JP3835525B2 - 波長可変フィルタ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータの駆動により波長可変フィルタの光学基板間を微小間隔変位させることにより透過スペクトル特性を変化させる波長可変フィルタ制御装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、ファブリペロー型干渉フィルタにおいて、二枚の光学基板の微小間隔を変位することにより、その透過スペクトル特性を変化させることのできる波長可変フィルタが知られている(特開平8-285688号)。
【0003】
この波長可変フィルタは、200〜300オングストローム程度の厚みを有するAuなどの透光性の反射層を2枚のガラスやサファイアなどの光学基板の対向面に形成すると共に間に圧電アクチュエータを介して対向配置し、圧電アクチュエータに印加する駆動電源を変えることで、基板間隔を微小間隔変位させることができる。
【0004】
この波長可変フィルタは、一方の光学基板からの入射光に対し、半透光性をもつ反射層間での多重反射によって生ずる干渉作用に起因して複数の透過スペクトルピークが存在するような透過特性を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の波長可変フィルタは、例えば可視画像を扱うイメージセンサなどに使用されており、光学基板間を高度に平行に保ったまま基板間隔をビデオレートで変化させるため、アクチュエータを30Hz以上で駆動させることが求められる。
【0006】
しかしながら、従来の波長可変フィルタにあっては、光学基板の平行度は組立時の平行度を維持するに止まり、積極的に回路制御により高い平行度を実現できるものはなかった。
【0007】
また特開平9−258116号においては、光ファイバーへの応用を想定した波長可変フィルタについて、回路制御により高い平行度を実現できるようにし、また製造行程の簡略化を図るために、透明圧電膜による駆動が提案されている。
【0008】
しかしながら、透明圧電膜として使用しているBaTiO3は、中赤外線域以上において透明性を持たず、赤外線分光画像用に使用することができない問題がある。また単層の圧電膜が変化する事のできる寸法は高々1/100μmのオーダーであり、可視光および赤外線画像の撮像に使用するための波長可変フィルタとして実用化することには無理があった。またミクロンオーダーの変位を高速に与えることのできるアクチュエータとして圧電アクチュエータの使用が一般的である。
【0009】
しかしながら、圧電アクチュエータの駆動周期については、圧電膜に蓄積された電荷が昇圧回路もしくは電源回路を経由して放電されるため、数10msの時間を要してしまい、高速の駆動ができないという問題があった。
【0010】
特にイメージセンサに波長可変フィルタを応用しようとする場合、大きな開口率を要することから、光ファイバーへの応用を想定した従来の波長可変フィルタのように基板平行度を無視することはできない。またビデオレートでの波長可変フィルタ駆動も必要となり、より高速な制御回路が求められる。
【0011】
本発明は、光学基板の間隔変位に対し高い平行度を保ちながら、高速で基板間隔を変化することのできる波長可変フィルタ制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。
【0013】
本発明は、相対する片面に反射層を形成した2枚の光学基板間を微小間隔変位させる複数のアクチュエータを備えた波長可変フィルタを有し、アクチュエータの駆動により光学基板間を微小間隔変位させることにより透過スペクトル特性を変化させる波長可変フィルタ制御装置において、アクチュエータを複数箇所に均等配置し、各アクチュエータに対応して2枚の光学基板の相対する面に形成された一対の容量電極と、2枚の光学基板の間隔に依存した一対の容量電極の検出容量に基づいて光学基板の平行間隔を所定の目標間隔に維持するように各アクチュエータをフィードバック制御する制御回路とを備える。
【0014】
このように本発明は、2枚の光学基板に容量電極を形成し、基板間隔に依存した容量を検出して目標間隔を維持するようにフィードバック制御することで、波長可変フィルタをその使用中を通じて積極的に基板間隔と平行度を高精度に維持することができ、例えば特定の2波長の間での波長スペクトル特性の安定した切り替え動作が実現できる。
【0015】
