JP3840096B2 - 耐錆性に優れた低熱膨張性シャドウマスク用Fe−Ni系合金の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーテレビブラウン管などの素材として用いられるシャドウマスク素材用Fe−Ni系合金の製造方法に関するものであり、とくに合金中のS濃度を低レベルに抑制することにより、耐錆性に優れた低熱膨張シャドウマスク用のFe−Ni系合金を製造する方法について提案する。
【0002】
【従来の技術】
従来、Fe−Ni系合金材料は、熱膨張が小さいという特性を活かし、シャドウマスク、リードフレーム、磁性材料などとして広く利用されている。なかでもシャドウマスク材やバイメタル材としては、Niを36mass%含有するFe−36Ni系合金材料が、好適に用いられている。こうしたシャドウマスク材は、2〜6mmの厚さに熱間圧延され、さらに0.1〜1mmに冷間圧延された後、エッチングが施されて製品となる。
【0003】
近年では、テレビ画面の大型化に伴い、熱膨張率のさらに小さいシャドウマスク材が求められている。その熱膨張率を小さくするためには、Fe−36Ni系合金中に含まれる微量元素を除去すればよく、具体的にはC、Si、Mn、CrおよびPなどを極力低濃度に制御することが肝要である。
【0004】
しかしながら、Fe−36Ni系合金中の微量元素を低減すると、Fe−Ni系合金板の表層部が錆やすくなるという新たな問題が発生している。この原因は、合金板の表層部にSが濃化することによるものであり、濃化したそのSが、金属イオンの溶解を促進し、錆を誘発するのである。これは、従来のFe−Ni系合金材料においては、MnによってMnSとして固着安定化されていたSが、Mn含有量の低下に伴い、Mnに取り込まれることなく、合金中に多く存在することになったことによるものと考えられる。
【0005】
そのため、低熱膨張性シャドウマスク用Fe−Ni系合金材料の製造技術については、脱硫が重要なキ−ポイントとなる。このことに対し、従来、特開平9−125210号公報では、Mnを0.1〜0.5mass%と高濃度に含有するFe−Ni系合金に対する脱硫技術を提案している。しかしながら、この技術は、Mnを0.05mass%以下の低濃度に抑えて熱膨張率を低下させたFe−Ni系合金の製造方法には適用できないという問題点があった。また、脱硫の際に用いるSiの濃度やスラグの塩基度(C/S)などの条件が規定されていないため、的確な脱硫を行うことができないという問題点もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、Mn含有量を抑えて低熱膨張率を実現してなるFe−Ni系合金の脱硫技術を確立して、耐錆性に優れた低熱膨張シャドウマスク用Fe−Ni系合金を得るための製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上掲の目的を達成すべく、Fe−Ni系合金を製造するときの、とくに精錬段階における効果的な脱硫技術について検討した結果、低熱膨張シャドウマスク用Fe−Ni系合金の精錬の際に用いるスラグの塩基度および脱酸材として用いる溶鋼中のSi濃度を適正に制御すれば、脱硫を促進させることができ、ひいては合金中のS濃度を低減でき、錆発生を抑制することができることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいて完成したものであって、その要旨構成は以下のとおりである。すなわち、本発明は、C:0.01mass%以下、Si:0.001〜0.05mass%、Mn:0.001〜0.05mass%、Cr:0.1mass%以下、P:0.005mass%以下、S:0.002mass%以下、Ni:30〜37mass%含有し、残部がFeである低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造に当たり、電気炉にて、鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑を含む主原料と、Fe−Si合金および炭粉を含む副原料とを溶解し、得られた溶湯を、AOD炉において、酸化精錬して、脱りん、脱炭を行い、その後、新たにFe−Si合金、石灰石および螢石を投入することにより、スラグ塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫することを特徴とする耐錆性に優れた低熱膨張性Fe−Ni系シャドウマスク用Fe−Ni系合金の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、C:0.01mass%以下、Si:0.001〜0