JP3832674B2 - 抗癌剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抗癌剤に関する。より詳細には、HGFのα鎖を有効成分とし、そのc−Met/HGFレセプターアンタゴニスト活性に基づき、制癌、特に癌浸潤・転移抑制を可能とする新しい抗癌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌制圧は、言うまでもなく今日の医療における最大の課題であり、また新規癌治療法あるいは新抗癌剤は医療・医薬研究者の最大の関心事である。現在のわが国の死因の第1位は癌であり、毎年多くの新しい患者が発生している。
化学療法に用いられる抗癌剤として、従来のアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質のほかに、ピシバニール(商品名、中外製薬社製)やクレスチン(商品名、三共製薬社製)を初めとする微生物由来の生体反応修飾物質が全盛を極めた。従来のアルキル化剤を初めとする化合物は本来、細胞毒性を利用するものであり、少なからぬ副作用のために使用がかなり限定されたのに比べ、その後のピシバニールなどの生体反応修飾物質は生体の免疫機能を高め、癌細胞を駆逐するという作用を有する。しかし、その限界が明らかになると共に、インターフェロンやインターロイキン−2やTNF(腫瘍壊死因子)など、高等動物由来の生理活性蛋白に重点が置かれるようになった。しかしながら、これらも作用スペクトルが発見当初予想されたものよりはるかに広範囲であったため、副作用を示さないという認識も覆されてしまった。
このような状況のなかで。癌治療が単なる癌病巣の撃退をもって評価するだけではなく、生体のトータルな機能の改善の中での治療を考える「クオリティ・オブ・ライフ」に焦点が移りつつあることは間違いなく、本発明者が発見したHGFが抗癌剤の有効成分であることはすでに報告済みである(特開平6-25010号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のごとく、既成の抗癌剤がその副作用や、あるいは抗癌作用そのものへの疑問から、決定的な治療薬とはいいがたく、さらに次世代を担う生理活性蛋白質もこれまで開発されたものは主に免疫系にかかわる因子であり、必ずしも究極の抗癌剤として広く利用されることを期待できない状況にある。そこで、同じく生体が本来持っている生理活性蛋白質の中でもその生理作用が明解で、しかも活性のスペクトルがよく研究されているものの中から、真の抗癌剤を見いだすことが重要になってくる。特に、従来開発されてきた生理活性蛋白質、インターフェロンあるいはインターロイキン等はほとんど免疫系にかかわる因子であることから、全く異なる作用を有する生体因子がこれからの抗癌剤として重要であると考えらえれる。
【0004】
ところで、癌が国内の死因のトップを占めていることは前述の通りであるが、その危険性は癌細胞の浸潤・転移能に依存しているといっても過言ではない。いくつかの増殖因子が癌細胞の浸潤・転移能に関与することが報告されているが、最近HGFが種々の癌細胞に対し、その浸潤、転移能を強力に誘導する因子であることが明らかにされた(H. Shimura et al. J. Jap. Cancer Res. 86, 662-669, 1995)。実際に極めて悪性度が高いとされている肺癌や胆嚢癌の浸潤能はHGFに依存して誘導され、また肺癌原発組織中のHGFレベルは肺癌の悪性度、致死率とよく相関するリスクファクターであることが確認されている。
上記のHGFは肝実質細胞を in vitro で増殖させる因子として見出された蛋白質である(Biochem Biophys Res Commun, 122, 1450, 1984、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 6489, 1986、 FEBS Letter, 22, 311, 1987、Nature, 342, 440, 1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 3200, 1990)。肝実質細胞を特異的に増殖させる因子として発見されたHGFは、本発明者らをはじめとする多くの研究者による最近の研究成果によって、生体内で組織傷害治癒などの種々の活性を示している事が明らかとなり、研究対象としてのみならずヒトや動物の治療薬などへの応用に期待が集まっている。このようなHGFの受容体(レセプター)に関して、最近の研究から、c−Met原腫瘍遺伝子がHGF受容体をコードしていることが確定的になった(Bottaro et al., Science 251, 802-804, 1991; Naldini et al., Oncogene 6, 501-504, 1991)。
【0005】
上述のように、HGFが種々の癌細胞に対し、その浸潤、転移能を強力に誘導する因子であることが明らかになってきており、HGFによる癌細胞の浸潤・転移能を特異的にブロックするアンタゴニストならびにインヒビターの開発は制癌という観点で極めて重要な研究課題であると考えられる。
