JP3836338B2 - 新規微生物、およびこれを用いた油脂含有廃水処理装置 - Google Patents
新規微生物、およびこれを用いた油脂含有廃水処理装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3836338B2 JP3836338B2 JP2001188594A JP2001188594A JP3836338B2 JP 3836338 B2 JP3836338 B2 JP 3836338B2 JP 2001188594 A JP2001188594 A JP 2001188594A JP 2001188594 A JP2001188594 A JP 2001188594A JP 3836338 B2 JP3836338 B2 JP 3836338B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oil
- fat
- tank
- aeration
- containing wastewater
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02W—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
- Y02W10/00—Technologies for wastewater treatment
- Y02W10/10—Biological treatment of water, waste water, or sewage
Landscapes
- Aeration Devices For Treatment Of Activated Polluted Sludge (AREA)
- Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)
- Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Biological Treatment Of Waste Water (AREA)
- Activated Sludge Processes (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リパーゼ活性を有する新規微生物およびこれを用いた油脂含有廃水の生物学的処理装置にかかり、とくに製油工場、惣菜工場、揚げ物製菓工場、ケーキ製造工場、ハム・ソーセージ製造工場、缶詰工場、水産物加工工場、食堂・レストラン等の食品関連事業所などから排出される液状の動・植物性油脂を含む高濃度有機性廃水をリパーゼ活性を有する新規微生物で好気性生物学的処理を行う処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から微生物を用いて廃水中の有機物を処理する廃水処理方法が知られている。そのような処理方法の一例として活性汚泥法が知られている。この方法は、好気的条件下で微生物を廃水中で繁殖させ、該微生物が凝集して形成される活性汚泥が廃水中の有機物を吸着することで、微生物の持つ生化学的作用によって該有機物を酸化分解するものであり、微生物による酸化分解や微生物の繁殖を促すために、廃水に空気を吹き込み、かつ撹拌するという単純な機構が採用されている。
【0003】
しかし、例えば食品加工工場または外食産業から発生する廃水は極めて高濃度の有機物を含んでおり、従来の一般的な活性汚泥法では対処しきれない場合もあるため、各種の処理方法が提案されている(特公昭58−8313号公報、特公昭57−12436号公報、特公昭56−52636号公報等)。
【0004】
この結果、蛋白質あるいは糖類などの有機物は高濃度で存在していても比較的容易に廃水中の有機物を低濃度化することが可能である。
【0005】
ところが、脂質を多量に含む廃水を活性汚泥処理する場合には、そこに出現する細菌類は脂質、特に飽和脂肪酸を分解除去する酵素活性が弱いために、脂質の吸着の方が勝り、活性汚泥フロックの周囲に脂質が吸着して被膜となり、フロック内に酸素が移送されず酸欠となってしまうため、脂質の分解除去が阻害されてしまう。また、脂質は廃水中で水と混合しエマルジョン化するか、コロイド状で存在するか、あるいはオイルボール化しているかのいずれかであるが、別途油分のみを除去する物理化学処理を行わない場合には実質的に未処理となった油分によって処理施設が汚損されてしまうと共に、油分が処理水に混じって未処理のまま放流されてしまうという問題があった。とくに、廃水中に脂質分が高濃度に存在する場合、流入する負荷変動への対応、適正な運転管理、処理性能の確保、多量に発生する余剰汚泥の処分等が必要となり、単に維持管理上の対応では解決できなかった。そのため、近年高濃度有機性廃水の処理として、酵母等の微生物を用いた好気性処理(特開2000−246284公報等)や嫌気性細菌を用いた嫌気性処理(UASB)(特開平9−1179号公報等)が登場し採用されるようになった。
【0006】
ここで、特開2000−246284公報に開示された生物学的有機性廃水処理装置の概略的構成を簡単に説明する。図5に示すように、脂質を含む廃水は流入水としてスクリーン41を通過して酵母処理に適さない程度のサイズの固形分(夾雑物)が除かれた上で、流量調整槽42に送られる。この流量調整槽42から所定量の廃水が生物反応槽としての酵母反応槽43内に供給される。この酵母反応槽43には槽内のpHを測定するセンサ(図示せず)が取り付けられており、そのpHセンサの測定値に応じて槽内のpHを脂質資化性酵母の最適pH3〜7とするために硫酸等の酸性薬剤が添加される。また、この酵母反応槽43には後述の加圧浮上手段44で固液分離された酵母のうち、再度廃水処理に用いるための酵母をリサイクルするための返送経路およびポンプ(図示せず)が加圧浮上手段44との間に設けられている。上記酵母反応槽43内で一定の滞留時間、酵母により脂質分解処理を受けた廃水(混合液)は加圧浮上手段44に送られ、固液分離を受ける。固液分離により得られた処理水(液体)は処理水槽45に送られ、酵母汚泥(固形分)の一部は上述したように酵母反応槽43に戻され、残りは余剰酵母として汚泥処理系に送られる。処理水槽45内の処理水は放流先の水質基準などに応じて後処理として活性汚泥処理などの一般的な廃水処理を施すことが可能である。
【0007】
一方、特開平9−1179号公報は、有機性廃水に含まれる固形分を可溶化処理することによって、接触効率が良好で負荷が大きくとれる上向流嫌気性汚泥床処理装置(UASB)を用いて処理することが可能な高濃度有機性廃水の嫌気性消化処理方法およびそのための処理装置が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の微生物による廃水処理装置および方法は以上のように構成されているので、以下のような解決すべき課題を有する。