.05mass%、Mn:0.001〜0.05mass%、Cr:0.1mass%以下、P:0.005mass%以下、S:0.002mass%以下、Ni:30〜37mass%含有し、残部がFeである低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造に当たり、電気炉にて、鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑を含む主原料と、Fe−Si合金および炭粉を含む副原料を溶解し、得られた溶湯を電気炉および/またはAOD炉にて、石灰石および/または螢石を投入し、スラグ塩基度CaO/SiO2を1.8〜4.5に調整して予備脱硫し、次いで、AOD炉において、酸化精錬して、脱りん、脱炭を行い、その後、新たにFe−Si合金、石灰石および螢石を投入することにより、スラグ塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫し、Sを0.002mass%以下とすることを特徴とする耐錆性に優れた低熱膨張性シャドウマスク用Fe−Ni系合金の製造方法である。
【0010】
なお、本発明に係る上記製造方法において、合金の化学成分は、上記成分組成に加えてさらに、Nb:0.01〜1.0mass%またはCo:1〜8mass%を含有することがより好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記各製造方法により得られたFe−Ni系合金の脱酸、脱硫後の溶湯を、連続鋳造もしくは普通造塊後に鍛造を施してスラブとし、このスラブを加熱炉で1150〜1300℃に加熱、均熱し、その後、常法に従って熱間圧延と冷間圧延を行うことを特徴とする耐錆性に優れた低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
発明者らの知見によれば、Fe−Ni合金溶湯中のSは、この溶湯に接するスラグ中のCaOと反応し、下記(1)式(反応が右に進行する)に従って脱硫される。この場合、この脱硫の反応を促進させる条件としては、スラグにおけるCaOの活量(aCaO)の値を大きくすること、すなわち、スラグの塩基度CaO/SiO2が大きいことが重要になる。
S+(CaO)=(CaS)+O・・・ (1)
( ):スラグ中成分 下線:溶鋼中成分
【0013】
さらに、脱硫反応は、溶湯中の酸素の活量(aO)が小さいときにも促進されることがわかった。そして、溶湯中の酸素の活量は、この酸素との親和力が大きいCやSiが、溶湯中に適量存在し、該溶湯が脱酸された状態にある場合に小さくすることができる。このような条件下において、合金溶湯とスラグの反応を通じてS濃度を下げることができる。
【0014】
次に、発明者らは、上記知見を検証するために、試験造塊を行った。まず、電気炉にて、鉄屑、ニッケル、Fe−Ni軽合金屑等の主原料ならびに、熱源としてのFe−Si合金、炭粉などの副原料を配合し、溶解した。この状態は、Si、Cの濃度がいずれも、0.1〜1mass%程度と適量存在し、脱硫に好条件であった。このとき、電気炉中には、石灰石や螢石といった造滓材も添加し、始めに、塩基度をCaO/SiO2=1.8〜4.5のスラグを調整して脱硫を試みた。この場合、前記処理は、電気炉では溶解のみとし、次のAOD炉にて実施するようにしてもよい。とくに、この処理をAOD炉で実施すると、その大きな攪拌力により、脱硫に要する時間が短縮できる。このように、電気炉あるいはAOD炉のいずれか一方、または両方にて脱硫した後、Sを含有するスラグを一旦除滓する。その後、酸素吹精することにより、脱炭、脱りん、脱Crを行うと同時に溶湯の昇温を図る。その後、取鍋内スラグを再び除滓し、新たにFe−Si合金、石灰石、螢石を投入し、塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整してから脱酸、仕上げ脱硫を行う。このようにして、Sを0.002mass%以下まで低減し、製品板に発生する錆を抑制する。
【0015】
この処理において、予備脱硫工程は、電気炉での溶解段階でのSレベルによっては、省略し、仕上げ脱硫工程のみ行っても問題はない。但し、いずれの場合も、原料としては、Sレベルの低いものを選択することが好ましい。
【0016】
なお、予備脱硫は、比較的S含有量が高い原材料を使用する場合に行い、特に限定はしないが、S含有量が0.005mass%以上の場合に実施する。この場合、予備脱硫の塩基度CaO/SiO2を1.8〜4.5と限定したが、その理由は、塩基度が1.8未満では十分な脱硫能が得られず、一方、塩基度が4.5を超えると滓化せず、除滓できないためである。
【0017】
