JP3829205B2 - 刺繍ミシンの上糸供給構造及び上糸供給方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺繍ミシンにおいて、ボビンから糸道装置を経て刺繍ヘッドの針に上糸を供給する上糸供給構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般の工業用刺繍ミシンにおいては、刺繍ヘッドの上方に糸道装置が配設され、該糸道装置には上糸に張力を付与する張力付与手段を備えた糸案内具、糸調子等が配設されている。さらに、糸道装置の後方であってかつ糸道装置より高い位置に糸立て装置が配設されている。糸立て装置は、台と、該台に立設された多数の糸立てピンとからなり、各糸立てピンに、色彩の異なる上糸が巻かれたボビンを外挿して立てるようになっている。そして、ボビンから解かれた上糸は、ボビンより高い位置に設けられた糸ガイドに一旦引っ掛けられ、そこから糸道装置まで空中に張られ、糸道装置を経て刺繍ヘッドの針に供給される。
【0003】
このように、糸立て装置が刺繍ヘッド及び糸道装置より高い位置に配設されていると、最初に糸立てピンにボビンを立てたり、色の異なる上糸が巻かれたボビンに取替えたり、上糸の無くなったボビンを新しいボビンに取り替えたり、ボビンから解かれた上糸をさらに高い位置にある糸ガイドに引っ掛けて糸道装置まで張ったりする際に、作業者は、背伸びしたり、台に乗ったりして行う必要があり、作業しにくいという問題があった。
【0004】
特に、多数の多針刺繍ヘッドが近接して配置される多頭式の多針刺繍ミシンにおいては、各刺繍ヘッド毎に針数分のボビンをセットする必要があるため、糸立て装置には多数のボビンが密集して配置される。このため、作業者にとっては、さらにボビンの抜差し等の作業が困難であった。
【0005】
さらに、一般に刺繍ミシンの刺繍加工動作によって発生する振動は、刺繍ミシンの上側ほど増幅されて伝わるため、糸立て装置が刺繍ヘッドより高い位置に配設されていると、刺繍ミシンの刺繍加工動作によって発生する振動が糸立て装置に伝わり易い。このため、刺繍加工中にボビンに巻かれた上糸にばらけや、たるみが生じてしまい、隣り合うボビンの上糸同士が絡んだり、上糸がボビンの下に入り込んで引っ掛り、糸切れが発生することがあった。
【0006】
また、前記糸ガイドを不要とした上糸供給構造として、特開平4−338487号公報に記載されたものがある。この上糸供給構造50においては、図13に示すように、糸立てピン55を上端及び下端が開口した中空の筒で形成して、ボビン54から解かれた上糸53を該上端の開口から糸立てピン55に挿入可能とし、前記糸立てピン55の下端の開口から糸調節器57近傍までの間を中空の上糸案内管58で接続している。そして、ボビン54から解かれた上糸53を、周知の針金状の糸通し具を用いて、糸立てピン55の上端の開口から挿入し、糸立てピン55及び上糸案内管58に挿通させて糸調節器57近傍の糸出口59に導いている。なお、糸調節器57は上糸に張力を付与する張力付与手段を備えたものである。
【0007】
ここで、糸立てピン55は糸立て装置56に立設・固定されている。ボビン54に巻かれた上糸53をボビン54から解き易くするためには、ボビン54が外挿されたときに、糸立てピン55の上端部がボビン54の上端から上方に突出するように設ける必要がある。ボビン54には種々のサイズのものがあるため、糸立てピン55の高さは、最も高さが高いボビン54に合わせて固定されている。
【0008】
この上糸供給構造50によれば、前述のような高い位置にある糸ガイドに上糸53を引っ掛ける必要はないものの、やはり、糸立て装置56が刺繍ヘッド51の支持アーム52の上方に設けられていたため、ボビン54の抜差し等の作業が困難であった。
【0009】
また、周知の針金状の糸通し具を用いて前記糸立てピン55及び前記上糸案内管58に挿通させているため、前記糸立てピン55と前記上糸案内管58との総長が長い場合は、それに見合う長さの糸通し具が必要となる。従って、前記糸立てピン55と前記上糸案内管58との総長をあまり長くすると糸通しが困難となるため、前記総長が長いものは実現困難であった。
【0010】
同様に、周知の針金状の糸通し具を用いるため、前記糸立てピン55及び前記上糸案内管58の経路に曲率が大きいカーブを設けると糸通しが困難となるため、前記経路の設け方に制限があった。
【0011】