本発明者はかかる観点から鋭意検討を行った結果、HGFの有する癌細胞の浸潤・転移能を抑制する活性、すなわち、細胞のc−Met/HGFリセプターに対するアンタゴニスト活性を有する物質を見出し、当該物質が癌細胞の浸潤、転移能を抑制し、抗癌剤として極めて有用であるという知見を得て本発明を完成するに至った。従って、本発明の目的は、細胞のc−Met/HGFリセプターのアンタゴニスト活性に基づく抗癌剤として極めて有用な医薬品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明は、下記の理化学的性質および生理活性を有する蛋白質(以下、便宜上、α−フラグメントと称する)を有効成分として含有する抗癌剤である。
a)HGFのα鎖からなる;
b)分子量が約55−69kDaである;
c)c−Met/HGFレセプターのアンタゴニスト活性を有する。
【0007】
前述のように、本発明者は、年余にわたり肝実質細胞の増殖因子を研究し、その結果HGFを単離精製することに成功した。HGFは元来、肝実質細胞増殖を促進する因子として発見されたポリペプチドであるが、細胞増殖制御に加え、細胞運動(cell motility)を促進するモトゲン(motogen)として働く(T. Nakamura, Prog. Growth Factor Res., 3, 67-85, 1991)ことは発明者によってもとより見いだされた事実である。HGFによる細胞の運動性亢進には、β−カテニンのりん酸化によるカドヘリンを介した細胞間接着の減少、rho small Gタンパク質の活性化を介する情報伝達系が関与している。さらに最近、rhoの下流にp125FAK(focal adhesion kinase)が位置し、HGFによって一過的なp125FAKのりん酸化が起こることが明らかになった(K. Matsumoto et al. J.Biol.Chem. 269, 31807-31813, 1994)。HGFの刺激後、初期の焦点接着(focal adhesion)の形成、細胞骨格の再構成にp125FAKのりん酸化が関与しており、HGFによる細胞の運動性亢進において細胞−マトリックスとの相互作用はp125FAKを介して調節されていると考えられる。
【0008】
癌細胞の増殖能や浸潤・転移能は、癌細胞をとりまく間質細胞との相互作用を介して大きく影響されることが古くから知られている(tumor-host relationship)。発明者は宿主間質に由来するHGF、ならびに癌細胞に由来するHGF誘導因子(インジュリン)が癌の悪性化(増殖能や浸潤・転移能)に関与することを明らかにした(K. Matsumoto et al. Gann Monograph No.42: Growth Factors: Cell growth, Morphogenesis and Transformation, CRC press 92-112, 1994; K. Rygaard et al. Intern. J. Oncology, 2, 991-996, 1993; W.G. Jiang et al. Clin. & Exp. Metastasis, 11, 235-242, 1993; S.P. Seslar et al. Cancer res., 58, 1233-1238, 1993; N. Rahimi et al. DNA and Cell Biol., 13, 1189-1197, 1994; S. Bellusci et al. Oncogene, 9, 1091-1099, 1994)。
【0009】
胆嚢癌は一般に高転移性で致死率の高い悪性癌である。ヒト胆嚢癌細胞は宿主間質組織内では高い浸潤能を有するが、in vitroのコラーゲンゲル上での培養下では自らゲル内に浸潤することはない。ところが、正常間質線維芽細胞とコラーゲンゲルをはさんで共培養すると胆嚢癌細胞はゲル内に活発に浸潤し、液性因子を介した間質細胞との相互作用により胆嚢癌細胞の浸潤能が誘導される。しかも、共培養下での癌細胞の浸潤は抗HGF抗体の添加により完全に阻害され、間質由来の浸潤因子(invasion factor)がHGFであることが明らかになった。この胆嚢癌細胞のゲル内浸潤は代表的な増殖因子であるEGF、TGF−β、PDGF、bFGFなどでは誘導されず、HGFに特異的である。一方、胆嚢癌細胞は間質線維芽細胞のHGF産生を誘導する因子を産生分泌し、このHGFインデューサーの実体がIL-1βであることが明らかになった。ヒト胆嚢癌細胞に限らず多くのカルシノマ(carcinoma)、例えば口腔粘膜上皮癌細胞などの間質由来浸潤因子(stromal-derived invasion factor)の実体がHGFであることも明らかになった(K. Rygaard et al. Intrn. J. Oncology, 2, 991-996, 1993; W.G. Jiang et al. Clin. & Exp. Metastasis, 11, 235-242, 1993; S.P.Seslar et al. Cancer Res., 58, 1233-1238, 1993; N. Rahimi et al. DNA and Cell Biol., 13, 1189-1197, 1994)。