【0009】
すなわち、酵母等の微生物を用いた好気性処理においては、利用する微生物が中温菌である場合が殆どであることから、廃水の水温が中温(常温:概ね10〜30℃)での処理となる。そのため、以下のような解決すべき課題がある。
【0010】
冬季などの低水温時には廃水中に高濃度に含まれる油脂が固形化し易く、油脂の除去が不十分となり処理水質が悪化する。
【0011】
逆に、夏季などの高水温時には、高濃度有機物廃水中に含まれる有機物の生物分解反応による発熱も加わり水温が上昇し、温度制御装置が設置されている場合を除き、生物反応槽では油脂の固形化は起こらないが、槽内に常在する微生物(中温菌)の活性が抑えられ、結果的に生物処理性能が不良となり処理水質が悪化する。
【0012】
また、UASBを用いた従来の嫌気性処理においては、以下のような解決すべき課題がある。
【0013】
嫌気性菌およびメタン菌が混在するグラニュールが形成され、高温もしくは中温で処理を行うため、反応槽では油脂の固形化は起こらないが、何れも難分解性の油脂を高濃度に含有する有機性廃水を十分に分解資化することが難しい。そのため、処理性能が不安定となる。
【0014】
嫌気性処理で高濃度有機物廃水を十分に処理させるには、長い滞留時間を必要とするため、処理装置が大きくなり建設コストや運転経費が増大し、運転管理や維持管理が煩雑となる。
【0015】
十分に処理された嫌気性処理水といえども、そのまま直接河川等に放流すると放流先の環境に影響を及ぼす可能性があるため、別途好気的な処理を行う必要がある。
【0016】
そのため、上記問題を解決し、高濃度有機性廃水中に含まれる油脂が液体の状態で存在し得る高温下で、この油脂を直接微生物処理することを可能とする新規微生物の探索、さらに該新規微生物を利用した油脂含有廃水の生物学的処理装置を提供することが求められている。
【0017】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、油脂を含有する高濃度有機性廃水を処理可能とするリパーゼ活性を有し、かつ高温耐性の新規の微生物を提供することを目的とする。また、このような新規の微生物を用いて、高濃度の有機性廃水中に含まれる油脂を固化させることなく液体状あるいはエマルジョンの状態で反応槽内へ導入し、好気的に安定して効率よく油脂を分解する油脂含有廃水処理装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高濃度有機性廃水処理において有機物質の分解に有用であり、運動性を有し、棹菌の形態を呈する好気性細菌であって、且つ膵リパーゼよりも高いリパーゼ活性を有し、かつ例えば55℃においても生育可能な高温性を有すると共に、通常温度(例えば25℃においても)でも生育できる新規のバチルス・スピーシズB−3(寄託番号:FERM BP−7509)およびラルストニア・ピケッティB−4(寄託番号:FERM BP−7510)を提供する。また、本発明はこれら新規の微生物を用いた油脂含有廃水処理装置を提供する。
【0019】
1.探索
はじめに、本発明に係る新規バチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4の探索について説明する。
【0020】
高濃度有機性廃水として、植物性油脂の一つであるパーム油を含むパーム搾油工場廃水(Palm Oil Mill Effluent以下、POMEという)を用意した。次に、このPOMEを生物反応槽に入れて50℃で馴養した。その後、生物反応槽から混合液を所定量(100ml)採取してから直接白金耳で標準寒天培地(NA)およびブロモクレゾールパープル(BCP)寒天培地に画線し、それぞれ46、48、50℃にて3〜5日間、静置培養した。形成されたコロニーを同条件でさらに2回継代培養を行った。次にこのコロニーについて、油脂分解資化性能の有無を検討した(コロニーを形成した菌株が、油脂分解資化能を有するものとみなす)。すなわち、0.5%の粗パーム油を唯一炭素源としたBCP寒天培地に塗沫し、さらに46℃乃至50℃にて3〜5日間静置培養した。培養後、BCP寒天培地上に生じたコロニーを採取し、最終的に細菌2株を分離することができた。これらの細菌株は、それぞれB−3およびBー4とし、後述する菌学的性質の検討に供した。
【0021】
なお、上記の標準寒天培地(NA)の組成は、酵母エキス:2.5g ペプトン:5.0g グルコース:1.0g 寒天:15.0g (培地1L中;pH7.0)とした。また、BCP寒天培地の組成は、粗パーム油:5.0g ペプトン:0.5g 酵母エキス:1.0g BCP(ブロモクレゾールパープル):0.06g アデカノール TS−910:0.1g 寒天:15.0g (培地1L中;pH7.0)とした。さらに、同定試験に使用した培地としては、BTBを添加した培地は、試験する糖:2% 酵母エキス:4.5g ペプトン:7.5g (培地1L中;pH7.0)、OF培地(栄研化学製)等を使用した。リパーゼ産生用培地としては、バチルス属用培地は、ペプトン:10g イースト:5gグルコース:3g グリセロール:15g NaCl:3g (培地1L中; pH7.0)、ラルストニア属用培地は、プロテオースペプトン:20g イースト:2.5g 肉エキス:5g グルコース:5g グリセロール:10g NaCl:3g(培地1L中;pH7.2)。培養は、好気条件下で行うことができ、基本的に液体培養でも固体培養でもよい。
【0022】
以下に説明するように、菌学的性質の検討結果から、それぞれ好気性細菌であるバチルス属およびラルストニア属の新規な菌株であることがわかり、上記B−3およびB−4を、後述するようにバチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4とした。次にこのようにして得られたバチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4が新規微生物である根拠について説明する。
【0023】
2.菌学的性質
本発明で新たに取得された菌株の菌学的性質を表1にまとめる。
【0024】
【表1】
【0025】
A.バチルス・スピーシズB−3
(1)形態的性質
コロニー性状について、コロニーの形態:丸形であり、均一で滑らか、光沢がある。直径1mmより大きく点状、半透明で、色調はクリーム色。細胞性状について、グラム染色性:陽性、細胞の形態:桿菌、芽胞形成能:有り、運動性:有り。
【0026】
(2)生育温度
生育温度:20℃〜60℃
