JP3832399B2 - 殺菌殺藻剤組成物及び水系の殺菌殺藻方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌殺藻剤組成物、水系の殺菌殺藻方法及び殺菌殺藻剤組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、屋外などに放置、保管し、あるいは、屋外などで使用したとき、紫外線や銅イオンの影響による有効成分の分解を受けにくい殺菌殺藻剤組成物、水系の殺菌殺藻方法及び殺菌殺藻剤組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の水系において、菌類や藻類によるさまざまな障害が発生している。例えば、開放循環式冷却水系においては、ズーグレア状細菌、糸状細菌、鉄バクテリア、イオウ細菌、硝化細菌、硫酸塩還元菌などの細菌類、ミズカビ、アオカビなどの真菌類、藍藻、緑藻、珪藻などの藻類が増殖し、これらの微生物を主体として、これに土砂などの無機物や塵埃などが混ざりあって形成される軟泥状の汚濁物の付着や堆積により、スライムやスラッジが発生する。スライムやスラッジは、熱効率の低下や通水の悪化をもたらすばかりでなく、機器、配管などの局部腐食の原因となる。また、冷却塔から飛散したレジオネラ菌に起因する在郷軍人病のように、水系で増殖した菌類が人体に直接被害を及ぼす場合もある。製紙工程水系においても、各種の細菌、真菌、酵母などが増殖してスライムを形成し、製品にホール、斑点、目玉などの欠点を発生させて製品品質を落とすばかりでなく、断紙の原因となって生産性を低下させている。
従来より、菌類や藻類によるこのような障害を防止するために、水系に次亜塩素酸塩などの塩素系酸化剤を添加することが行われている。一般に、水中の残留塩素濃度が5mgCl/L以上であれば、菌類と藻類の増殖を抑制することができると言われている。しかし、次亜塩素酸塩などの塩素系酸化剤は、紫外線により分解が促進されやすく、殺菌殺藻剤をプラスチック容器などに充填して屋外などに保管、放置すると、紫外線により有効成分である塩素系酸化剤が分解する。また、殺菌殺藻剤が水系に添加されたのちも、開放循環式冷却水系などにおいては、冷却水を完全に光から遮断することは困難である。さらに、水系の配管や熱交換器の材料などに銅や銅合金などが用いられ、銅イオンが溶出すると、次亜塩素酸塩などの塩素系酸化剤の分解が一層促進される。
次亜塩素酸塩にスルファミン酸又はその塩を添加して、N−モノクロロスルファミン酸若しくはN,N−ジクロロスルファミン酸又はこれらの塩を形成することにより、有効塩素成分を安定化する技術が知られている。しかし、スルファミン酸又はその塩により安定化しても、薬注タンクが屋外にあって日光が当たるような場合には、薬剤の安定性に問題が生ずる。このために、紫外線の照射を受ける環境で保管又は使用されても、あるいは、銅イオンが存在しても、有効成分の消失が少ない殺菌殺藻剤組成物及び水系の殺菌殺藻方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、屋外などに放置、保管し、あるいは、屋外などで使用したとき、紫外線や銅イオンの影響による有効成分の分解を受けにくい殺菌殺藻剤組成物、水系の殺菌殺藻方法及び殺菌殺藻剤組成物の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、塩素系酸化剤とスルファミン酸又はその塩を含有する殺菌殺藻剤組成物のpHを13以上とすることにより、塩素系酸化剤の分解を抑制することができ、さらに、アゾール系化合物を含有させることにより、塩素系酸化剤の分解をより効果的に防止して残留塩素濃度を高く維持するとこが可能となることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有してなり、pH13以上であることを特徴とする殺菌殺藻剤組成物、及び、
(2)塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有してなり、pH13以上である殺菌殺藻剤組成物を水系に添加することを特徴とする殺菌殺藻方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(3)塩素系酸化剤が、次亜塩素酸又はその塩である第1項記載の殺菌殺藻剤組成物、及び、
(4)アゾール系化合物が、ベンゾトリアゾール又はトリルトリアゾールである第2項記載の水系の殺菌殺藻方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の殺菌殺藻剤組成物の第一の態様は、塩素系酸化剤及びスルファミン酸若しくはその塩を含有してなり、pH13以上である殺菌殺藻剤組成物である。本発明の殺菌殺藻剤組成物の第二の態様は、塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有してなる殺菌殺藻剤組成物である。本発明の第二の態様においては、殺菌殺藻剤組成物のpHが13以上であることが好ましい。本発明の水系の殺菌殺藻方法は、塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を水系に添加する殺菌殺藻方法である。本発明組成物又は本発明方法によれば、紫外線を受ける環境にあっても有効成分の分解を抑制し、残留塩素濃度を高く維持して、効果的に殺菌と殺藻を行い、冷却水系などにおけるスライムの発生を防止し、付着したスライムを剥離することができる。