以下、本発明に係るFe−Ni系合金の組成および精錬の条件を限定した理由を説明する。
Mn:0.001〜0.05mass%
Mnは、溶鋼の脱酸に寄与する元素として有用であるが、熱膨張率を増大させる元素でもあり、この観点から、Mnは、できるだけ低濃度にすることが望ましい。しかしながら、Mn含有量が0.001mass%未満では、溶鋼中の酸素濃度が高くなり、介在物が多くなって清浄度を悪化させる。一方、Mn含有量が0.05mass%を超えると、熱膨張率が増大し、要求特性を満足できなくなる。そこで、本発明では、Mnの含有量を0.001〜0.05mass%と定めた。この範囲内で好ましくは、0.005〜0.05mass%とする。
【0018】
Ni:30〜37mass%
Niは、熱膨張に大きく影響を及ぼす元素であり、200℃においてNi含有量が36mass%付近で熱膨張率が極小になることが知られている。Ni含有量が30mass%未満になるか、または37mass%を超えると、熱膨張率が増大し、要求特性に応えられなくなる。そのため、Niの含有量は30〜37mass%と定めた。この範囲内で好ましくは、31.0〜36.5mass%とする。
【0019】
C:0.01mass%以下
Cは、熱膨張率を増大させる元素であることから、極力低濃度に抑える必要がある。その含有量が0.01mass%を超えると熱膨張率が増大し、要求特性を満足できなくなる。そのため、Cの含有量は、0.01mass%以下に限定する。好ましくは0.008mass%以下とする。
【0020】
Si:0.001〜0.05mass%
Siは、溶鋼の脱酸に寄与する元素として有用であり、このSiを適量に制御すると、溶湯中の酸素の活量(a 0 )を小さくすることができるから、合金溶湯とスラグの反応を通じてSの濃度を下げることもできる。また、熱膨張率を増大させる元素でもあるので、この観点からは、できるだけ低濃度であることが望ましい。一方、Si含有量が0.001mass%未満では、溶鋼中の酸素濃度が高くなり、介在物が多くなって清浄度を悪化させる。さらに、Si含有量が0.05mass%を超えると、熱膨張率が増大し、要求特性を満足できなくなる。そこで、本発明では、Siの含有量を0.001〜0.05mass%と定めた。この範囲内で好ましくは、0.005〜0.05mass%とする。
【0021】
P:0.005mass%以下
Pは、熱膨張率を増大させる元素であり、この観点から、できるだけ低濃度であることが望まれる。P含有量が0.005mass%を超えると、熱膨張率が増大し、要求特性を満足できなくなる。そこで、本発明では、Pの含有量を0.005mass%以下と定めた。この範囲内で好ましくは、0.004mass%以下とする。
【0022】
S:0.002mass%以下
Sは、熱膨張率を増大させる元素であるとともに、錆の発生の要因となる元素である。この観点から、できるだけ低濃度であることが望ましい。そこで、本発明では、Sの含有量を0.002mass%以下と定めた。この範囲内で好ましくは、0.0015mass%以下とする。
【0023】
Cr:0.1mass%以下
Crは、熱膨張率を増大させる元素であり、この観点から、できるだけ低濃度にすることが望まれる。Cr含有量が、0.1mass%を超えると熱膨張率が急に増大し、要求特性を満足できなくなる。そこで、本発明では、Crの含有量を0.1mass%以下と定めた。この範囲内で好ましくは、0.09mass%以下とする。
【0024】
なお、本発明のFe−Ni合金には、上記各成分の他、必要に応じてさらに下記の成分を添加してもよい。
Nb:0.01〜1.0mass%
Nbは、これをFe−Ni合金中に添加すると、合金板の強度を向上させる効果がある。したがって、Nbは、上記の効果を発揮させるため、少なくとも0.01mass%以上の添加を必要とする。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると、熱膨張係数が増大し、要求特性を満足できなくなる。したがって、Nb含有量は、0.01〜1.0mass%と定めた。この範囲内で好ましくは、0.02〜0.5mass%の範囲とする。
【0025】
Co:1〜8mass%
Coは、これをFe−Ni合金中に添加すると、合金板の強度を向上させる効果がある。Coの含有量が1mass%未満では、十分な強度が得られず、一方、8mass%を超えると、熱膨脹率が大きくなりシャドウマスク用として適さなくなる。したがって、強度および熱膨張係数の観点から、Co含有量は1〜8mass%と定めた。この範囲内で好ましくは、2〜7mass%の範囲とする。
【0026】