【0027】
(3)生理的性質
好気性、嫌気性の区別:好気性、嫌気性での生育:陰性、カタラーゼ:陽性、耐塩性試験NaCl 0%〜7%:陽性、β−ガラクトシダーゼ:陽性、アルギニンジヒドラーゼ:陽性、リジンデカルボキシラーゼ:陰性、オルニチンデカルボキシラーゼ:陰性、クエン酸の利用性:陽性、硫化水素産生:陰性、ウレアーゼ:陰性、トリプトファンデアミナーゼ:陰性、インドール産生:陰性、アセトイン産生:陽性、ゼラチナーゼ:陽性、グルコース酸化:陽性、D−マンニトール酸化:陽性、イノシット酸化:陽性、D−ソルビトール酸化:陽性、L−ラムノース酸化:陰性、サッカロース酸化:陽性、D−メリビオース酸化:陰性、D−アミグダリン酸化:陽性、L−アラビノース酸化:陰性、硝酸塩の還元:陽性、リパーゼ:陽性。以上の菌学的生化学的性質を有することにより、本発明の菌株は、バチルス属に属する菌株であって、以下に説明するようなリパーゼ活性を有するとともに他のバチルス属の菌株よりも高温で生育可能であることから新規の菌株と同定され、バチルス・スピーシズ(Bacillus sp.)に属せしめることが適当であると認められた。なお、本明細書ではこの新規菌株をバチルス・スピーシズB−3と称す。
【0028】
B.ラルストニア・ピケッティB−4
(1)形態的性質
コロニー性状について、コロニーの形態:丸形であり、不均一で凹凸があり、光沢がある。直径1mmより大きく点状、半透明で、色調はクリーム色。細胞性状について、グラム染色性:陰性、細胞の形態:桿菌、芽胞形成能:無し、運動性:有り。
【0029】
(2)生育温度
生育温度:20℃〜60℃
【0030】
(3)生理的性質
嫌気性での生育:陰性、カタラーゼ:陽性、オキシダーゼ:陽性、耐塩性試験NaCl 0%〜4%:陽性、OF試験:酸化、硝酸塩の還元:陰性、インドール産生:陰性、グルコース酸性化:陰性、アルギニンジヒドラーゼ:陰性、ウレアーゼ:陰性、β−グルコシダーゼ:陰性、プロテアーゼ:陰性、β−ガラクトシダーゼ:陰性、グルコース同化:陽性、L−アラビノース同化:陰性、D−マンノース同化:陰性、D−マンニトール同化:陰性、N−アセチルーD−グルコサミン同化:陰性、マルトース同化:陰性、グルコン酸カリウム同化:陰性、n−カプリン酸同化:陰性、アジピン酸同化:陽性、dl−リンゴ酸同化:陰性、クエン酸ナトリウム同化:陽性、酢酸フェニル同化:陰性、リパーゼ:陽性。以上の菌学的性質を有することにより、ラルストニア属に属する菌株であって、以下に説明するようなリパーゼ活性を有するとともに他のラルストニア属の菌株よりも高温で生育可能であることから新規の菌株と同定され、ラルストニア・スピーシズ(Ralstonia sp.)に属せしめることが適当であると認められた。なお、本明細書ではこの新規菌株をラルストニア・ピケッティB−4と称す。また、このようなラルストニア属の菌種はBERGEY’S MANUAL(Vol. 1, 2 1986)では、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に分類されていた菌種である。
【0031】
上記菌株の同定に際して、バチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4についてのリパーゼ活性の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0032】
表2
試料 リパーゼ活性(U/L)
バチルス・スピーシズB−3 2,656
ラルストニア・ピケッティB−4 741
膵リパーゼ 238
【0033】
表2に示すように、バチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4は、それぞれ膵リパーゼ活性値よりも高い値を示すことから、リパーゼ活性を有することが確認でき、バチルス・スピーシズB−3のリパーゼは、菌体外酵素であった。
【0034】
バチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピッケティB−4は、当業者に周知の一般栄養培地であるならばいかなる培地でも良好に生育する。炭素源としては本菌が同化し得るものなら何でも良い。窒素源としてはペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキスなどの有機窒素源を利用することができる。また、培地はpHを2.0〜12.0、好ましくは4.0〜9.0、より好ましくは5.0〜8.0の範囲内に調整し、滅菌して使用する。培養温度は、バチルス属およびラルストニア属の菌が生育し得る温度であれば良く、20〜60℃、好ましくは35〜55℃である。
【0035】
なお、本菌を自然に、もしくは遺伝子組み換え、放射線処理、薬品処理等の人工的手段によって変異させて得られる変異株であっても、良好なリパーゼ活性と高温性とを合わせ持つものであるならば本発明に包含されるものとする。
【0036】
3.微生物の寄託
本菌は、経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に平成13年3月15日に寄託され、その寄託番号はバチルス・スピーシズB−3がFERMBP−7509、ラルストニア・ピケッティB−4がFERM BP−7510である。
【0037】
つぎに、本発明にもとづく油脂含有廃水処理装置は新規の高温耐性油脂資化細菌を用いる。
【0038】
一般に高温性微生物の内性呼吸速度は中温性微生物(常温菌)と比較して非常に大きいと言われている。高温性微生物にとって、より高い連続的なエネルギー要求性があり、また反面、より高頻度で微生物学的な衰退がある。これらの事実によって、高温処理系では、中温処理系よりも余剰汚泥量が減るため、汚泥処分費の節約につながる。
【0039】
混合液の温度が高温であるということは、培養液中の好気性微生物への酸素供給が困難となることが予想される。一般的に、水中の酸素飽和濃度は、水温が上昇するに従って、低下する(清水水温が25℃の場合、酸素飽和濃度が8.3mg/Lに対して、60℃の場合、酸素飽和濃度が4.6mg/L)。しかしながら、その酸素拡散係数は、水温を上げるに従って高まる(25℃の場合、2.5x10−5cm2/秒。これに対して、60℃の場合、6.1x10−5cm2/秒)。それ故、高温下での酸素移動速度は、中温下での場合と同等か、それよりも高いことになる。つまり、混合液中への酸素供給手段として、混合液中の溶存酸素量(DO)をある程度確保出来れば、空気曝気でも、純酸素でも良いこととなる。純酸素を用いた場合、酸素の使用量を十分考慮する必要がある。
【0040】