波長可変フィルタ制御装置の制御回路は、光学基板に形成した一対の容量電極の容量を電圧に変換して容量検出電圧を出力する変換回路と、目標とする基板間隔に相当する目標電圧を出力する目標電圧出力部と、容量検出電圧と目標電圧とを比較して差分信号を出力する比較回路と、差分信号からアクチュエータへの駆動電圧を決定して出力する駆動制御回路とを備える。
【0016】
特にアクチュエータとして圧電アクチュエータを使用した場合には、波長可変フィルタ制御装置の制御回路は、駆動制御回路からの駆動電圧を昇圧して圧電アクチュエータに印加する昇圧回路と、昇圧回路とアクチュエータの間に、昇圧回路から出力される駆動電圧を高電位から低電位に切替えた際にアクチュエータに蓄積された電荷を放電する放電回路とを備える。
【0017】
この放電回路は、昇圧回路とアクチュエータの間に配置された電流検出抵抗と、電流検出抵抗の両端の電位を比較しアクチュエータから昇圧回路側に流れる放電電流を検出して放電の開始タイミングを出力する比較器と、比較器からの出力を受けてアクチュエータの高電位部を低電位部に落として放電させるスイッチング回路とを備える。
【0018】
このようにアクチュエータに対する駆動電圧を高電位から低電位に切替えたタイミングで放電回路を動作して強制的に放電させることで、高速でのアクチュエータの駆動が可能となり、波長可変フィルタのビデオレートでの駆動ができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による波長可変フィルタ制御装置を備えた赤外線監視カメラの内部構造を透視状態で表している。赤外線監視カメラ1はレンズユニット2に、対物レンズ2a、本発明の制御対象となる波長可変フィルタ4及び結合レンズ2bを設けており、本体側に撮像素子として例えばCCD3を設けている。
【0022】
図2は本発明による波長可変フィルタ制御装置の実施形態であり、波長可変フィルタの基本構造をその制御回路と共に示している。なお、フィルタ基本構造は、説明を分かりやすくするため、誇大して描いている。
【0023】
図2において、波長可変フィルタ4はガラスやサファイヤなどで作られた2枚の光学基板5a,5bの相対する片面に、金属や誘電体多層膜などにより反射層6a,6bを形成している。また反射層6a,6bの外側の基板面には、金属により容量電極8a,8bを形成している。光学基板5a,5bは、例えば数mm程度の厚さで形成されている。
【0024】
光学基板5a,5bは反射層6a,6bを相対するようにして、微小間隔として例えば3μm隔てて平行に配置する必要がある。このため光学基板5a,5bは、金属製のホルダ7a,7bに接着剤などにより固定されている。上側に位置するホルダ7aは開口11aを形成しており、また下側に位置するホルダ7bは開口11bを形成しており、この開口11bが波長可変フィルタ4における開口サイズを決めている。
【0025】
光学基板5a,5bを固定したホルダ7a,7bは、例えば3箇所に均等配置されたアクチュエータ9により所定間隔を隔てて平行に対向配置される。アクチュエータ9は光学基板5a,5bに形成した容量電極8a,8bの組に対応して、その近傍に設けられている。
【0026】
アクチュエータ9としては積層型の圧電アクチュエータが適しており、数十層から数百層程度の圧電体を積層することによるμmオーダの寸法変化を得ることができる。またアクチュエータ9はホルダ7a,7b間に配置されているため、光学基板5a,5bの光学フィルタとしての機能に影響を及ぼすことはない。
【0027】
制御回路10は、光学基板5a,5bに形成している容量電極8a,8bで形成される複数組のコンデンサの容量Cxに基づいて光学基板5a,5bの間隔を検出し、この基板間隔が予め設定した目標値となるように駆動電圧を変化させることで、アクチュエータ9を変位させる。
【0028】
波長可変フィルタ4は例えば光学基板5aからの入射光に対し、半透明性をもつ反射層6a,6b間での多重反射によって生ずる干渉作用に起因して複数種類のスペクトルを有する光が基板間隔に対応して選択的に光学基板5b側に透過されるようになる。
【0029】
図3は波長可変フィルタ4のスペクトル特性であり、制御回路10からアクチュエータ9に加える駆動電圧を2段階に切り替えることで基板間隔を変化させ、実線のスペクトル特性と破線のスペクトル特性を得ることができる。
【0030】
図4は本発明で使用する波長可変フィルタ4の具体的な実施形態の構造説明図である。なお図4(A)は平面図、図4(B)はX−X断面図、更に図4(C)は背面図である。
【0031】