本発明において、上述した成分組成のFe−Ni系合金を得るために、主原料として、鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑などを用いるとともに、副原料として、Fe−Si合金および炭粉などを用い、これらを電気炉にて溶解精製する。その後、電気炉および/またはAOD炉において、酸化精錬して脱りん、脱炭し、Fe−Si合金、石灰石あるいは螢石等を投入して、スラグの塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫を行う。
【0027】
なお、前記仕上げ脱硫の前に、予備脱硫を行ってもよい。この予備脱硫は、仕上げ脱硫と同じように、電気炉および/またはAOD炉を用いて、石灰石や螢石を投入して、スラグの塩基度CaO/SiO2を1.8〜4.5に調整して行う。
【0028】
本発明において、最終的にシャドウマスク用素材とするためには、連続鋳造スラグまたは造塊−鍛造スラグを、加熱炉で適当な均熱(1150〜1300℃)を加えて、常法に従い熱間圧延と冷間圧延ならびに必要な熱処理を加えることが望ましい。以下、本発明方法において特徴的な構成であるスラグの塩基度(予備脱硫、仕上げ脱硫)、均熱温度について、とくに詳しく説明する。
【0029】
スラグ塩基度CaO/SiO2:1.8〜4.5(予備脱硫)
スラグ塩基度CaO/SiO2は、脱硫反応の指標となる。電気炉あるいはAOD炉において行う予備脱硫は、溶鋼温度が1500〜1600℃程度と比較的低いため、CaO/SiO2比が1.8未満では、脱硫が効果的に進まず、一方、CaO/SiO2比が4.5を超えると、スラグ流動が悪くなり、除滓が不可能になる。したがって、予備脱硫において、CaO/SiO2は1.8〜4.5と定めた。
【0030】
スラグ塩基度CaO/SiO2:2〜5(仕上げ脱硫)
スラグ塩基度CaO/SiO2は、脱硫反応の指標となる。仕上げ脱硫は、予備脱硫に比べ、合金溶湯の温度が約100℃ほど高いので、CaO/SiO2比を2〜5とする。この比の値が2未満では、脱硫が効果的に進まず、一方、CaO/SiO2比が5を超えると、スラグ流動が悪くなり、除滓が不可能となる。したがって、仕上げ脱硫において、CaO/SiO2は2〜5と規定される。
【0031】
均熱温度:1150〜1300℃
鋳造されたFe−Ni合金スラブは、熱間圧延される前に加熱炉において、1150〜1300℃に加熱し、一定時間均熱することにより、低熱膨張シャドウマスク用Fe−Ni合金熱延板を製造することができる。均熱する際、均熱温度が1150℃未満では非金属介在物の延伸性が乏しく、また、1300℃を超えるとスラブが熱で変形して圧延を行うことができなくなる。したがって、均熱温度は1150〜1300℃と定めた。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明の効果をより明確なものとする。
表1に示すような成分組成のFe−Ni合金を調整し、この合金を図1に示す工程に従い、以下に示すように処理した。
(製造法1:予備脱硫無し)
電気炉にて鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑からなる主原料、ならびにFe−Si合金および炭粉といった副原料を溶解後、AOD炉において、酸化精錬し、脱りん、脱炭を行い、その後、新たにFe−Si合金、石灰石および螢石を投入し、スラグ塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫する。
(製造法2:予備脱硫有り)
電気炉にて鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑の主原料ならびにFe−Si合金、炭粉といった副原料を溶解後、電気炉およびAOD炉のいずれか一方または両方にて、石灰石および螢石を投入し、スラグ塩基度CaO/SiO2を1.8〜4.5に調整して予備脱硫を行なった。その後、AOD炉において、酸化精錬により、脱りん、脱炭を行い、新たにFe−Si合金、石灰石および螢石を投入し、スラグ塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫を行い、Sは0.002mass%以下に制御した。
【0033】
なお、生成スラグは、CaOとSiO2が主成分であり、その他、Al2O3を5mass%以下程度、MgOを10mass%以下程度含有している。この後、上記各製造方法により得られた合金を、連続鋳造機にて鋳造して、200mm厚のスラブを得た。本スラブを加熱炉にて所定の温度で均熱し、5.5mm厚まで熱間圧延を施し、引き続いて冷間圧延にて、0.65mm厚まで圧延することで、冷延板を製造した。
【0034】