また、混合液の温度が高温であるということは、今まで知られている数多くの中温性の病原微生物を死滅させたり、生物にとって有害な物質が高温下に暴露されることによって、その毒性が弱まったり無毒化したりする可能性があり、従来のような、処理水を塩素滅菌する必要がなくなることも期待される。
【0041】
さらに、混合液の温度が高温であるということは、液体の粘度を下げることとなり、汚泥沈降性が良くなり、固液分離性の向上が期待されることから、生物反応槽内の微生物量(汚泥量)を高く(高混合液濃度)維持することができ、これにより反応槽では有機物負荷を下げて運転することが可能となり、効率よく有機物も分解、除去できる。つまり、高温耐性好気性微生物による有機性廃水処理は、標準活性汚泥法のような中温性微生物による処理と比較して、運転維持管理上のみならず環境衛生管理上、より利点が多いこととなるわけである。
【0042】
以下、本発明にもとづく新規微生物がどのような点で有用であるかを具体的に説明するために、本発明のバチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4を用いた油脂含有廃水処理装置を実施例として説明する。
【0043】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明にもとづく新規微生物を用いた油脂含有廃水処理装置について説明する。
【0044】
まず、本発明にもとづく新規微生物を用いた油脂含有廃水処理装置がとりうる基本的構成を簡単に説明する。
【0045】
図1は、本発明にもとづく油脂含有廃水処理装置の基本的構成例を説明するためのもので、(a)乃至(f)はそれぞれ異なる構成例を示すブロック図である。図1において、2は流入水中に含まれる夾雑物の除去を行うためのスクリーン、3は流入水の流動変動を緩和するための流量調整槽で、内部には流入水の沈降分離を防ぐため、散気または機械的撹拌を行うための手段が設けられている。4aは押し出し流れ式反応槽(油脂分解槽)であり、浮遊汚泥のみ、または浮遊型担持体の投入、または接触濾材の設置を行う。浮遊型担持体の投入または接触ろ材の設置を行うことで、反応槽内に汚泥量を確保しながら、浮遊汚泥濃度を減らすことが可能となり、後段の沈殿槽における固液分離が良好となり、ひいては処理水の改善が図れる。4bは回分式の反応槽(油脂分解槽)であり、反応槽を回分式とすることで、流量調整槽を不要または削減することが可能となる。また、反応槽内の曝気を停止して混合液を静置沈降させ固液分離することが可能となるので、固液分離装置が不要となる。5は固体成分と液体成分とを分離するための固液分離装置である。10は、流入水中の懸濁物質を除去し、後段の油脂分解処理を容易にする目的から設置される前処理設備であり、具体的には加圧浮上装置、遠心分離機、ろ過装置等を単独または組み合わせて用いる。
【0046】
本発明の油脂含有廃水処理装置は、高濃度の有機性廃水中に含まれる油脂を固化させることなく液体状あるいはエマルジョンの状態で上記の油脂分解槽4a、4bに導入することで、油脂分解槽4a、4bに含まれる微生物の働きによって好気的に安定して効率よく油脂を分解するものである。そのため、油脂分解槽4a、4bの状態は、以下のようにすることが望まれる。
【0047】
すなわち、油脂分解槽4a、4b内の水温は概ね20℃乃至60℃であり、好ましくは35℃乃至55℃で油脂分解反応が行われるようにする。
【0048】
油脂分解槽4a、4b内のpHは約5乃至8である。油脂分解槽4a、4bに導入される油脂を含有する有機性廃水(被処理水)のBOD濃度は概ね5,000mg/L乃至30,000mg/L(0.5〜3.0%)であり、とくに10,000mg/L以上の高濃度廃水を効率よく処理することができる。
【0049】
油脂分解槽4a、4bに導入される油脂を含有する有機性廃水(被処理水)のヘキサン抽出物質濃度が500mg/L(0.05%)以上でも良好に処理することができる。
【0050】
油脂分解槽4a、4bは、散気手段からの散気により上記微生物等が浮遊する曝気槽、または上記微生物等が担持する流動可能な担体が投入された担体投入型曝気槽、あるいは上記微生物等を担持する接触ろ材が設置された接触曝気槽であることが望ましいが、被処理水を上記微生物等の存在下で好気的に処理できる反応槽であればこれに限られるものではない。
【0051】
油脂分解槽4a、4bへは、上記有機性廃水を連続的に導入する押出し流れ式(4a)に好気性生物学的処理を行ってもよいし、あるいは上記有機性廃水を回分的に導入する回分流入式(4b)に好気性生物学的処理を行ってもよい。
【0052】
油脂分解槽4a、4bでは好気性生物学的処理を行うため散気手段から空気を供給し槽内を曝気撹拌するが、必要な酸素量等に応じて酸素濃度を高めた空気や純酸素を用いてもかまわない。なお、純酸素を用いて曝気撹拌することにより微生物処理に必要な酸素量は得られるが撹拌強度が十分に得らない場合には、撹拌装置を別途併用してもよい。
【0053】
被処理水に含まれる油脂が植物性油脂や動物性油脂である場合、とくに植物性油脂の場合において効率的に好気性生物学的処理を行うことができる。
【0054】
次に、本発明にもとづく新規微生物を用いた油脂含有廃水処理装置の一例を具体的に説明する。図1では、1つの反応槽(油脂分解槽)4aまたは4bのみを用い、必要に応じてその前段および/または後段に前処理または後処理のための手段が設けられる構成例を説明した。ここでは、2つの反応槽で生物処理する場合について説明する。
【0055】
図2は、本発明にもとづく油脂含有廃水処理装置の一例を説明するためのブロック図である。図中、2つの反応槽(油脂分解槽4および生物処理槽6)が示されている。すなわち、油脂分解槽4では、まず油脂分解資化能を有する高温耐性の細菌(バチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4)を用いて廃水中に含まれる油脂を分解資化させ、その処理水を、後段の生物処理槽6で、酵母を用いて高負荷運転で後処理する。生物処理槽6における処理は、例えば図4に示した特開2000−246284公報記載の油脂含有廃水処理装置を適用することも可能である。
【0056】
この実施例の油脂含有廃水処理装置は、いわゆる回分式の装置であり、投入原水1aに含まれる夾雑物を除去するための夾雑物除去装置2と、該夾雑物除去装置2を介して送られる投入原水1aの流入量を調節するための流量調整槽3と、空気または純酸素の送気手段および分離汚泥の排出路9が連結され、かつ流量調整槽3によって流量が調整された流入廃水に含まれる油脂成分を分解するための油脂分解槽4と、凝集剤の投入手段11および分離汚泥の排出路9と連結し、かつ該油脂分解槽4によって油脂分解処理された処理液の固液分離を行うための固液分離装置5と、空気または純酸素の送気手段8および分離汚泥の排出路と連結し、かつ酵母等の微生物による有機物分解処理を行う生物処理槽6とから概略構成される。