図4において、2枚の光学基板5a,5bはホルダ7a,7bにそれぞれ接着剤などにより固定されており、このホルダ7a,7bは3か所に配置されたアクチュエータ9により例えば3μmの微小間隔を隔てて配置されている。光学基板5a,5bの対向する片面には、図2の基本構造に示したように反射層6a,6bが形成されており、例えば図4(A)の平面図のように光学基板5a側の反射層6aが内側中央に斜線部で示すように形成されている。この反射層6aの周囲のアクチュエータ9の配置位置に対応した光学基板5aの面には、3か所に分けて容量電極8aを形成している。
【0032】
光学基板5aの下側に位置する他方の光学基板5bの内面にも、反射層6aに対向して図2のように反射層6bが形成され、また3か所の容量電極8aに対応して図2のように容量電極8bが同じく3か所に分かれて形成されている。
【0033】
このように配置した容量電極間の容量から求められた基板間隔に基づいて、各々の容量に対するアクチュエータを制御することにより、目標の基板間隔を得ることができる。また均等配置された複数のアクチュエータの制御により、各々の位置で等しい基板間隔が設定されることにより、高い基板平行度も実現することができる。
【0034】
図5は図2及び図4の構造を持つ波長可変フィルタを対象とした本発明による波長可変フィルタ制御装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
【0035】
図5において、本発明による波長可変フィルタ制御装置は、交流電圧源12、波長可変フィルタ4の光学基板に形成した容量電極8a,8bにより形成される容量Cx、変換回路13、目標電圧出力部14、比較回路15、駆動制御回路16、昇圧回路17、放電回路18、及び制御負荷としてのアクチュエータ9で構成される。
【0036】
変換回路13は、波長可変フィルタ4の光学基板に設けた容量電極8a,8bによる容量Cxを直流電圧に変換する。例えば、この変換回路13の例では、容量電極8aに交流電圧源12よりサイン波を印加し、容量電極8bに現われる電圧を整流後に積分することで、容量Cxに相当する直流電圧を得ることができる。
【0037】
目標電圧出力部14は、予め求められた波長可変フィルタ4における光学基板の基板間隔と変換回路13による変換電圧の関係を記憶しておき、目標とする基板間隔に相当する目標変換電圧Vtを出力する。
【0038】
この目標電圧出力部14としては例えばパーソナルコンピュータを使用することができ、パーソナルコンピュータに波長可変フィルタ4における光学基板の間隔と基板間隔に対応した容量Cxから得られる変換電圧Vの関係を関係式あるいはテーブルデータとして記憶しておき、ここに目標とする基板間隔を設定することで対応する変換電圧を読み出し、パーソナルコンピュータのDAコンバータからアナログ信号に変換された目標変換電圧Vtを出力する。
【0039】
比較回路15は、目標変換電圧Vtと波長可変フィルタ4の容量Cxに対応して得られた変換電圧Vとの差分を出力する。駆動制御回路16は比較回路15から出力された差分信号に基づいて、アクチュエータ9に対する駆動制御電圧を例えばPI制御により求める。もちろんPI制御に限らず、微分を含んだPID制御や単純な積分のみによる制御であってもよい。
【0040】
昇圧回路17は駆動制御回路16より出力されるTTLレベルの制御信号を、アクチュエータ9の駆動電圧である数十ボルトから数百ボルトに昇圧する。例えば制御信号の電圧レベルが5Vであれば、10倍に昇圧することにより50Vの駆動電圧を得ることができ、アクチュエータ9を十分に駆動することができる。
【0041】
放電回路18は、昇圧回路17からアクチュエータ9に対する駆動電圧がオフとなったタイミングで強制的にアクチュエータ9をアースに落として放電させる回路構成を備える。即ちアクチュエータ9は昇圧回路17の内部抵抗と自分自身の容量により比較的大きな放電時定数を持っており、単に昇圧回路17の駆動電圧をオフしただけでは、例えばビデオレートでの波長可変フィルタの駆動は不可能である。
【0042】
そこで本発明にあっては、昇圧回路17とアクチュエータ9の間に放電回路18を設け、昇圧回路17からの駆動電圧が高電位から低電位に切替えられた放電開始タイミングを検出し、放電回路18でアクチュエータ9に蓄積された電荷を急速放電させる。この放電回路18によってビデオレートでの波長可変フィルタの駆動が可能となる。
【0043】
図6は図5に示した変換回路13の実施形態の回路図である。図6において、変換回路13は、CV変換部19、整流回路を構成する理想ダイオード回路20及び平滑化回路を構成する反転加算回路21で構成される。この内、理想ダイオード回路20と反転加算回路21は絶対値回路22を構成している。
