JP3827248B2 - キノフタロン染料を用いるバルク染色法 - Google Patents
キノフタロン染料を用いるバルク染色法 Download PDFInfo
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Description
本発明はキノフタロン染料を用いプラスチックスをバルク染色する方法、および新規キノフタロン染料に関する。
【0002】
キノフタロン染料は既にドイツ特許A15 69 672号において織物材料を染色するのに使用され、米国特許A5 037 799号において熱転写プリント法に使用され、また日本特許A61 44 956号においては液晶組成物を染色するのに用いられている。プラスチックスを全体的においては染色するための個々のキノフタロン染料も報告されている。このような染料は、例えばドイツ特許A21 32 681号およびドイツ特許A22 03 348号においては、ヒドロキシキナリジン基が4位でハロゲン化された化合物の形で記載されている。しかしこれらの化合物は本発明に使用するような場合、熱安定性が不適当である。またキノフタロン染料は例えば日本特許A18 74 70号および同A51/092 371号にも記載されている。
【0003】
本発明においては式(I)
【0004】
【化3】
【0005】
但し式中ZはSO2またはCOを表し、
Aはアルキル、またはアリールであって、その各々は置換基をもたないか、またはハロゲン、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルキルメルカプト、シアノ、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、C6〜C10−アリール、C6〜C10−アリーロキシ、またはC1〜C4−アルコキシで置換されていることができ、
pは1または2を表す、
の染料を使用することを特徴とするプラスチックスをバルク染色する方法が見出だされた。
【0006】
上記方法では、式(I)においてAがC6〜C10−アリール、特にフェニルまたはナフチルを表し、これらの基は置換基をもたないか、またはハロゲン、特に塩素、臭素およびフッ素、C1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチル、シアノ、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、フェニル、フェノキシまたはC1〜C4−アルコキシ、特にメトキシおよびエトキシで置換されている染料を用いることが好適である。またこれらの置換基はAが置換基をもつC1〜C10−アルキルを表すものが好適である。
【0007】
好適具体化例においてはpは1を表す。
【0008】
AおよびZからつくられる好適なアリールカルボニル基は例えばベンゾイル、2−、3−および4−クロロベンゾイル、2−、3−および4−メチルベンゾイル、4−メトキシベンゾイル、4−エトキシベンゾイル、2,3−ジクロロベンゾイル、3,5−ジメチルベンゾイル、4−フェニルベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、および2−メトキシ−1−ナフトイルである。
【0009】
AおよびZからつくられる好適なアリールスルフォニル基は例えばベンゼンスルフォニル、4−メチルベンゼンスルフォニル、4−メトキシベンゼンスルフォニル、4−イソプロピルベンゼンスルフォニル、2−または4−クロロベンゼンスルフォニル、2,4−ジクロロベンゼンスルフォニル、4−メチルメルカプトベンゼンスルフォニル、4−アセトアミドベンゼンスルフォニル、1−ナフタレンスルフォニル、および2−ナフタレンスルフォニルである。
【0010】
式(I)の染料においてAおよびZが一緒になって随時置換基をもつベンゾイルまたはベンゼンスルフォニル基をつくるもの、特に式(II)または(III)
【0011】
【化4】
【0012】
但しR1およびR2は互いに独立に水素またはメチルを表す、
に対応するものは上記方法に特に好適に使用される。
【0013】
本発明はまた式
【0014】
【化5】
【0015】
但し式中ZはSO2を表し、
Aはアリールであって、その各々は置換基をもたないか、またはハロゲン、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルキルメルカプト、シアノ、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、C6〜C10−アリール、C6〜C10−アリーロキシ、またはC1〜C4−アルコキシで置換されていることができ、
pは1または2を表す、
を有することを特徴とする染料に関する。
【0016】
ここでバルク染色するとは特に染料を熔融したプラスチックス組成物の中に例えば押出し機を用いて混入するか、染料または染料混合物をプラスチックスの原料成分、例えば重合前の単量体に混入する方法を意味する。