【0057】
このような構成からなる油脂含有廃水処理装置は、以下のように動作する。すなわち、POME1aは、投入原水として、夾雑物除去装置であるスクリーン2を通過し、廃水成分以外の処理に適さない程度のサイズの固形分(夾雑物)が除かれた上で、流路1bを経由して流量調整槽3へ移送され、ここで均質化が図られる。次に、流路1cを経由して流量調整槽3から一定量の均質化した廃水が、高温耐性油脂資化細菌(すなわちバチルス・スピーシズB−3および/またはラルストニア・ピケッティB−4)からなる汚泥を含む油脂分解槽4内に流入水として供給される。ここで、油脂分解槽4への流入水供給方式は、流入水を1ヶ所から投入する方法と数カ所から分割投入するいわゆるステップ流入する方法とがあり、どちらを選択しても良い。油脂分解槽4では、高温耐性油脂資化細菌を用いた高温、空気または純酸素曝気を含む好気法による高濃度有機性廃水処理が行われる。そのため、送気手段8から油脂分解槽4へ所定量の空気または純酸素が供給される。高温耐性油脂資化細菌による油脂分解によって得られた処理液は流路1dを経由して固液分離装置5にて固液分離される。ここで得られた分離液(処理水)は、さらに流路1eを経由して反応槽である酵母等の微生物が含まれる生物処理槽6へ送られる。ここで、分離液は送気手段8から送られる空気または純酸素を利用して好気的に処理される。また、固液分離装置5等で分離した汚泥の一部である分離汚泥(返送汚泥)は、それぞれ排出手段9を経由して再び反応槽に送られ、また残部の汚泥(余剰汚泥)は汚泥処理設備(不図示)へ移送される。最終放流先に既存の嫌気性ポンドあるいは好気性ポンド(酸化池)があった場合、排出手段9による余剰汚泥の引抜を省略して余剰汚泥を上記ポンドへ移送することもあるので汚泥処理設備を省略することもできる。なお、油脂含有廃水処理装置による処理水は、そのまま公共水域へ放流されるか、または上述した生物処理(生物処理槽、図示)や物理化学処理(不図示)等を用いた後段の処理設備で処理される。
【0058】
図3は、図2に示す油脂含有廃水処理装置においてスクリーン2と流量調整槽3との間に、新たに加圧浮上装置10を設けた場合を説明するためのブロック図である。スクリーン2を通過して流路1fを経由して送られる廃水に凝集剤を凝集剤添加手段11から添加した後に加圧浮上装置10内に廃水を貯留する。所定量貯留後、空気または窒素リッチガスを送気手段12から加圧浮上装置10内に注入することで、該加圧浮上装置10内を加圧状態にする。送気手段12から送られた空気または窒素ガスと廃水とを十分に接触・混和させ、しばらく放置する。放置後、廃水は少なくともフロス部、中間水、および汚泥堆積部(デポジット)の3層に分かれる。フロス部は油分排出手段13によって油分回収系(不図示)へ、汚泥堆積部は排出手段9によって排出される。中間水は、流路1bを経由して流量調整槽3に移送され、さらに油脂分解槽4へと送られ、図2に示す油脂含有廃水処理装置と同様の構成要素によって処理される。
【0059】
図4は、POME処理水中のヘキサン抽出物質除去率の経日変化を示すグラフである。すなわち、図4に示すような油脂含有廃水処理装置を用いて実際に有機性廃水処理を行った一例である。なお、ヘキサン抽出物質除去率は、本発明にもとづく油脂含有廃水処理装置の処理能力を評価するためのものである。また、以下の説明では経時的変化を実際の日時を用いて表す。
【0060】
投入原水として、POMEから得られた廃水を加圧浮上装置(前処理装置)10を用いて加圧浮上処理させ、廃水中の夾雑物を除去したものを投入原水として使用した。なぜなら、投入原水中の夾雑物があまりにも多ければ、混合液の正確な(生物処理に伴う)汚泥生成量が見いだされなくなり、また、不必要に反応槽内の汚泥量が増えて生物処理に支障をきたし、さらに適切な汚泥管理が不可能と予想されるからである。
【0061】
はじめに、以下のような運転条件で4ヶ月にわたり油脂含有廃水処理装置による廃水処理を行った。
【0062】
この時の運転条件を示す。油脂分解槽実容量:5L、曝気方式:純酸素のみで曝気 投入原水:夾雑物除去したPOME、投入原水量:0.2〜0.5L/d、油脂分解槽水温:60℃、油脂分解槽内pH:pH5.0以下、溶存酸素量(DO):2.0mg/L以上、生物化学的酸素要求量(BOD)容積負荷:1.1〜2.6kg/m3・d、投入原水の他に、種汚泥として、廃水経路途中にあるピット内壁と水面との接触部にて生成した汚泥50g〜100gを採取し、週に1〜2回の割合で油脂分解槽4内に投入した。
【0063】
このような運転条件下では、ヘキサン抽出物質除去率が約60%以下であった。このことは、油脂含有廃水処理装置による廃水処理が効率的になされず油脂を含む有機物の分解が不十分であることを示している。
【0064】
そこで、4月1日に、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、油脂分解槽内のpHをpH5.6以上に上昇させ、また5月4日より、油脂分解槽水温を60℃以下に下げて運転を継続したところ、ヘキサン抽出物質除去率が徐々に上昇し、最終的に90%以上を維持するようになった。また、有機物の生物分解に伴い、油脂分解槽内pHも上昇傾向にあった。さらに、5月15日以降、種汚泥の投入を中止した。5月16日から7月15日までの、処理状況が安定し良好であった時の運転結果を示すと以下の通りである。
【0065】
油脂分解槽実容量:5L 曝気方式:純酸素のみで曝気、投入原水:夾雑物除去したPOME 投入原水量:0.45〜0.5L/d、反応終了後の処理水pH:pH6.4〜9.0(pH未調整) BOD容積負荷:2.0〜3.0kg/m3・d、ヘキサン抽出物質除去率:96%以上のようになっている。
【0066】
以上説明してきたように、従来の処理装置では流入する廃水に油脂が含まれると生物化学的酸素要求量(BOD)も高くなってしまい、安定した生物処理に支障をきたした。そのため、廃水を希釈するなどの措置がとられたが、廃水希釈により処理装置の設置面積や処理時間の増大をまねき、またランニングコストが高騰するという問題が生じ、もはや効率的な生物処理を行うことができず、とくに分解されにくい廃水中の油脂は充分に分解・処理できなかった。これに対して、本実施例にもとづく新規の高温耐性油脂資化細菌を用いた油脂含有廃水の生物学的処理装置は、油脂と高温耐性油脂資化細菌とを接触させ、油脂が固形状にならない高温下で効率的に油脂を直接生物学的に分解除去できるものである。そのため、図4に示す例では、高温耐性油脂資化細菌の油脂分解資化処理に最適なpHおよび温度と、本発明にもとづく酵母による有機物分解資化処理に最適なpHおよび温度とが考慮された運転条件下で油脂含有廃水処理装置による廃水処理が効率的に行われることを示している。