【0044】
CV変換部19はオペアンプ23を備え、交流電圧源12からの例えば1KHzの正弦波電圧Vsinを、波長可変フィルタの光学基板に形成した容量電極で実現される容量Cxを通してオペアンプ23の−入力に印加している。このためオペアンプ23は、波長可変フィルタの基板間隔に対応した容量Cxに比例した振幅を持つ交流変換電圧を出力する。
【0045】
理想ダイオード回路20は、オペアンプ24、抵抗R2,R3及びダイオードD1,D2で構成され、CV変換部19より出力される変換交流電圧をダイオードD1,D2の損失を生ずることなく全波整流電圧に変換する。
【0046】
反転加算回路21はオペアンプ25、抵抗R4,R5,R6、コンデンサC1で構成され、理想ダイオード回路20より出力される全波整流電圧を平滑して直流電圧に変換し、次段の比較回路15に出力する。
【0047】
図7は図5の比較回路15及び駆動制御回路16の具体的な実施形態を示した回路図である。図7において比較回路15は、オペアンプ29、抵抗R7〜R10で構成される。オペアンプ29の−入力端子側には抵抗R9を介して目標電圧出力部14が接続されており、目標変換電圧Vtを入力する。
【0048】
端子26bには図7の変換回路から出力された変換電圧Vが加えられ、抵抗R7,R8で分圧されてオペアンプ29の+入力端子に入力する。このため比較回路15は、目標変換電圧Vtと変換電圧Vとの差分の反転電圧を差分電圧ΔVとして出力する。
【0049】
駆動制御回路16は、積分回路27と加算器として機能する差動増幅回路28で構成される。積分回路27はオペアンプ30、抵抗R11,R12及びコンデンサC2で構成され、比較回路15からの差分電圧ΔVを積分して出力する。
【0050】
差動増幅回路28は、オペアンプ31、抵抗R13〜R16で構成される。差動増幅回路28の+入力端子には比較回路15からの差分電圧ΔVが抵抗R15,R16で分圧されて入力され、これに積分回路27より出力された積分電圧を抵抗R13を介して加算することで制御電圧を端子32aに出力する。
【0051】
図8は図5の放電回路18の具体的な実施形態を示した回路図である。放電回路18は、比較器として動作するオペアンプ33,34,35及び抵抗R18〜R28、スイッチング回路を構成するトランジスタQ11で構成される。この放電回路18は昇圧回路17とアクチュエータ9との間に設けられる。
【0052】
昇圧回路17は内部抵抗R17を持っており、この内部抵抗R17は通常、10kΩ程度の値を持つことが多い。一方、圧電素子で構成されるアクチュエータ9は、μFオーダの容量C3を持っている。
【0053】
本発明の波長可変フィルタにより構成される例えば2つの異なる波長の画像の差分画像を生成する微分スペクトルイメージセンサにあっては、ビデオレートである30Hzで動作することが求められ、このため波長可変フィルタは瞬時に目標とする基板間隔に変化することが必要となる。
【0054】
ところがμFオーダの容量C3を持つアクチュエータ9は内部抵抗R17として10kΩ程度を持つ昇圧回路17に接続されているため、駆動電圧を高電圧から低電圧に変化させようとしても、アクチュエータ9は大きな時定数をもって放電することになる。
【0055】
図9(A)は本発明による放電回路18を設けていない場合の入力電圧として0Vから100Vの矩形波を入力した際のアクチュエータ駆動電圧の信号波形図である。この放電回路なしの場合には、駆動電圧を高電圧から低電圧に切替えたときから18msec後においても0Vまで電圧が低下できない。このため、ビデオレートでの波長可変フィルタの駆動を不可能としている。
【0056】
そこで本発明にあっては、アクチュエータ8の持っている容量C3を強制的にアースに落とす放電回路18を設けている。図8の放電回路18にあっては、昇圧回路17とアクチュエータ9を接続する信号線に抵抗R19を挿入接続し、この抵抗19の両端の電位を観察することでアクチュエータ9が放電状態にあるのか充電状態にあるのかを判断する。
【0057】
即ち、昇圧回路17側をa点、アクチュエータ9側をb点とすると、a点の電位はオペアンプ34で検出されて検出電圧Vaとなり、またb点の電位はオペアンプ33で検出されて検出電圧Vbとして出力される。この検出電圧Va,Vbは、比較器として動作するオペアンプ35に入力される。
【0058】