癌細胞の浸潤・転移を防ぐことができれば癌による死亡率は著しく減少するといわれている。しかも癌の80%以上がカルシノマであり、これらのほとんどはc−Met/HGFレセプターを発現するHGF標的細胞である。このことから、HGFによる癌細胞の浸潤・転移能をブロックするアンタゴニストの開発は重要である。
【0010】
しかるに本発明者らはHGFの引き続く研究において以下の点を明らかにした。HGFは約69kDaのα鎖と約34kDaのβ鎖からなるヘテロダイマーである。HGFのα鎖にはN末端ヘアピンドメインと4個のクリングルドメインが存在し、β鎖にはセリンプロテアーゼ様ドメインが存在しており、HGFは非常にユニークなドメイン構造を有する増殖因子である。本発明者らは既にHGF分子内のドメイン構造を欠失した種々の変異HGFを遺伝子工学的に作製し、α鎖内のN末端ヘアピンならびに第一、第二クリングルドメインがc−Met/HGFレセプターに結合する最小ドメインであることを明らかにした。したがってこの最小レセプター結合ドメイン内に遺伝子工学的に変異を導入することによりHGFレセプター−アンタゴニストの作製も可能になると考えられる。従来、癌細胞の浸潤・転移を抑制する因子の解明はそのほとんどが癌細胞に由来するマトリックスプロテアーゼを標的としたものであるが癌細胞の浸潤・転移をブロックする有効な物質は解明されていない。
それに対し、本発明は癌細胞の浸潤・転移を誘導するシグナルをその上流で遮断することを目的としており、全く新しい戦略に基づいている点が大きな特色であり、先駆的な発明である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の抗癌剤は、前述の理化学的性質及び生理活性を有する蛋白質(α−フラグメント)を有効成分とすることからなり、当該蛋白質は、例えば、HGFを酵素的に分解する方法、遺伝子工学的技術を用いて調製する方法、化学的に調製する方法などにより得ることができる。
上記の酵素的分解法に用いられるHGFとしては、種々の方法で調製されたものを用いることができる。すなわち、HGFの調製方法としては、各種の方法が知られている。例えば、ラット、ウシ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤などの臓器、血小板、白血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して得ることができる(FEBS Letters, 224, 312, 1987; Proc. Acad. Sci. USA, 86, 5844, 1989など参照)。また、HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞等)から分離精製してHGFを得ることもできる。あるいは遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清から目的とする組換えHGFを得ることができる(例えば、Nature, 342, 440, 1989; 特開平5-111383号公報; 特開平3-255096号公報; Biochem. Biophys. Res. Commun., 163, 967, 1989など参照)。
上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物または動物細胞などを用いることができる。
【0012】
より具体的には、HGFを生体組織から抽出精製する方法としては、例えば、ラットに四塩化炭素を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を抽出して粉砕し、S-セファロース、ヘパリンセファロースなどのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLCなどの通常の蛋白質精製法にて精製することができる。
また、HGFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を通常の遺伝子工学的な手法により動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスC127細胞、サルCOS細胞、Sf(Spodoptera frugiperda)細胞などに形質転換し、その培養上清より得ることができる。HGFはヒト由来のものでも、哺乳動物由来のものでも用いることができるが、好ましくはヒト由来のものがよく、更に好ましくは、ヒト由来の組換えHGF(特開平5-111383号公報)がよい。
かくして得られたHGFはHGFと実質的に同効である限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失または他のアミノ酸に置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端および/またはC末端に1または2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が同様に欠失または置換されてもよい。