【0067】
上記油脂含有廃水処理装置では、リパーゼ活性するバチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4の両方を油脂分解槽4において用いたが、どちらか一方の微生物のみを用いることも可能である。
【0068】
また、上記の新規の高温耐性油脂資化細菌を用いた油脂含有廃水の生物学的処理装置は、通常油脂分解槽に上述した微生物以外にも微生物が存在するため、それらの微生物により油脂のみならず廃水中の有機物を分解除去することができ、これにより良好な処理水を得ることができる。なお、油脂分解槽内で雑多な微生物を共存させるには、油脂分解槽内の水温や溶存酸素(DO)やpHなどの管理(=運転管理)が重要となる。
【0069】
なお、上記実施例では、投入原水をスクリーン2による夾雑物除去処理を施した後に油脂分解槽4に投入したが、これに限定されることなくスクリーン2による夾雑物処理を省くことも可能である。また、純酸素を使わずに、空気、空気と純酸素の併用、酸素濃度を高めた空気などによる曝気で高温下で有機性廃水処理してもよい。
【0070】
また、投入原水であるPOMEの水温を気温程度まで下げた後で、夾雑物除去処理したものと、夾雑物除去処理しないもので、空気曝気または純酸素曝気を行い、有機性廃水を処理することも可能である。
【0071】
さらに、投入原水を中温下や高温下において本発明の油脂含有廃水処理装置で処理を行い得られた処理水を、活性汚泥処理装置でさらに処理を行い、最終処理水のBOD濃度を20mg/Lまで下げることも可能である。
【0072】
また、油脂分解槽内に微生物を担持する担体を投入し、純酸素および/または空気曝気方式にて、POMEの連続投入を行うことも可能である。例えば、担体としては、岩石(例えば、真珠岩、珪藻土)またはその粉砕物、砂利、砂、プラスチックス、セラミックス(例えば、アルミナ、シリカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト)、タルク等、特に多孔質セラミックス、多孔質プラスチックスのような連続通気孔を有する多孔質材料が好ましいが、油脂分解槽内で曝気により流動できるものであればこれに限るものではない。
【0073】
また、処理水の夾雑物濃度を低減できない場合には、固液分離装置5および凝集剤を供給する凝集剤投入手段11を用いて処理水中の夾雑物を取り除くことができる。通常用いられる固液分離装置5としては、当業者に周知の装置、例えば真空ろ過機、加圧浮上ろ過機、遠心分離機、またはベルトプレス型脱水機を用いることも可能である。なお、凝集剤としては、塩化第二鉄や消石灰などの無機凝集剤、高分子凝集剤が用いられる。
【0074】
実施例について説明したことをここでまとめると、本実施例の油脂含有廃水処理装置は、新規の微生物であるバチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4を高温下で好気的にパーム油等の油脂を含有する高濃度有機性廃水と接触させることによって、廃水中に含まれる油脂等の有機物を効率良く、速やかに分解・除去するのみならず、中温性生物処理と比較して、高濃度混合液の固液分離性の向上、汚泥発生量の削減、加圧浮上処理したPOMEから得られたフロス部分中に高濃度に含まれるパーム油の回収、さらに加圧浮上処理したPOMEから得られた沈殿物および余剰脱水汚泥の、魚類・甲殻類の飼育用としての有効利用が期待できる。また、回分運転を実施しているので、油脂分解槽を固液分離装置(沈殿槽)として利用するため、油脂分解槽の後段に、改めて沈殿槽を設ける必要が無く、さらに固液分離性がよいため油脂分解槽内の混合液濃度を高く(10,000mg/L以上)維持して処理を行うことができるので、BOD負荷を下げた運転ができ、また、余剰汚泥を濃縮する必要がないので汚泥濃縮槽も省け、直接汚泥貯留槽にて、貯留後、汚泥脱水装置へ比較的新鮮な汚泥の状態で移送することができる。このことにより、水処理設備のみならず汚泥処理設備においてもコンパクト化がはかられ、総合的に設置面積の小さな処理装置を実現することが可能となる。またさらに、もともとPOMEのpHが約pH4と酸性側であるので、油脂分解槽内pH調整用の硫酸注入設備および高濃度有機性廃水に高頻度に発生する発泡も殆ど生じないことから、消泡剤注入設備も不要となる。病原性微生物、ウイルスおよび寄生虫卵の熱による死滅が期待されるため、次亜塩素酸ナトリウム注入設備を設ける必要がなくなる可能性があり、使用薬品量に対するランニングコストの節減、さらには、熱に不安定な毒性物質を熱により無毒化し、処理水の放流先を汚染しないといった地域環境に配慮した施設が可能である。またさらに、該微生物の産生するリパーゼの性状に着目すると、50℃以上という高水温下においても、耐性(高温耐性)を示し、pH4乃至pH6付近でも失活しなかった。少なくともバチルス・スピーシズB−3やラルストニア・ピケッティB−4の産生するリパーゼが菌体外酵素であり、高水温下でもリパーゼが産生される。将来、遺伝子工学的手法を含めた、このような酵素の多量抽出精製技術等の研究開発が進展すれば、廃水処理業界のみならず、学術的にも、また油脂の分解加工精製業界および洗剤・界面活性剤業界あるいは食品加工業界等にとっても大変貴重な生体触媒となりうる、という副次的な効果も奏する。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、新規バチルス・スピーシズB−3(寄託番号:FERM BP−7509)および/または新規ラルストニア・ピケッティB−4(寄託番号:FERM BP−7510)は生物学的処理が難しい高水温(例えば、55℃においても)下のみならず、通常の水温(例えば、25℃においても)下でも、膵リパーゼよりも高いリパーゼ活性を有し、運動性を有し、棹菌の形態を呈する微生物(好気性細菌)であることから、生物分解しにくい難分解性の油脂を含有する廃水を、とくに物理化学的処理を必要とせず、油脂を効率よく分解して生物学的に処理することが可能となる。
【0076】
この発明によれば、油脂含有廃水処理装置は、生物学的処理が難しい高水温下でもリパーゼ活性を有する微生物である新規バチルス・スピーシズB−3および/または新規ラルストニア・ピケッティB−4を用いることから、生物分解しにくい難分解性の油脂を含有する廃水を、とくに物理化学的処理を必要とせず、油脂を直接効率よく分解して生物学的に処理することが可能となる。また、高温下で油脂含有廃水を処理することができるので、油脂を固形化させずに効率よく安定して分解することができる。さらに高水温下で処理する場合、混合液の固液分離性が向上するため、油脂分解槽での混合液濃度を高く維持できるのでBOD負荷を下げて安定した処理を行うことができる。