アクチュエータ9に昇圧回路17から高電圧の駆動電圧を印加する充電時にあっては、a点の電位がb点の電位より高いことからオペアンプ34の検出電圧Vaがオペアンプ33の検出電圧Vbより高く、このためオペアンプ35の出力はLレベルとなり、抵抗R28を介してトランジスタQ11をオフしている。
【0059】
昇圧回路17から出力している駆動電圧を低電圧に切替えると、アクチュエータ9の容量C3から昇圧回路17の内部抵抗R17を通って放電が開始され、このため抵抗R19のb点の電位がa点の電位より高くなる。このため、オペアンプ33の検出電圧Vbがオペアンプ34の検出電圧Vaより高くなり、オペアンプ35の出力はHレベルとなり、トランジスタQ11をオンし、アクチュエータ9の容量C3を昇圧回路17の内部抵抗R17を経由せずに抵抗R18を介してアースに接続して、急速に放電させる。
【0060】
ここでトランジスタQ11のコレクタ側に接続した抵抗R18としては、例えば2kΩ程度といった昇圧回路17の内部抵抗R17の数分の1のものを使用している。
【0061】
図9(B)は図8の放電回路18を設けた場合のアクチュエータ駆動電圧の信号波形であり、図9(A)の放電回路なしの場合の放電時間18msec以上に対し、放電回路18を設けたことによって放電時間を5msecまで短縮することができる。このため本発明の波長可変フィルタ制御装置にあっては、30Hzで基板間隔を高速切替えするビデオレートでの波長可変フィルタの駆動が実現できる。
【0062】
また本発明の波長可変フィルタ4に設けているアクチュエータ9の駆動電圧は、2つの異なる基板間隔に対応した高電圧と低電圧の印加を繰り返していくが、低電圧は必ずしも0Vとはならない。
【0063】
このため、単純に駆動目標電圧の切替タイミングに同期させて放電回路をスイッチングしてアクチュエータ9をアースに落とすことはできず、このため図8の放電回路18の実施形態に示すように、昇圧回路17とアクチュエータ9との間に設けた抵抗R19に流れる充電電流と放電電流から充放電の開始と終了を検出した放電制御が有効である。
【0064】
図10は図4の波長可変フィルタに設けている2枚の光学基板5a,5bの相対する面に形成している一対の容量電極8a,8bから外部に信号を取り出すための配線パターン構造の一実施形態の説明図である。ここで図10(A)は平面図、図10(B)は側面図、図10(C)は背面図である。
【0065】
図10において,一対の光学基板5a,5bは、その直径方向にずらして配置されることで、フィルタ蒸着領域40となる反射層の形成面、即ち基板相対面をずらした周辺部で外部に露出させ、光学基板5bにあっては図10(A)のように内側の露出した面に配線パターン36bを形成し、図10(B)のように、ここに銀ペースト38bによりワイヤ37bを接続して外部に取り出している。
【0066】
同様に光学基板5aについても、図10(C)のように直径方向にずらして露出した内側周辺部の面に配線パターン36aを形成し、銀ペースト38aにより固着することでワイヤ37aを外部に取り出している。
【0067】
このように2枚の光学基板5aを径方向にずらして露出した内側面に配線パターン36a,36bを形成し、ここに銀ペースト38a,38bによりワイヤ37a,37bを固定する構造としたことで、銀ペースト38a,38bによるワイヤ固着のためのスペースが十分に確保でき、配線取出構造によって2枚の光学基板5a,5bの内側に蒸着している反射層の微小な間隔を保持したまま外部に配線を取り出すことができる。
【0068】
なお図10にあっては、配線パターン36a,36bとして一対のパターンを示しているが、実際には図4のように各光学基板5a,5bにつき3つの容量電極8a,8bを持つことから、少なくとも3つの配線パターンが取り出される。また図4の実施形態にあっては、光学基板5a,5bの中央に配置している反射層6aについても容量電極として利用していることから、ここからも配線パターンが取り出され、合計4つの配線パターンが形成されることになる。
【0069】
図11は波長可変フィルタにおける配線取出構造の他の実施形態であり、この実施形態にあっては2枚の光学基板の周辺部の各々に切欠を設けることにより配線パターンを外部に取り出すようにしたことを特徴とする。
【0070】
図11(A)において、光学基板5aの左側の周辺部は切欠部41aのように切り欠かれ、ここに反対側に位置する光学基板5bの内側の面を露出させ、そこに配線パターン36bを形成し、図11(B)のように銀ペースト38bにより固着したワイヤ37bを外部に取り出している。
【0071】