発明例4、7および比較例3、4は、Sレベルの低い原料を用いることにより、上記製造法1(予備脱硫無し)により製造を行なった。その他については、すべて上記製造法2(予備脱硫有り)により製造を行った。また、上記各成分の他、発明例5ではCoを、発明例6ではNbを添加した。
【0035】
(2)評価
分析および評価は以下のとおり行った。
A.メタル組成の分析
蛍光X線分析により定量分析した。
B.スラグ組成の分析
蛍光X線分析により定量分析した。
C.錆発生の有無
屋外暴露試験を行い、目視により確認した。
【0036】
(3)結果
表1より、予備脱硫時のスラグ塩基度CaO/SiO2、Si濃度、Mn濃度および仕上げ脱硫時のスラグ塩基度CaO/SiO2が、本発明の規定範囲内であれば、S濃度を0.0018mass%以下まで減少させることができ、錆の発生も確認されなかった。一方、比較例からわかるとおり、予備脱硫のスラグ塩基度CaO/SiO2、Si濃度、Mn濃度および仕上げ脱硫時のスラグ塩基度CaO/SiO2のいずれか1つ、あるいは2つ以上の項目が本発明の規定範囲を逸脱した場合には、S濃度が0.002mass%を超えて高くなり、錆の発生を防止することができなかった。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る低熱膨張シャドウマスク用Fe−Ni合金の製造方法によれば、低Mn含有Ni−Fe系合金のS濃度を低く抑えて耐錆性を改善してなる低熱膨張シャドウマスクが安定して製造できる。また、本発明方法によれば、耐錆性に優れた低熱膨張シャドウマスク用Fe−Ni合金の薄板が、工業規模で安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造工程の一例を示す説明図である。
Claims (5)
- C:0.01mass%以下、Si:0.001〜0.05mass%、Mn:0.001〜0.05mass%、Cr:0.1mass%以下、P:0.005mass%以下、S:0.002mass%以下、Ni:30〜37mass%含有し、残部がFeである低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造に当たり、電気炉にて、鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑を含む主原料と、Fe−Si合金および炭粉を含む副原料とを溶解し、得られた溶湯を、AOD炉において、酸化精錬して、脱りん、脱炭を行い、その後、新たにFe−Si合金、石灰石および螢石を投入することにより、スラグ塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫することを特徴とする耐錆性に優れた低熱膨張性Fe−Ni系シャドウマスク用Fe−Ni系合金の製造方法。
- C:0.01mass%以下、Si:0.001〜0.05mass%、Mn:0.001〜0.05mass%、Cr:0.1mass%以下、P:0.005mass%以下、S:0.002mass%以下、Ni:30〜37mass%含有し、残部がFeである低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造に当たり、電気炉にて、鉄屑、ニッケルおよびFe−Ni系合金屑を含む主原料と、Fe−Si合金および炭粉を含む副原料を溶解し、得られた溶湯を電気炉および/またはAOD炉にて、石灰石および/または螢石を投入し、スラグ塩基度CaO/SiO2を1.8〜4.5に調整して予備脱硫し、次いで、AOD炉において、酸化精錬して、脱りん、脱炭を行い、その後、新たにFe−Si合金、石灰石および螢石を投入することにより、スラグ塩基度CaO/SiO2を2〜5に調整して脱酸、仕上げ脱硫し、Sを0.002mass%以下とすることを特徴とする耐錆性に優れた低熱膨張性シャドウマスク用Fe−Ni系合金の製造方法。
- 上記低熱膨張性Fe−Ni系合金は、さらに、Nb:0.01〜1.0mass%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造方法。
- 上記低熱膨張性Fe−Ni系合金は、さらに、Co:1〜8mass%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により得られた合金の脱酸、脱硫後の溶湯を、連続鋳造もしくは普通造塊後に鍛造を施してスラブとし、このスラブを加熱炉で1150〜1300℃に加熱、均熱し、その後、常法に従って熱間圧延と冷間圧延を行うことを特徴とする耐錆性に優れた低熱膨張性Fe−Ni系合金の製造方法。
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