【0017】
特に好適なプラスチックスは熱可塑性プラスチックス、例えばビニル重合体、ポリエステルまたはポリアミドである。
【0018】
適当なビニル重合体はポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル三元重合体、ポリメタクリレート等である。
【0019】
本発明方法に適したポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびセルロースエステルである。
【0020】
ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネートおよびポリメタクリレートが好適である。ポリスチレンが特に好適である。
【0021】
上記の高分子量化合物は個別的にまたは混合物として、またプラスチックス組成物または熔融物として存在することができる。
【0022】
本発明に使用する染料は微粉末の形で用いられ、この際分散剤を用いることもできるが、必ずしも必要ではない。
【0023】
染色すべきプラスチックスを重合させた後に染料(I)を使用する場合には、染料を乾燥した状態でプラスチックスの粒状物と混合または磨砕し、この混合物を例えば混合ロールまたは押出し機で可塑化し、均一にする。しかし熔融した組成物に染料を加え、撹拌してこれを均一に分散させることができる。この方法で予備染色した材料を通常の方法により例えば紡糸して剛毛、フィラメント等にするか、または押出しまたは射出成形により成形品にすることができる。
【0024】
式(I)の染料は重合触媒、特に過酸化物に対して抵抗性をもっているから、この染料をプラスチックスの単量体原料に加え、重合触媒の存在下において重合を行うことができる。このためには染料は単量体成分に溶解するかこれと緊密に混合することが好ましい。
式(I)の染料は重合体の重量に関し0.0001〜1重量%、特に0.01〜0.5重量%の量で上記重合体を染色するのに使用することが好ましい。
対応する有用な不透明の染色物は重合体に不溶な顔料、例えば二酸化チタンを加えることにより得ることができる。
【0025】
二酸化チタンは重合体の量に関し0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で使用することができる。
【0026】
本発明方法によれば、良好な熱安定性および良好な耐光性および耐候性をもつ透明または不透明な光沢をもった黄色の染色物が得られる。
【0027】
式(I)の種々の染料の混合物および/または式(I)と他の染料および/または無機または有機顔料との混合物を本発明方法に用いることができる。
【0028】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例は本発明を限定するものではない。特記しない限りすべての割合は重量による。
【0029】
【実施例】
実施例 1
(A)製造
65部のヒドロキシキナルジンカルボン酸、200部のトリクロロベンゼンおよび100部の4−ベンゼンスルフォニルフタル酸を215〜220℃に6時間加熱し、反応で生じる水を蒸溜し去る、この混合物を200部のメタノールで希釈し、固体分を吸引濾過し、メタノールで洗滌する。乾燥して98部の式
【0030】
【化6】
【0031】
を得た。
【0032】
(B)染色例
実施例(a)
100部の粒状ポリスチレンおよび実施例1の染料0.02部をドラム混合機中で15分間烈しく混合する。乾燥した状態で染色した粒状物をスクリュー射出成形機で240℃において処理する。非常に良好な耐光性をもった透明な黄色のシートが得られる。ポリスチレン重合体の代わりにブタジエンおよびアクリロニトリルとの共重合体を用いることもできる。0.5部の二酸化チタンをさらに加えると、不透明度の高い染色物が得られる。
【0033】
実施例(b)
実施例1の染料0.015部およびポリメチルメタクリレート100部を乾燥状態で混合し、単一スクリュー押出し機で230℃において均一化する。押出し機からストランドとして出て来る材料を粒状化する。次いでこれを成形することができる。乾燥したプラスチックスは良好な耐光性と耐候性とをもつ透明な黄色に染色された。
【0034】
実施例(c)
市販のポリカーボネート100部を粒状の乾燥した状態において実施例1の染料0.03部と混合する。この方法で微粉末状にした粒状物を二重スクリュー押出し機で290℃において均一化する。良好な耐光性をもった透明な黄色の染色物が得られた。この染色したポリカーボネートをストランドとして押出し機から押出し、加工して粒状物にする。この粒状物は通常の方法で処理して熱可塑性組成物にすることができる。
【0035】
上記方法を1%の二酸化チタンを加えて繰り返すと、黄色の不透明な染色物が得られた。
【0036】
実施例(d)
0.04部の染料を乾燥状態でスチレン/アクリロニトリル共重合体100部と混合し、この混合物を二重スクリュー押出し機で190℃において均一化して粒状物にし、この粒状物を次に通常の方法でプレス成形する。良好な耐光性をもった透明な黄色のプラスチックスが得られた。
【0037】
実施例(e)
実施例1の染料0.025部を透明な種類のポリエチレンテレフタレート100部と混合し、この混合物を二重スクリュー押出し機で280℃において均一化する。良好な耐光性をもった透明な黄色の染色物が得られた。次に粒状化した後、通常の熱可塑性成形法によりこの着色したプラスチックスを処理することができる。1%の二酸化チタンを加えてこの方法を行い、不透明な染色物を得た。
【0038】
実施例(f)
t−ドデシルメルカプタン0.05部および実施例1の染料0.05部を98.9部のスチレンに溶解する。この溶液を、脱イオン水200部、部分的に加水分解したポリビニルアセテート[例えばヘキスト(Hoechst)社製モヴィオール(Mowiol)(R)50/58]0.3部、およびドデシルベンゼンスルフォネート0.05部の溶液に分散させる。スチレン1部中に0.1部の過酸化ジベンゾイルを含む溶液を加え、この分散物を烈しく撹拌しながら80℃に加熱し、重合を開始させる。重合条件として80℃で4時間、90℃で2時間、110℃で3時間、130℃で2時間の条件を用い、理論値の98%の収率で重合体を得た。この重合体は撹拌条件により直径が0.1〜1.5mm(D50値)のビーズの形で得られる。濾過により重合体を母液から分離し、110℃において残留水分含量0.5%まで乾燥する。混合装置(高温ロール・ミル)中で熔融した後、ステアリン酸亜鉛0.5%およびシェル(Shell)社製イオノール(Ionol)(R)(ほぼ2,6−ジベンゾイル−t−ブチル−p−クレゾール)0.2%を混合し、重合体を粒状化する。
【0039】
この重合体を通常の熱成形法、例えば射出成形法で加工して黄色の透明な成形体にすることができる。
【0040】
実施例(g)
t−ドデシルメルカプタン0.2部、および実施例1の染料0.01部を74.8部のスチレンと25部のアクリロニトリルに溶解し、この溶液を、完全に脱イオンした水200部と水酸化ナトリウムで中和したスチレンとマレイン酸無水物との共重合体とから成る溶液に分散させる。スチレン1部に溶解した0.1部の過酸化ベンゾイルを加えた後、この分散物を烈しく撹拌しながら80℃に加熱し、重合を開始させる。実施例(f)と同様にして重合を行った後、該実施例記載の方法で重合体を処理する。潤滑剤として0.5%のステアリン酸亜鉛を、老化防止剤としてシェル社製のロノール(R)(ほぼ2,6−ジベンゾイル−t−ブチル−p−クレゾール)0.5%を高温ロール・ミル中で混入する。粒状化した重合体を射出成形して透明な黄色の成形品をつくることができる。
【0041】
実施例(h)
スチレン99.95部、実施例1の染料0.04部および過酸化ジ−t−ブチル0.01部を溢流式連続操作予備反応器の中に導入し、75℃で予備重合させる。予備反応器を出る予備重合した溶液(ポリスチレン含量20%)を二重スクリュー押出し装置に導入する。2個のスクリューは毎分20回転で逆向きに回転させる。スクリュー装置の4個の加熱および冷却可能な部分を、生成物を取り込んでから出すまでの順序で、110℃、130℃、160℃および180℃に保つ。重合体は固体分濃度80%でスクリュー反応器を出る。重合体溶液1000重量部当たりシェル社製のロノール(R)(ほぼ2,6−ジベンゾイル−t−ブチル−p−クレゾール)3重量部およびオクチルアルコール5重量部を次の押出し機の中で重合体中に計量して混入し、重合体を脱ガスして粒状化する。黄色に染色されたこの粒状物は下降して成形品にすることができる。
【0042】
実施例(i)
実施例1の染料0.02部をスチレン74.97部およびアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル25部に溶解する。さらに0.01部の過酸化ジ−t−ブチルを加えた後、得られた溶液を溢流式連続操作予備反応器の中に導入する。実施例(h)記載の方法で重合と加工を行う。この透明な黄色の粒状物をさらに加工して成形し、熱可塑性組成物を加工する通常の方法でシートにすることができる。
【0043】
実施例(k)
実施例1の染料0.03部をメタクリル酸メチル99.97部に溶解する。0.1部の過酸化ジベンゾイルを加えた後、この溶液を120℃に加熱し、重合を開始させる。30分後予備重合したメタクリル酸メチルを2枚のガラス板の間で80℃に10時間加熱して完全に重合させる。黄色の透明なポリメタクリル酸メチルのシートが得られた。
【0044】
実施例(l)
ε−カプロラクタムを重合して得られたポリアミド6のチップ100部を振盪機の中で実施例1の染料0.05部と緊密に混合する。このようにして得られた粉末にしたチップを押出し機中で260℃において熔融させ、得られた熔融物を直径0.5mmの単一高温ダイス型から押出し、生じたフィラメントを約25m/分の速度で延伸する。このフィラメントを高温の水の中で4倍に伸長させる。黄色に染色された優れた耐光性をもつ透明なフィラメントが得られた。不透明な染色物を得ようとする場合には、0.5部の二酸化チタンをさらに加える。
【0045】
押出し機中の滞在時間は色調を害することなく最高30分にすることができる。
【0046】
実施例(a)〜(l)記載の方法でプラスチックスを染色するのに用いられる下記表1記載の染料を実施例1と同様な方法で得た。
【0047】
これらの反応においては実施例1の4−ベンゼンスルフォニルフタル酸の代わりに表1記載のフタル酸誘導体を用いた。
【0048】
実施例42
市販の粒状ポリスチレン97.9重量%、
二酸化チタン(ルチル型)2重量%、および
本発明の実施例20の染料(染料A)またはドイツ特許E2 203 348号実施例24に従って製造された染料(染料B)
【0049】
【化7】
【0050】
0.1重量%の混合物をスクリュー式射出成形機を用い、滞在時間を5分間にして温度220、240、260、280および300℃において加工してシートにする。
【0051】
比較のため同じ混合物を200℃において滞在時間を25秒にし2種の染料を用いて加工し、標準的な試験シートにした。
【0052】
評価のため分光光度法により試験シートを測定し、標準値からの色の偏差をΔ値の形で決定した(下記表参照)。
【0053】
DIN53 772に従えば、染料はΔ値が最高3までは熱的に安定であると見做される。
【0054】
Δ値が高いことは、25秒間220℃に加熱した場合、標準からの色調のずれが大きいことを意味している。これは対応する温度における熱的安定性を反映している。
【0055】
上記結果から本発明に使用された染料(A)は従来法の染料(B)に比べ驚くほど熱的安定性が高いことは明白である。
【0056】
高温において熱的安定性が良好な染料は、染色すべきプラスチックスの処理温度が非常に高い場合に特に重要である。
【0057】
本発明の主な特徴及び態様は次の通りである。
1.式(I)
【0058】
【化8】
【0059】
但し式中ZはSO2またはCOを表し、
Aはアルキル、またはアリールであって、その各々は置換基をもたないか、またはハロゲン、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルキルメルカプト、シアノ、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、C6〜C10−アリール、C6〜C10−アリーロキシ、またはC1〜C4−アルコキシで置換されていることができ、
pは1または2を表す、
の染料を使用するプラスチックスをバルク染色する方法。
【0060】
2.Aは置換基をもたないか、ハロゲン、C1〜C4−アルキル、シアノ、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、フェニル、フェノキシまたはC1〜C4−アルコキシで置換されているC1〜C10−アルキルまたはC6〜C10−アリールを表す上記第1項記載の方法。
【0061】
3.Aは置換基をもたないか、またはCl、Br、F、メチル、エチルイソプロピルn−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、シアノ、C1〜C4−アルキルメルカプト、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、フェニル、フェノキシまたはC1〜C4−アルコキシで置換されているフェニルまたはナフチルを表し、pは1である上記第1項記載の方法。
【0062】
4.式(II)または(III)
【0063】
【化9】
【0064】
但し式中R1およびR2は互いに独立に水素またはメチルを表す、
に対応する式(I)の染料を使用する上記第1項記載の方法。
【0065】
5.プラスチックスは熱可塑性である上記第1項記載の方法。
【0066】
6.染色すべきプラスチックスはビニル重合体、特にポリスチレン、またはポリエステルである上記第1項記載の方法。
【0067】
7.上記第1〜6項の少なくとも一つの方法に従って染色されたプラスチックス。
【0068】
8.染色すべきプラスチックスがポリエステルである上記第1項記載の方法。
【0069】
9.式(I)
【0070】
【化10】
【0071】
但し式中ZはSO2を表し、
Aはアリールであって、その各々は置換基をもたないか、またはハロゲン、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルキルメルカプト、シアノ、C1〜C4−アルキルカルボアミノ、C6〜C10−アリール、C6〜C10−アリーロキシ、またはC1〜C4−アルコキシで置換されていることができ、
pは1または2を表す、
の染料。
Claims (3)
- 請求項1記載の方法に従って染色されたことを特徴とするプラスチックス。
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