同様に、図11(C)のように光学基板5bは図11(A)の切欠部41aの反対側で切欠部41bとなるように切り欠かれ、ここに光学基板5aの内側の面を露出させている。この露出面には配線パターン36aが形成され、図11(B)のように銀ペースト38aにより固着されたワイヤ37aが外部に取り出されている。
【0072】
このような切欠部41a,41bを設けた配線取出構造にあっては、2枚の光学基板5a,5bの中心を合わせた形で内面に反射層を形成したフィルタ蒸着領域40が設けられることとなり、図10の光学基板をずらした場合に比べフォルダに対する取付構造が簡単にできる。
【0073】
図12は波長可変フィルタにおける配線取出構造の他の実施形態であり、この実施形態にあっては2枚の光学基板の周辺部合わせ面の各々に切欠を設けることにより配線パターンを外部に取り出すようにしたことを特徴とする。
【0074】
図12(A)(B)において、光学基板5aの左側の周辺部合わせ面は切欠部42aのように切り欠いて光学基板5bの合わせ面を露出させ、ここに配線パターン36bを形成し、銀ペースト38bにより固着したワイヤ37bを外部に取り出している。
【0075】
同様に、図12(A)(C)のように光学基板5bは図12(A)の切欠部42aの反対側合わせ面で切欠部42bのように切り欠いて光学基板5aの合わせ面を露出させ、ここに配線パターン36aを形成し、銀ペースト38aにより固着されたワイヤ37aを外部に取り出されている。
【0076】
このような光学基板5a,5bの合わせ面に切欠部42a,42bを設けた配線取出構造にあっては、配線パターン36a,36bに対するワイヤ37a,37bの接続部分が外部に露出せず、湿度などの外気の影響による劣化を受けにくい。
【0077】
図13は本発明における波長可変フィルタの配線取出構造の他の実施形態であり、この実施形態にあっては2枚の光学基板の内側の合せ面の周辺部に環状の切欠を形成するようにしたことを特徴とする。
【0078】
図13(B)から明らかなように光学基板5a,5bのそれぞれはフィルタ蒸着領域40となる内側の反射層の形成面の周辺部に環状段差43a,43bを形成しており、この環状段差43a,43bの部分に図13(A)(C)のように、それぞれ配線パターン36a,36bを形成し、銀ペースト38a,38bにより固着したワイヤ37a,37bを外部に取り出している。
【0079】
この実施形態にあっては、光学基板5a,5bの合せ面周辺部を削って環状段差43a,43bを形成するという簡単な加工で、光学基板に形成した反射層の微小間隔に影響が出ないようにしている。
【0080】
図14は本発明の波長可変フィルタにおける配線取出構造の他の実施形態であり、この実施形態にあっては相対面に形成している容量電極からの配線パターン36a,36bを光学基板5a,5bの周側面まで延長して形成し、この周側面の部分でワイヤ37a,37bを銀ペースト38a,38bにより固着して外部に取り出している。この場合にも微小な光学基板5a,5bの間隔を保持したまま容量電極からの配線を外部に取り出すことができる。
【0081】
ここで図10〜図14の配線取出構造にあっては、図4のように形成した容量電極8a,8bからの配線パターンに対する配線取出構造を例にとるものであったが、本発明は容量電極に限定されず、光学基板の相対面に形成された他の電極に対する配線パターンについても同様の構造により外部に取り出すことができる。
【0082】
なお、上記の実施形態は図1のような赤外線監視カメラに内蔵する波長可変フィルタ制御装置を例にとるものであったが、本発明はこれに限定されず、微分イメージセンサや他の適宜の光学機械、分析機械などに使用される波長可変フィルタにつき、そのまま適用するができる。
【0083】
またアクチュエータの均等配置は,3箇所に限定されず、4箇所或いはそれ以上であっても良い。
【0084】
また、上記の実施形態では、アクチュエータはホルダ間に配置されているが、光学基板間の周囲に配置することもできる。更に本発明は上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【0085】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、波長可変フィルタにおける2枚の光学基板に対向して容量電極を形成し、基板間隔に依存した容量を検出して目標間隔を維持するようにアクチュエータをフィードバック制御することで、波長可変フィルタをその使用中を通じて積極的に基板間隔と平行度を高精度に維持できるため、波長スペクトル特性の安定した切替動作を補償して高精度の波長スペクトル特性を得ることができる。