【0077】
この発明によれば、油脂含有廃水処理装置は、油脂分解槽が好気性処理を行う曝気槽であり、空気、酸素濃度を高めた気体または純酸素を供給可能とすることで、よりいっそう好気的に安定して効率よく油脂を分解することが可能となる。
【0078】
この発明によれば、油脂含有廃水処理装置は、油脂分解槽がバチルス・スピーシズB−3およびラルストニア・ピケッティB−4の少なくとも1種を担持する浮遊担体が投入された好気性処理を行う曝気槽、またはバチルス・スピーシズBー3およびラルストニア・ピケッティB−4の少なくとも1種を担持する接触ろ材が設置され好気性処理を行う接触酸化槽であることから、微生物を安定して保持できるので、よりいっそう好気的に安定して効率よく油脂を分解することが可能となる。
【0079】
この発明によれば、油脂含有廃水処理装置は、散気手段が油脂分解槽内に空気、酸素濃度を高めた気体または純酸素を供給する曝気装置であることから、よりいっそう好気的に安定して効率よく油脂を分解することが可能となる。
【0080】
この発明によれば、油脂含有廃水処理装置は、油脂含有廃水が植物性油脂および/または動物性油脂を含有する有機性廃水であることから、高温下で油脂を液状の状態で効率よく分解することが可能であり、食品関連事業所等での生物学的油脂含有廃水処理が従来に比べて効率よく処理することが可能となる。
【0081】
この発明によれば、油脂含有廃水処理装置は、油脂分解槽によって処理された処理水に対して微生物による有機物処理を行う生物処理槽を有することで、より良好な処理水質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にもとづく油脂含有廃水処理装置の基本的構成例を説明するためのもので、図1(a)乃至図1(f)はそれぞれ異なる構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明にもとづく油脂含有廃水処理装置の一例を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示す油脂含有廃水処理装置においてスクリーン2と流量調整槽3との間に、新たに加圧浮上装置10を設けた場合を説明するためのブロック図である。
【図4】POME処理水中のヘキサン抽出物質除去率の経日変化を示すグラフである。
【図5】特開2000−246284公報に開示された油脂含有廃水処理装置の概略的構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
1a 投入原水(POME)
1b〜1f 流路
2 スクリーン(夾雑物除去装置)
3 流量調整槽
4,4a,4b 反応槽(油脂分解槽)
5 固液分離装置
6 反応槽(生物処理槽)
7 処理水
8,12 送気手段
9 排出手段
10 加圧浮上装置(前処理設備)
11 凝集剤投入手段
13 油分排出手段
Claims (6)
- 運動性を有し、棹菌の形態を呈する好気性細菌であって、25℃においても、55℃においても生育可能であり、且つ膵リパーゼよりも高いリパーゼ活性を有するバチルス・スピーシズB−3(寄託番号:FERM BP−7509)。
- 運動性を有し、棹菌の形態を呈する好気性細菌であって、25℃においても、55℃においても生育可能であり、且つ膵リパーゼよりも高いリパーゼ活性を有するラルストニア・ピケッティB−4(寄託番号:FERM BP−7510)。
- 油脂含有廃水を導入する原水導入手段と、
油脂含有廃水と
バチルス・スピーシズB−3(寄託番号:FERM BP−7509)および/またはラルストニア・ピケッティB−4(寄託番号:FERM BP−7510)とを接触させる油脂分解槽と、
該油脂分解槽を散気する散気手段と、
を備えたことを特徴とする油脂含有廃水処理装置。 - 油脂分解槽は、好気性処理を行う反応槽であって、曝気槽、微生物を坦持する浮遊坦体が投入された曝気槽、および微生物を担持する接触ろ材が設置された接触酸化槽のうちいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の油脂含有廃水処理装置。
- 散気手段は、油脂分解槽内へ空気、酸素濃度を高めた空気および純酸素ガスのうち一つ以上を供給する曝気装置であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の油脂含有廃水処理装置。
- 油脂含有廃水は、植物性油脂および/または動物性油脂を含有する有機性廃水であることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の油脂含有廃水処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001188594A JP3836338B2 (ja) | 2001-06-21 | 2001-06-21 | 新規微生物、およびこれを用いた油脂含有廃水処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001188594A JP3836338B2 (ja) | 2001-06-21 | 2001-06-21 | 新規微生物、およびこれを用いた油脂含有廃水処理装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003000228A JP2003000228A (ja) | 2003-01-07 |
JP3836338B2 true JP3836338B2 (ja) | 2006-10-25 |
Family
ID=19027668
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001188594A Expired - Fee Related JP3836338B2 (ja) | 2001-06-21 | 2001-06-21 | 新規微生物、およびこれを用いた油脂含有廃水処理装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3836338B2 (ja) |
Families Citing this family (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3588613B2 (ja) * | 2003-03-10 | 2004-11-17 | 株式会社神鋼環境ソリューション | 新規微生物及びその微生物を用いた有機性固形物の処理方法 |