【0013】
HGFの酵素的分解は、例えば、エラスターゼ等の酵素を用いてHGFを消化することにより行なうことができる。ついで、高速液体クロマトグラフィー等の慣用の蛋白精製法を用いて消化生成物を精製し、α鎖が含まれるフラグメントが約55−69kDaからなる低分子HGFを単離することにより、前記の理化学的性質及び生理活性を有する蛋白質(α−フラグメント)を得ることができる。
【0014】
本発明のα−フラグメントは、上記の方法により得られたものに限定されるものではなく、慣用のペプチド合成法に準じて化学的に調製したものでもよく、またα−フラグメントのアミノ酸配列をコードする遺伝子を調製し、それを用いて前記の遺伝子工学的な手法により産生させたものであってもよい。
後記実施例に示されるように、α−フラグメントはHGFのマイトゲン(mitogen)およびモトゲン活性を阻害するなどc−Met/HGFリセプターのアンタゴニスト活性を有し、癌細胞の浸潤を抑制することが判明した。従って、α−フラグメントを有効成分とする本発明の薬剤は、抗癌剤、特に癌細胞の浸潤抑制剤、転移抑制剤として有用である。
【0015】
本発明の抗癌剤は種々の製剤形態(例えば、液剤、固形剤、カプセル剤など)をとりうるが、一般的には有効成分であるα−フラグメントのみまたはそれと慣用の担体と共に注射剤とされるか、または慣用の担体と共に経口剤とされる。当該注射剤は常法により調製することができ、例えば、α−フラグメントを適切な溶媒(例えば、滅菌水、緩衝液、生理食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。注射剤中のα−フラグメント含量としては、通常0.0002-0.2(w/v%)程度、好ましくは0.001-0.1(w/v%)程度に調整される。また、経口薬としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟または硬カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などの剤形に製剤化され、これらの製剤は製剤化の常法に準じて調製することができる。製剤中のα−フラグメント含量は、剤形、適用疾患などに応じて適宜調整することができる。
【0016】
製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。さらに、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等を含んでいてもよい。液状製剤とした場合は凍結保存、または凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥剤は、用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使用される。
本発明の製剤は、該製剤の形態に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、注射剤の形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内等に投与することができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などにより適宜調整されるが、通常α−フラグメントとして0.01mg-100mgであり、これを1日1回ないし数回に分けて投与するのが適当である。
【0017】
【発明の効果】
本発明の治療剤において、有効成分であるα−フラグメントは、高転移性で致死率の高い胆嚢癌や肺癌を初めとする癌細胞に対して特異的な癌浸潤・転移抑制効果を有する。従って、本発明の薬剤は、抗癌剤としての癌の治療、予防などに用いられ、臨床上極めて有用である。
【0018】
【実施例】
以下に実施例および試験例を示し、本発明をより具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
HGFのα−フラグメントの単離精製
遺伝子組換えHGF900mgをエラスターゼで1時間消化し、これを逆相HPLC(C4)で精製した。そのクロマトグラムを図1に示す。図1に示されるように、4個のピークが得られ、第一のピークがα−フラグメント、第二のピークが未消化のHGF、第三と第四のピークがβ1、β2であることが同定された。さらに、凍結乾燥システムで溶媒を除去し、それぞれの分画を集めて再蒸留水で再懸濁した。そうして得られた物質がα、β−フラグメントであることをSDS-PAGEでさらに確認した(図2参照)。蛋白定量の結果、α−フラグメントは178mg取得された。
【0019】
実施例2
MDCK 細胞を用いたモトゲンとしての作用の解析