本発明に用いる塩素系酸化剤に特に制限はなく、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩などを挙げることができる。これらの中で、次亜塩素酸又はその塩を好適に用いることができる。次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウムなどを挙げることができる。本発明組成物において、塩素系酸化剤の含有量に特に制限はないが、3〜12重量%であることが好ましく、4〜8重量%であることがより好ましい。
【0006】
本発明に用いるスルファミン酸塩に特に制限はなく、例えば、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛などを挙げることができる。スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
次亜塩素酸イオンとスルファミン酸は、次式のように反応して、N−モノクロロスルファミン酸イオン又はN,N−ジクロロスルファミン酸イオンを形成して塩素系酸化剤の有効成分を安定化する。
ClO- + H2NSO3H → HClNSO3 - + H2O
2ClO- + H2NSO3H + H+ → Cl2NSO3 - + 2H2O
本発明組成物において、スルファミン酸又はその塩の含有量に特に制限はないが、塩素系酸化剤の有効塩素1モルあたり0.3〜1.5モルであることが好ましく、1〜1.5モルであることがより好ましい。
塩素系酸化剤及びスルファミン酸若しくはその塩を含有する本発明組成物の第一の態様において、組成物のpHは13以上であり、より好ましくは13.5以上である。塩素系酸化剤、アゾール化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有する本発明組成物の第二の態様において、組成物のpHは13以上であることが好ましく、13.5以上であることがより好ましい。組成物のpHが13未満であると、塩素系酸化剤の安定化効果が小さくなり、残留塩素濃度の低下速度が大きくなるおそれがある。
【0007】
本発明に用いるアゾール系化合物は、ヘテロ原子を2個以上含む五員環を有する芳香族化合物である。本発明に用いるアゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの単環式アゾール系化合物、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトメチルベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、インダゾール、プリン、イミダゾチアゾール、ピラゾロオキサゾールなどの縮合多環式アゾール系化合物などや、さらにアゾール系化合物の中で塩を形成する化合物にあってはそれらの塩などを挙げることができる。これらのアゾール系化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明組成物において、アゾール系化合物の含有量に特に制限はないが、0.05〜3重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。
【0008】
本発明の殺菌殺藻方法を適用する水系に特に制限はなく、例えば、冷却水系、紙パルププロセス水系、集塵水系、スクラバー水系、噴水系などを挙げることができる。本発明の殺菌殺藻方法において、塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩の添加方法に特に制限はなく、例えば、塩素系酸化剤と、アゾール系化合物と、スルファミン酸若しくはその塩を、それぞれ別々に添加することができ、これらの中の2成分を同時に添加し、残りの1成分を別に添加することもでき、あるいは、3成分を同時に添加することもできる。これらの添加方法の中で、塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有する殺菌殺藻剤組成物をあらかじめ調製し、該組成物を水系に添加する方法が好ましい。塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有する殺菌殺藻剤組成物を調製することにより、薬剤の有効成分の分解による減失を防ぐことができる。
本発明組成物及び本発明方法によれば、日光の照射を受ける環境や、銅や銅合金材料が、配管、熱交換器などに使用されている水系においても、高い残留塩素濃度が維持されるので、効果的に水系の殺菌と殺藻を行うことができる。
本発明に用いるpH調整剤としては一般的なアルカリ化合物が使用でき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを好適に使用することができる。
本発明の殺菌殺藻剤組成物の製造方法において、スルファミン酸若しくはその塩及びpH調整剤を含む水溶液の調製方法には特に制限はなく、アゾール類及び/又はその他の薬剤を含有していてもよい。また、水、スルファミン酸若しくはその塩の添加順序も特に制限はない。
本発明の殺菌殺藻剤組成物の製造方法によれば、安全で且つ、有効成分濃度を低下させること無しに本発明の殺菌殺藻剤組成物を製造することができる。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、残留塩素濃度は、JIS K 0101 28.3 ヨウ素滴定法により測定した。
また、参考例1、2、5、10及び実施例3、4、6〜9、11〜13及び比較例1〜5において、殺菌殺藻剤組成物は、次亜塩素酸ナトリウムを除く他の薬剤と水との混合水溶液を調製した後に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加することによって製造した。
参考例1、2、実施例3、4及び比較例1〜3においては、調製した殺菌殺藻剤組成物をそれぞれ容量100mLのポリエチレン製白色細口びんに入れ、外部からの光を遮断した状態で、40℃の恒温槽又は60℃の恒温槽内に静置し、経過日数0日、6日、14日及び20日に組成物中の残留塩素濃度を測定した。
参考例1
水12.4g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g、スルファミン酸12.0g及び12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.4であった。
この殺菌殺藻剤組成物の残留塩素濃度は、40℃で静置したとき、調製直後7.2重量%、6日後7.0重量%、14日後6.9重量%、20日後6.8重量%であった。また、60℃で静置したとき、調製直後7.2重量%、6日後6.2重量%、14日後4.9重量%、20日後4.8重量%であった。
参考例2
水の配合量を8.7g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液の配合量を19.3gとした以外は、参考例1と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.8であった。参考例1と同様にして、残留塩素濃度を測定した。
実施例3
水11.9g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g、スルファミン酸12.0g、12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0g及びベンゾトリアゾール0.5gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.4であった。参考例1と同様にして、残留塩素濃度を測定した。
実施例4
水の配合量を8.2g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液の配合量を19.3gとした以外は、実施例3と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.8であった。参考例1と同様にして、残留塩素濃度を測定した。
【0010】
比較例1
水39.5g、12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0g及びベンゾトリアゾール0.5gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.0であった。
この殺菌殺藻剤組成物の残留塩素濃度は、40℃で静置したとき、調製直後7.2重量%、6日後5.7重量%、14日後4.4重量%、20日後4.2重量%であった。また、60℃で静置したとき、調製直後7.2重量%、6日後3.7重量%、14日後2.4重量%、20日後2.4重量%であった。
比較例2
水16.9g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液10.6g、スルファミン酸12.0g、12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0g及びベンゾトリアゾール0.5gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、12.0であった。参考例1と同様にして、残留塩素濃度を測定した。
比較例3
水17.4g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液10.6g、スルファミン酸12.0g及び12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、12.0であった。参考例1と同様にして、残留塩素濃度を測定した。
参考例1、2、実施例3、4及び比較例1〜3の結果を、第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
第1表に見られるように、ベンゾトリアゾールを含有するが、スルファミン酸を含有せず、pHが13.0の比較例1の殺菌殺藻剤組成物は、次亜塩素酸ナトリウムの分解が速く、残留塩素濃度が急速に低下している。
スルファミン酸を含有するが、pHが12.0である比較例2、3の殺菌殺藻剤組成物は、ベンゾトリアゾールの有無に関係なく、次亜塩素酸ナトリウムの分解は非常に速く、残留塩素濃度は急速に低下している。
水酸化ナトリウム水溶液の配合量をさらに増して、pH13.4にした参考例1、実施例3の殺菌殺藻剤組成物、pH13.8にした参考例2、実施例4の殺菌殺藻剤組成物は、ベンゾトリアゾールの有無にかかわらず、残留塩素濃度の低下が遅く、次亜塩素酸ナトリウム及びスルファミン酸を配合し、pHを13以上にすることにより、次亜塩素酸ナトリウムの分解が効果的に抑制されることが分かる。また、水酸化ナトリウムの配合量を増すことにより、特に高温における安定性が向上している。
【0013】
参考例5、実施例6〜9及び比較例4〜5においては、調製した殺菌殺藻剤組成物をそれぞれ容量100mLのポリエチレン製白色細口びんに入れ、7本のびんを並べて5月10日から30日まで厚木市の日光の照射を受ける屋外に放置し、経過日数0日、6日、14日及び20日に組成物中の残留塩素濃度を測定した。
参考例5
水12.4g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g、スルファミン酸12.0g及び12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.4であった。
この殺菌殺藻剤組成物中の残留塩素濃度は、調製直後7.2重量%、6日後6.1重量%、14日後4.0重量%、20日後3.0重量%であった。
実施例6
水12.4g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g、スルファミン酸12.0g、12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0g及びベンゾトリアゾール0.2gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.4であった。
この殺菌殺藻剤組成物中の残留塩素濃度は、調製直後7.2重量%、6日後6.4重量%、14日後5.2重量%、20日後4.4重量%であった。
実施例7
ベンゾトリアゾールの配合量を0.5gとした以外は、実施例6と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製し、pHと残留塩素濃度を測定した。
実施例8
ベンゾトリアゾールの配合量を1.0gとした以外は、実施例6と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製し、pHと残留塩素濃度を測定した。
実施例9
ベンゾトリアゾールの代わりに、トリルトリアゾール0.5gを配合した以外は、実施例6と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製し、pHと残留塩素濃度を測定した。
比較例4
水24.4g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g及び12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、14.0であった。
この殺菌殺藻剤組成物中の残留塩素濃度は、調製直後7.2重量%、6日後5.7重量%、14日後3.9重量%、20日後2.8重量%であった。
比較例5
ベンゾトリアゾール2.0gを配合した以外は、比較例4と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製し、pHと残留塩素濃度を測定した。
参考例5、実施例6〜9及び比較例4〜5の結果を、第2表に示す。
【0014】
【表2】
【0015】
第2表に見られるように、スルファミン酸又はスルファミン酸とベンゾトリアゾールを配合した参考例5、実施例6〜8では、経日後の残留塩素濃度が高く、有効成分の分解が抑制されている。ベンゾトリアゾールの配合量が多いほど、残留塩素濃度が高くなっていることから、有効成分の分解の抑制に、ベンゾトリアゾールが寄与していることが分かる。また、スルファミン酸とトリルトリアゾールを配合した実施例9でも、経日後の残留塩素濃度が高く、有効成分の分解が抑制されている。
これに対して、アゾール化合物もスルファミン酸も配合しない比較例4では、経日後の残留塩素濃度が実施例に比べて低く、有効成分の分解を抑制する効果が現れていない。また、ベンゾトリアゾールのみを配合した比較例5では、残留塩素濃度が比較例4より低く、ベンゾトリアゾールを単独で配合した場合には、有効成分の分解を促進する効果が現れている。単独では有効成分の分解を抑制する効果が弱いスルファミン酸と、単独では有効成分の分解を促進する効果を有するアゾール化合物を併用することにより、両者に極めて特異な相乗効果を発揮させ、有効成分の分解を効果的に抑制して、高い残留塩素濃度を維持することができる。
【0016】
参考例10、実施例11〜13においては、図1に示す水槽1、ポンプ2、流量計3及び銅チューブ4を備えた循環水系を用いた。この水系の保有水量は15Lであり、銅チューブは長さ1,350mm、内径19mmである。この水系で、試験水として厚木市水を用い、調製した殺菌殺藻剤組成物3.0gを添加し、水温30℃、流量10L/minで循環通水し、24時間後と72時間後の水中の残留塩素濃度を測定した。
参考例10
水12.4g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g、スルファミン酸12.0g及び12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.4であった。
この殺菌殺藻剤組成物を添加した循環水中の残留塩素濃度は、24時間後13.0mg/L、72時間後10.5mg/Lであり、72時間後の残留塩素濃度の残留率は、72.9%であった。
実施例11
水12.15g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液15.6g、スルファミン酸12.0g、12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0g及びベンゾトリアゾール0.25gを配合して、殺菌殺藻剤組成物を調製した。この殺菌殺藻剤組成物のpHは、13.4であった。
この殺菌殺藻剤組成物を添加した循環水中の残留塩素濃度は、24時間後13.5mg/L、72時間後13.0mg/Lであり、72時間後の残留塩素濃度の残留率は、90.3%であった。
実施例12
水の量を11.9g、ベンゾトリアゾールの配合量を0.5gとした以外は、実施例11と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製し、pHを測定するとともに、循環水系に添加して水中の残留塩素濃度を測定した。
実施例13
水の量を11.4g、ベンゾトリアゾールの配合量を1.0gとした以外は、実施例11と同様にして、殺菌殺藻剤組成物を調製し、pHを測定するとともに、循環水系に添加して水中の残留塩素濃度を測定した。
参考例10、実施例11〜13の結果を、第3表に示す。
【0017】
【表3】
【0018】
第3表に見られるように、ベンゾトリアゾールを配合しない殺菌殺藻剤組成物を用いた実施例11に比べて、ベンゾトリアゾールを配合した殺菌殺藻剤組成物を用いた実施例12〜13では、経日後の残留塩素濃度が高く、有効成分の分解が抑制されており、循環水中のベンゾトリアゾールの濃度が1.0mg/L以上になると、72時間では残留塩素濃度は全く低下していない。
実施例14
200mLガラス製ビーカーに、水6.7g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液19.3g、ベンゾトリアゾール2.0g及びスルファミン酸12.0gをこの順番で秤取り、各薬剤を撹拌溶解させた後、撹拌下12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを添加撹拌して殺菌殺藻剤組成物を製造した。
若干の気泡が発生するものの、突沸することなく殺菌殺藻剤組成物を製造することができた。なお、得られた殺菌殺藻剤組成物の残留塩素濃度は7.2重量%であった。
比較例6
200mLガラス製ビーカーに、水6.7g、48重量%水酸化ナトリウム水溶液19.3g、ベンゾトリアゾール2.0g及びスルファミン酸12.0gをこの順番で秤取り、各薬剤を撹拌溶解させた。この溶液を12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液60.0gを予め秤取ってある200mLガラス製ビーカーに撹拌下、少しずつ添加したところ、混合途中に気泡が発生し始め、その後突沸し、塩素ガスの発生が認められた。
【0019】
【発明の効果】
本発明の殺菌殺藻剤組成物及び水系の殺菌殺藻方法によれば、塩素系酸化剤とスルファミン酸を共存させ、pH13以上のアルカリ性に保つことにより、有効成分の分解が防止され、高い残留塩素濃度が維持される。さらに、アゾール系化合物を配合することにより、いっそう高い残留塩素濃度が維持されるので、効果的に水系の殺菌と殺藻を行うことができる。本発明の殺菌殺藻剤組成物の製造方法によれば、安全で且つ残留塩素濃度の低下の無い殺菌殺藻剤組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例で用いた循環水系の系統図である。
【符号の説明】
1 水槽
2 ポンプ
3 流量計
4 銅チューブ
Claims (2)
- 塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有してなり、pH13以上であることを特徴とする殺菌殺藻剤組成物。
- 塩素系酸化剤、アゾール系化合物及びスルファミン酸若しくはその塩を含有してなり、pH13以上である殺菌殺藻剤組成物を水系に添加することを特徴とする殺菌殺藻方法。
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