また、糸立てピン55の高さは、最も高いボビン54に合わせて固定されているため、低いボビン54を用いると、ボビン54の上端から突出する糸立てピン55の上端部の長さが長くなってしまう。このため、ボビン54から解かれた上糸53が、その有する不可避的なねじれによって、糸立てピン55の上端部に巻き付いてしまい、糸切れが発生することがあった。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決し、糸立て装置に対してボビンを容易に抜差しでき、該ボビンから解いた上糸を刺繍ヘッドに容易にセットでき、さらに、刺繍ミシンの刺繍加工に必要な上糸を安定的に供給するとともに、刺繍加工動作により発生する振動の影響を受けにくい刺繍ミシンの上糸供給構造を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の刺繍ミシンの上糸供給構造は、上糸に張力を付与するための張力付与手段を刺繍ヘッドの上方に配設し、上糸が巻かれたボビンを糸立て装置の糸立てピンに外挿して立て、該ボビンから解かれた上糸を前記張力付与手段を経て前記刺繍ヘッドの針に供給するようにした刺繍ミシンの上糸供給構造において、前記糸立てピンの下端位置が最上部にある前記張力付与手段より下方となるように、該糸立てピンを低い位置に配設するとともに、前記糸立てピンを上端及び下端が開口した中空の筒で形成して、前記ボビンから解かれた上糸を該上端の開口から糸立てピンに挿入可能とし、該糸立てピンの下端の開口から最上部の前記張力付与手段の近傍までの間を、中空の上糸案内管を用いて途中で空気漏れが生じないように接続し、前記糸立てピンに挿入した上糸をエア流によって上糸案内管の全体に挿通可能とし、前記糸立て装置は、前記糸立てピンの上端高さを調節する高さ調節機構を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記糸立て装置の設け方は特に限定されないが、以下の態様を例示することができる。
(1)前記刺繍ミシンは前記刺繍ヘッドがテーブルの上方に水平に架設されたブリッジの前側に間隔をおいて二つ以上連設された多頭式刺繍ミシンであり、前記糸立て装置を前記ブリッジの後側に設けた態様。
【0015】
(2)前記糸立て装置を前記刺繍ミシンのテーブルの下方に設けた態様。
【0016】
前記糸立て装置においては、前記糸立て装置にセットされた前記ボビンの少なくとも一部が前記刺繍ミシンの前側から見えるように設けることが好ましい。
【0017】
前記上糸案内管としては、内面の滑りがよいものであればとくに限定されず、軟質なものでも硬質のものでも構わない。但し、軟質なものにした方が配設し易いため、より好ましい。このようなものとして、ウレタンチューブ、ビニールチューブ又はナイロンチューブを例示することができる。
【0018】
本発明の刺繍ミシンの上糸供給構造においては、前記糸立てピンの上端の開口をエア流入口とし、該糸立てピンの上端の開口縁に筒の外側から内側へ前記上糸が通過可能な切欠を設けることが好ましい。
【0019】
また、本発明の刺繍ミシンの上糸供給構造においては、前記上糸案内管の途中にエア流入口を設けることもできる。
【0021】
前記高さ調節機構の態様としては、特に限定されないが、次のものを例示できる。
【0022】
(1)前記糸立て装置の糸立て台に前記糸立てピンが略垂直に挿通され又は螺合されて立設されており、前記糸立て台への前記挿通又は螺合位置を調節することによって、前記糸立てピンの上端高さを調節する態様。
【0023】
(2)前記糸立てピンを二重パイプにし、一方のパイプからの他方のパイプの突出高さを調節することによって、前記糸立てピンの上端高さを調節する態様。
【0024】
なお、前記高さ調節機構によって調節する前記糸立てピンの上端高さは、特に限定されないが、該糸立てピンに前記ボビンを外挿したときに、該ボビンの上端から糸立てピンが突出する高さが5〜20mmになるようにすることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施した形態例について、図面を参照して説明する。