MDCK細胞を10%FBS加DMEM培地で2X104細胞/mlに調製し、48ウェルプレートに250ml/ウェルでまきこんだ。α−フラグメントを単独で10ng/mlから10μg/ml加えて24時間培養し、位相差顕微鏡で観察した。その結果を図3に示す。図3に示されるように、α−フラグメントにはスキャタリング(scattering)作用は認められなかった。続いて、HGF2ng/mlと同時に添加してHGFに対する阻害効果を調べた。その結果を図4に示す(図中、αの表示は、HGFに対するα−フラグメント濃度(倍率)を示す。以下同様)。図4に示すように、1000倍濃度をこえるとスキャタリングの抑制が濃度依存的に観察された。よって、α−フラグメントはHGFのアンタゴニストであることが強く示唆された。
【0020】
実施例3
ラット肝細胞を用いたマイトゲンとしての作用の解析
ラット肝細胞を48ウェルプレートで約50%面積を占めるように培養し、HGF、EGF、α−フラグメントを添加して22時間培養した。125I-BrdU(0.15mCi/ウェル)で4時間ラベルし、活性をシンチレーションカウンターで測定した。その結果を図5に示す。α−フラグメントには102ng/mlから104ng/mlの範囲でDNA合成促進作用は認められなかった。そして、HGF5ng/mlと同時に加えるとHGFのマイトゲン活性を濃度依存的に抑制することが明らかとなった(図5c参照)。ゆえに、α−フラグメントはHGFのマイトゲン、モトゲン活性に対してアンタゴニストであることが示された。
【0021】
実施例4
α−フラグメントのHGF誘導癌細胞浸潤に対する作用
定量的であるマトリゲル インベイション チャンバー(Matrigel invasion chamber, 24ウェル)を用いた基底膜浸潤モデルでHGFの癌細胞浸潤誘導作用に対するα−フラグメントの効果を検討した。GB-d1細胞を1.5X104細胞/200ml/ウェルに調整して、アッパー チャンバー(upper chamber)にまきこんだ。ロワー チャンバー(lower chamber)の培地500mlにはHGF2ng/mlとα−フラグメントを加えて24時間培養し、固定後H&Eで染色した。顕微鏡下に任意の10視野(8.4mm2)を観察し、フィルター下面に浸潤してきた細胞数で浸潤能を評価した。HGFは濃度依存的にGB-d1細胞の浸潤を促進した(図6参照)。HGF3ng/mlに対するα−フラグメントの作用を検討したところ、α−フラグメントはHGF3ng/mlの130倍、400倍、4000倍、13000倍と濃度依存的にHGFの作用を阻害した(図7参照)。なお、図8に、図6及び図7の結果を図表化したものを示す。
上記の結果からして、α−フラグメントは、HGFに誘導される癌細胞の浸潤を抑制する作用を有することが明らかになった。
【0022】
製剤例1
生理食塩水100ml中にα−フラグメント1mg、マンニトール1g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0023】
製剤例2
0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaCl及び0.01%ポリソルベート80含有、pH7.4)100ml中にα−フラグメント1mgとヒト血清アルブミン100mgを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0024】
製剤例3
注射用蒸留水100ml中にα−フラグメント1mg、ソルビトール2g、グリシン2g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】HGF−酵素消化物を逆層HPLCで精製したときのクロマトグラムである。
【図2】逆層HPLCで精製したHGF−酵素消化物を電気泳動(SDS−PAGE、還元条件下)に付した結果を示す電気泳動写真である。
【図3】MDCK細胞に対するα−フラグメントのスキャタリング効果を示す写真(生物の形態)である。
【図4】HGFの共存下におけるMDCK細胞に対するα−フラグメントのスキャタリング効果を示す写真(生物の形態)である。
【図5】ラット肝細胞のDNA合成に対するHGF、EGF、α−フラグメントの効果を示す図である。図中、(a)はHGFを添加した系、(b)はα−フラグメントを添加した系、(c)は5ng/mlのHGF共存下にα−フラグメントを添加した系、(d)は10ng/mlのEGF共存下にα−フラグメントを添加した系である。
【図6】GB−d1細胞の浸潤に対するα−フラグメントの効果を示す写真(生物の形態)である。
【図7】HGFの共存下におけるGB−d1細胞の浸潤に対するα−フラグメントの効果を示す写真(生物の形態)である。
【図8】図6及び図7の結果を図表化したものである。

Claims (1)

  1. 下記の理化学的性質および生理活性を有する蛋白質を有効成分として含有する抗癌剤。
    a)エラスターゼ消化によって得られるHGF(Hepatocyte growth
    factor)のα鎖からなる;
    b)分子量が約55−69kDaである;
    c)c−Met/HGFレセプターのアンタゴニスト(antagonist)活性を有する。
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