【0086】
また昇圧回路とアクチュエータとの間に、アクチュエータからの放電を検出して強制的に放電させる放電回路を設けたことで、異なる基板間隔で繰り返し動作するためのアクチュエータに対する高電圧と低電圧の切替えに対し、高電圧から低電圧に切り替えたときのアクチュエータの放電を急速に行って基板間隔の変位を高速駆動することができ、例えば波長可変フィルタを特定の2波長でビデオレートで切替駆動するような高速駆動を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の干渉フィルタを用いた撮像装置の説明図
【図2 】本発明の波長可変フィルタの基本構造を制御装置と共に示した説明図
【図3】波長可変フィルタの基板間隔Xを変えたときの波長用スペクトルの特性図
【図4】本発明による波長可変フィルタの実施形態を示した構造説明図
【図5】図2の制御装置の実施形態を示した回路ブロック図
【図6】図5の変換回路の実施形態を示した回路図
【図7】図5の比較回路と駆動制御回路の実施形態を示した回路図
【図8】図5の放電回路の実施形態を示した回路図
【図9】図5の放電回路によるアクチュエータ駆動電圧を放電回路なしの場合と対比して示した信号波形図
【図10】光学基板をずらして配線パターンを配置した配線取出し構造の説明図
【図11】光学基板の周辺部を切り欠いて配線パターンを配置した配線取出し構造の説明図
【図12】光学基板の周辺合せ面の一部片面に段差を形成して配線パターンを配置した配線取出し構造の説明図
【図13】光学基板の周辺合せ面に環状の段差を形成して配線パターンを配置した配線取出し構造の説明図
【図14】光学基板の周側面に配線パターンを配置した配線取出し構造の説明図
【符号の説明】
1:赤外線監視カメラ
2:レンズユニット
2a:対物レンズ
2b:結像レンズ
3:CCD
4:波長可変型フィルタ
5a,5b:光学基板
6a,6b:反射層
7a,7b:ホルダ
8a,8b:容量電極
9:アクチュエータ(圧電素子)
10:制御回路
11a,11b:開口
12:交流電圧源
13:変換回路
14:目標電圧出力部
15:比較回路
16:駆動制御回路
17:昇圧回路
18:放電回路
19:CV変換部
20:理想ダイオード回路(整流回路)
21:反転加算回路
22:絶対値回路
23,24,25,29,30,31,33,34,35:オペアンプ
27:積分回路
28:差動増幅回路(加算器)
Claims (1)
- 相対する片面に反射層を形成した2枚の光学基板間を微小間隔変位させる複数のアクチュエータを備えた波長可変フィルタを有し、前記アクチュエータの駆動により前記光学基板間を微小間隔変位させることにより透過スペクトル特性を変化させる波長可変フィルタ制御装置において、
前記アクチュエータを複数箇所に均等配置し、
前記各アクチュエータに対応して前記2枚の光学基板の相対する面に形成された一対の容量電極と、
前記2枚の光学基板の間隔に依存した前記一対の容量電極の検出容量に基づいて前記光学基板の平行間隔を所定の目標間隔に維持するように前記各アクチュエータをフィードバック制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記光学基板に形成した一対の容量電極の容量を電圧に変換して容量検出電圧を出力する変換回路と、
目標とする基板間隔に相当する目標電圧を出力する目標電圧出力部と、
前記容量検出電圧と目標電圧とを比較して差分信号を出力する比較回路と、
前記差分信号からアクチュエータへの駆動電圧を決定して出力する駆動制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記アクチュエータとして圧電アクチュエータを使用した場合、更に、
前記駆動制御回路からの駆動電圧を昇圧して前記アクチュエータに印加する昇圧回路と、
前記昇圧回路とアクチュエータの間に、前記昇圧回路から出力される駆動電圧を高電位から低電位に切替えた際に前記アクチュエータに蓄積された電荷を放電する放電回路と、
を設け、
前記放電回路は、
前記昇圧回路とアクチュエータの間に配置された電流検出抵抗と、
前記電流検出抵抗の両端の電位を比較し、前記アクチュエータから昇圧回路側に流れる放電電流を検出して放電の開始タイミングを出力する比較器と、
前記比較器からの出力を受けてアクチュエータの高電位部を低電位部に落として放電させるスイッチング回路と、
を備えたことを特徴とする波長可変フィルタ制御装置。
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