定結果とともに前記識別信号を読み取ることによって、前記判定結果を通知した生体を特定することを特徴とする生体情報監視システム。
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