図1〜図6は本発明を具体化した第一実施形態の上糸供給構造を備えた多頭式刺繍ミシン1を示している。この刺繍ミシン1は、図1に示すように、テーブル3の上に水平に架設されたブリッジ4の前側に間隔をおいて連設された4つの刺繍ヘッド2と、ブリッジ4の後側に該刺繍ヘッド2毎に設けられた上糸供給構造5と、刺繍ヘッド2の下方において、テーブル3上に載置された刺繍枠6と、テーブル3の右側において、刺繍加工する図形データ、刺繍ミシン1の作動指示等を入力するためのコントローラ7とを備えている。そして、刺繍ヘッド2の上部には、張力付与機構付き糸案内具27、糸調子28等を備えた糸道装置25が配設されており、それぞれの糸案内具27、糸調子28等は、上糸へ張力を付与する張力付与手段を備えている。
【0026】
上糸供給構造5は、図2及び図3に示すように、ボビン10を立てるための糸立て装置13と、糸立て装置13と糸案内具27の近傍との間に配された9本のウレタン製の中空管である上糸案内管15とを備えている。
【0027】
糸立て装置13は、糸立て台16と、該糸立て台16に一定の間をおいて立てられた9本の糸立てピン12とを備え、各糸立てピン12には上糸11が巻かれたボビン10が外挿して立てられている。このとき、糸立てピン12の上端部はボビン10の上部から突出するようになっている。糸立て装置13は、糸立てピン12の下端位置が糸案内具27より下方であって、図1に示すように、刺繍ミシン1の前側から糸立てピン12に外挿されたボビン10の上部が見えるように設けられており、前側からボビン10に巻かれた上糸11の残量を容易に確認できるようになっている。具体的には、糸立て装置13は、糸立てピン12の下端位置が床から1330mm(例示であって、これに限定されない。好ましくは1350mm以下であり、更に好ましくは1250mm以下である。)の高さになるように、ブリッジ4の後側にボルトによって固定されている。
【0028】
糸立てピン12は、図4に示すように、上端及び下端が開口した筒17と該筒17の上端の開口に嵌入されたキャップ18とよりなっており、筒17の下端側に螺刻された雌ネジに螺合されたナット22,22によって糸立て台16に立てられている。キャップ18はフランジ部24を備え、該フランジ部24によって筒17の上端の開口の端面を覆うようになっている。そして、フランジ部24の上面の内周縁及び外周縁は、その全周が滑らかな曲線となるように形成されている。また、フランジ部24の上面には、図4及び図5に示すように、糸立てピン12の外側から内側へ上糸11が通過可能な切欠20が設けられている。
【0029】
糸道装置25の上端部には、図6に示すように、前側と後側とを貫通させた穴23が水平に9つ配設された止具29が設けられ、各穴23には、前側からキャップ19が嵌入されている。該キャップ19は、切欠20が設けられていない点を除いてキャップ18と同様のものである。
【0030】
各上糸案内管15の一端側は、図4に示すように、各糸立てピン12の下端の開口から、上糸案内管15の先端がキャップ18の下側に当たるまで挿入されている。該上糸案内管15の外周は糸立てピン12の内周より若干太めに形成されており、糸立てピン12に一旦挿入されると、簡単には抜けないようになっている。
【0031】
また、各上糸案内管15の他端側は、図6に示すように、各穴23の後側から、その先端がキャップ19の後側に当たるまで挿入されており、前記糸立てピン側と同様に一端挿入すると簡単には抜けないようになっている。
【0032】
このように、上糸案内管15によって、糸立てピン12の下端の開口から糸道装置25の糸案内具27の近傍までの間を途中で空気漏れが生じないように接続してある。従って、図2に示すように、上糸案内管15の途中部には糸案内具27側に向かって上向き勾配をなす部位がある。
【0033】
上糸11を糸立てピン12及び上糸案内管15に挿通させるには、まず、糸立てピン12及び上糸案内管15に挿通させるのに十分な上糸11をボビン10から解いておく。次に、上糸11の先端をキャップ18に設けられた切欠20を介して糸立てピン12に挿入する。一方、エアコンプレッサー(図示略)からチューブで延出されたエアガンを手に持ち、該エアガンのノズル21を糸立てピン12の上端の開口縁に当接させ、ノズル21から加圧されたエアを噴射させる。そうすると、エア流によって上糸11が切欠20を通して糸立てピン12及び上糸案内管15の中空部に強制的に送り込まれ、上糸案内管15の糸道装置25側端部から上糸11が送り出される。こうして、上糸11を瞬時に挿通させることができる。
【0034】
このように構成された上糸供給構造によれば、ボビン10から解かれた上糸11は、すぐに糸立てピン12の上端の開口から入り、常に糸立てピン12や上糸案内管15によって周囲が拘束されているため、上糸11が撚りの強いものであってもそれがループ状になることはなく、また、隣接するボビン10相互の上糸11が絡むこともない。
【0035】
また、糸立てピン12の下端位置が糸案内具27より下方になるように糸立て装置13を低く設けたため、糸立て装置13に対してボビン10を抜差しするときに、作業者は、背伸びしたり、台に乗ったりすることなく、容易に作業することができる。そして、糸立て装置13に多数のボビン10が密集して配置される多頭式の多針刺繍ミシンにおいても、同様にボビン10を容易に抜差しできる。
【0036】
同じく、糸立て装置13を低く設けたため、刺繍ミシン1の刺繍加工動作により発生する振動の糸立て装置13への影響が少ない。このため、ボビン10に巻かれた上糸11にばらけや、たるみが生じにくく、隣り合うボビン10の上糸11同士が絡んだり、上糸11がボビン10の下に入り込んで引っ掛り、糸切れが発生するという問題が生じにくい。
【0037】
また、上糸案内管15によって、糸立てピン12の下端の開口から糸道装置25の糸案内具27の近傍までの間を途中で空気漏れが生じないように接続するとともに、エア流によって上糸11を糸立てピン12及び上糸案内管15に挿通させているため、糸立てピン12及び上糸案内管15の総長が長い場合や、糸立てピン12及び上糸案内管15の経路に曲率が大きいカーブを設けた場合であっても、瞬時に上糸を挿通させることができる。従って、従来の周知の針金状の糸通し具を用いる場合のように糸通しが困難になるという問題は一切生じない。
【0038】
さらに、糸立てピン12の上端の開口縁に切欠20を設けたため、糸立てピン12及び上糸案内管15に上糸11を挿通させるときに、エアガンのノズル21を糸立てピン12の上端の開口縁に当接させた状態でも、切欠20を介して、ノズル21と糸立てピン12との間に上糸11をスムーズに通過させることができる。従って、上糸11が通過可能な隙間を作るために、ノズル21を糸立てピン12の上端の開口縁から少し浮かせる必要がなく、糸立てピン12及び上糸案内管15に上糸11を容易に挿通させることができる。
【0039】
図7は第二実施形態の刺繍ミシンの上糸供給構造30を示し、次の点においてのみ、第一実施形態と相違している。従って、第一実施形態と同様の部分については、図7に示すように、同一の番号を付して重複説明を避ける。
【0040】
この上糸供給構造30では、上糸案内管15の糸立てピン12寄りの位置にY型接手31を設け、該Y型接手31の流入口32は手動弁33を介して前記エアコンプレッサー(図示略)に接続されている。そして、手動弁33を押下すると、前記エアコンプレッサーにより加圧されたエアが手動弁33から噴射され、エア流が上糸案内管15の糸道装置25方向側へ流入するようになっている。
なお、糸立てピン34の上端の開口縁には、第一実施形態と異なり切欠が設けられていない。
【0041】
この上糸供給構造30において、上糸11を糸立てピン12及び上糸案内管15に挿通させるには、まず、ボビン10から糸立てピン12及び上糸案内管15を挿通させるのに十分な上糸11を解いておく。次に、上糸11の先端を糸立てピン12の上端の開口に挿入する。そして、手動弁33を押下すると、加圧されたエアが噴射され、エア流がY型接手31の流入口32を介して上糸案内管15の糸道装置25方向側へ流入する。そうすると、上糸11は、該エア流によって糸立てピン12の中空部に強制的に引き込まれ、上糸案内管15の糸道装置25側端部から送り出される。こうして、上糸11を瞬時に挿通させることができる。
【0042】
この上糸供給構造30によれば、Y型接手31を介してエア流を上糸案内管15の中空部に送るようにしたため、上糸11を通すときに、第一実施形態のように糸立てピン12の上端の開口縁に前記エアガンのノズル21を当接させる手間がない。このため、第一実施形態よりも、さらに容易に上糸11を挿通させることができる。
【0043】
図8及び図9は第三実施形態の刺繍ミシンの上糸供給構造35を示し、この上糸供給構造35では、糸立て装置36を刺繍枠6が載置されたテーブル3の下方かつ前側に設けた点においてのみ、第一実施形態と相違している。従って、第一実施形態と同様の部分については、図に示すように、同一の番号を付して重複説明を避ける。
【0044】
この刺繍ミシンの上糸供給構造35によれば、糸立て装置36をテーブル3の下方に低く設けたため、作業者の身長の高低に拘らず、ボビン10を容易に抜差しできる。
【0045】
また、糸立て装置36をテーブル3の下方かつ前側に設けたため、糸立て装置36に対するボビン10の抜差しや、上糸11の刺繍ヘッド2へのセット等の作業を刺繍ミシン1の後側に廻ることなく、前側から行なうことできる。また、刺繍ミシンの後方にボビン10の抜差し等の作業のためのスペースを設ける必要がない。
【0046】
次に、図10は第一〜三実施形態のいずれにも適用可能な第一変更例の糸立て装置40を示し、この糸立て装置40は、糸立てピン41の上端高さを調節する高さ調節機構を設けた点においてのみ、第一実施形態の糸立て装置13と異なる。
【0047】
糸立て装置40の糸立て台16には9つの穴16aが設けられており、各穴16aにはゴム又は軟質樹脂製のピン支持部42が取り付けられている。そして、各ピン支持部42によって、9本の糸立てピン41が立てられている。
【0048】
ピン支持部42は上下方向に貫通した取付け穴42aを備えた円筒形をしており、その外周壁には糸立て台16に設けられた穴16aの内周縁に嵌合する周溝42bが凹設されている。取付け穴42aの内周壁は凹凸面又は粗面に形成され、その内径は糸立てピン41の外径より縮径されている。そして、糸立てピン41の下端側が挿着されたときに、取付け穴42aの内周壁の弾性力、及び、該内周壁と糸立てピン41の外周壁との摩擦力によって糸立てピン41を支持するようになっている。この糸立てピン41のピン支持部42への挿着位置をスライドして変更することにより糸立てピン41の上端高さを調節可能になっており、これが糸立てピン41の高さ調節機構である。
【0049】
図11は第一〜三実施形態のいずれにも適用可能な第二変更例の糸立て装置44を示し、この糸立て装置44では、糸立てピン45の下端側に刻設された雄ネジ部45aが長めに設けられている点においてのみ、第一実施形態の糸立て装置13と異なる。
【0050】
この糸立て装置44は、糸立てピン45の糸立て台16への締結位置を変更することにより、糸立てピン45の上端高さを調節可能にしており、これが、糸立てピン45の高さ調節機構である。
【0051】
図12は第一〜三実施形態のいずれにも適用可能な第三変更例の糸立て装置47を示し、この糸立て装置47では、糸立てピン48を糸立て台16に止め具49を用いて固定するようにした点においてのみ、第二変更例と異なる。
【0052】
糸立てピン48の下端側には、第二変更例と異なり、雄ネジが螺刻されていない。糸立てピン48は、その下端側が糸立て台16に設けられた穴16aに垂直に挿入された状態で、糸立て台16の上面側と下面側から糸立てピン48に貫装された一対の止め具49によって、糸立て台16に固定されている。
【0053】
止め具49は、内径が糸立てピン48の外径と略等しくされ、上下方向に貫通した取付け穴49aと、側面から取付け穴49aに直角に開口する雌ネジ穴49bと、雌ネジ穴49bに螺入された雄ネジ49cとを備えている。そして、雌ネジ穴49bに螺入された雄ネジ49cの螺入側先端部によって、取付け穴49aに挿入された糸立てピン48を取付け穴49aの内周壁に圧着することにより、止め具49は糸立てピン48に固定されるようになっている。
【0054】
糸立てピン48の糸立て台16への固定位置を変更することにより糸立てピン48の上端高さを調節可能にしており、これが糸立てピン48の高さ調節機構である。
【0055】
ここで、第一〜第三変更例に係る高さ調節機構によって調節する糸立てピン41,45,48の上端高さは、特に限定されないが、糸立てピン41,45,48にボビン10を外挿したときに、ボビン10の上端から糸立てピン41,45,48の突出高さhが5〜20mmになるようにすることが好ましい。
【0056】
このように第一〜三変更例に係る糸立て装置40,44,47は、いずれも糸立てピン41,45,48の高さ調節機構を備えているので、ボビン10のサイズに応じて糸立てピン41,45,48の高さを最適に調節することができる。従って、ボビン10から解かれた上糸11が、ボビン10から突出した糸立てピン41,45,48の上端側に巻き付くことによる糸切れの発生を大きく減少させ、もって、刺繍ミシンの刺繍加工に必要な上糸11を安定的に供給することができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)糸立てピンを傾斜させて設け、ボビンが前方に傾斜するようにすること。(2)糸立てピンの上端の開口縁に設けた切欠を、糸立てピンではなく、エアガンのノズル先端の開口縁に設けること。