JP2006181393A (ja) * | 2003-03-10 | 2006-07-13 | Ip Bio Corp | ノンスラッジ高速排水処理システム |
AU2005272378A1 (en) * | 2004-08-11 | 2006-02-16 | Tokuyama Corporation | Silicon manufacturing apparatus |
KR100794881B1 (ko) * | 2005-02-03 | 2008-01-14 | 전진태 | 돼지 등지방 및 도체지방 선발에 활용 가능한 PIK3C3 유전자 유래 DNA marker의 개발 |
JP5133311B2 (ja) * | 2009-09-03 | 2013-01-30 | 住友重機械エンバイロメント株式会社 | 生物学的排水処理方法及び生物学的排水処理装置 |
JP5807183B2 (ja) * | 2009-09-10 | 2015-11-10 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 有機排水処理方法及び余剰汚泥の発生抑制方法 |
JP5948651B2 (ja) * | 2010-12-24 | 2016-07-06 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 余剰汚泥の発生抑制方法、及び有機排水処理方法 |
JP5303060B1 (ja) * | 2012-10-11 | 2013-10-02 | 藤吉工業株式会社 | 廃水処理装置及び廃水処理方法 |
CN109761439B (zh) * | 2019-01-23 | 2023-08-25 | 陈卫红 | 造纸污水处理设备及其处理方法 |
CN110564649B (zh) * | 2019-09-27 | 2021-05-18 | 常熟理工学院 | 一株产脂肪酶菌株及其应用 |
-
2001
- 2001-06-21 JP JP2001188594A patent/JP3836338B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003000228A (ja) | 2003-01-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5654005B2 (ja) | 排水処理方法および排水処理システム | |
KR100934600B1 (ko) | 유기물 함유 폐액의 처리 방법 | |
JP4807799B2 (ja) | 油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法 | |
JP3836338B2 (ja) | 新規微生物、およびこれを用いた油脂含有廃水処理装置 | |
WO2015119100A1 (ja) | 排水処理方法 | |
US8658411B2 (en) | Method of treating wastewater containing organic compound | |
RU2272793C2 (ru) | Способ очистки сточных вод, средство и смешанная бактериальная популяция (варианты) для его осуществления | |
CN108773912A (zh) | 一种畜禽养殖污水的菌剂处理工艺 | |
JP3432214B2 (ja) | 藻類の処理法 | |
JP3816357B2 (ja) | 新規微生物、およびこれを用いた有機性廃水処理装置 | |
JP2009072162A (ja) | リグニン含有物質の処理方法 | |
JP3450719B2 (ja) | 有機性廃水の生物学的処理方法及び装置 | |
JP3900796B2 (ja) | 有機性廃水の処理方法及びその処理装置 | |
JP3425777B2 (ja) | 食用油脂に対して分解能を示す微生物及びその使用法 | |
JPH1147789A (ja) | 油脂含有廃水の処理方法 | |
JP5425680B2 (ja) | 微生物を用いた排水処理方法 | |
JP3659840B2 (ja) | 界面活性剤含有排水の処理方法およびその装置 | |
KR100276095B1 (ko) | 바실러스 종 혼합균에 의한 하·폐수정화처리방법 및 그 장치 | |
JP2002166289A (ja) | 有機性廃水の処理方法及びその処理装置 | |
JP6157860B2 (ja) | 高濃度油含有廃水の生物処理方法 | |
KR100905487B1 (ko) | 제지 폐수의 생물학적 처리법 | |
CN116496935A (zh) | 一种红假单胞菌菌株、菌剂及其应用 | |
JP2000106866A (ja) | 米のとぎ汁を含む有機性廃水の分解菌並びに当該分解菌を利用した当該廃水の分解処理方法及び装置 | |
JP2004173697A (ja) | 新規微生物並びにそれを用いた界面活性剤含有排水の処理方法および装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060117 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060317 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060718 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060726 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090804 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110804 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110804 Year of fee payment: 5 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110804 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130804 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |