JP3829036B2 - 定着ローラ製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置に装着される定着装置のヒートローラとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写紙・OHPフィルム等の記録材(以下、用紙という)に転写された未定着画像(トナー像)を用紙上に定着させる定着装置として熱定着装置が広く利用されている。熱定着装置としては、加熱された定着ローラに加圧ローラを圧接させ、用紙を両ローラで挟持搬送しながらトナーを加熱溶融して未定着トナー像の定着を行なうヒートローラ方式のものが多用されている。
【0003】
従来、ヒートローラ方式の定着装置では、定着ローラ内部に加熱ヒータとしてのハロゲンランプ等を備え、このハロゲンランプで定着ローラを加熱するものが主流であった。
【0004】
しかし、このようなヒータによる加熱方式は、定着ローラを必要な温度(一般的には約180℃)に加熱するまでの時間が長く、また、ヒータ自体の損失も大きいため、環境問題が注目される現在では、効率が良く、立ち上がり時間の早い定着装置が要求されている。
【0005】
このような状況にあって、定着ローラを電磁波による渦電流によって加熱する誘導加熱方式の定着装置、または、定着ローラの周面に絶縁層を介して電気抵抗体等の発熱層を設け、これを発熱させるようにした直接加熱方式(表面抵抗発熱方式)の定着装置は立ち上げ時間を画期的に短くすることができ、従来のハロゲンランプ方式では必要であった予熱(再使用時に定着部の温度を速やかに所定温度まで立ち上げるため、非画像形成時にも定着部の温度を維持すること)の必要がなくなり、無駄な電力を不要とすることができ、かつ、加熱効率も優れているため、環境問題にも有利な方式として注目されている。
【0006】
上記各加熱方式の定着装置においても、立ち上げ時間の短縮に最も簡単で効果的な方法は、定着ローラの芯金肉厚を薄くして熱容量を減らすことである。しかし、定着ローラの肉厚を薄くするとローラの機械強度が弱くなり、加圧ローラと接触するニップ部分においてローラが弓なりにたわんで中央部の接触圧が弱くなり、ニップが減少し定着性が低下する。
【0007】
ここで、ヒータ内蔵式の従来の定着ローラを用いる定着装置の一例を図面により説明する。
図13,14において、ハロゲンランプ3を内蔵する定着ローラ1に加圧ローラ2が圧接されている。この定着ローラ1は薄肉ローラであり、加圧ローラ2と圧接されることによって、破線で示すように弓なりに撓んでしまう。軸方向中央部でのローラ撓み量をdで示す。このように定着ローラが撓む結果、中央部の接触圧が弱くなり、ニップが減少して定着性が低下する。
【0008】
図15は、この定着装置のニップ量を示す図で、ローラ端部でのニップ幅n2に対してローラ中央部でのニップ幅はn1であり、n2>n1となっている。
定着ローラに加圧ローラを圧接させたときに、定着ローラの撓みを防ぐ(撓みを無視できる)ためには、従来、定着ローラの肉厚を例えばアルミ製ローラの場合は1mm以上としていた。しかし、立ちあがり時間を短縮するために定着ローラ肉厚を薄くすると、上記のように撓み変形が生じ、定着性が低下する。
【0009】
定着性が低下すると、トナーが記録紙に定着されないため手でこすると落ちてしまう。また、定着ローラが回転時に変形−矯正の繰り返しをするため、ロ−ラが振れ、結果として用紙スキューやシワなどが発生しやすくなる。また回転時の負荷変動によって回転ムラが生じるため、記録画像にジターが生じやすい。
【0010】
これらの不具合を防止するために、定着ローラを補強する方法が各種提案されている。例えば、特開昭57−155571号公報には、定着ローラ内面にリブを設ける方法が提示されている。この公報に記載の発明の場合、ローラ外周面から外圧を加え内面に押し出し(絞り加工)をした後、へこんだ部分を切削加工するものである。
【0011】
また、薄肉ローラの内面にリング状の補強部材を溶接するもの(特開平9−218604)や、押し出し成形時に内面に放射状のリブを設けたもの(特開昭59−155875)などが提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の定着ローラの補強方法では、実際に試作実験をした結果、強度アップするだけの目的としては効果があるが、強度アップした部分の肉厚が厚くなるためその部分は温度上昇時間(定着立ち上がり時間)に時間がかかりすぎることがわかった。すなわち、待ち時間を長く設定しなければ立ち上がり時に定着不良が生じる結果となる。
【0013】
つまり、強度アップと立ち上り時間とは相反した関係に有り、定着ローラとして双方を満足させる領域は非常に狭い範囲であることがわかった。
本発明は、従来の薄肉定着ローラにおける上述の問題を解決し、強度アップと立ち上り時間短縮の双方を満足させることのできる定着ローラ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、本発明により、ローラ内周面に交差状のリブを設けた熱定着装置の定着ローラの製造方法において、前記交差状のリブのうちのローラ長手方向に延設される複数の第1リブを押出し加工によるローラ芯金の製作時に同時成形したあと、前記第1リブに交差する第2のリブを転造により成形することにより解決される。
【0015】
また、前記の課題は、本発明により、ローラ内周面に交差状のリブを設けた熱定着装置の定着ローラの製造方法において、
前記交差状のリブのうちのローラ長手方向に延設される複数の第1リブを引抜き加工によるローラ芯金の製作時に同時成形したあと、
前記第1リブに交差する第2のリブを転造により成形することにより解決される。
【0016】
前記第2リブがローラ軸に垂直なリング状になるよう転造成形すると好適である。
【0017】
前記第2リブがローラ内周面に沿った螺旋状になるよう、転造加工時に転造ダイスをローラ軸に対し所定角度傾けて転動させると好適である。
【0024】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記第2リブの成形後、ローラ外周を切削または研削により円筒形に加工することを提案する。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の定着ローラの構成を示す断面図で、(a)は軸方向の断面図、(b)は軸に垂直な断面図である。
【0026】
この図に示すように、本実施形態の定着ローラ10には、ローラ芯金11の内周面に、軸方向に延設された複数本のリブ(以下、縦リブという)12と、軸に垂直方向に周面に沿って延設された複数本のリブ(以下、円周リブという)13とが設けられている。本実施形態では、縦リブ12は、計18本が互いに等間隔となるようにローラ内周面に(ローラ内周を18等分して)設けられている。なお、図では煩雑を防ぐために縦リブの本数は18本より少なく描かれている。また、円周リブ13は、各リブが互いに等間隔となるようにローラ長手方向(軸方向)に設けられている。ただし、縦リブ12及び円周リブ13の本数は本実施形態に限定されるものではない。また、複数本の円周リブ13を等間隔に配置するのではなく、後述するように、強度を強めたい部分で円周リブの間隔を狭めて配置することもできる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態の定着ローラについて説明する。
図2に示すように、この実施形態の定着ローラ20には、ローラ芯金21の内周面に、軸方向に延設された計18本の(ローラ内周を18等分する)縦リブ22と、周面に沿って螺旋状に延設された1本の螺旋リブ23とが設けられている。ただし、縦リブ22及び螺旋リブ23の本数は本実施形態に限定されるものではない。螺旋リブ23を2本以上設けることも可能である。また、螺旋リブ23の螺旋のピッチも任意に設定することができる。
【0028】
次に、本発明の第3の実施形態の定着ローラについて説明する。
図3に示すように、この実施形態の定着ローラ30には、ローラ芯金31の内周面に、軸方向に延設された計18本の(ローラ内周を18等分する)縦リブ32と、ローラの両端部付近にそれぞれ3本ずつ配置された計6本の円周リブ33aと、円周リブ33aの内側部に延設された1本の螺旋リブ33とが設けられている。ただし、縦リブ32,円周リブ33a及び螺旋リブ33bの本数は本実施形態に限定されるものではない。螺旋リブ33bを2本以上設けることも可能である。また、螺旋リブ33bの螺旋のピッチも任意に設定することができる。円周リブ33aの設置範囲や個数は限定されない。さらに、円周リブ33aを等間隔となるように配置することもできるし、任意の部分で間隔を狭めることもできる。
【0029】
さて、上記各実施形態の定着ローラ10,20,30を従来の定着ローラと比較しながら説明する。
図4に示す定着ローラ1は単純な円筒形状をした従来型の定着ローラであり、図13,14で説明したように、加圧ローラ2に圧設されたときに撓みd(定着ローラ中央部での下面変位)を生じてしまう。このような単純円筒形のローラで撓みを無視できる範囲とするためには芯金肉厚が約1mmを要する。その肉厚1mmの単純円筒形のローラを図13,14に示すような構成の定着装置(ヒータ内蔵方式とする)で実験したところ、立ちあがり時間(ローラ表面温度が170℃に達するまでの時間)は約15秒となった。なお、ローラ材質はアルミニウム、ローラ外径は30mmである。また、ハロゲンランプ3への入力電力は1200Wである。
【0030】
ここで、定着ローラに要求される立ち上がり時間と強度について説明する。
従来、定着ローラの肉厚は1mm以上あり、加圧時に定着ローラの撓みは無視することができた。しかし、立ち上がり時間を短縮するためにローラ肉厚を薄くすると、ローラが撓み変形d(図13,14参照)を生じ、これによって定着性低下・用紙スキューやシワの発生・記録画像にジター発生などの問題が生じる。したがって、ローラの撓み変形が無視できる範囲内に収まることと、立ち上がり時間が短いことが要求される条件となる。
【0031】
高速立ちあがりが可能な定着ローラに要求される好ましい条件として、ここでは、定着ローラの表面温度が常温(室温)から170℃にまで上昇する時間が9秒以内であることを温度上昇の最適目標として設定する。言い換えると、立ち上げ9秒後にローラ表面温度が170℃以上になることである。なお、このときの定着ヒータ(ハロゲンランプ)への入力電力は1200Wとする。
【0032】
一方、強度の目標としては、定着率が安定するニップ幅を得るためには、ローラ軸方向中央部の撓み(下面変位)量を0.3mm以下にする必要がある。このときの加圧ローラのゴム硬度は、アスカ−C硬度で50度である。なお、加圧ローラから定着ローラへの加圧力は片側(ローラの一方側)で98Nである。
【0033】
本願発明者らは、図13,14に示すような構成の定着装置(ヒータ内蔵方式とする)に使用する場合の定着ローラとして、ローラ材質がアルミニウム、ローラ外径が30mm、ハロゲンランプへの入力電力が1200Wを実験時のパラメータとして、上記の目標値に近付くよう、また、上記目標値を満足させるよう、シミュレーションと試作を繰り返した。
【0034】
上記パラメータのような実験条件の場合、上記の肉厚1mmの単純円筒形のローラは、立ち上がり時間が約15秒であり、温度上昇の目標値には程遠く、満足できるものではない。
【0035】
そこで、図4のローラ1と同じような単純円筒形(リブ無し)のローラで肉厚を0.4mmのもので実験したところ、次の表1の試験体▲1▼のような結果を得た。
【表1】
【0036】
すなわち、肉厚0.4mmの単純円筒形ローラである試験体▲1▼は、立ち上げ9秒後の温度が187℃であり、温度上昇の目標値はクリアしている。しかし、試験体▲1▼では撓み量dが0.645mmであり、撓みが大きすぎる。
【0037】
次に、同じく単純円筒形(リブ無し)のローラで肉厚を0.45mmのもので実験したところ、表1の試験体▲2▼のような結果を得た。すなわち、試験体▲2▼は、立ち上げ9秒後の温度が178℃であり、温度上昇の目標値はクリアしている。しかし、撓み量dが0.611mmであり、やはり撓み量が大きい。つまり、試験体▲1▼及び▲2▼は、温度上昇の目標値は満足しているが、強度が弱すぎることが判る。
【0038】
次に、図5に示す定着ローラ50で実験したところ、表1の試験体▲3▼のような結果を得た。この定着ローラ50は、図5に示すように、肉厚0.4mmの芯金51の内面に、軸に垂直(ローラ端面に平行)に複数本の円周リブ53を設けたものである。各円周リブ53の間隔は等しく配置されているものとする。このローラのA部の拡大を図6に示す。図6において、円周リブ53の幅:c、リブ53の高さ:h、リブピッチ(間隔):pである。
【0039】
すなわち、試験体▲3▼は、立ち上げ9秒後の温度が175℃であり、温度上昇の目標値はクリアしている。しかし、撓み量dが0.485mmであり、まだ満足できるものではない。
【0040】
また、形状は図5のものと同様であるが、芯金肉厚を0.45mmとしたものを実験した結果、表1の試験体▲4▼のような結果を得た。すなわち、試験体▲4▼は、立ち上げ9秒後の温度が171℃であり、温度上昇の目標値はクリアしている。しかし、撓み量dが0.407mmであり、まだ強度が不足している。
【0041】
図5に示すような円周リブを配置した定着ローラでは、リブ幅:c、リブ高さ:h、リブピッチ:pをそれぞれ異ならせた組み合わせのローラでも実験を行なったが、立ち上げ9秒後の温度が170℃前後になるものでは下面変位が0.4mm以上あり、まだ強度が弱い状態であった。
【0042】
ここまでの、単純円筒形(リブ無し)あるいは円周リブを配置した定着ローラでは、温度上昇と強度の両立点を見出すことはできない。そこで、本願発明者らは、新たなリブ形状を考案し、試作実験を継続した。それは、先に説明した図1,2,3の定着ローラ10,20,30である。
【0043】
図1の定着ローラ10は、補強用のリブとして、軸方向に延設された縦リブ12に円周リブ13を追加したものである。軸方向の断面図(a)で見ると、縦リブ12と円周リブ13が交差しているので、定着ローラ10のリブ形状を交差リブと呼ぶ。
【0044】
また、図2の定着ローラ20は、補強用のリブとして、軸方向に延設された縦リブ22に螺旋リブ23を追加したものである。縦リブ22と螺旋リブ23は、直角に交わってはいないが交差しているので、これも交差リブと呼ぶ。
【0045】
なお、図1の定着ローラ10では縦リブ12が軸方向に(軸に平行に)延設されているが、縦リブ12をスパイラル状にねじった形状としても良い。そして、スパイラル状の縦リブと図2の定着ローラ20の螺旋リブ23とを組み合わせると、両リブが形作る形状はひし形(両リブがひし形に交差する形状)となり、これらも交差リブの一つである。このリブ形状は図示していないが、交差リブとして本発明の一つの実施形態といえる。
【0046】
そして、図3の定着ローラ30は、補強用のリブとして、軸方向に延設された縦リブ32に円周リブ33aと螺旋リブ33bとを追加したものである。この定着ローラ30の場合は、ローラ両端部の軸受部分(軸受に当接する部分)に円周リブ33aを設けることによって強度をさらに向上させている。この定着ローラ30のように円周リブ33aと螺旋リブ33bとを有するものでも、縦リブをスパイラル状にねじった形状としても良い。
【0047】
いずれにしても、ローラ長手方向に伸びる縦リブ(軸に平行なリブ又はスパイラル状にねじったリブ)と円周リブ又は(及び)螺旋リブとを設けることにより、それぞれのリブが縦横方向あるいはひし形形状等に交差することで、定着ローラの強度アップの効果をもたらすことができる。
【0048】
ところで、上記定着ローラ10,20,30において、縦リブ(スパイラル状にねじったものも含む)12,22,32のリブ形態としては、図7又は図8に示すような形状が考えられる。図7のもはリブ断面が角状であり、角リブと呼ぶ。また、図8のものはリブ断面が三角形状であり、三角リブと呼ぶ。図7,8に示すように、各リブのリブ幅をc、リブの高さをhとする。この他、図示はしないがリブ断面が台形形状などでも良い。
【0049】
図1,2,3に示すようなリブ配置(交差リブ)でリブ形状を図7の角リブとした定着ローラを四角交差リブと呼び、その四角交差リブの定着ローラで実験したところ、表1の試験体▲5▼のような結果を得た。このとき、角リブの幅c=0.5mm、リブ高さh=1.2mm、縦リブの本数は18本(円周18等分)である。
【0050】
この試験体▲5▼では、ローラ中央部での下面変位dが0.269mmであり、立ち上げ9秒後のローラ温度が137℃であった。つまり、強度は大幅に向上して目標値をクリアしたが、温度は低すぎて満足できるものではなかった。しかし、ローラ強度の向上には交差リブを設けることが大きな効果を奏することが判ったので、リブ断面形状やリブ幅・リブ高さ等を工夫することによって温度特性を改善してやれば、従来型の定着ローラ(リブ無し、あるいは円周リブなど一方向のみのリブ)に比して、有利なものとすることが可能である。
【0051】
次に、図1,2,3に示すようなリブ配置(交差リブ)でリブ形状を図8の三角リブとした定着ローラを三角交差リブと呼び、その三角交差リブの定着ローラで実験したところ、表1の試験体▲6▼のような結果を得た。このとき、三角リブの幅c=2.2mm、リブ高さh=0.4mm、縦リブの本数は18本(円周18等分)である。
【0052】
この試験体▲6▼では、ローラ中央部での下面変位dが0.32mmであり、立ち上げ9秒後のローラ温度が171℃であった。つまり、強度も向上し、かつ、温度上昇の面でも最適目標値をクリアでき、強度と温度の両立点を見出すことができた。
【0053】
次に、本実施形態の定着ローラの製造方法について説明する。
まず、図9に示すような、外周面41aが円筒形で、内周面41bに軸方向に延びる縦リブ42を設けたローラ素管41を、押出し加工または引抜き加工で作る。押出し加工、引抜き加工については一般的な塑性加工法であるから詳しい説明は省略する。リブ42の断面形状は、前述したように角形、三角形、台形形状などが考えられる。もちろん、リブの断面が曲線部を有するものも製造可能である。
【0054】
次に、図10に示すように、ローラ素管41の外周側から転造ダイス(転造ロール)45を押し付けて中心方向に力を加える。すると、図11に示すように、ローラ内部に突起部ができてこの突起部が円周リブ43となる。なお、転造ダイス45は、ローラ素管41の周囲を回るようにローラ外周面全体を転動させる(または、ローラ素管41の方を回転させる)ことはいうまでもない。
【0055】
ここで、縦リブ42と円周リブ43の高さを合わせる(一致させる)ことによって、同じ高さの交差リブが形成される。縦リブ42と円周リブ43の高さを合わせることにより、リブのバランスがとれ、強度・温度のムラを排することができる。
【0056】
図11の状態では、ローラ素管41の外周面に凹部43b(転造ダイスの転動軌跡)ができているので、ローラ素管41の外周面を切削または研削加工によりフラット化し、所望の肉厚(リブが無い部分の厚みをローラ肉厚とする)の定着ローラ40(図12)が完成する。
【0057】
なお、図10〜図12では、円周リブの場合で説明したが、螺旋リブ(図2参照)を作る場合は、転造ダイス45を所定の角度だけ傾けて転動させることにより、螺旋リブを形成することができる。
【0058】
ここまで説明したように、定着ローラの内周面に交差状のリブを設けることによって、リブ無し又は円周リブもしくは縦リブのどちらか一方のみを有する単一リブの定着ローラに比べ、ローラ強度を大幅に向上させることができる。そのため、定着ローラの薄肉化が可能となり、定着ローラの立ち上がり時間を短縮して強度と温度(立ち上がり時間)の両立が可能になる。
【0059】
さらに、リブ断面形状やリブ幅・リブ高さ等を工夫することによって温度特性を改善し、高速立ち上がりの定着ローラに要求される強度と立ち上がり時間(温度特性)の両立を達成することができる。
【0060】
また、交差リブを、ローラ長手方向に延設される第1のリブ(実施形態における縦リブ)と、ローラ周方向に延設される第2のリブ(実施形態における円周リブあるいは螺旋リブ)とによって形成することにより、第1のリブは押出し加工・引抜き加工等によりローラ素管成形時に同時に設けることができ、単純円筒ローラと同じコストで第1リブを設けることができる。また、ローラ素管成形時に第1のリブを形成することにより、軸方向の曲がりを少なくでき(縦リブを軸に平行にする場合)、矯正が不要となる。そして、第1リブを設けた後に第2リブを設けることができ、後加工としてのリブ形成を第2リブのみとすることができ、加工時間を短縮することができる。
【0061】
また、第2のリブを円周リブとする場合には、転造ダイス(転造ロール)の構造が簡単で、ダイスを定着ローラの軸に垂直な方向の1方向だけに転動させることで加工でき、第2のリブ形成の加工を容易にすることができる。また、同じ加工作業を繰り返すことで複数の円周リブを形成することができ、簡単な設備で交差リブを作成することができる。あるいは、複数の転造ダイスを使用することで加工作業の能率を高めることも可能である。
【0062】
また、第2のリブを螺旋リブとする場合には、転造ダイス(転造ロール)を所定角度傾けて転動させることにより螺旋リブを形成でき、容易に螺旋リブを設けることができる。そして、円周リブの場合には複数のリブを作るときに作業を繰り返す必要があるが、螺旋リブを形成する場合には1回の設定で連続的にリブ形成ができる。
【0063】
さらに、第2のリブとして円周リブと螺旋リブとを併用する場合、定着ローラの部分的な強度アップが容易にできる。例えば、図3に示す定着ローラ30の場合、ローラ端部に円周リブ33aを、中央寄りに螺旋リブ33bを配置しているが、端部に配した円周リブ33aの間隔を狭くする(ピッチを狭める)ことにより、ローラ端部(軸受に対応する部分)での強度向上を図っている。あるいは、図1の定着ローラ10においても、ローラ端部付近で円周リブ13の間隔を狭めることでその部分での強度向上を図ることができる。このように、強度向上したい位置に配置する複数の円周リブの間隔を狭めることにより、所望位置でのローラ強度アップを用意に実現できる。
【0064】
ところで、上記実験に使用した本実施形態の定着ローラは、ローラ材料としてはアルミニウム製のものを使用したが、ローラ材料としては鉄を用いることもできる。アルミニウム製ローラは軽量で温度特性に優れ、また、鉄製ローラはヤング率がアルミよりも高い(高強度)ために、設けるリブの数をアルミニウム製ローラの場合よりも少なくすることができる。
【0065】
なお、本発明のローラはヒータ内蔵方式の定着ローラに限定されるものではない。ヒータ内蔵方式以外にも、ヒータをローラ外部に配置する方式、ローラ周面に抵抗発熱層を設けた直接加熱方式、あるいは誘導加熱方式の定着ローラに本発明を適用することが可能である。いずれの加熱方式においても、本発明により交差状のリブを設けることによってローラ強度を大幅に向上させることができるので、定着ローラの薄肉化が可能となり、定着ローラの立ち上がり時間を短縮して強度と温度(立ち上がり時間)を両立させることができる。
【0066】
【発明の効果】
請求項1又は2に記載の本発明の定着ローラ製造方法によれば、交差状のリブのうちのローラ長手方向に延設される複数の第1リブを押出し加工または引抜き加工によるローラ芯金の製作時に同時成形したあと、第1リブに交差する第2のリブを転造により成形することにより、容易に第2リブを成形することができる。
【0075】
請求項3により、簡単なダイス構造でローラ軸に垂直なリング状の第2リブを成形することができる。また、転造ダイスの動きがローラ軸に直角な方向の1方向だけで加工することができる。さらに、その加工作業の繰り返しで複数の第2リブを成形することができ、簡易な設備で交差リブを作ることが可能となる。
【0076】
請求項4により、簡単なダイス構造で容易に螺旋状リブを成形することができる。また、加工作業の1回の設定で螺旋状リブを成形することができる。
【0077】
請求項17により、第2リブの成形後、ローラ外周を切削または研削により円筒形に加工するので、第2リブの転造加工によるローラ外周面の凹凸を簡単にフラット化し、効率良く定着ローラを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の定着ローラの構成を示す図で、(a)は軸方向の断面図、(b)は軸に垂直な断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の定着ローラの構成を示す図で、(a)は軸方向の断面図、(b)は軸に垂直な断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の定着ローラの構成を示す断面図である。
【図4】従来の単純円筒形ローラの構成を示す図で、(a)は軸方向の断面図、(b)は軸に垂直な断面図である。
【図5】従来の円周リブを配した定着ローラの構成を示す図で、(a)は軸方向の側面図、(b)は軸に垂直な断面図である。
【図6】その定着ローラの円周リブを説明するための部分断面図である。
【図7】本発明による定着ローラのリブ形態の一例を示す部分断面図である。
【図8】本発明による定着ローラのリブ形態の他の一例を示す部分断面図である。
【図9】本発明による定着ローラ製造方法における縦リブの成形過程を説明する図で、(a)はローラの側面図、(b)はローラ断面図である。
【図10】転造による円周リブの成形過程を説明するための、ローラの部分側面図である。
【図11】転造により成形された円周リブを示す部分断面図である。
【図12】円周リブ成形後に外周面をフラット化された定着ローラを示す部分断面図である。
【図13】従来の定着ローラの一例を用いた定着装置を示す構成図である。
【図14】その定着装置の定着ローラ及び加圧ローラを示す正面図である。
【図15】その定着ローラ及び加圧ローラによるニップを示す模式図である。
【符号の説明】
10,20,30 定着ローラ
11,21,31,41 ローラ素管
12,22,32,42 縦リブ(第1リブ)
13,33a,43 円周リブ(第2リブ)
23,33b 螺旋リブ(第2リブ)
45 転造ダイス
Claims (5)
- ローラ内周面に交差状のリブを設けた熱定着装置の定着ローラの製造方法において、
前記交差状のリブのうちのローラ長手方向に延設される複数の第1リブを押出し加工によるローラ芯金の製作時に同時成形したあと、
前記第1リブに交差する第2のリブを転造により成形することを特徴とする定着ローラ製造方法。 - ローラ内周面に交差状のリブを設けた熱定着装置の定着ローラの製造方法において、
前記交差状のリブのうちのローラ長手方向に延設される複数の第1リブを引抜き加工によるローラ芯金の製作時に同時成形したあと、
前記第1リブに交差する第2のリブを転造により成形することを特徴とする定着ローラ製造方法。 - 前記第2リブがローラ軸に垂直なリング状になるよう転造成形することを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着ローラ製造方法。
- 前記第2リブがローラ内周面に沿った螺旋状になるよう、転造加工時に転造ダイスをローラ軸に対し所定角度傾けて転動させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着ローラ製造方法。
- 前記第2リブの成形後、ローラ外周を切削または研削により円筒形に加工することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着ローラ製造方法。
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