【0058】
(3)糸立てピン又はボビンの上端にフランジ部を備えた糸ガイドを設け、ボビンに巻かれた上糸が、前記フランジ部によって前記ボビンから外方向に引き離されるようにして解かれるようにすること。
【0059】
(4)第二変更例に係る糸立て装置44において、糸立て台16に設けた穴16aに糸立てピン45に螺合する雌ネジを刻設することによって、糸立て台16の上面側又は下面側のいずれか一方のナット22を省略すること。
【0060】
(5)第一〜三実施形態において、糸立てピン12を二重パイプにし、一方のパイプからの他方のパイプの突出高さを調節することによって、糸立てピン12の上端高さを調節すること。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に係る刺繍ミシンの上糸供給構造によれば、糸立て装置に対するボビンの抜差しを容易に行なうことができ、ボビンから解いた上糸をエア流によって上糸案内管の全体に容易かつ瞬時に挿通することができ、さらに、刺繍ミシンの刺繍加工動作により発生する振動の影響を受けにくくするという優れた効果を奏し、さらに、刺繍ミシンの刺繍加工に必要な上糸を安定的に供給することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態の上糸供給構造を備えた刺繍ミシンの正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本発明を具体化した第一実施形態の上糸供給構造の平面図である。
【図4】同上糸供給構造の糸立て装置側の部分断面図である。
【図5】図4のV矢示図である。
【図6】同上糸供給構造の糸調節器側の部分断面図である。
【図7】本発明を具体化した第二実施形態の上糸供給構造の側面を示す断面図である。
【図8】本発明を具体化した第三実施形態の上糸供給構造を備えた刺繍ミシンの正面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】本発明を具体化した第一〜三実施形態のいずれにも適用可能な第一変更例の糸立て装置を示す側面の部分断面図である。
【図11】同第二変更例の糸立て装置を示す側面の部分断面図である。
【図12】同第三変更例の糸立て装置を示す側面の部分断面図である。
【図13】従来の上糸供給構造を示す側面図である。
【符号の説明】
1 刺繍ミシン
2 刺繍ヘッド
3 テーブル
4 ブリッジ
5 上糸供給構造
10 ボビン
11 上糸
12 糸立てピン
13 糸立て装置
15 上糸案内管
17 筒
20 切欠
21 エアガンのノズル
27 張力付与機構付き糸案内具
30 上糸供給構造
32 流入口
34 糸立てピン
35 上糸供給構造
36 糸立て装置
40 糸立て装置
41 糸立てピン
44 糸立て装置
45 糸立てピン
47 糸立て装置
48 糸立てピン
Claims (1)
- 上糸に張力を付与するための張力付与手段を刺繍ヘッドの上方に配設し、上糸が巻かれたボビンを糸立て装置の糸立てピンに外挿して立て、該ボビンから解かれた上糸を前記張力付与手段を経て前記刺繍ヘッドの針に供給するようにした刺繍ミシンの上糸供給構造において、
前記糸立てピンの下端位置が最上部にある前記張力付与手段より下方となるように、該糸立てピンを低い位置に配設するとともに、
該糸立てピンを上端及び下端が開口した中空の筒で形成して、前記ボビンから解かれた上糸を該上端の開口から糸立てピンに挿入可能とし、
該糸立てピンの下端の開口から最上部の前記張力付与手段の近傍までの間を、中空の上糸案内管を用いて途中で空気漏れが生じないように接続し、前記糸立てピンに挿入した上糸をエア流によって上糸案内管の全体に挿通可能とし、
前記糸立て装置は、前記糸立てピンの上端高さを調節する高さ調節機構を備えたことを特徴とする刺繍ミシンの上糸供給構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07441697A JP3829205B2 (ja) | 1996-05-09 | 1997-03-10 | 刺繍ミシンの上糸供給構造及び上糸供給方法 |
Applications Claiming Priority (3)
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